説明

機械式立体駐車装置におけるパレット保持装置

【課題】地震等によりパレットが激しく衝突しても、入出庫時以外においてパレットが昇降路内に移動するのを確実に防止することができる機械式立体駐車装置におけるパレット保持装置を提供する。
【解決手段】レール4aに沿って延び、その中間部に棚4のケージ側端部に枢着された揺動軸12aを有し揺動軸12aを中心に揺動可能であるストッパレバー12と、ストッパレバー12の棚側端部に固定され、下降位置でパレットのストッパピン8と係合してパレットが昇降路内に移動するのを防止する規制部材14と、規制部材14を下降位置に向けて付勢する付勢部材16と、ストッパレバー12のケージ側端部に固定され、ケージ3に設けられた解放ストライカ7bと係合してその下降動作により規制部材14を下降位置から上方の解放位置に揺動させてストッパピン8との係合を解放する解放部材18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式立体駐車装置におけるパレット保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエレベータ式駐車装置では、車両の入庫時において、入出庫部で車両をパレット上に載せ、パレットをケージに載せて昇降路内を昇降し、昇降路に沿って配置された複数の棚の1つにパレットを移載して、棚上に車両を載せたパレットを収納する。
また、逆に車両の出庫時には、ケージを昇降させて目的とする棚で停止し、棚からケージ上にパレットを移載し、入出庫部までケージを昇降し、入出庫部で車両をパレットから出庫する。
【0003】
上述したエレベータ式駐車装置において、各パレットは、ケージと棚との間を移動するための車輪を有しており、ケージと棚はそれぞれパレットの車輪を案内するためのレールを有している。そのため、入出庫時以外においてパレットが昇降路内に移動するのを防止するためにパレット保持装置が設けられている。
【0004】
上述したパレット保持装置は、例えば特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−110389号公報、「パレット式立体駐車装置の安全装置」
【特許文献2】特開平8−209967号公報、「エレベータ式駐車装置のトレーロック装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のパレット落下防止装置は、昇降装置の前後左右4箇所にパレット出し入れ装置およびスイングシリンダを設けており、特許文献2のトレーロック装置は、駆動用としてのシャフト駆動装置および格納室に被駆動側シャフトをトレーロック専用に設ける必要が有り、いずれも部品点数が多くなり構造が複雑になる。
【0007】
このように、部品点数が多く、構造が複雑になると組立、点検、交換が容易ではなく、故障や誤動作の可能性がある。その上、地震等によりパレットに非常に大きな水平力及び垂直力が不規則に作用しパレットがパレット落下防止装置、トレーロック装置へ激しく衝突すると、入出庫時以外においてパレットが昇降路内に移動する懸念があった。
【0008】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、部品点数の少なく構造が簡素なうえで確実に動作し、地震等によりパレットが激しく衝突しても、入出庫時以外においてパレットが昇降路内に移動するのを確実に防止することができる機械式立体駐車装置におけるパレット保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、車両を載せるパレットを昇降路に沿って昇降させるケージと、昇降路に隣接して配置されケージから移載されたパレットを収容する棚とを備えた機械式立体駐車装置におけるパレット保持装置であって、
各パレットは、ケージと棚との間を水平移動するための車輪と、車輪より幅方向外方に張り出したストッパピンとを有し、
ケージと各棚は、それぞれパレットの車輪を案内するためのレールを有し、
前記パレット保持装置は、
レールに沿って延び、その中間部に車輪の回転軸と平行な揺動軸を有し、該揺動軸が棚のケージ側端部に枢着され揺動軸を中心に揺動可能であるストッパレバーと、
ストッパレバーの棚側端部に固定され、下降位置でストッパピンと係合してパレットが昇降路内に移動するのを防止する規制部材と、
