説明

機能化ナノ粒子

機能化ナノ粒子が提供される。このナノ粒子は、二官能性ペプチドが付着する単層膜でコーティングしたナノ粒子で構成される。このペプチドを機能化し、DNAおよびRNAをはじめとするさまざまなバイオポリマーを結合させる。この機能化ナノ粒子は、バイオポリマーの捕獲時ならびにナノメートル規模の電子デバイスをプログラムにより組み立てる目的で有用なものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
本件出願は、2002年8月29日に出願された米国仮特許出願第60/406,736号の利益を主張するものであり、その全開示内容は引用することにより本願明細書に編入される。
【技術分野】
【0002】
本発明はナノテクノロジーの分野に関する。特に、本発明は、ナノデバイス組み立て用にバイオポリマーを結合すべく機能化させたペプチドリガンドを有する機能化ナノ粒子を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
生体分子とのハイブリッドなどのナノ材料には、エレクトロニクス、光学、ゲノミクス、プロテオミクス、生体臨床医学ならびに生体分析などの用途に活用できる可能性が秘められている。生体分子をこれらの用途の多くでテンプレートとして用いる機能は、無機ナノ材料と生体分子との間の特異的結合に基づく合理的な設計をいかにうまく達成できるかに左右される。その単純さと特異性、さらには操作しやすさの理由で、テンプレートとして用いるのに魅力的な生体分子のひとつにDNAがある。
【0004】
DNAの相補鎖を用いて金属質ナノ粒子の構造体を組み立てることが文献に報告されている。オリゴヌクレオチドで標識した金ナノ粒子を用いて、非特許文献1は凝集物を調製し、かたや非特許文献2は二量体を調製した。非特許文献3も短鎖オリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着した相補的オリゴヌクレオチドリガンドに対するブリッジとして使用し、凝集した金ナノ粒子の非構造的ネットワークを調製した。非特許文献4は、一本鎖DNAテンプレートを用いて金ナノ粒子を相補的な配列に結合させた。
【0005】
特許文献1には、インターカレーションを起こす試薬、溝結合剤またはアルキル化剤を用いることで、一結合領域を核酸に付着させることのできる、二官能性リンカーを利用して金属質ナノ粒子を核酸分子に結合するための方法が説明されている。
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第2002/0072069号明細書
【非特許文献1】マーキン(Mirkin),C.ら、Nature、第382巻、1996年8月、第607ページ
【非特許文献2】ユン(Yun),C.ら、JACS(2002)、124(26)、7644〜7645
【非特許文献3】ミューシック(Mucic),R.ら、JACS、1998、120、第12674〜5ページ
【非特許文献4】アリビサトス(Alivisatos)ら、Nature、第382巻、1996年8月、第609ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の機能化ナノ粒子は、ナノ粒子をデバイスに組み立てる課題に対処する上で有用なものであるが、結合が核酸ハイブリダイゼーションに依存するDNA結合リガンドに制約されるという欠点がある。結合の選択肢の幅がさらに広い機能化ナノ粒子が当業界で有用なこともあろう。
【0008】
ナノ粒子を組み立てるためのテンプレートとしてDNAを用いるひとつの方法に、DNAならびにナノ粒子に対しても高い親和性および特異性で結合できる二官能性を持つタンパク質を利用することがある。ひとつの手法として、DNA結合ドメインとナノ粒子結合ドメインとで構成される融合タンパク質を生成することがあろう。
【0009】
他のリガンドをナノ粒子に付着させているにもかかわらず、二官能性ペプチドをナノ粒子または他のナノ構造体と併用してナノスケールの導電性デバイスを得る用途に関する報告は全くない。当該技術分野におけるこの欠如についてのひとつの理由として、非核酸リガンドで特異的に機能化されているナノ粒子を生成するのが非常に困難だという点があろう。
【0010】
本願出願人らは、ナノ粒子に結合可能な結合ドメインをひとつと、DNAなどの生体テンプレートと選択的に結合可能な第2の結合ドメインとを有する二官能性タンパク質またはペプチドを用いることで、従来技術の欠点を解決した。このようなナノ粒子については、自己組織化して合理的なものとすることが可能である。
【0011】
発明の概要
本発明は、ナノデバイスへの組み立てに役立つナノ粒子を提供するものである。二官能性タンパク質を受け入れるように機能化させた単層膜でナノ粒子をコーティングする。二官能性タンパク質は、ひとつのドメインでナノ粒子の表面に結合し、2つ目のドメインで核酸に結合する。本発明のナノ粒子は、ナノデバイスへの自己組織化が容易なように設計し得るものである。
【0012】
したがって、一態様において、本発明は、
a)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
b)各々結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなり、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインで(a)のナノ粒子に付着されている、機能化ナノ粒子を提供するものである。
【0013】
もうひとつの態様において、本発明は、核酸、ペプチド、生体細胞、および無機ナノチューブよりなる群から選択される捕獲部分を、本発明の機能化ナノ粒子と接触させることを含んでなる、捕獲部分を捕獲するための方法を提供するものである。好ましい捕獲部分は核酸である。
【0014】
また、本発明は、
a)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
b)結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと核酸結合アミノ酸配列を含んでなる第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなり、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインを介して(a)のナノ粒子に付着されており、そして核酸結合アミノ酸配列において核酸断片に付着されている、核酸ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0015】
もうひとつの態様において、本発明は、
a)各々が
i)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
ii)結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと核酸結合アミノ酸配列を含んでなる第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなる複数の機能化ナノ粒子であって、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインを介して金属質ナノ粒子に付着されており、そして各第2の結合ドメインの核酸結合アミノ酸配列が非反復性である、複数の機能化ナノ粒子を提供し、
b)(a)の各二官能性ペプチドの各第2の結合ドメインの核酸結合アミノ酸配列に対する親和性を有するペプチド結合ドメインを有する核酸マトリクスを提供し、
c)二官能性ペプチドの核酸結合アミノ酸配列が(b)の核酸マトリクスのペプチド結合ドメインと結合する条件下で(a)の機能化ナノ粒子を(b)の核酸マトリクスと接触させ、ナノ粒子を固定化することを含んでなる、複数のナノ粒子を核酸マトリクス上に固定化するための方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、本発明の方法によって作製されるナノメートル規模の電子デバイスを提供するものである。
【0017】
もうひとつの実施形態において、本発明は、
a)カーボンナノチューブと、
b)カーボンナノチューブに対する親和性を有する第1の結合ドメインと、結合対のメンバーを含んでなる第2の結合ドメインと、を有する二官能性タンパク質と、含んでなり、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインを介して(a)のカーボンナノチューブに付着されている、機能化カーボンナノチューブを提供するものである。
【0018】
本件出願の一部をなす以下の詳細な説明および添付の配列の説明から、本発明についてなお一層完全に理解することができる。
【0019】
以下の配列は米国特許施行規則第1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則」)に準拠し、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)、EPOおよびPCTの配列表要件(施行規則5.2および49.5(a−bis)ならびに実施細則第208号および附属書C)に従ったものである。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに用いる記号および形式は米国特許施行規則第1.822に記載の規則に準拠している。
【0020】
配列番号1は、亜鉛フィンガー標的配列Zif268のDNA配列である。
配列番号2は、亜鉛フィンガー標的配列NREのDNA配列である。
配列番号3は、亜鉛フィンガー標的配列Sp1CのDNA配列である。
配列番号4〜27は、カーボンナノチューブ結合タンパク質CNP1〜CNP24のアミノ酸配列である。
配列番号28は、マウス亜鉛フィンガー配列Zif268のアミノ酸配列である。
配列番号29は、亜鉛フィンガー標的配列Zif268のDNA配列である。
配列番号30は、プライマー821−ZNF1のDNA配列である。
配列番号31は、プライマー822−ZNF2のDNA配列である。
配列番号32は、プライマー823−ZNF3のDNA配列である。
配列番号33は、プライマー824−ZNF4のDNA配列である。
配列番号34は、プライマー825−ZNF5のDNA配列である。
配列番号35は、プライマー826−ZNF6のDNA配列である。
配列番号36は、プライマー827−ZNF7のDNA配列である。
配列番号37は、プライマー828−ZNF8のDNA配列である。
配列番号38は、プライマー829−ZNF9のDNA配列である。
配列番号39は、プライマー848−ZNR10のDNA配列である。
配列番号40は、プライマー849−ZNR11のDNA配列である。
配列番号41は、プライマー850−ZNR12のDNA配列である。
配列番号42は、プライマー851−ZNR13のDNA配列である。
配列番号43は、プライマー852ZNR14のDNA配列である。
配列番号44は、プライマー853−ZNR15のDNA配列である。
配列番号45は、プライマー854−ZNR16のDNA配列である。
配列番号46は、プライマー855−ZNR17のDNA配列である。
配列番号47は、プライマー856−ZNR18のDNA配列である。
配列番号48は、プライマー897−2ZnREのDNA配列である。
配列番号49は、プライマー872−NZFのDNA配列である。
配列番号50は、プライマー873−NZRのDNA配列である。
配列番号51は、プライマー874−N/ZFのDNA配列である。
配列番号52は、プライマー875−N/ZRのDNA配列である。
