説明

機械式駐車装置

【課題】パレット一枚につき3台の自動二輪車の駐車を可能とし且つ目的の自動二輪車だけを他の自動二輪車を出し入れすることなく簡便に入出庫し得る機械式駐車装置を提供する。
【解決手段】自動車を載せたパレットを搬送して建物内に駐車させる機械式駐車装置に関し、一部のパレットを自動二輪車専用のパレット1とし、該パレット1上の左右二列に前後方向に移動自在な一対の縦送りバイクパレット2,3を並設すると共に、該両縦送りバイクパレット2,3を入出庫口から見て奥側に縦送りすることで空く手前側のスペースに左右方向に移動自在な単一の横送りバイクパレット4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を載せたパレットを搬送して建物内に駐車させる機械式駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2006年6月の道交法改正以来、自動二輪車の駐車違反の取締りが強化された一方で自動二輪車用の駐車場の整備は十分に進んでおらず、自動二輪車用の駐車場の絶対的な不足が問題となっている。
【0003】
このため、自動車を載せたパレットを搬送して建物内に駐車させるようにした機械式駐車装置を自動二輪車にも開放し、自動二輪車を自動車と同じようにパレット上に収容して建物内に駐車させることが検討されている。
【0004】
尚、この種の自動車と自動二輪車を混在して収容できる機械式駐車装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−257071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、自動車用のパレットは、左右二列の縦列駐車の形態を採ることで計4台の自動二輪車を収容するスペースを備えているが、このように自動二輪車で縦列駐車の形態を採ってしまうと、奥側の自動二輪車に関して出庫要求があった場合に、手前側の自動二輪車が邪魔になって奥側の自動二輪車を出庫できないという不都合があり、単純にこれまでの自動車用のパレットを自動二輪車用に流用するだけでは、パレット一枚につき左右に一台ずつの計二台までしか自動二輪車を駐車できないため、自動二輪車の収容に該自動二輪車の駐車台数の半分の数のパレットが必要となり、自動二輪車の収容のために自動車の収容台数が大幅に抑制されてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、パレット一枚につき3台の自動二輪車の駐車を可能とし且つ目的の自動二輪車だけを他の自動二輪車を出し入れすることなく簡便に入出庫し得る機械式駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自動車を載せたパレットを搬送して建物内に駐車させる機械式駐車装置において、一部のパレットを自動二輪車専用のパレットとし、該パレット上の左右二列に前後方向に移動自在な一対の縦送りバイクパレットを並設すると共に、該両縦送りバイクパレットを入出庫口から見て奥側に縦送りすることで空く手前側のスペースに左右方向に移動自在な単一の横送りバイクパレットを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
而して、このようにすれば、各縦送りバイクパレットと横送りバイクパレットの上に自動二輪車を一台ずつ載せてパレット一枚につき計3台の自動二輪車の駐車が可能となり、しかも、パレットの手前側にある横送りバイクパレットへの自動二輪車の入出庫は、そのまま入出庫口から簡便に行うことが可能で、パレットの奥側にある縦送りバイクパレットへの自動二輪車の入出庫についても、その入出庫に邪魔になる手前側の横送りバイクパレットを横に移動させ、奥側から縦送りバイクパレットを手前側に引き出して自動二輪車の入出庫を簡便に行うことが可能である。
【0010】
更に、より具体的に本発明を実施するにあたっては、各縦送りバイクパレットをパレットの前後方向に案内する一対一組の縦行レールと、横送りバイクパレットをパレットの左右方向に案内する一対一組の横行レールとを備え、該横行レールに対し縦行レールを一段高く位相をずらして配置すると共に、縦行レールの前端より手前側に横行レールの一本を配置し且つ残りの一本を上面視で前記縦行レールの中途部と交差する位置に配置し、該縦行レールを前記中途部で分断して不連続部を形成すると共に、該不連続部より手前側の縦行レールを跨いで横送りバイクパレットが左右方向に移動し得るよう該横送りバイクパレットの前端と後端に支持脚を設けて該支持脚の下端を横送りローラを介し横行レールと係合し、前記縦行レールの不連続部を乗り越えて縦送りバイクパレットが前後方向に移動し得るよう該縦送りバイクパレットの側面を縦送りローラを介し縦行レールと係合することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明の機械式駐車装置によれば、パレット一枚につき計3台の自動二輪車を駐車することができ、しかも、目的の自動二輪車だけを他の自動二輪車を出し入れすることなく簡便に入出庫することができるので、パレット一枚につき左右に一台ずつの計二台までしか自動二輪車を駐車できなかった従来と比較して、自動二輪車の収容効率を大幅に向上することができ、自動車の収容台数を大きく落ち込ませることなく自動二輪車への駐車スペースの開放を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1のII−II方向の矢視図である。
