説明

機能化カーボンブラック充填ゴム

本発明は、機能化カーボンブラック充填ゴムに、かかるゴム混合物の製造に、ならびに高強化成形ゴム製品を製造するために、特に、特に低い転がり抵抗性、特に湿潤表面上での良好な非滑り特性および良好な耐摩耗性を有するタイヤを製造するために特に使用される加硫ゴムの製造でのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラックを含む機能化ゴムに、このタイプのゴム混合物の製造に、およびまたゴム加硫物の製造のためのそれらの使用に関する。これらは、これらが特に低い転がり抵抗性、ならびに特に高い湿潤滑り抵抗性および耐摩耗性を有する、高強化ゴム成形品の製造のために、特にタイヤの製造のために主として好適である。
【背景技術】
【0002】
二重結合を含有するアニオン重合溶液ゴム、例えば、溶液ポリブタジエンおよび溶液スチレン−ブタジエンゴムは、転がり抵抗性の低いタイヤトレッドの製造中において相当するエマルジョンゴムよりも有利である。これらの利点は、とりわけ、ビニル含有率および付随するガラス転移温度ならびに分子分岐度の可制御性にある。特別な利点は、タイヤの湿潤滑り抵抗性および転がり抵抗性に関して実際の用途においてこれから生じる。例えば、(特許文献1)は、溶液スチレン−ブタジエンゴムおよびシリカからのタイヤトレッドの製造を記載している。特性のさらなる向上のために、ジメチルアミノプロピル−アクリルアミドを使用する(特許文献2)に記載されているように、ならびにシリルエーテルを使用する、およびアミンまたはベンゾフェノン誘導体を使用する(特許文献3)に記載されているように、末端基変性の多数の方法が開発されてきた。しかしながら、ゴムの高分子量のために、末端基の重量による割合は低く、これらはそれ故、フィラーとゴム分子との間の相互作用に小さい影響を及ぼし得るにすぎない。(特許文献4)は、カルボキシ基を含有する、かつ、10〜500重量部のフィラーの割合の、ビニル芳香族化合物およびジオレフィンからなる比較的高機能化のコポリマーを開示している。ここで使用されるフィラーは主としてシリカである。幾つかの場合には、シリカは、著しくより低い割合のカーボンブラックと一緒に使用される。シリカは、シリカ表面のOH基と機能化ゴムのカルボキシ基との簡単な相互作用を可能にするという利点を有する。カーボンブラックはそれ故、そのより強い疎水性のために、追加成分としてのみ使用することができ、混合物の着色を提供する。
【0003】
しかしながら、シリカを使用する混合物の欠点は、シランの助けを借りてのみシリカをゴムへ均一に組み込むことができるので、それらの加工がより複雑であることである。これらのシランはさらに非常に高価である。主フィラー成分としてカーボンブラックを使用する混合物は、高価なシランを除外することができるので、あまり高価ではないという利点を有する。それらは加工するのがより容易であり、これは混合時間および生産コストを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,227,425号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A334 042号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第A447,066号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第A1000971号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的はそれ故、機能化ゴムおよびフィラーからなり、安価であり、より容易に製造することができ、かつ、向上した湿潤滑り抵抗性、より低い転がり抵抗性、ならびに高い機械的強度および向上した摩耗性能のタイヤを製造するために使用することができる新規混合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
意外にも、カーボンブラックを含むある種のゴム混合物が、機能化ゴムでこの目的を達成することがここで見いだされた。
【0007】
本発明はそれ故、少なくとも1種のゴムおよび、ゴムの100重量部を基準として、10〜500重量部のカーボンブラックからなるゴム混合物であって、前記ゴムが溶液中でのジオレフィンの重合および、適切な場合、ビニル芳香族モノマーの重合とその後の官能基の導入とによって製造されており、このゴムが0.02〜3重量%、好ましくは0.05〜2重量%の結合した官能基および/またはそれらの塩と、0〜60重量%、好ましくは15〜45重量%の、含有率の共重合したビニル芳香族モノマーと、また40〜100重量%、好ましくは55〜85重量%の、含有率のジオレフィンとを有し、1,2−結合ジオレフィンの含有率(ビニル含有率)が、使用される溶液ゴムを各場合に基準として、0.5〜95重量%、好ましくは10〜85重量%であるゴム混合