配列番号53は、プライマー876−N//ZFのDNA配列である。
配列番号54は、プライマー877−N//ZRのDNA配列である。
配列番号55は、プライマー878−CAPB5’のDNA配列である。
配列番号56は、プライマー879−CAPB3’のDNA配列である。
配列番号57は、プライマー880−CAPE5’のDNA配列である。
配列番号58は、プライマー881−CAPE3’のDNA配列である。
【0021】
発明の詳細な記述
本発明は、表面に付加された二官能性ペプチドリガンドを含んでなる機能化ナノ粒子を提供するものである。ナノ粒子に対して遠位の部分でペプチドを機能化し、核酸、ナノチューブ、他のペプチドなどのバイオポリマーを含む多種多様な材料と結合させる。
【0022】
機能化ナノ粒子については、バイオポリマーのマトリクスに固定化し、ナノ回路の土台として機能する導電性のネットワークを形成することができる。固定化したナノ粒子には、ナノスケールの電子デバイス、多機能触媒、化学センサの分野ならびに、バイオセンサ、生体アッセイなどの多くの生物学的用途において有用性がある。
【0023】
本願開示内容全体をとおして多数の略号および定義を用いるが、これらは特許請求の範囲および明細書を解釈するにあたって使用できるものである。
【0024】
「CNBP」はカーボンナノチューブ結合ペプチドを意味し、
「MWNT」は多層ナノチューブを意味し、
「SWNT」は単層ナノチューブを意味し、
「TEM」は透過電子顕微鏡を意味し、
「CNT」はカーボンナノチューブを意味し、
「GSH」は化合物グルタチオンを示す。
【0025】
「TP」はチオプロニンの略号である。
「HTHはヘリックスターンヘリックスの略号である。
【0026】
本願明細書において「ナノ粒子」とは、平均粒径が1〜100nmの間にある金属質粒子または半導体粒子であると定義する。好ましくは、粒子の平均粒径が約1〜40nmの間である。本願明細書において使用する場合、「粒度」と「粒径」は同じ意味である。
【0027】
「合金」とは、本願明細書において、2種以上の金属の均質な混合物であると定義される。
【0028】
「単層膜」とは、単一分子の厚さである、ナノ粒子にコーティングされる材料の層を示す。
【0029】
「混合単層膜」とは、少なくとも2種類の分子成分を有する単層膜を示す。
【0030】
「捕獲コーティング成分」とは、本願明細書において使用する場合、何らかのリガンドまたは捕獲部分との親和性を持つ、ナノ粒子に単層膜を形成できる材料を示す。「捕獲」成分は、混合単層膜の少ない方の部分をなし、単層膜の50%未満を占めるものであればよい。
【0031】
「遮蔽用コーティング成分」とは、捕獲部分ではない物質の非特異的結合を防止する機能を持つ、ナノ粒子に単層膜を形成できる材料を示す。遮蔽用コーティング成分はさまざまな材料で構成されるもので構わないが、エチレングリコールが特に適している。
【0032】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合によって互いに結合された2以上のアミノ酸を示す。ペプチドには、プロセシングや翻訳後修飾などの何らかの自然なプロセスで修飾されたものだけでなく、化学修飾の手法で修飾されたものも含まれる。この修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、アミノ末端またはカルボキシル末端をはじめとして、ペプチド内のどこにでも起こり得るものである。修飾の一例として、アミド化、アシル化、アセチル化、架橋、環化、グリコシル化、水酸化、リン酸化、ラセミ化ならびに、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体、脂質または脂質誘導体などのさまざまな部分の共有付着(たとえば、Proteins− Structure and Molecular Properties、第2版 クライトン(Creighton)、W.H.フリーマン・アンド・カンパニー(Freeman and Company)、ニューヨーク(1993)およびPost−translation covalent Modification of Proteins、B.C.ジョンソン(Johnson)編、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク(1983)を参照のこと)があげられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの基本的な化学構造単位を示す。本願明細書では以下の略号を使用して具体的なアミノ酸を特定する。
【0034】
【表1】

【0035】
本願明細書において使用する場合、「ペプチド」という用語と「ポリペプチド」という用語は同義に用いられる。
【0036】
本願明細書において使用する場合、「二官能性」という用語は、ペプチドについていえば、少なくとも2つのエンティティに対する親和性を持つペプチドを意味する。本発明の代表的な二官能性ペプチドとして、C末端またはN末端がナノ粒子に結合するように機能化され、反対側の末端が、一般にはバイオポリマーまたはカーボンナノチューブなどのナノ構造体である何らかの捕獲部分に結合するように機能化されたものがあげられる。
【0037】
「結合ドメイン」という用語は、特定のエンティティまたは捕獲部分に対する結合親和性を持つ二官能性ペプチドの一部を示す。
【0038】
「炭素ナノ構造体結合ペプチド」という用語は、炭素ナノ構造体に結合するように選択されたペプチドを示す。カーボンナノチューブに対する特定の親和性を持つペプチドを生成する場合、これらのペプチドを「炭素ナノ構造体結合ペプチド」またはCNBPと呼ぶ。
【0039】
「ナノ構造体」という用語は、少なくとも1つの特徴寸法(characteristic dimension)が約100ミクロン未満である、チューブ、ロッド、シリンダ、束状構造体、ウエハ、ディスク、シート、プレート、平面、錐体、細長い小片、顆粒、楕円体、楔体、ポリマー繊維、天然繊維、このような他の物体を意味する。
【0040】
「ナノロッド」という用語は、中空であっても中実であってもよく、断面形状が円形であっても円形でなくても構わない、さまざまなナノ構造体を意味する。本発明のナノロッドには、ナノチューブ、ナノファイバ、ポリマーナノファイバ、束状構造体、多層構造体を含み得る。
【0041】
「ナノチューブ」という用語は、ナノロッドの一部分集合であって、狭い方の寸法(直径)が約1〜200nmであり、長い方の寸法(長さ)については、短い方の寸法に対する長い方の寸法の比すなわちアスペクト比が少なくとも5である、中空の物品を示す。通常、アスペクト比は10〜2000の間である。
【0042】
「ナノ平面」とは、1つの特徴寸法が500ナノメートル未満である、単層または二層のグラファイトシートまたはグラフェンシートなどの表面を意味する。
【0043】
「ナノファイバ」とは、寸法が1000ナノメートル未満と小さい天然のフィラメントまたはポリマーフィラメントを意味する。
【0044】
「炭素ベースのナノチューブ」または「カーボンナノチューブ」とは、本願明細書において、主に炭素原子で構成される中空の構造体を意味する。カーボンナノチューブを、金属などの他の元素でドープすることも可能である。
【0045】
「機能化カーボンナノチューブ」という用語は、二官能性タンパク質またはペプチドが付着したカーボンナノチューブを示す。本発明の機能化カーボンナノチューブは、このナノチューブに付加され、核酸分子などの捕獲部分に対する親和性を持つことになる遊離結合ドメインを有する二官能性ペプチドを有するものである。
【0046】
「結合対」という用語は、化学ポリマーまたはバイオポリマーをベースにした、互いに特異的に結合するカップルを示す。結合対の一般的な例に、抗原/抗体またはハプテン/抗ハプテン系などの免疫型の結合対がある。
【0047】
本願明細書において使用する場合、「固体担体」という用語は、ニトロセルロースまたはナイロンなど、核酸マトリクスを固定化できる材料を示す。
【0048】
本願明細書において使用する場合、「核酸断片」は、任意に、合成、非天然、あるいは改変したヌクレオチド塩基を含有する、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAのポリマーである。DNAのポリマーの形で単離された核酸断片が、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1以上のセグメントで構成されるものであっても構わない。
【0049】
「核酸結合アミノ酸配列」という用語は、特定の核酸標的配列に対する親和性を有する連続したアミノ酸の連続配列を示す。
【0050】
「標的配列」という用語は、特異的に認識され、核酸結合ペプチドに結合する核酸の連続配列を意味する。
【0051】
「亜鉛−フィンガー」または「Zn−フィンガー」という用語は、特定の核酸配列に結合する特定のアミノ酸配列を示す。Zn−フィンガー配列は従来技術において周知であり、(i)本願明細書においてZif268とも呼ぶGCGTGGGCG[配列番号1](キム(Kim)ら、Proc Natl Acad Sci USA.1998年3月17日;95(6):2812〜7)、(ii)本願明細書においてNREとも呼ぶAAGGGTTCA[配列番号2](キム(Kim)ら、上掲)、本願明細書においてSp1Cとも呼ぶGGGGCGGGG[配列番号3](ウォルフェ(Wolfe)ら、Annu Rev Biophys Biomol Struct.2000;29:183〜212)を含むがこれに限定されるものではないDNAの標的連続配列の特異性を有する。
【0052】
「捕獲部分」とは、二官能性ペプチドの結合ドメインによって結合できる物質を示す。捕獲部分はどのような物質であってもよいが、一般にはペプチドやタンパク質、核酸断片などのバイオポリマーであるが、多種多様なナノ構造体も含み得る。
【0053】
「ファージ」または「バクテリオファージ」とは、細菌に感染するウイルスを示す。本発明に関する限りは改変された形態を用いてもよい。好ましいバクテリオファージは、M13およびλと呼ばれる2つの「野生型」ファージに由来するものである。λファージは、10〜20kb前後の範囲のDNAのセグメントをクローニングにするのに用いられる。これらのファージは溶菌性ファージすなわち、その宿主細胞を溶解してさらに多くのファージを放出することによって複製する。M13系は細菌内部で成長できるため、自己が感染した細胞を破壊することはなく、新たなファージを連続して作り続けさせる。これは一本鎖DNAファージである。
【0054】
「ファージディスプレイ」という用語は、機能的外来ペプチドまたは小タンパク質をバクテリオファージまたはファージミド粒子の表面に提示すること示す。遺伝子組み換えファージを用いて、ペプチドをそれぞれの固有表面タンパク質のセグメントとして提示することが可能であろう。遺伝子配列の異なるファージの集団によってペプチドライブラリを生成することもできる。
【0055】
「遺伝子」とは、コード配列に先行(5’非コード配列)および後続(3’非コード配列)する制御配列をはじめとする特定のタンパク質を発現する核酸断片を意味する。「天然遺伝子」とは、それぞれに制御配列を持つ自然界に見られるような遺伝子を意味する。「キメラ遺伝子」とは、天然遺伝子ではなく、自然界では一緒に見られることのない制御配列とコード配列とを含んでなるあらゆる遺伝子を意味する。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する制御配列とコード配列とを含んでなるものであってもよいし、同一起源由来であるが自然界で見られる形とは違った形に配列された制御配列およびコード配列を含んでなるものであってもよい。
