説明

機能化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂および金属表面を処理する方法

本発明は、下記成分:カルボキシル基を有していないフェノール性成分、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びイミダゾール、を含むフェノール−アルデヒド樹脂、上記樹脂の製造方法、前記樹脂を裸金属表面又は化成層を有する金属表面の腐食防止処理に用いること、裸金属表面又は化成層を有する金属表面を処理するための前記本発明のフェノール−アルデヒド樹脂の1種以上を含む処理水溶液、及び金属板、金属部材又は金属部分を有する物品であってその少なくとも1表面が前記方法を用いて処理されているものに係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な機能化フェノール−アルデヒド樹脂、およびこの樹脂;又はその関連樹脂を金属表面の耐食処理に使用することに関する。この金属表面は、裸の、すなわち非前処理の金属表面であってもよく、或は既に腐食防止化成層を有する金属表面であってもよい。これらに関する本発明の特定事項は、毒性クロムを全く使用していないという点にある。
【背景技術】
【0002】
車体、屋内電気器具の筐体または金属家具類などの金属シートから組み合わされる構造要素は、まだ恒久的な腐食防止皮膜を持っていない金属シートから組み立てることができる。一連の複数の処理工程において、化成層および塗料層からなる恒久的な腐食防止皮膜は、金属部品が組み立てられた後に形成することができる。この方法の既知の一例は、リン酸塩処理および塗装のプロセス系列であって、これは、例えば自動車製造において通常に適用されている。実際のリン酸塩処理は、処理チェーンの中の一つの段階にすぎず、この処理チェーンは、洗浄およびリンス工程のほかに、一般に、リン酸塩処理前の活性化、実際のリン酸塩処理、およびしばしばリン酸塩処理後の後表面安定化処理を含むものである。これらの処理段階の後に、いくつかの塗装工程が続く。従って、塗装の前の前処理は、次に、複数の処理段階を必要とし、従ってそれに対応する大規模な従って高価な前処理プラントを必要とする。加えて、重金属を含有する廃棄物がリン酸塩処理工程において堆積し、これを費用をかけて処置しなければならない。
【0003】
リン酸塩処理のほかに、所謂化成層を形成する方法が知られており、この化成層は、その下の金属を腐食から保護するものであって、その上に形成される塗料層のための基礎(プライマー)をなすものである。「化成層」は、金属表面上の層であって、それは「化成溶液」の作用効果による「化成処理」により形成され、かつそれは、金属表面および化成溶液の両方から提供される要素を含有するものと理解される。一般的な例としては、リン酸塩層またはクロメート処理層がある。リン酸塩処理法およびクロメート処理法のほかに、例えば、ホウ素、ケイ素、チタンまたはジルコニウムの錯体フッ化物を主成分とする化成溶液を用いる化成処理のための方法が知られている。これらの錯体フッ化物は、一般に有機ポリマーと一緒に用いられる。このような化成処理の例は、DE−A−10131723、およびそこで引用される文献中に見出すことができる。しかし、今までのところこれらの代替プロセスのいずれも、自動車製造における塗装の前の前処理としてのリン酸塩処理に置き換え得るものではない。
【0004】
腐食に対する保護を増進させるために、裸の金属表面上に腐食防止層を堆積することは、多数の先行技術出版物の主題であり、それらの一部の例を以下に記載する。
【0005】
US−A−5,129,967には、
a)10〜16g/lのポリアクリル酸またはそのホモポリマー、
b)12〜19g/lのヘキサフルオロジルコン酸、
c)0.17〜0.3g/lのフッ化水素酸、および
d)0.6g/l以下のヘキサフルオロチタン酸、
を含有するアルミニウムのリンスなし処理(または「所定の位置で化成皮膜を乾燥する」)のための処理浴用剤が開示されている。
【0006】
EP−B−8942には、
a)0.5〜10g/lのポリアクリル酸またはそのエステル、および
b)0.2〜8g/lのH2ZrF6、H2TiF6およびH2SiF6化合物の少なくとも一種、
を含有し、溶液のpH値が3.5未満である処理溶液が開示されている。
【0007】
US−A−4,992,116には、
a)1〜500mg/lに相当する1.1×10-5〜5.3×10-3モル/l濃度のリン酸塩イオン、
b)Zr、Ti、HfおよびSiからなる群の元素のフルオロ酸、1.1×10-5〜1.3×10-3モル/l(元素に応じて1.6〜380mg/lに相当する)、および
c)マンニッヒ反応の形態でのポリ(ビニルフェノール)のアルデヒドおよび有機アミンとの反応により得ることができるポリフェノール化合物0.26〜20g/l、
の少なくとも3成分を含有する約2.5〜5のpH値を有するアルミニウムの化成処理用の処理浴用剤が記載されている。
ここに用いられているアミンは、開環アミンでありさらに詳細にはポリヒドロキシアルキルアミンである。
【0008】
WO92/07973には、酸性水溶液中の本質的な成分として、0.01〜約18重量%のH2ZrF6および0.01〜約10重量%の3−(N−C1~4−アルキル−N−2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−4−ヒドロキシスチレン・ポリマーを用いるアルミニウム用のクロムなしの処理プロセスが教示されている。選択成分は、0.05〜10重量%の分散SiO2、0.06〜0.6重量%のポリマーおよび界面活性剤用の可溶化剤である。
【0009】
WO97/31135には、化合物、例えば、Ti、ZrまたはHfおよびフェノール樹脂のヘキサフルオロ錯体を含有する化成処理された金属表面の後リンス用の溶液が開示されている。フェノール樹脂は、違って置換されるフェノールを含有することが可能である。樹脂の分子量は100〜1,000の範囲内にある。
【0010】
US6,419,731には、ジルコニウム化合物、フッ化物イオンおよび水溶性樹脂を含有するアルミニウムの化成処理用の溶液が開示されている。水溶性樹脂はとりわけフェノール樹脂であることが可能である。
【0011】
US5,246,507は、また、例えば、Ti、ZrおよびHfの化合物および有機ポリマーから選択することが可能である金属化合物を含有する、金属表面を処理するための組成物に関する。ポリマーは、例えば、ホルムアルデヒドのフェノールおよびフェノール・カルボン酸との縮合生成物であることが可能である。
【0012】
US5,846,917には、ヒドロカルビル・ポリアミノフェノールのカルボニル化合物との縮合反応により得ることができるフェノール・イミダゾリンが記載されている。それらは主として酸化防止剤として用いられるが、しかし、また、腐食防止および表面安定化活性を示すと期待される。これらのポリマーは、それらがいかなるアルキレン架橋フェノール単位をも含有しない点において、フェノール樹脂とは構造的に異なる。
【0013】
日本特許出願、公開番号59−157110(日本特許抄録から)には、イミダゾール環を含有するフェノール樹脂が開示されている。これらの樹脂は、例えば、銅含有積層板、または回路基板など向けの耐熱接着剤の成分として用いられる。
【0014】
ダウエント抄録AN(獲得番号)1999−018521には、日本特許JP10287859の要約が含まれ、それによればそれにより、イミダゾールをさらに含有するレゾール樹脂型のフェノール系接着剤が製造される。接着剤は、ベニヤ合板またはベニヤ製造のために用いられる。
【0015】
フェノール−アルデヒド縮合製品、さらに詳細にはフェノール−ホルムアルデヒド縮合製品は、フェノール樹脂、フェノーリックス、ノボラックス、レゾールス、B−ステージ樹脂、またはC−ステージ樹脂の名称で、古くから知られている。それらの製造および性質に関する情報は、例えば、Rompps Chemie Lexikonにおいて記載されたキーワード下で見出すことができる。
【0016】
本発明により提示された問題点は、裸の金属表面または既に化成層を担持する金属表面の表面処理のために、有用と思われるフェノール樹脂タイプ、さらに詳細には水溶液または乳化液の形態をとる新規ポリマーを提供することであった。ポリマーによる金属表面の処理は、それに続いて金属表面に塗布される塗料または接着剤の腐食防止性及び密着性を改善するものである。