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的のために、カーボンブラックは、それらのBET表面積が9〜200m/gである、火炎法、チャンネル法、ファーネス法、ガスプロセス、サーマルプロセス、アセチレン法またはアーク法によって製造されたカーボンブラック、例えば超摩耗ファーネス(SAF)、中間SAF(ISAF)、中間SAF低構造(ISAF−LS)、中間SAF高弾性率(ISAF−HM)、中間SAF低弾性率(ISAF−LM)、中間SAF高構造(ISAF−HS)、伝導性ファーネス(CF)、超伝導性ファーネス(SCF)、高摩耗ファーネス(HAF)、高摩耗ファーネス低構造(HAF−LS)、HAF−HS、ファインファーネス高構造(FF−HS)、半強化ファーネス(SRF)、極上伝導性ファーネス(XCF)、速押出ファーネス(FEF)、速押出ファーネス低構造(FEF−LS)、速押出ファーネス高構造(FEF−HS)、汎用ファーネス(GPF)、GPF−HS、多目的ファーネス(APF)、SRF−LS、SRF−LM、SRF−HS、SRF−HMおよび中位サーマル(MT)カーボンブラック、またはASTM分類に従った次のタイプ:N110、N219、N220、N231、N234、N242、N294、N326、N327、N330、N332、N339、N347、N351、N356、N358、N375、N472、N539、N550、N568、N650、N660、N754、N762、N765、N774、N787およびN990カーボンブラックである。
【0009】
個別でのまたは混合物での、さらなるフィラーの存在は可能であるが、カーボンブラックは常に主成分であり、すなわちその存在量は、フィラーの全体量を基準として、少なくとも50%である。他のフィラーは、
− 5〜1000m/g、好ましくは20〜400m/gの比表面積(BET表面積)の、および10〜400nmの一次粒径の、例えば、シリケートの溶液の沈澱、またはハロゲン化ケイ素の火炎加水分解によって製造された、微細粒子シリカ。シリカはまた、適切な場合、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、またはTi酸化物などの、他の金属酸化物との混合酸化物の形態で存在することもできる;
− 20〜400m/gのBET表面積および10〜400nmの一次粒径の、ケイ酸アルミニウムなどの、合成シリケート、ケイ酸マグネシウムまたはケイ酸カルシウムなどの、アルカリ土類金属シリケート;
− カオリンおよび他の天然産型シリカなどの、天然シリケート;
− ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット、より糸)またはガラスマイクロビーズ;
− 酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または酸化アルミニウムなどの、金属酸化物;
− 炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、または炭酸亜鉛などの、金属炭酸塩;
− 水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどの、金属水酸化物;
− ゴムゲル、特にポリブタジエンベースのゴムゲル、ブタジエン−スチレンコポリマー、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマーおよびポリクロロプレン
などの、活性フィラーか不活性フィラーかのどちらかであることができる。
【0010】
本発明の好ましい一実施態様では、機能化ゴムは、1種以上のビニル芳香族モノマーを成分として有する。
【0011】
言及され得る、重合プロセスのために使用することができるビニル芳香族モノマーの例は、スチレン、o−、m−および/またはp−メチルスチレン、p−第三ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンセンおよび/またはジビニルナフタレンである。スチレンが特に好ましくは使用される。
【0012】
好ましいジオレフィンは、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエンおよび/または1,3−ヘキサジエンである。1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンの使用が特に好ましい。
【0013】
結合した官能基の含有率が0.02〜3重量%である、ゴム混合物に本発明に従って使用されるべき、ジオレフィンおよび、適切な場合、ビニル芳香族モノマーをベースとするゴムは、50,000〜2,000,000g/モル、好ましくは100,000〜1,000,000g/モルの平均(数平均)モル質量、および−110℃〜+20℃、好ましくは−50℃〜0℃のガラス転移温度、および10〜200、好ましくは30〜150のMooney粘度ML 1+4(100℃)を好ましくは有する。
