説明

機械的特性の改良されたバランスを有するポリプロピレンフィルム

a) マトリックスプロピレンポリマーおよびエチレンプロピレンゴムを有するプロピレン異相系コポリマー(A)
を含んでいる組成物から造られたブローンフィルムであって、1:1.1〜1:10の延伸比で機械方向に一軸配向されていることを特徴とするフィルム、このようなフィルムを造る方法、当該組成物をこのようなフィルムを製造するのに使用する方法、ならびにこのようなフィルムを含んでいる物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン異相系コポリマーを含んでいる、機械的特性の改良されたバランスを有する配向されたブローンポリプロピレンフィルムに関する。さらに、本発明は、当該フィルムの製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンの耐化学薬品性および耐熱性ならびに機械的強さの故に、ポリプロピレンのキャストおよびブローンフィルムは種々の用途に、特に医療および食品の包装用途に、たとえば自立レトルトパウチに使用される。しかし、該フィルムのレトルトの際に使用される高温度の故に、ポリプロピレンの良好な機械的特性が有害な影響を受けることがある。
【0003】
ポリプロピレンフィルムの製造は多くの場合キャストフィルム成形法として実施される。このような方法では、溶融物の冷却はチルロールの使用によって達成され、その結果良好な光学的および機械的特性を有するポリプロピレンフィルムが得られる。また、ポリプロピレンフィルムの製造にブローンフィルム成形法も使用され、該成形法では溶融物を冷却するために空冷が使用される。
【0004】
成形技術にかかわらず、分子状ポリプロピレン鎖の機械方向における配向は、該フィルムのより低い機械的強さを、特に製造されたフィルムの横断方向においてもたらす。
【0005】
さらに、医療または食品の用途では、水蒸気または高エネルギー放射線、特にベータ線およびガンマ線によって高温度で、ポリプロピレンフィルムは滅菌されることがある。しかし、この種の処理に付される典型的なポリプロピレンは、軟化および変形または黄変および/もしくは脆化する傾向がある。
【0006】
特許文献1によると、ブレンドされたポリプロピレン層およびポリエチレンシーラント層を含んでいる多層フィルム構造を使用することによって、ブローンフィルムの靭性は改良されることができる。
【0007】
特許文献2は、カップリング反応で変性されたプロピレンポリマーを含んでいる1の層、および実質的に直鎖のポリエチレン(または均一に分枝された直鎖ポリエチレン)と直鎖低密度ポリエチレンとの反応器内ブレンドを含んでいるさらなる層を有する多層フィルムを開示しており、この結果、改良された機械的特性を有するブローンフィルムが得られる。
【0008】
特許文献3はポリプロピレンとポリエチレンとのブレンドを開示し、これはある程度の耐放射線性を有し、医療および食品の包装に使用されることができる。
【0009】
しかし、上記の文献に記載されたポリプロピレンに基づいた慣用の配向されていない樹脂フィルムは優れた耐熱性を有するけれども、該フィルムは低温度での衝撃強さにおいて不十分である。
【0010】
さらに、ポリプロピレンフィルムが一方向に延伸されると、その方向における引張強さは通常、増加するけれども、他方、延伸方向における引裂伝播抵抗が減少することが知られている。さらに、延伸方向に直角における引裂伝播抵抗は普通、増加する。したがって、フィルムの一方向のみへの配向は、普通、配向された方向と配向されていない方向との機械的特性のアンバランスをもたらす。
【0011】
ポリプロピレンフィルムを二軸配向することも従来技術で知られており、これはBOPP(二軸配向ポリプロピレン)フィルムとして知られている。たとえば、特許文献4は、このようなBOPPフィルムに関するものであり、良好な機械的特性を得ることを目的としている。しかし、フィルム製造の際に生じるポリプロピレン鎖の前配向の故に、二軸配向ポリプロピレンフィルムもまた機械方向と横断方向との機械的特性間のアンバランスを示す。
【特許文献1】国際公開第01/53079号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/53078号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第0847420号明細書
【特許文献4】国際公開第03/033575号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の不都合を考慮に入れて、機械方向と横断方向とにおける機械的特性間の最適なバランスを有するフィルムを提供することが本発明の主目的である。
【0013】