【0017】
本発明の第1態様は、カルボキシル基を全く持たないフェノール成分、芳香族ヒドロキシカルボン酸およびイミダゾールを構成要素として含有するフェノール−アルデヒド樹脂に関する。
【0018】
本発明における「フェノール−アルデヒド樹脂」とは、特に、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂であると理解される。しかし、例えばフルフラールなどの他のアルデヒドは、ホルムアルデヒドの代わりに、またはそれと混合して用いることが可能である。フェノール性成分は、とりわけフェノールそれ自体であってもよい。好ましい実施形態において、フェノール性成分の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%がフェノールである。フェノールの代わりに、または、それと一緒に、他の芳香族ヒドロキシ化合物類例えば、アルキル−またはアリール−置換フェノール類、例えばクレゾール、多価フェノール類、例えばピロカテコール、レゾルシノールまたはヒドロキノン、3価フェノール類(ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキシヒドロキノンなど)または、アネレーテッド(anellated)フェノール類、例えばα−およびβ−ナフトールなど、またはアルキル架橋ジフェノール類例えばビスフェノールAなどをフェノール性成分として用いてもよい。
【0019】
定義によれば芳香族ヒドロキシカルボン酸は、少なくとも一つのヒドロキシ基および少なくとも一つのカルボン酸基が結合している芳香族環状構造を有するものである。これの最も単純な例には、ヒドロキシ安息香酸の位置異性体すなわちサリチル酸およびm−またはp−ヒドロキシ安息香酸などである。
芳香族環状構造体は、例えば、アルキル基、ニトロ基、アミノ基或はさらにヒドロキシまたはカルボン酸基などの置換基を担持するものであってもよい。芳香族ヒドロキシカルボン酸は、縮合芳香族環構造を有するものであってもよく、例えば、ヒドロキシナフトエ酸の位置異性体の一つであってもよい。2個以上のカルボキシル基を含有する芳香族ヒドロキシカルボン酸の一つの例は、ヒドロキシフタル酸である。用語「芳香族ヒドロキシカルボン酸」が本明細書において記載される場合には、いつでも、それは、常に、各種酸の混合物であってもよいことを意味するように意図されている。芳香族ヒドロキシカルボン酸は、好ましくは、ヒドロキシ安息香酸から、さらに詳細にはサリチル酸およびp−ヒドロキシ安息香酸から選択される。
【0020】
「イミダゾール」とは、好ましくは、親化合物(イミダゾール)それ自体を意味する。しかし、この親化合物は、置換基を担持していてもよい。さらに具体的に述べると、そのC原子において担持していてもよい。これらの置換基は、例えばベンズイミダゾールの場合におけるように、別の芳香族環状構造物を表していてもよい。
【0021】
フェノール−アルデヒド樹脂中の個々の成分のモル比に関して、フェノール性成分の芳香族ヒドロキシカルボン酸に対するモル比、およびフェノール性成分のイミダゾールに対するモル比は、好ましくは、樹脂中のフェノール成分の割合が、芳香族ヒドロキシカルボン酸の割合またはイミダゾールの割合と少なくとも同じであり、好ましくはそれよりも大きくあるように、互いに無関係に選択される。特に好ましい実施形態において、フェノール成分の芳香族ヒドロキシカルボン酸に対するモル比、およびフェノール成分のイミダゾールに対するモル比は、それぞれが1:1〜100:1の範囲にあるように、互いに無関係に選択される。上記両モル比は、勿論、実質的に同じかまたは異なっていてもよい。前記モル比は、芳香族ヒドロキシカルボン酸のイミダゾールに対するモル比が、好ましくは、100:1〜1:100の範囲内に、より好ましくは10:1〜1:10の範囲にあるように選択される。上記モル比は1:1〜10:1であることがとりわけ好ましい。
【0022】
フェノール−アルデヒド樹脂の組成は、好ましくは、その少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%が、フェノール成分、芳香族ヒドロキシカルボン酸およびイミダゾールからなり、さらにアルデヒド成分から生じる架橋アルキレン基(ホルムアルデヒドが用いられる場合にはメチレン基)を有するものである。前記ポリマーの他の成分として、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、芳香族アミノカルボン酸、例えばアミノ安息香酸などまたはイミダゾールの代わりに、他の芳香族または脂肪族複素環状化合物を用いてもよい。別の好ましい樹脂において、フェノール性成分の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは100%が、親化合物フェノールからなり、芳香族ヒドロキシカルボン酸の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは100%は、ヒドロキシ安息香酸(さらに好ましくはサリチル酸)からなり、イミダゾール成分の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは100%は、親化合物イミダゾールそれ自体からなるものである。全面的にフェノール、ヒドロキシ安息香酸(さらに好ましくはサリチル酸)、イミダゾールおよび架橋アルキレン基(さらに好ましくはメチレン基)からなるフェノール−アルデヒド樹脂が、特に好ましい。フェノール−アルデヒド樹脂の平均分子量は、例えば、標準としてポリエチレングリコールを用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができ、その値は、好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上で、かつ好ましくは50,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。
【0023】
水溶液中におけるフェノールとアルデヒドとの縮合によるフェノール−アルデヒド樹脂製造のための一般的な方法が、一般に知られており、それは化学教科書および百科事典に記載されている。それらの少なくとも三つの芳香族成分を含む上述のフェノール−アルデヒド樹脂は、例えば、アルデヒド水溶液を、フェノール成分、芳香族ヒドロキシカルボン酸およびイミダゾールを含有する水溶液に添加し、この溶液を40℃〜沸点の温度で10分〜10時間にわたり混合することにより製造することができる。例えば、この溶液を、還流下で沸騰してもよく、それ自体によって適切な混合効果を生み出すことができる。さもなければ、混合は攪拌または振ることにより達成することができる。この製造方法は、本発明の別の態様を示すものである。
【0024】
本発明によるさらに好ましい製造方法は、
a)第1工程で、組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸を含有するフェノール−アルデヒド樹脂の水溶液を調製し、そして
b)第2工程で、イミダゾール、次にアルデヒド水溶液が添加され、全体を40℃〜沸点間の温度において10分〜10時間にわたり混合すること、
を特徴とする。
【0025】
この方法においても、第1工程a)および第2工程b)の両方において溶液の混合は、還流、攪拌または振盪することにより達成することができる。
【0026】
この製造方法において、反応水溶液中の有機化合物の濃度は、好ましくは、反応終了時に、10〜50重量%の樹脂固形物含量を有するフェノール−アルデヒド樹脂の水溶液が、得られるように選択される。金属表面を処理するための樹脂の所望の用途に対して、この溶液をさらに精製する必要はない。むしろ、それは、そのまま直接市場に出すことができるし、また、水による希釈により、下記に記載される処理溶液の製造用に、或は、この処理溶液に活性成分を補給するために用いることができる。
【0027】
