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機械設備の監視システム
説明

機械設備の監視システム

【課題】摺動部材の構成部品の摩耗や破損に起因した異常の有無を、その摺動部材を分解をせずに通常の使用状態のままで判定可能で、しかも、装置がコンパクトで、機械設備への装備が容易にでき、さらにシステム自体の故障に伴う誤診断を防止できる監視システムを提供すること。
【解決手段】摺動部材3の構成部材に組み付けられて摺動部材3の摺動動作時の物理量を検出するセンサユニット5と、このセンサユニット5の出力を所定の演算処理によって分析し、分析結果を予め用意しておいた基準データと比較して摺動部材における異常の有無を判定する情報処理部としてのマイクロコンピュータ7とを備えると共に、センサユニット5とマイクロコンピュータ7の少なくとも一方にフェールセーフ機能と自己診断機能の少なくとも一方の機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械設備の監視システムに関し、より詳しくは、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイド等の回転体や摺動部材を含む機械設備、例えば、鉄道車両設備、工作機械、風車等において、機械設備を分解することなく、異常等の状態を監視するのに好適な機械設備の監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の車軸を回転自在に支持する軸受装置では、摺動部材である軸受構成部品の摩耗や破損による不都合の発生を防止するために、定期的に分解目視検査を実施するようにしている。
この分解目視検査は、車両の一定期間の使用後に、軸受を車両から取り外して分解し、熟練した専門の検査担当者が、目視により分解した各構成部品の摩耗の度合いや傷の有無を確認する。この確認により、新品の部品にはない凹凸や摩耗などの異常が検出されれば、新品に交換し、再度組み立てを実施する。
【0003】
しかしながら、この分解検査は、車両から軸受を取り外す分解作業や、検査済みの軸受構成部品を再度組み立て直す組み込み作業に多大な労力がかかり、車両の保守・管理コストの大幅な増大を招くという問題があった。
【0004】
また、例えば、組み立て直す際に検査前には無かった打痕を軸受構成部品につけてしまうなど、検査自体が軸受の欠陥を生む原因となる虞もある。
また、限られた時間内で多数の軸受を目視で検査するため、欠陥を見落とす可能性が残るという欠点もあった。
更に、目視検査では、欠陥の程度の判断に個人差が生じ、実質的には欠陥がなくても欠陥有りと見なされて部品交換が行われてしまう場合があり、無駄にコストがかかることにもなる。
【0005】
そこで、このような分解検査や目視検査による不都合を解消するべく、軸受の回転時に発生する音や振動を検出するセンサと、このセンサの検出信号を分析して異常の有無の判定を行う情報処理装置とを備え、前記情報処理装置としてパーソナルコンピュータを使用する監視システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−71519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前述した従来の監視システムにおいて情報処理装置として使用するパーソナルコンピュータは、通常、汎用筐体内に、マザーボードや、前記センサの出力を受けるインターフェースを装着した構成であり、情報処理装置が比較的に大きな設置スペースを必要とすると共に、振動等に弱い傾向がある。
そのため、軸受装置等の振動が影響しないように、軸受装置等からある程度の距離を隔てた位置に、パーソナルコンピュータを設置するスペースを確保することになる。さらにこの監視システムは、サイズが大型化してしまうため、大きな設置スペース等の確保が難しい機械設備の場合には、実用性に乏しいという問題が生じた。
【0008】
また、センサによる検出信号のSN比の低下を防止するために、センサはできるだけ軸受装置の構成部品自体に組み込むことが好ましい。しかし、外部の振動等に弱く且つ大型のパーソナルコンピュータは、振動発生源となる軸受装置等からできるだけ離さなければならない。その結果、センサとパーソナルコンピュータとが所定以上離れることになり、センサとパーソナルコンピュータとの間の情報伝送路に対する外部ノイズの影響による検出精度の低下等の問題が発生する虞もあった。
【0009】
さらに、軸受装置の振動等の影響により、監視システム内のハードウェアが故障して誤診断するような場合には、例えば、軸受装置等が正常であるにもかかわらず故障と診断して機械設備を停止してしまい、機械設備の稼働率を低下させてしまう問題があった。