【0014】
本発明のゴムは、官能基および/またはそれらの塩として、カルボキシ、ヒドロキシ、アミン、カルボン酸エステル、カルボキサミドまたはスルホン酸基などの基を有することができる。カルボキシまたはヒドロキシ基が好ましい。好ましい塩は、アルカリ金属カルボキシレート、アルカリ土類金属カルボキシレート、亜鉛カルボキシレ−トおよびアンモニウムカルボキシレ−ト、ならびにアルカリ金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、亜鉛スルホネートおよびアンモニウムスルホネートである。
【0015】
本発明のゴムは本明細書では好ましくは、溶液中での、ジオレフィンの重合および、適切な場合、ビニル芳香族モノマーの重合と、その後の官能基の導入とによって製造される。例として、これは、アニオン性溶液重合によってまたは配位触媒を用いての溶液重合によって達成することができる。
【0016】
これに関連して配位触媒は、Ziegler−Natta触媒またはモノ金属触媒系である。好ましい配位触媒は、Ni、Co、Ti、Nd、V、CrまたはFeをベースとするものである。
【0017】
アニオン性溶液重合がコポリマーの製造にとって好ましい。
【0018】
ゴムの製造のためのアニオン性溶液重合は好ましくは、溶媒としての不活性炭化水素中で、アルカリ金属、例えばn−ブチルリチウムをベースとする開始剤を用いて行われる。
【0019】
ポリマーの微細構造のための公知のランダム化剤および制御剤もまた使用することができる。このタイプのアニオン性溶液重合法は公知であり、例として、I.Franta、「Elastomers and Rubber Compounding Materials」;Elsevier 1989年、73−74、92〜94ページに、およびHouben−Weyl、「Methoden der Organische Chemie[Methods of organic chemistry]」、Thieme Verlag、Stuttgart、1987年、Volume E 20、114〜134ページに記載されている。
【0020】
本明細書に好ましくは使用される溶媒は、不活性の非プロトン性溶媒、例えば異性体ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンもしくは1,4−ジメチルシクロヘキサンなどの、パラフィン系炭化水素、またはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼンもしくはプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素である。これらの溶媒は、個別にかまたは組み合わせて使用することができる。シクロヘキサンおよびn−ヘキサンが好ましい。極性溶媒とのブレンドもまた可能である。
【0021】
本発明の方法での溶媒の量は通常、使用されるモノマーの全体量100gを基準として、1000〜100g、好ましくは700〜200gになる。しかしながら、使用されるモノマーを溶媒の不存在下で重合させることもまた可能である。
【0022】
重合温度は広範囲内で変わることができ、一般に0℃〜200℃、好ましくは40℃〜130℃の範囲にある。反応時間も同様に、数分〜数時間と広く変わる。重合プロセスは通常、約30分〜8時間、好ましくは1〜4時間の期間内に実施される。それは、大気圧でかあるいは高圧(1〜10バール)でかのどちらかで実施することができる。
【0023】
本発明は、ジオレフィンおよび、適切な場合、ビニル芳香族モノマーがゴムを生成するために溶液中で重合させられ、次に官能基またはそれらの塩が溶液ゴムへ導入され、溶媒が50〜200℃の温度で、適切な場合減圧下で、熱水および/または水蒸気で除去され、次にカーボンブラックおよび、適切な場合、プロセスオイルが添加される、本発明のゴム混合物の製造方法をさらに提供する。
【0024】
本発明の方法の別の実施形態では、ジオレフィンおよび、適切な場合、ビニル芳香族モノマーがゴムを生成するために溶液中で重合させられ、次に官能基またはそれらの塩が溶液ゴムへ導入され、次に溶媒含有ゴムがプロセスオイルと混合され、本明細書での混合手順中にまたはその後に、溶媒が50〜200℃の温度で、適切な場合減圧下で、熱水および/または水蒸気で除去され、次にカーボンブラックが添加される。
【0025】
本発明の他の実施形態では、カーボンブラックは、官能基の導入後にプロセスオイルと一緒に添加される。
【0026】
本発明の方法では、ジオレフィンの重合および、適切な場合、ビニル芳香族モノマーの重合は、上記の通り好ましくは溶液中で行われ、その後に官能基が導入される。
【0027】
アニオン性溶液重合が本明細書では好ましい。
【0028】
官能基は本明細書では、ゴムの二重結合への相当する機能化剤での付加反応によってかまたはアリル位水素原子の引き抜きおよびその後の機能化剤との反応によって、公知方法に従って、好ましくは単段または多段反応で導入される。
