説明

機械装置

【課題】発熱源を有する工作機械等において、工作機械等の製造コストやランニングを増大させることなく、発熱源の発熱に起因する工作機械機体の熱変形を有効に低減することを可能にする手段を提供する
【解決手段】 複数の構成部品と、前記構成部品に比べて発熱量の大きい発熱構成部品とを結合して構成される機械装置であって、前記構成部品の外表面に前記構成部品の熱拡散率以上の熱拡散率を有する複数のカバー部材を設け、前記構成部品の温度上昇むらを低減するとともに、前記構成部品の接合面に高剛性・低熱拡散率材料よりなる中間部材を狭持して設置し、前記構成部品間の結合部分による熱伝導を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械装置、特に発熱源を有する工作機械機体構造に関するものであり、より詳しくは、発熱源で発生した熱が工作機械機体に伝わることによって生じる熱変形を簡便に低減できる放熱構造を備えた工作機械機体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、金属などの被削材と工具を相対運動させて切削加工を行う機械装置である。工作機械にはモータや軸受、油圧源といった様々な内部熱源があり、これが工作機械機体の温度上昇、ひいては熱変形を発生させる。したがって、切削加工精度を向上させるには、内部発熱量を減少させて工作機械機体の温度上昇の低減を図ることが重要である。しかし、工作機械機体の温度上昇にむらが発生すれば、その熱変形が複雑となるため、切削加工精度を向上させることは困難となる。そこで、工作機械機体の温度上昇むらを効果的に軽減させる技術の開発が求められる。
【0003】
工作機械の熱変形の低減については従来から様々な方法が提案されている。例えば、工作機械の筐体内に冷却媒体の流路を設けて強制的に液体や気体の冷却媒体を供給および循環させる方法(例えば、特許文献1参照)が従来技術としてあげられる。
【0004】
工作機械機体に冷却媒体の流路を設けて強制的に液体もしくは気体の冷却媒体を供給・循環させる方法は主としてビルトインモータを搭載したビルトイン主軸の冷却に利用されているが、特許文献1に開示されているように、近年は、工作機械機体の熱変形の低減にも利用されるようになってきている。特許文献1に開示された従来技術では、工作機械のベッドの内部に液体の循環が可能な空洞を形成するとともに、液体循環手段によって空洞部に液体を供給して循環させることにより熱変形を低減しようとしている。
【0005】
また、工作機械機体の温度上昇むらを低減するため、工作機械の該表面を二層構造化する方法(例えば、特許文献2および特許文献3参照)、断熱材カバーを取り付けて室温変動の影響を遮断する研究(例えば、特許文献4、特許文献5、非特許文献1参照)や、熱平衡板を設置して熱変形を抑制する方法(例えば、非特許文献2参照)も提案されている。
【0006】
これらはいずれも、工作機械外表面の外側にカバーを設置して工作機械の外表面を二層化し、外表面とカバーの間の空気層で外部熱源から熱を遮断することにより工作機械周辺温度の変化の影響を小さくするものである。しかし、これらの研究で検討されている工作機械外表面の二層構造化は、モータなどの内部発熱によって機体の内部に熱を蓄積して逆に熱変形の増大を招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−066437号公報
【特許文献2】特開2004−098241号公報
【特許文献3】特開2002−355725号公報
【特許文献4】特開2001−168560号公報
【特許文献5】特開昭60−39034号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】垣野義昭・奥島啓弐:工作機械の熱変形に関する研究(第4報)、精密機械、40、 12(1974)、 1105。
【非特許文献2】是田規之・渡部健・橋本律男・水田桂司:熱平衡壁板を利用した室温変動による工作機械の熱変位抑制に関する研究、精密工学会誌、 60、 6(1994)、 853。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された方法のように、冷却媒体を工作機械内部に供給して循環させる方法では、このような熱変形低減法を用いない工作機械に比べて、その工作機械機体の質量が大きくなり、そのために工作機械機体の熱変形が定常状態に達するのに必要な時間が長くなり、発熱量の急激な変化に追従することができないといった問題があった。また、液体の冷却媒体を狭い流路内を通過させるためには高出力の流体供給装置が必要であり、工作機械の消費電力低減の観点から望ましくなかった。以上のように、液体の冷却媒体を使用する従来の熱変形低減法は工作機械の製造コストやランニングコストを増大させる要因を多く含んでいた。
