説明

機能化カーボン表面を有するインプラント

【課題】 追加の機能性を有するインプラントを製造するための方法の提供。
【解決手段】 本発明は、インプラントの表面の少なくとも一部に少なくとも1つのカーボン系の層を有する医療インプラントを提供し、孔を生成することによってカーボン系の層を活性化し、かつ活性化したカーボン系の層を機能化することによって機能化表面を有する医療インプラントを製造する方法に関する。本発明は、この方法によって得られる機能化インプラントにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントの表面の少なくとも一部に少なくとも1つのカーボン系の層を有する医療インプラントを提供し、孔を生成することによってカーボン系の層を活性化し、かつ活性化したカーボン系の層を機能化することによって機能化表面を有する医療インプラントを製造するための方法に関し、本発明はこの方法によって得られうる機能化インプラントにも関する。
【背景技術】
【0002】
医療インプラント、例えば、外科的および/または整形外科的スクリュー、プレート、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ステントのほか、皮下または筋内に移植可能な活性剤デポ剤が、特定の生化学的および機械的特性に従って選択される多種多様な材料で製造されている。これらの材料は、特定の機械的および生化学的特性を有する必要があり、毒性物質を放出してはならず、かつ体内における長期使用に適していなければならない。
【0003】
しかし、例えば、ステントおよび人工関節に多く使用される金属または金属合金およびセラミック材料は、特に長期使用においてその生体適合性または機能性に関してしばしば不利な点を有する。インプラントは、化学的および/または物理的刺激による炎症組織反応および免疫反応を引き起こし、結果として防御および拒絶反応との慢性炎症反応、過剰な瘢痕組織産生、または組織の劣化の意味で不耐性反応をもたらし、極端な場合には結果としてインプラントを除去および置換し、または侵襲的もしくは非侵襲的な種類の追加の治療的介入を適応せざるをえない。
【0004】
このため、当分野には適切な方法で医療インプラントの表面をコーティングし、使用される材料の生体適合性またはインプラントの機能的効果を増大させ、かつ防御反応、すなわち拒絶反応を防ぐための種々の方法がある。
【0005】
例えば、米国特許第5,891,507号明細書では、金属ステントの表面をケイ素、ポリテトラフルオロエチレン、および金属ステントの生体適合性を増大させるヘパリンまたは成長因子など生体材料でコーティングするための方法が開示されている。
【0006】
プラスチックの層に加えて、カーボン系の層が特に有利であることが証明されている。
【0007】
例えば、独国特許第DE199 51 477号明細書には、ステント材料の生体適合性を増大させる非結晶炭化ケイ素のコーティングによる冠動脈ステントが記載されている。米国特許第6,569,107号明細書には、カーボン材料が化学的または物理的気相蒸着法(CVDまたはPVD)によって塗布されるカーボンコートステントが記載されている。米国特許第5,163,958号明細書にも抗血栓特性を有するコート表面による管状エンドプロテーゼまたはステントが記載されている。国際公開第02/09791号には、シロキサンのCVDによって製造されるコーティングによる血管内ステントが記載されている。
【0008】
カーボンの蒸着のためのCVD法に加えて、種々の高真空スパッタリング法が、種々の構造を有する熱分解カーボン層を製造するための当分野において記載されている(例えば、米国特許第6,355,350号明細書を参照)。
【0009】
しかし、このようにして製造される修飾表面を有するインプラントには依然としていくつかの不利な点がある。生体適合性は、拒絶反応を完全に防ぐにはすべての場合に十分ではない。さらに、当分野の表面コートインプラントは通常、閉鎖した孔を有し、これが周囲の体組織との合生を困難または不可能にし、および/または機能化を制限する。従来技術のインプラントは抗生物質でもコーティングされうるが、しかし、インプラント移植後の物質の効果はつねに短時間型であり、それは塗布される活性成分の量がインプラントの性質によって、かつその表面コーティングによって制限され、またはその脱着が制御できず、またはその有効性がコーティングとの物理的または化学的相互作用によって損なわれるためである。
【0010】
さらに、インプラントがステントによる場合のように、その支持機能においてのみ使用されうるだけではなく、追加の機能、例えば、インプラントの効果を増強し、または医療的に望ましい追加の効果を達成するインプラントの移植の部位での薬剤の長期送達も提供されれば、医療の観点から適切かつ望ましい。
【0011】
したがって、機能化インプラントを製造するための安価な使いやすい方法の必要がある。
【0012】
さらに、製造するのに安価であり、かつ改善された特性を有する医療インプラントの必要もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の1つの目的は、追加の機能性を有するインプラントを製造するための方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、体内における医薬物質の放出または組織の成長など追加の機能を引き受け、それによって生体適合性の増大を有し、および/または強力な機能的インプラント効果を有しうる医療インプラントを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、患者の体内の医療活性成分の長期放出を可能にするか、または表面修飾によって改善される機能を有する医療インプラントを提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の機能は、人体におけるインプラントの移植後に制御された方法でインプラントへ塗布または組込まれる薬理活性物質を放出しうる医療インプラントを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、デポ剤から活性成分の放出を制御する能力があるコーティングによる移植可能な活性成分デポ剤を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、塗布および/または組込まれた微生物、ウイルスベクター、または細胞もしくは組織を含有し、インプラントが人体に移植された後、治療効果が制御された方法で達成され、またはバイオアベイラビリティが増大しうるような医療インプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的の本発明の解決法は、独立請求項に規定された方法およびこの方法によって得られる医療インプラントから成る。本発明の方法および/または本発明の製品および使用の好ましい実施形態は、従属請求項からもたらされる。
【0020】
本発明の文脈の中で、カーボン系の層が特に多種多様な種類の移植可能な医療デバイスにおいて容易に使用され、追加の医療上の生理的および治療的機能をインプラントに備えられうることが見出されている。
【0021】
特に本発明によれば、治療的に活性量の医薬品をインプラントの表面またはインプラント上に存在する層に塗布し、かつこれらの物質を制御された方法で人体に連続的に放出させることが可能である。
【0022】
したがって、機能化表面を有する医療インプラントを製造するための本発明の方法は以下のステップを含む:
a)インプラントの表面の少なくとも一部に少なくとも1つのカーボン系の層を有する医療インプラントを提供するステップ、
b)孔を生成することによってカーボン系の層を活性化するステップ、
c)活性化したカーボン系の層を機能化するステップ。
【0023】
本発明の方法により、カーボン系の表面コーティングを有するインプラントを適切に修飾し、治療的に活性量の活性薬理物質をそれらに装填させることが可能である。適切な厚さ、孔サイズおよび/または孔構造の制御された調節/修飾、ならびに場合により放出を加減する適切な表面コーティングのカーボン系の表面層に孔を生成することによって、制御された方法で装填量、放出の種類および速度、ならびに生物学的生理的表面の特性を調節および変化させることが可能である。これにより、各々の特定の種類のインプラントおよび活性成分、ならびに本発明に従って記載されたような簡単な手続上の手段による医療インプラントの適用および使用目的の各々の部位に合わせた実施形態を実行することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
インプラント
カーボン系のコーティングでコーティングされたインプラントが、本発明の方法によって機能化されうる。
【0025】
「移植可能な医療デバイス」および「インプラント」なる用語は本明細書では同意語として使用され、かつ医療または治療的インプラント、例えば、血管内人工器官、腔内エンドプロテーゼ、ステント、冠動脈ステント、末梢ステント、一時的使用のための外科的および/または整形外科的インプラント、例えば外科的スクリュー、プレート、釘、および他の固定手段、永久の外科的または整形外科的インプラント、例えば、人工骨または人工関節、例えば、人工股関節または膝関節、球関節挿入物、スクリュー、プレート、釘、移植可能な整形外科的固定補助、人工椎骨および人工心臓ならびにその部品のほか、人工心臓弁、心臓ペースメーカーケーシング、電極、皮下および/または筋内に移植可能なインプラント、活性成分デポ剤、およびマイクロチップなどを含むことが理解される。
【0026】
本発明の方法において使用されうるインプラントは、ほぼすべての材料、好ましくは、本質的に熱安定性を有するもの、特に、かかるインプラントが通常製造されるすべての材料から成りうる。
【0027】
例としては、非結晶性および/または(部分的)結晶性カーボン、固体カーボン材料、多孔性カーボン、グラファイト、カーボン複合材料、カーボン繊維、セラミック、例えば、ゼオライト、シリケート、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属酸炭化物、金属酸窒化物、および遷移金属の金属酸化炭窒化物、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル;金属および金属合金、特に貴金属、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ;チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅の金属および金属合金;鋼、特にステンレス鋼、記憶合金、例えば、ニチノール、ニッケルチタン合金、ガラス、石、ガラス繊維、鉱物、天然または合成骨物質、アルカリ土類金属炭化物、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムに基づく模造骨、発泡材料、例えば、ポリマー発泡体、発泡セラミックなど、および前記材料の組合せが含まれる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態においては、使用されるインプラントはステント、特に、好ましくは、ステンレス鋼、プラチナ系の放射線不透過性の鋼合金、いわゆるPERSS(プラチナ強化放射線透過性ステンレス鋼合金)、コバルト合金、チタン合金、高融点合金、例えば、ニオブ、タンタル、タングステン、およびモリブデン系、貴金属合金、ニチノール合金のほか、マグネシウム合金、および上記の混合物で製造される金属ステントである。