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸受装置等の摺動部材の摩耗や破損に起因した異常の有無を、その摺動部材を分解せずに通常の使用状態のままで判定することができ、手間のかかる分解・組み立て作業の頻度を減少させて保守・管理コストを低減させることができる機械設備の監視システムを提供することにある。さらに、装置がコンパクトであるため摺動部材を含む機械設備に装備し易く、また、センサと情報処理装置との接近によって外部ノイズの影響を回避して、異常の有無の診断の信頼性を向上させることができ、加えて、システム自体の故障に伴う誤診断を防止できる機械設備の監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る機械設備の監視システムは、
機械設備の摺動部材又は回転体の異常の有無を検出する機械設備の監視システムであって、
前記機械設備から発せられる信号を検出する1又は複数個のセンサ素子を収容保持するセンサユニットと、
前記センサユニットの出力を基に前記機械設備の異常の有無を判定する演算処理を行う演算処理器と、を備え、
前記演算処理器は、マイクロコンピュータから構成されており、
前記監視システムは、前記センサユニットに設けられて前記センサ素子の異常及び前記センサユニットの配線の異常を検知する自己診断部と、前記センサユニットのフェールセーフ機能を保つ二重化された配線と、を有し、
前記自己診断部は、電圧レベルを閾値と比較して前記センサ素子の異常及び前記センサユニットの配線の異常を判定し、前記自己診断部で前記センサユニットの配線の異常が検知されたとき、前記二重化された配線の予備配線を使って前記機械設備の異常の検出が続けられることを特徴としている。
【0012】
なお、マイクロコンピュータで行なわれる処理には、増幅後の信号から所望の周波数成分のみを抽出するフィルタ処理と摺動部材又は回転体の回転速度検出処理と絶対値処理またはエンベロープ処理などの波形処理を施して周波数領域のデータに変換して予め定められた軸受の損傷に起因した特定の周波数成分との比較照合処理とその比較結果から摺動部材又は回転体の良否を判定する処理を行う判定処理とその判定結果や各信号の送信処理などがある。診断精度を上げるために比較照合などの判定方法は、特開2003−130763や特開2003−202276等に開示されたものを組み合わせてもよい。また、結果表示部を設けずに診断結果に基づき、直接制御系に命令を送って制御してもよい。
【0013】
ここで、摺動部材としては、転動体等の回転による摺動を行う回転摺動部材の他、直線的な摺接面上を滑動する直線摺動部材も含む意であり、具体的には、転がり軸受や滑り軸受等の構成部品、ボールねじや、リニアガイド等の直動機構の構成部品、或いは、ギア、ベルト、チェーン、カムのような摺動を伴う機械要素機構などが該当する。
また、摺動部材の摺動動作時の信号とは、摺動部材の回転又は直線移動等の摺動状態に応じて変化する信号で、例えば、摺動部材の発生する音や振動、更には、回転速度や温度、摺動部材構成部品上に生じる歪み等が考えられる。
【0014】
このように構成された機械設備の監視システムは、簡単な構成で回転体や摺動部材を含む機械設備の状態を分解することなく監視でき、回転体や摺動部材を含む機械設備の欠陥または異常を精度よく診断・検査することができる。さらに、センサユニットや演算処理器のようなシステム自体の故障に伴う誤診断を防ぎ、信頼性を高めることができる。この場合、センサユニットだけでなく、演算処理器が、フェールセーフ機能と自己診断機能の少なくとも一方の機能を有していてもよい。
【0015】
また、センサユニットが、機械設備の摺動部材又は回転体に組み込まれることで、よりコンパクト化でき、信号伝達に伴うノイズの影響を小さくできる。
【0016】
さらに、演算処理器は、自己診断機能を有する主演算処理器と副演算処理器とからなり、前記主演算処理器の自己診断機能が働いた場合に、前記主演算処理器が演算処理を停止し、前記副演算処理器がバックアップとして機能するように二重化されていることで、監視システムの信頼性が向上する。
【0017】
また、前記演算処理器は、常時演算処理を行う主演算処理器と副演算処理器とからなり、前記主演算処理器及び副演算処理器は、相互間での各演算値の比較、参照、交換の少なくとも一つを行うことにより相互監視を行うことが可能となり、監視システム自体の健全性を確認できる。
【0018】
また、本発明の機械設備の監視システムは、更に、前記センサユニットが、温度、振動変位、振動速度、振動加速度、力、歪、音響、アコースティックエミッション、超音波、回転速度、のうち少なくとも1つ以上の検出を可能とすることを特徴とするものである。