該フィルムは両方向において高いレベルの機械的強さおよび靭性を示さなければならないということが、本発明のさらなる目的である。
【0014】
両方向における高いレベルの機械的強さおよび靭性が滅菌後も維持されることが、本発明のなおさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、製造されたポリプロピレンブローンフィルムが特定の延伸比、普通1:1.1〜1:10を用いて機械方向のみに、すなわち機械方向に一軸的に配向されるならば、上記の目的が達成されることができるという発見に基づいている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
したがって、本発明は、
a) マトリックスプロピレンポリマーおよびエチレンプロピレンゴムを有するプロピレン異相系コポリマー(A)
を含んでいる組成物から造られたブローンフィルムであって、1:1.1〜1:10の延伸比で機械方向に一軸配向されていることを特徴とするフィルムを提供する。
【0017】
以下に示されるように、得られたフィルムは、特に、配向されていないフィルムと比較して、機械方向と横断方向との両方向における改良された機械的特性を示す。とりわけ、かつ驚いたことに、配向方向と直角においても、すなわち横断方向においても、該フィルムは改良された機械的特性を示し、このようにして両方向における、より改良された機械的特性を有するフィルムをもたらす。
【0018】
さらに、該フィルムの機械方向および横断方向における高いレベルの機械的強さおよび靭性は滅菌処理後も保持される。
【0019】
もっとさらには、本発明のフィルムは、高められた機械的強さおよび靭性を有するけれども、驚いたことに横断方向に手で引き裂かれることができることが発見された。したがって、本発明のフィルムは、粘着テープ用途に利用されることができる。
【0020】
好まれる実施態様では、該フィルムがそれから造られているところの組成物は、
b) エチレンホモまたはコポリマー(B)
をさらに含んでいる。
【0021】
該ブローンフィルムは、2.5:1の好まれるブローアップ比(BUR)を有する単軸押出機で好ましくは製造される。
【0022】
得られたブローンフィルムは、好ましくは30〜500マイクロメートル、より好ましくは70〜150マイクロメートル、さらにより好ましくは100〜180マイクロメートルの厚さを有する。押出機処理量、引取り速度およびブローアップ比(BUR)の間の比によって、フィルムの厚さは調節されることができる。
【0023】
一般に、配向されていないポリプロピレンフィルムを、結晶が部分的に溶融される温度、通常120℃〜160℃まで再加熱し、所望の形へと延伸し、次にそれを延伸したまま冷却して、結晶を変形して配向を適切に固定することによって、フィルムの配向は達成されることができる。フィルムの機械方向における配向は、押出機とはオフラインでまたはインラインで達成されることができる。
【0024】
本発明のフィルムのフィルム延伸比は1:1.1〜1:10、好ましくは1:1.2〜1:4、さらにより好ましくは1:1.4〜1:3.5である。
【0025】
本発明のフィルムは全組成物当たり、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%のプロピレン異相系コポリマー(A)を含んでいる。
【0026】
さらに、エチレンホモまたはコポリマー(B)の量は全組成物当たり、好ましくは50〜10重量%、より好ましくは40〜20重量%である。
【0027】
本発明のプロピレン異相系コポリマー(A)は、マトリックスポリマーとしてのポリプロピレンホモまたはコポリマー、および加えられたエチレンプロピレンゴムを含んでいる。
【0028】
異相系プロピレンコポリマーは、慣用の触媒を使用してプロピレンとエチレンと任意的なアルファ−オレフィンとの多段階法重合、たとえばバルク重合、気相重合、スラリー重合、溶液重合またはこれらの組み合わせによって製造されることができる。異相系コポリマーは、ループ反応器中で、あるいはループと気相反応器との組み合わせ中で造られることができる。これらの方法は当業者に周知である。
【0029】
好まれる方法は、1または複数のバルクスラリーループ反応器および1または複数の気相反応器の組み合わせである。まず、1または複数のループ反応器中で、あるいはループと気相反応器との組み合わせ中で、ポリプロピレンホモまたはコポリマーマトリックスが造られる。
【0030】
この様式で製造されたポリマーは他の反応器中へと移送され、そして分散相、すなわちエチレンプロピレンゴムが、同じ触媒系を用いてエチレンとプロピレンとの混合物を共重合することによって製造される。このようにして半結晶性マトリックスとその中に分散されたほとんど非晶質のエラストマー状成分とから成る異相系が得られる。好ましくは、この重合段階は気相重合で行われる。