本発明の別の態様は、裸の金属表面または既に化成層を担持している金属表面の腐食防止処理のために上述のフェノール−アルデヒド樹脂、または前記樹脂の2種以上の混合物の使用に係るものである。金属表面は、好ましくは、鋼、亜鉛メッキまたは合金−亜鉛メッキ鋼、アルミニウム処理鋼、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムまたはその少なくとも50原子%が亜鉛、アルミニウムまたはマグネシウムからなる合金の表面から選択される。金属表面上の化成層は、例えば、陽極処理層であってもよく、或は層形成性または非層形成性リン酸塩処理法により製造することができるようなリン酸塩処理法によって形成されてもよく、または、例えば、最初に引用した文献中に記載されているような、例えばB、Si、Ti、Zr、Hfのフルオロ錯体を主成分として含む皮膜形成法で形成されてもよい。
【0028】
本発明は、また、裸の金属表面または既に化成層を有している金属表面の腐食防止処理用の方法に関するものであり、この方法において前記金属表面が、1種以上のフェノール−アルデヒド樹脂、或はイミダゾールが組み込まれている1種以上のフェノール−アルデヒド樹脂、好ましくは、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフェノール−アルデヒド樹脂を含有する処理水溶液と接触する。
【0029】
この処理に供される通常の金属表面については、これまでに説明した。金属表面は完全に裸であるか、または完全に化成層により被覆されていてもよい。しかし、それらは、また、例えば、一部裸で一部化成被覆された金属部品からなる車体などの複雑構造部品の金属表面であってもよい。本発明に係る方法によって、腐食防止層が裸の金属部品上に生成されると、化成処理金属表面の腐食防止効果が改善される。加えて、金属表面は、例えば、切り口、研磨面または接合点で局部的に損傷を受け、その結果、金属表面がこれらの箇所で再度裸になっている有機皮膜を、既に部分的に担持していてもよい。一般に、例えば、車体または屋内電気器具などのような複雑構造部品が、少なくとも部分的に、予じめ塗装されたシートから組み立てられる場合に、前記状況が発生する。
【0030】
本発明によれば、この点に関する最小限度の必要事項は、少なくとも組み込まれてイミダゾールを含有するが、しかしまた必ずしも芳香族ヒドロキシカルボン酸を含まない少なくとも一種のフェノール−アルデヒド樹脂が存在することである。成分およびモル比に関する上述の好ましい実施形態は、従って、こうした組み込まれたイミダゾールを含有するが、しかし組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸を含まないフェノール−アルデヒド樹脂に適用される。しかし、金属表面を、特に請求項1〜7においてさらに十分に特徴付けられているように、上記3成分の上述フェノール−アルデヒド樹脂の少なくとも一種を含有する処理水溶液に接触させることが好ましい。
【0031】
前記処理水溶液は、好ましくは、少なくとも5mg/l、さらに特定的には20mg/リットル以下でしかし、好ましくは2,000mg/リットル以下の、さらに特定的には200mg/リットル以下の組み込まれたイミダゾールを含有するフェノール−アルデヒド樹脂、および好ましくは請求項1〜7のいずれか1項に記載のフェノール−アルデヒド樹脂を含有するものである。含量が低下するにつれて、腐食防止効果はますます減少する。なおより高い含量は腐食防止に悪影響を及ぼすことがあるか、或は、それは非経済的である。
【0032】
処理水溶液は、好ましくは、1.5以上、さらに特定的には少なくとも1.8以上から、6.0以下さらに特定的には4.5以下までのpHを有する。より低いpH値で、金属は酸洗い効果により一段と過酷にすぎる攻撃を受ける。より高いpH値で、層形成法は、ますます劣化し、従って、腐食防止効果もますます低下する。
【0033】
処理溶液の温度は、20〜60℃の範囲、さらに特定的には25〜40℃の範囲にあることが好ましい。金属表面の処理溶液との好ましい接触時間は、5〜240秒、さらに特定的には30〜200秒の範囲にあることが好ましい。金属表面と、処理溶液との接触は、通常の方法で、例えば、処理溶液中への浸漬か、処理溶液による噴霧か、またはそれらの組合せによるか、あるいは処理溶液のローラー塗布によってなされてもよい。
【0034】
本方法が既に化成層を有する金属表面の後処理用に用いられる場合に、この化成層は本発明による後処理の直前に形成されたものであってもよく、従って、なお濡れていてもよい。水によるリンスを、本発明による化成層形成と後処理の間に施してもよい。しかし、それは、また、省略されてもよい。他方で、しかし、また、本発明による化成層形成と後処理の間で、比較的長い時間が経過してもよい。例えば、これは、例えば車体または屋内電気器具などの構造部品が予備リン酸塩処理鋼から組み立てられ、次に本発明による処理プロセスにより後処理される場合のケースである。洗浄工程は本発明による化成処理と後処理の間に挿入されてもよい。
【0035】
フェノール−アルデヒド樹脂に加えて、処理水溶液は、周期系の第4族の典型元素または遷移金属の元素、さらに特定的にはSi、Tiおよび/またはZrの1以上の化合物をさらに含有することが好ましい。全体で少なくとも0.01g/リットル、さらに特定的には少なくとも0.025g/リットルおよび10g/リットル以下、さらに特定的には1g/リットル以下、とりわけ0.5g/リットル以下のTiおよび/またはZrおよび/またはSnイオン、および少なくともTi対F原子比および/または、Zr対F原子比および/または、Si対F原子比が、1:1〜1:6の範囲にあるようなフッ素量を含有する処理溶液が、好ましくは用いられる。
【0036】
前述のTi、Zrおよび/またはSiイオンは、例えばヘキサフルオロ酸またはそれらの塩などのヘキサフルオロ錯体の形態において完全に用いられてもよくこれらのヘキサフルオロ錯体は例えばナトリウム塩などと同様に、前述の濃度範囲中で水中に溶解する。この場合において、その原子比は1;6である。しかし、6個未満のフッ化物イオンが中心元素Ti、ZrまたはSiに結合される錯体化合物も、使用可能である。これらは、中心元素Ti、ZrまたはSiの少なくとも一つのヘキサフルオロ錯体およびこれら中心元素の少なくとも一つの他の化合物の両方が処理溶液に添加される場合、自然に処理溶液中に形成することがある。他の好適化合物は、例えば、同じ中心元素または前述の3中心元素とは別種の元素の硝酸塩、炭酸塩、水酸化物および/または酸化物などである。例えば、処理溶液は、ヘキサフルオロジルコン酸塩イオンおよび(好ましくはコロイド状の)シリカ(SiO2)またはその反応生成物を含有していてもよい。未反応シリカが処理溶液中に懸濁していてもよい。
【0037】
上述の処理溶液は、また、フルオロ錯体を形成することができるTi、Zrおよび/またはSiの化合物と一緒に、フッ化水素酸またはその(必要により酸性の)塩を用いることにより、得られたものであってもよい。その例には、既述の硝酸塩、炭酸塩、水酸化物および/または酸化物などがある。その好ましい実施形態は、全体で、中心金属対フッ化物の原子比が1:2以下、さらに特定的には1:3以下であるように、前記中心金属としてのTi、Zrおよび/またはSiの量、および前記フッ化物の量が用いられることを特徴とするものである。処理溶液が、例えばフッ化水素酸またはその塩の形態であるフッ化物を、中心金属Ti、Zrおよび/またはSiのヘキサフルオロ錯体を形成するために化学量論的に必要である量よりも多量に含有する場合、前記原子比は1:6よりも低くてもよい。
【0038】
基板に応じて、水溶液は、Mn、Ce、Li、V、W、Mo、Mg、Zn、CoおよびNiの1種以上の金属の0.001〜2g/リットル、好ましくは0.005〜0.5g/リットルのイオンを、さらに含有することが可能である。しかし、環境的な理由により、CoおよびNiの使用は避けることが好ましい。これらの追加の金属イオンは、さらに、腐食防止効果および塗料接着性を改善することができる。金属表面上の酸洗い効果を考えると、実際の処理溶液は金属表面から溶け出てきた金属イオンを含有するものと思われる。既述の亜鉛を除くと、これらの金属イオンは、特に、鉄およびアルミニウムであると思われる。それらの濃度は、また、0.001〜2g/リットルの範囲、さらに特定的には0.005〜0.5g/リットルの範囲内にあってもよい。特にアルミニウム表面の処理において、溶解性アルミニウム化合物の形態にあるアルミニウムイオンを、当初、前述の濃度範囲にある処理溶液に添加することは、特定の利益を得ることができる。同じことは、処理溶液による亜鉛メッキ基板の処理において、例えば硝酸塩の状態にある亜鉛イオンを添加する場合にも当てはまる。