【0029】
カルボキシ基は様々な方法でゴムへ導入することができ、例は、カルボキシ基を生成するCOなどの化合物が金属化溶液ゴムに付加させられるか、または先行技術で公知の遷移金属触媒ヒドロカルボキシル化の使用、またはカルボキシ基を含有する化合物、例えばカルボキシ基を含有するメルカプタンでのゴムの処理である。
【0030】
カルボキシ基含有率は、公知の方法、例えば遊離酸の滴定、分光分析法または元素分析によって測定することができる。
【0031】
ゴムへのカルボキシ基の導入は好ましくは、使用されたモノマーの重合後に、式
HS−R−COOXまたは(HS−R−COO)
(式中、
は、それぞれが、適切な場合、3個以下のさらなるカルボキシ基を置換基として有することができるか、または窒素原子による、酸素原子によるもしくは硫黄原子による割り込みを有することができる線状、分岐もしくは環状のC〜C36アルキレン基もしくはC〜C36アルケニレン基であるか、またはアリール基であり、
Xは、水素または金属イオン、例えばLi、Na、K、Mg、Zn、Ca、または、適切な場合、置換基としてC〜C36アルキル基、C〜C36アルケニル基、シクロアルキル基もしくはアリール基を有するアンモニウムイオンである)
のカルボキシメルカプタンとの、適切な場合フリーラジカル開始剤の存在下での、得られたポリマーの反応によって溶液中で行われる。
【0032】
好ましいカルボキシメルカプタンは、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸(チオ乳酸)、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプト酪酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトオクタン酸、メルカプトデカン酸、メルカプトウンデカン酸、メルカプトドデカン酸、メルカプトオクタデカン酸、2−メルカプトコハク酸、ならびにそれらのアルカリ金属およびアルカリ土類金属、亜鉛もしくはアンモニウム塩である。2−および3−メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸ならびに2−メルカプトコハク酸、ならびにそれらのリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛またはアンモニウム塩を使用することが特に好ましい。3−メルカプトプロピオン酸、ならびにそれのリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛またはアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ステアリルアンモニウムおよびシクロヘキシルアンモニウム塩が特に好ましい。
【0033】
溶液ゴムとのカルボキシメルカプタンの反応は一般に、フリーラジカル開始剤、例えば過酸化物、特に、ジラウロイルペルオキシドおよびジベンゾイルペルオキシドなどの、アシルペルオキシド、1,1−ビス(第三ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの、ケタールペルオキシド、あるいはアゾビスイソブチロニトリルなどの、アゾ開始剤の、またはベンゾピナコールシリルエーテルの存在下で、または光開始剤および可視もしくはUV光の存在下で、40〜150℃の温度で、溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼンおよび/またはトルエンなどの、炭化水素中で実施される。
【0034】
使用されるべきカルボキシメルカプタンの量は、ゴム混合物に使用されるべき溶液ゴム中の結合させられるカルボキシ基またはそれらの塩の所望の含有率に依存する。
【0035】
カルボン酸塩はまた、ゴムへのカルボン酸基の導入後に、それらの中和によって製造することができる。
【0036】
ヒドロキシ基は、例えば、溶液ゴムのエポキシ化および次にエポキシ基の開環、溶液ゴムのハイドロボレーションおよび次にアルカリ性過酸化水素溶液でのそれの処理、またはヒドロキシ基を含有する化合物、例えばヒドロキシ基を含有するメルカプタンでのゴムの処理によってゴムへ導入することができる。
【0037】
ゴムへのヒドロキシ基の導入は好ましくは、使用されたモノマーの重合後に、式
HS−R−OH
(式中、
は、それぞれが、適切な場合、3個以下のさらなるヒドロキシ基を置換基として有することができるか、または窒素原子による、酸素原子によるもしくは硫黄原子による割り込みを有することができる、線状、分岐もしくは環状のC〜C36アルキレン基もしくはC〜C36アルケニレン基であるか、またはアリール基である)
のヒドロキシメルカプタンとの、適切な場合フリーラジカル開始剤の存在下での、得られたポリマーの反応によって溶液中で行われる。