【0029】
本発明の範囲内の特に好ましいインプラントとしては、ステンレス鋼、特にFe−18Cr−14Ni−2.5Mo(「316LVM」ASTM F 138)、Fe−21Cr−10Ni−3.5Mn−2.5Mo(ASTM F 1586)、Fe−22Cr−13Ni−5Mn(ASTM F 1314)、Fe−23Mn−21Cr−1Mo−1N(ニッケル非含有ステンレス鋼)で製造されるステント;コバルト合金、例えば、Co−20Cr−15W−10Ni(「L605」ASTM F 90)、Co−20Cr−35Ni−10Mo(「MP35N」ASTM F 562)、Co−20Cr−16Ni−16Fe−7Mo(「Phynox」ASTM F 1058)で製造されるステントが含まれる。好ましいチタン合金の例としては、CPチタン(ASTM F 67、グレード1)、Ti−6Al−4V(アルファ/ベータASTM F 136)、Ti−6Al−7Nb(アルファ/ベータASTM F 1295)、Ti−15Mo(ベータグレードASTM F 2066);貴金属合金、特にイリジウム、例えば、Pt−10Irを含有する合金で製造されるステント;ニチノール合金、例えば、マルテンサイト、超弾性、および冷間加工可能な(好ましくは40%)ニチノール、およびマグネシウム合金、例えば、Mg−3Al−1Zが挙げられる。
【0030】
本発明に従って使用されうる移植可能な医療デバイスは、ほぼすべての外部形式を有しうる。本発明の方法は、特定の構造に限定されていない。
【0031】
インプラントは、その表面の少なくとも一部にカーボン系の層を有する必要がある。この層は、熱分解により製造されたカーボン、ガラス状非結晶カーボン、蒸着カーボン、CVD、PVD、またはスパッタリングによって塗布されたカーボン、ダイアモンド状黒鉛カーボン、金属炭化物、金属炭窒化物、金属酸窒化物、または金属酸炭化物のほか、その組合せから成りうる。カーボン系の層は、非結晶性、部分的に結晶性または結晶性であり、好ましくは、非結晶性熱分解カーボンの層から成り、かつ一部の実施形態においては、ダイアモンド状、例えば、蒸着カーボンでもありうる。
【0032】
カーボンおよび/またはポリマーフィルムを生成する材料をインプラントに塗布し、次いで高温下、酸素の非存在下にこれらの材料を炭化することによって製造されるカーボン系コーティングによるインプラントが特に好ましい。例は、独国特許第DE10322187号明細書および/またはPCT/EP2004/005277号明細書、独国特許第DE10324415号明細書および/またはPCT/EP2004/004987号明細書、ならびに独国特許第DE10333098号明細書および/またはPCT/EP2004/004985号明細書に開示されており、その開示は参照することにより本明細書に完全に組み込まれる。
【0033】
カーボン系のコーティングによる他の適切なインプラントとしては、市販のカーボンコートインプラント、例えば、ラディックス カーボステント(Radix Carbostent)(登録商標)型(Sorin Biomedica)などの金属ステントなどが挙げられるが、その大部分は物理的蒸着、またはスパッタリングを含む噴霧化法によって製造されるカーボンコーティングである。
【0034】
1つもしくはそれ以上のカーボン系の層の厚さは、一般に1nm〜1mm、場合により数ミリメートル、例えば、10mmまで、好ましくは6mmまで、特に好ましくは2mmまで、特に10nm〜200μmでありうる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態においては、移植可能な医療デバイスは、同じまたは異なる厚さおよび/または孔の多重カーボン系の層も有しうる。例えば、より深い多孔性の層をその上のより狭い孔の層と結合することが可能であり、これがより多孔性の層に蒸着した活性成分の放出を適切に遅延しうる。
【0036】
活性化
本発明の方法によれば、カーボン系コーティングの物理的および化学的特性は、さらに適切な活性化ステップによって修飾され、かつ使用目的に適合される。一般的なカーボン系のインプラントは通常、実質的に閉鎖された表面を有し、これは、例えば、活性成分の有効かつ持続的な装填を大幅に制限し、またはそれをきわめて少量に制限する。活性化の目的は、カーボン系の層に孔を生成し、および/またはインプラント上に多孔性のカーボン系の層を形成し、それによって、活性成分、細胞、タンパク質、微生物等を用いて良好な機能化を可能にし、かつ単位面積当たりのカーボン系の層を取込む能力を増大させることである。
【0037】
したがって、本発明の方法における活性化ステップは、本質的にインプラント上のカーボン層に孔を生成することから成る。一部の可能性がここで利用可能である。
【0038】
カーボン層を活性化する1つの可能な方法としては、例えば、層が1回もしくはそれ以上の回数、適切な還元剤および/または酸化剤、例えば、水素、二酸化炭素、水蒸気、酸素、空気、亜酸化窒素、または酸化酸、例えば、硝酸など、および場合によりこれらの混合物で処理される還元または酸化処理ステップが挙げられる。
【0039】
空気による活性化が好ましく、特に高温下が好ましい。
【0040】
活性化ステップは、高温下、例えば、40℃〜1000℃、好ましくは、70℃〜900℃、特に好ましくは100℃〜850℃、特に好ましくは200℃〜800℃、そして最も好ましくは約700℃で実行されうる。特に好ましい実施形態においては、カーボン系の層は、室温で還元もしくは酸化、またはこれらの処理ステップの組合せによって修飾される。酸化酸または塩基中での煮沸も多孔性表面を生成するために使用されうる。
【0041】
孔サイズおよび孔構造は、使用される酸化剤または還元剤の種類、活性化の温度および持続時間によって変動されうる。特に好ましい実施形態においては、本発明のカーボン系の医療インプラントの活性化は、カーボン層の孔の標的化調節により基質から環境への活性成分の制御放出のためにも使用されうる。
【0042】
コーティングは、好ましくは、活性化後に、特にナノ孔を有する多孔性である。医療インプラントは、例えば、特にインプラント自体も多孔性構造を有する場合に、本発明に従うデポ剤効果を有する薬物賦形剤として使用されるが、ここでインプラントの活性化カーボン系の層は放出の速度を調節する膜として使用されうる。
【0043】
好ましい実施形態においては、孔は、カーボン系コーティングに存在する充填剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、粉末アルミニウム、脂肪酸、マイクロワックスまたはエマルジョン、パラフィン、カーボネート、水による溶解気体または水溶性塩、溶媒、酸または塩基を洗い流すことによって、あるいは蒸留または酸化的および/または非酸化的熱分解によって調節されうる。この適切な方法は、独国特許第DE10322187号明細書および/またはPCT/EP2004/005277号明細書に、例えば、本出願人によって記載されており、その開示は参照することにより本明細書に完全に組み込まれる。
【0044】
孔は場合により、粉末物質、例えば、金属粉末、カーボンブラック、フェノール樹脂粉末、繊維、特にカーボン繊維または天然繊維で表面を構造化することによっても生成されうる。
【0045】
孔を活性化および/または生成するための別の可能性は、適切な要素またはいわゆるイオン衝撃、例えば、希ガスイオン等でのカーボン系層のスパッタリングによる。
【0046】
活性化コーティングは、場合により、表面構造または孔構造およびその特性をさらに修飾するために別の工程ステップにおいて、いわゆるCVD工程(化学蒸着)またはCVI工程(化学蒸気浸透法)にかけることもできる。そうするためには、炭化コーティングは、高温でカーボンを放出する適切な前駆ガスで処理される。ここで、ダイアモンド状カーボンを次に塗布するのが好ましい。他の要素、例えば、ケイ素もこのようにして蒸着されうる。かかる方法は当分野において周知である。
【0047】
CVD条件下に十分な揮発度を有するほぼすべての周知の飽和および不飽和炭化水素を前駆体として使用してカーボンを分離することができる。例としては、C1〜C20の炭素数を有するメタン、エタン、エチレン、アセチレン、直鎖および分岐アルカン、アルケンおよびアルキン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、ナフタレン等、および1個もしくはそれ以上のアルキル、アルケニル、およびアルキニル置換基、例えば、トルエン、キシレン、クレゾール、スチレン等が挙げられる。
【0048】
適切なセラミック前駆体としては、例えば、BCl3、NH3、シラン、例えば、SiH4、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジクロロジメチルシラン(DDS)、メチルトリクロロシラン(MTS)、トリクロロシリルジクロロボラン(TDADB)、ヘキサジクロロメチルシリルオキシド(HDMSO)、AlCl3、TiCl3、またはその混合物が挙げられる。
【0049】
CVD法においては、前駆体は、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴン等による混合物中約0.5〜15体積%の低濃度で主に使用される。水素も蒸着用に対応するガス混合物に添加されうる。500℃〜2000℃、好ましくは500℃〜1500℃、そして特に好ましくは700℃〜1300℃の温度で、上記化合物は、熱分解コーティングの孔系における本質的に均一の分布で蒸着している炭化水素の断片および/またはカーボンもしくはセラミックの前駆体を分離し、ここでそれらは孔の構造を一部変更し、本質的に均一の孔サイズおよび孔分布を生成する。
【0050】
CVD法を用いて、インプラント上のカーボン系の層の孔のサイズは、制御された方法で削減され、あるいは孔は均等に完全に閉鎖および/または密閉されうる。これにより調整された方法で活性化インプラント表面の吸着特性および機械的特性を調節することが可能となる。
【0051】
シランまたはシロキサンのCVDによって、場合により炭化水素との混合物中で、カーボン系のインプラントコーティングは、例えば、それらが酸化に対して耐性であるように、炭化物または酸化炭化物の形成によって修飾されうる。
【0052】
好ましい実施形態においては、本発明に従って活性化されたコートインプラントは、スパッタリング法によって追加的にコーティングおよび/または修飾されうる。カーボン、ケイ素、ならびに金属および/または金属化合物は、適切なスパッターターゲットから本質的に周知の方法によって塗布されうる。例えば、CVDまたはPVDによってケイ素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、もしくはタンタル化合物、または金属をカーボン系の層へ組み込むことによって、層の安定性および酸化耐性を増大させる炭化物相を形成することが可能である。
【0053】
