機能強化ヒートミラーフィルム
【解決手段】対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムを含有するヒートミラーフィルムは、改良された赤外線反射性を有する。このフィルムは、金属もしくは金属合金の層を損傷または変形させる可能性を減少させた状態でグレージング(とくに、非平面状車両用安全グレージング)に接合またはラミネーションさせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折性誘電体多層反射フィルムおよびそれから作製される光学物品に関する。
【背景技術】
【0002】
グレージング材料は、グレージングの性能を向上させるように工学的処理の施された1層以上の機能層を備えることもある。重要な機能層の1層は、赤外線の透過率を減少させる。赤外線遮断機能層は、典型的には、望ましくない太陽放射線を反射または吸収する部分透明な金属化または染色ポリマーフィルム構成体で作製される。そのような機能層が記載されている参考文献としては、米国特許第4,590,118号明細書、同第4,639,069号明細書、および同第4,799,745号明細書が挙げられる。
【0003】
とくに有用な赤外線遮断機能層は、赤外線遮断ファブリー・ペロー1/4波長スタックから形成することができる。そのようなスタックでは、透明誘電体スペーシング層により、2層以上の部分反射性の薄い金属もしくは金属合金の層を分離させる。金属もしくは金属合金の層(本明細書中では簡潔にするために「金属層」と記すこともある)は、典型的には、元素のまたは合金化された銀、銅、または金を含有する。誘電体層は、典型的には、無機酸化物(有機溶液から適用されるかもしくはスパッター堆積を用いて適用される)または有機ポリマー(溶媒溶液にポリマーを溶解させることにより適用される)を含有する。誘電体層の光学的厚さ(誘電体層の物理的厚さ×その面内屈折率として定義される)は、好ましくは、所望の通過帯域の中心波長の約1/4である。通過帯域内にある波長を有する光は、大部分が薄金属層を透過する。通過帯域を超える波長を有する光は、大部分が薄金属層により反射されるかまたは弱め合う干渉により除去される。そのような赤外線遮断ファブリー・ペロー1/4波長スタックが記載されている参考文献としては、米国特許第4,590,118号明細書、同第4,639,069号明細書、および同第4,799,745号明細書が挙げられる。
【0004】
赤外線遮断機能層は、誘電体材料の交互層を含有する複屈折性非金属フィルムからも作製されてきた。複屈折性誘電体多層フィルム(多層光学フィルムすなわち「MOF」とも呼ぶことができる)は、対象となるスペクトル領域で所望の量の光を反射または吸収するとともにスペクトルの可視領域で十分な可視光を透過して実質的に透明になるように工学的処理を施すことができる。多層光学フィルムは、好ましくは、第1の屈折率を有する第1の材料と、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の材料との交互層を備える。多層光学フィルムは、非常に大きいかまたは存在しないブルースター角(p偏光光の反射率がゼロになる角度)を有することができる。このフィルムを用いると、p偏光光に対する反射率が入射角と共に徐々に減少するか、入射角に依存しないか、または法線から入射角が離れるにつれて増加する多層ミラーを作製することができる。多層光学フィルムは、任意の入射方向に対して高い反射率(sおよびp偏光光の両方について)を有することができる。そのような多層光学フィルムが記載されている参考文献としては、米国特許第5,699,188号明細書、同第5,882,774号明細書、および同第6,049,419号明細書、ならびにPCT出願国際公開第97/01778号パンフレットが挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
透明金属化フィルム構成体を含有する機能層を建築用および車両用安全グレージングなどのグレージングに組み込む試みがなされてきた。しかしながら、これらの試みは、限られた成功を収めたにすぎなかった。非平面状グレージングの製造は、とくに困難である。これらの障害は、スタック層の1層以上の脆弱性、金属層の腐食傾向、またはラミネーション処理時、オートクレーブ処理時、および後続のグレージングの使用時に生じる延伸、加熱、および冷却により引き起こされる金属層間の離れた位置における局所的変化が原因の一部をなしうると本発明者らは考える。これらの障害は、機能層をポリビニルブチラール(「PVB」)のような耐引裂性機械的エネルギー吸収層に隣接して配置した場合に増大しうると本発明者らは考える。PVBシートは、典型的には、有意量の可塑剤および他の補助剤を含有する。これらの補助剤は、赤外線遮断機能層中に移動して、腐食、膨潤、ファブリー・ペロースタックの金属層間の離れた位置における局所的変化、または製造上もしくは性能上の問題を引き起こす可能性のある他の影響をもたらしうると本発明者らは考える。