【0056】
「コード領域」の「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を示す。「好適な制御配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内またはコード配列の下流(3’非コード配列)に位置し、関連のコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、あるいは翻訳に影響するヌクレオチド配列を示す。制御配列としては、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造があげられる。
【0057】
「プロモーター」とは、コード配列または機能的RNAの発現を制御できるDNA配列を示す。通常、コード配列はプロモーター配列の3’に位置する。プロモーターは、全体が天然遺伝子由来のものであってもよいし、自然界に見られる異なるプロモーターに由来する異なる要素からなるものであってもよく、あるいは、合成DNAセグメントを含んでなるものであってもよい。プロモーターが変われば、異なる組織または細胞型の遺伝子の発現、異なる発達段階での遺伝子の発現、あるいは異なる環境条件または生理学的条件に応答しての遺伝子の発現が指示される場合があることは、当業者であれば理解できよう。ほとんどの細胞型でほぼ常に遺伝子を発現させるプロモーターは一般に「構成的プロモーター」と呼ばれている。さらに、多くの場合は制御配列の正確な境界が完全に画定されていないため、長さの異なるDNA断片が同じプロモーター活性を持つこともあると言われている。
【0058】
本願明細書で使用する「発現」という用語は、本発明の核酸断片由来のセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定した蓄積を示す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を示すこともある。
【0059】
「シグナルペプチド」という用語は、分泌された成熟タンパク質に先行するアミノ末端ポリペプチドを示す。シグナルペプチドは成熟タンパク質から切断され、よって成熟タンパク質中には存在しない。シグナルペプチドには、分泌されたタンパク質を細胞膜から押し出し、所定の場所まで移動させる機能がある。シグナルペプチドはシグナルタンパク質とも呼ばれる。
【0060】
「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」の各用語は、通常は環状二本鎖DNA分子の形で、細胞の中心的代謝の一部ではない遺伝子を持っていることの多い特別な染色体因子を示す。このような因子としては、あらゆるソースに由来する自己複製配列、ゲノム組込配列、ファージまたはヌクレオチド配列、線状または環状で一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAが可能であり、この場合、複数のヌクレオチド配列が連結または組換えられて、選択された遺伝子産物に対するプロモーター断片およびDNA配列を適切な3’未翻訳配列と共に細胞に導入できる独特の構成となっている。「形質転換カセット」とは、外来遺伝子を含み、外来遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を容易にする因子を有する特定のベクターを示す。「発現カセット」とは、外来遺伝子を含み、外来遺伝子に加えて外来宿主でその遺伝子の発現を増すことのできる因子を有する特定のベクターを示す。
【0061】
「ヘテロ接合」という用語は、少なくとも2種類の材料が定義された空間内で順番に並置されることを示す。
【0062】
本願明細書で利用する標準的な組換えDNAおよび分子クローニングの手法は従来技術において周知であり、サムブルック(Sambrook),J.、フリッチ(Fritsch),E.F.およびマニアティス(Maniatis),T.著、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版局(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、NY(1989)(以下、「マニアティス」とする)およびシルハヴィ(Silhavy),T.J.、ベンナン(Bennan),M.L.およびエンキスト(Enquist),L.W.著、Experiments with Gene Fusions、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・コールド出版局スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor Laboratory Cold Press Spring Harbor)、NY(1984)ならびに、オースベル(Ausubel),F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、グリーン・パブリッシング・アソシエーツ・アンド・ウィレイ−インターサイエンス(Greene Publishing Assoc. and Wiley−Interscience)(1987)によって説明されている。
【0063】
被覆ナノ粒子
本発明は、二官能性ペプチド用の付着点として機能する単層膜でコーティングしたナノ粒子を提供するものである。好適なナノ粒子は平均粒径が1から100nmの間にある金属質粒子または半導体粒子である。好ましくは、粒子の平均直径は約1から40nmの間である。金属質ナノ粒子としては、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、鉄、銅、コバルトならびに、これらの金属で構成される合金の粒子があげられるが、これに限定されるものではない。「半導体ナノ粒子」としては、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、硫化銀、硫化カドミウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化鉛、ヒ化ガリウム、シリコン、酸化スズ、酸化鉄、リン化インジウムの粒子があげられるが、これに限定されるものではない。
【0064】
本発明のナノ粒子は単層膜でコーティングされている。単層膜は、二官能性ペプチドに対する付着部(attachment)として機能すると同時に、ナノ粒子に水溶性を持たせる役割も果たす。コーティングによって水溶性となったナノ粒子を本願明細書では「安定化されている」と呼ぶ。安定化された水溶性の金属ナノ粒子および半導体ナノ粒子を作製する方法は従来技術において周知である。これらの粒子は、有機コーティングの性質に応じて荷電していることもあれば中性のこともある。たとえば、本願明細書に援用する、テンプルトン(Templeton)ら(Langmuir 15:66〜76(1999)には、チオプロニンまたはコエンザイムA単層膜で保護された、安定化された荷電水溶性金ナノ粒子を作製するための方法が記載されている。チオプロニン保護金ナノ粒子を作製するにあたって、四塩化金酸とN−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン(チオプロニン)とをメタノールと酢酸との混合物に同時溶解させた。素早く攪拌しながら水素化ホウ素ナトリウムを添加した。これらの粒子の平均粒度については、反応時のチオプロニンと四塩化金酸とのモル比を変えることで制御できる。コエンザイムA保護金ナノ粒子についても、反応におけるチオプロニンをコエンザイムAに変えて同様にして作製した。
【0065】
金属金、銀、白金、パラジウム、コバルトおよびニッケルの安定化された水溶性ナノ粒子を作製する同様の方法が、ヒース(Heath)らによって本願明細書に援用する米国特許第6,103,868号に説明されている。この方法では、1以上の金属塩の溶液または分散液を、チオール、ホスフィン、ジスルフィド、アミン、オキシドまたはアミドなどの官能基を有する有機表面パッシバントの溶液と混合した。続いて還元剤を添加し、金属塩を還元して遊離金属を得た。
【0066】
被覆ナノ粒子を作製するための他の好適な方法も周知である(たとえば、チェン(Chen)ら(Colloids and Surfaces A 169:107〜116(2000)、ハーゲマイヤー(Hagemeyer)らの米国特許第6,074,979号明細書、ウェルフィング(Wuelfing)ら(J.Am.Chem.Soc.120:12696〜12697(1998)、チャン(Chan)ら(Science 281:2016〜2018(1998)、ミッチェル(Mitchell)ら(J.Am.Chem.Soc.121:8122〜8123(1999)、ナパー(Napper)(J.Colloid.Interface.Sci 58:390〜407(1977)を参照のこと)。
【0067】
安定化された水溶性半導体ナノ粒子および金属ナノ粒子のいずれに関しても、たとえば、ポリ(エチレングリコール)およびグルタチオンまたはポリ(エチレングリコール)ならびにチオプロニンなどのさまざまな安定化用コーティングまたは単層の混合物を用いることが可能である。
【0068】
よって、
a)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
b)各々が結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなる機能化ナノ粒子であって、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインで(a)のナノ粒子に付着されている機能化ナノ粒子を提供することは、本発明の範囲内である。
【0069】
あるいは、単層膜の一成分が二官能性ペプチドに対する付着点となり、混合単層膜の他の成分が望ましくないタンパク質または捕獲部分の非特異的結合に対するシールドとして機能する混合単層膜でコーティングしたナノ粒子を提供すると有用な場合もある。この実施形態では、一般に、捕獲成分と遮蔽成分とを有する混合単層膜が同じ単層膜の一部である。一般に、捕獲成分は混合単層膜の約50%未満をなし、約20%〜40%が好ましい。逆に、遮蔽成分は単層膜の主成分を形成し、単層膜の少なくとも約50%をなし、60%から約90%が好ましい。
【0070】
このような混合単層膜の捕獲成分は、本発明の二官能性ペプチドと結合できるものでなければならない。捕獲成分は、捕獲部分への結合を可能にするさまざまな化学基で機能化し得るものである。このような化学反応基の非限定的な例としては、−NH基、−COOH基、−CHO−基、−OH基、−X(Cl、Br、I)基、スクシンイミド基、およびエポキシ基よりなる群から選択されるものがあげられる。好適な捕獲成分の好ましい例にチオプロニンおよびGSHがある。チオプロニン(TPと略記)はN−2−メルカプトプロピオニル−グリシンであり、ペプチドに合った都合のよい結合部位として機能する露出したカルボキシ基が存在することから、特に捕獲成分として好適である。
【0071】
混合単層膜の遮蔽成分は、被覆ナノ粒子に対する非捕獲部分材料の結合をブロックする機能を果たし、特定の二官能性タンパク質または捕獲部分を結合、単離または固定化する目的でナノ粒子を利用できるようにするものである。好適な遮蔽成分としては、短鎖エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールメタクリレート、糖類、クラウンエーテル、アクリルアミドがあげられるが、これに限定されるものではなく、短鎖エチレングリコールオリゴマーが好ましい。
