説明

機械感覚性神経終末刺激の装置、システムおよび方法

機械感覚性神経終末を刺激する装置は、内部チャンバ、ならびに、第1の開口部および第2の開口部を有するハウジングと、ハウジングの第1の開口部を覆い、振動機構部からの振動刺激を受容して振動する十分に柔軟性がある膜と、振動機構部に流体連結されるように構成される第2の開口部にある継手機構部とを含み、装置全体が磁気非応答性材料で構成される。ハウジングは、円筒形、または、いずれかの多角形状であることが可能である。膜は、ハウジングと一体化されるか、または、例えば、接着剤を用いてハウジングに連結されることが可能である。場合によっては、膜は、ハウジングに取り外し自在に連結することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2009年8月26日に出願された米国仮特許出願第61/237211号の利益を主張し、この仮出願は、その内容全体を具体的な参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、米国国立保健研究所によって授与されたNIH ROI DC003311と、NIH P30 HD0258と、NIH P30 DC005803とに基づく国庫補助で行われた。
米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
適応とは、繰り返し感覚刺激に起因した神経感度の低下による影響を受ける動的プロセスであり、生物のミリ秒から寿命まで変動する広範囲の時間的スケールに亘る可能性がある。
適応に起因する感覚応答の減衰は、感覚系(視覚と聴覚と臭覚と体性感覚と)における共通の仕組みであり、この共通の仕組みは、(刺激強度および刺激頻度のような要因に依存するので)刺激に固有であり、また、この減衰は、一般に皮質下レベルより皮質レベルで著しい(Chungら、2002)。
感覚系は、広範囲の環境の感覚刺激を表現するために、明確な個数の出力を有するので、適応は、種々の範囲の刺激を符号化するために、限定された出力の組を動的に再割り当てすることが不可欠であると考えられる。
したがって、感覚系における適応を監視するための調査を実施する装置およびシステムが研究され、開発されている。
【0004】
感覚性神経終末を活性化するための、皮膚を通じた電流の供給が研究されたが、電流は、不自然な形態の刺激であり、深層受容器と表層受容器とからの線維を活性化する間に、末梢性機械受容器を迂回することがある(Willis&Coggeshall、1991)。
この刺激のアプローチは、スペクトルに基づく神経線維の電気インピーダンスの差に起因する求心性動員のパターンの変更と、刺激部位に近接した遠心性神経線維の付随的な活性化とを潜在的にもたらす可能性がある。
さらに、脳磁図(MEG)走査などの生体磁気学的手法が皮質応答適応を研究するために使用される場合、電気刺激は、脳磁界記録の際に干渉の発生源を生じさせる。
さらに、振動刺激を与えるための圧電トランスデューサが、研究され、優れた周波数応答を有している。
しかし、圧電トランスデューサは、変位振幅が限られ、圧電結晶を動作させるために大きいソース電流を必要とする。
MEGセンサアレイがこれらのトランスデューサに接近すると、実質的な電気干渉が生じる。
ディスク振動子(Kawaharaら、2004およびShirahashiら、2007)が、振動刺激を与えることができるが、単一周波数で動作し、複数のノイズ源(電気、磁気、音響)のためにMRIおよびMEGに不適合である。
最近では、空気圧マニホールドが、MRIスキャナにおいてエアパフ(Huangら、2007)およびフォン・フライ式フィラメント(Dreselら、2008)を使用して、触覚刺激を発生させるために使用された。
しかし、参加者に器具を装着するために要する時間が、プロトコルへの専念を制限する可能性があり、刺激セッション中の顔、または、手足の動きが、刺激の部位を変更するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、感覚系における適応を監視するための研究を実施するための改良型装置およびシステムが継続的に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施例では、機械感覚性神経終末を刺激する装置が、内部チャンバ、ならびに、第1の開口部および第2の開口部を有するハウジングと、ハウジングの第1の開口部を覆い、振動機構部からの振動刺激を受容して振動する十分に柔軟性がある膜と、振動機構部に流体連結されるように構成される第2の開口部にある継手機構部とを含むことができ、装置全体が磁気非応答性材料で構成される。
ハウジングは、円筒形、または、いずれかの多角形状であることが可能である。
膜は、ハウジングと一体化されるか、または、例えば、接着剤を用いてハウジングに連結されることが可能である。
場合によっては、膜は、ハウジングに取り外し自在に連結することが可能である。
【0007】
一実施例では、装置は、貫通するアパーチャを有する蓋部を含むことができる。
蓋部は、膜をハウジングに連結するように構成することができる。
蓋部およびハウジングは、蓋部がハウジングに締まることができるように対応する留め具を含むことができる。
対応する留め具は、スナップ継手、さねはぎ、対応するネジ山、接着剤、または、クリップのうちの1つ、または、複数を含むことができる。
【0008】
一実施例では、振動刺激を受容する継手機構部は、内部チャンバを振動機構部へ流体連結する流体継手機構部を含むことができる。例えば、継手機構部は、ルアーロックを含むことができる。場合によっては、継手機構部は、ハウジングの壁に配置することができる。別の選択肢では、継手機構部は、内部チャンバに関して膜の反対側に配置することができる。
【0009】
一実施例では、装置は、継手機構部に連結されるとともに、振動機構部に連結することができる管を含むことができる。
管は、この管の反対端部が磁気応答性コンポーネントを有するコンポーネントに連結することができるようにMRI、または、MEGの磁界の外に延在するための十分な長さを有し、磁気応答性コンポーネントは、磁界に反応しない。
【0010】
一実施例では、膜は、ハウジングの断面外形に対応する断面外形を有している。
一態様では、膜は、柔軟弾性、および/または、伸縮性がある。
一態様では、膜は、約0.5mm未満の厚さである。
別の態様では、膜は、約0.127mm、すなわち、約0.0005インチ未満である。
膜の厚さは、著しく変化する可能性がある。
膜は、皮膚機械受容器を活性化するために十分に振動するように構成され、皮膚機械受容器は、その後、一次体性感覚経路に沿って神経インパルスを運び、脳内で符号化される。
膜は、少なくとも1mmの正の振動変位を有することができる。
好ましくは、振動変位は、少なくとも約4mmである。
【0011】
一実施例では、本発明は、機械感覚性神経終末を刺激するシステムを含むことができる。
かかるシステムは、本明細書中に記載された装置と、装置の継手機構部と流体連結されるように構成される振動機構部と、装置を振動機構部に流体連結するように構成される磁気非応答性管とを含むことができる。
【0012】
一実施例では、振動機構部は、膜を振動させるために、または、流体内の圧力変化を引き起こすために流体をチャンバの中へ、および/または、チャンバから外へ揺動させるように構成される。
場合によっては、振動機構部は、サーボ・モータを含むことができる。
一態様では、振動機構部は、継手機構部と流体連結される磁気非応答性管と流体連結される。
【0013】
一実施例では、システムは、振動機構部と動作的に連結することができるコンピューティングシステムを含むことができる。
一態様では、コンピューティングシステムは、振動機構部と動作的に連結される。
【0014】
一実施例では、システムは、MRIシステムを含む。
【0015】
一実施例では、システムは、MEGシステムを含む。
【0016】
一実施例では、本発明は、機械感覚性神経終末を刺激する方法を含むことができる。
かかる方法は、本明細書中に記載されているような装置、または、システムを準備することと、被検者の皮膚に膜を設置することと、皮膚上の膜を揺動させることとを含むことができる。
【0017】
一実施例では、機械感覚性神経終末は、MRI内で刺激される。
【0018】
一実施例では、機械感覚性神経終末は、MEG内で刺激される。
【0019】
一実施例では、機械感覚性神経終末は、理学療法の一部として刺激される。
【0020】
一実施例では、刺激は、発達性感覚運動障害、または、傷害を伴う患者の運動リハビリテーションを目的とする。
【0021】
いずれかのテストの間に、この方法は、神経終末刺激の間に被検者の脳を監視することを含むことができる。
【0022】
本発明の上記実施例および特徴、ならびに、その他の実施例および特徴は、以下の説明および添付図面からさらに十分に明らかになり、または、後述されるように発明の実施によって分かることがある。
【0023】
本発明の上記利点および特徴、ならびに、その他の利点および特徴をさらに明確にするために、本発明のさらに詳しい説明が、添付図面に示される発明の具体的な実施例を参照することによって表される。
これらの図面は、本発明の例示された実施例だけを表し、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきでない。
本発明は、添付図面の使用によってさらなる特定性と詳細さを用いて記載、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】一人の被検者に対するソース再構成結果を表す、脳MRI画像(パネルAおよびB)を含む図であって、双極子が唇刺激に応答して両側に局在化し(パネルA)、双極子が右手刺激に対して対側に局在化し(パネルB)、双極子の位置および配向が、(軸方向および冠状に)直交するMRIスライスに示されている図である。
【図1B】一人の被検者に対するソース再構成結果を表す、周波数に対する触覚刺激応答(パネルA−F)を含むグラフであって、双極子の位置および配向が、(軸方向および冠状に)直交するMRIスライスに示され、時間に対するS1双極子強度がパネルの右側の刺激速度毎に示されているグラフである。
【図2A】唇刺激に対する2Hz、4Hzおよび8Hzでの一次体性感覚皮膚(S1)ピーク双極子強度の比較を示すグラフである。
【図2B】手刺激に対する2Hz、4Hzおよび8Hzでの一次体性感覚皮膚(S1)ピーク双極子強度の比較を示すグラフである。
【図3A】2Hzの唇刺激と手刺激とに対するS1ピーク双極子強度遅延時間の比較を示すグラフである。
【図3B】4Hzの唇刺激と手刺激とに対するS1ピーク双極子強度遅延時間の比較を示すグラフである。
【図3C】8Hzの唇刺激と手刺激とに対するS1ピーク双極子強度遅延時間の比較を示すグラフである。
【図4A】ポリエチレンシリンダと、厚さ0.005インチのシリコーン膜と、セル(cell)をサーボ制御型空気圧ポンプに連結するルアー管フィッティングとを表すTAC−Cell装置の実施例を示す図である。
【図4B】ポリエチレンシリンダと、厚さ0.005インチのシリコーン膜と、セルをサーボ制御型空気圧ポンプに連結するルアー管フィッティングとを表すTAC−Cell装置の実施例を示す図である。
【図5】TAC−Cell刺激制御システムの概略図である。
【図6】サンプルの刺激電圧パルスおよび対応するTAC−Cell変位応答を示すグラフを含む図であり、TAC−Cellの機械応答時間(MRT)が、17msである。
【図7】MEG記録セッション前に両面接着テープを使用して上唇赤唇部と下唇赤唇部との正中線に固定されたTAC−Cell装置を示す図であって、TAC−Cell装置が、右手の無毛皮膚表層(人差し指および中指)および顔の口角などの他の身体部にも固定されている図である。
【図8】MEGセッションの間にTAC−Cell空気サーボコントローラへの入力として使用されるパターン化された刺激トレインを示す図であって、2Hz、4Hzおよび8Hzの125個のパルストレインが、別個の系列で手および顔下側の無毛皮膚に印加され、各パルストレインが、トレイン速度とは無関係に6個の50msパルスで構成されている図である。
【図9A】2Hzに関して秒単位の時間に対してミリメートル単位でTAC−Cell変位を表すグラフである。
【図9B】4Hzに関して秒単位の時間に対してミリメートル単位でTAC−Cell変位を表すグラフである。
【図9C】8Hzに関して秒単位の時間に対してミリメートル単位でTAC−Cell変位を表すグラフである。
【図10】2Hz、4Hzおよび8Hzにおける顔刺激と、刺激への適応を表す平均大域的場ポテンシャル皮膚MEG応答の対応する減少とを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一般に、本発明は、皮膚刺激振動によって供給された合成空気皮膚刺激のトレインに応答して、(例えば、人の手と唇との刺激振動を使用する)神経系一次体性感覚皮膚S1の短期適応パターンを比較し、特徴付けるために、ミリ秒単位の皮膚刺激振動を用いるMEG手法のかなり高い時間分解能を使用することに関する。
MEGの空間分解能は、唇と下と指と手とを含む人体のS1表現をマッピングするのに十分であることを明らかにしたが、同様に他の身体部にも使用することができる。
従来の研究は、振動触覚適応の仕組みが手と顔との両方に存在することを明らかにしたが、人への繰り返しの点状機械的刺激に対する手、または、顔S1のいずれかの短期適応の仕組みに関して殆ど知られていない。
刺激振動は、MRI/MEG適合性触覚刺激セル(TAC−Cell)を使用して誘発することができる。
繰り返しの皮膚振動刺激は、誘発脳磁S1応答の中に現れる短期適応の周波数依存パターンをもたらすことができることが考えられる。
機械受容器神経反応と運動反応における機能との基本的な差のために、顔と手との適応パターンの時空間特性の間に著しい差が存在する可能性があることも考えられる。
【0026】
TAC−Cell装置は、一次体性感覚皮膚(S1)の内部の脳磁応答適応パターンを研究するために、パターン化された皮膚刺激を顔と手とに非侵襲的に送り出すことができる。
個別のTAC−Cellは、本明細書中に記載されているように、右手の無毛表層と、上唇赤唇部と下唇赤唇部との正中線などのいずれかの皮膚体表面に配置することができる。
151チャネルの脳磁図(MEG)スキャナが、TAC−Cellによって供給される触覚刺激に対する皮膚応答を記録するために使用でき、この触覚刺激は、TAC−Cellの活性膜表面を通して3個の異なる周波数で送り出される繰り返しの6パルストレインによって構成される。S1内の誘発活性(手刺激に対する対側性および唇刺激に対する両側性)は、最先の突出した応答成分の最良適合双極子から特徴付けることができる。
S1応答は、点状空気刺激トレインの周波数と刺激部位(無毛唇に対する無毛手)との関数として、著しい変調および適応を明らかにした。
【0027】
TAC−Cellは、MRI/MEGスキャナ環境において点状のスケーラブル刺激を使用して、ヒトの体性感覚脳経経路を活性化するのに役立つ可能性がある。
TAC−Cellは、神経刺激の適用において、非侵襲性であり、かつ、効果的であり得る。
【0028】
したがって、本発明は、顔と手との皮膚内の機械感覚性神経終末を刺激するためのTAC−Cellを使用する装置、システムおよび方法を含む。この装置は、非磁性応答材料(例えば、反強磁性、非フェリ磁性、非反磁性、または、他の類似する材料などの磁界に反応しない材料)から調製される。
このような刺激は、磁気共鳴画像化(MRI)および脳磁図(MEG)脳センサなどの脳画像化機器で使用することができる。
使用中に、この装置は、神経を刺激し、これにより、末梢神経刺激中に脳応答の画像化が可能になる。
【0029】
この装置は、開口部の上にマイクロ膜が嵌め込まれる一方の開放端部を有するとともに、膜の上に嵌り、シリンダに留まるアパーチャ付きのキャップを有する容器を含むことができる。
この容器は、容器の内部に入り、そして、内部から出る流体(例えば、液圧液体、または、空気などの空気圧ガス)を受け入れるためのフィッティング付きの別の開口部をさらに有し、圧力の動きに応答した圧力の変化が、マイクロ膜をドラムのように振動させる。
開口部とフィッティングとは、空気などのような流体を供給できる圧力源に結合するように構成することができ、チャンバの中へ、そして、チャンバから外へ流体を急速に揺動させることによって振動を引き起こす。
TAC−Cellは、成人と小児の運動障害においてかなりの可能性を有する神経治療介入装置として使用することができる。
TAC−Cellは、本明細書中で記載されるように振動刺激を与えるための別の構成を有することができ、MR1、および/または、MEGに適合するように動作することができる。
【0030】
TAC−Cellは、ヒトの脳画像化と潜在的な運動リハビリテーション用途のために顔と手の皮膚、または、他の身体部の中の機械感覚性神経終末を刺激するために使用することができる。
TAC−Cellは、(1)発達性感覚運動疾患をもつ患者および(2)持続性脳血管発作を有する成人の運動リハビリテーションのための臨床的な研究の場面で使用することができる。TAC−Cellの他の使用として、物理療法において、脳スキャン中に、または、脳波図と組み合わされて、脳活動を監視することなどがさらに考えられる。
【0031】
TAC−Cellは、空気圧装置からもたらされる空気圧変化に応答して振動するように構成された膜を有する小径空気圧アクチュエータとして構成することができる。
TAC−Cellは、MRI/MEGと適合性をもち、非侵襲性であり、かつ、神経損傷/疾患の有無にかかわらず、成人と小児の両方に適するように構成することができる。
一実施例では、TAC−Cellは、磁気応答性ではない材料から調製された円筒(例えば、直径19.3mm)チャンバ(例えば、ポリエチレン瓶)から調製することができ、振動膜が円筒チャンバ内の流体圧力変化に応答して振動することができるように、円筒チャンバの開口部に取り付けられた振動膜(例えば、0.005インチのシリコーン膜シート)を含むことができる。
例えば、振動膜は、円筒チャンバのリップ部とリテーニングリングとの間に設置することができる。
しかし、他の連結構造が、膜をチャンバに接着することなどにより振動膜を円筒チャンバに連結するために使用することができる。
これらのサイズパラメータは、約0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、3mm、5mm、または、より一層大きい、2cm、5cmまでおよびできる限り一層大きい直径(または、シートの断面寸法)まで変化させることができる。
また、TAC−Cellチャンバ、および/または、膜の材料は、磁気非応答性である限り、いろいろであってもよい。
すなわち、TAC−Cellの材料は、磁気応答性ではない。
したがって、チャンバは、様々なポリマーとセラミックとから調製することができ、膜は、ポリマーといくつかのゴムとから調製される。
材料の変動は、磁気非応答特性を維持していれば、無数の材料を用いて達成することができる。
【0032】
TAC−Cellは、膜を振動させる振動流体を供給する空気圧装置などの他のコンポーネントを含むTAC−Cellシステムに含まれることが可能である。
また、TAC−Cellシステムは、MRI、および/または、MEGシステム、または、他のスキャナを含むことができる。
一実施例が、TAC−Cellによって生成された空気圧触覚刺激に対する皮膚神経磁気応答を記録するように構成される151チャネルCTF MEGスキャナを含む。
空気圧装置は、TAC−Cellに繰り返しの6パルストレイン(50msパルス幅、トレイン間隔=5s、125回繰り返し/トレイン速度、トレイン速度[2Hz、4Hzおよび8Hz、図8を参照])を含む振動刺激を供給するため構成することができるが、空気圧触覚刺激の他の変形およびパターンを実行することが可能である。
【0033】
TAC−Cell装置/システムは、TAC−Cellを皮膚上で被検者に固定する留め具を含むことが可能である。
このような留め具の一実施例は、接着剤、ストラッピング、クランプ、接着カラー、両面接着カラーテープ、または、被検者へのTACセルのアタッチメントに使用できる接着剤、クリップ、ラッピング、包帯などのような他のタイプの鉄を含まないアタッチメントを含む。
留め具は、顔、手、指、指先、手のひら、足、足の裏、腕、脚、胴、または、いずれかの他の場所などの皮膚の上の様々な場所でTAC−Cellを固定するように構成することができる。
例えば、TAC−Cellを一部の皮膚の場所に保持するように留め具を構成することができる一部の皮膚の場所は、右手の無毛表層(人差し指/中指)および上唇赤唇部と下唇赤唇部との正中線を含むことができる。
【0034】
単一のTAC−Cellは、被検者の皮膚のいずれの部分にも取り付けることが可能である。代替的に、TAC−Cell装置のアレイは、被検者の皮膚の1つ、または、複数の部分に取り付けることができる。
【0035】
さらに、本発明は、顔および手、または、身体の他の部分における見かけの動きと方向とに関連付けられた感覚上の体験をシミュレートするために使用できるマルチチャネルTAC−Cellアレイ(例えば、複数のTAC−Cell装置)を含むことができる。
TAC−Cellアレイは、(例えば、一方の隣接TAC−Cellから別のTAC−Cellまでの10msのような短時間の遅延付きで)順番に活性化できる空間パターンに設置された数個のTAC−Cellを含んでもよい。
代替的に、設置および活性化は、無作為であること、または、予め設計することが可能である。
TAC−Cellアレイは、顔の運動(発話、嚥下、ジェスチャ)および手の運動(操作)に影響を与える急性脳血管発作に罹っている患者の脳可塑性および脳再生の仕組みを誘発し、加速するための新しい形の神経治療刺激(介入)として使用することができる。
【0036】
TAC−Cellは、他の変形例および実施例の形をとることができる。例えば、TAC−Cellは、「ドーム状」膜と、テクスチャ付きの膜と、(例えば、リテイナーカラー無しに)TAC−Cell本体に統合された膜と、空気圧サーボコントローラおよび高速空気圧スイッチ(バルブ)の小型化が利用できるときに実現可能であることと、マイクロサーボ、または、ポンプなどの膜を移動させる統合型揺動機能と、他の様々な特徴が修正可能であることとを有することができる。
TAC−Cellは、潜在的に、サーボ電子回路によって駆動することができる可能性がある。
【0037】
同様に、TAC−Cellは、TAC−Cell装置から離れて設置された磁気応答性空気圧装置によって駆動することができ、磁気非応答性管は、TAC−Cellを空気圧装置と流体連結することができる。
【0038】
TAC−Cell膜は、皮膚で振動刺激を生成するために、空気圧装置の空気圧サーボ制御によって揺動させることが可能である。
磁気非応答性材料から調製された流体導管は、膜を振動させるために振動流体をTAC−Cellへ送ることができる。
TAC−Cellの活性「脈動」表面は、皮膚への点状機械的入力を生成するために使用することができ(例えば、振動は、25msの立ち上がり/立ち下がり時間をもつ4.25mmの変位である可能性があり)、立ち上がり時間および揺動は、流体揺動、ならびに、膜の断面外形およびサイズに応じて変化する可能性がある。
しかし、寸法パラメータ、揺動パラメータ、材料パラメータ、または、他のパラメータのすべては、妥当な範囲内で変化させることができる。
【0039】
図4A〜図4Bに示すように、TAC−Cell装置400の一実施例は、内部チャンバ402a付きのハウジング402と、チャンバ402aの1つの開口部404を覆う膜403とを有し、膜403は、振動機構部に応答して振動するように構成される。
図示のように、選択可能な環状リング405が、膜403をハウジング402に連結して開口部404を覆うために使用される。
TAC−Cell装置400は、ハウジング402に連結されるネック部406を含むことができ、ネック部406は、チャンバ402aから開口部412まで延在する内部ルーメン408を有することができる。
ネック部406は、例えば、管を介して、空気圧装置に連結することができる継手コンポーネント410を開口部412でさらに有することができる。
継手コンポーネント410は、例えば、ルアーフィッティングとして構成することができる。
【0040】
一実施例では、ハウジング402と、膜403と、リング蓋部404(膜がハウジングと一体化されていない場合、アパーチャを含む)と、ネック部406と、継手コンポーネントとは、磁気応答性をもたない限り、プラスチック、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、セラミックなどでもよい。
【0041】
図5は、TAC−Cellシステムの実施例を示す。
図示のように、TAC−Cellは、空気圧ラインを介してサーボ・モータに流体連結されている。
サーボ・モータは、サーボ・モータ・コントローラに動作的に連結されている位置センサを含むことができる。
また、サーボ・モータ・コントローラは、16ビットADC/DAC付きのような中央処理ユニット(CPU)からの入力を受信することができる。
さらに、サーボ・モータ・コントローラは、サーボ・モータに供給される前にサーボ・モータ・コントローラからの信号を増幅できる増幅器に動作的に連結することができる。
したがって、TAC−Cellは、制御可能であり、磁気非応答性空気圧ラインを介して離れたサーボ・モータからの流体空気圧振動を受けとることができる。
【0042】
その結果、TAC−Cell402は、揺動動作を発生させるための外部振動機構部(例えば、サーボ・モータ)に接続することができるチャンバ402aとの間に流体継手を有することができる。
サーボは、膜403を駆動するための圧力を調節し、発生させる高性能サーボシステムでもよい。
サーボ、または、他の振動機構部は、ハウジング402と膜403とから非常に遠くに配置することができるので、ハウジング402および膜403と関連付けられた金属コンポーネント、または、他の磁気応答性コンポーネントが存在せず、このことが、脳スキャナでの使用を可能にする。
【0043】
一実施例では、ハウジングは、標本瓶、または、化学薬品瓶のような標準的な瓶に類似していてもよい。
瓶蓋部は、開口部(アパーチャ)が蓋部に形成され、膜(例えば、厚さ5000分の1インチのシリコーン膜)が瓶の蓋部を覆い、キャップの開口部を通じて振動することができるように加工することができる。
ハウジングは、ルアーフィッティングなどの流体継手機構部を含むように構成することができる。
流体継手機構部は、ハウジングの底に配置してもよく、または、ハウジング内のどこか他の場所に配置してもよい。
流体継手(例えば、ルアー・ロック・フィッティング)は、他端部で振動機構部に流体連結されているシリコン管、または、他の磁気非応答性管を受け入れることができる。
【0044】
振動機構部は、TAC−Cellの内側の圧力が制御され、非常に正確に制御されるために、コンピュータ制御型(例えば、CPU)でもよい。
振動機構部は、TAC−Cellを駆動することができ、膜は非常に急速に移動させられるので、膜は、隆起し、または、シリンダの中へ吸い込まれ、10〜90%立ち上がり/立ち下がり時間が25msの規模でもよい。
25000分の1秒の間に、膜は、膜の寸法に応じて3.6mm、または、他の寸法に亘って移動可能であり、これは、皮膚の表面に非常に頑強性のある刺激を生成し、この刺激は、次に、皮膚の中の体性感覚神経を駆動する。
【0045】
従来、MRI、または、MEGにおいて刺激を与えることは、MRI、または、MEGのような磁気環境において体性感覚系を刺激することに付随する問題のために困難であった。
磁気非応答性TAC−Cellは、磁界による障害を受けることなく、皮膚刺激、または、触覚刺激を与えることができる。
これにより、皮膚上で圧力変化を感じることが可能になり、医療専門家が、皮膚に圧力変化を受けている被検者の脳の内部で何が起こっているかを知ることが可能になる。
TAC−Cellは、2つのスキャナ手法、すなわち、MRIとMEGとを使用して、ヒトの神経系の経路全体を客観的にテストする方法を提供することができる。
TAC−Cellの感覚は、刺激が非常に高速で断続的に到来するので、皮膚上のタッピングと類似する。
膜刺激器は、約30Hzまでの優れた周波数応答を有する。
本明細書中の実施例は、2Hz、4Hzおよび8Hzを示す。
TAC−Cellは、皮膚表層を振動させ、皮膚内の数千個の感覚神経末端を活性化せることができ、この感覚神経末端は、脊髄、または、脳幹を介して、その後、最終的に、視床まで達し、体性感覚皮質へ伝えられる神経斉射(信号)を送る。
【0046】
その結果、TAC−Cellは、MRI適合性およびMEG適合性がある体性感覚刺激器のための空気圧触覚刺激セル膜を提供し、ヒトの神経磁気皮膚反応刺激に使用することができる。
TAC−Cellは、魚類、鳥類、爬虫類、哺乳類などのような任意の動物と共に使用することもできる。
【0047】
TAC−Cellは、特に、ヒトの脳内の三叉神経−視床皮質(顔)体性感覚経路および内側毛帯−視床−皮質(手−前肢/足−後肢)体性感覚経路の完全性と、神経適応の特性とをマッピングするためのMRI走査手法およびMEG走査手法を使用する脳機能の基本的な神経学的評価のために使用することができる。
【0048】
TAC−Cellは、TAC−Cell振動刺激への脳応答をマッピングするためにMEGスキャナを使用して、動物を研究するために使用することができる。
TAC−Cellは、ヒトの脳内の体性感覚経路の活性化のために使用することができる。
【0049】
図10は、図中で、空気圧ポンプを駆動するために役立つサーボ制御型刺激波形を示し、この空気圧ポンプは、次に、TAC−Cell内の圧力を変調する。
サーボ制御型刺激波形は、離散的、迅速なパルスであり、これらのパルスは、わずか数ミリ秒の持続時間しかない。
下側のトレースにおける波形は、脳神経磁界応答を示す。
顔刺激に対して図示のように、脳は、各刺激パルス後に約50ms以内で興奮している。
【0050】
TAC−Cellは、脳スキャンにおいて高度に認識できる刺激であるように脳を刺激することができる(図1Aを参照)。
TAC−Cell装置は、病変を詳細にマッピングして診断するのに有用であり、神経信号経路が遮断されているかどうかを判定するために使用することができる。
さらに、TAC−Cell装置は、患者が発作中に損傷を受けているかどうかを識別することができる。
TAC−Cellは、損傷した脳のリハビリテーションにも使用することができる。
したがって、TAC−Cellは、神経系を活性化するとともに、脳が損傷した後に脳を配線し直すのに役立つ治療的刺激として使用することができる。
【0051】
物理療法では、TAC−Cellは、電気刺激器を置き換えるのに使用することができる。
電気刺激器による1つの欠点は、この電気刺激器は、神経細胞が回復される順序を逆転することである。
別の欠点は、電気刺激が感覚線維活性化と運動線維活性化とを区別しないことである。
電流を皮膚に取り入れると、電流刺激に対し最低閾値をもつニューロンが最初に興奮し、感覚ニューロン、および/または、運動ニューロンの混合された活性化を伴うことがある。
TAC−Cellは、この問題を解消し、機械受容性の求心性ニューロンを選択的に活性化し、運動ニューロンを直接的に刺激しない。
自然な形の皮膚刺激(すなわち、電流の使用ではなく、触覚、圧力、振動)の下で、正常な回復順序およびニューロンタイプが保存される。
TAC−Cellは、高速順応のタイプI(FA I)およびタイプII(FA II)と関連付けられたAR一次求心神経と、皮膚の中で見つけられ、触覚、振動、テクスチャおよび皮膚ストレッチを符号化する低速順応(SA IおよびSA II)感覚神経線維とを選択的に刺激するのに特に十分に適している。
このように、TAC−Cellは、これらの点に関して、電気刺激よりも優れている。
【0052】
単一のTAC−Cell、または、TAC−Cellアレイが種々の刺激研究のための全種類の方法に使用することができる。
これは、右半身研究と、左半身研究と、両側性刺激と、半球状側性化とを含むことができる。
【0053】
アレイの一実施例では、5個のTAC−Cellが、所定の場所に設置することが可能であり、各TAC−Cellは、個別の流体ラインによって個別に制御される。
TAC−Cellが直線状に配置され、次に、各TAC−Cellの間に10ms時間遅延などのある時間遅延を伴って個別のセルをオンにするとき、脳は、見かけの運動または動きとしてこの知覚を解釈する。
これは、治療中の脳のための仮想的な体験と、損傷されたニューロンと皮質とが接続を配線し直し、形成するのを実際に支援することになる運動の知覚および体験とを提供することができる。これは、脳の可塑性の一部である。
【0054】
TAC−Cell装置は、同じパターン化された刺激を用いて唇、または、手のいずれかの刺激に使用でき、S1の短期適応を誘発するために効率的である可能性がある。
手と唇との短期適応パターンの差は、皮膚領域と皮下領域とにおける機械受容器タイピングの差の関数である可能性があり、また、同様に、顔筋肉組織および辺縁系筋肉組織との差に起因するかもしれない。
さらに、身体の他の部分に関する差も存在することがある。
Si応答の減衰の大きさは、刺激周波数とパルスインデックスとに依存し、減衰が手刺激と唇刺激との両方に対して8Hzで最も顕著であり、2Hzであまり顕著ではない。
手と唇とのピーク双極子強度S1の待ち時間間の著しい差は、軸索長さと、唇および手の機械感覚性神経終末からS1内でのこれらの中央ターゲットまでの距離との差に起因すると考えられる。
【0055】
TAC−Cellは、特に、ヒトの脳内の三叉神経−視床皮質(顔)体性感覚経路および脊柱−内側毛帯−視床−皮質(手−前肢/足−後肢)体性感覚経路の完全性をマッピングするためにMRI走査手法およびMEG走査手法を使用して脳機能の基本的な神経学的評価のために使用することができる。
通常の健康な成人と、自閉症の子供、外傷性脳損傷、または、脳血管発作をもつ成人などの様々な臨床的集団との間の時空間的な適合パターンの比較は、基本的な感覚過程に新しい洞察を投じる可能性がある。
【0056】
例えば、自閉症児への繰り返しの触覚刺激は、過敏症および向上するが、より緩慢な適応応答をもたらした。
GABAを合成するために利用されるタンパク質の減少による抑制されたGABA作動性抑制機構は、これらの異常な応答特性の原因であると考えられる。
【0057】
別の実施例は、TAC−Cell、または、TAC−Cellアレイを使用する運動リハビリテーション用のパターン化された体性感覚刺激を含むことができる。
持続性体性感覚刺激は、運動皮質興奮性を増大させることができ、皮質損傷後の運動学習と機能回復とに密接な関係がある。
したがって、体性感覚経路の機能的なマッピングに加えて、TAC−Cellは、成人と小児の運動疾患のリハビリテーション用の新しい神経治療介入装置としての用途が見つけられる可能性がある。
【実施例】
【0058】
神経疾患の病歴がない健康な女性(平均年齢=24.8歳[標準偏差=2.9])がこの研究に参加した。
使用されたTAC−Cellは、スナップ型のキャップ付きの5ミリリットルの丸いガラス瓶に基づくcカスタム、小径空気圧アクチュエータ(Cole−Parmer、品番R−08936−00)であった。
ポリエチレン製キャップは、直径19.3mmの内部ルーメン408を作り出すように加工された。
0.005インチのシリコーン膜(AAA−ACME Rubber社)が、ガラス瓶の縁と変更したスナップ型キャップとの間にしっかり保持された。
空気圧充填されたとき、TAC−Cellの活性なシリコーン膜表面は、(10%から90%の勾配切片に基づいて)27msの立ち上がり/立ち下がり時間を有するピーク変位4.25mmを生成した。
【0059】
位置フィードバック(Biocommunication Electronics、LLC、モデル511サーボ・コントローラ)とコンピュータ制御との下で動作するカスタムAirpel(登録商標)ガラス製シリンダ(Airpot社、2K4444Pシリーズ)に連結されたカスタム非整流型サーボ・モータ(H2W Technologies社、NCM 100−2LB)が、空気圧パルスを用いてTAC−Cellを駆動するために使用された。
コンピュータは、16ビット多機能カード(PCI−6052E、National Instruments)を装備していた。
刺激制御信号は、研究室内でLabVIEW(登録商標)ソフトウェア(バージョン8.0、National Instruments)を用いてカスタムプログラムされた。
これらの信号は、サーボコントローラへの入力としての機能を果たし、MEGスキャナによるデータ取得を始動させるためにさらに使用された。
このハードウェア構成は、刺激生成とMEGデータ取得との間の同期を実現した。
長さ15フィートのシリコーン管(内径0.125インチ、外形0.250インチ、壁厚0.063インチ)が、サーボ・モータからMEGスキャナ内の参加者の上に設置されたTAC−Cellへの空気圧刺激パルスを案内するために使用された。
パルストレイン電圧波形の前縁と対応するTAC刺激変位の開始との間の遅延として定義される機械応答時間(MRT)が、すべての刺激速度に対し一定の17msであった(図6)。報告されたピーク双極子強度待ち時間値は、TAC−CellのMRTへの修正を反映する。
【0060】
図7に示すように、両面接着テープカラー450が、右手の無毛表層(人差し指/中指)(図示せず)と、上唇赤唇部と下唇赤唇部との間の正中線(図示)とを含む被検者460の2箇所の皮膚場所に別個のTAC−Cell400を固定するために使用された。
各皮膚部位での設置は、1分以内に完了した。
【0061】
空気圧サーボ制御が、パルストレイン[パルストレイン間隔5s、1パルストレイン当たりの繰り返し速度125]を生成するために使用された。
各パルストレインは、6個の単相パルス[パルス幅50ms]から構成された(図8)。
TAC−Cellのパターン化された入力に対する皮質神経磁気応答の短期適応が、各皮膚部位で2Hz、4Hzおよび8Hzの3つのパルストレイン速度をもつ無作為ブロック設計を使用して評価された。
2Hzの刺激ブロックは、およそ16分持続し、4Hzの刺激ブロックは、およそ14分持続し、8Hzの刺激ブロックは、およそ12分持続した。
刺激周波数および刺激部位条件の順序は、被検者の間で無作為化された。
【0062】
図7は、151台の軸グラジオメータ・センサを備え、TAC−Cell入力に対する皮質応答を記録するために使用された全頭型MEGシステム440(CTFオメガ)を用いて解析されている被検者460をさらに示す。
磁気非応答性管420が、継手機構部410に連結されている。
局所コイル430、436が、センサコイルに対する頭部位置を決定するために、鼻根点と左右の耳介前方点とを含む3箇所に設置された。
2個の双極電極432が、眼電図(EGG)を記録するために使用され、眼電図は、眼球運動のアーティファクトおよびまばたきによる影響を受ける試行を識別するために使用された。
位置合わせ目印が、局所コイルを位置決めするために使用された同じ3箇所に設置された。
MEG記録セッションに続いて、TAC−Cellが、皮膚部位から取り外され、参加者は、脳生体組織を画像化するために隣接する場所にあるMRIスキャナの内部に直ちに収容された。
【0063】
MEGデータが、双方向4次バターワースフィルタを使用して、1.5Hzと50Hzとの間でデジタル的に帯域通過フィルタ処理された。パルストレイン刺激の前後1秒に対応する試行は、アーティファクトが目視され、運動アーティファクト、または、まばたきアーティファクトを含む試行が除かれた。
各実験条件に対する残りの試行が、平均化され、直流成分が、基線として刺激前周期を使用してオフセットが加えられた。
各実験条件において被検者毎に90回以上の試行が、平均化に使用された。
【0064】
CURRY(商標)(COMPUMEDICS NeuroScan)は、MEG記録から取得されたデータを解析するために使用される特殊化された信号処理ソフトウェアである。
CURRYは、解剖学的MRI画像をMEGデータと相互に位置合わせして、生体磁気双極子源をマッピングするためにさらに使用することができる。
このように、生体磁気双極子源の再構成は、MRIデータから分割された各被検者頭骨にぴったり合わされた球対称体積導体モデルを使用してCURRYで実行された。
生体磁気双極子源空間が、脳体積の全体を通じて規則的な点の格子として画定された(点間の平均距離は、4mmであった)。
電流密度解析が、S1活性に対応する活性の空間ピークを識別するために、パルストレイン内の第1の応答に適用される(すなわち、最良の信号対雑音比(SNR)によって特徴付けられる)最小ノルム最小二乗法(MNLS)を使用して実行された。
場所制約付き双極子解析(双極子位置がMNLSによって取り出された空間最大値に設定されている)が、トレイン内の各パルスの後に続くS1活性に対する双極子の方向およびピーク強度(μAmm=マイクロアンペア−ミリメートル)を推定するために続いて使用された。
ピーク双極子ピーク強度および待ち時間が、3ウェイANOVAを使用して、刺激部位(唇および手)と、周波数(2、4および8Hz)と、パルストレイン内のパルスインデックスとの間の顕著な差に関して比較された。
唇刺激および手刺激のそれぞれに対し、左半球内の対応する双極子位置の差が、1ウェイANOVAを使用して統計的有意性に関してテストされた。
SPSSソフトウェア(バージョン17、SPSS社)は、統計解析のために使用された。
【0065】
指刺激に対して、被検者全体に亘って一貫して観測された最先の突出した応答成分は、各皮膚反応パルスに続く74.3±6.7msにピークがあった。
唇刺激に対し、最先の成分は、被検者全体に亘って50.3±5.8msにピークがあった。
両方の刺激部位に対し、これらの早期の成分の後に、磁界の異なる時間的形態と空間的パターンとをもつ数個の遅れ成分が続いた。
【0066】
応答の最先の成分に対して、センサアレイの全域に誘発された磁界の分布が、手刺激条件のための対側性S1および唇刺激のための両側性S1における生体磁気双極子源の存在と整合していた。
これは、図1Aに実証された生体磁気双極子源の再構成の結果によって確認された。
図1Aにおいて、マークが付けられたエリアは、100(一次体性感覚皮質における顔表現の双極子活性化)と、102(一次体性感覚皮質における顔表現の双極子活性化)と、104(一次体性感覚皮質における対側性手表現の双極子活性化)とを指示する。
双極子源は、左S1の手表現(手刺激)の範囲内に一貫して局所化され、また、S1の顔表現(唇刺激)の範囲内で両側にある。
【0067】
唇および手のSI応答に対する平均双極子位置が、表1に報告されている。
3つの直交座標の1つずつに1ウェイANOVAを使用する唇刺激に対する左半球内の双極子位置と手刺激に対する左半球内の双極子位置との間の比較は、横方向(p<0.001)、前方向(P=0.008)および下方向(P<0.001)の3方向のすべてに沿って著しく異なるSI源を示した。
これらの結果は、唇S1が手S1より中心後回のベースに向かって、すなわち、より横方向、前方向および下方向に向かって表現されている一次体性感覚皮質の体性機能局在性(PenfielおよびRasmussen、1968)に一致している。
【0068】
ピーク双極子強度が、刺激速度とトレイン内のシリアル位置との関数として皮質応答の大きさを定量化するために使用された。
SI応答の待ち時間が、ピーク双極子強度から決定され、機械応答時間(MRT)が修正された。
双極子強度ピークの3ウェイANOVAが、刺激部位、刺激周波数および刺激のトレイン内のインデックスの要因と共に、周波数(p<0.001)とパルスインデックス(p<0.001)との統計的に有意な主効果を明らかにした。
刺激部位と周波数(p=0.016)との間および周波数とパルスインデックス(p=0.003)との間の相互作用が、同様に、統計的に有意であった。
【0069】
S1応答のピーク双極子強度(図2A〜図2B)が、トレイン内の刺激のシリアル位置に伴う漸進的減衰を明らかにする。
8Hz刺激条件に対し現れた神経磁気応答の鋭い減衰が、唇刺激条件と手刺激条件との両方に対し3次双極子強度ピークを越える待ち時間の解析を妨げた。
S1適応の大きさが、3種類のテスト周波数の間で唇より手の方がわずかに上回り、このことは、機械受容器表現の差と、毛帯系および視床皮質系に沿った中枢性統合の仕組みとによって部分的に説明され得る。
【0070】
S1ピーク待ち時間の3ウェイANOVAは、刺激部位、刺激周波数およびトレイン内のパルスインデックスの要因と共に、刺激部位の主要因(p<0.001)が統計的に有意であることを明らかにした。
本例では有意な相互作用が全くない。
相互作用がないことは、TAC−Cell誘発型S1応答ピーク待ち時間がすべての3つの刺激周波数(図3A〜図3C)において手と唇との間で著しく異なり、これが、三叉神経経路のより短い伝導時間と整合していることを明らかにする。
【0071】
本発明は、本発明の精神、または、基本的な特性から逸脱することなく、他の具体的な形式で具現化されてもよい。
記載された実施例は、すべての点で、単なる例示であり、かつ、限定的ではないとみなされるべきである。
本発明の範囲は、したがって、以上の説明ではなく、請求項によって示される。
請求項の均等物の意味と範囲とに入るすべての変更は、本発明の範囲に包含されるべきである。
【0072】
【表1】


【0073】
−唇(対側性半球および同側性半球)と、手(対側性半球)S2とに対する双極子位置が、2Hz、4Hzおよび8HzのTAC−Cell刺激と関連付けられている。被検者全体に亘る、平均±標準偏差は、頭皮上の外部目印に基づいて直交座標系で表現されている。
x軸は、耳介前方点を通って左から右へ進み、y軸は、頭部の後から鼻根点まで進み、z軸は、頭頂点の方を指す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械感覚性神経終末を刺激する装置であって、
内部チャンバならびに第1の開口部および第2の開口部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記第1の開口部を覆い、振動機構部からの振動刺激を受容して振動する十分に柔軟性がある膜と、
前記第2の開口部で前記振動機構部に流体連結されるように構成される継手機構部と、
を備え、
装置全体が磁気非応答性材料で構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ハウジングが、円筒形であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記膜が、前記ハウジングと一体化されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記膜が、前記ハウジングに取り外し自在に連結されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
貫通するアパーチャを有する蓋部をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
前記蓋部が、前記膜を前記ハウジングに連結するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記蓋部と前記ハウジングとが、前記蓋部が前記ハウジングに締まることができるように対応する留め具を含んでいることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記対応する留め具が、スナップ継手、さねはぎ、対応するネジ山、接着剤、または、クリップのうちの1つまたは複数であることを特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記振動刺激を受容する前記継手機構部が、前記内部チャンバを前記振動機構部へ流体連結する流体継手機構部を含んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
前記継手機構部が、ルアーロックを含んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
前記継手機構部が、前記ハウジングの壁に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
前記継手機構部が、前記内部チャンバに関して前記膜の反対側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
前記継手機構部に連結されているとともに前記振動機構部に連結することができる管をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
前記管が、該管の反対端部が磁界に反応しない磁気応答性コンポーネントを有するコンポーネントに連結できるようにMRI、または、MEGの磁界の外に延在するための十分な長さを有していることを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記膜が、前記ハウジングの断面外形に対応する断面外形を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一つに記載の装置。
【請求項16】
前記膜が、柔軟弾性および/または伸縮性を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
前記膜が、約0.5mm未満の厚さであることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一つに記載の装置。
【請求項18】
前記膜が、約0.127mm未満であることを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記膜が、前記刺激が脳内に受容されるために十分に振動するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項18のいずれか一つに記載の装置。
【請求項20】
前記膜が、少なくとも1mmの正の振動変位を有することを特徴とする請求項1乃至請求項19のいずれか一つに記載の装置。
【請求項21】
前記振動変位が、少なくとも約4mmであることを特徴とする請求項20記載の装置。
【請求項22】
機械感覚性神経終末を刺激するシステムであって、
請求項1乃至請求項21のいずれか一つに記載の装置と、
前記継手機構部と流体連結されるように構成されている前記振動機構部と、
前記装置を前記振動機構部に流体連結するように構成されている磁気非応答性管と
を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項23】
前記振動機構部が、前記膜を振動させるために、または、流体内の圧力変化を引き起こすために流体を前記チャンバの中へ、および/または、前記チャンバから外へ揺動させるように構成されていることを特徴とする請求項22記載のシステム。
【請求項24】
前記振動機構部が、サーボ・モータを含んでいることを特徴とする請求項22または請求項23記載のシステム。
【請求項25】
前記振動機構部と動作的に連結することができるコンピューティングシステムをさらに備えていることを特徴とする請求項22乃至請求項24のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項26】
前記振動機構部が、前記継手機構部に流体連結されている前記磁気非応答性管と流体連結されていることを特徴とする請求項22乃至請求項24のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項27】
コンピューティングシステムが、前記振動機構部と動作的に連結されていることを特徴とする請求項25または請求項26記載のシステム。
【請求項28】
MRIシステムをさらに備えていることを特徴とする請求項22乃至請求項27のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項29】
MEGシステムをさらに備えていることを特徴とする請求項22乃至請求項27のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項30】
機械感覚性神経終末を刺激する方法であって、
請求項1乃至請求項29のいずれか一つに記載の装置またはシステムを準備することと、
被検者の皮膚に前記膜を設置することと、
前記皮膚上の前記膜を揺動させることと
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項31】
前記機械感覚性神経終末が、MRI内で刺激されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記機械感覚性神経終末が、MEG内で刺激されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記機械感覚性神経終末が、理学療法の一部として刺激されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記刺激が、発達性感覚運動障害または傷害を伴う患者の運動リハビリテーションを目的とすることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記神経終末刺激の間に前記被検者の前記脳を監視することをさらに含んでいることを特徴とする請求項30記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−503002(P2013−503002A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526980(P2012−526980)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046792
【国際公開番号】WO2011/028602
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(510122201)カンザス大学 (5)
【Fターム(参考)】