【0039】
さらに、前記水溶液は、追加的に0.001〜1.5g/リットル、好ましくは0.1〜1g/リットルのリン酸、亜リン酸、ホスホン酸および/またはそれらのアニオンおよび/またはエステルを含有していてもよい。前記エステルは、それらが水中に可溶性かまたは分散性であるもののなかから、選択することが好ましい。これらの添加もまた、前記腐食防止効果および塗料接着性を改善する。しかし、本発明の基本的な考え方に沿う場合、これらが、結晶性亜鉛含有リン酸塩層の形成をもたらすような添加物の組合せが全く選択されないようにすることが重要である。その理由はそのような組み合わせは先行技術において既知であり、活性化および不動態化後処理の通常の工程が追加的に行われる場合のみに、適切な腐食防止効果を造りだすような従来型のリン酸亜鉛層を形成することになるからである。しかし、本発明は、プロセス工程のこのより複雑な順序を避けることを正確に、意図するものである。このような意図は、例えば、処理溶液が、0.3g/リットルを超える濃度の亜鉛および/またはマンガン、および3g/リットルを超える濃度のリン酸またはリン酸塩イオンとを同時含有しないようにすることによって達成される。
【0040】
しかし、リン酸塩処理分野において、いわゆるリン酸塩処理促進剤として既知である1以上の成分を、前記水溶液が含有することは有利なことである。このことは、特に、処理溶液が裸の金属表面の処理用に用いられるというケースにおいて有利である。リン酸塩処理における、こうした促進剤の主な機能は、金属表面上の元素状水素の泡の形成を防止することである。この効果は、また、非分極化として知られている。本発明による方法における非分極化の効果は、従来のリン酸塩処理の場合のように、化成層がより早く、かつより均一に形成されることである。従って、好ましい実施形態において、水溶液は、下記から選択された1種以上のリン酸塩処理促進剤を含有する。
0.05〜2g/リットルのm−ニトロベンゼンスルホナート・イオン、
0.1〜10g/リットルの遊離または結合形態のヒドロキシルアミン、
0.05〜2g/リットルのm−ニトロベンゾアート・イオン、
0.05〜2g/リットルのp−ニトロフェノール、
1〜70mg/リットルの遊離または結合形態の過酸化水素、
0.05〜10g/リットルの有機N−酸化物、
0.1〜3g/リットルのニトログアニジン、
1〜500mg/リットルの亜硝酸塩イオン、
0.5〜5g/リットルの塩素酸塩イオン、
から選択される1以上のリン酸塩処理促進剤を含有する。
【0041】
本発明による方法は、一般に、処理系(chain)中に組み込まれる。の処理系は処理しようとする部材の洗浄により通常始まる。これらの部材は、裸の金属部材であってもよく、それは本発明による処理方法による表面層により被覆され、この表面層は、腐食防止性および次に塗布される有機皮膜の接着性を改善するものである。本発明により、前記処理溶液によってなされる処理は、前述のような表面層を形成する処理工程のみからなるものであってもよい。しかし、本発明による方法は、また、予じめ化成層により被覆されている金属表面の腐食防止性、および塗料接着性を改善するために用いられてもよい。この層はシート材料製造業者によって塗布され、その結果、最初の化成処理と本発明による処理方法の適用との間に比較的長い時間が経過することが可能になる。しかし、化成層は、また、本発明による方法の適用の直前の後処理工程において形成されてもよい。水によるリンスは、通常、個々の処理段階の間に、また本発明による方法の適用後に、1回以上施される。好ましくは、本発明による方法の適用後最終リンス用に脱イオン水が用いられることが好ましい。
【0042】
本発明による方法により処理された金属表面は、次に、通常、有機ポリマーを主成分として含む別の層により被覆される。このような別の層は、例えば、単層のまたは多層の塗料層であってもよい。例えば、前記塗料は、通常の自動車塗料であってもよく、金属の隣りの層の塗料は、通常カソード浸漬塗料である。しかし、塗料は、粉末として塗布されてもよく、この粉末塗料は例えば、家庭用器具および金属家具などに好適なものとされている。本発明による処理方法により金属表面上に形成される表面層は、また、接着用のプライマーとして用いてもよい。この場合に、処理された金属表面は接着剤により被覆される。金属部品は、相互に、ガラスに、またはプラスチック部品にまたはゴムにさえも接合してもよい。例えば、本方法を、ゴム−対−金属結合用の前処理として用いてもよい。
【0043】
本発明による方法の一つの特定的潜在用途を、以下に説明する:
【0044】
下記の方法は、原則として、金属シート製造業者によって既に予備被覆された材料からの金属部材を製造するために、また、組立て後のそれらの部材を単洗浄し塗装するために、経済的におよび環境的に有益なものと思われる。前処理により生成した廃棄物は、例えば金属シートの製造業者により一ヶ所に、集積され、金属シートのその後の加工業者に及ばないようにする。このようにして、予備被覆された金属シートは、直接市場で入手可能になる。一方で、それらは予備リン酸塩処理をしたもの、すなわち、リン酸塩層を担持し、しかし、有機ポリマーを主成分として含む他の皮膜を有していないものであってもよい。製造業者により既に腐食防止層を形成されている金属シートは、また、自動車および家庭用器具産業において、その規模を拡大しつつ加工されている。対応する材料は、例えば、グラノコート(Granocoat)(登録商標)、デュラスティール(Durasteel)(登録商標)、ボナジンク(Bonazinc)(登録商標)およびデュラジンク(Durazinc)(登録商標)の商標名で知られている。これらは、化成層、例えば、クロメート処理またはリン酸塩処理層上に薄い有機皮膜を担持している。前記有機皮膜は、例えば、エポキシまたはポリウレタン樹脂並びに、ポリアミドおよびポリアクリレートなどのポリマー系からなるものである。シリカ、亜鉛粉およびカーボンブラックなどの固形添加剤は、腐食防止を改善すると共に、それらの導電率に起因して、約0.3〜約10ミクロン、好ましくは約5ミクロン以下の厚さの層により被覆されている金属部品を電気的に溶接され、かつ電解塗装することが可能になる。基板材料は、一般に、2段階法で被覆され、先ず無機化成層が第1工程で形成され、次に、第2処理工程で有機ポリマー膜が塗布される。この方法に関するさらなる情報は、DE−A−10022075、およびそこに引用されている文献に見出すことができる。
【0045】
従って、有機ポリマーを主成分として含む皮膜が、コイルコーティング法より形成されている金属シートは、車体、家庭用電気器具および家具物品の製造において、既に一部において、使用されている。自動車製造において、腐食防止性および塗料接着性は、車両が最も過酷な腐食応力にさらされるので、最も厳しい要求事項に耐えなければならない。現在、車体は、有機的に前被覆された金属シート以外のものから製造されることは全くない。その代わりに、この材料は、塗装されていないシートと一緒に車体に作製される。従って、組み立てられた車体は、現在、なお、塗装前に通常の前処理工程を通過する、すなわち、前記車体は高価なリン酸塩処理工程に供される。
【0046】
原則として、リン酸塩処理法は、車体が有機的に塗装された金属基板以外のものから作製されようとする場合、これをより安価な前処理法により置き換えることができる。しかし、これは、有機的に前被覆された金属シートからの車体の組み立てにおいて、有機被覆皮膜が損傷するか、または全部がなくなってしまった域が必然的に形成されるという問題点に対する解決策を見出すことが必要となる。これは、例えば、切断端部、スポット溶接部、または研磨面などに生ずるケースである。
【0047】