【0072】
二官能性ペプチド
本発明は、安定化された被覆ナノ粒子に付着された二官能性ペプチドを提供するものである。二官能性ペプチドは一般に、少なくとも2つの結合ドメインを持つことになる。一方の結合ドメインがナノ粒子をコーティングしている単層膜に対する親和性を持ち、他方の結合ドメインが何らかの捕獲部分に対する親和性を持つ。
【0073】
本発明の二官能性ペプチドは約5から約100アミノ酸長になり、約10から約30アミノ酸であると好ましく、一般には線状の二次構造に達するものである。
【0074】
二官能性ペプチドを、ナノ粒子をコーティングする単層膜に対する親和性を有する結合ドメインを少なくともひとつ持つように操作する。一般に、この結合ドメインは結合対のメンバーになる。化学ベースおよびタンパク質ベースの結合対は従来技術において周知であり、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、6XヒスチジンTag/Ni−NTA、ストレプトアビジン/ビオチン、S−タンパク質/S−ペプチド、クチナーゼ/ホスホネートインヒビターなどの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない。さらに、結合対には、抗原/抗体またはハプテン/抗ハプテン系などの免疫型のあらゆるクラスの結合対ならびに、ビオチン/アビジン;ビオチン/ストレプトアビジン;葉酸/葉酸結合タンパク質などの非免疫型のあらゆるクラスの結合対;ペプチド核酸配列を含む相補的核酸セグメント;プロテインAまたはG/免疫グロブリン;マレイミドおよびハロアセチル誘導体をはじめとするスルフヒドリル反応基などの共有結合を形成する結合対、イソトリオシアネート、スクシンイミジルエステルおよびハロゲン化スルホニルなどのアミン反応基も含まれる。
【0075】
もうひとつの態様では、捕獲部分に対する親和性を有する第2の結合ドメインを含むように二官能性ペプチドを設計する。本発明の代表的な捕獲部分としては、たとえば、ペプチド、タンパク質、核酸断片、コラーゲンなどのバイオポリマーならびに、さまざまなナノ構造(本願明細書にて定義するようなナノロッド、ナノチューブ、ナノ平面、ナノ繊維)などのナノデバイスの組み立てと合成に役立つナノ材料があげられる。本発明において好ましいのは核酸およびカーボンナノチューブ捕獲部分である。
【0076】
核酸結合ドメインまたはモチーフは従来技術において周知であり、多くのものが本発明で使用するのに適している。たとえば、よく知られたひとつのファミリに、「ヘリックスターンヘリックス」モチーフで区別されるものがある。これらの配列には、イー・コリ(E.coli)CRP(ジーンバンク受託番号:NP_417816)(マッケイ(McKay),D.B.およびシュテイツ(Steitz),T.A. 1981、Nature、290、744〜749)、λcro(ジーンバンク受託番号:P03040)(アンダーソン(Anderson)ら、1981、Nature、290、754〜758)、λcl(ジーンバンク受託番号:NP_040628)(パボ(Pabo),C.O.およびルイス(Lewis),M.、1982、Nature、298、443〜447)を含むがこれに限定されるものではない。これらの例は3つとも、ポリペプチドの例外的にかたいターンで分離されたαヘリックスの表面露出ペアで構成される、比較的小さなポリペプチドの二量体(=長さ100aa)である。各二量体におけるこれらのヘリックスターンヘリックス(HTH)モチーフの空間分離は基本的に同一であって34Åに等しいが、これはデュプレックスの一方のフェイスに沿ったB型DNAの連続した主溝(consecutive major groove)の相対的な分離でもある。タンパク質配列データベースでの検索から、原核生物細胞と真核生物細胞の両方からのHTH含有DNA結合タンパク質が数百ほど確認されている(ハリソン(Harrison),S.C.、1991、Nature、353、715〜719;アガワール(Aggarwaal),A.K.およびハリソン(Harrison),S.C.、1990、Annu.Rev.Biochem.、59、933〜969)。
【0077】
他のタイプのDNA結合ドメインも本発明に使用するのに適している。非「HTH」タイプの150を超えるタンパク質について、DNA標的を持つ複合体の分子レベルでの研究がなされ、この特定のタイプの分子間認識イベントに関する大きなデータベースが得られている(リリー(Lilley),D.M.J.(編)、1995、DNA−タンパク質構造相互作用。IRL Press、OUP、オックスフォード;ハリソン(Harrison),S.C.、1991、Nature、353、715〜719)。これらの他のモチーフの多くは、HTHのヘリックス間の領域に対する制約が緩和される、真核生物転写因子で普通にみられるヘリックス−ループ−ヘリックス構造体の場合や、亜鉛フィンガーの場合と同じような認識αヘリックスも含んでいる(ルイジ(Luisi),B.F.、1992、Nature、356、379〜380)。逆平行βリボンにおける一対のポリペプチド鎖に基づく別個の認識モチーフもファージP22リプレッサーArc(ジーンバンク受託番号:NP_059642)およびMnt(ジーンバンク受託番号:NP_059641)、E. coliメチオニンリプレッサータンパク質、MetJ(ジーンバンク受託番号:NP_418373)および細菌DNAパッケージングタンパク質HU(ラウマン(Raumann)ら、1994、Curr.Op.Struct.Biol.、4、36〜43)で同定されている。真核生物TATA結合タンパク質でもβ−シート認識モチーフを利用する(パティコグロウ(Patikoglou),G.およびバーレイ(Burley),S.K.、1997、Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.、26、289〜325)。
【0078】
さらに、RNA結合ドメインまたはモチーフを用いてもよい。tRNAシンセターゼ(TRS)複合体(キューザック(Cusack),S.、1995、Nature Struct.Biol.、2、824〜831)、MS2バクテリオファージ翻訳抑制複合体(バレガード(Valegard)ら、1994、Nature、371、623〜626;バレガード(Valegard)ら、1997、J.Mol.Biol.、271、724〜738)、スプライセオソーム由来のU1A複合体(オーブリッジ(Oubridge)ら、1994、Nature、372、432〜438;ナガイ(Nagai),K.、1996、Curr Op.Struct.Biol.、6、53〜61)の3種類に対する結晶構造体を利用できる。タンパク質の一般的な標的部位には、ステム−ループ、ステム−バブル、シュードノット、このような小さな部位で構成される複合体部位がある。このような部位を認識するタンパク質モチーフとしては、ウイルスのコートタンパク質サブユニット(ロスマン(Rossmann),M.G.およびジョンソン(Johnson),J.E.、1989、Annu.Rev.Biochem.、58、533〜573;ベールガード(Valegard)ら 1990、Nature、345、36〜41);90〜100アミノ酸長の保存されたRNA結合ドメイン(RBD)(セント・ジョンストン(St.Johnston)ら、1992、PNAS(USA)、89、10979〜10983;バイクロフト(Bycroft)ら、1995、EMBO J.,14,3563〜3571;カラット(Kharrat)ら、1995、EMBO J.、14、3572〜3584);RGG boxを含有するタンパク質すなわち、いくつかのアルギニン−グリシン−グリシン配列リピートに芳香族であることの多い他の残基が散在した20〜25アミノ酸の領域;オクタペプチドを含有する50アミノ酸長以内のk相同性(KH)ドメインすなわちIGX2GXJ(Xはいずれかのアミノ酸である);いわゆるアルギニンフォーク(ナガイ(Nagai),K.、1996、Curr Op.Struct.Biol.、6、53〜61)があげられる。最も一般的なRNA結合ドメインはRNPドメインであり、これは高等生物の少なくとも600タンパク質で生じるものである(マスコ(Musco)ら、1996、Cell、85、237〜245;ナガイ(Nagai)ら、1990、Nature、348、515〜520;エイビス(Avis)ら、1996、J.Mol.Biol.、257,398〜411)。
【0079】
本発明において好ましいのは、標的配列に対する高い結合親和性および特異性を呈し、容易に入手可能で文献に説明のあるZn−フィンガー結合タンパク質である。本発明で使用するのに好ましいZnフィンガータンパク質は、以下の標的配列:GCGTGGGCG[配列番号1];AAGGGTTCA[配列番号2]およびGGGGCGGGG[配列番号3]と結合するものである。
【0080】
あるいは、本発明の二官能性タンパク質については、ナノロッド、ナノファイバまたはナノチューブなどのさまざまなナノ構造体と結合するように設計できる。たとえばカーボンナノチューブに結合するペプチドを生成することが可能である。theのナノチューブ結合ペプチドを無作為に生成した後、炭素ナノ構造体の集団からCNTへの結合親和性を基準に選択することもできる。ペプチドのライブラリのランダムライブラリの生成は周知であり、バクテリアディスプレイ(bacterial display)(ケンプ(Kemp),D.J.;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(7):4520〜4524、1981、ヘルフマン(Helfman),D.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80(1):31〜35、1983)酵母ディスプレイ(チエン(Chien) CTら、Proc Natl Acad Sci USA 1991年11月1日;88(21):9578〜82)コンビナトリアル固相ペプチド合成(米国特許第5449754号明細書、米国特許第5480971号明細書、米国特許第5585275号明細書、米国特許第5639603号明細書)、ファージディスプレイ技術(米国特許第5,223,409号明細書;米国特許第5,403,484号明細書;米国特許第5,571,698号明細書;米国特許第5,837,500号明細書)をはじめとする多種多様な手法で達成できるものである。このような生体ペプチドライブラリを生成するための手法は、デイニー(Dani),M.、J.of Receptor & Signal Transduction Res.、21(4)、447〜468(2001)に説明されている。
【0081】
ペプチドを無作為に生成するための好ましい方法のひとつに、ファージディスプレイによるものがある。ファージディスプレイは、ペプチドまたはタンパク質をバクテリオファージのコートタンパク質に遺伝子的に融合させ、ビリオン中の融合残渣をDNAでコードしたまま融合タンパク質をファージバイロン(viron)の外に提示する、in vitroでの選択手法である。提示されたタンパク質とこれをコードするDNAとが上記のように物理的に結び付いていることから、各々が対応するDNA配列と結び付いた大量のタンパク質バリアントを「バイオパニング」と呼ばれる単純なin vitro選択手順でスクリーニングすることができる。この最も単純な形態で、バイオパニングは、ファージ提示後のバリアントのプールを、プレートまたはビーズに固定化しておいた該当する標的とともにインキュベートし、未結合のファージを洗い流し、ファージと標的との間の結合相互作用を破壊して特異的に結合したファージを溶出することで実施される。次に、溶出されたファージをin vivoにて増幅し、このプロセスを繰り返して、もっともしっかりとした結合配列優先でファージプールを段階的に富化する。選択/増幅を3回またはそれ以上繰り返した後、個々のクローンをDNA配列決定でキャラクタライズする。