【0006】
複屈折性誘電体多層支持体の上に薄金属層および架橋高分子層をいずれかの順序で形成することにより、場合により、その上に1層以上の追加の薄金属層または架橋高分子層を形成することにより、改良された機能フィルムを取得しうることを本発明者らは見いだした。また、層間接着性を向上させるようにフィルム内の1層または複数層の薄金属層と隣接層との界面を改変することにより、さらなる改良を達成しうることを本発明者らは見いだした。
【0007】
本出願は、
a)対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する可視光透過性複屈折性誘電体多層支持体を提供することと、
b)該支持体の上に、いずれかの順序で、
i)可視光透過性の金属もしくは金属合金の層と、
ii)架橋高分子層と、
を形成することと、
を含む、フィルムの作製方法であって、
該フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように、該金属もしくは金属合金の層の厚さが設定される、方法を開示する。別の言い方をすれば、完成フィルムの反射帯域は、支持体単独の反射帯域よりも広い。
【0008】
本出願はまた、グレージング材料の層と、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(該支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層、および架橋高分子層、を含むフィルムと、を集成することと、該グレージング材料と該フィルムとを接合一体化させて単一の物品にすることと、を含む、グレージング物品の作製方法を開示する。
【0009】
本出願はまた、
a)以下、
i)第1のグレージング材料層と、
ii)第1の機械的エネルギー吸収層と、
iii)対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層、および架橋高分子層、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムと、
iv)第2の機械的エネルギー吸収層と、
v)第2のグレージング材料層と、
を集成することと、
b)これらの層間から残留空気を除去することと、
c)加熱および加圧によりこれらの層を接合一体化させて単一の物品にすることと、
を含む、ラミネート物品の作製方法を開示する。
【0010】
本出願はまた、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含むフィルムを開示する。
【0011】
本出願はまた、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムに接合された少なくとも1層のグレージング材料の層を含むグレージング物品を開示する。
【0012】
本出願はまた、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムに接合された少なくとも1層の機械的エネルギー吸収材料の層を含む安全グレージングプレラミネートを開示する。
【0013】
本出願はまた、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムを含む少なくとも1つのウィンドシールド、後窓、側窓、または天窓を含むグレージングを備える車両を開示する。
【0014】
上記の一般的な概要は、閲覧者の便宜のために提供されている。それらは、折に触れて補正される可能性のある本明細書に添付されている特許請求の範囲の代わりになるものではなく、それと混同してはならない。なぜなら、本発明の範囲は、特許請求の範囲により規定されるからである。
【0015】
図面中の種々の図において、参照記号が同じであれば、それらは同じ要素であることを意味する。図面中の要素は、一定の縮尺率にはなっていない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】界面を形成する2層の高分子層よりなるスタックの概略斜視図である。
