説明

機械式多段駐車装置

【課題】パレットに設けられた切欠き部により、パレットの歩行路に形成される開口が、車両への乗員の乗降性に与える影響を無くす。
【解決手段】入出庫フロアの昇降パレット12C(又は16C)の切欠き部36と、横行パレット14Bの突起部38とが一致して、切欠き部36が塞がれることで、入出庫フロアGLに並ぶ各パレットに、昇降パレット12C(又は16C)の切欠き部36による開口が生じることを無くすことができる。又、各パレットのたわみや作動誤差を考慮した最小限の隙間を確保して、各パレットの歩行路部同士を隣接配置することが可能となり、隣接する歩行路部によって、段差もなく、歩行に適した十分な幅の歩行路を構成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、複数の車両を格納するための複数のパレットを、昇降又は横行させて、入出庫フロアに位置するパレットに対し、自走による車両の入出庫を行う機械式多段駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5、図6には、複数のパレットの中から任意に選択したパレットを昇降、横行させて所定の入出庫位置へと呼び出し、入出庫フロアGLに位置するパレットに対し、自走による車両の入出庫を行う形式の機械式多段駐車装置10を、概略的に示している。図示の機械式多段駐車装置10は、入出庫フロアGLにピット18を形成し、ピット18内に骨格フレーム20を組んで骨格部を形成し、この骨格部内にパレット12、14、16を三段に配置したものである。このうち、パレット14は、入出庫フロアGLを水平移動可能な横行パレットであり、二台の横行パレット14A、14Bを具備している。
【0003】
又、入出庫フロアGLの上下位置に、三列に配置されたパレット12A、12B、12C、16A、16B,16Cは、入出庫フロアGLとの間を昇降可能な昇降パレットである。これらの昇降パレットは、入出庫フロアの上下位置で待機しており、横行パレット14A、14Bが退避して入出庫フロアGLに形成される空スペースの、上下に位置する昇降パレットが、下降又は上昇することで、入出庫フロアGLには三台のパレットが並ぶこととなる。図示の例では、ピット18内の昇降パレット12Cが、入出庫フロアGLに上昇している。そして、横行パレット14A、14Bのみならず、入出庫フロアGLに位置する昇降パレット12Cに対しても、車両22は自走により入出庫を行うことができる。なお、図5において符号24で示される部分は、昇降開閉式の柵である。
【0004】
又、各横行パレット14A、14Bは、各々独立してレール上を走行車輪により左右に移動するものであり、横行パレット14Aは、昇降パレットの三列分の幅を有する可動範囲のうち図5の左端から中央まで、横行パレット14Bは、同右端から中央までが、各々の可動範囲となっている。
【0005】
一方、各昇降パレット12A〜12C、16A〜16Cは、チェーン等を用いた昇降機構によって各々独立して昇降するものであり、横行パレット14Aが図5の中央かつ横行パレット14Bが右端にあるときには、昇降パレット12A、16Aのいずれか一方が昇降可能である。又、横行パレット14Aが図5の左端かつ横行パレット14Bが右端にあるときには、昇降パレット12B、16Bのいずれか一方が昇降可能である。又、横行パレット14Aが図5の左端かつ横行パレット14Bが中央にあるときには(図示の状態)、昇降パレット12C、16Cのいずれか一方が昇降可能である。
【0006】
又、機械式多段駐車装置10には、入庫した車両22が炎上する等の不慮の事態を想定して、消火設備が設置されている。この消火設備は、複数の泡ヘッド26と、各泡ヘッド26へと消火剤を供給する消火配管28とを含んでいる。より具体的には、横行パレット14の下面近傍からピット内の三区画分の空間へ向けて泡消火剤を噴射する複数の下段用泡ヘッド26Aと、昇降パレット16の待機位置(上昇位置)の下面近傍から、下方の入出庫フロアGLの三区画分の空間へ向けて泡消火剤を噴射する中段用泡ヘッド26Bと、昇降パレット16の待機位置の更に上方から、昇降パレット16が待機する三区画分の空間へ向けて泡消火剤を噴射する上段用泡ヘッド26Cとを備えている。
【0007】
又、各泡ヘッド26へと消火剤を供給する消火配管28は、水平方向に延びる水平配管28Aと、水平配管28Aから分岐する垂直配管28Bとを含むものである。なお、各パレット間の垂直配管28Bは、パレット間の隙間の中央位置に設けられている。又、各泡ヘッド26及び消火配管28は、何れも、入出庫フロアGL上を水平移動する、横行パレット14A、14B及びこれらに載置される車両22との、干渉を防ぐ位置に設けられている。