【0038】
好ましいヒドロキシメルカプタンは、チオエタノール、2−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパノール、4−メルカプトブタノール、6−メルカプトヘキサノール、メルカプトオクタノール、メルカプトデカノール、メルカプトドデカノール、メルカプトヘキサデカノール、メルカプトオクタデカノールである。メルカプトエタノール、2−および3−メルカプトプロパノールならびにメルカプトブタノールが特に好ましい。
【0039】
溶液ゴムとのヒドロキシメルカプタンの反応は一般に溶媒中で実施され、このための方法は、カルボキシメルカプタンについて記載されたのと同じものである。
【0040】
カルボン酸エステル基およびアミノ基は、一般式
HS−R−COOR、HS−R−NR
(式中、
は、それぞれが、適切な場合、3個以下のさらなるカルボン酸エステル基もしくはアミノ基を置換基として有することができるか、または窒素原子による、酸素原子によるもしくは硫黄原子による割り込みを有することができる、線状、分岐もしくは環状のC〜C36アルキレン基もしくはC〜C36アルケニレン基であるか、またはアリール基であり、
は、適切な場合、窒素原子による、酸素原子によるもしくは硫黄原子による割り込みを有することができる線状、分岐もしくは環状のC〜C36アルキル基もしくはC〜C36アルケニル基であるか、または5個以下のアルキル置換基もしくは芳香族置換基を有することができるフェニル基であり、
およびRは、水素または適切な場合、窒素原子による、酸素原子によるもしくは硫黄原子による割り込みを有することができる線状、分岐もしくは環状のC〜C36アルキル基もしくはC〜C36アルケニル基であるか、または5個以下のアルキル置換基もしくは芳香族置換基を有することができるフェニル基である)
のメルカプトカルボン酸エステルおよびメルカプトアミンから相当する方法で導入することができる。
【0041】
得られた機能化ゴムは次に、混練機、ミルまたは押出機などの、好適な混合装置で、プロセスオイルおよびカーボンブラックと、および他の混合物成分とブレンドされる。
【0042】
機能化ゴムと一緒に、追加のゴムを本発明のゴム混合物と混合することができる。追加のゴムの量は通常、ゴム混合物中のゴムの総量を基準として、0.5〜85重量%、好ましくは10〜70重量%の範囲にある。さらに追加されるゴムの量は順繰りに、本発明のゴム混合物のそれぞれの意図される使用に依存する。
【0043】
追加のゴムの例は天然ゴムおよび合成ゴムである。これらは次に機能化プロセスの後に混合される。
【0044】
文献から公知の合成ゴムは、例として本明細書に記載される。それらは、とりわけ、
BR=ポリブタジエン
ABR=ブタジエン/C〜Cアルキルアクリレートコポリマー
CR=ポリクロロプレン
IR=ポリイソプレン
SBR=1〜60重量%、好ましくは20〜50重量%のスチレン含有率のスチレン−ブタジエンコポリマー
IIR=イソブチレン−イソプレンコポリマー
NBR=5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%のアクリロニトリル含有率のブタジエン−アクリロニトリルコポリマー
HNBR=部分水素化または完全水素化NBRゴム
EPDM=エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー
およびこれらのゴムの混合物を包含する。自動車タイヤの製造のために、特に興味のある材料は、天然ゴム、そのガラス転移温度が−50℃より上であるエマルジョンSBRおよび溶液SBR、Ni、Co、TiまたはNdをベースとする触媒を使用して製造された高シス含有率(>90%)のポリブタジエンゴム、および80%以下のビニル含有率のポリブタジエンゴム、ならびにそれらの混合物である。
【0045】
本発明のゴム混合物は、勿論、例としてゴム混合物の架橋のために役立つか、または、それらの意図される具体的な用途向けに、本発明のゴム混合物から製造された加硫物の物理的特性を向上させる、他のゴム助剤をまた含むことができる。
【0046】
使用される特定の架橋剤は、硫黄または硫黄ドナー化合物である。本発明のゴム混合物はさらに、記載されたように、公知の反応促進剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、加硫遅延剤、金属酸化物および活性化剤などの、他の助剤を含むことができる。
【0047】
本発明のゴム助剤の使用量は、公知でありかつ従来どおりのものであり、使用量は本明細書ではゴム混合物の意図されるその後の使用に依存する。例として、ゴム助剤の通常の量は、ゴムの100重量部を基準として、2〜70重量部の範囲にある。
【0048】
本発明は、高強化ゴム成形品の製造用に、特にタイヤの製造用に役立つ、加硫物の製造のための本発明のゴム混合物の使用をさらに提供する。
【0049】
以下の実施例は本発明を例示するのに役立つが、いかなる限定効果もない。