【0019】
このようにすると、センサユニットにより、温度、振動変位、振動速度、振動加速度、力、歪、音響、アコースティックエミッション、超音波、回転速度、のうち少なくとも1つ以上の検出が可能になるため、回転体や摺動部材を含む機械装置の状態を確実に監視することができるとともに、回転体や摺動部材を含む機械設備の欠陥又は異常を確実に検査することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、予め摺動部材又は前記摺動部材を支持する機構部品に組み込まれているセンサユニットの出力を情報処理装置としてのマイクロコンピュータによって分析すると共に、その分析結果を予め用意しておいた基準データと比較することで、摺動部材の構成部品の摩耗や破損に起因した異常の有無を判定している。これにより、回転体や摺動部材自体やこれらを含む機械設備自体を分解せずに、通常の使用状態のままで機械設備の状態を監視することができ、回転体や摺動部材を含む機械設備の欠陥または異常を精度よく診断・検査することができる。
従って、手間のかかる分解・組み立て作業の頻度を減少させて保守・管理コストを低減させることができる。さらに、突発的なノイズ等、診断に及ぼす影響を小さくすることができ、監視が効率的に行なえるため、より精度の高い診断が可能となり、目視による検査では見落とす可能性がある欠陥の発見が可能となる効果もある。
【0021】
また、情報処理装置として、マイクロコンピュータを使用する構成で、マイクロコンピュータ自体は、1チップ又は1ボードの小さな専用ユニットとすることができるため、情報処理装置として汎用のパーソナルコンピュータを使用する従来の監視システムと比較すると、システム全体を大幅にコンパクト化でき、装備に必要な占有スペースが少なくて済むため、摺動部材を含む機械設備への装備が容易になる。
【0022】
また、監視システムは、フェールセーフ機能と自己診断機能の少なくとも一方の機能を有しているので、検出器や演算処理器のような監視システム自体の故障に伴う誤診断を防ぎ、信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る機械設備の監視システムの第1実施形態を示したものである。
【0024】
この第1実施形態の機械設備の監視システム1は、鉄道車両の車軸を支承する転がり軸受3に対して、該転がり軸受3の各構成部品の摩耗や破損による異常の発生を検出するものである。即ち、車軸を支承する転がり軸受3が、異常の有無の診断対象となる摺動部材であり、転がり軸受3によって車軸を支承した台車又は鉄道車両が機械設備に該当する。
【0025】
本実施形態の場合、軸受3は、軸受の回転動作時の音又は振動等の物理量を検出して電気信号として出力するセンサユニット5を、軸受の構成部品である外輪に組み付けたセンサ付軸受である。一つの車両には、複数個のセンサ付軸受3が使用される。
【0026】
本実施形態の機械設備の監視システム1は、各軸受3毎に装備された検出器としての複数個のセンサユニット5と、各センサユニット5の出力を所定の演算処理によって分析し、分析結果を予め用意しておいた基準データと比較して軸受3における異常の有無を判定する演算処理部としてのマイクロコンピュータ7と、このマイクロコンピュータ7の分析結果や判定結果を所定の表示形態で表示したり、前記判定結果に応じた制御信号を鉄道車両の制御系にフィードバックしたりする制御処理部9とを備えている。
【0027】
ここで、摺動部材である軸受3の摺動動作(回転動作)時の物理量とは、軸受3の回転状態に応じて変化する物理量で、例えば、軸受3の発生する音や振動(振動変位、振動速度、振動加速度)、AE(Acoustic Emission)、更には、回転速度や温度や力、超音波、摺動部材構成部品上に生じる歪み等の各種の情報が考えられる。
【0028】
本実施形態の場合、センサユニット5は、軸受3の回転状態に応じて変化する物理量として、音J1、振動J2、軸受の回転速度J3、軸受温度J4、軸受外輪上に生じる歪みJ5等、多数の情報を検出信号11として検出する。
【0029】
センサユニット5は、図2に示されるように、軸受外輪に固定されるセンサケース5a内に各種の情報毎のセンサ素子5bを収容保持しており、センサ素子5bからの測定信号は検出回路5cに入力される。そして、検出回路5cで検出された検出信号11は、マイクロコンピュータ(演算処理部)7に送られる。さらに、センサユニット5は、センサ素子5bを含む検出回路5cの自己診断を行う自己診断部5dを備える。
【0030】