【0008】
又、各パレット12、14、16の形状は、図7に示されるように、車両の入出庫方向に平行に延びて車両の左右両輪の車路面を構成する車路部30と、パレットの強度を高めるために、車路部30の間に車両の最低地上高を下回る高さで上方に突出する中高部32と、車路部30の外側端部に沿って上方に突出する歩行路部34とを含んでいる。そして、歩行路部34には、消火配管28の垂直配管28Bを避けるための切欠き部36が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−166730号公報(〔0005〕、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、本形式の機械式多段駐車装置10は、入出庫フロアGLに位置する全てのパレット12、14、16に対し、自走により車両22の入出庫が行われるものであり、車両22の乗員は、各パレット12、14、16の所定位置に車両22を停止させた後に下車し、各パレット12、14、16の歩行路部34の上を歩いて機械式多段駐車装置10から退出する。又、機械式多段駐車装置10に入庫した車両22を出庫する際にも、この歩行路部34の上を歩いて、車両22に乗り込む。
【0011】
この際に、歩行路部34に形成された切欠き部36により形成される開口に、足を踏み外してしまうことがないよう、歩行者は十分に注意する必要がある。特に、下車の際に車両ドアを開けて足を下ろす位置に丁度この切欠き部36があると、開口に足が嵌り易く、使い勝手の点で、従来の機械式多段駐車装置10には改良の余地があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、機械式多段駐車装置において、消火配管等の上下に延びる設備配管を避けるために、パレットに設けられた切欠き部により、パレットの歩行路に形成される開口が、車両への乗員の乗降性に与える影響を無くし、機械式多段駐車装置の使い勝手を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0013】
(1)入出庫フロアを水平移動可能な横行パレットと、前記入出庫フロアの上方及び下方の少なくとも一方にて昇降可能に待機する昇降パレットとを備え、前記横行パレットが退避して前記入出庫フロアに形成される空スペースに、前記昇降パレットが下降又は上昇することで、前記入出庫フロアに位置する全てのパレットに対し、自走による車両の入出庫が可能な機械式多段駐車装置であって、前記昇降パレットに、前記入出庫フロアの上方又は下方の位置にて上下に延びる設備配管を避ける切欠き部が形成され、前記横行パレットに、前記入出庫フロアにて並んだ前記昇降パレットの、前記切欠き部を塞ぐ突起部が設けられている機械式多段駐車装置(請求項1)。
【0014】
本項に記載の機械式多段駐車装置は、入出庫フロアの上方及び下方の少なくとも一方にて昇降可能に待機する昇降パレットに、機械式多段駐車装置の上下に延びる設備配管を避ける切欠き部が形成されることで、設備配管と昇降パレットとの干渉は生じない。そして、昇降パレットが、入出庫フロアに形成される空スペースに下降又は上昇した状態で、横行パレットに形成された突起部により切欠き部が塞がれることで、入出庫フロアに並ぶ各パレットに、昇降パレットの切欠き部による開口が生じることを無くすものである。なお、昇降パレットの切欠き部は、各パレットのたわみや作動誤差を考慮した最小限の切欠きであれば良い。
【0015】
(2)上記(1)項において、前記横行パレット及び前記昇降パレットは、車両の入出庫方向に平行に延びて車両の左右両輪の車路面を構成する車路部と、該車路部の外側端部に沿って上方に突出する歩行路部とを含み、前記昇降パレットの歩行路部に前記切欠きが形成され、前記横行パレットの歩行路部に前記突起部が設けられている機械式多段駐車装置(請求項2)。
【0016】
本項に記載の機械式多段駐車装置は、入出庫フロアに並ぶ昇降パレット及び横行パレットの、歩行路部に形成された切欠き部と突起部とが一致して切欠き部が塞がれることで、入出庫フロアに並ぶ各パレットに、昇降パレットの切欠き部による開口が生じることを無くすものである。又、各パレットのたわみや作動誤差を考慮した最小限の隙間を確保して、各パレットの歩行路部同士を隣接配置することが可能となり、隣接する歩行路部によって、段差もなく、歩行に適した十分な幅の歩行路を構成するものとなる。又、各パレット同士を最小限の隙間を以って隣接配置することで、機械式多段駐車装置全体の幅を最小限に詰めることができる。
【0017】
(3)上記(1)、(2)項において、前記横行パレットの突起部は、前記昇降パレットの歩行路部の上面に対し、同一ないし可能な限り段差が少なくなる高さに設けられている機械式多段駐車装置(請求項3)。
本項に記載の機械式多段駐車装置は、昇降パレットが、入出庫フロアに形成される空スペースに下降又は上昇した状態で、横行パレットに形成された突起部により切欠き部が塞がれる際に、横行パレットの突起部は、昇降パレットの歩行路部の上面に対し、同一ないし可能な限り段差が少なくなる高さに設けられていることで、可能な限り平坦な歩行路部を形成するものである。なお、本説明において「可能な限り段差が少なくなる高さ」とは、各パレットや突起部に生じるたわみや、構造上の干渉を考慮して、実質的に採りうる最小の段差となるように高さを設定することを意味するものである。
【0018】
(4)上記(1)から(3)項において、前記入出庫フロアにおける前記横行パレットの可動範囲を画定する、機械式多段駐車装置の骨格部ないし土台部に、前記横行パレットが可動範囲の端部位置にあるときの、前記横行パレットと前記骨格部ないし土台部との隙間を塞ぐ固定歩行路部が設けられ、該固定歩行路部に、前記横行パレットの突起部を覆うように格納する凹部が形成されている機械式多段駐車装置(請求項4)。
本項に記載の機械式多段駐車装置は、入出庫フロアの骨格部ないし土台部に設けられた、横行パレットと骨格部ないし土台部との隙間を塞ぐ固定歩行路部により、入出庫フロアの両側部にも歩行路が形成されるものである。しかも、固定歩行路部に形成された凹部に、横行パレットの突起部を覆うように格納することで、固定歩行路部と横行パレットの突起部との干渉も生じず、かつ、歩行路に開口が生じることもない。
【0019】
(5)上記(1)から(4)項において、前記横行パレットの突起部は、前記昇降パレットの切欠き部の形状に倣った外形を有するプレートである機械式多段駐車装置(請求項5)。
本項に記載の機械式多段駐車装置は、横行パレットの突起部が、昇降パレットの切欠き部の形状に倣った外形を有するプレートにより構成されるものである。横行パレットのプレートは、昇降パレットの切欠き部の形状に倣った外形を有するものであればよく、その大きさは、横行パレットの全長に渡る必要もなく比較的小さなものに制限され、強度上の観点、重量の観点等からの自由度が高まるものとなる。なお、プレートは横行パレットとは別個に形成され、横行パレットに対してボルト、溶接等適切な手段によって固定されることが望ましい。
【0020】
(6)上記(1)から(5)項において、前記昇降パレットは前記横行パレットの可動方向に三列設けられ、前記切欠き部が、両側の昇降パレットの中央パレット寄り端部に形成されており、前記横行パレットは前記昇降パレットの三列分の幅を有する可動範囲に対して二台設けられており、前記突起部が、各横行パレットの離端方向端部に設けられている機械式多段駐車装置(請求項6)。
【0021】
本項に記載の機械式多段駐車装置は、両側の昇降パレットのいずれか一方が入出庫フロアへと下降又は上昇する場合、すなわち、二台の横行パレットのうちの一台が、昇降パレットの三列分の幅を有する可動範囲の一端部に位置し、もう一台が同可動範囲の中央部に位置して、同可動範囲の他端部に空スペースが形成される場合において、両側の昇降パレットの中央パレット寄り端部に形成された切欠き部が、各横行パレットの離端方向端部に設けられた突起部によって塞がれるものである。なお、中央の昇降パレットが入出庫フロアへと下降又は上昇する場合、すなわち、二台の横行パレットが、各々昇降パレットの三列分の幅を有する可動範囲の端部に位置し、同可動範囲の中央部に空スペースが形成される場合には、中央の昇降パレットに切欠き部が形成されておらず、横行パレットのこれと入出庫フロアにて隣接する側の端部にも突起部が形成されていないことから、そもそも、切欠き部による問題は生じない。
【0022】
(7)上記(6)項において、前記設備配管は、中央の昇降パレットを避ける位置に設けられている機械式多段駐車装置。
本項に記載の機械式多段駐車装置は、設備配管は、中央の昇降パレットを避ける位置に設けられていることで、設備配管との干渉を避けるために設けられる切欠きは、中央の昇降パレットには形成されず、両側の昇降パレットの中央パレット寄り端部にのみ形成される。これに対応して、各横行パレットの離端方向端部に突起部が設けられる態様となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明はこのように構成したので、機械式多段駐車装置において、消火配管等の上下に延びる設備配管を避けるために、パレットに設けられた切欠き部により、パレットの歩行路に形成される開口が、車両への乗員の乗降性に与える影響を無くし、機械式多段駐車装置の使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る機械式多段駐車装置の入出庫フロアを示す平面図であり、(a)は、右側の昇降パレットが入出庫フロアへと下降又は上昇した状態を示すものであり、(b)は(a)のA部拡大図、(c)は(b)のC−C断面図、(d)は(a)のB部拡大図、(e)は(d)のD−D断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る機械式多段駐車装置の入出庫フロアを示す平面図であり、(a)は、中央の昇降パレットが入出庫フロアへと下降又は上昇した状態を示し、(b)は、左側の昇降パレットが入出庫フロアへと下降又は上昇した状態を示すものである。
【図3】本発明の実施の形態に係る機械式多段駐車装置の、入出庫フロアの上方又は下方にて待機する昇降パレットと、設備配管とを示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る機械式多段駐車装置の作動状態を例示する模式図であり、(a)は、入出庫フロアの上方右端に位置する昇降パレットが、入出庫フロアに下降した状態を示し、(b)は、入出庫フロアの上方中央に位置する昇降パレットが、入出庫フロアに下降した状態を示し、(c)は、入出庫フロアの下方右端に位置する昇降パレットが、入出庫フロアに上昇した状態を示すものである。
【図5】従来の機械式多段駐車装置を模式的に示す正面図である。
【図6】図5に示される機械式多段駐車装置の側面図である。
【図7】図5に示される機械式多段駐車装置のパレットの単体図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る機械式多段駐車装置は、全体構成としては図5、図6に示される従来の機械式多段駐車装置10と同一であり、入出庫フロアGLを水平移動可能な二台の横行パレット14A、14Bと、入出庫フロアGLの上下位置に、三列に配置された、入出庫フロアGLとの間を昇降可能な昇降パレット12A、12B、12C、16A、16B,16Cとを備えている。又、各パレットの基本的構成についても、図7に示される従来のパレットと同様であることから、本発明の実施の形態に係る機械式駐車装置ついての以下の説明と共に、適宜、図5〜図7も参照されたい。
【0026】
さて、本発明の実施の形態に係る機械式多段駐車装置は、図3に示されるように、垂直配管28Bが、中央の昇降パレット12B、16Bを避ける位置に設けられ、両側の昇降パレット12A、12C、16A、16Cの、中央パレット12B、16B寄り端部の歩行路部34に、垂直配管28Bを避ける切欠き部36が形成されている。切欠き部36は、昇降パレット12A、12C、16A、16Cのたわみや作動誤差を考慮して、垂直配管28Bとの干渉が生じない最小限の切欠きであれば良い。
【0027】
一方、図1、図2、図4に示されるように、横行パレット14A、14Bの離端方向端部の歩行路部34には、突起部38が設けられている。突起部38は、昇降パレット12A、12C、16A、16Cの切欠き部36の形状に倣った外形を有するプレートにより構成されるものである。この突起部38は、昇降パレット12A、12C、16A、16Cの切欠き部36の形状に倣った外形を有するものであればよく、その大きさは、横行パレット14A、14Bの全長に渡る必要もなく比較的小さなものに制限され、強度上の観点、重量の観点等からの自由度が高まるものとなる。なお、突起部38は横行パレット14A、14Bとは別個に形成され、横行パレット14A、14Bに対してボルト、溶接等適切な手段によって固定されるものである。
【0028】
又、横行パレット14A、14Bの突起部38は、入出庫フロアGLにて並んだ昇降パレット12A、12C、16A、16Cの歩行路部34の上面に対し、同一ないし可能な限り段差が少なくなる高さに設けられている(図1(e)参照)。この「可能な限り段差が少なくなる高さ」とは、各パレット12、14、16や突起部38に生じるたわみや、構造上の干渉を考慮して、実質的に採りうる最小の段差となるように高さを設定することを意味するものである。
【0029】
又、図1に示されるように、入出庫フロアGLにおける横行パレット14A、14Bの可動範囲を画定する、機械式多段駐車装置の骨格フレーム20(図5、図6)等の骨格部ないし土台部40には、横行パレット14A、14Bが可動範囲の端部位置にあるときの、横行パレット14A、14Bと骨格部ないし土台部40との隙間を塞ぐ固定歩行路部42が設けられている。この固定歩行路部42は、少なくとも横行パレット14A、14Bの全長に渡る長さを有するプレートを樋状断面に折り曲げて構成されたものである。そして、固定歩行路部42には、横行パレット14A、14Bの突起部38を格納する凹部44が形成されている。この凹部44は、固定歩行路部42の上面には開口せず側方に開口し、上面視で突起部38を覆うように形成されている。
【0030】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。まず、入出庫フロアGLの上方及び下方にて昇降可能に待機する昇降パレット12A、12C、16A、16Cに、機械式多段駐車装置の上下に延びる垂直配管28Bを避ける切欠き部36が形成されることで、垂直配管28Bと昇降パレット12A、12C、16A、16Cとの干渉は生じない。そして、図4(a)、(c)にも示されるように、昇降パレット12A、12C、16A、16Cが、入出庫フロアGLに形成される空スペースに下降又は上昇した状態で、横行パレット14A、14Bに形成された突起部38により切欠き部36が塞がれることで、入出庫フロアGLに並ぶ各パレットに、昇降パレットの切欠き部36による開口が生じることを無くすことができる。
【0031】
より具体的には、入出庫フロアGLの昇降パレット12A、12C、16A、16Cのいずれかの歩行路部34に形成された切欠き部36と、横行パレット14A又は14Bの歩行路部34に形成された突起部38とが一致して、切欠き部36が塞がれることで、入出庫フロアGLに並ぶ各パレットに、昇降パレット12、16の切欠き部36による開口が生じることを無くすことができる。又、各パレットのたわみや作動誤差を考慮した最小限の隙間を確保して、各パレットの歩行路部34同士を隣接配置することが可能となり、隣接する歩行路部34によって、段差もなく、歩行に適した十分な幅の歩行路を構成することが可能となる。又、各パレット同士を最小限の隙間を以って隣接配置することで、機械式多段駐車装置全体の幅を最小限に詰めることができるので、ピット18の掘削作業コストや骨格フレーム20のコストも削減可能となり、機械式多段駐車装置全体としての建設コストの削減効果は、相当なものとなる。
【0032】
又、昇降パレット12A、12C、16A、16Cが、入出庫フロアGLに形成される空スペースに下降又は上昇した状態で、横行パレット14A、14Bに形成された突起部38により切欠き部36が塞がれる際に、横行パレット14A、14Bの突起部38は、昇降パレット12A、12C、16A、16Cの歩行路部の上面に対し、同一ないし可能な限り段差が少なくなる高さに設けられていることで、可能な限り平坦な歩行路を、歩行路部34によって形成することができる。
【0033】
又、入出庫フロアGLの骨格部ないし土台部40に設けられた、横行パレット14A、14Bと骨格部ないし土台部40との隙間を塞ぐ固定歩行路部42により、入出庫フロアGLの両側部にも歩行路が形成されるものである。しかも、固定歩行路部42に形成された凹部44に、横行パレット14A、14Bの突起部38を覆うように格納することで、固定歩行路部42と横行パレット14A、14Bの突起部との干渉も生じず、かつ、歩行路に開口が生じることもない。
【0034】
又、横行パレット14A、14Bの突起部38が、昇降パレット12A、12C、16A、16Cの切欠き部36の形状に倣った外形を有するプレートにより構成されることにより、突起部38の大きさは、横行パレット14A、14Bの全長に渡る必要もなく比較的小さなものに制限され、強度上の観点、重量の観点等からの自由度が高まるものとなる。
【0035】
又、垂直配管28Bは、中央の昇降パレット12B、16Bを避ける位置に設けられていることで、垂直配管28Bとの干渉を避けるために設けられる切欠き36は、中央の昇降パレット12B、16Bには形成されず、両側の昇降パレット12A、12C、16A、16Cの中央パレット12B、16B寄り端部にのみ形成される。これに対応して、各横行パレット14A、14Bの離端方向端部に突起部38が設けられる態様となる。
【0036】
そして、図4(a)、(c)に例示されるように、両側の昇降パレットのいずれか一方(図4(a)、(c)では右側の昇降パレット16C、12C)が入出庫フロアGLへと下降又は上昇する場合、すなわち、横行パレット14Aが、昇降パレットの三列分の幅を有する可動範囲の左端部に位置し、もう一台の横行パレット14Bが同可動範囲の中央部に位置して、同可動範囲の他端部に空スペースが形成される場合において、右側の昇降パレット12C、16Cの中央パレット12B、16B寄り端部に形成された切欠き部36が、横行パレット14Bの離端方向端部に設けられた突起部38によって塞がれるものとなる。又は、左側の昇降パレット12A,16Aの中央パレット12B、16B寄り端部に形成された切欠き部36が、横行パレット14Bの離端方向端部に設けられた突起部38によって塞がれるものとなる。
【0037】
一方、図4(b)に例示されるように、中央の昇降パレット12B、16Bが入出庫フロアGLへと下降又は上昇する場合、すなわち、二台の横行パレット14A、14Bが、各々昇降パレットの三列分の幅を有する可動範囲の端部に位置し、同可動範囲の中央部に空スペースが形成される場合には、中央の昇降パレット12B、16Bに切欠き部が形成されておらず、横行パレット14A、14Bのこれと入出庫フロアGLにて隣接する側の端部にも突起部が形成されていないことから、そもそも、切欠き部による問題は生じない。
【0038】
なお、本発明の実施の形態に係る機械式多段駐車装置は、上下三段左右三列の構成を有しているが、入出庫フロアGLの上方又は下方にのみ昇降パレット12又は16を備える上下二段構造であっても良い。
【符号の説明】
【0039】
10:機械式多段駐車装置、 12、14、16:パレット、 12A、12B、12C、16A、16B、16C:昇降パレット、 14A,14B:横行パレット、18:ピット、20:骨格フレーム、22:車両、26:泡ヘッド、26A:下段用泡ヘッド、26B:中段用泡ヘッド、26C:上段用泡ヘッド、28:消火配管、28A:水平配管、28B:垂直配管、30:車路部、34:歩行路部、36:切欠き部、38:突起部、GL:入出庫フロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出庫フロアを水平移動可能な横行パレットと、前記入出庫フロアの上方及び下方の少なくとも一方にて昇降可能に待機する昇降パレットとを備え、前記横行パレットが退避して前記入出庫フロアに形成される空スペースに、前記昇降パレットが下降又は上昇することで、前記入出庫フロアに位置する全てのパレットに対し、自走による車両の入出庫が可能な機械式多段駐車装置であって、
前記昇降パレットに、前記入出庫フロアの上方又は下方の位置にて上下に延びる設備配管を避ける切欠き部が形成され、
前記横行パレットに、前記入出庫フロアにて並んだ前記昇降パレットの、前記切欠き部を塞ぐ突起部が設けられていることを特徴とする機械式多段駐車装置。
【請求項2】
前記横行パレット及び前記昇降パレットは、車両の入出庫方向に平行に延びて車両の左右両輪の車路面を構成する車路部と、該車路部の外側端部に沿って上方に突出する歩行路部とを含み、
前記昇降パレットの歩行路部に前記切欠きが形成され、前記横行パレットの歩行路部に前記突起部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の機械式多段駐車装置。
【請求項3】
前記横行パレットの突起部は、前記昇降パレットの歩行路部の上面に対し、同一ないし可能な限り段差が少なくなる高さに設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の機械式多段駐車装置。
【請求項4】
前記入出庫フロアにおける前記横行パレットの可動範囲を画定する、機械式多段駐車装置の骨格部ないし土台部に、前記横行パレットが可動範囲の端部位置にあるときの、前記横行パレットと前記骨格部ないし土台部との隙間を塞ぐ固定歩行路部が設けられ、該固定歩行路部に、前記横行パレットの突起部を覆うように格納する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の機械式多段駐車装置。
【請求項5】
前記横行パレットの突起部は、前記昇降パレットの切欠き部の形状に倣った外形を有するプレートであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の機械式多段駐車装置。
【請求項6】
前記昇降パレットは前記横行パレットの可動方向に三列設けられ、前記切欠き部が、両側の昇降パレットの中央パレット寄り端部に形成されており、
前記横行パレットは前記昇降パレットの三列分の幅を有する可動範囲に対して二台設けられており、前記突起部が、各横行パレットの離端方向端部に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の機械式多段駐車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−111727(P2011−111727A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266587(P2009−266587)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)