【0031】
異相系コポリマーの重合に適した触媒は、プロピレン重合のための任意の立体特異性触媒であり、40〜110℃の温度および10〜100バールの圧力においてプロピレンおよびコモノマーを重合し共重合する能力のあるものである。ツィーグラー・ナッタ触媒ならびにメタロセン触媒は好適な触媒である。
【0032】
上記の逐次的多段階方法で異相系コポリマーを製造する代わりに、マトリックスポリマーおよびエチレンプロピレンゴムを別々の段階で重合し該二つのポリマーを溶融ブレンドすることによって、これは製造されることもできる。
【0033】
「ゴム」および「エラストマー状コポリマー」は、本明細書の文脈では同意語として使用される。
【0034】
エチレンプロピレンエラストマー状コポリマーは、公知の重合方法、たとえば慣用の触媒を使用して溶液、懸濁および気相の重合によって製造されることができる。ツィーグラー・ナッタ触媒ならびにメタロセン触媒は好適な触媒である。
【0035】
広く使用されている方法は溶液重合である。過剰の炭化水素溶媒中で、エチレン、プロピレンおよび触媒系が重合される。安定化剤および油が、所用であれば重合直後に添加される。次に熱水または水蒸気を用いてまたは機械的な揮発性物質除去法(mechanical devolatilisation)によって、溶媒および未反応モノマーがフラッシュ除去される。ポリマーはクラム形状をしていて、ふるい、機械プレスまたは乾燥オーブン中での脱水によって乾燥される。該クラムは梱包ベールへと形成されまたはペレットへと押出される。
【0036】
懸濁重合法はバルク重合の変形である。プロピレンを充填された反応器へと、モノマーおよび触媒系が注入される。重合は直ちに起き、プロピレンに可溶性でないポリマーのクラムが生成される。プロピレンおよびコモノマーをフラッシュ除去すると、該重合法は完了する。
【0037】
気相重合技術は、1以上の垂直型流動床から成る。気体の形態をしたモノマーおよび窒素が触媒とともに反応器に供給され、固形生成物が周期的に取り出される。ポリマー床を流動化させる役割もする循環ガスの使用によって、反応熱が除去される。溶媒は使用されず、それによって溶媒のストリッピング、洗浄および乾燥の必要が排除される。
【0038】
エチレンプロピレンエラストマー状コポリマーの製造は、たとえば米国特許第3,300,459号、米国特許第5,919,877号、欧州特許出願公開第0060090号およびEniChem社による社内出版物、「DUTRAL、エチレンプロピレンエラストマー」、1991年、1〜4ページにも詳細に記載されている。
【0039】
あるいは、商業的に入手可能であり示された要件を満たすエラストマー状エチレンプロピレンコポリマーが、使用されることができる。
【0040】
次に、粉体または顆粒の形状をしたマトリックスポリマーとエラストマー状コポリマーとを溶融混合装置中で一緒にすることによって、異相系コポリマーが製造される。
【0041】
異相系コポリマーのためのマトリックスポリマーとしてポリプロピレンランダムコポリマーが使用される場合には、そのコモノマーは好ましくは直鎖アルファ−オレフィンまたは分枝アルファ−オレフィン、たとえばエチレン、ブテン、ヘキセン等である。本発明では、エチレンが最も好まれる。
【0042】
コモノマー含有量は、全ポリプロピレンランダムコポリマー当たり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは4〜8重量%である。
【0043】
しかし、好ましくはマトリックスポリマーはポリプロピレンホモポリマーである。
【0044】
さらに、異相系コポリマーは、ポリマー(A)の全重量当たり、好ましくは35重量%以下、より好ましくは10〜20重量%の量でエチレンプロピレンゴムを含有する。
【0045】
エチレンプロピレンゴムは、該エチレンプロピレンゴムの全量当たり、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは45〜60重量%のプロピレン含有量を有する。
【0046】
エチレンおよびプロピレン単位の他にさらなるアルファ−オレフィンモノマー単位を、エチレンプロピレンゴムは含有することができる。しかし、エチレンプロピレンゴムはエチレンおよびプロピレン単位から成ることが好まれる。
【0047】
プロピレン異相系コポリマー(A)は、好ましくは0.1〜15g/10分、より好ましくは0.5〜10g/10分のメルトフローレート(230℃/2.16kg)(MFR)を有する。
【0048】
本発明の組成物のエチレンホモまたはコポリマー(B)は、直鎖ポリエチレンコポリマーまたは低密度ポリエチレンホモもしくはコポリマーである。
【0049】