より良い腐食防止効果のために、電解亜鉛メッキ鋼、または溶融亜鉛メッキ鋼が、金属基板として用いられる場合には、有機的に前被覆された金属基板が、自動車製造において、頻繁に用いられる。しかし、前述のような、有機的に前被覆された金属基板を用いると、有機層が損傷している前述の面域は、それらの電気化学的電位およびそれらの化学反応性に関して、通常の金属表面とは異なっているので、前記、有機的に前被覆された金属シートの取り扱いは、特に難しい。これらのような損傷箇所において、鋼基板(すなわち、鉄)のおよび亜鉛皮膜の両方の部分は、一般に、裸のままで残る。鋼(鉄)対亜鉛の高い局部面積比、例えば>9:1の比は、あり得ることである。これは、特に、被覆鋼基板の横断面を示す切断端部を有するケースである。これらの亜鉛および鉄が組み合わせられている境界面において、腐食比(速度)は均質表面上における他の比(速度)とは異なる。露出金属面積における亜鉛対鉄の局部比に応じて、電気化学電位差が亜鉛と鉄との間の電位に発生する、加えて、特定比率と、従って特定の電気化学電位とを有する研磨表面が車体処理において形成される。その理由は、研磨工程により鋼(鉄)と微粒子反応性亜鉛との間に活性化界面が形成されるためである。
【0048】
本発明の別の態様は、塗装金属部品を含有する構造部材の製造するための方法に関するものであり、この方法において、
a)有機ポリマーを主成分として含む皮膜を有する金属のシート(好ましくは亜鉛メッキ鋼のシート)が、切断され、および/または刻印され、および/または成形され、得られた金属部材が組み立てられて構造部材が形成され、但し、有機ポリマーを主成分として含む皮膜により覆われていないシートの金属表面の面域部が形成されており、
b)組み立てられた前記構造部材が洗浄され、
c)洗浄され、組み立てられた前記構造部材が、クロムを含まない処理水溶液と接触させられ、前記処理水溶液は、工程a)において形成され、かつ有機ポリマーを主成分として含む皮膜により被覆されていない前記面域中に、リン酸亜塩化成層ではない不働態層を形成するものであり、前記処理水溶液は、1種以上のフェノール−アルデヒド樹脂(複数を含む)を含有し、少なくとも一種の前記フェノール−アルデヒド樹脂は、組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸および/または組み込まれたイミダゾールを含有し、好ましくは、請求項1〜7の1以上に記載のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を含むものであり、
d)必要ならば、工程c)において処理された構造部材は、これは本質的ではないが、水により1回以上リンスされ、かつ
e)塗料層により被覆される。
【0049】
請求項13〜16の1以上に要約される上述の事項は、工程c)において用いられる処理溶液に適用される。この場合に、工程c)は、工程a)において形成され、かつ有機ポリマーを主成分として含む皮膜により覆われていない金属表面の前記面域上に不働態層を生成する、工程a)後の唯一の処理工程であることが好ましい。
【0050】
この特定の方法は、工程b)〜e)に供される構造部材のすべての金属部分が、有機ポリマーを主成分として含む皮膜を有する亜鉛メッキ鋼のシートからだけからなる場合に、特に用いられてもよい。
【0051】
従って、構造部材のすべての金属部分は、有機的に前被覆された金属、さらに詳細には、亜鉛メッキ鋼からなるものであってもよい。しかし、これらの金属部分に加えて、構造部材は、例えば、自動車製造におけるケースにあるように、プラスチック部品を含んでいてもよい。従って、例えば車体を製造するために、有機的に前被覆された材料の金属部分が、プラスチック部分と一緒に組み立てることがある。
【0052】
用語「亜鉛メッキ鋼」は、溶融亜鉛メッキ鋼および電解亜鉛メッキ鋼を包含する。それは、また、皮膜が、例えば、亜鉛/ニッケル合金または亜鉛/アルミニウム合金からなることがある合金−亜鉛メッキ鋼を包含する。前記鋼は、亜鉛メッキ後に焼き戻しされてもよく、その結果、鉄/亜鉛合金が鋼と亜鉛間の界面で形成されるものであってもよい。
【0053】
工程a)において前記シートを組み立てて構造部材を形成すること、あらゆる通常の公知の方法、例えば、結着性、フランジ法、リベット打ち法、エッジング法および/または溶接法により、さらに特定的には電気溶接法によって行ってもよい。工程a)における切断および/または刻印のほかに、溶接による接合は、有機ポリマーを主成分として含む皮膜により覆われない他の面域が構造部材上に形成されるという効果−これは有機ポリマーを主成分として含む皮膜に対して結果として生じる損傷に起因する−を有する。これらの他の面は、また、磨耗により形成される裸の金属面がそうであるように、工程c)において不働態化される。
【0054】
本発明による方法のこの実施形態は、有機ポリマーに加えて導電性粒子を含有する有機ポリマーを主成分として含む1〜10ミクロン厚さの皮膜を有する有機的に前被覆されたシートを用いる構造部材の製造用に特に適している。有機皮膜のこれらの態様の結果により、構造部材は電気溶接により一緒に接合することができる。こうした皮膜の例は、DE−A−19748764、DE−A−19951113、DE−A−10022075、およびそこに引用される文献中に見出すことができる。上述のように、こうした皮膜を有する金属コイルは、種々の商品名で市販されている。
【0055】
従って、工程c)で形成される不働態層は、従来型のリン酸亜鉛層であることは意図されたものではない。その理由は、亜鉛リン酸処理よりも短縮化され従ってより経済的な処理チェーンが、本発明に従って用いられるように意図されているからである。処理溶液が少なくとも0.3g/リットルの亜鉛イオンおよび少なくとも3g/リットルのリン酸塩イオン(リン酸またはそのあらゆる熱分解段階生成物として)とを同時に含有しない場合、リン酸亜鉛層は形成されない。
【0056】
工程c)において、組み立てられた構造部材を、種々のやり方で、例えば、処理溶液中への浸漬、または処理溶液による噴霧により、酸処理水溶液と接触させることができる。この工程に続いて、これは必須ではないが水によるリンスを施してもよい。換言すれば、この方法を、リンスありのプロセスとしてまたはリンスなしのプロセスとして用いてもよい。
【0057】
工程c)における処理は、好ましくは、主として先行段階で形成された化成層を後不働態化するものではないが、裸の金属面上の不働態化層を形成する、部品の組み立て後の唯一の処理工程であることが好ましい。
【0058】
処理工程の前記順序は、特に、車体、家庭用器具、家具物品、またはそれらの部品の製造において用いられてもよい。
【0059】
本発明の別の態様は、これまで詳細に特徴付けられてきたような、請求項1〜7の1項以上に記載の少なくとも一つのフェノール−アルデヒド樹脂、または2種以上のこうした樹脂の混合物を含有する、裸のまたは化成被覆された金属表面を処理するための処理水溶液に関するものである。従って、請求項13〜16の1項以上に要約される上述の態様は、前記処理溶液の好ましい組成物に適用される。
【0060】
最後に、本発明は、また、金属シート又は金属部品、又は金属部分を含む物品に関するものであって、金属シート、金属部材の少なくとも表面が、これまで詳細に記載されてきたような、請求項12〜17の1項以上に記載された方法により処理されたものであることを特徴とするものである。上述のように、金属部材は、処理表面上に、有機ポリマーを主成分として含む皮膜、例えば塗料または接着剤を含んでいてもよい。
【実施例】
【0061】
略語:
s=秒;mins=分;h=時間;d=日
DE水=脱イオン水;SS=塩水噴霧試験;
CRS=冷延鋼板
リドライン(Ridoline)(登録商標)、およびリドソル(Ridosol)(登録商標)は、ヘンケル(Henkel KGaA)社から入手できるアルカリ洗浄剤である。
【0062】
合成方法
樹脂成分の定量比はモル比である。
1.フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂の製造
a.フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸3:1)の製造
還流冷却器および攪拌器を備えた三つ口フラスコ中において、フェノール20g、サリチル酸9.78g、および30%水酸化ナトリウム37.8gの溶液を80℃で調製した。フェノールを完全に溶解した後、36.5%ホルムアルデヒド溶液23.3gを滴下漏斗から30分間にわたり添加した。次に、この溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:42.4%
【0063】
b.フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸1:1)の製造
還流冷却器および攪拌器を備えた三つ口フラスコ中において、フェノール10g、サリチル酸14.68g、および30%水酸化ナトリウム28.3gの溶液を80℃で調製した。これに、フェノールを完全に溶解した後、36.5%ホルムアルデヒド溶液17.5gを滴下漏斗から30分間にわたり添加した。次に、得られた溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:42.2%
【0064】
c.イミダゾール変性フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸3:1、イミダゾール0.5)の製造
還流冷却器および攪拌器を備える三つ口フラスコ中において、フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸3:1、1.a.を参照すること)44.5gおよびイミダゾール3.62gからなる溶液を80℃で調製した。この溶液中において遊離体が完全に溶解した後、これに水10g中に36.5%ホルムアルデヒド溶液3.8gを含む溶液を、滴下漏斗から15分間にわたり添加した。次に、得られた溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:40.6%
【0065】
d.イミダゾール変性フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸1:1、イミダゾール0.5)の製造
還流冷却器および攪拌器を備えた三つ口フラスコ中において、フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸1:1、1.前記b.を参照すること)39.5gおよびイミダゾール1.81gを含む溶液を80℃で調製した。この溶液中において遊離体が完全に溶解した後、これと、水10g中に36.5%ホルムアルデヒド溶液1.89gを含む溶液を、滴下漏斗から15分間にわたり添加した。次に、得られた溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:36.5%
【0066】
e.イミダゾール変性フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸1:1、イミダゾール0.33)の製造
還流冷却器および攪拌器を備えた三つ口フラスコ中において、フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸1:1、1、前記b項を参照すること)39.5gおよびイミダゾール1.21gを含む溶液を80℃で調製した。この溶液中において遊離体が完全に溶解した後、これに、水10g中に36.5%ホルムアルデヒド溶液1.26gを含む溶液を、滴下漏斗から15分間にわたり添加した。次に、得られた溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:35.0%
【0067】
f.イミダゾール変性フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸1:1、イミダゾール0.25)の製造
還流冷却器および攪拌器を備えた三つ口フラスコ中において、フェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール/サリチル酸1:1、1.前記b項を参照すること)39.5gおよびイミダゾール0.9gからなる溶液を80℃で調製した。この溶液中において遊離体が完全に溶解した後、水10g中に36.5%ホルムアルデヒド溶液0.95gを含む溶液を、滴下漏斗から15分間にわたり添加した。次に、この溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:35.3%
【0068】
2.フェノール−アルデヒド樹脂の製造
a.フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の製造
還流冷却器および攪拌器を備えた三つ口フラスコ中において、フェノール20gおよび30%水酸化ナトリウム28.3gを含む溶液を80℃で調製した。フェノールが完全に溶解した後、この溶液中に、36.5%ホルムアルデヒド溶液15.1gを、滴下漏斗から30分間にわたり添加した。次に、得られた溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:43.3%
【0069】
b.イミダゾール変性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(イミダゾール0.25)の製造
還流冷却器および攪拌器を備えた三つ口フラスコ中において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(2.a.を参照すること)10gおよびイミダゾール0.46gを含む溶液を80℃で調製した。遊離体が完全に溶解した後、得られた溶液中に水25g中に36.5%ホルムアルデヒド溶液0.48gを含む溶液を、滴下漏斗から15分間にわたり添加した。次に、この溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:10.3%
【0070】
c.イミダゾール変性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(イミダゾール0.5)の製造
還流冷却器および攪拌器を備えた三つ口フラスコ中において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(2.a.を参照すること)10.2gおよびイミダゾール1.25gを含む溶液を80℃で調製した。遊離体が完全に溶解した後、この溶液中に水25g中に36.5%ホルムアルデヒド溶液1.31gを含む溶液を、滴下漏斗から15分間にわたり添加した。次に、得られた溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:13.4%
【0071】
d.イミダゾール変性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(イミダゾール1)の製造
還流冷却器および攪拌器を備えた三つ口フラスコ中において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(2.a.を参照すること)10gおよびイミダゾール1.84gを含む溶液を80℃で調製した。遊離体が完全に溶解した後、得られた溶液中に水25g中に36.5%ホルムアルデヒド溶液1.93gを含む溶液を、滴下漏斗から15分間にわたり添加した。次に、得られた溶液を95℃に加熱し、6時間にわたり攪拌した。
固形物含量:13.0%
【0072】
2.化成処理のための新規ポリマーの使用
実施例1:変性樹脂による化成処理
基板:CRS
処理工程の順序(浸漬法)
1. 洗浄:リドライン1570、2%;リドソル1237、0.3%;5分;55℃
2. リンス:水
3. リンス:DE水
4. 化成処理:180s;下記の浴用剤の一つを用い、30℃:150mg/リットルのZrに相当するZrF62-、及びポリマー(表1、固形物含量:37mg/リットル);pH4.0
5. リンス:DE水
6. 乾燥:圧縮空気
7. 塗装:ポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製、TIGC−フリー);約60〜80ミクロン
【0073】
腐食試験:
中性塩水噴霧試験SS・DIN50021,21d
結果の評価に関する注記:切断部におけるクリープ値(creepage values)は、試験片の片側から測定した(規格に従って)。一部の試験シリーズにおいて、ソカラン(Sokalan)(登録商標)HP56を用いた比較例1bを参照システムとして用いた。これは、相対腐食防止度1に相当する。これらの「参照シート」は、種々の試験シリーズ対比度を得るために、各腐食試験シリーズ中において用いられた。参照システムよりも高い腐食防止度を伴うシステムは、1より高い相対腐食防止度:1(「rel.corrosion protection」)を有するが、一方で、不良腐食防止度を伴うものは、1未満の相対腐食防止度を有する。他の試験シリーズにおいては結果は塗料クリープ度として直接表現された。これは表の欄見出しから明らかである。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例2:比較実施例1a:
カルボン酸未変性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂による前処理
基板:CRS
処理工程順序(浸漬法)
1. 洗浄:リドライン1570、2%;リドソル1237、0.3%;5分;55℃
2. リンス:水
3. リンス:DE水
4. 化成処理:180s;下記の処理浴の一つを用いて30℃:150mg/リットルのZrに相当するZrF62-、ポリマー(表2、固形物含量:37mg/リットル);pH4.0
5. リンス:DE水
6. 乾燥:圧縮空気
7. 塗装:ポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製、TIGC−free);約60〜80ミクロン
【0076】
腐食試験:
中性塩水噴霧試験SS・DIN50021,21d
【0077】
【表2】

【0078】
比較実施例1b
ポリビニルピロリドンのホモ−およびコポリマーによる前処理(ソカラン(登録商標)HP563)を用いる:「相対腐食防止度」用の参照システム)
基板:CRS
処理工程順序(浸漬法)
1. 洗浄:リドライン1570、2%;リドソル1237、0.3%;5分;55℃
2. リンス:水
3. リンス:DE水
4. 化成処理:180s;下記の処理浴の一つを用いて30℃:150mg/リットルのZrに相当するZrF62-、ポリマー(表3、固形物含量:37mg/リットル);pH4.0
5. リンス:DE水
6. 乾燥:圧縮空気
7. 塗装:ポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製、TIGC−free);Ca.60〜80ミクロン
【0079】
腐食試験:
塩水噴霧試験SS・DIN50021,21d
【0080】
【表3】

〔註〕
1)ポリビニルピロリドン.製造業者:BASF;CAS No.9003−39−8
2)N−ビニルカプロラクタム−1−ビニル−2−ピロリドン・コポリマー.製造業者:BASF;CAS No.51987−20−3
3)ビニルイミダゾール−ビニルピロリドン・コポリマー.製造業者:BASF;CAS No.117197−37−2
を本明細書において基準システムとして用いた。
【0081】
比較実施例1c:鉄リン酸処理
前処理を、出願人の標準方法の一つにより行った。用いた塗料はポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製、TIGC−フリー)であった;Ca.60〜80ミクロン(上記に同じ)。相対腐食防止度:<1。
【0082】
比較実施例1d:ジカチオン亜鉛リン酸処理
前処理を、出願人の標準方法の一つにより行った。用いた塗料はポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製、TIGC−フリー)であった;Ca.60〜80ミクロン(上記に同じ)。相対腐食防止度:<1。
【0083】
実施例3:
各種pH値での変性樹脂による化成処理
ポリマー:フェノールに対して0.5部のイミダゾールによりグラフトされたフェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール対サリチル酸比=1:1)
基板:CRS
処理工程順序(浸漬法)
1. 洗浄:リドライン1570、2%;リドソル1237、0.3%;5分;55℃
2. リンス:水
3. リンス:DE水
4. 化成処理:180s;下記の処理浴の一つを用いて30℃:150mg/リットルのZrに相当するZrF62-、表4(ポリマー固形物含量:37mg/リットル)
5. リンス:DE水
6. 乾燥:圧縮空気
7. 塗装:ポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製、TIGC−free);Ca.60〜80ミクロン
【0084】
【表4】

【0085】
実施例4:
各種pH値において、フェノールに対して0.25部のイミダゾールによりグラフトされたフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を用いて化成処理を施した。
基板:CRS
処理工程順序(浸漬法)
1. 洗浄:リドライン1570、2%;リドソル1237、0.3%;5分;55℃
2. リンス:水
3. リンス:DE水
4. 化成処理:180s;下記の処理浴の一つを用いて、30℃:150mg/リットルのZrに相当するZrF62-、表5(ポリマー固形物含量:37mg/lリットル)[フェノール−ホルムアルデヒド樹脂に0.25部のイミダゾールをグラフトしたもの]
5. リンス:DE水
6. 乾燥:圧縮空気
7. 塗装:ポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGPからのTIGC−フリー);約60〜80ミクロン
【0086】
【表5】

【0087】
実施例5:
各種pH値においてH2ZrF6およびSiO2の組合せを主成分として用いる化成処理;塗装:粉体塗装またはカチオン電着塗装(CEP)
ポリマー:フェノールに対して0.5部のイミダゾールによりグラフト化されたフェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド(フェノール対サリチル酸比1:1)樹脂
基板:CRS
処理工程順序(浸漬法)
1. 洗浄:リドライン1570、2%;リドソル1237、0.3%;5分;55℃
2. リンス:水
3. リンス:DE水
4. 化成処理:180s;下記の処理浴の一つを用いて30℃:150mg/リットルのZrに相当するZrF62-、SiO2の添加(表6.ポリマー固形物含量:37mg/リットル)
5. リンス:DE水
6. 乾燥:圧縮空気
7. 塗装:ポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製TIGC−フリー);Ca.60〜80ミクロン;またはBASF製CEP皮膜、キャソガード(Cathoguard)310、(鉛なし、Ca.20ミクロン)
【0088】
【表6】

【0089】
比較実施例3:
ポリビニルピロリドン/ポリビニルイミダゾール・コポリマー(ソカラン(登録商標)HP56)による化成処理
基板:CRS
処理工程順序(浸漬法)
1. 洗浄:リドライン1570、2%;リドソル1237、0.3%;5分;55℃
2. リンス:水
3. リンス:DE水
4. 化成処理:180s;150mg/リットルのZrに相当するZrF62-を用いて30℃;(ポリマー固形物含量:37mg/リットル)
5. リンス:DE水
6. 乾燥:圧縮空気
7. 塗装:ポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製TIGC−フリー);Ca.60〜80ミクロン;またはBASF製CEP皮膜、キャソガード310、(鉛フリー、Ca.20ミクロン)
【0090】
実施例6:
各種ポリマー量を用いてH2ZrF6を主成分とする化成処理
ポリマー:フェノールに対して0.5部のイミダゾールによりグラフトされたフェノール−サリチル酸−ホルムアルデヒド(フェノール対サリチル酸比1:1)樹脂
基板:CRS
処理工程順序(浸漬法)
1. 洗浄:リドライン1570、2%;リドソル1237、0.3%;5分;55℃
2. リンス:水
3. リンス:DE水
4. 化成処理:180s;下記処理浴の一つを用いて30℃:150mg/リットルのZrに相当するZrF62-、ポリマーの添加(表7);pH1.8
5. リンス:DE水
6. 乾燥:圧縮空気