自己診断部5dは、センサ素子5bの動作不良やユニット内の断線、ショートなどの異常を診断しており、例えば、電圧レベルを閾値と比較して異常を判定する電圧管理が行なわれる。自己診断部5dは、センサユニット5自体に異常が生じていると診断した際、その異常を示す異常通知信号をマイクロコンピュータ(演算処理部)7などに送信するなどの機能を有している。これにより、センサユニット5の故障に伴う誤診断や未診断を防ぐことができる。
また、センサユニット5は、フェールセーフ機能として、配線が二重化されており、断線した配線に対して予備の配線を利用して信号検出ができるように構成されている。
【0031】
なお、信号の検出は演算処理部で検出信号11毎に分配処理されるので、センサ付軸受3に組み込まれたセンサユニット5は、各検出信号11を検出する各センサ素子5bを複数収容したものであってもよく、複数の信号を同時に検出可能な複合センサが収容されてもよい。
【0032】
さらに、センサユニット5に、防水・防油・防塵・防錆・防湿及び耐熱性・耐電磁ノイズ性の機能を付加または処理することで、ノイズの影響を受けることが少なくなり好ましい。また、本実施形態の場合、検出回路5cには、各センサの出力信号を増幅して出力する出力増幅手段が内蔵されている。
【0033】
前記マイクロコンピュータ7は、本実施形態のシステム用に開発された1チップマイクロコンピュータ、又は1ボードマイクロコンピュータで、図3に示すように、各センサユニット5から送信された検出データを一時的に蓄積すると共に、蓄積したデータをそのデータの種類に応じて装備された分析部13,14,15に分配するデータ収集・分配機能17と、軸受3の諸元及び軸受3の正常時の音や振動等の各種の物理量を基準データとして蓄積している内部メモリ19と、各分析部13,14,15における分析結果を内部メモリ19に蓄積されている基準データと比較することによって、異常の有無の判定及び異常部位の特定を行う比較判定機能21とを備え、各分析部13,14,15における分析結果及び前記比較判定機能21における判定結果を制御処理部9に出力する。
なお、異常の有無の判定を行う基準データとして、予定設定した値を用いる代わりに、複数の測定対象の測定データから算出した値を用いることができる。
【0034】
分析結果と比較する基準データとは、診断対象である軸受3の正常時において前記センサユニットから検出される各種の物理量であり、具体的には、正常な軸受3の音情報、振動情報、軸受の回転速度情報、軸受温度情報、軸受外輪上に生じる歪み情報等の他、軸受3の特定部位の摩耗や破損によって生じる周波数成分の情報等である。
【0035】
本実施形態の場合、分析部13は振動情報の分析用であり、振動に含まれる周波数スペクトルを求める。分析部14は回転速度情報の分析用で軸受の回転速度を求める。分析部15は、温度情報の分析用であり、軸受近傍の温度を測定する。各分析部13,14,15は、入力情報を、基準データとの比較が可能なように、不要部分(ノイズ)のカットや必要部分の明確化等を含めた規定の分析処理を行う。
具体的に説明すると、センサユニット5が検出した振動情報の場合は、データ収集・分配機能17と分析部13との間に装備されたフィルタ処理機能25によってノイズ成分の除去又は特定の周波数成分を抽出するフィルタ処理を受け、フィルタ処理後の振動信号が分析部13に渡される。
分析部13は、入力する振動信号に対して、絶対値処理又はエンベロープ処理及び周波数分析等の規定の分析処理を行って、入力した振動データを基準データとの比較が可能な周波数領域のデータに変換する。
【0036】
比較判定機能21は、前記分析部13の分析結果によって得た周波数領域のデータと、前記内部メモリ19に格納されている基準データとを比較し、基準データとして軸受の特定部位の摩耗や破損に起因した周波数成分のデータを使用することで、軸受の構成部品における摩耗や破損の有無や程度、或いは摩耗や破損が生じている部品等を判定することが可能になる。
比較判定機能21では、周波数成分の比較による判定等を行う際に、他の分析部14,15から入手する回転速度や温度の分析結果、及び内部メモリ19に蓄積されている仕様諸元等の各種データを参照し、判定の正確性を期す。
【0037】
なお、分析部13,14,15や比較判定機能21における具体的な処理は、詳述しないが、上記の方法に限るものではなく、公知の種々の方法、或いは本願出願人が先に提案している各種の判定手法(特開2003−130763、特開2003−202276、特開2003−130724、特願2002−338424等)等、複数の方法を使用することができる。
【0038】
制御処理部9は、マイクロコンピュータ7の分析結果や判定結果を所定の表示形態で表示する表示手段としての結果出力部27と、軸受3が組み込まれている車両の駆動機構の動作を制御する制御系に前記比較判定機能21の判定結果に応じた制御信号をフィードバックする制御器29とを備えている。