【図2A】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図2B】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図2C】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図2D】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図2E】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図3】接着剤バッキングを有する本発明のフィルムの概略断面図である。
【図4】本発明のプレラミネートの概略断面図である。
【図5】本発明のプレラミネートの概略断面図である。
【図6】本発明のウィンドシールドの概略断面図である。
【図7】図6のウィンドシールドの斜視図である。
【図8】本発明の方法を実施するための装置の概略図である。
【図9】本発明の建築用グレージングの概略断面図である。
【図10】実施例1に記載されている複屈折性誘電体多層支持体と金属層とを有するフィルムの透過率および反射率を示すグラフである。
【図11】金属層を含まない図10の複屈折性誘電体多層支持体の透過率および反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のフィルム中または物品中の種々の層の位置に関して、「〜の上に(atop)」、「〜上に(on)」、「最上部の〜」などのような向きを表す用語が使用される場合、水平な支持体層に対する1層以上の層の相対位置を意味する。フィルムまたは物品が製造中または製造後に空間内のいかなる特定の向きをも有することを意図したものではない。
【0018】
「架橋」ポリマーとは、網状ポリマーを形成するように共有化学結合により(通常は、分子または基を架橋することにより)ポリマー鎖が連結一体化されているポリマーを意味する。架橋ポリマーは、一般的には、不溶性により特性づけられるが、適切な溶媒の存在下で膨潤可能なものもある。「ポリマー」という用語は、ホモポリマーおよびコポリマーを包含し、さらに共押出によりまたはエステル交換などの反応により混和性ブレンドの状態で形成されうるホモポリマーまたはコポリマーをも包含する。「コポリマー」および「コポリエステル」という用語は、ランダムコポリマーとブロックコポリマーの両方を包含する。
【0019】
「伸張可能な」金属もしくは金属合金の層とは、可視光透過性フィルム中に組み込んだ場合、電気的連続性を損なうことなく、かつ約0.25メートルの距離で肉眼により検出したときに金属もしくは金属合金の層の表面に目に見える不連続部を形成することなく、面内方向に少なくとも3%延伸することのできる層を意味する。
【0020】
「可視光透過性」の支持体、層、フィルム、または物品とは、支持体、層、フィルム、または物品の法線軸に沿って測定されるスペクトルの可視部における透過率Tvisが少なくとも約20%であることを意味する。「赤外線反射性」の支持体、層、フィルム、または物品とは、支持体、層、フィルム、または物品が、法線角近傍で(たとえば、約6°の入射角で)測定したときに約700nm〜約2000nmの波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも約50%を反射することを意味する。「光」とは、太陽放射線を意味する。
【0021】
「反射帯域」とは、当該フィルムまたは物品により実質的に反射される光の波長の範囲を意味する。フィルムまたは他の物品が多層支持体と、支持体とは異なる追加の層と、を含む場合、フィルムまたは他の物品の反射帯域は、全フィルムまたは全物品の光の実質的な反射波長の範囲が(1)多層支持体単独および(2)追加の層単独に対応する光の実質的な反射波長の範囲よりも大きい波長範囲をカバーするときに、「拡張された」と言われる。
【0022】
「非平面状」の表面または物品(たとえば、ガラスまたは他のグレージング材料の表面または物品)とは、表面または物品が連続的、断続的、一方向的、または複合的な湾曲を有することを意味する。「複合的な湾曲」を有する表面または物品とは、表面または物品が単一点から2つの異なる非共線的方向に湾曲していることを意味する。
【0023】
「実質的な亀裂も折り目も生じることなく」とは、約1メートル、好ましくは約0.5メートルの距離で肉眼により検出したときにフィルムの表面にも目視可能な金属もしくは金属合金の層の表面にも目に見える不連続部が存在しない状態でラミネーションされて物品を形成しているフィルムを意味する。「実質的な皺を生じることなく」とは、約1メートル、好ましくは約0.5メートルの距離で肉眼により検出したときに平滑フィルム表面の収縮の結果として生じる小さな稜も溝も存在しない状態でラミネーションされて物品を形成しているフィルムを意味する。「光学的に透明な」とは、約1メートル、好ましくは約0.5メートルの距離で肉眼により検出したときにはっきりと識別可能な歪みもヘイズも欠陥も存在しないラミネーテッド物品を意味する。