【図3】図2のIII−III方向の矢視図である。
【図4】パレット上に3台の自動二輪車を駐車した状態を示す平面図である。
【図5】手前側の縦送りバイクパレットを奥側へ押し込んだ状態を示す平面図である。
【図6】手前側の横送りバイクパレットを横に移動した状態を示す平面図である。
【図7】奥側の縦送りバイクパレットを手前側に引き出した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1〜図7は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本発明は、自動車を載せたパレットを搬送して建物内に駐車させる形式を採用した機械式駐車装置であれば、垂直循環方式、多層循環方式、水平循環方式、エレベータ方式、エレベータ・スライド方式等の何れにも適用できるものであり、その特徴とするところは、一部のパレットを自動二輪車専用のパレットとして以下に詳述する如く構成した点にある。
【0015】
図1は機械式駐車装置における自動二輪車専用のパレット1を平面図で示したものであり、このパレット1上の左右二列(図1中の上下方向:自動車を積載した場合に車幅方向に相当する方向)に、前後方向(図1中の左右方向:自動車を積載した場合に車長方向に相当する方向)に移動自在な一対の縦送りバイクパレット2,3が並設されており、該両縦送りバイクパレット2,3を入出庫口から見て奥側(図1中の右側)に縦送りすることで空く手前側(図1中の左側)のスペースに、左右方向に移動自在な単一の横送りバイクパレット4が設けられている。
【0016】
より具体的には、パレット1上の左右二列に、パレット1の前後方向に延びる一対一組の縦行レール2r,3rが二組敷設され、該縦行レール2r,3rに沿い各縦送りバイクパレット2,3が案内されて移動するようになっており、また、パレット1上の手前側(入出庫口側)に、該パレット1の左右方向に延びる一対一組の横行レール4rが一組敷設され、該横行レール4rに沿い各横送りバイクパレット4が案内されて移動するようになっている。
【0017】
ここで、特に図2に示しているように、縦行レール2r,3rと横行レール4rとは、横行レール4rに対し縦行レール2r,3rが一段高く位相をずらして相互干渉しないように配置されており、また、前記横行レール4rのうちの一本が縦行レール2r,3rの前端より手前側に配置され、残りの一本が上面視(図1参照)で前記縦行レール2r,3rの中途部と交差する位置に配置されるようになっている。
【0018】
そして、前記横行レール4rの一本と交差している縦行レール2r,3rの中途部は分断されて所要間隔の不連続部5が形成されており、該不連続部5より手前側の縦行レール2r,3rを跨いで横送りバイクパレット4が左右方向に移動し得るように、該横送りバイクパレット4の前端と後端に支持脚6,7が設けられて該支持脚6,7の下端が横送りローラ8を介し横行レール4rと係合されている。
【0019】
即ち、横送りバイクパレット4の前端の支持脚6,7は、縦行レール2r,3rの前端より手前側を通過することで該縦行レール2r,3rとの干渉が回避され、横送りバイクパレット4の後端の支持脚6,7は、縦行レール2r,3rの不連続部5を通過することで該縦行レール2r,3rとの干渉が回避されるようになっている。
【0020】
更に、前記一対の横行レール4rは、互いに向き合う側へ溝形を開いたチャンネル材で構成されており、横送りバイクパレット4の前後端の支持脚6,7に装着した横送りローラ8が、該横送りローラ8の直径より若干大きめに設定された横行レール4rの溝形に嵌め込まれている。
【0021】
一方、特に図3に示しているように、前記二組設けられた一対の縦行レール2r,3rも、各組ごとに互いに向き合う側へ溝形を開いたチャンネル材で構成されており、縦送りバイクパレット2,3の側面に装着した縦送りローラ9,10が、該縦送りローラ9,10の直径より若干大きめに設定された縦行レール2r,3rの溝形に嵌め込まれている。
【0022】
ここで、縦送りバイクパレット2,3の前端側の側面には、前記縦行レール2r,3rの不連続部5より広いスパンで一対の縦送りローラ9,10がタンデムに配置されており、前記縦行レール2r,3rの不連続部5を乗り越える際に、常に前後何れかの縦送りローラ9,10が縦行レール2r,3rの溝形への係合を保持するようになっていて、縦送りバイクパレット2,3が支障なく縦行レール2r,3rの不連続部5を乗り越えられるようにしてある。
【0023】