【0082】
上記の方法を利用して、本願出願人らは、以下に列挙するカーボンナノチューブと選択的に結合する多数のペプチドを生成した。
【0083】
【表2】

【0084】
カーボンナノチューブを結合する目的で、これらのペプチドまたは同じようにして生成した他のペプチドを二官能性ペプチドに取り入れてもよいと思われる。
【0085】
二官能性ペプチドの設計を定めたら、このペプチドを従来技術において周知の多種多様な手段で合成・生成することができる。たとえば、アミノ酸を樹脂に順次加えた後、樹脂から切り離して精製する固相ペプチド合成(たとえば、ヨクム(Yokum)ら、Solid−Phase Synthesis(2000)、79〜102。編者(ら):ケート(Kates),スティーブン(Steven) A.;アルベリシオ(Albericio),フェルナンド(Fernando)。出版社:マーセル・デッカー・インコーポレイテッド(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク;アルベリシオ(Albericio),フェルナンド(Fernando)、Biopolymers(2000)、55(2)、123〜139;フィールズ(Fields),グレッグ(Gregg) B.Molecular Biomethods Handbook(1998)、527〜545。編者(ら):ラプレイ(Rapley),ラルフ(Ralph);ウォーカー(Walker),ジョン(John) M.出版社:ヒューマナ(Humana)、ニュージャージー州トトワ(Totowa)を参照のこと)によってペプチドを合成してもよいし、あるいは、組換え手段によってペプチドを生成してもよい。選択したペプチドをコードするDNAコード領域を設計し、化学的に合成することができる。その後は、これらの断片をさまざまな微生物発現宿主の形質転換に適した発現ベクターやクローニングベクターにクローニングすることができる。
【0086】
外来タンパク質の発現を高いレベルで指示する、プロモーターなどの制御配列を含む微生物の発現系および発現ベクターが当業者間で周知である。このうちどれを使って本配列の遺伝子産物生成用のキメラ遺伝子を構築しても構わない。
【0087】
好適な宿主細胞の形質転換に役立つベクターまたはカセットは従来技術において周知である。一般に、このベクターまたはカセットには、関連遺伝子の転写および翻訳を指示する配列、選択可能なマーカー、自己複製または染色体組み込みを可能にする配列が含まれる。好適なベクターは、転写開始制御部を含む遺伝子の5’の領域と転写終結を制御するDNA断片の3’の領域とを含んでなる。これは両方の制御領域が形質転換宿主細胞と相同遺伝子に由来するものである場合に最も好ましいが、このような制御領域が生産宿主として選択した特定の種に固有の遺伝子に由来するものでなくてもよいことは理解できよう。
【0088】
所望の宿主細胞での上記遺伝子の発現をドライブするのに役立つ開始制御領域またはプロモーターには多くのものがあり、当業者には馴染みのあるものである。これらの遺伝子をドライブできるほとんどすべてのプロモーターが本発明に適しており、その一例として、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(酵母菌属での発現に有用)、AOX1(ピチア属での発現に有用)、lac、ara、tet、trp、IP、IP、T7、tac、trc(エシェリキア・コリ(Escherichia coli)での発現に有用)ならびに、バシラス属での発現に有用なamy、apr、nprプロモーターおよびさまざまなファージプロモーターがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0089】
終結制御領域も好ましい宿主に固有のさまざまな遺伝子から誘導することができる。任意に、終結部位が必要ないこともあるが、終結部位を含む形が最も好ましい。
【0090】
場合によっては、本件遺伝子産物を形質転換宿主の分泌生成物として生成する方が望ましいことがある。所望のタンパク質を成長培地に分泌することには、精製手順を単純化してコストを抑えられるという利点がある。細胞膜での発現可能なタンパク質の活発な移動を容易にする上で分泌シグナル配列が役立つ場合が多いことは従来技術において周知である。宿主産生宿主で機能的な分泌シグナルをコードするDNA配列を取り入れることで、分泌できる形質転換宿主を作出することができる。適切なシグナル配列を選択するための方法は従来技術において周知である(たとえば、EP 546049号;国際公開第9324631号を参照のこと)。分泌シグナルDNAまたはファシリテーターを、発現制御DNAと本件遺伝子または遺伝子断片との間で、後者と同一の読み枠内に配置することができる。
【0091】
二官能性ペプチドの被覆ナノ粒子への連結
二官能性ペプチドを被覆ナノ粒子に付加するには、多種多様な方法を用いることが可能である。これについては、連結の化学的な性質から共有結合と非共有結合の2つのカテゴリに分けることができる。共有結合による連結方法では、被覆ナノ粒子上の官能基および二官能性ペプチド上の官能基と反応させるのに小さなクロスリンカー分子を利用する。この方法の基本原理ならびに、これに合った多くのクロスリンカー分子については文献に十分な説明がある(Bioconjugate Techniques、グレッグ(Greg)T.ヘルマンソン(Hermanson)。アカデミック・プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サン・ディエゴ(San Diego)、1996)。この方法の一例では、分子EDC[1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩]を利用して被覆ナノ粒子(Au−Tpなど)のカルボキシル基と二官能性ペプチドのアミン基とを架橋させる。
【0092】
【化1】

【0093】
非共有結合による方法では、被覆ナノ粒子(Au−GSHなど)にあらかじめ付加されたリガンドとこれに対応する二官能性ペプチドのリガンド−結合ドメイン(Au−GSHの場合はGST)との共有結合の相互作用を利用することはない。上記にて説明したとおり、この目的で多種多様なリガンド/リガンド結合ドメイン対を利用することができる。
【0094】
【化2】

【0095】
固定化ナノ粒子
二官能性タンパク質またはペプチドが付着したナノ粒子については、ペプチドの結合ドメインのうちの1つをとおして多種多様な捕獲部分に固定化できる。一般に、捕獲部分が特定の構造と一致し、それ自体を固体担体に固定できる。本発明の代表的な捕獲部分としては、たとえば、ペプチド、タンパク質、核酸断片、コラーゲンなどのバイオポリマーならびに、さまざまなナノ構造体(本願明細書にて定義するようなナノロッド、ナノチューブ、ナノ平面、ナノファイバ)などのナノデバイスの組み立てと合成に役立つナノ材料があげられる。
【0096】
本発明の文脈におけるCNT結合ペプチドの利点のひとつに、一般的なナノ粒子に代えてCNTを利用できる点があげられる。したがって、たとえば、核酸結合ドメインで機能化したCNT結合ペプチドがCNTと核酸分子または核酸マトリクスとを連結させる上で役立つことがある。このような設計にすることで、複合体ナノ粒子を構成しなければならない必要性が簡素化され、核酸マトリクスによって構築されたパターンに従ってCNTのマトリクスを構成できるようになる。
【0097】
捕獲部分として、あるいはナノ粒子の代わりに役立つ炭素ナノ構造体には、主に炭素で構成され、少なくとも1つの特徴寸法が約100nm未満である、チューブ、ロッド、シリンダ、束状構造体、ウエハ、ディスク、シート、プレート、平面、錐体、細長い小片、顆粒、楕円体、楔体、ポリマー繊維、天然繊維、このような他の物体の形をとる構造体がある。本発明の好ましい炭素ナノ構造体はナノチューブである。
【0098】
特に好適なナノチューブは通常、直径が約1〜200nmであり、狭い方の寸法に対する長さ寸法の比すなわちアスペクト比が少なくとも5である。通常、アスペクト比は10から2000の間である。カーボンナノチューブは主に炭素原子で構成されるが、金属などの他の元素でドープされたものであっても構わない。炭素ベースのナノチューブについては、多層ナノチューブ(MWNT)であっても単層ナノチューブ(SWNT)であっても構わない。MWNTは、たとえば、各々直径の異なる同心のナノチューブをいくつか含むものである。すなわち、直径の最も小さいチューブがこれより直径の大きなチューブの中に入り、これがさらに直径の大きな別のナノチューブの中に入っている。一方、SWNTはナノチューブ1本で構成される。
【0099】
カーボンナノチューブ(CNT)は多種多様な方法で製造できるものであり、さらに市販もされている。CNT合成方法には、グラファイトのレーザ蒸発法(A.セス(Thess)ら、Science 273、483(1996)、アーク放電(C.ジャーネット(Journet)ら、Nature 388、756(1997)、HiPCo(高圧一酸化炭素)プロセス(P.ニコラエフ(Nikolaev)ら、Chem.Phys.Lett.313、91〜97(1999)が含まれる。化学蒸着法(CVD)を利用してカーボンナノチューブを生成することも可能である(J.コング(Kong)ら、Chem.Phys.Lett.292、567〜574(1998);J.コング(Kong)ら、Nature 395、878〜879(1998);A.キャッセル(Cassell)ら、J.Phys.Chem.103、6484〜6492(1999);H.ダイ(Dai)ら、J.Phys.Chem.103、11246〜11255(1999)。
【0100】
あるいは、捕獲部分が核酸マトリクスまたはペプチドなどのバイオポリマーあるいは特定の構造的コンホメーションを持つペプチドの集団であっても構わない。本発明の二官能性ペプチドを機能化させて核酸結合ドメインを含んでなるようにしてある場合、捕獲部分が核酸であると好ましい。
【0101】
二官能性ペプチドによるナノ粒子の捕獲と以後の固定化用に、捕獲部分を固体担体に固定化してもよい。この目的のために、好適な固体担体としては、シリコンウェハ、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリグリシジルメタクリレート、置換ポリスチレン(アミン化またはカルボキシル化ポリスチレン;ポリアクリルアミド;ポリアミド;ポリ塩化ビニルなど)などの合成ポリマー担体;ガラス、アガロース、ニトロセルロース、ナイロンがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0102】
本発明の重要な利点のひとつに、機能化ナノ粒子の設計によってナノ構造体の作成に取り入れられるプログラマビリティの態様がある。特定の核酸結合ドメインを有する二官能性ペプチドを各々含んでなる複数の機能化ナノ粒子を構成することもできるであろうと思われる。各核酸結合領域は特定の核酸の連続配列に対する特定の親和性を持つことになる。よって、核酸マトリクスの特定の領域に結合するように機能化ナノ粒子を設計することが可能であり、その堆積量を正確に制御することが可能である。金属または半導体を正確かつ制御された形で堆積させる機能があることで、電子ヘテロ接合、相互接続部、ナノ回路などのナノメートル規模の電子デバイスを構成するにあたって不可欠な要件が満足される。
【0103】
よって、
a)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
b)結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと核酸結合アミノ酸配列を含んでなる第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなり、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインを介して(a)のナノ粒子に付着されており、そして核酸結合アミノ酸配列で核酸断片に付着されている、核酸ナノ粒子複合体を提供することは、本発明の範囲内である。
【0104】
さらに、
a)各々が
i)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
ii)結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと核酸結合アミノ酸配列を含んでなる第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなる複数の機能化ナノ粒子であって、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインを介して金属質ナノ粒子に付着されており、そして各第2の結合ドメインの核酸結合アミノ酸配列が非反復性である、複数の機能化ナノ粒子を提供し、
b)(a)の各二官能性ペプチドの各第2の結合ドメインの核酸結合アミノ酸配列に対する親和性を有するペプチド結合ドメインを有する核酸マトリクスを提供し、
c)二官能性ペプチドの核酸結合アミノ酸配列が(b)の核酸マトリクスのペプチド結合ドメインと結合する条件下で(a)の機能化ナノ粒子を(b)の核酸マトリクスと接触させ、ナノ粒子を固定化することを含んでなる、複数のナノ粒子を核酸マトリクス上に固定化するための方法を提供することは、本発明の範囲内である。
【0105】
ナノメートル規模の電子デバイス
導電性ヘテロ接合および相互接続部をナノスケールで構成するにあたって、捕獲部分のマトリクスに固定化した本発明の金属質ナノ粒子または半導体ナノ粒子を用いることができる。金属質の場合、固定化したナノ粒子は、ナノメートル規模の電子デバイス同士を連結させ、高密度電子回路の製造を可能にし得るものと思われる。隣接するナノ粒子間の距離を両者間の電位差によって制御可能な形で金属質ナノ粒子を並べてアレイ化した後、このマトリクスをリーバー(Leiber)ならびにその共同研究者ら(ルーキーズ(Rueckes)T.ら(2000)、Science 289、94〜97)がカーボンナノチューブで提案しているものに近い不揮発性メモリデバイスとして利用できるものと思われる。
【0106】
半導体性ナノ粒子は、スイッチ、増幅器あるいはロジックゲートとしてそのまま利用可能な3端子ゲートデバイスでの用途が見込まれるものである。金属粒子を有機半導体と連結することで、たとえば、負性微分抵抗を呈する2端子スイッチングデバイス(ファン(Fan)ら(2002)JACS 124、5550〜5560など)を開発することが可能になる。他の考え得る用途として、電界放出ディスプレイデバイスの放出点源ならびに、導電性コーティング中の導電性成分としての用途があげられる。
【実施例】
【0107】
以下の実施例において本発明をさらに定義する。これらの実施例は本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、例示目的であげたものにすぎない点を理解されたい。当業者であれば、上記の説明および以下の実施例から本発明に不可欠な特徴を把握することができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明にさまざまな変更および改変を施してこれをさまざまな用途および条件に合わせることができる。
【0108】
基本方法
実施例で用いる標準的な組換えDNAおよび分子クローニング法は従来技術において周知であり、サムブルック(Sambrook),J.、フリッチ(Fritsch),E.F.およびマニアティス(Maniatis),T.著、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)(1989)(マニアティス(Maniatis)およびT.J.シルハヴィ(Silhavy)、M.L.ベンナン(Bennan)およびL.W.エンキスト(Enquist)著、Experiments with Gene Fusions、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)(1984)ならびにオースベル(Ausubel),F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、グリーン・パブリッシング・アソシエーツ・アンド・ウィレイ−インターサイエンス(Greene Publishing Assoc. and Wiley−Interscience)出版(1987)に記載されている。
【0109】
細菌培養の管理と成長に適した材料および方法が従来技術において周知である。以下の実施例において使用するのに適した手法が、Manual of Methods for General Bacteriology(フィリップ・ゲアハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.マレー(Murray)、ラルフ(Ralph) N.・コスティロー(Costilow)、ユージーン(Eugene) W.ネスター(Nester)、ウィリス(Willis) A.ウッド(Wood)、ノエル(Noel) R.クリーグ(Krieg)およびG.ブリッグズ・フィリップス(Briggs Phillips)編、米国微生物学会(American Society for Microbiology)、ワシントン(Washington),DC.(1994)またはトーマス(Thomas) D.ブラック(Brock)著、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版、シナウアー・アソシエーツ・インコーポレイテッド(Sinauer Associates,Inc.)、マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland)(1989)に記載されている。特に明記しない限り、細菌細胞の成長および管理に用いる試薬、制限酵素、材料はいずれも、アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、DIFCO ラボラトリーズ(Laboratories)(ミシガン州デトロイト(Detroit)、ギブコ/BRL(メリーランド州ゲイザースバーグ(Gaithersburg)またはシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis)から入手したものである。
【0110】
略号の意味は以下のとおりである。「h」は時間(単数または複数)を意味し、「min」は分(単数または複数)を意味し、「sec」は秒(単数または複数)を意味し、「d」は日(単数または複数)を意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味する。
【0111】
実施例1
二官能性タンパク質のクローニング
公開されているZif268アミノ酸配列(パヴレティッシュ(Pavletich) NP、パボ(Pabo) CO;Science 1991年5月10日;252(5007):809〜17)を使用し、E.coliで最も頻繁に見られるコドンを用いてDNA配列を生成した。この配列を用いて、遺伝子全体をカバーすべく18のオリゴ(各31ヌクレオチド長)からなる組を設計し、ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)(メリーランド州ロックビル(Rockville)から5’ホスホリル化形態として購入した。標準的な手順(サムブルック(Sambrook),J.ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版局(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)(1989)に従ってアニーリングとライゲーション反応とを実施した。BamHIおよびEcoRI部位を含有する2つのプライマー(#821、#897)を用いて生成物をPCR増幅した。制限消化後、PCR産物をpET41A(ノバジェン(Novagen)、ウィスコンシン州マディソン(Madison)にクローニングしてGST−Zif268融合タンパク質コード配列を含有するpED105を得た。クローニングベクターpET41aには、GST配列ならびに複数のクローニング部位が含まれている。ストラタジーン(Stratagene)の「クイック・チェンジ(Quick Change)」キット(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla)を用いてpED105のZif 268の末端で停止コドンTAAを導入し、pED107を得た。直接配列決定によってすべてのクローンの完全性を確認した。これらの配列を以下に示す。
【0112】
Zif268タンパク質のアミノ酸配列(90アミノ酸、10.8kDa):
MERPYACPVESCDRRFSRSDELTRHIRIHTGQKPFQCRICMRNFSRSDHLTTHIRTHTGEKPFACDICGRKFARSDERKR
HTKIHLRQKD[配列番号28]
【0113】
Zif268のヌクレオチド配列(E.coliコドンを用いて保存):
ATGGAACGTCCGTACGCTTGCCCGGTTGAATCTTGCGACCGTCGTTTCTCTCGTTCTGACGAACTGACCCGTCACATCCG
TATCCACACCGGTCAGAAACCGTTCCAGTGCCGTATCTGCATGCGTAACTTCTCTCGTTCTGACCACCTGACCACCCACA
TCCGTACCCACACCGGTGAAAAACCGTTCGCTTGCGACATCTGCGGTCGTAAATTCGCTCGTTCTGACGAACGTAAACGT
CACACCAAAATCCACCTGCGTCAGAAAGAC[配列番号29]
【0114】
Zif268クローニングに用いるプライマー:
821−ZNF1:GGGGGATCCATGGAACGTCCGTACGCTTGCC[配列番号30]
822−ZNF2:CGGTTGAATCTTGCGACCGTCGTTTCTCTCG[配列番号31]
823−ZNF3:TTCTGACGAACTGACCCGTCACATCCGTATC[配列番号32]
824−ZNF4:CACACCGGTCAGAAACCGTTCCAGTGCCGTA[配列番号33]
825−ZNF5:TCTGCATGCGTAACTTCTCTCGTTCTGACCA[配列番号34]
826−ZNF6:CCTGACCACCCACATCCGTACCCACACCGGT[配列番号35]
827−ZNF7:GAAAAACCGTTCGCTTGCGACATCTGCGGTC[配列番号36]
828−ZNF8:GTAAATTCGCTCGTTCTGACGAACGTAAACG[配列番号37]
829−ZNF9:TCACACCAAAATCCACCTGCGTCAGAAAGAC[配列番号38]
848−ZNR10:ACCACCACCGTCTTTCTGACGCAGGTGGATT[配列番号39]