7. 塗装:ポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製、TIGC−フリー);Ca.60〜80ミクロン
【0091】
【表7】

【0092】
比較実施例4b:
ポリビニルピロリドン/ポリビニルイミダゾール・コポリマー(ソカラン(登録商標)HP56)による化成処理
基板:CRS
処理工程順序(浸漬塗布)
1. 洗浄:リドライン1570、2%;リドソル1237、0.3%;5分;55℃
2. リンス:水
3. リンス:DE水
4. 化成処理:180s;150mg/リットルのZrに相当するZrF62-を用いて30℃;pH4.0
5. リンス:DE水
6. 乾燥:圧縮空気
7. 塗装:ポリエステルPES5807/RAL5009GL(IGP製TIGC−フリー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を含まないフェノール性成分、芳香族ヒドロキシカルボン酸およびイミダゾールを、構成要素として含有するフェノール−アルデヒド樹脂。
【請求項2】
フェノール性成分の芳香族ヒドロキシカルボン酸に対するモル比、およびフェノール性成分のイミダゾールに対するモル比が、それぞれ1:1〜100:1の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載のフェノール−アルデヒド樹脂。
【請求項3】
芳香族ヒドロキシカルボン酸のイミダゾールに対するモル比が100:1〜1:100の範囲内にあることを特徴とする、請求項2に記載のフェノール−アルデヒド樹脂。
【請求項4】
フェノール性成分の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%がフェノールである、請求項1〜3の1以上に記載のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂。
【請求項5】
芳香族ヒドロキシカルボン酸が、ヒドロキシ安息香酸、さらに詳しく述べるならばサリチル酸およびp−ヒドロキシ安息香酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜4の1以上に記載のフェノール−アルデヒド樹脂。
【請求項6】
樹脂の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%が、フェノール性成分、芳香族ヒドロキシカルボン酸およびイミダゾールおよび架橋性アルキレン基からなることを特徴とする、請求項1〜5の1以上に記載のフェノール−アルデヒド樹脂。
【請求項7】
前記フェノール−アルデヒド樹脂が、500以上さらに詳しく述べるならば1,000以下であって、かつ50,000以下、さらに詳しく述べるならば10,000以下の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1〜6の1以上に記載のフェノール−アルデヒド樹脂。
【請求項8】
フェノール−アルデヒド樹脂の製造において、アルデヒド水溶液を、フェノール性成分、芳香族ヒドロキシカルボン酸およびイミダゾールを含有する水溶液に添加し、次に、これを40℃〜沸点間の温度において、10分〜10時間にわたり混合することを特徴とする、請求項1〜7の1以上に記載のフェノール−アルデヒド樹脂を製造する方法。
【請求項9】
a)第1工程において、組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸を含有するフェノール−アルデヒド樹脂の水溶液を調製し、そして、
b)第2工程で、イミダゾール、次にアルデヒド水溶液が添加され、全体を40℃〜沸点間の温度において、10分〜10時間にわたり混合すること、
を特徴とする、請求項1〜7の1以上に記載のフェノール−アルデヒド樹脂製造のための方法。
【請求項10】
前記反応水溶液中の有機化合物の濃度が、10〜50重量%の固形物含量を有する請求項1〜7の1以上に記載のフェノール−アルデヒド樹脂の水溶液が得られるように選択されることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜7の1以上に記載のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の、裸のまたは化成被覆された金属表面の腐食防止処理のための使用。
【請求項12】
裸のまたは化成被覆された金属表面の腐食防止処理のために、前記金属表面を、一種以上のフェノール−アルデヒド樹脂を含む処理水溶液に接触させることを特徴とし、かつ前記フェノール−アルデヒド樹脂が、それに組み込まれたイミダゾールを含有し、好ましくは請求項1〜7の1以上に記載のフェノール−アルデヒド樹脂であることを特徴とする、金属表面の腐食防止処理方法。
【請求項13】
前記処理水溶液が5mg/l以上好ましくは20mg/l以上であって、かつ2,000mg/l以下、好ましくは200mg/l以下のフェノール−アルデヒド樹脂を含み、このフェノール−アルデヒド樹脂が、組み込まれたイミダゾールを含有し、好ましくは請求項1〜7の1以上に記載のフェノール−アルデヒド樹脂であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
処理水溶液が、1.5以上好ましくは1.8以上で、かつ6以下、好ましくは4.5以下のpHを有することを特徴とする、請求項12および13の一つまたは両方に記載の方法。
【請求項15】
前記処理水溶液が、周期表の第4族の典型元素または遷移金属元素の1種以上の化合物、好ましくはSi、Tiおよび/またはZrの化合物を含有することをさらに特徴とする、請求項12〜14の1以上に記載の方法。
【請求項16】
処理水溶液がフッ化物イオンをさらに含有することを特徴とする、請求項12〜15の1以上に記載の方法。
【請求項17】
下記工程a)〜e):
a)有機ポリマーを生成として含む、被覆層を有する金属のシートをカット、及び/又はスタンプ及び/又は成形して、金属部材を作製し、得られた金属部材を組み立てて構造部材を形成する工程、但し、前記金属シートには前記有機ポリマーと主成分として含む被覆層によって被覆されていない表面域が形成されている、
b)組み立てられた構造部材を洗浄する工程、
c)前記、組み立てられかつ洗浄された構造部材をクロムを含まない処理水溶液と接触させて、それによってリン酸亜銀層とは異る不動態化層を形成する工程、但し、この不動態化層は、前記工程a)において、有機ポリマーを主成分として含む被覆層によっては被覆されていない金属表面の前記面域上に形成され、該処理水溶液は1以上のフェノール−アルデヒド樹脂を含有し、前記フェノール−アルデヒド樹脂の少なくとも1種は、組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸、および/または組み込まれたイミダゾールを含有し、好ましくは請求項1〜7の1以上に記載のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂であり、
d)必要により、工程c)において処理された構造部材を、水により1回以上リンスする工程(但し、この工程は不可欠なものではない)
e)塗料層により被覆する工程、
を含む、
塗装された金属部材を含む構造部材を製造する方法。
【請求項18】
裸または化成被覆された金属表面を処理するための、請求項1〜7の1以上に記載のフェノール−アルデヒド樹脂の1種以上を含有する処理水溶液。
【請求項19】
金属シートまたは金属部材の少なくとも一つの表面が、請求項12〜17の1以上に記載の方法により処理されたものであることを特徴とする、金属シート、金属部材または金属部分を含む物品。

【公表番号】特表2007−514023(P2007−514023A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543385(P2006−543385)
【出願日】平成16年10月30日(2004.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012324
【国際公開番号】WO2005/061570
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】