【0039】
結果出力部27は、具体的には、モニターや画像表示やプリンタへ印刷出力によって、マイクロコンピュータ7の分析結果や判定結果を通知する他、マイクロコンピュータ7の判定結果が異常有りの場合には、警告灯の点滅や警報機の作動による通知を行う。なお、判定結果は、メモリやHDDなどの記憶媒体に保存されてもよく、結果出力部27を介してリアルタイムに表示されてもよい。
【0040】
制御器29は、例えば、マイクロコンピュータ7の判定結果が異常有りの場合に、異常の程度に応じて、車両の走行停止や、速度の減速等を示す制御信号を車両の走行制御器に送る。
【0041】
また、上記の自己診断方法により、センサユニット5の断線などが検知された場合には、予備の配線に切り換えて信号検出することでセンサユニット5のフェールセーフ機能を図ることができる。
【0042】
以上に説明した本実施形態の機械設備の監視システム1では、予め摺動部材としての転がり軸受3に組み込まれているセンサユニット5の出力を情報処理装置としてのマイクロコンピュータ7によって分析すると共に、その分析結果を予め用意しておいた基準データと比較することで、転がり軸受3の構成部品の摩耗や破損に起因した異常の有無を判定するため、転がり軸受3自体や転がり軸受3を含む鉄道車両自体を分解せずに通常の使用状態のままで判定することができる。
【0043】
従って、手間のかかる分解・組み立て作業の頻度を減少させて保守・管理コストを低減させることができる。また、規定の演算処理による分析や比較で機械的に判定を行うため、従来の目視検査と比較すると、検査担当者の熟練度や個人差によって判定がばらつく虞がなく、異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる。
【0044】
また、情報処理装置として、マイクロコンピュータ7を使用する構成で、マイクロコンピュータ7自体は、1チップ又は1ボードの小さな専用ユニットとすることができるため、情報処理装置として汎用のパーソナルコンピュータを使用する従来の監視システムと比較すると、システム全体を大幅にコンパクト化でき、装備に必要な占有スペースが少なくて済むため、摺動部材を含む機械設備(即ち、鉄道車両等)への装備が容易になる。
【0045】
また、転がり軸受3を構成する機構部品である外輪等に直にセンサユニット5が組み込まれて、センサユニット5が高感度で転がり軸受3の発生する物理量を検出するため、転がり軸受3の周囲の他の器物が発生する音や振動の周波数成分のピークが、センサユニット5の検出する信号のSN比に悪影響を及ぼす危険が低減し、センサユニット5の出力信号のSN比の改善によって、分析・判定の精度の向上を図ることができる。
【0046】
更に、情報処理装置が、コンパクト化でき、且つ汎用の大きな筐体等を使用せずに済むため、情報処理装置としての耐震性を向上させることが容易にでき、その結果、センサユニット5と共に転がり軸受3に接近して装備することができ、転がり軸受3とマイクロコンピュータ7との接近によって外部ノイズの影響を回避して、異常の有無の診断の信頼性を向上させることもできる。
【0047】
また、本実施形態の監視システムは、検出器であるセンサユニット5自体の異常を検出することができ、検出器が自己診断機能とフェールセーフ機能の少なくとも一方の機能を有していることから、検出器の故障に伴う誤診断を防止することができる。
【0048】
なお、センサユニット5の異常を検知する他の方法としては、演算処理部7において、複数のセンサユニット5からのいずれかの情報の信号を比較し、他のセンサユニット5からの信号に対して閾値より小さく信号出力されているセンサユニット5について異常と診断する機能でもよい。これにより、監視システムは、その一部である検出器に対しての自己診断機能を有することになる。
【0049】
また、本実施形態では、センサユニット5自体に、その出力信号を増幅して出力する出力増幅手段(アンプ)が内蔵されているが、センサ出力を増幅する出力増幅手段は、センサユニット5とマイクロコンピュータ7との間に接続したり、マイクロコンピュータ7側に内蔵したりする構成としてもよい。
但し、出力増幅手段をセンサユニット5に内蔵させた構成の場合は、センサユニット5の出力信号が強いため、センサユニット5とマイクロコンピュータ7との間の信号伝達経路等で加わるノイズの影響を抑えることができ、ノイズによる処理精度の低下を防止して、異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる。
【0050】
(第2実施形態)
図4は、本発明に係る機械設備の監視システムの第2実施形態の概略構成を示すブロック図である。なお、第1実施形態と同等の構成を有する部分については、同一の符号を付し、説明を省略或いは簡略化する。
【0051】
本実施形態の機械設備の監視システム31では、演算処理部を自己診断可能な主演算処理部32と副演算処理部33と2個で構成し、演算処理部を二重化している。主演算処理部32は、通常時における演算処理を行っているが、主演算処理部32に異常が発生した場合は、自己診断機能が働き、主演算処理部32は演算処理を停止する。同時に、副演算処理部33は、主演算処理部32からの異常通知信号などにより主演算処理部32の異常を検知することで、演算処理を行い、主演算処理部32が故障した際のバックアップとして機能する。なお、主演算処理部32と副演算処理部33はそれぞれ、第1実施形態のマイクロコンピュータ7と同等の機能を有している。
従って、本実施形態では、演算処理部が二重化されているので、演算処理部のフェールセーフ機能が保たれ、演算処理部の故障に伴う誤診断や未診断を防ぐことができ、監視装置の信頼性を向上することができる。
【0052】
(第3実施形態)
図5は、本発明に係る機械設備の監視システムの第3実施形態の概略構成を示すブロック図である。なお、第1実施形態と同等の構成を有する部分については、同一の符号を付し、説明を省略或いは簡略化する。
【0053】
本実施形態の機械設備の監視システム41では、第2実施形態と同様に、演算処理部を主演算処理部42と副演算処理部43と2個で構成し、演算処理部を二重化している。通常時における演算処理を主演算処理部42と副演算処理部43の両方で行い、各計算値をお互いに比較・交換・照合することで演算処理部の相互監視し、演算処理部の自己診断を可能としている。これにより、システム内の異常検知が早期に自動で行なわれるので、監視システム全体の信頼性が向上する。また、副演算処理部43は相互監視だけでなく、並列処理やバックアップとしても使用してもよい。
【0054】
なお、本発明に係る機械設備の監視システムにおいて、検出器、演算処理部、制御処理部間での信号の伝達手段は、的確に信号を送受信可能であればよく、有線でも、ネットワークを考慮した無線を利用してもよい。例えば、センサユニット5とマイクロコンピュータ7との間は、信号ケーブル等で接続せず、無線通信によって信号の送受を行うようにしてもよい。このようにすると、センサユニット5の出力を、摺動部材を有する設備上に布設した信号ケーブルでマイクロコンピュータ7に伝達する場合と比較すると、マイクロコンピュータ7や制御処理部の配置自由度が高まり、当該機械設備の監視システムの設置が更に容易になる。
【0055】
また、マイクロコンピュータ7からの信号を地上に設置された各信号送受信装置で受信し、地上に設置された情報処理センターなどへと送信してもよい。機械設備が鉄道車両である場合には、信号送受信装置は、線路際や駅や踏切などを利用して複数箇所に設置し、信号の送受信はワイヤレスによる無線通信や電話回線などの既存の設備等を利用して有線によるものでもよい。なお、ネットワークを利用することにより各機能は連結されるので1ヶ所にある必要はなく、多彩にアレンジすることが可能である。情報処理センターでは、マイクロコンピュータから送信されるデータから各軸受状態などを監視することが可能となる。送信されるデータには各軸受にID番号を付加するなどにより選別を可能にすることができる。
【0056】
また、以上の実施形態では、マイクロコンピュータ7の装備位置については、言及してないが、好ましくは、マイクロコンピュータ7もセンサユニット5と共に、摺動部材又は前記摺動部材を支持する機構部品に組み付けた構成とすると良い。このようにすることで、センサユニット5とマイクロコンピュータ7との双方を、互いに接近して同一の構成部材上に配置するシステム装備形態を得ることができ、センサユニット5とマイクロコンピュータ7との間を接続する信号線長が冗長にならないため、信号線の散乱等による不都合の発生を防止することができる。
【0057】
また、センサユニット5とマイクロコンピュータ7との間の信号伝送路への外部ノイズの影響を低減して、検出信号に対する信頼性を向上させることもできる。
【0058】
なお、上記実施形態において、異常の有無を診断する摺動部材は、上記の転がり軸受に限らない。具体的には、各種の転がり軸受の他、滑り軸受等も、摺動部品に該当するものである。更に、ボールねじや、リニアガイド等の直動機構の構成部品なども、本発明の診断対象の摺動部材に該当する。また、鉄道車両における歯車や車輪など、取り外しや組付けに多大な手間がかかる各種の大型の回転型摺動部材も、本発明の異常診断の対象とすることができる。
【0059】
なお、上記の各実施形態では、監視システムによる異常の検出が速やかに機械設備の保全や運転管理に繋がるように、機械設備の監視システム自体に、前記機械設備においてその摺動部材が組み込まれている機構の動作を制御する制御器に、判定結果に応じた信号をフィードバックする制御処理部を装備した。しかし、制御処理部は、監視システムに接続される独立した装備(装置)としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る機械設備の監視システムの第1実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したセンサユニットの概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示したマイクロコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る機械設備の監視システムの第2実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る機械設備の監視システムの第3実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1 機械設備の監視システム
3 転がり軸受(摺動部材)
5 センサユニット
5a センサケース
7 マイクロコンピュータ(情報処理部)
9 制御処理部
13,14,15 分析部
17 データ収集・分配機能
19 内部メモリ
21 比較判定機能
25 フィルタ処理機能
27 結果出力部
29 制御器
31 異常診断システム
41 異常診断システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械設備の摺動部材又は回転体の異常の有無を検出する機械設備の監視システムであって、
前記機械設備から発せられる信号を検出する1又は複数個のセンサ素子を収容保持するセンサユニットと、
前記センサユニットの出力を基に前記機械設備の異常の有無を判定する演算処理を行う演算処理器と、を備え、
前記演算処理器は、マイクロコンピュータから構成されており、
前記監視システムは、前記センサユニットに設けられて前記センサ素子の異常及び前記センサユニットの配線の異常を検知する自己診断部と、前記センサユニットのフェールセーフ機能を保つ二重化された配線と、を有し、
前記自己診断部は、電圧レベルを閾値と比較して前記センサ素子の異常及び前記センサユニットの配線の異常を判定し、前記自己診断部で前記センサユニットの配線の異常が検知されたとき、前記二重化された配線の予備配線を使って前記機械設備の異常の検出が続けられることを特徴とする機械設備の監視システム。
【請求項2】
前記演算処理器は、自己診断機能を有する主演算処理器と副演算処理器とからなり、前記主演算処理器の自己診断機能が働いた場合に、前記主演算処理器が演算処理を停止し、前記副演算処理器がバックアップとして機能するように二重化されていることを特徴とする請求項1に記載の機械設備の監視システム。
【請求項3】
前記演算処理器は、常時演算処理を行う主演算処理器と副演算処理器とからなり、前記主演算処理器及び前記副演算処理器は、相互間での各演算値の比較、参照、交換の少なくとも一つを行うことにより相互監視を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の機械設備の監視システム。
【請求項4】
前記センサユニットは、前記摺動部材又は回転体に組み込まれることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の機械設備の監視システム。
【請求項5】
前記センサユニットが、温度、振動変位、振動速度、振動加速度、力、歪、音響、アコースティックエミッション、超音波、回転速度、のうち少なくとも1つ以上の検出を可能とすることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の機械設備の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−232736(P2007−232736A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114102(P2007−114102)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【分割の表示】特願2003−415068(P2003−415068)の分割
【原出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】