849−ZNR11:TTGGTGTGACGTTTACGTTCGTCAGAACGAG[配列番号40]
850−ZNR12:CGAATTTACGACCGCAGATGTCGCAAGCGAA[配列番号41]
851−ZNR13:CGGTTTTTCACCGGTGTGGGTACGGATGTGG[配列番号42]
852−ZNR14:GTGGTCAGGTGGTCAGAACGAGAGAAGTTAC[配列番号43]
853−ZNR15:GCATGCAGATACGGCACTGGAACGGTTTCTG[配列番号44]
854−ZNR16:ACCGGTGTGGATACGGATGTGACGGGTCAGT[配列番号45]
855−ZNR17:TCGTCAGAACGAGAGAAACGACGGTCGCAAG[配列番号46]
856−ZNR18:ATTCAACCGGGCAAGCGTACGGACGTTCCAT[配列番号47]
【0115】
PCRプライマー:
821−ZNF1:GGGGGATCCATGGAACGTCCGTACGCTTGCC[配列番号48]
897−2ZnRE:CCC GAA TTC GTC TTT CTG ACG[配列番号49]
【0116】
実施例2
二官能性タンパク質の過発現および精製
GST−Zif268融合タンパク質遺伝子を含有するプラスミドpED107をBL21Star(DE3)(ノバジェン(Novagen)、ウィスコンシン州マディソン(Madison)に形質転換した。ノバジェン(Novagen)から提供されている以下のプロトコールに従って過発現を実施した。まずGST親和性精製キット(ノバジェン(Novagen)を用いて精製を行ったが、その結果を図1に示す。図1は、1mM IPTGの添加後0時間、1時間、2時間(それぞれレーン2、3、4)の時点でのタンパク質の誘導を示すSDS−PAGEゲル(15%)である。第1レーンはタンパク質サイズマーカー(カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad)のインビトロジェン(Invitrogen)からのマーク12)である。BはGST親和性精製実験での溶出画分2〜6を示す。
【0117】
pED107でコードされるGST−Zif268融合タンパク質の計算で求めた分子量は43kDaであったが、これは過発現させたタンパク質で観察された値と一致している。
【0118】
実施例3
Zif268によって認識されるDNA断片のクローニング
タンパク質活性アッセイの目的で、複製数を1から23の範囲として、Zif 268DNA結合部位のタンデムアレイを持つ一連のプラスミドコンストラクトを作出した。Zif268 DNA結合部位を配列5’−GCGTGGGCG−3’[配列番号1]で同定した。このコンストラクトでは、2つの隣接するZif268部位間の空間を、別の亜鉛フィンガータンパク質NREのDNA結合部位である配列5’−AAGGGTTCA−3’[配列番号2](キム(Kim) JS、パボ(Pabo) CO;Proc Natl Acad Sci USA;1998年3月17日;95(6):2812〜7)で埋めた。
【0119】
クローニングに用いるプライマーを以下に列挙する。872−NZFおよび873−NZRプライマーは、Zif268部位の前にあるNRE部位をコードする。ある単位を別の単位でアニールして結合部位の複製を複数形成できるように、上記の2つのプライマーの末端を、突出末端AAGおよびTTCを有するように設計した(下記のスキームを参照のこと)。
【0120】
【表3】

【0121】
874−N/ZFプライマーおよび875−N/ZRプライマーは、1ヌクレオチドのgスペーサを挟んでZif268部位の前にあるNRE部位をコードする。876−N//ZFプライマーおよび877−N//ZRプライマーは、2ヌクレオチドのGTスペーサを挟んでZif268部位の前にあるNRE部位をコードする。2つの末端にある2対のキャッピングプライマーによって、結合部位単位の成長が停止する。キャッピングプライマーはBamHI部位とEcoRI部位も取り込む。
【0122】
0.1M NaCl中にてアニーリングを行った後、T4リガーゼでのライゲーション反応を実施した。次に、ライゲーション反応混合物を、プライマー878および881でのPCR反応のテンプレートとして使用した。クリンナップ後、PCR産物をBamHIおよびEcoRIで消化し、pUC18にクローニングした。クローンを配列決定し、配列決定の結果に基づいて各クローンの結合部位数を確認した。1から23の間にタンデムアレイのZif268結合部位を含有するクローンを得た。
【0123】
DNA結合部位のクローニングに用いるプライマー
872−NZF:AAGGGTTCAGCGTGGGCG[配列番号49]
873−NZR:CTTCGCCCACGCTGAACC[配列番号50]
874−N/ZF:AAGGGTTCAGGCGTGGGCGG[配列番号51]
875−N/ZR:CTTCCGCCCACGCCTGAACC[配列番号52]
876−N//ZF:AAGGGTTCAGTGCGTGGGCGGT[配列番号53]
877−N//ZR:CTTACCGCCCACGCACTGAACC[配列番号54]
878−CAPB5’:GATAAGGATCCGAGCTCG[配列番号55]
879−CAPB3’:CTTCGAGCTCGGATCCTTATC[配列番号56]
880−CAPE5’:AAGATGGAATTCGAAGCTTGA[配列番号57]
881−CAPE3’:TCAAGCTTCGAATTCCAT[配列番号58]
【0124】
実施例4
平均直径3.0nmのGSH単層膜保護金ナノ粒子の合成
一般的な反応では、MeOH(HPLCグレード)60mLと酢酸(HPLCグレード)10mLとを、250mL容のエルレンマイヤーフラスコ内で内で2〜5分間攪拌することによって混合した。四塩化金酸(HAuCl×HO)(99.99%)0.37g(1.0mmol)とグルタチオン(GSH、シグマ(Sigma)から最低99%)61.4mg(0.2mmol)とを上記の混合溶媒に加え、5分間攪拌することによって溶解させたところ、透明な黄色の溶液が得られた。次に、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH、99%)0.6g(16mmol)をナノピュア(Nanopure)(登録商標)水30gに溶解させた。このNaBH溶液を上記の溶液に素早く攪拌しながら滴下して加えた。NaBHの最初の1滴を加えると、HAuCl溶液は瞬時に黄色から暗褐色に変化した。この反応は発熱を伴うものであった。反応時に生成された熱により、15分以内の間溶液を温かい状態に維持した。この反応時、溶液のpHが1.2から5.0以内まで変化した。攪拌を2時間継続した。得られたGSH保護金ナノ粒子は水に可溶であった。希釈すると、溶液は透明な紫色になった。
【0125】
実施例5
DNA結合活性アッセイ
ゲル電気泳動を利用して、図2に示すように精製Znフィンガータンパク質が標的DNA配列に対して高い親和性および特異性で結合していることを確認した。図2は、電気泳動度移動アッセイである。レーン1および7はライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)(メリーランド州ロックビル(Rockville)からの「1KbプラスDNAラダー」である。レーン2〜6は、後述するようにタンパク質の量が増した同量のDNAの結合反応物からの分離を示す。
【0126】
この例では、23のZif268結合部位を含む短い方の切片と、結合部位を含まない長い方の切片の2種類の異なるDNA片をPED107(GST−Zif268融合タンパク質)と混合した。DNAについては以下のようにして調製した。プラスミドNZ−23、5μg(〜2pmole)をBamHIおよびEcoRIで消化し、23のNZ結合部位と線状化したpUC18ベクターに対応する長い方の切片とを含む420bpの断片を得た。精製後、1mg/mL(〜20pmol/μL)PED107が0μL、1μL、2μL、3μL、4μL入った5本のチューブにDNAを等分した。HOを用いて総反応容量を10μLにした。この反応混合物をRTで10分間インキュベートし、1%アガロースゲルに仕込んだ(図2のレーン2〜5)。試料を60分間90Vで電気泳動した。タンパク質の濃度が高くなるにつれて、短い方のDNA片がゲルにうまくトラップされたが、長い方の切片ではこれが起こらないことから、Znフィンガータンパク質とその標的配列との間に特定の複合体が形成されていることが分かる。
【0127】
実施例6
ナノ粒子結合活性アッセイ
一般的な実験では、OD500=10(〜10μM)に等しい濃度のAu−GSH粒子2μLを、1mg/mLのGST−Zif268タンパク質または対照としてのBSA(シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス(St.Louis)8μL(〜20μM)と混合した。室温にて10分間のインキュベーション後、反応混合物全体を1%アガロースゲルに仕込んだ。1×TBE緩衝液(トリス−ホウ酸塩−EDTA)中、90Vの定電圧で20分間ゲル電気泳動を実施した。ゲル像については、HPスキャンジェット(ScanJet) 6300C上でゲルを直接走査して得た。図3から明らかなように、BSAタンパク質はAu−GSH粒子に結合できないのに対し、二官能性タンパク質GST−Zif268はGSH−Au粒子の移動性を阻害したことから、GST−Zif268とAu−GSHとの間に複合体が形成されていることが分かる。
【0128】
実施例7
二官能性アッセイ
この例では、二官能性タンパク質PED107(GST−Zif268)がAu−GSH粒子とZif268結合部位を持つDNA配列の両方に結合するであろうことを試験した。
【0129】
以下のようにして3回の反応の準備を整えた。1)濃度OD500=10(〜10μM)のAu−GSH粒子2μL、2)濃度OD500=10(〜10μM)のAu−GSH粒子2μLを1mg/mL GST−Zif268タンパク質8μLと混合した、3)5μLのNZ−23(1μg/μL)を加えたこと以外は2と同一。
【0130】
室温にて10分間のインキュベーション後、反応混合物全体を1%アガロースゲルに仕込んだ。1×TAE緩衝液(トリス−酢酸塩−EDTA)中、90Vの定電圧で20分間ゲル電気泳動を実施した。ゲル像については、HPスキャンジェット(ScanJet) 6300C上でゲルを直接走査して得た。図4から明らかなように、タンパク質認識配列を含有するDNA片を加えると、タンパク質−粒子複合体が異なる速度で移動し、DNAはAu粒子と一緒に移動する。図4Aは、スキャンジェット(ScanJet) 6300Cで記録したゲル画像である。図4Bは、イーグル・アイ(Eagle Eye) II(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla)で記録したUV照射下でのゲル画像である。これらの結果から、実施例2で生成した二官能性タンパク質が特に粒子をDNAに向けて送れることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】GST−Zif268タンパク質の過発現および精製を表すゲルを示す。
【図2】精製GST−Zif268融合タンパク質によるDNA結合のゲルシフトアッセイである。
【図3】精製GST−Zif268融合タンパク質vs.ウシ血清アルブミン(BSA)タンパク質についてのナノ粒子結合アッセイを示す。
【図4A−4B】Au−GSHナノ粒子およびDNAの両方に対する精製GST−Zif268タンパク質結合についてのゲルシフトアッセイである。図4Aは、スキャンジェット(ScanJet)s6300Cで記録されたゲル画像であり、図4BはUV照射下でのゲル画像である。