直鎖ポリエチレンコポリマーは、公知の様式の触媒担持重合方法で製造されることができる。重合触媒は、遷移金属の配位触媒、たとえばツィーグラー・ナッタ(ZN)、メタロセン、非メタロセン、Cr触媒等を包含する。たとえばシリカ、Al含有担体および二塩化マグネシウムに基づいた担体を包含する慣用の担体で、触媒は担持されていてもよい。
【0050】
直鎖ポリエチレンコポリマーのコモノマーは、好ましくはC〜C20アルファ−オレフィン、より好ましくはC〜Cアルファ−オレフィンである。アルファ−オレフィンとして、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンおよび3−メチル−1−ペンテン等が使用されることができる。
【0051】
直鎖ポリエチレンコポリマーは、好ましくは0.900〜0.950g/cm、好ましくは0.910〜0.930g/cmの密度を有する。
【0052】
低密度コポリマーがエチレンコポリマー(B)として使用される場合には、n−ブチルアクリレート、メチルアクリレートまたはビニルアセテートがコモノマーとして使用されることができる。コモノマー含有量は好ましくは0.1重量%〜40重量%、より好ましくは3重量%〜10重量%である。
【0053】
慣用の高圧重合方法で、低密度ポリエチレンは製造される。低密度ポリエチレンは、その高度に分枝された鎖構造によって特性付けられる。
【0054】
低密度ポリエチレンは、好ましくは0.900〜0.950g/cm、より好ましくは0.910〜0.930g/cmの密度を有する。
【0055】
エチレンホモまたはコポリマー(B)のMFR(190℃、2.16kg)は、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.5〜8g/10分である。
【0056】
任意的に、ポリオレフィンに基づいたフィルム物質に慣用される添加剤、たとえば酸化防止剤、中和剤、無機フィラー、ブロッキング防止剤、核剤、潤滑剤または帯電防止剤が、従来技術で知られた様式でブレンド段階の前、その間またはその後に本発明の組成物に添加されることができる。
【0057】
通常、このような慣用添加剤の量は、フィルム製造に使用される全ポリマー組成物の10重量%以下である。
【0058】
本発明のフィルムは、好ましくは少なくとも1300kJ/m、より好ましくは少なくとも1350kJ/mの機械方向における衝撃強さを有する。
【0059】
通常、該フィルムは最大でも3500kJ/mの機械方向における衝撃強さを有する。
【0060】
さらに、該フィルムは好ましくは少なくとも250kJ/m、好ましくは少なくとも500kJ/m、より好まれるのは少なくとも2000kJ/mの横断方向における衝撃強さを有する。
【0061】
通常、該フィルムは最大でも4000kJ/mの横断方向における衝撃強さを有する。
【0062】
ポリプロピレンフィルムが医療用途に使用される場合には、該フィルムまたは物品は三つの一般的な手法、すなわちオートクレーブ、エチレンオキシド、または放射線の処理によって滅菌されることができる。多くの場合、好まれる手法は放射線滅菌であり、該手法ではフィルムはたとえば、ガンマ線もしくは電子線のような高エネルギー放射線、または紫外線のようなそれより低いエネルギー放射線によって生成された過酸化物ラジカルを用いて攻撃される。該フィルムの機械的特性の劣化を、滅菌処理はもたらす。
【0063】
本発明のフィルムが滅菌処理に付されるならば、該フィルムは加熱空気または高温水蒸気によって滅菌されることが好まれる。
【0064】
本発明の滅菌されていないフィルムは、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%の機械方向における破断伸びを有する。
【0065】
さらに、該滅菌されていないフィルムは、好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも140%の横断方向における破断伸びを有する。
【0066】
機械方向と横断方向とにおける高レベルの機械的強さおよび靭性、とりわけ機械方向と横断方向との双方におけるこれらの特性間の良好なバランスは、滅菌処理の後でも高い程度に保持されることができ、他方、配向されていないキャストまたはブローンフィルムでは滅菌後の異方性挙動は悪化さえする。
【0067】
したがって、滅菌後、本発明のフィルムは好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも40%の機械方向における破断伸びを有する。
【0068】
さらに、滅菌後、本発明のフィルムは好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%の横断方向における破断伸びを有する。
【0069】
本発明は、
a) マトリックスプロピレンポリマーおよびエチレンプロピレンゴムを有するプロピレン異相系コポリマー(A)