活性化ステップの別の好ましい実施形態においては、カーボン系の層、例えば、均等にスパッタリングされたカーボン層は、機械的にその後、多孔性表面を生成するように加工されうる。例えば、適切な方法によるこれらの層の制御された研磨は多孔性の層をもたらす。好ましい選択肢が超音波浴におけるかかるカーボン系の層の研磨であり、そこでは層および孔における欠陥が、適切なエネルギーの入力および処理時間の関数として適切な周波数の超音波浴による種々の粒径および硬度の研磨固体の混合による標的方法で生成されうる。
【0054】
アルミナ、シリケート、アルミネートなどが添加されている水性超音波浴、好ましくは、アルミナ分散液が、この場合には好ましい。しかし、超音波浴に適した他の溶媒のいずれも水の代わりに、または水と組み合わせて使用することができる。
【0055】
例えば、アルミナ、好ましくは1%〜60%のアルミナ分散液を混合した水性超音波浴でのカーボンコートインプラントの処理によって、平均孔サイズが約5nm〜200nmであるナノ研磨カーボン層を生成することが可能である。
【0056】
さらに、金属、特に遷移金属および/または非金属のイオン注入によって、インプラントの表面特性はさらに修飾されうる。例えば、窒素注入によって、窒化物、酸化窒化物、または炭窒化物、特に遷移金属の窒化物を組込むことが可能である。表面材料の孔および強度は、さらにカーボンの注入によって修飾されうる。
【0057】
カーボン系の層は、好ましくは、活性化後に多孔性であり、孔径は0.1μm〜1000μm、好ましくは、1μm〜400μmである。マクロ多孔性の層も本発明の活性化ステップにより生成することができる。
【0058】
カーボン系の層は、特に好ましくは、活性化後にナノ多孔性であり、孔径が1nm〜1000nm、好ましくは、5nm〜900nmである。
【0059】
本発明の特に好ましい実施形態においては、活性化は、カーボン系の層を生成するステップ中に、例えば1つもしくはそれ以上の多孔性のカーボン系の層を塗布することによって、カーボンを生成する物質の炭化によって、CVDまたはPVDでカーボンによるコーティングによって、および/または多孔性の生分解性および/または吸収性または非生分解性および/または吸収性ポリマーの適切な層を塗布することによって実施される。
【0060】
1つもしくはそれ以上の多孔性のカーボン系の層は、場合により発泡ポリマーフィルムまたは充填剤を含有する発泡ポリマーフィルムでインプラントをコーティングすることによって、次いで200℃〜3500℃、好ましくは、2000℃までの温度で、酸素を含有しない、場合により部分的に空気流中で連続的に酸化された環境下にポリマーフィルムを炭化することによって塗布されることが特に好ましい。対応する方法は、例えば、独国特許第DE10324415号明細書および/またはPCT/EP2004/004987号明細書、および独国特許第DE10333098号明細書および/またはPCT/EP2004/004985号明細書に記載されており、その開示は参照することにより本明細書に完全に組み込まれる。
【0061】
したがって、例えば、ポリエチレングリコールを炭化されるべきポリマーフィルムに添加することによりポリマー架橋結合における欠陥が生じ、これが次には熱処理後に多孔性のカーボン系の層を生成し、または適切な溶媒中で溶解する。所定の用途に適した孔は、ポリマー系、ポリエチレングリコールの分子量、およびポリエチレングリコール固体含量の選択により達成されるとともに、特に平均多孔率、孔サイズ分布、および多孔性度が調節されうる。例えば、分子量が1000〜8,000,000ダルトンのポリエチレングリコールを選択することによって、100nm〜1000nm、または好ましい実施形態では50nm〜1000nmの孔サイズを生成することが可能である。固体含量を10%〜80%に変更することによって、5%〜80%、好ましくは20%〜60%の多孔性度が生じうる。
【0062】
カーボン系の層のこの種類の複合生成および活性化の別の例は、カーボンブラックのポリマーフィルムへの混合による。ポリマーフィルム中の平均粒径および固体含量の選択により、用途に応じて、多孔性度および平均多孔率が適切なポリマー系、カーボンブラック粒径、および固体含量の選択により調節されうる多孔性マトリクスを生成することが可能である。したがって、例えば、平均粒径が10nm〜1mm、好ましくは10nm〜1000nm、固体含量が20%〜80%、好ましくは30%〜60%のカーボンブラック粒子を混合することによって、30%〜60%の平均多孔率が生成されうるが、生成される孔サイズが10nm〜1000nm、好ましくは10nm〜800nmで調節可能である。
【0063】
さらに、活性化ステップ前後のインプラントの任意のパリレン化(parylanation)によって、カーボン系の層の表面特性および孔をさらに修飾することができる。この場合のインプラントは、最初に高温、通常約660℃でパラシクロファンで処理され、ポリ(p−キシリレン)のポリマーフィルムがインプラントの表面上に形成される。次いで、このフィルムは、その後の炭化ステップにおける周知の方法によってカーボンに変換することができる。
【0064】
必要に応じて、特に好ましい実施形態においては、活性化インプラントは追加の化学的および/または物理的表面の修飾にかけることができる。存在しうる残留物および不純物を除去するクリーニングステップもこの場合に提供されうる。このために、酸、特に酸化酸、または溶媒が使用されるが、酸または溶媒中の煮沸が好ましい。これらの活性化カーボン層のカルボキシル化は、酸化酸中の煮沸によって達成することができる。
【0065】
活性成分の医療的使用または装填の前に、本発明のインプラントは、従来の方法によって、例えば、オートクレービング、エチレンオキシド滅菌、またはガンマ線照射によって滅菌することができる。
【0066】
本発明によれば、可能な活性化方法のすべては組合わせられ、または以下に述べる機能化ステップのいずれかとともに使用されうる。
【0067】
機能化
インプラントには追加的に適切な手段によって多くの機能を備えることができる。整形外科的および外科的インプラントまたは血管内人工器官は薬物賦形剤またはデポ剤として使用されうる。本発明のインプラントの生体適合性および機能性は、添加剤、充填剤、タンパク質等を組込むことによって制御された方法で影響され、または変化されうる。これにより本発明に従って製造されるインプラントを使用する場合の体内における拒絶反応を削減し、または完全に予防することが可能であり、またはインプラントの効果は増大し、および/または追加の効果が達成されうる。
【0068】
本発明の意味での機能化は、一般に、その結果としてカーボン系の層が追加の機能を得る対策を指すと理解される。本発明による機能化は、物質をカーボン系の層へ組込み、または物質をカーボン系の層に付着させることから成る。適切な物質は、薬理活性成分、リンカー、微生物、ヒト細胞または細胞培養物および組織を含む植物または動物起源の細胞、鉱物、塩、金属、合成または天然ポリマー、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、溶媒等から選択される。
【0069】
本発明によれば、適切に活性化されたインプラントは、活性成分の可能な装填前後により生体適合性にさせることによって機能化することができる。これは、生分解性および/または吸収性ポリマー、例えば、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース、例えば、メチルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸カルボキシメチルセルロース、カゼイン、デキストラン、多糖類、フィブリノゲン、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコライド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、ポリエステル、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)およびそのコポリマーなど、または非生分解性および/または吸収性ポリマーの少なくとも1つの追加の層でコーティングすることによって行われる。特に陰イオン、陽イオン、または両性コーティング、例えば、アルギネート、カラギナン、カルボキシメチルセルロース、キトサン、ポリ−L−リシンおよび/またはホスホリルコリンが特に好ましい。
【0070】
本発明の方法の機能化ステップにおいては、医薬品および薬剤などの活性成分が、活性化されたカーボン系の層に塗布され、または層へ組込まれうる。これは特に、活性成分が、例えば、金属の場合のように直接インプラントに塗布することができない場合に有用である。
【0071】
例えば、パクリタキセルなど水にやや溶けにくい脂溶性活性成分は、結晶フィルムを形成する傾向があるため金属表面に塗布するのが困難である。通常、固定可能な量は限られており、放出を制御することはできない。パクリタキセルによるかかる金属表面の直接コーティングは、約3mg/mm2の最大装填をもたらし、生理的緩衝溶液中の生理的条件下のその放出は、1日〜5日で最大30%の制御されない離脱をもたらす。
【0072】
本発明に従って活性化されたカーボン層、好ましくは、80nm〜10μm、好ましくは100nm〜5μmの範囲の層の厚さ、好ましくは5nm〜100μm、好ましくは5nm〜1000nmの孔サイズを有するガラス非結晶性カーボンは、例えば、5〜50%、好ましくは10〜50%の多孔率、および5nm〜1μm、好ましくは5nm〜500nmの平均孔サイズの非活性化カーボンコートまたは純金属インプラントの合計100倍までになる量の活性成分を吸収しうるとともに、場合により孔および/または孔サイズおよび/または表面特性の関数として制御された方法でこれら活性成分を放出しうる。
【0073】
例えば、50nmの孔サイズおよび5%の多孔率、および0.5〜3.0μg/mm2パクリタキセルの装填、および200nmの層の厚さを有する疎水性のカーボン表面の本発明の実施形態においては、パクリタキセルの塗布量の70%〜100%が25〜35日以内に生理的条件下、一定の1日放出量で制御された方法で放出されうる。
【0074】
特に好ましい実施形態においては、カーボン系の層の適切な機能化により、ペプチドおよびタンパク質のほか糖タンパク質およびリポタンパク質も固定化されうる。
【0075】
機能化の本発明の形態は、アフィニティータグで標識またはこれが別の方法で供給されるペプチド、タンパク質、糖タンパク質、またはリポタンパク質の結合を可能にする物質の共有または非共有吸着から成る。
【0076】
かかる物質としては、例えば、イオン、陽イオン、特に、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛陽イオンなど金属陽イオン、抗体、カルモジュリン、キチン、セルロース、糖、アミノ酸、グルタチオン、ストレプトアビジン、ストレプ−タクチンまたはストレプト−タグ−もしくはSBP−タグ−標識物質を結合するための他の突然変異体、またはS−タグ−標識物質等を結合するためのSタンパク質等が挙げられる。
【0077】