【0010】
また、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、非特許文献1、非特許文献2に開示された方法では、工作機械の外部に存在する熱源が工作機械の熱変形に及ぼす影響を低減するため、工作機械の該表面の外側にカバーを設置し、工作機械の該表面を二層化している。この方法では、工作機械の該表面とカバーとの間に空気層を形成し、外部の熱源から断熱することによって、室温等の環境温度の変化による影響を低減しようとしている。しかし、これらの従来技術では、工作機械の機体に搭載されているモータなどの内部発熱による影響が考慮されておらず、工作機械の内部発熱による熱変形を低減することは困難である。
【0011】
従来の工作機械の熱変形低減法では、例えば、液体の冷却媒体を強制的に循環させる場合は、消費電力の大きい補機類が必要であるので、工作機械の熱変形を低減するための消費電力は膨大なものとなる。また、機械装置の筐体内部に流体の流路を形成するため、機械装置の構造を簡便なものにすることができない。なお、工作機械機体の外表面を二層構造にすることにより、室温や日射等の外部熱源の影響を受けないようにするといった方法も提案されているが、この方法では内部熱源に対する熱対策が不十分である。
【0012】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、発熱源を有する工作機械において、工作機械の製造コストやランニングを増大させることなく、発熱源の発熱に起因する工作機械機体の熱変形を有効に低減することを可能にする手段を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた本発明の請求項1に係る発明は、複数の構成部品と、前記構成部品に比べて発熱量の大きい発熱構成部品とを結合して構成される機械装置であって、前記構成部品の外表面に前記構成部品の熱拡散率以上の熱拡散率を有する複数のカバー部材を設け、前記構成部品の温度上昇むらを低減することを特徴とする機械装置を提供する。
【0014】
請求項2に係る発明は、複数の構成部品と、前記構成部品に比べて発熱量の大きい発熱構成部品とを結合して構成される機械装置であって、前記構成部品の外表面に前記構成部品の熱拡散率以上の熱拡散率を有する複数のカバー部材を設け、前記構成部品の温度上昇むらを低減するとともに、前記構成部品の接合面に高剛性・低熱拡散率材料よりなる中間部材を狭持して設置し、前記構成部品間の結合部分による熱伝導を抑制することを特徴とする機械装置を提供する。
【0015】
請求項3に係る発明は、コラムやベッド等の複数の機体構成部品と、発熱量の大きいスピンドル等の発熱部品とが結合されて構成され、スピンドルに把持した工具と被削材を複数の駆動機構によって相対運動させて前記被削材を所定の形状に加工する機械装置であって、前記機体構成部品の外表面に設けられている複数の前記構成部品の熱拡散率以上の熱拡散率を有するカバー部材と、前記機体構成部品の接合面に狭持して設置されている高剛性・低熱拡散率材料よりなる中間部材とを備えていることを特徴とする機械装置を提供する。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記カバー部材を前記構成部品の外表面に密着して設置することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の機械装置を提供する。
【0017】
上記において、構成部品は、リブ構造、中実構造などを含む。また、外表面に設けるとは、カバー部材の全体が構成部品に直接又は間接に接して設けられている場合に限らず、カバー部材の一部が内外表面とも露出し外気にさらされている場合も含む。また、熱拡散率は、熱伝導率を密度と比熱の積で除したものと定義される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る機械装置は、機体同士や発熱源と機体の結合部分、高熱拡散率材料、高剛性・低熱拡散率材料を活用することによって、工作機械の発熱源の発熱に起因する熱変形を簡便に防止するための機体構造を有するものであり、該工作機械の熱変形を低減するための電力消費量をきわめて少なくすることができるものである。
【0019】
本発明に係る機械装置によれば、高剛性・低熱拡散率材で形成された中間部材により、機体同士の結合部分における熱伝達が防止ないし抑制されるので、発熱源で発生した熱は機械装置全体には拡散しない。また、高熱拡散率材料を介して機体の温度上昇むらは迅速に低減できる。
【0020】
この機械装置においては、高剛性・低熱伝導率材料よび中間部材は簡素な構造であり、かつ電力等の追加のエネルギ消費を要しない。したがって、本発明に係る機械装置によれば、その製造コストやランニングコストを増大させることなく、発熱源の発熱に起因する機械装置の熱変形を有効かつ効率的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】リブ構造機体ユニットモデルを示す図である。
【図2】機体ユニットモデルI単体の温度上昇および温度上昇むらに及ほすアルミニウム製高熱拡散率熱平衡板設置の影響を調へる実験の概略を示す図である。
【図3】機体ユニットモデルI単体での温度上昇履歴の一例を示す図である。
【図4】機体ユニットモデルI単体の表面温度分布に及ほすアルミニウム製高熱拡散率平衡板の影響の実験結果を示す図である。
【図5】機体ユニットモデルI、II単体での温度上昇と温度上昇むらに及ほすアルミニウム製高熱拡散率熱平衡板の有無およびその板厚の影響の実験結果を示す図である。
【図6】機体ユニットモデルI単体での温度上昇と温度上昇むらに及ほすアルミニウム製高熱拡散率熱平衡板の有無およびその板厚の影響の数値シミュレーションを示す図である。
【図7】機体ユニットモデルIに機体ユニットモデルIIをボルト結合した複合機体モデルの結合面への断熱材挿入の影響を調へる実験の概略を示す図である。
【図8】機体ユニットモデルIに機体ユニットモデルIIがボルト結合された複合機体モデルの温度分布に及ほす結合面への断熱材挿入の影響の実験結果を示す図である。
【図9】複合機体モデルの機体ユニットモデルIと機体ユニットモデルIIの温度上昇むらに及ほす高熱拡散率熱平衡板と結合面への断熱材の挿入の影響の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施の形態(本発明を実施するための最良の形態)を具体的に説明する。なお、図1、図2、図7において、実質的に同一の構成要素には同一の参照番号が付されている。
【0023】
(実施の形態1)
工作機械機体の表面を高熱拡散率材料でカバーすれば、偏熱源を受ける工作機械機体の温度の均一化が促進されて工作機械機体の熱変形が低減されることが考えられる。そこで、実施の形態1ではそのことを検証するため、鋳鉄製リブ構造モデルを用いて、まず、その表面に高熱拡散熱平衡板を設置することがモデルの温度上昇および温度上昇むらにどのような影響を及ぼすかを実験的に検討した。
【0024】
図1は、リブ構造を有する機械構造物の温度上昇と温度上昇むらの低減に及ぼす高熱拡散熱平衡板の設置の効果の影響を調べるために用いたFC250製リブ構造の機体ユニットモデルI、IIを示す。熱源は面熱源とし、各モデルの図1中の位置に出力0.6 W/cm2シリコンラバーヒータで与えた。その場合、モデルI、IIの発熱量はそれぞれ、76.5 Wと52 Wであった。なお、シリコンラバーヒータは発熱面に熱伝導性の高いグリースを塗布して吸熱面に直接設置したが、その反対側の面には、その表面から空気中への熱放散をできるだけ少なくするため、セラミックス製断熱材とベークライト板を配置し固定した。
【0025】
図2は、図1に示した鋳鉄製リブ構造機体ユニットモデルI単体の温度上昇および温度上昇むらに及ぼすアルミニウム製高熱拡散熱平衡板設置の影響を調べる実験の概略図を示す。モデルは、その底面からの放熱も促進するため、底面両端の一部分のみをベークライト製ブロックで支持し、かつ底面を床面から70 mm離して設置した。これらのことは、機体ユニットモデルIIの場合も同様であった。
【0026】
本実験では、図2に示したように、同一板厚のアルミニウム製(A5052製)高熱伝導熱平衡板を機体ユニットモデルI、IIの前面と背面に取り付けた。いずれのユニットモデルの場合もアルミニウム製高熱拡散導熱平衡板の板厚は、2 mmと5 mmの二種類とした。なお、アルミニウム製高熱拡散熱平衡板はねじ締結し、締結面には熱伝導性の高いグリースを塗布した。
【0027】
表1は、機体ユニットモデルの温度測定条件を示す。機体ユニットモデルの温度測定には赤外線放射温度計を用い、加熱開始から2時間経過するまでの表面温度をコンピュータに記録した。なお、機体ユニットモデル表面の放射率を一定にするため、機体ユニットモデル外周面には黒色耐熱塗料を塗布した。熱電対を用いた温度測定結果との比較から、本実験の場合、放射率は0.96であった。
【0028】
【表1】

【0029】
図3は、機体ユニットモデルI単体での結果であり、図3中に示した6カ所の温度上昇
履歴を、アルミニウム製高熱伝導熱平衡板を設置しない場合と厚さ2 mmのアルミニウム製高熱拡散熱平衡板を設置した場合とで示す。なお、機体ユニットモデルの温度はアルミニウム製高熱拡散熱平衡板の表面温度で代用したが、加熱開始から2時間後に調べたアルミニウム製高熱伝導熱平衡板の温度測定点の温度はその測定点近傍の機体ユニットモデル本体の温度とほぼ同じであった。図4は、機体ユニットモデルI単体の加熱開始から2時間
後の表面温度分布に及ぼすアルミニウム製高熱拡散熱平衡板の影響であり、図3に対応する。板厚の厚いアルミニウム製高熱拡散熱平衡板を設置することにより、温度むらは小さくなった。
【0030】
図5は、機体ユニットモデルI、IIの最高温度上昇と最低温度上昇に及ぼすアルミニウム製高熱拡散熱平衡板の有無およびその板厚の影響を示す。アルミニウム製高熱拡散熱平衡板には最高温度上昇低減効果も認められたが、温度上昇むら低減効果の方が大きかった。ちなみに、アルミニウム製高熱拡散熱平衡板を設置しなかった場合と比較して、板厚5 mm のアルミニウム製高熱拡散熱平衡板を設置した場合、温度上昇むらは、機体ユニットモデルIで22 %、機体ユニットモデルIより小さかった機体ユニットモデルIIで37 %も減少した。
【0031】
高熱拡散熱平衡板で工作機械機体を覆って工作機械の熱変形低減を図るための基礎として、発熱源を有する鋳鉄製リブ構造の機体ユニットモデルを用いて実験した結果、工作機械機体外表面にアルミニウム製高熱拡散熱平衡板を設置することは機体モデルの温度上昇むら低減に有効であった。
【0032】
(実施の形態2)
鋳鉄製リブ構造モデルの温度上昇および温度上昇むらに及ぼす高熱拡散熱平衡板の設置およびその板厚の影響を数値シミュレーションにより検討した。
【0033】
実施の形態1で示した実験結果で、高熱拡散熱平衡板の設置は機体ユニットモデルの温度上昇むらの低減に有効であることがわかった。そこで、工作機械機体の温度上昇および温度上昇むらを低減させるための最適構造などを数値シミュレーションで見出すための基礎として、偏熱源を受ける鋳鉄製リブ構造モデルの温度上昇および温度上昇むらに及ぼす高熱拡散熱平衡板の設置およびその板厚の影響を数値シミュレーションにより検討した。偏熱源を受ける鋳鉄製リブ構造機体ユニットモデルの温度上昇および温度上昇むらに及ぼす高熱拡散熱平衡板の影響を数値シミュレーションで調べ、実施の形態1で示した実験結果と比較・検討した。
【0034】
数値シミュレーションには、市販の熱流体解析ソフトウェア(ソフトウェアクレイドル
製SCRYU/Tetra for Windows)を用い、図1(a)に示した機体ユニットモデルIをCADでモデル化して解析した。数値シミュレーションは定常解析とした。温度上昇解析は実験の場合と同様に構造ユニットモデルIの左上部に面熱源を設定して実施した。ただし、外壁面における熱伝達率は指定した。また、本解析モデルでは構造ユニットモデル内部の空気の流動を考慮した解析は解の収束性が悪かったため、機体ユニットモデルI内部の空気の
流動は考慮しなかった。表2と表3はそれぞれ、解析に用いた境界条件と物性値を示す。
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
以下、機体ユニットモデルIでの温度上昇と温度上昇むらに及ぼすアルミニウム製高熱拡散熱平衡板の影響に関する数値シミュレーション結果について検討する。
【0038】
図6は、構造ユニットモデルI単体での温度上昇と温度上昇むらに及ぼすアルミニウム製高熱拡散熱平衡板の設置およびその板厚の影響を示す。アルミニウム製高熱伝導熱平衡板の設置は温度上昇の低減にはあまり効果的ではなかったが、温度上昇むらの抑制には有効であった。図5中に示した機体ユニットモデルI単体での実験結果と比較した場合、温度上昇に違いはあるものの温度上昇むらに関しては同様な傾向にある。このことは、工作機械機体の温度上昇むらを低減させるのに最適な高熱伝導熱平衡板の設置方法などの検討が数値シミュレーションで可能であることを示唆する。
【0039】
偏熱源を受ける鋳鉄製リブ構造モデルの温度上昇および温度上昇むらに及ぼす、高熱伝導熱平衡板の有無およびその板厚の影響を数値シミュレーションにより検討した結果、実施の形態1に示した実験結果と同様、温度上昇むらの低減にはアルミニウム製高熱拡散熱平衡板が効果的であった。
【0040】
(実施の形態3)
それぞれに熱源がある大きさの異なる二つの鋳鉄製リブ構造モデルをボルト結合した場合、結合面に低熱伝導率材料を挿入して二つのモデル間の熱伝導を抑制することが各モデルの温度上昇および温度上昇むらにどのような影響を及ぼすか実験的に調べた。
【0041】
工作機械の機体はコラムやベッドなどの各種ユニットをボルト結合したものである。切削加工精度の及ぼす熱変形の影響を簡便に補正するためには、それぞれのユニットの温度が一様でかつ他のユニットと熱的に孤立していることが必要と考える。そこで実施の形態3では、図1中に示した機体ユニットモデルIに機体ユニットモデルIIをボルト結合した図7中のモデルに対して、両機体ユニットモデルの結合面に断熱材の挿入することが各機体ユニットモデルの温度上昇および温度上昇むらに及ぼす影響を調べた。表4は、その
ための実験条件を示す。なお、断熱材としては厚さ2 mmのベークライト板を用いた。
【0042】
【表4】

【0043】
各機体ユニットモデルの熱源の位置および発熱量、ならびに赤外線放射温度計を用いたモデル表面温度測定の測定条件などは、単体の機体ユニットモデルの場合と同じとし、また、モデル底面からの放熱を促進するために底面両端の一部分のみをベークライト製ブロックで支持し、かつ底面は床面から70 mm離して設置した。
【0044】
図8は、機体ユニットモデルIに機体ユニットモデルIIがボルト結合された複合機体モデルの温度分布に及ぼす結合面への断熱材挿入の影響を示す。なお、この場合、アルミニウム製高熱拡散熱平衡板は設置しなかった。断熱材を挿入した場合と比較して、断熱材を挿入しなかった場合、機体ユニットモデルIIで発生した熱が機体ユニットモデルIの左側上面から機体ユニットモデルIに流入したため、機体ユニットモデルIの温度むらは小さくなっている。このことは、良さそうに思われるが、機体ユニットモデルIの温度上昇および温度上昇むらが結合された機体ユニットモデルIIの発熱状態に左右されることを意味するものであり、加工精度の及ぼす工作機械機体の熱変形の影響の補正を困難にすることにつながる。
【0045】
図9は、機体ユニットモデルIと機体ユニットモデルIIのボルト結合面に断熱材を挿入することが、各機体ユニットモデルの温度上昇および温度上昇むらの及ぼす影響を示す。なお、機体ユニットモデルIの結果はアルミニウム製高熱拡散熱平衡板を設置しなかった場合であり、機体ユニットモデルIIの結果は厚さ5 mmのアルミニウム製高熱伝導熱平衡板を設置した場合である。各機体ユニットモデル単体での結果を示した図5との比較からつぎのことがわかる。すなわち、ボルト結合面に断熱材を挿入することは各機体ユニットモデルの熱的孤立性を高めるため、各機体ユニットモデルの温度上昇むらがボルト結合された他のユニットモデルの影響を受けにくくなった。
【0046】
各機体ユニットモデルのボルト結合面に断熱材を挿入することは各機体ユニットモデルの熱的孤立性を高め、各機体ユニットモデルの温度上昇むらに影響を及ぼしにくくする効果があった。
【符号の説明】
【0047】
1 リブ構造機体ユニットモデルI
2 リブ構造機体ユニットモデルII
3 アルミニウム板
4 シリコンラバーヒータ
5 セラミックス製断熱材+ベークライト板
6 電源
7 ベークライト板
8 台座
9 赤外線放射温度計
10 ベークライト板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成部品と、前記構成部品に比べて発熱量の大きい発熱構成部品とを結合して構成される機械装置であって、前記構成部品の外表面に前記構成部品の熱拡散率以上の熱拡散率を有する複数のカバー部材を設け、前記構成部品の温度上昇むらを低減することを特徴とする機械装置。
【請求項2】
複数の構成部品と、前記構成部品に比べて発熱量の大きい発熱構成部品とを結合して構成される機械装置であって、前記構成部品の外表面に前記構成部品の熱拡散率以上の熱拡散率を有する複数のカバー部材を設け、前記構成部品の温度上昇むらを低減するとともに、前記構成部品の接合面に高剛性・低熱拡散率材料よりなる中間部材を狭持して設置し、前記構成部品間の結合部分による熱伝導を抑制することを特徴とする機械装置。
【請求項3】
コラムやベッド等の複数の機体構成部品と、発熱量の大きいスピンドル等の発熱部品とが結合されて構成され、スピンドルに把持した工具と被削材を複数の駆動機構によって相対運動させて前記被削材を所定の形状に加工する機械装置であって、前記機体構成部品の外表面に設けられている複数の前記構成部品の熱拡散率以上の熱拡散率を有するカバー部材と、前記機体構成部品の接合面に狭持して設置されている高剛性・低熱拡散率材料よりなる中間部材とを備えていることを特徴とする機械装置。
【請求項4】
前記カバー部材を前記構成部品の外表面に密着して設置することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の機械装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−177820(P2011−177820A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43494(P2010−43494)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)