を含んでいる組成物が、ブロー成形法でフィルムへと形成され、該フィルムが次に1:1.1〜1:10の延伸比で機械方向に一軸配向されることを特徴とする、一軸配向ポリプロピレンブローンフィルムを製造する方法にも関する。
【0070】
本発明のフィルムが医療用途に使用される場合には、配向後のフィルムは、好ましくは高温水蒸気滅菌法によって滅菌されることができる。以下の実施例では、本発明のフィルムは熱風によって滅菌された。
【0071】
さらに、本発明のフィルムは種々の物品に適用可能である。当該フィルムから製造される物品は、自立パウチまたは粘着テープ等であることができる。
【0072】
実施例
【0073】
1. 測定方法
【0074】
a) 引張衝撃強さ/伸び
【0075】
50μmのブローンフィルムについてされるEN ISO 8256:1996規格に従う引張衝撃試験によって、引張衝撃強さは測定される。測定試料の寸法は80mm×10mmであった。表1および2の各引張衝撃強さ値については、10の測定値の平均が計算された。
【0076】
引張衝撃強さ試験において破断された試料について、引張衝撃強さ試験後の試料部分の全長を引張衝撃強さ試験前の試料の長さで割ることによって、破断伸びは手作業で測定された。
【0077】
b) メルトフローレート
【0078】
メルトフローレートはISO 1133に従って測定され、g/10分単位で示される。MFRはポリマーの流動性、したがって加工性の指標である。メルトフローレートが高ければ高いほど、ポリマーの粘度はそれだけ低くなる。ポリプロピレンについては230℃、ポリエチレンについては190℃において2.16kgの荷重を用いて、MFRは測定される。
【0079】
c) 密度
【0080】
密度はISO 1183に従って測定され、g/cm3またはkg/m3単位で示される。密度はポリマーの結晶性の指標である。
【0081】
2.実験
【0082】
a) 物質
【0083】
本発明の実施例で製造されるフィルムの出発物質は、商業的に入手可能であり、以下の特性を有していた。
【0084】
全ポリプロピレン組成物当たり70重量%の量で、ポリマーA)は使用された。これは、マトリックスポリマーとしてのポリプロピレンホモポリマー85重量%、およびエチレン50重量%を含有するエチレンプロピレンゴム15重量%を有し、0.85g/10分のMFR(230℃、2.16kg)を有する異相系プロピレンコポリマーであった。
【0085】
全ポリプロピレン組成物当たり30重量%の量で、ポリマーB)は使用された。これは、0.923g/cm3の密度、0.2g/10分のMFR(190℃、2.16kg)およびブテンコモノマー7重量%を有する直鎖低密度ポリエチレンであった。
【0086】
b) ブローンフィルム
【0087】
70mmのバレル直径、ならびにモノリップ冷却リングおよび内部バブル冷却部(IBC)とともに1.2mmのダイギャップを有する200mmの円形断面ダイを有する単軸押出機で、ブローンフィルムは製造された。溶融温度はダイ内で220℃であり、冷却空気の温度は15℃に保たれ、ブローアップ比(BUR)は2.5:1であった。押出機処理量、引取り速度およびBURの間の比によって、100μmのフィルム厚さが調節された。
【0088】
c) 配向工程
【0089】
配向されていないポリプロピレンフィルムを135℃の温度で再加熱し、機械方向へと延伸し、次にアニーリング後にフィルムが冷却されることによって、配向は達成される。1:2の比でフィルムは延伸される。
【0090】
d) 滅菌工程
【0091】
121℃に加熱されたオーブン中に2時間、フィルムは保存される。フィルム層同士の貼り付きを防ぐために、フィルム層の間に紙が入れられる。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
表1および2の結果から判る通り、機械方向および横断方向の双方における本発明のフィルムの機械的特性は、滅菌の前後においてバランスしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) マトリックスプロピレンポリマーおよびエチレンプロピレンゴムを有するプロピレン異相系コポリマー(A)
を含んでいる組成物から造られたブローンフィルムであって、1:1.1〜1:10の延伸比で機械方向に一軸配向されていることを特徴とする、ブローンフィルム。
【請求項2】
組成物が、
b) エチレンホモまたはコポリマー(B)
をさらに含んでいる、請求項1に従うフィルム。
【請求項3】
1:1.2〜1:4の延伸比で機械方向に一軸配向されていることを特徴とする、請求項1または2に従うフィルム。
【請求項4】
組成物が、プロピレン異相系コポリマー(A)50〜90重量%を含んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項5】