これらアフィニティータグは、適切な方法によって、固定されるペプチド、タンパク質、糖タンパク質、またはリポタンパク質に付着され、通常、組換え遺伝子工学またはビオチン化によって一次配列のC末端またはN末端のいずれかに付着する。アフィニティータグ、特にポリアルギニンタグ(Argタグ)が好ましく、後者は好ましくは5〜6個のアルギニン酸、ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)、所望の長さのポリヒスチジン配列、典型的には2〜10個のラジカル、配列DYKDDDDKのFLAGタグ、ストレプタグ、例えばストレプタグII配列WSHPQFEK、アミノ酸ラジカルKETAAAKFERQHMDSを有するSタグ、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ドメインのファミリー、特にC末端、N末端、または固定されるペプチド、タンパク質、糖タンパク質、またはリポタンパク質の一次配列における他の位置、配列MDEKTTGWRGGHVVEGLAGELEQLRARLEHHPQGQREPを有するSBPタグ、ポリヒスチジンタグ、キチン結合ドメイン、グルタチオンS−トランスフェラーゼタグ、マルトース結合タンパク質、バクテリオファージT7およびV5エピトープから成るが、他の種類のアフィニティータグからも成る。
【0078】
機能化カーボン表面に塗布される物質の修飾は、精製、および特にクロマトグラフ標識化において可能である通常の方法に対応する。
【0079】
カーボン表面の機能化は、この場合、対応する物質の吸着および/またはこれらの物質がアフィニティータグと結合しうるようなカーボン系の層上で達成される。対応する物質としては、例えば、塩基性ポリアルギニンタグへの結合を可能にするカーボン層へ導入される陽イオン、例えば、コバルト、 ニッケル、 銅、および例えば、ポリヒスチジンタグの結合を可能にする亜鉛陽イオンが挙げられる。
【0080】
カーボン表面上での抗体M1の吸着は、FLAGタグ、ストレプタビジンもしくはストレプ−タクチン、またはSBPタグ標識物質の結合、またはSタグ標識物質を結合する表面上のSタンパク質の吸着を可能にする。
【0081】
別の実施形態においては、機能化は、カーボン表面上で吸着されるカルモジュリンを使用することから成る。これは、カルモジュリン結合ペプチド標識物質をカーボン系の層へ結合することを可能にする。
【0082】
他の実施形態においては、機能化はセルロースの吸着によって達成され、セルロース結合ドメインで修飾された物質が結合され、またはキチン結合ドメインが備えられた物質に結合するキチンの吸着によって達成されるようになる。
【0083】
同様に、機能化は、グルタチオンSトランスフェラーゼタグ標識物質を結合するためのグルタチオン、またはマルトース結合タンパク質標識物質を結合するマルトースもしくはアミロースで実施することができる。
【0084】
当業者は、遺伝子工学において可能である条件、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質またはリポタンパク質の機能的および構造的特性に従う適切なアフィニティ系を選択するであろう。
【0085】
例えば、0.1−8μg/mm2吸着ストレプ−タクチンで機能化されたカーボン層は、100〜900nmの孔サイズ、30%〜60%の多孔率、および1〜5μmの層の厚さを有する多孔性カーボン表面上にカーボン層を噴霧またはディッピングすることによってストレプ−タクチン溶液から得ることができる。このようにして機能化されたカーボン層は、例えば、0.1〜10μg/mm2ストレプ−タグ標識組換えIL−2を吸収することができる。
【0086】
別の実施形態においては、カーボン層はコバルトイオンで浸漬されるが、その場合、多孔性カーボンマトリクスは固体含量の0.1〜50%、好ましくは、ガラス多孔性カーボン層の60%までのコバルトイオン含量を有する。50%の多孔率では、500nm〜1000nmの層の厚さ、0.1〜100μgのポリアルギニンタグ標識組換えIL−2がマトリクス中の金属イオンのドーピングによって吸着されうる。
【0087】
別の実施形態は、例えば、リンカー物質、好ましくは、例えば、ヒドロゲルとしてのカルボキシメチル化デキストランの吸着によるカーボン表面の機能化を含むが、これは物質、好ましくは、生体分子または活性成分の物理的結合を可能にし、および/または、かかる物質が共有結合によって、好ましくは、アミノ、チオール、またはアルデヒド結合を形成することによって付着されうるような化学反応を有する。
【0088】
当業者は、リガンドの種類の関数として適切な種類のリンカーを選択するであろう。
【0089】
アミノ結合の生成のために、カーボン層は以下のとおり好ましい実施形態において機能化することができる:カルボキシメチル化デキストランの吸着、カルボキシメチル基をヒドロキシスクシンイミドエステルヘ変換するNHS/EDCにおける修飾によるその後の修飾。
【0090】
これによりエステルとの共有アミノ結合をさせるリガンドの吸着が可能となる。未反応エステルは、別のステップ、例えば、1Mエタノールアミン塩酸溶液中のインキュベーションによって再び不活性化されうる。例えば、ガラスカーボンおよびカーボンブラック粒子の多孔性カーボン系の複合体の層1mm2当たり1μgのカルボキシメチル化デキストランの吸着により、共有結合によって60〜90の分子量の0.01〜5000μg/mm2のペプチドを結合する機能化が得られる。
【0091】
さらに、本発明に従って活性化される多孔性層には、工程の機能化ステップにおいて医薬品、すなわち薬剤、微生物、細胞および/または組織が装填され、あるいは診断補助、例えば、体内にコートインプラントを局在するためのマーカーまたは収縮溶剤を、例えば、放射性物質の治療的または診断的量でも提供することができる。
【0092】
活性成分コーティング
好ましい実施形態においては、本発明に従って活性化されるインプラントには機能化ステップにおいて活性成分が装填される。活性成分は、適切な吸着方法、例えば、吸着、吸収、物理吸着、または化学吸着によってカーボン系の層の中へまたはその上へ装填されうるが、最も単純な場合には、それらにはカーボン系コーティングの含浸によって活性成分溶液、活性成分分散液、または活性成分懸濁液が適切な溶媒中で装填されうる。この場合、カーボン系コーティングの中または上の活性成分の共有または非共有結合は、使用される活性成分およびその化学的特性に応じて好ましい選択肢となりうる。
【0093】
好ましい実施形態においては、活性成分は適切な溶媒または溶媒混合物中、場合によりその後の乾燥とともに、溶液、分散液、または懸濁液の形態で使用される。適切な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブトキシジグリコール、ブトキシエタノール、ブトキシイソプロパノール、ブトキシプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ブチレングリコール、ブチルオクタノール、ジエチレングリコール、ジメトキシジグリコール、ジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、エトキシエタノール、エチルヘキサンジオール、グリコール、ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシルアルコール、ヘキシレングリコール、イソブトキシプロパノール、イソペンチルジオール、3−メトキシブタノール、メトキシジグリコール、メトキシエタノール、メトキシソプロパノール、メトキシメチルブタノール、メトキシPEG−10、メチラール、メチルヘキシルエーテル、メチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、PEG−4、PEG−6、PEG−7、PEG−8、PEG−9、PEG−6−メチルエーテル、ペンチレングリコール、PPG−7、PPG−2−buteth−3、PPG−2ブチルエーテル、PPG−3ブチルエーテル、PPG−2メチルエーテル、PPG−3メチルエーテル、PPG−2プロピルエーテル、プロパンジオール、プロピレングリコール、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トリメチルヘキサノール、フェノール、ベンゼン、トルエン、キシレン;および水、場合により分散補助剤との混合物、ならびに前記物質の混合物も挙げられる。
【0094】
好ましい溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ジプロピレングリコールメチルエーテルおよびブトキシイソプロパノール(1,2−プロピレングリコールn−ブチルエーテル)、テトラヒドロフラン、フェノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、好ましくはエタノール、イソプロパノール、n−プロパノールおよび/またはジプロピレングリコールメチルエーテル、特にイソプロパノールおよび/またはn−プロパノールから成る群からの1つもしくはそれ以上の有機溶媒が挙げられる。
【0095】
適切な寸法の活性成分は、活性化多孔性のカーボン系コーティングの孔も塞ぎうる。
【0096】
活性成分による装填は一時的であってよい。すなわち、活性成分は医療デバイスの移植後に放出され、または活性成分はカーボン系の層の中または上に永久に固定されうる。このようにして、静的、動的、または静的および動的活性成分の装填の組合せで活性成分を含有する医療インプラントを製造することが可能である。これにより本発明に従って製造されるカーボン系の層に基づく多機能コーティングが得られる。
【0097】
活性成分による静的装填においては、活性成分は本質的に永久にコーティングの中または上に固定される。この目的に使用される活性成分としては、無機物質、例えば、ヒドロキシルアパタイト(HAP)、フッ素リン灰石、リン酸三カルシウム(TCP)、亜鉛および/または有機物質、例えば、ペプチド、タンパク質、炭水化物(例えば単糖類、オリゴ糖、および多糖類)、脂質、リン脂質、ステロイド、リポタンパク質、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカン、DNA、RNA、シグナルペプチド、または抗体および/または抗体断片、生体吸収性ポリマー(例えば、ポリ乳酸、キトサン)のほか、薬理活性物質、または物質混合物、その組合せなどが挙げられる。
【0098】
活性成分による動的装填においては、塗布される活性成分は体内への医療デバイスの移植後に放出されるように供給される。このようにして、コートインプラントは治療目的に使用されうるが、インプラントに塗布される活性成分はインプラントの使用部位で局所的および連続的に放出される。活性成分の放出用に動的活性成分の装填において使用されうる活性成分としては、例えば、ヒドロキシルアパタイト(HAP)、フッ素リン灰石、リン酸三カルシウム(TCP)、亜鉛および/または有機物質、例えば、ペプチド、タンパク質、炭水化物(例えば単糖類、オリゴ糖、および多糖類)、脂質、リン脂質、ステロイド、リポタンパク質、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカン、DNA、RNA、シグナルペプチド、または抗体および/または抗体断片、生体吸収性ポリマー(例えば、ポリ乳酸、キトサン)のほか、薬理活性物質、または物質混合物が挙げられる。
【0099】