【0024】
図1について説明する。この図には、二層のMOF支持体4が斜視図で示されている。典型的には、支持体は、数十もしくは数百さらには数千のそのような層を有するであろう。層6は、x軸およびy軸の方向に面内屈折率n1xおよびn1yを有し、z軸方向に屈折率n1zを有する。層8は、x軸およびy軸の方向に面内屈折率n2xおよびn2yを有し、z軸方向に屈折率n2zを有する。入射光線7は、層6を通過するときに屈折され、界面7で反射され、層6をもう一度通過するときに屈折され、そして反射光線9として層6を出る。多層支持体の反射特性(単独で考えた場合)は、支持体内の層の面内屈折率により決定される。とくに、反射率は、x、y、およびz方向の各層の材料の屈折率の関係に依存する。MOF支持体は、好ましくは、2つの屈折率(典型的にはx軸およびy軸に沿った屈折率、すなわちnxおよびny)がほぼ等しくかつ第3の屈折率(典型的にはz軸に沿った屈折率、すなわちnz)と異なる少なくとも1種の一軸性複屈折性材料を用いて、形成される。
【0025】
図2Aには、フィルム10が断面概略図で示されている。層12は延伸されており、隣接層14の屈折率n2よりも高い屈折率n1を有する。一体化されて、層12、14のスタックは、MOF支持体15を形成する。架橋高分子層16は、支持体15の上に位置する。金属もしくは金属合金の層18(先に述べたように、単純に「金属層」と記すこともある)は、層16の上に位置する。光線20のような入射光線は、金属層18の第1の表面、層18と16との界面22、層16と隣接層12との界面24、および隣接層12と14との間の26a、26bなどのような界面で部分反射される。層18は、層18およびフィルム10が全体として可視光透過性であるようにするのに十分な程度に薄い。層18は、フィルム10の反射帯域が全体として拡張されるようにするのに十分な程度に厚い。このため、そのようなフィルムでは、金属層だけまたはMOF支持体だけを含有するフィルムと比較して拡張された反射帯域(たとえば、赤外線に対する反射帯域)を有するフィルムを提供するように、金属層18をMOF支持体15と組み合わせる。架橋高分子層16は金属層18と密接した状態にあり、フィルム10が延伸されたときまたは他の形で歪みを受けたとき、金属層18の亀裂、皺、または分離を阻止するものと考えられる。フィルム10で架橋高分子層を使用すれば、近傍の金属層に損傷を与えたり、そのような金属層のスタックの間隔を変化させたりすることなく、より容易に向きを変えることのできるフィルム10の作製が可能になる。
【0026】
図2Bには、他のフィルム28が断面概略図で示されている。フィルム28はフィルム10に類似しているが、金属層18は、支持体15と架橋高分子層29との間に位置する。層18は、層18およびフィルム28が全体として可視光透過性であるようにするのに十分な程度に薄い。層18は、フィルム28の反射帯域が全体として拡張されるようにするのに十分な程度に厚い。架橋高分子層29は金属層18と密接した状態にあり、フィルム28が延伸されたときまたは他の形で歪みを受けたとき、金属層18の亀裂、皺、または分離を阻止するものと考えられる。層29はまた、金属層18を覆う保護層の機能も担う。
【0027】
図2Cには、第3のフィルム30が断面概略図で示されている。フィルム30はフィルム10および28に類似しているが、金属層18は、その各面に隣接して架橋高分子層32、34を有する。架橋高分子層32、34は両方とも、金属層18と密接した状態であり、フィルム30が延伸されたときまたは他の形で歪みを受けたとき、金属層18の亀裂、皺、または分離を阻止するのにとくに有効である。
【0028】
図2Dには、第4のフィルム40が断面概略図で示されている。フィルム40では、架橋高分子層42は、金属層18の上に位置し、金属層18と第2の金属層44との間のスペーシング層としての役割を果たす。架橋高分子保護層46は、第2の金属層44の上に位置する。一体化されて、層18、42、44は、ファブリー・ペロー干渉フィルタースタック48を形成する。スタック48中の金属層18、44は、層18、44、およびフィルム40が全体として可視光透過性であるようにするのに十分な程度に薄い。層18、44、および架橋高分子スペーシング層42は、フィルム40の反射帯域が全体として拡張されるようにするのに十分な程度に厚い。