規制部材を前記下降位置に向けて付勢する付勢部材と、
ストッパレバーのケージ側端部に固定され、ケージに設けられた解放ストライカと係合してその下降動作により規制部材を下降位置から上方の解放位置に揺動させてストッパピンとの係合を解放する解放部材とを有しており、
前記規制部材のストッパピンとの係合面は、その垂線が、前記揺動軸より下方に向くように傾斜している、ことを特徴とする機械式立体駐車装置におけるパレット保持装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の構成によれば、規制部材のストッパピンとの係合面は、その垂線が、揺動軸より下方に向くように傾斜しているので、地震等によりパレットが激しく衝突しても、その衝突力は揺動軸より下方に向くので、衝突力により発生するモーメントは規制部材が下降位置に向けて揺動する方向に作用する。
従って、パレットの衝突力により、規制部材が下降位置に強く保持されるので、入出庫時以外においてパレットが昇降路内に移動するのを確実に防止することができる。
【0011】
また、入出庫時には、ケージの下降動作により、解放部材がケージに設けられた解放ストライカと係合して、規制部材を下降位置から上方の解放位置に揺動させてストッパピンとの係合を解放するので、棚上に車両を載せたパレットを移載し、或いは棚からケージ上にパレットを移載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のパレット保持装置を備えた機械式立体駐車装置の正面図である。
【図2】本発明によるパレット保持装置の正面図とそのB−B矢視図である。
【図3】本発明によるパレット保持装置の作動説明図である。
【図4】本発明によるパレット保持装置の規制部材とストッパピンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明のパレット保持装置を備えた機械式立体駐車装置の正面図である。
この例において、機械式立体駐車装置は、エレベータ式駐車装置であり、車両を載せるパレット1を昇降路2に沿って昇降させるケージ3と、昇降路2に隣接して配置されケージ3から移載されたパレット1を収容する複数の棚4とを備える。
なお、本発明はエレベータ式駐車装置に限定されず、ケージ3と棚4を備える限りでその他の機械式立体駐車装置であってもよい。
【0015】
図1において、各パレット1は、ケージ3と棚4との間を水平移動するための車輪5を有し、ケージ3と各棚4は、それぞれパレット1の車輪5を案内するためのレール3a,4aを有している。
【0016】
ケージ3は、巻上げ装置6により上方から吊下げられ、昇降路2に沿って昇降する。またケージ3はパレット横行装置(図示せず)を備え、棚4との間でパレット1を横行させて、ケージ3から棚4へパレット1を移載し、或いは棚4からケージ3へパレット1を移載できるようになっている。
【0017】
上述した構成により、車両の入庫時において、入出庫部で車両をパレット1上に載せ、パレット1をケージ3に載せて昇降路2内を昇降し、昇降路2に沿って配置された複数の棚4の1つにパレット1を移載して、棚4上に車両を載せたパレット1を収納することができる。
また、逆に車両の出庫時には、ケージ3を昇降させて目的とする棚4で停止し、棚4からケージ3上にパレット1を移載し、入出庫部までケージ3を昇降し、入出庫部で車両をパレット1から出庫することができる。
【0018】
図2は、本発明によるパレット保持装置の正面図(A)とそのB−B矢視図(B)である。
図2(A)において、左側がケージ側(昇降路側)、右側が棚側である。
【0019】
図2(A)において、ケージ3には、ケージストッパ7が設けられている。ケージストッパ7は、図に実線で示す退避位置INと破線で示す突出位置OUTの間をケージ3に設けられた駆動装置(図示せず)からワイヤ等により一括接続され、駆動されることにより同時に揺動するようになっている。
【0020】
退避位置INにおいて、ケージ3が棚4との干渉なしに自由に昇降できるように、ケージストッパ7は、昇降路2の内側に位置する。
また、突出位置OUTにおいて、ケージストッパ7は、下面が水平に位置するストッパ部材7aと解放ストライカ7bとを有する。ストッパ部材7aは棚4に設けられた位置決め部材(図示せず)と突出位置OUTにおいて当接し、ケージ3の高さを正確に位置決めするようになっている。