本発明に従ってコーティングされる移植可能な医療デバイスの静的および/または動的装填のための適切な薬理活性物質または物質混合物としては、ヘパリン、合成へパリン類似体(例えば、フォンダパリヌクス)、ヒルジン、アンチトロンビンIII、ドロトレコギン・アルファから選択される活性成分または活性成分の組合せ;線維素溶解酵素、例えば、アルテプラーゼ、プラスミン、溶菌素酵素、第XIIa因子、プロウロキナーゼ、ウロキナーゼ、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ;血小板凝集阻害剤、例えば、アセチルサリチル酸[アスピリン]、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、デキストラン;コルチコステロイド、例えば、アルコメタゾン、アムシノニド、増強ベータメタゾン、ベクロメタゾン、ベータメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルランドレノリド、フルニソリド、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、プレドニカルバート、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン;いわゆる非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、例えば、ジクロフェナック、ジフルニザル、エトドラック、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサラート、スリンダック、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブ;細胞増殖抑制剤、例えば、アルカロイド、およびポドフィルム毒素(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン);アルキル化剤、例えば、ニトロソウレア、窒素喪失類似体;細胞毒性抗生物質、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、および他のアントラサイクリン、および関連物質、ブレオマイシン、ミトマイシン;代謝拮抗剤、例えば、葉酸類似体、プリン類似体、またはピリミジン類似体;パクリタキセル、ドセタキセル、シロリムス;プラチナ化合物、例えば、カルボプラチン、シスプラチン、またはオキサリプラチン;アムサクリン、イリノテカン、イマチニブ、トポテカン、インターフェロン−アルファ2a、インターフェロン−アルファ2b、ヒドロキシカルバミド、ミルテホシン、ペントスタチン、ポルフィマー、アルデスロイキン、ベキサロテン、トレチノイン;抗アンドロゲン剤および抗エストロゲン剤;抗不整脈剤、特にクラスI抗不整脈剤、例えば、キニジン型の抗不整脈剤、キニジン、ジソピラミド、アジマリン、酒石酸水素プラジュマリウム(prajmalium)、酒石酸水素デタジュミウム(detajmium);リドカイン型の抗不整脈剤、例えば、リドカイン、メキシレチン、フェニトイン、トカイニド;クラスIc抗不整脈剤、例えば、プロパフェノン、フレカイニド(アセテート);クラスII抗不整脈剤ベータ受容体遮断薬、例えば、メトプロロール、エスモロール、プロプラノロール、メトプロロール、アテノロール、オキシプレノロール;クラスIII抗不整脈剤、例えば、アミオダロン、ソタロール;クラスIV抗不整脈剤,例えば、ジルチアゼム、ベラパミル、ガロパミル;他の抗不整脈剤、例えば、アデノシン、オルシプレナリン、臭化イプラトロピウム;心筋における血管形成を刺激するための薬剤、例えば、血管内皮成長因子(VEGF)、塩基性線維芽成長因子(bFGF)、非ウイルスDNA、ウイルスDNA、内皮成長因子:FGF−1、FGF−2、VEGF、TGF;抗生物質、モクロローナル抗体、アンチカリン;幹細胞、内皮前駆細胞(EPC);ジギタリス配糖体、例えば、アセチルジゴキシン/メチルジゴキシン、ジギトキン、ジゴキシン;強心配糖体、例えば、ウアバイン、プロスシラリジン;降圧剤、例えば、CNS活性抗アドレナリン作動物質、例えば、メチルドーパ、イミダゾリン受容体作動薬;ジヒドロピリジン型のカルシウムチャンネル遮断薬、例えば、ニフェジピン、ニトレンジピン;ACE阻害剤:キナプリレート、シラザプリル、モエキシプリル、トランドラプリル、スピラプリル、イミダプリル、トランドラプリル;アンギオテンシンII拮抗薬:カンデスアルタンシルキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタンメドキソミル、エプロサルタン;末梢作用性アルファ受容体遮断薬、例えば、プラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、ブナゾシン、テラゾシン、インドラミン;血管拡張剤、例えば、ジヒドララジン、ジイソプロピルアミンジクロルアセテート、ミノキシジル、ニトロプルシドナトリウム;他の降圧剤、例えば、インダパミド、コ−デグコクリンメシラート、ジヒドロエルゴトキシンメタンスルホネート、シクレタニン、ボセンタン、フルドロコルチゾン;ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えば、ミルリノン、エノキシモン、および抗低血圧剤、例えば、特に、アドレナリン作用およびドーパミン作用物質、例えば、ドブタミン、エピネフリン、エチレフリン、ノルフェネフリン、ノルエピネフリン、オキシロフリン、ドーパミン、ミドドリン、ホレドリン、アメジニウムメチル;および部分アドレナリン受容体作動薬、例えば、ジヒドロエルゴタミン;フィブロネクチン、ポリリシン、エチレンビニルアセテート、炎症性サイトカイン、例えば:TGFβ、PDGF、VEGF、bFGF、TNFα、NGF、GM−CSF、IGF−a、IL−1、IL−8、IL−6、成長ホルモン;ならびに、粘着性物質、例えば、シアノアクリレート、ベリリウム、シリカ;および成長因子、例えば、エリスロポエチン、ホルモン、例えば、コルチコトロピン、ゴナドトロピン、ソマトロピン、チロトロフィン、デスモプレシン、テルリプレシン、ピキシトシン、セトロレリックス、コルチコレリン、リュープロレリン、トリプトレリン、ゴナドレリン、ガニレリックス、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリン、ならびに調節ペプチド、例えば、ソマトスタチン、オクトレオチド;骨および軟骨刺激ペプチド、骨形態形成タンパク質(BMPs)、特に、組換えBMP、例えば、組換えヒトBMP−2(rhBMP−2)、ビスホスフォネート(例えば、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、ゾレドロン酸、クロドロン酸(clodronsaeure)、エチドロン酸(etidronsaeure)、アレンドロン酸、チルドロン酸)、フッ化物、例えば、フルオロリン酸2ナトリウム、フッ化ナトリウム;カルシトニン、ジヒドロタキスチロール;成長因子およびサイトカイン、例えば、表皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGFs)、トランスフォーミング成長因子−b(TGFs−b)、トランスフォーミング成長因子−a(TGF−a)、エリスロポイエチン(Epo)、インスリン様成長因子−I(IGF−I)、インスリン様成長因子−II(IGF−II)、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、腫瘍壊死因子−a(TNF−a)、腫瘍壊死因子−b(TNF−b)、インターフェロン−g(INF−g)、コロニー刺激因子(CSFs);単球走化性タンパク質、線維芽細胞刺激因子1、ヒスタミン、フィブリンまたはフィブリノゲン、エンドセリン−1、アンギオテンシンII、コラーゲン、ブロモクリプチン、メチセルギド、メトトレキサート、四塩化炭素、チオアセトアミド、およびエタノール;ならびに銀(イオン)、チタン二酸化物、抗生物質、および抗感染薬、例えば、特にβ−ラクタム抗生物質、例えば、β−ラクタマーゼ感受性ペニシリン、例えば、ベンジルペニシリン(ペニシリンG)、フェノキシメチルペニシリン(ペニシリンV);β−ラクタマーゼ耐性ペニシリン、例えば、アミノペニシリン、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、バクアンピシリン;アシルアミノペニシリン、例えば、メズロシリン、ピペラシリン;カルボキシペニシリン、セファロスポリン、例えば、セファゾリン、セフロキシム、セフォキシチン、セフォチアム、セファクロール、セファドロキシル、セファレキシン、ロラカルベフ、セフィキシム、セフロキシムアクセチル、セフチブテン、セフポドキシムプロキセチル、セフポドキシムプロキセチル;アズトレオナム、エルタペネム、メロペネム;β−ラクタマーゼ阻害剤、例えば、スルバクタム、スルタミシリントシレート;テトラサイクリン、例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン;アミノグリコシド、例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、フラマイセチン、スペクチノマイシン;マクロライド抗生物質、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、ジョサマイシン;リンコサミド、例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン;ギラーゼ阻害剤、例えば、フルオロキノロン、例えば、シプロフロキサシン、オフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、ガチフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、レボフロキサシン;キノロン、例えば、ピペミド酸;スルホンアミド、トリメトプリム、スルファジアジン、スルファレン;グリコペプチド抗生物質、例えば、バンコマイシン、テイコプラニン;ポリペプチド抗生物質、例えば、ポリミキシン、例えば、コリスチン、ポリミキシン−b、ニトロイミダゾール誘導体、例えば、メトロニダゾール、チニダゾール;アミノキノロン、例えば、クロロキン、メフロキン、ヒドロキシクロロキン;ビグアニド、例えば、プログアニル;キニンアルカロイド、およびジアミノピリミジン、例えば、ピリメタミン;アンフェニコール、例えば、クロラムフェニコール;リファブチン、ダプソン、フシジン酸、フォスフォマイシン、ニフラテル、テリスロマイシン、フサフンジン、フォスフォマイシン、ペンタミジンジイセチオネート、リファムピシン、タウロリジン、アトバクオン、リネゾリド;抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、ホスカネット、イノシン(ジメプラノール−4−アセトアミドベンゾエート)、バルガンシクロビル、バルアシクロビル、シドフォビル、ブリブジン;抗レトロウイルス活性成分(ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤および誘導体)、例えば、ラミブジン、ザルシタビン、ジダノシン、ジドブジン、テノフォビル、スタブジン、アバカビル;非ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤:アンプレナビル、インジナビル、サキナビル、ロピナビル、リトナビル、ネルフィナビル;アマンタジン、リバビリン、ザナミビル、オセルタミビル、およびラミブジンのほか、その組合せおよび混合物が挙げられる。