【配列表】












【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
b)各々結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなり、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインで(a)のナノ粒子に付着されている、機能化ナノ粒子。
【請求項2】
ナノ粒子が金属質である、請求項1に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項3】
ナノ粒子を含んでなる金属が、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、鉄、銅、コバルト、およびこれらの合金よりなる群から選択される、請求項2に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項4】
ナノ粒子が半導体である、請求項1に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項5】
ナノ粒子を含んでなる半導体が、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、硫化銀、硫化カドミウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化鉛、ヒ化ガリウム、シリコン、酸化スズ、酸化鉄、およびリン化インジウムよりなる群から選択される、請求項4に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項6】
前記単層膜が、
a)−NH基、−COOH基、−CHO−基、−OH基、−X(Cl、Br、I)基、スクシンイミド基、およびエポキシ基よりなる群から選択される反応基を有する分子、ならびに
b)ペプチド、チオプロニン、およびGSHよりなる群から選択される生体分子、
よりなる群から選択される、請求項1に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項7】
前記単層膜が遮蔽成分をさらに含んでなる、請求項1に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項8】
遮蔽成分が、短鎖エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールメタクリレート、糖類、クラウンエーテル、およびアクリルアミドよりなる群から選択される、請求項7に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項9】
前記第1の結合ドメインが、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、6XヒスチジンTag/Ni−NTA、ストレプトアビジン/ビオチン、S−タンパク質/S−ペプチド、クチナーゼ/ホスホネートインヒビター、抗原/抗体、ハプテン/抗ハプテン、葉酸/葉酸結合タンパク質、およびプロテインAまたはG/免疫グロブリンよりなる群から選択される結合対のメンバーを含んでなる、請求項1に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項10】
前記第2の結合ドメインが核酸結合アミノ酸配列である、請求項1に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項11】
前記核酸結合アミノ酸配列が、DNA結合ドメインとRNA結合ドメインとよりなる群から選択される、請求項10に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項12】
前記核酸結合アミノ酸配列が、ジーンバンク受託番号:NP_417816、ジーンバンク受託番号:P03040、ジーンバンク受託番号:NP_040628、ジーンバンク受託番号:NP_059642、ジーンバンク受託番号:NP_059641よりなる群から選択されるサイテーションによって説明される、請求項11に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項13】
核酸結合アミノ酸配列がDNA結合亜鉛フィンガー配列である、請求項10に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項14】
亜鉛フィンガー配列が、配列番号1、配列番号2、および配列番号3よりなる群から選択される標的配列に結合する、請求項13に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項15】
前記第2の結合ドメインが、核酸、ペプチド、生体細胞、および無機ナノチューブよりなる群から選択される捕獲部分に対する親和性を有する、請求項1に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項16】
二官能性ペプチドの第2の結合ドメインがカーボンナノチューブに対する親和性を有する、請求項15に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項17】
二官能性ペプチドが、配列番号4〜27よりなる群から選択される、カーボンナノチューブ結合親和性を有するアミノ酸配列を含んでなる、請求項16に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項18】
核酸、ペプチド、生体細胞、および無機ナノチューブよりなる群から選択される捕獲部分を、請求項1に記載の機能化ナノ粒子と接触させることを含んでなる、捕獲部分を捕獲するための方法。
【請求項19】
機能化ナノ粒子が、
a)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
b)結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと核酸結合アミノ酸配列を含んでなる第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなり、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインを介して(a)のナノ粒子に付着されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
捕獲部分が核酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
核酸結合アミノ酸配列がDNA結合亜鉛フィンガー配列である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
亜鉛フィンガー配列が、配列番号1、配列番号2、および配列番号3よりなる群から選択される標的配列に結合する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
a)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
b)結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと核酸結合アミノ酸配列を含んでなる第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなり、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインを介して(a)のナノ粒子に付着されており、そして核酸結合アミノ酸配列で核酸断片に付着されている、核酸ナノ粒子複合体。
【請求項24】
核酸断片が固体担体に固定化されている、請求項23に記載の核酸ナノ粒子複合体。
【請求項25】
核酸結合アミノ酸配列が亜鉛フィンガーである、請求項23に記載の核酸ナノ粒子複合体。
【請求項26】
a)各々が
i)捕獲コーティング成分を含んでなる単層膜でコーティングしたナノ粒子、ならびに
ii)結合対のメンバーを含んでなる第1の結合ドメインと核酸結合アミノ酸配列を含んでなる第2の結合ドメインとの第1の結合ドメインと第2の結合ドメインを有する二官能性タンパク質、を含んでなる複数の機能化ナノ粒子であって、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインを介して金属質ナノ粒子に付着されており、そして各第2の結合ドメインの核酸結合アミノ酸配列が非反復性である、複数の機能化ナノ粒子を提供し、
b)(a)の各二官能性ペプチドの各第2の結合ドメインの核酸結合アミノ酸配列に対する親和性を有するペプチド結合ドメインを有する核酸マトリクスを提供し、
c)二官能性ペプチドの核酸結合アミノ酸配列が(b)の核酸マトリクスのペプチド結合ドメインと結合する条件下で(a)の機能化ナノ粒子を(b)の核酸マトリクスと接触させ、ナノ粒子を固定化することを含んでなる、複数のナノ粒子を核酸マトリクス上に固定化するための方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法で製造されるナノメートル規模の電子デバイス。
【請求項28】
電子ヘテロ接合、電子相互接続部、およびナノワイヤよりなる群から選択される、請求項27に記載のナノメートル規模の電子デバイス。
【請求項29】
a)カーボンナノチューブと、
b)カーボンナノチューブに対する親和性を有する第1の結合ドメインと、結合対のメンバーを含んでなる第2の結合ドメインと、を有する二官能性タンパク質と、含んでなり、かつ、
二官能性タンパク質が第1の結合ドメインを介して(a)のカーボンナノチューブに付着されている、機能化カーボンナノチューブ。
【請求項30】
前記第2の結合ドメインが核酸結合アミノ酸配列である、請求項29に記載の機能化カーボンナノチューブ。
【請求項31】
前記核酸結合アミノ酸配列が、DNA結合ドメインおよびRNA結合ドメインよりなる群から選択される、請求項30に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項32】
前記核酸結合アミノ酸配列が、ジーンバンク受託番号:NP_417816、ジーンバンク受託番号:P03040、ジーンバンク受託番号:NP_040628、ジーンバンク受託番号:NP_059642、ジーンバンク受託番号:NP_059641よりなる群から選択されるサイテーションによって説明される、請求項31に記載の機能化ナノ粒子。
【請求項33】
核酸結合アミノ酸配列がDNA結合亜鉛フィンガー配列である、請求項31に記載の機能化カーボンナノチューブ。
【請求項34】
亜鉛フィンガー配列が、配列番号1、配列番号2、および配列番号3よりなる群から選択される標的配列に結合されている、請求項33に記載の機能化カーボンナノチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−505253(P2006−505253A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−532845(P2004−532845)
【出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/024098
【国際公開番号】WO2004/020453
【国際公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】