また、各縦送りバイクパレット2,3及び横送りバイクパレット4の前端には、特に図2に示しているように、起立状態で格納され且つ自動二輪車の入出庫時に手前側に倒伏させて各縦送りバイクパレット2,3及び横送りバイクパレット4とプラットフォームのグランドレベルとの段差を傾斜面で連続させる入出庫ラダー11,12,13が装備されている。
【0024】
尚、図1〜図3では図示を省略しているが、各縦送りバイクパレット2,3及び横送りバイクパレット4には、夫々を縦行レール2r,3r上及び横行レール4r上の適宜な箇所で位置決めするロック機構が備えられている。
【0025】
このような自動二輪車専用のパレット1を採用して機械式駐車装置を構成すれば、図4に示す如く、一台の自動二輪車Aを載せた一方の縦送りバイクパレット3を奥側に押し込み、その後に一台の自動二輪車Bを載せた横送りバイクパレット4を移動させ、該横送りバイクパレット4の移動により空いたスペースに他方の縦送りバイクパレット2を手前側に引き出して一台の自動二輪車Cを載せることによって、パレット1一枚につき計3台の自動二輪車A,B,Cを駐車することが可能となる。
【0026】
そして、図4の満車状態から手前側に並ぶ二台の自動二輪車B,Cの何れかに出庫要求があった場合には、そのまま縦送りバイクパレット2及び横送りバイクパレット4から支障なく自動二輪車B,Cを降ろすことが可能であるが、パレット1の奥側にある縦送りバイクパレット3の自動二輪車Aに出庫要求があった場合には、手前側の横送りバイクパレット4が邪魔になるので、図5に示す如く、手前側の縦送りバイクパレット2を奥側へ押し込み、次いで、図6に示す如く、前記縦送りバイクパレット2の奥側への押し込みにより空いたスペースに横送りバイクパレット4を移動させ、図7に示す如く、奥側の縦送りバイクパレット3を手前側に引き出して自動二輪車Aを出庫されば良い。
【0027】
尚、以上は出庫について説明したが、入庫についても同様であり、例えば、図4の状態で手前側の縦送りバイクパレット2及び横送りバイクパレット4が既に自動二輪車B,Cを収容していて、奥側の縦送りバイクパレット3のみが空いているような場合には、前述の図4〜図7の手順で奥側の縦送りバイクパレット3を手前側に引き出して自動二輪車Aを入庫させることが可能である。
【0028】
以上に述べた通り、本形態例によれば、パレット1一枚につき計3台の自動二輪車A,B,Cを駐車することができ、しかも、目的の自動二輪車だけを他の自動二輪車を出し入れすることなく簡便に入出庫することができるので、パレット1一枚につき左右に一台ずつの計二台までしか自動二輪車を駐車できなかった従来と比較して、自動二輪車の収容効率を大幅に向上することができ、自動車の収容台数を大きく落ち込ませることなく自動二輪車への駐車スペースの開放を図ることができる。
【0029】
尚、本発明の機械式駐車装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 パレット
2 縦送りバイクパレット
2r 縦行レール
3 縦送りバイクパレット
3r 縦行レール
4 横送りバイクパレット
4r 横行レール
5 不連続部
6 支持脚
7 支持脚
8 横送りローラ
9 縦送りローラ
10 縦送りローラ
A 自動二輪車
B 自動二輪車
C 自動二輪車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車を載せたパレットを搬送して建物内に駐車させる機械式駐車装置において、一部のパレットを自動二輪車専用のパレットとし、該パレット上の左右二列に前後方向に移動自在な一対の縦送りバイクパレットを並設すると共に、該両縦送りバイクパレットを入出庫口から見て奥側に縦送りすることで空く手前側のスペースに左右方向に移動自在な単一の横送りバイクパレットを設けたことを特徴とする機械式駐車装置。
【請求項2】
各縦送りバイクパレットをパレットの前後方向に案内する一対一組の縦行レールと、横送りバイクパレットをパレットの左右方向に案内する一対一組の横行レールとを備え、該横行レールに対し縦行レールを一段高く位相をずらして配置すると共に、縦行レールの前端より手前側に横行レールの一本を配置し且つ残りの一本を上面視で前記縦行レールの中途部と交差する位置に配置し、該縦行レールを前記中途部で分断して不連続部を形成すると共に、該不連続部より手前側の縦行レールを跨いで横送りバイクパレットが左右方向に移動し得るよう該横送りバイクパレットの前端と後端に支持脚を設けて該支持脚の下端を横送りローラを介し横行レールと係合し、前記縦行レールの不連続部を乗り越えて縦送りバイクパレットが前後方向に移動し得るよう該縦送りバイクパレットの側面を縦送りローラを介し縦行レールと係合したことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219946(P2011−219946A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88262(P2010−88262)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)