【0100】
ステント
本発明の特に好ましい実施形態としては、コート血管内人工器官(腔内人工器官)、例えば、ステント、冠動脈ステント、血管内ステント、末梢ステントなどが挙げられる。
【0101】
これらは本発明の方法による生体適合性のある方法で容易に機能化され、従来のステントでは経皮的経腔的血管形成術において頻繁に起こる残留性狭窄を予防することができる。
【0102】
多孔性カーボン系コーティングで適切な活性成分、特にパクリタキセル、ラパマイシン、またはデキサメタゾンを固定化することによって、血管壁の組織における局所炎症反応は、これら活性成分の一時的な局所放出によって阻害および/または抑制されうる。かかる活性成分の使用および効果は当分野において十分に公知であるが、有用性は当分野によるコーティング系により制限されている。これは、特に不十分な装填能力のためであり、これは不十分なバイオアベイラビリティ、これら活性成分の不十分な、すなわち、不完全な放出、または望ましくない物理的または化学的相互作用によるコーティング系と活性成分との間の不耐性をもたらす。
【0103】
本発明の好ましい実施形態においては、層の厚さが80nm〜10μmであり、孔のサイズが5nm〜1μmであり、多孔率が1%〜70%であるカーボンブラック粒子が添加されたガラスカーボン層または複合層が製造され、かつ好ましくは、充填剤を導入し、次いでそれらをカーボン層から除去し、または球状もしくは楕円状または棒状の形態、および10nm〜200nmの粒径を有するカーボンブラック粒子を混合することによって活性化されるが、これらの粒子は多孔性マトリクスを生成し、活性成分が十分な量で適合されうるようになっている。ステントインプラントの表面は、この場合、2000m2/m3まで増大しうる。
【0104】
本発明の好ましい実施形態においては、カーボン系の層の、例えば、高温下での空気による活性化によって、コーティングの親水性が増大しうるが、これは次にはさらに生体適合性を増大させると同時に、他方では、層が活性成分、特に親水性活性成分を十分に吸収できるようにする。
【0105】
特に好ましい実施形態においては、ステント、特に冠動脈ステントおよび末梢ステントには、本発明の方法によって、薬理活性物質もしくは物質混合物、または細胞もしくは細胞培養物を装填することができる。例えば、カーボン系のステント表面は、以下の活性成分で仕上げられ、細胞接着、血小板凝集、補体活性化および/または炎症組織反応または細胞増殖を局所的に抑制しうる。
【0106】
ヘパリン、合成ヘパリン類似体(例えば、フォンダパリヌクス)、ヒルジン、アンチトロンビンIII、ドロトレコギン・アルファ、線維素溶解酵素(アルテプラーゼ、プラスミン、溶菌素酵素、第XIIa因子、プロウロキナーゼ、ウロキナーゼ、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ)、血小板凝集阻害剤(アセチルサリチル酸[アスピリン]、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、デキストラン)、コルチコステロイド(アルコメタゾン、アムシノニド、増強ベータメタゾン、ベクロメタゾン、ベータメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルランドレノリド、フルニソリド、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、プレドニカルバート、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン)、いわゆる非ステロイド抗炎症薬[NSAID](ジクロフェナック、ジフルニザル、エトドラック、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサラート、スリンダック、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブ)、細胞増殖抑制剤(アルカロイドおよびポドフィルム毒素、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン;アルキル化剤、例えば、ニトロソウレア、窒素喪失類似体;細胞毒性抗生物質、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、および他のアントラサイクリンおよび関連物質、ブレオマイシン、マイトマイシン;代謝拮抗剤、例えば、葉酸、プリンまたはピリミジン類似体;パクリタキセル、ドセタキセル、シロリムス;プラチナ化合物、例えば、カルボプラチン、シスプラチンまたはオキサリプラチン;アムサクリン、イリノテカン、イマチニブ、トポテカンインターフェロン−アルファ2a、インターフェロン−アルファ2b、ヒドロキシカルバミド、ミルテホシン、ペントスタチン、ポルフィマー、アルデスロイキン、ベキサロテン、トレチノイン;抗アンドロゲン剤、および抗エストロゲン剤)。
【0107】
本発明に従って活性化されるステントには、その全身心臓学的効果のために以下のいずれかを装填することができる。
【0108】
抗不整脈剤、特にクラスI抗不整脈剤(キニジン型の抗不整脈剤:キニジン、ジソピラミド、アジマリン、酒石酸水素プラジュマリウム(prajmalium)、酒石酸水素デタジュミウム(detajmium);リドカイン型の抗不整脈剤:リドカイン、メキシレチン、フェニトイン、トカイニド;クラスIC抗不整脈剤:プロパフェノン、フレカイニド(アセテート))、クラスII抗不整脈剤(ベータ受容体遮断薬)(メトプロロール、エスモロール、プロプラノロール、メトプロロール、アテノロール、オキシプレノロール)、クラスIII抗不整脈剤(アミオダロン、ソタロール)、クラスIV抗不整脈剤(ジルチアゼム、ベラパミル、ガロパミル)、他の抗不整脈剤、例えば、アデノシン、オルシプレナリン、臭化イプラトロピウム;心筋における血管形成を刺激するための薬剤:血管内皮成長因子(VEGF)、塩基性線維芽成長因子(bFGF)、非ウイルスDNA、ウイルスDNA、内皮成長因子:FGF−1、FGF−2、VEGF、TGF;抗体、モノクローナル抗体、アンチカリン;幹細胞、内皮前駆細胞(EPC)。他の心臓薬としては、ジギタリス配糖体(アセチルジゴキシン/メチルジゴキシン、ジギトキシン、ジゴキシン)、他の強心配糖体(ウアバイン、プロスシラリジン)が挙げられる。また、ステントには、降圧剤(CNS活性抗アドレナリン作動物質;メチルドーパ、イミダゾリン受容体作動薬;ジヒドロピリジン型のカルシウムチャンネル遮断薬、例えば、ニフェジピン、ニトレンジピン;ACE阻害剤:キナプリレート、シラザプリル、モエキシプリル、トランドラプリル、スピラプリル、イミダプリル、トランドラプリル;アンギオテンシンII拮抗薬:カンデスアルタンシルキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタンメドキソミル、エプロサルタン;末梢作用性アルファ受容体遮断薬:プラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、ブナゾシン、テラゾシン、インドラミン;血管拡張剤:ジヒドララジン、ジイソプロピルアミンジクロルアセテート、ミノキシジル、ニトロプルシドナトリウム)、他の降圧剤、例えば、インダパミド、コ−デグコクリンメシラート、ジヒドロエルゴトキシンメタンスルホネート、シクレタニン、ボセンタンが装填されうる。また、ホスホジエステラーゼ阻害剤(ミルリノン、エノキシモン)、および抗低血圧薬、この場合、特にアドレナリン作用およびドーパミン作用物質(ドブタミン、エピネフリン、エチレフリン、ノルフェネフリン、ノルエピネフリン、オキシロフリン、ドーパミン、ミドドリン、ホレドリン、アメジニウムメチル)、部分アドレナリン受容体作動薬(ジヒドロエルゴタミン)、および最後に他の抗低血圧薬、例えば、フルドロコルチゾンも使用することができる。
【0109】
皮膚接着性を増大させるには、特に末梢ステントの場合、細胞外マトリクスの成分、フィブロネクチン、ポリリシン、エチレンビニルアセテート、炎症性サイトカイン、例えば、TGFβ、PDGF、VEGF、bFGF、TNFα、NGF、GM−CSF、IGF−a、IL−1、IL−8、IL−6、成長ホルモン、および粘着性物質、例えば、シアノアクリレート、ベリリウム、またはシリカも使用することができる。
【0110】
この場合に適切かつ全身および/または局所効果を有する他の物質としては、成長因子およびエリスロポエチンが挙げられる。
【0111】
ステントコーティングにおいては、ホルモン、例えば、コルチコトロピン、ゴナドトロピン、ソマトロピン、甲状腺刺激ホルモン、デスモプレシン、テルリプレシン、オキシトシン、セトロレリックス、コルチコレリン、リュープロレリン、トリプトレリン、ゴナドレリン、ガニレリックス、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリン、および調節ペプチド、例えば、ソマトスタチンおよび/またはオクトレオチドも供給されうる。
【0112】
他の実施形態は、カーボン表面に細胞を、例えば、生物から得られ、実験室における細胞培養物から培養され、または遺伝子工学によって改変されうる多能性幹細胞、内皮細胞、または結合組織細胞を装填することによって機能化のために提供される。
【0113】
例えば、特殊な実施形態においては、活性化カーボン層が備えられた血管インプラントには、最初にそれらを生物反応器における基質として、および/または細胞培養のための培養および担体系として使用することによって内皮細胞培養物を装填される。この場合の適切な方法としては、独国特許第DE103 35 131号明細書、すなわちPCT/EP04/00077号明細書に記載されており、その開示内容は本明細書に含まれる。
【0114】
例えば、表面積が200〜3000m2/m3の本発明によるナノ多孔性の活性化カーボン層には培養後の内皮細胞が装填されうるが、その場合、可能な細胞密度は、101〜1016細胞/mL層体積、好ましくは、103〜1012細胞/mLの範囲である。
【0115】
整形外科的インプラント
外科的および整形外科的インプラントの場合、層がマクロ多孔性であるように1つもしくはそれ以上のカーボン系の層でインプラントを活性化することが有利でありうる。適切な孔サイズは、0.1〜1000μm、好ましくは1〜400μmの範囲であり、周囲の細胞組織または骨組織への組込みによってインプラントの十分な挿入を支持する。
【0116】
本発明に従って機能化される整形外科的および非整形外科的インプラントならびに心臓弁または合成心臓部品については、それらに活性成分が装填される場合には、上記のステント用に示されたもの、または細胞接着、血小板凝集、補体活性化および/または炎症組織反応または細胞増殖の局所的抑制と同じ活性成分を使用することができる。
【0117】
さらに、特に整形外科的インプラントの場合の組織増殖の刺激には、以下の活性成分を用いてインプラントの完全性を改善しうる:骨および軟骨刺激ペプチド、骨形態形成タンパク質(BMPs)、特に組換えBMP(例えば、組換えヒトBMP−2(rhBMP−2))、ビスホスフォネート(例えば、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、ゾレドロン酸、クロドロン酸、エチドロン酸、アレンドロン酸、チルドロン酸)、フッ化物(2ナトリウムフルオロリン酸、フッ化ナトリウム);カルシトニン、ジヒドロタキスチレン。次いで、すべての成長因子およびサイトカインが使用されうる(表皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGFs)、トランスフォーミング成長因子−b(TGFs−b)、トランスフォーミング成長因子−a(TGF−a)、エリスロポイエチン(Epo)、インスリン様成長因子I(IGF−I)、インスリン様成長因子II(IGF−II)、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、腫瘍壊死因子−a(TNF−a)、腫瘍壊死因子−b(TNF−b)、インターフェロン−g(INF−g)、コロニー刺激因子(CSF))。上記の炎症性サイトカインに加えて、他の接着促進および完全性促進物質としては、単球走化性タンパク質、線維芽細胞刺激因子1、ヒスタミン、フィブリンまたはフィブリノゲン、エンドセリン−1、アンギオテンシンII、コラーゲン、ブロモクリプチン、メチセルギド、メトトレキサート、四塩化炭素、チオアセトアミド、エタノールが挙げられる。
【0118】
特殊な実施形態
さらに、本発明に従って活性化されているインプラント、ステントなどには、医薬品の代わりに、またはそれに加えて、抗菌−抗感染コーティングまたは含浸も提供されうるが、その場合には、以下の物質または物質混合物を使用することができる:銀(イオン)、チタン二酸化物、抗生物質、および抗感染症薬。特にこれらとして挙げられるのは、ベータ−ラクタム抗生物質(β−ラクタム抗生物質:β−ラクタマーゼ−感受性ペニシリン、例えば、ベンジルペニシリン(ペニシリンG)、フェノキシメチルペニシリン(ペニシリンV));β−ラクタマーゼ−耐性ペニシリン、例えば、アミノペニシリン、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、バクアンピシリン;アシルアミノペニシリン、例えば、メズロシリン、ピペラシリン;カルボキシペニシリン、セファロスポリン(セファゾリン、セフロキシム、セフォキシチン、セフォチアム、セファクロール、セファドロキシル、セファレキシン、ロラカルベフ、セフィキシム、セフロキシムアクセチル、セフチブテン、セフポドキシムプロキセチル、セフポドキシムプロキセチル)、またはその他、例えば、アズトレオナム、エルタペネム、メロペネムである。使用されうる他の抗生物質としては、β−ラクタマーゼ阻害剤(スルバクタム、スルタミシリントシレート)、テトラサイクリン(ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、クロールテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン)、アミノグリコシド(ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、フラマイセチン、スペクチノマイシン)、マクロライド抗生物質(アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、ジョサマイシン)、リンコサミド(クリンダマイシン、リンコマイシン)、ギラーゼ阻害剤(フルオロキノロン、例えば、シプロフロキサシン、オフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、ガチフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、レボフロキサシン;他のキノロン、例えば、ピペミド酸)、スルホンアミドおよびトリメトプリム(スルファジアジン、スルファレン、トリメトプリム)、グリコペプチド抗生物質(バンコマイシン、テイコプラニン)、ポリペプチド抗生物質(ポリミキシン、例えば、コリスチン、ポリミキシン−b)、ニトロイミダゾール誘導体(メトロニダゾール、チニダゾール)、アミノキノロン(クロロキン、メフロキン、ヒドロキシクロロキン)、ビグアニド(プログアニル)、キニンアルカロイドおよびジアミノピリミジン(ピリメタミン)、アンフェニコール(クロラムフェニコール)、および他の抗生物質(リファブチン、ダプソン、フシジン酸、フォスフォマイシン、ニフラテル、テリトロマイシン、フサフンジン、フォスフォマイシン、ペンタミジンジイセチオネート、リファムピシン、タウロリジン、アトバクオン、リネゾリド)が挙げられる。言及されうる抗ウイルス剤の例としては、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、ホスカネット、イノシン−(ジメプラノール−4−アセトアミドベンゾエート)、バルガンシクロビル、バルアシクロビル、シドフォビル、ブリブジンが挙げられる。これには抗レトロウイルス活性成分(ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤および誘導体:ラミブジン、ザルシタビン、ジダノシン、ジドブジン、テノフォビル、スタブジン、アバカビル;非ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤:アンプレナビル、インジナビル、サキナビル、ロピナビル、リトナビル、ネルフィナビル)、および他の抗ウイルス剤、例えば、アマンタジン、リバビリン、ザナミビル、オセルタミビル、ラミブジンが含まれる。
【0119】
本発明の特に好ましい実施形態においては、本発明のインプラントは、例えば、親水性、疎水性、導電率、接着、または他の表面特性を修飾する他の薬剤を使用することによって活性成分の装填前後にカーボン系の層でその化学的または物理的特性が適切に修飾されうる。この目的に使用されうる物質としては、生分解性または非分解性ポリマー、例えば、生分解性ポリマーについては、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸カルボキシメチルセルロース;またカゼイン、デキストラン、多糖類、フィブリノゲン、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコライド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、ポリエステル、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ無水物、ポリホスホハゼン(polyphosphohazenes)、ポリ(アミノ酸)、およびそのすべてのコポリマーが挙げられる。
【0120】
非生分解性ポリマーとしては、ポリ(エチレンビニルアセテート)、ケイ素、アクリルポリマー、例えば、ポリアクリル酸、ポリメチルアクリル酸、ポリアクリルシアノアクリレート;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステル尿素)、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、プルロニック類、ポリテトラメチレングリコール;ビニルポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテートフタレート);パリレンが挙げられる。
【0121】
一般に言えることであるが、陰イオン特性(例えば、アルギネート、カラギナン、カルボキシメチルセルロース)、または陽イオン特性(例えば、キトサン、ポリ−L−リシン等)、または両方の特性(ホスホリルコリン)を有するポリマーが製造されうる。
【0122】
これらのポリマーは、インプラントの表面に塗布されうるとともに、それらを部分的または全体的に覆うことができる。
【0123】
1つもしくはそれ以上の活性成分を含有する本発明のインプラントの放出特性を変更するには、特定のpH依存または温度依存放出特性は、例えば、追加のポリマーを塗布することによって達成することができる。pH感受性ポリマーの例としては、ポリ(アクリル酸)およびその誘導体、例えば、ホモポリマー、例えば、ポリ(アミノカルボキシル酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリル酸)、およびそのコポリマーが挙げられる。これは多糖類、例えば、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、およびキトサンについても言える。熱感受性ポリマーとしては、例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸ナトリウム−co−n−N−アルキルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−n−プロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,n−ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−エチル−アクリルアミド)、ポリ(N−エチル−メタクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルアクリルアミド)が挙げられる。熱発生特性を有する他のポリマーとしては、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびプルロニック類、例えば、F−127、L−122、L−92、L−81、L−61が挙げられる。
【0124】
活性成分は、カーボン系の層(共有、非共有)の孔において吸着されるが、この場合、その放出は主に孔サイズおよび孔形状により制御することができる。化学修飾(陰イオン、陽イオン)による多孔性化学層の追加の修飾は、例えば、pHの関数として、放出を加減することを可能にする。活性成分を含有する担体の放出は、別の用途、すなわちマイクロカプセル、リポソーム、ナノカプセル、ナノ粒子、ミセル、合成リン脂質、ガス分散、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノスフェア等をも構成し、これらはカーボン層の孔において吸着され、次いで治療的に放出される。カーボン層の追加の共有結合または非共有結合修飾によって、孔は生体活性成分が保護されるように塞がれうる。可能性としては、上記の多糖類、脂質等が挙げられるが、上記のポリマーも挙げられる。
【0125】
したがって、追加の層を有する本発明に従って製造される多孔性のカーボン系の層の追加のコーティングにおいては、物理的バリア、例えば、不活性生分解性物質(ポリ−L−リシン、フィブロネクチン、キトサン、ヘパリン等)と生物活性バリアとの間の区別がなされうる。後者は、生理的に生物活性であり、かつ活性成分および/またはその賦形剤の放出を可能にする立体障害分子でありうる。例としては、放出を仲介し、生物活性物質を活性化し、または不活性コーティングを結合し、そして活性成分の曝露をもたらす酵素を含む。ここに示されたこの特定の機序および特性のすべては、主にカーボン層およびそれに塗布される追加の層に適用されうる。
【0126】
上記の放出を加減するポリマー層を塗布することによって、および/またはカーボン系の層の孔構造を適合させることによって、広範囲のインプラントから活性成分の放出を制御することが可能であり、達成可能な放出時間としては、12時間まで、1年もしくはそれ以上まで、好ましくは、24時間、48時間、96時間、1週間、2週間、1か月、3か月が挙げられる。