【実施例】
【0050】
下の表1は、本実施例のゴム混合物のために使用されるスチレン−ブタジエンゴムの特性を記載する。スチレン−ブタジエンゴムSBR1は、溶液中でブタジエンとスチレンとのアニオン性共重合によって製造し、溶液中での重合プロセス後に、フリーラジカル発生剤としての1,1−ジ(第三ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの存在下で3−メルカプトプロピオン酸との反応によって機能化した。例2〜7に使用されるゴム(SBR2〜7)は、以下に挙げる成分を含む、Lanxess Deutschland GmbH製の商業的に入手可能な製品である。
【0051】
水蒸気による溶媒の除去前に、プロセスオイル(DAEオイル(留出物芳香族抽出物)またはTDAEオイル(処理留出物芳香族抽出物))をゴムSBR1およびSBR3〜7と混合した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
タイヤ用途では低い転がり抵抗性が必要であり、これは、加硫物において、60℃で反発弾性の測定値が高く、60℃で動減衰について測定されるtan δ値が低く、かつ、測定される熱蓄積値が低い場合に存在する。表3から理解できるように、本発明の実施例の加硫物は、60℃での反発弾性が最高であること、60℃での動減衰のtan δ値が最低であること、および熱蓄積値が最低であることを特徴とする。
【0056】
タイヤ用途では、高い湿潤滑り抵抗性がさらに必要である。これは、加硫物において、0℃で動減衰について測定されるtan δ値が高い場合に存在する。表3から理解できるように、本発明の実施例の加硫物は、0℃での動減衰のtan δ値が最高であることを特徴とする。
【0057】
高い耐摩耗性は同様にタイヤ用途にとって不可欠である。表3から理解できるように、本発明の実施例の加硫物は最低の摩耗性を特徴とする。
【0058】
本発明の混合物は、引張強度に関して最良の値をさらに示し、かつまた、低い残留変形を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のゴムおよび、ゴムの100重量部を基準として、10〜500重量部のカーボンブラックからなるゴム混合物であって、前記ゴムが溶液中でのジオレフィンの重合および、適切な場合、ビニル芳香族モノマーの重合とその後の官能基の導入とによって製造されており、このゴムが0.02〜3重量%の結合した官能基またはそれらの塩と、0〜60重量%含有率の共重合したビニル芳香族モノマーと、また40〜100重量%含有率のジオレフィンとを有し、1,2−結合ジオレフィンの含有率(ビニル含有率)が、使用される溶液ゴムを各場合に基準として、0.5〜95重量%であるゴム混合物。
【請求項2】
前記官能基がカルボキシまたはヒドロキシ基であることを特徴とする請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項3】
前記ビニル芳香族モノマーがスチレンであることを特徴とする請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項4】
前記ジオレフィンが1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンであることを特徴とする請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項5】
ジオレフィンおよび、適切な場合、ビニル芳香族モノマーが溶液中で重合させられてゴムを生成し、次に官能基またはそれらの塩が溶液ゴムへ導入され、溶媒が、適切な場合減圧下で、50〜200℃の温度で熱水および/または水蒸気で除去され、次にカーボンブラックおよび、適切な場合、プロセスオイルが添加されることを特徴とする請求項1に記載のゴム混合物の製造方法。
【請求項6】
前記カーボンブラックに加えてさらなるフィラーが存在するが、カーボンブラックが主成分であり、その存在量が、フィラーの総量を基準として、少なくとも50%であることを特徴とする請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項7】
高強化ゴム成形品の製造のための請求項1に記載のゴム混合物の使用。
【請求項8】
タイヤの製造のための請求項1に記載のゴム混合物の使用。

【公表番号】特表2010−539268(P2010−539268A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524460(P2010−524460)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061659
【国際公開番号】WO2009/033997
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】