【0029】
図2Eには、第5のフィルム50が断面概略図で示されている。フィルム50はフィルム30に類似しているが、第2の架橋高分子層52は、第2の金属層44の上に位置し、第2の金属層44と第3の金属層54との間のスペーシング層としての役割を果たす。架橋高分子保護層56は、第3の金属層54の上に位置する。層18、44、54は、層18、44、54、およびフィルム50が全体として可視光透過性であるようにするのに十分な程度に薄い。層18、44、54、および架橋高分子スペーシング層42、52は、フィルム50の反射帯域が全体として拡張されるようにするのに十分な程度に厚い。
【0030】
図3には、接着剤付きフィルム60が断面概略図で示されている。フィルム60は、図2Dのフィルム40に似ているが、支持体15の最下部の表面上に接着剤の層62を有する。接着剤があるため、非平面状表面および複合的な湾曲を有する表面を含めてさまざまな表面上にフィルム60を取り付けることが可能である。
【0031】
図4は、プレラミネート140を示している。プレラミネート140は、フィルム130の保護層122に接合されたPVB製の機械的エネルギー吸収層134を含む。フィルム130は、2種のポリエステルの交互層(図4には示されていない)で作製されたMOF支持体112を含む。ファブリー・ペロー干渉スタック114は、支持体112の上に位置する。スタック114は、銀で作製された第1の薄層116、架橋アクリレートポリマーで作製された架橋高分子スペーシング層118、および銀で作製された第2の薄金属層120を含む。架橋高分子ベースコート層132は、スタック114と支持体112との間に位置する。架橋アクリレートポリマーで作製されたオプションの保護層122は、スタック114の上に位置する。
【0032】
図5は、他のプレラミネート150を示している。プレラミネート150は、フィルム140のMOF支持体112に接合された第2の機械的エネルギー吸収層134を含む。これは、図4に示されるプレラミネートよりも耐久性のあるプレラミネートを提供する。
【0033】
図6は、ラミネーテッド安全ウィンドシールド160の断面図を示している。ウィンドシールド160は、連続的湾曲表面を有し、その曲率半径は、ウィンドシールド160の中央領域(図6に破線としてのみ示されている)の近傍で比較的大きく、より鋭く湾曲した端部領域161の近傍で比較的小さい値に減少する。これらはすべて、「ポリマー−金属赤外線干渉フィルター」という名称の同時係属の米国特許出願第10/222,466号明細書に記載されているとおりである。図6に示されるように、2枚のガラス片32aと32bとの間で脱気およびプレラミネート150の取付けを行うためにニップローラー166、168が使用されている。
【0034】
図7は、図6のウィンドシールド160の斜視図を示している。湾曲領域161、162、163、および164は、複合的な湾曲を有する。ウィンドシールド160を形成するために使用される脱気/ラミネーションおよびオートクレーブのステップ時にプレラミネート150がいくらか収縮したとしても、ウィンドシールド160を介して皺のない景観がより容易に得られるであろう。
【0035】
開示されたフィルムは、多層光学フィルム支持体を含む。さまざまなMOF支持体を利用することができる。好適なMOF支持体を作製する好ましい方法では、好適な多層高分子フィルムを二軸配向させること(2つの軸に沿って延伸すること)が必要とされる。隣接層が異なる応力誘起複屈折率を有する場合、多層光学フィルムの二軸配向を行うと、両方の軸に平行な平面に関して隣接層の屈折率間に差異を生じ、両方の偏光面の光が反射されるようになる。一軸性複屈折性材料は、正または負のいずれかの一軸性複屈折率を有しうる。z方向の屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも大きい場合、正の一軸性複屈折率を生じる。z方向の屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも小さい場合、負の一軸性複屈折率を生じる。
【0036】
n2x=n2y=n2zに一致するようにn1zを選択して多層光学フィルムを二軸配向させた場合、そのような層間の界面はp偏光光に対してブルースター角をもたず、すべての入射角で一定の反射率が存在する。2つの互いに垂直な面内軸で配向された多層光学フィルムは、層の数、f比(二成分多層光学フィルムの光学的厚さの比、米国特許第6,049,419号明細書参照)、および屈折率のような因子に依存して並外れて高いパーセントの入射光を反射することができ、高効率のミラーである。