また、解放ストライカ7bは、ケージ3の下降動作によりストッパレバー12(後述する)を揺動させて、規制部材14(後述する)を下降位置(実線)から上方の解放位置(破線)に揺動させるようになっている。
【0021】
ケージ3が昇降するときには、ケージストッパ7は、ばね装置(図示せず)により引込んだ状態になっており、昇降の邪魔にならない。一方所定の棚4で停止する場合にはケージストッパの水平面(図示せず)をストッパ受上面(図示せず)に当接させて停止位置の位置合せを行う。その場合停止位置の上方(例えば約60mm上)で一旦停止する。それからケージ3に設けられたシリンダ(図示せず)を作動させてケージストッパ7を突出させて突出状態としたまま、徐々にケージ3を停止位置まで下降させて位置合せを行う。
【0022】
図2において、各パレット1は、車輪5より幅方向外方に張り出したストッパピン8を有する。ストッパピン8はこの例で、断面が矩形の棒材であり、車輪5を支持するブラケット5aに内方端が固定されている。
【0023】
図2において、パレット保持装置10は、ストッパレバー12、規制部材14、付勢部材16、及び解放部材18を有する。
【0024】
ストッパレバー12は、レール4aに沿って延び、その中間部に車輪5の回転軸と平行な揺動軸12aを有し、揺動軸12aが棚4のケージ側端部に枢着され、揺動軸12aを中心に揺動可能に構成されている。
この図において、ストッパレバー12は、逆L字形であるが、本発明はこれに限定されずその他の形状(例えば逆V字形)であってもよい。
【0025】
規制部材14は、ストッパレバー12の棚側端部(図で右端部)に固定され、下方の下降位置(実線で示す)と上方の解放位置(破線で示す)の間を上下動するようになっている。また、規制部材14は、下方の下降位置(実線)でストッパピン8と係合してパレット1が昇降路2内に移動するのを防止するように構成されている。
【0026】
付勢部材16は、この例では、棚4とストッパレバー12の間を連結する引張バネであり、規制部材14を下降位置に向けて下方に付勢する。なお付勢部材16は、引張バネに限定されずその他の付勢装置、例えばコイルバネであってもよい。
【0027】
解放部材18は、ストッパレバー12のケージ側端部(図で左端部)に固定され、ケージ3に設けられた解放ストライカ7bと係合してケージ3の下降動作により、ストッパレバー12を図で左回りに揺動させて、規制部材14を下降位置(実線)から上方の解放位置(破線)に揺動させ、規制部材14とストッパピン8との係合を解放するようになっている。
【0028】
図2(A)において、規制部材14のストッパピン8との係合面14aは、係合面14aの垂線が、揺動軸12aより下方に向くように傾斜している。この傾斜角度は、この例では鉛直線に対し外方に10〜30度である。
しかし、本発明は、係合面14aの垂線が、揺動軸12aより下方に向く限りで、その他の角度であってもよい。
【0029】
図3は、本発明によるパレット保持装置の作動説明図であり、(A)は入出庫時以外、(B)は入出庫時を示している。
【0030】
図3(A)に示すように、入出庫時以外のときは、ケージストッパ7は退避位置INに位置するので、ケージ3は棚4との干渉なしに自由に昇降できる。
この場合、規制部材14は、付勢部材16により下降位置に向けて付勢されており、規制部材14のストッパピン8との係合面14aは、その垂線が、揺動軸12aより下方に向くように傾斜している。そのため、地震等によりパレット1が激しく衝突しても、その衝突力は揺動軸12aより下方に向くので、衝突力により発生するモーメントは規制部材14が下降位置に向けて揺動する方向(図で右回転方向)に作用する。
従って、パレット1の衝突力により、規制部材14が下降位置に強く保持されるので、入出庫時以外においてパレット1が昇降路2内に移動するのを確実に防止することができる。
【0031】
入出庫時には、ケージ3が対象とする棚4より上方まで上昇した後に、ケージストッパ7が退避位置INから突出位置OUTに揺動し、次いで、ケージ3を下降させるとストッパ部材7aの下面が棚4に設けられた位置決め部材(図示せず)と当接し、ケージ3の高さを正確に位置決めする。
この状態(図3(B)に示す)において、解放ストライカ7bは、ケージ3の下降動作により解放部材18と当接し、付勢部材16の付勢力に抗して解放部材18を下方に移動させ、ストッパレバー12を図で左回りに揺動させて規制部材14を下降位置から上方の解放位置に揺動させ、規制部材14とストッパピン8との係合を解放する。
【0032】
従って、上述の構成により、入出庫時以外のときは、パレット1の衝突力により、規制部材14が下降位置に強く保持されるので、入出庫時以外においてパレット1が昇降路2内に移動するのを確実に防止することができる。
また、入出庫時には、ケージ3の下降動作により、解放部材18がケージ3に設けられた解放ストライカ7bと係合して、規制部材14を下降位置から上方の解放位置に揺動させてストッパピン8との係合を解放するので、棚4上に車両を載せたパレット1を移載し、或いは棚4からケージ3上にパレット1を移載することができる。
【0033】
図4は、本発明によるパレット保持装置の規制部材14とストッパピン8を示す説明図である。この図において、ストッパピン8の規制部材14との係合面8aが、(A)は鉛直、(B)は規制部材14の係合面14aと平行、(C)は曲面の場合である。
【0034】
図4(A)に示すように、係合面8aが鉛直面の場合、規制部材14とストッパピン8は、係合面8aの下端で当接するため、その衝突力の発生点を低くすることができる。
図4(B)に示すように、係合面8aが規制部材14の係合面14aと平行、或いはほぼ平行な場合、その衝突力は確実に揺動軸12aより下方に向くので、衝突力により発生するモーメントは規制部材14が下降位置に向けて揺動する方向に作用する。
【0035】
図4(C)に示すように、係合面8aが曲面である場合、その衝突力は確実に規制部材14の係合面14aに直交する方向に向くので、衝突力により発生するモーメントを規制部材14が下降位置に向けて揺動する方向に確実に作用させることができる。
従って、図4(A)(B)(C)のいずれの場合でも、衝突力により発生するモーメントを規制部材14が下降位置に向けて揺動する方向に確実に作用させることができる。
【0036】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 パレット、2 昇降路、3 ケージ、3a レール、
4 棚、4a レール、5 車輪、5a ブラケット、
6 巻上げ装置、7 ケージストッパ、
7a ストッパ部材、7b 解放ストライカ、
8 ストッパピン、8a 係合面、
10 パレット保持装置、12 ストッパレバー、12a 揺動軸、
14 規制部材、14a 係合面、
16 付勢部材(引張バネ)、18 解放部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を載せるパレットを昇降路に沿って昇降させるケージと、昇降路に隣接して配置されケージから移載されたパレットを収容する棚とを備えた機械式立体駐車装置におけるパレット保持装置であって、
各パレットは、ケージと棚との間を水平移動するための車輪と、車輪より幅方向外方に張り出したストッパピンとを有し、
ケージと各棚は、それぞれパレットの車輪を案内するためのレールを有し、
前記パレット保持装置は、
レールに沿って延び、その中間部に車輪の回転軸と平行な揺動軸を有し、該揺動軸が棚のケージ側端部に枢着され揺動軸を中心に揺動可能であるストッパレバーと、
ストッパレバーの棚側端部に固定され、下降位置でストッパピンと係合してパレットが昇降路内に移動するのを防止する規制部材と、
規制部材を前記下降位置に向けて付勢する付勢部材と、
ストッパレバーのケージ側端部に固定され、ケージに設けられた解放ストライカと係合してその下降動作により規制部材を下降位置から上方の解放位置に揺動させてストッパピンとの係合を解放する解放部材とを有しており、
前記規制部材のストッパピンとの係合面は、その垂線が、前記揺動軸より下方に向くように傾斜している、ことを特徴とする機械式立体駐車装置におけるパレット保持装置。
【請求項2】
前記ストッパピンの規制部材との係合面は、鉛直、規制部材の係合面と平行、又は曲面である、ことを特徴とするパレット保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−83073(P2013−83073A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222921(P2011−222921)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)