【0127】
本発明のインプラントには、特殊な用途において生きた細胞または微生物も装填され、かつこのようにして機能化もされうる。これらの細胞または微生物は適切に多孔性のカーボン系の層においてコロニーを形成しうるが、このようにしてコロニー化されたインプラントは、細胞または微生物によって製造される栄養素および活性成分には浸透可能であるが、細胞自体には浸透可能ではない適切な膜コーティングを備えることができる。したがって、細胞または微生物は、膜コーティングを通じて生物から供給することができる。
【0128】
例えば、この方法で本発明の技術を使用することによって、体内に移植された後の現行の糖レベルに従ってインスリンを産生および放出するインスリン産生細胞を含有するインプラントを生成することが可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能化表面を有する医療インプラントを製造するための方法であって、以下のステップ:
a)前記インプラントの表面の少なくとも一部に少なくとも1つのカーボン系の層を有する医療インプラントを提供するステップと、
b)孔を生成することによって前記カーボン系の層を活性化するステップと、
c)前記活性化したカーボン系の層を機能化するステップと
を含んで成る方法。
【請求項2】
前記カーボン系の層が、熱分解により製造されたカーボン、蒸着カーボン、CVD、PVD、またはスパッタリングが塗布されたカーボン、金属炭化物、金属炭窒化物、金属酸窒化物または金属酸炭化物のほか、その所望の組合せから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インプラントが、カーボン、カーボン複合材料、カーボン繊維、セラミック、ガラス、プラスチック、金属、合金、骨、石、または鉱物から選択される材料から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記インプラントが、医療的または治療的インプラント、例えば血管内人工器官、ステント、冠動脈ステント、末梢ステント、外科的または整形外科的インプラント、人工骨または人工関節、人工心臓、人工心臓弁、皮下および/または筋内インプラントから選択されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カーボン系の層の活性化が適切な酸化剤および/または還元剤で実施されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カーボン系の層が、空気、酸素、亜酸化窒素、および/または酸化酸(oxidizing acids)、場合により高温による酸化によって活性化されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記活性化が、アルミナ、シリケート、および/またはアルミネートの添加とともに超音波水溶液槽中での研磨によって実施されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
活性化が前記カーボン系の層を多孔性、好ましくは、場合により基質をプレ構造化することによっても、0.1〜1000μmの範囲の孔径を有するマクロ多孔性にさせることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
活性化が前記カーボン系の層をナノ多孔性にさせることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記活性化多孔性のカーボン系の層が、揮発性有機物質のCVDおよび/またはCVIによって実質的に圧縮および/または密閉されていることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記活性化カーボン系の層の機能化が、薬理活性成分、リンカー、微生物、ヒト細胞または細胞培養物および組織を含む植物または動物細胞、鉱物、塩、金属、合成または天然ポリマー、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、溶媒、イオン、陽イオン、特に、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛陽イオンなどの金属陽イオン、抗体、カルモジュリン、キチン、セルロース、糖、アミノ酸、グルタチオン、ストレプトアビジン、ストレプ−タクチンもしくは他の突然変異体、またはSタンパク質、デキストランのほか、その誘導体、混合物、および組合せから選択される少なくとも1つの物質を前記層に取込むステップを含んで成ることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記機能化が前記カーボン系の層の中および/または上のアフィニティータグに、対応する物質を吸着することによって実施され、それによって前記対応する物質が、それらが前記アフィニティータグと結合しうるように選択されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記物質が、吸着、吸収、物理吸着、化学吸着、静電共有結合または非共有結合によってカーボン系の層に塗布され、および/またはその上に固定化されることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの物質が、前記カーボン系の層の上に本質的に永久に固定されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記カーボン系の層に塗布される前記少なくとも1つの物質、特に薬理活性成分が、制御された方法で前記層から放出されうることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記薬理活性物質が、前記カーボン系の層の孔中または表面上で吸着され、次いで治療のために放出されうるマイクロカプセル、リポソーム、ナノカプセル、ナノ粒子、ミセル、合成リン脂質、ガス分散、エマルジョン、マイクロエマルジョン、またはナノスフェアに組込まれることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記活性成分の放出に影響を及ぼすコーティングもpH感受性および/または温度感受性ポリマー、および/または酵素などの生物学的活性バリアから塗布され選択されることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記機能化が、生分解性および/または吸収性ポリマー、例えばコラーゲン、アルブミン、ゼラチン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース(例えば、メチルセルロースヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースフタレート);カゼイン、デキストラン、多糖類、フィブリノゲン、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコライド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、ポリエステル、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)およびそのコポリマーを添加するステップを含むことを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記機能化が、非生分解性および/または非吸収性ポリマー、例えばポリ(エチレンビニルアセテート)、ケイ素、アクリルポリマー(例えば、ポリアクリル酸、ポリメチルアクリル酸、ポリアクリルシアノアクリレート);ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステル尿素)、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、プルロニック類、ポリテトラメチレングリコール;ビニルポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテートフタレート))、およびそのコポリマーを添加するステップを含むことを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記請求項のいずれか一項に記載の製造可能な機能化表面を有するインプラント。
【請求項21】
前記インプラントが、金属、例えば、ステンレス鋼、チタン、タンタル、プラチナ、金、パラジウム、合金、特に記憶合金、例えば、ニチノールまたはニッケルチタン合金またはカーボン繊維、固体カーボン材料またはカーボン複合材料で製造されることを特徴とする請求項20に記載のインプラント。
【請求項22】
場合により活性成分を含んだ多重のカーボン系の層を含んで成ることを特徴とする請求項20または21のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項23】
アルギネート、カラギナン、カルボキシメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリレート、キトサン、ポリ−L−リシンおよび/またはホスホリルコリンから選択される陰イオンもしくは陽イオンまたは両性コーティングをも含んで成ることを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
請求項20〜23のいずれか一項に記載の活性成分でコーティングされたステント。
【請求項25】
請求項20〜23のいずれか一項に記載の活性成分でコーティングされた心臓弁。
【請求項26】
整形外科的人工骨もしくは人工関節 、骨代用品、または脊柱の胸部もしくは腰部における椎骨代用品の形である請求項20〜23のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項27】
請求項20〜23のいずれか一項に記載の皮下および/または筋内に使用されうる制御放出による活性成分デポ剤。
【請求項28】
塗布された、および/または組込まれた微生物、ウイルスベクター、または細胞もしくは組織を含んで成る、請求項20〜27のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項29】
前記インプラントの人体への移植後に前記インプラントの治療効果をもたらし、またはバイオアベイラビリティを増加させるための請求項28に記載のインプラントの使用。


【公表番号】特表2007−502184(P2007−502184A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529943(P2006−529943)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005785
【国際公開番号】WO2004/105826
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505257349)ブルー メンブレーンス ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】