【0037】
MOF支持体中の層の厚さはまた、多層光学フィルムの反射特性に影響を及ぼす。本明細書中で論じられるMOFの層の物理的厚さはすべて、なんらかの配向または他の加工を行った後で測定される。隣接する層対(一方が高屈折率を有し、他方が低屈折率を有する)は、好ましくは、反射される光の波長の1/2である合計光学的厚さを有する。二成分系で最大の反射率を達成するために、MOF支持体の個々の層は、好ましくは、反射される光の波長の1/4である光学的厚さを有するが、他の理由で、層対内の光学的厚さの他の比を選択することも可能である。たとえば、近赤外光を反射するようにMOFの層の厚さを選択し、斜入射角でさえも反射帯域がスペクトルの可視領域内にシフトしないように反射帯域端を赤外領域内に配置することにより、高入射角でさえもスペクトルの可視領域で赤外MOF支持体を透明にすることができる。
【0038】
好ましいMOF支持体は、任意の入射方向のsおよびp偏光光の両方に対して高反射性であり、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域にわたり少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%の平均反射率を有する。対象となる波長領域は、目的の用途に依存して大幅に変化する可能性がある。好ましい実施形態では、対象となる波長領域は、赤外領域(約700nm〜約2000nm)内にあり、フィルムは、その領域で少なくとも幅100nmの帯域にわたり入射放射線を反射するように工学的処理に付される。好ましくは、そのようなIR反射性MOF支持体はまた、550nmにおいて少なくとも約70%の可視光透過率を有するであろう。
【0039】
IR反射性MOF支持体の好ましい一実施形態では、MOF支持体は、約1200nmを超えるIR領域で生じる一次反射帯域からスペクトルの可視領域で生じるより高次の反射による可視色を除去するように設計された二成分狭帯域多層光学フィルムである。ゼロ度の観察角でこのMOF支持体により遮断される(すなわち、透過されない)光の帯域幅は、約700〜1200nmである。非法線角で可視色をさらに減少させるために、短波長帯域端は、典型的には、反射帯域が最大使用角でスペクトルの可視領域内にシフトしないように、長波長可視帯域端からIR側へ約100〜150nmだけシフトされる。これにより、法線角で約850nm〜約1200nmを反射する狭帯域IR反射性MOF支持体が提供される。1/4波長スタックでは、そのようなMOF支持体の層対は、好ましくは、近赤外光を反射するように425〜600nmの範囲の光学的厚さ(反射させたい光の波長の1/2)を有する。より好ましくは、1/4波長スタックでは、そのようなIR反射性MOF支持体は、近赤外光を反射するように212〜300nmの範囲の光学的厚さ(反射させたい光の波長の1/4)をそれぞれ有する個々の層を有する。
【0040】
MOF支持体の他の実施形態では、MOF支持体中の層対は、さまざまな相対厚さを有する。本明細書中では、これを層の厚さ勾配と呼ぶ。この相対厚さは、拡幅された反射帯域にわたり所望の反射帯域幅を達成するように選択される。たとえば、各層対が前の層対の厚さよりも特定のパーセントだけ厚くなるようにMOF支持体の厚さを横切って一定の比率で層対の厚さを増大させることにより、層の厚さ勾配を線形にしてもよい。また、MOF支持体の一方の主要表面から他方の主要表面まで、層の厚さを減少させ、次に、増大させ、次に、再び減少させてもよいし、または米国特許第6,157,490号明細書などに記載されているように一方または両方の帯域端の鮮鋭度を増大させるように設計された交互層厚さ分布をもたせてもよい。
【0041】
MOF支持体のさらに他の実施形態では、MOF支持体は、米国特許第5,360,659号明細書に記載されているような6層の交互反復単位を有する拡張帯域端二成分IR反射性フィルム構成体を含みうる。この構成では、約380〜約700nmの可視波長領域で望ましくない二次、三次、および四次の反射が除去されるとともに、約700〜約2000nmの赤外波長領域の光が反射される。四次よりも高次の反射は、一般的には、スペクトルの可視領域ではなく紫外領域に存在するか、または当たり障りがない程度に低い強度であろう。そのようなMOF支持体は、6層の交互反復単位が約.778A.111B.111A.778B.111A.111Bの相対光学的厚さを有する第1(A)および第2(B)の高分子材料の交互層を有する。反復単位でわずか6層が使用されるにすