説明

機械特性に優れたゴム組成物及びその製造方法

【課題】カーボンナノチューブ、フラーレンあるいは層状ケイ酸塩等を添加した従来のゴム組成物の分散性、化学的安定性、耐久性などにおける問題点を解決し、優れた機械特性等を有するゴム組成物、それを用いた成形体、及び該ゴム組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】ゴム材料100質量部と窒化ホウ素ナノチューブ0.01〜100質量部とからなることを特徴とするゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械特性等が優れるゴム組成物、その成形体、及び該ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ゴム材料は、強度や耐久性等を向上させる強化剤として、カーボンブラックまたはシリコン(silane compound)を添加して製造されている。これによりゴム材料は耐熱性、伸長回復性、電気特性、耐薬品性などの物性の向上に加え、既存の製品より機械的、物理的、電気的あるいは化学的特性に優れるゴム組成物へと改質される。
【0003】
一方で、自動車や産業用途に供せられるゴム組成物には、防振特性や耐疲労性グリップ性能や転がり抵抗が要求され、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等の共役ジエン系ゴムが使用されている。近年、自動車の低燃費化への対応(例えば、エンジンの燃焼率向上やタイヤのグリップ性能や転がり抵抗等の改善)、車外騒音規制への対応(例えば、エンジンルームの密閉化等)が要求されるようになってきている。エンジンの燃焼効率向上により、エンジンルームの雰囲気温度が上昇する傾向にあり、このような環境下で使用されるゴム材料には更に高い耐熱性、耐疲労性や機械的強度が要求されている。またタイヤのグリップ性能や転がり抵抗の向上には素材自体の機械特性を補強する必要がある。近年、これらの課題を解決すべく、例えば特許文献1〜4ではナノフィラーとしてカーボンナノチューブ、フラーレンあるいは層状ケイ酸塩等を添加したゴム組成物が報告されている。更にはナノウイスカーをゴム成分に添加した例についても報告されている(非特許文献1)。特に補強材料としてのゴム組成物については自動車用タイヤに応用可能であり、グリップ性能と転がり抵抗はタイヤの性能に強く影響するため両特性を同時に満足させるべく種々のタイヤ用ゴム組成物が提案されている。
【0004】
しかしながら、カーボンブラックやカーボンナノチューブについては、炭素系材料の高い凝集力により、ゴム成分中で凝集し易く、材料中での均質な分散という点で課題がある。例えばエンジン周辺やタイヤ用途のように、繰り返し変形を受ける使用環境ではゴムの動的疲労性に大きく影響し、十分な耐疲労性は発現しない。
【0005】
また、マイカ等の層間にナトリウム等のカチオンを有する層状ケイ酸塩やその他の無機塩系ウィスカー等は、水や湿度、酸性雰囲気などの存在下での環境においては化学的安定性や耐久性の面で問題があり、必ずしもゴム材料の使用される環境全てにおいて満足する性能を発現できない課題がある。また均質な分散性確保という点でもバルクの凝集が起こりうるため、表面性など解決すべき課題は多い。
【0006】
一方、窒化ホウ素ナノチューブは、従来にない特性を有する材料として注目を浴びている(特許文献5参照)。更にカーボンナノチューブには無い高い耐酸化性、化学的安定性および絶縁特性を併せ持ち、炭素系ナノ素材の使用できない環境、用途への応用が期待されている。また窒素とホウ素結合の分極構造により、凝集性が低く、媒体や高分子素材への親和性に優れるため、均質な複合化が容易であるという利点を持つが、これをゴム材料の耐磨耗性改良用に複合化する技術あるいは複合化と性能向上に関する検討についてはこれまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−123770号公報
【特許文献2】特開2004−359934号公報
【特許文献3】特開2005−89758号公報
【特許文献4】国際公開第2003/060002号パンフレット(特表2005−514509号公報)
【特許文献5】特開2000−109306号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】マクロモルキュールズ(Macromolecules)、(米国)、アメリカ化学会、1995、Vol.28,p.6365−6367
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来のゴム材料複合素材での問題点を解決し、優れた機械特性等を有するゴム組成物、それを用いた成形体を提供すること、及び該ゴム組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、窒化ホウ素ナノチューブをゴム材料に添加することにより、機械特性等を向上させた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。本発明の要旨を以下に示す。
1. ゴム材料100質量部と窒化ホウ素ナノチューブ0.01〜100質量部とからなることを特徴とするゴム組成物。
2. 窒化ホウ素ナノチューブの平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上である上記1項に記載のゴム組成物。
3. 窒化ホウ素ナノチューブが共役系高分子で被覆されているものである上記1項または2項に記載のゴム組成物。
4. カーボンブラック、シリカ、アルミナ、及びクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種類の充填剤を含有する上記1項〜3項のいずれかに記載のゴム組成物。
5. 上記1〜4項の何れかに記載のゴム組成物からなる成形体。
6. 上記1〜4項のいずれかに記載のゴム組成物を製造する方法において、窒化ホウ素ナノチューブの分散液と、ゴム材料分散液とを混合させる工程を含む製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、従来のゴム材料に対して優れた機械特性等を有するゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
(窒化ホウ素ナノチューブ)
本発明において、窒化ホウ素ナノチューブとは、窒化ホウ素からなるチューブ状材料であり、理想的な構造としては6角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、一重管もしくは多重管になっているものである。窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は、好ましくは0.4nm〜1μm、より好ましくは0.6〜500nm、さらにより好ましくは0.8〜200nmである。ここでいう平均直径とは、一重管の場合、その平均外径を、多重管の場合はその最外側の管の平均外径を意味する。平均長さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。アスペクト比は、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。アスペクト比の上限は、平均長さが10μm以下であれば限定されるものではないが、上限は実質25000である。よって、窒化ホウ素ナノチューブは、平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上であることが好ましい。
【0013】
窒化ホウ素ナノチューブの平均直径およびアスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることが出来る。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)測定を行い、その画像から直接窒化ホウ素ナノチューブの直径および長手方向の長さを測定することが可能である。また組成物中の窒化ホウ素ナノチューブの形態は例えば繊維軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することが出来る。
【0014】
窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法、化学的気相成長法を用いて合成できる。また、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料として合成する方法も知られている。また、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて合成する方法もが提案されている。本発明に用いられる窒化ホウ素ナノチューブは、これらの方法により製造されるものに限定されない。また、窒化ホウ素ナノチューブは、強酸処理や化学修飾された窒化ホウ素ナノチューブも使用することができる。
【0015】
本発明にて用いられる窒化ホウ素ナノチューブは共役系高分子で被覆されていることが好ましい。窒化ホウ素ナノチューブを被覆する共役系高分子は、窒化ホウ素ナノチューブと相互作用が強く、マトリクス樹脂であるゴム材料との相互作用も強いものが好ましい。これらの共役系高分子としては、例えば、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリフェニレン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリアセチレン系高分子等が挙げられる。中でも、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリチオフェン系高分子が好ましい。
【0016】
更に共役高分子による被覆以外にも、窒化ホウ素ナノチューブはカップリング剤で表面被覆処理されていてもよい。ここで使用されるカップリング剤としては、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を挙げることができる。シラン系カップリング剤としては、具体的にはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン等を例示できる。またチタネート系カップリング剤としては、具体的にはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等を例示できる。
【0017】
上記のような共役系高分子やカップリング剤で表面を被覆処理された窒化ホウ素ナノチューブは、例えば窒化ホウ素ナノチューブを超音波撹拌装置やヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機、ホモジナイザーのような高速攪拌またはアトライター、ボールミル等を用いて攪拌しつつ、これに共役高分子やカップリング剤を無溶媒下、あるいはトルエン、キシレン、各種アルコール等の溶媒に溶解させた液を滴下又は噴霧添加することにより得ることができる。
【0018】
ここで無溶媒下にて窒化ホウ素ナノチューブの被覆処理を行う場合、加熱溶融している共役高分子や液状カップリング試剤に対して窒化ホウ素ナノチューブを添加して混合する方法が好ましく、また溶媒を使用する場合は共役高分子またはカップリング剤が溶解する溶媒中でこれらを窒化ホウ素ナノチューブと混合し分散する方法等が挙げられる。特にこの場合は超音波攪拌混合による被覆処理を好ましく実施することができる。
【0019】
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物においては、ゴム材料100質量部に対して、窒化ホウ素ナノチューブが、0.01〜100質量部の範囲内で含有されるものである。本発明におけるゴム材料100質量部に対する上記窒化ホウ素ナノチューブの含有量の下限は、0.01質量部であるが、本発明においては特に、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であることが好ましい。一方、ゴム材料100質量部に対する窒化ホウ素ナノチューブの含有量の上限は、上述したように100質量部以下であるが、本発明においては、80質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、窒化ホウ素ナノチューブをゴム材料に均一に分散させることが可能となるからである。また、窒化ホウ素ナノチューブが過度に多い場合は、均一なゴム組成物を得ることが困難となり好ましくない。本発明のゴム組成物は、窒化ホウ素ナノチューブに由来する窒化ホウ素フレーク、触媒金属等を含む場合がある。
【0020】
本発明で使用するゴム材料については特に制限は無く、窒化ホウ素ナノチューブとの界面親和性に優れる一般のゴム成分、例えば天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体等などが挙げられるが、コストの点からは天然ゴム、さらには天然ゴムとの相溶性という観点からはスチレン−ブタジエンゴムが好ましい。これらの他のゴム成分は、上記のうち1種類を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。これらゴム成分は本発明のゴム組成物を製造するにおいてゴム材料分散液、つまりラテックスの状態にて用いることが好ましく、天然ゴムラテックスの他、乳化重合、エマルジョン重合で得られる合成ラテックス、固形ゴムを水中に乳化分散した転相ラテックスなどが好ましく使用できる。
【0021】
本発明のゴム組成物は、上記の窒化ホウ素ナノチューブのほかに、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、クレーから選ばれる1種類以上の充填剤を配合することができる。特にコストメリット、性能の点からカーボンブラック、或いはカーボンブラック及びシリカを含有することが好ましい。カーボンブラックとしては、市販のあらゆるものが使用でき、なかでもSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFグレードのカーボンブラック、特にHAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックを用いるのが好ましい。カーボンブラックは、特にDBP吸収量が110×10−5/kg以上で、窒素吸着比表面積が140×10/kg以上のものが好ましい。
【0022】
シリカとしては、市販のあらゆるものが使用でき、なかでも湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いるのが好ましい。シリカのBET比表面積としては150m/g以上のものが好ましく、より好ましくは170m/g以上、特に好ましくは190m/g以上である。このようなシリカとしては東ソーシリカ社製「ニプシルAQ」、「ニプシルKQ」などの市販品を用いることができる。シリカは特に、表面改質シリカを用いるのが好ましい。
カーボンブラックについても、シリカについてもいずれも1種類を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0023】
本発明のゴム組成物中のカーボンブラック配合量は、ゴム成分100質量部に対して20〜100質量部、特に40〜70質量部であり、シリカを併用する場合、シリカはゴム成分100質量部に対して20〜60質量部、特に25〜45質量部であり、カーボンブラックとシリカとの合計でゴム成分100質量部に対して30〜120質量部、特に40〜70質量部、カーボンブラックとシリカとの合計に占めるカーボンブラックの割合は20質量%以上、特に20〜50質量%であることが好ましい。カーボンブラックの配合量がこの範囲よりも少ないと、低発熱性が向上するものの、耐摩耗性が低下する。一方、カーボンブラックの配合量がこの範囲よりも多いと耐摩耗性が十分となるものの、低発熱性、その他の物性が低下することがある。また、シリカの配合量がこの範囲よりも少ないと、転がり抵抗の向上が十分でなく、多いと、対摩耗性が低下する。本発明においては、ゴム組成物中に更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0024】
(ゴム組成物の製造方法について)
本発明の窒化ホウ素ナノチューブ含有ゴム組成物の製造方法としては、ゴム材料中に窒化ホウ素ナノチューブの良好な分散状態が実施できる方法であれば任意のブレンド方法を採用することができる。一般的にはゴム組成物の製造方法としては以下に示す、窒化ホウ素ナノチューブの分散液と、ゴム材料分散液とを混合させる工程(以下、混合工程と略称することがある)を好ましく用いることができる。
【0025】
混合工程においては、まず窒化ホウ素ナノチューブをブレンド用の溶媒に懸濁させたのち分散処理を行い分散液とする。ここで、分散媒としての溶媒は通常は水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶するアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)やN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等を使用してもよい。また、これらの混合物も好適に使用できる。
【0026】
窒化ホウ素ナノチューブの分散処理にて使用する分散機としては、従来から使用されている種々の混合攪拌機を使用することができる。具体例的には、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー等の工業生産機としての汎用の分散機で十分に本発明の窒化ホウ素ナノチューブの分散体を得ることができる。
【0027】
更に、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、およびグラインダーのようなより強力で叩解能力のある装置を使用することにより、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となる。
【0028】
上記のようにして得られた窒化ホウ素ナノチューブ分散液をゴム材料分散液と混合し、更に分散処理を行う。この混合液の分散処理は、前記の窒化ホウ素ナノチューブ分散液の調製と別の装置を用いて行ってもよいが、窒化ホウ素ナノチューブの分散処理と同じ装置を用いて、当該分散液の調製後、そこにゴム材料分散液を添加して引き続き分散処理を行う方法が簡便であり好ましい。
【0029】
上記のように調製した窒化ホウ素ナノチューブ分散液とゴム材料分散液との混合分散液に凝固剤を添加して、窒化ホウ素ナノチューブ及びゴム材料を凝固させる。その後この凝固物を洗浄し乾燥させる事でコンポジットが得られる。凝固剤としては酸がHCl,HNO,HCO,HSO、酢酸、ギ酸からなるグループから選択された鉱酸か有機酸であることが好ましい。
【0030】
このようにして得た凝固物をクラム化し、真空乾燥機、熱風式乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機により乾燥して、本発明のゴム組成物を得ることができる。
【0031】
このようにして得られたゴム組成物に、用途に応じて必要な配合剤を添加して混練り及び加硫(架橋処理)を行ってゴム成形を行うことができる。そのような配合剤としては、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸等が挙げられる。
また、この混練りを行う際に、更にゴム成分を添加してもよく、当該ゴム成分は、ゴム材料分散液の成分と同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0032】
また、上記のとおり、本発明のゴム組成物は、上記の窒化ホウ素ナノチューブのほかに、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、クレーから選ばれる1種類以上の充填剤を配合することができ、該充填剤は、窒化ホウ素ナノチューブの分散液の調製、ゴム材料分散液の調製、又は両分散液の混合分散液の調製時に転化してもよいが、上記の混練りの際に、添加することが簡便のため好ましい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
ゴム材料としては、NRラテックス(レジテックス製NR LATEX)を用いた。
配合剤としては、カーボンブラック(東海カーボン株式会社製、シースト6)、酸化亜鉛(ハクスイテック株式会社製)、老化防止剤(精工化学株式会社製、オゾノン(登録商標)6C)、硫黄(細井化学工業株式会社製、325メッシュ)および加硫促進剤CZ(大内化新興化学株式会社製)を用いた。これらはタイヤ用ゴムの配合剤として繁用されるものである。
【0034】
(1)引張特性評価
引張特性(引張強度、伸度、硬度)は、50mm×10mmのサンプルを用い、引張り速度5mm/分で行いオリエンテックUCT−1Tによって測定した。
【0035】
[参考例1] 窒化ホウ素ナノチューブの製造
窒化ホウ素製のるつぼに、1:1のモル比でホウ素と酸化マグネシウムを入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1300℃に加熱した。ホウ素と酸化マグネシウムは反応し、気体状の酸化ホウ素(B)とマグネシウムの蒸気が生成した。この生成物をアルゴンガスにより反応室へ移送し、温度を1100℃に維持してアンモニアガスを導入した。酸化ホウ素とアンモニアが反応し、窒化ホウ素が生成した。1.55gの混合物を十分に加熱し、副生成物を蒸発させると、反応室の壁から310mgの白色の固体が得られた。続いて得られた白色固体を濃塩酸で洗浄、イオン交換水で中性になるまで洗浄後、60℃で減圧乾燥を行い窒化ホウ素ナノチューブ(以下、BNNTと略すことがある)を得た。得られたBNNTは、平均直径が27.6nm、平均長さが2460nmのチューブ状であった。
【0036】
[参考例2] 共役系高分子で被覆した窒化ホウ素ナノチューブの作製
参考例1で得られた0.1質量部の窒化ホウ素ナノチューブを100質量部のジクロロメタンに添加して超音波バスにて2時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。続いて0.1質量部のアルドリッチ製ポリ(m−フェニレンビニレン−co−2,5−ジオクトキシ−p−フェニレンビニレン)を添加して超音波処理を1時間実施した。得られた分散液をミリポア製オムニポアメンブレンフィルター0.1μでろ過し、大量のジクロロメタンで洗浄後、60℃減圧乾燥を2時間行うことで黄色の共役高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブを得た。この被覆された窒化ホウ素ナノチューブにおける共役系高分子の量は4.2質量%であった。
【0037】
[実施例1]
参考例1で得られた10質量部の窒化ホウ素ナノチューブをイオン交換水1600質量部に加え、プライミクス(株)製の攪拌分散装置「FILMICS(登録商標)」を用いて、攪拌速度12600rpmにて混合分散した。これにNRラテックス(レジテックス製NR LATEX)531質量部(NR成分量324質量部)を入れ攪拌機にて分散させた。次いでギ酸を添加してpHを4.7に調整することにより、ラテックス組成物を凝固させた。このようにして得た固形物をシュレッダーに通してクラム化し、真空乾燥機により80℃で乾燥してゴム組成物を得た。このゴム組成物にロールミキシングマシーンを使用してカーボンブラック(東海カーボン社製「シースト6」)、酸化亜鉛(ハクスイテック株式会社製)、老化防止剤(オゾノン(登録商標)6C、精工化学株式会社)、硫黄(細井化学工業325)および加硫促進剤CZ(大内化新興化学製)を添加剤として配合した。配合後160℃で10分加硫する事でシート状成形体を得た。この成形体から試験片を取り出し、引張り強さを測定したところ260kg/cm(25.4MPa)であった。また伸度は545%、硬度65であった。
【0038】
[実施例2]
窒化ホウ素ナノチューブとして、参考例2にて作製した共役系高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブ10質量部を用いる以外は実施例1と同様に操作を行った。得られた成形体から試験片を取り出し、引張り強さを測定したところ263kg/cm(25.8MPa)であった。また伸度は552%、硬度66であった。
【0039】
[比較例1]
窒化ホウ素ナノチューブを含有しない以外は、NRラテックス(レジテックス製NR LATEX)531質量部を用いて、実施例1と同様にゴム組成物のシート状成形体を作製した。この成形体から試験片を取り出し、引張り強さを測定したところ247kg/cm(24.2MPa)であった。また伸度は580%、硬度61であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のゴム組成物は、溶融混練押出しや湿式、乾湿式成形などによりフィルムやシート、タイヤの如き構造体に成形でき、自動車用タイヤ、エンジンマウント、ボディマウント、キャブマウント、メンバーマウント、ストラットバー・クッション、テンションロッド・ブッシュ、アームブッシュ、FFエンジン・ロールストッパー等、各種自動車用防振ゴムの構成材料等に幅広く、好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材料100質量部と窒化ホウ素ナノチューブ0.01〜100質量部とからなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
窒化ホウ素ナノチューブの平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
窒化ホウ素ナノチューブが共役系高分子で被覆されている請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
カーボンブラック、シリカ、アルミナ、及びクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種類の充填剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のゴム組成物からなる成形体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物を製造する方法において、窒化ホウ素ナノチューブの分散液と、ゴム材料分散液とを混合させる工程を含む製造方法。

【公開番号】特開2011−37918(P2011−37918A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183438(P2009−183438)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】