組成物が、エチレンホモまたはコポリマー(B)50重量%〜10重量%を含んでいることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項6】
プロピレン異相系コポリマー(A)のマトリックスプロピレンポリマーが、ホモポリマーであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項7】
プロピレン異相系コポリマー(A)のマトリックスプロピレンポリマーが、コモノマーとしてエチレンを含んでいるプロピレンコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項8】
マトリックスプロピレンコポリマーが、0.1〜10重量%のエチレンコモノマー含有量を有することを特徴とする、請求項7に従うフィルム。
【請求項9】
プロピレン異相系コポリマー(A)中のエチレンプロピレンゴムの含有量が、ポリマー(A)の全重量当たり35重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項10】
プロピレン異相系コポリマー(A)のエチレンプロピレンゴムが、該エチレンプロピレンゴムの全重量の40〜80重量%のC含有量を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項11】
ベースのプロピレン異相系コポリマー(A)が、0.1〜15g/10分のMFR(230℃/2.16kg)を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項12】
エチレンホモまたはコポリマー(B)が、直鎖エチレンコポリマーまたは低密度エチレンホモもしくはコポリマーであることを特徴とする、請求項2〜11のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項13】
直鎖エチレンコポリマーのコモノマーが、C〜Cアルファ−オレフィンであることを特徴とする、請求項12に従うフィルム。
【請求項14】
エチレンホモまたはコポリマー(B)が、0.900〜0.950g/cmの密度を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項15】
エチレンホモまたはコポリマー(B)が、0.1〜10g/10分のMFR(190℃/2.16kg)を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項16】
滅菌前に少なくとも100%の横断方向における破断伸びを有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項17】
配向後に滅菌されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項18】
滅菌後に少なくとも20%の横断方向における破断伸びを有することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に従うフィルム。
【請求項19】
a) マトリックスプロピレンポリマーおよびエチレンプロピレンゴムを有するプロピレン異相系コポリマー(A)
を含んでいる組成物が、ブロー成形法でフィルムへと形成され、該フィルムが次に1:1.1〜1:10の延伸比で機械方向に一軸配向されることを特徴とする、一軸配向ポリプロピレンブローンフィルムを製造する方法。
【請求項20】
配向後のフィルムが滅菌される、請求項19に従う方法。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれか1項に従うフィルムを含んでいる物品。
【請求項22】
自立パウチまたは粘着テープである、請求項21に従う物品。
【請求項23】
a) マトリックスプロピレンポリマーおよびエチレンプロピレンゴムを有するプロピレン異相系コポリマー(A)
のブレンドを含んでいる組成物を、1:1.1〜1:10の延伸比で機械方向に一軸配向されるブローンフィルムを製造するために使用する方法。
【請求項24】
請求項1〜18のいずれか1項に従うフィルムを、物品を製造するために使用する方法。

【公表番号】特表2009−518529(P2009−518529A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544848(P2008−544848)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011916
【国際公開番号】WO2007/076918
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】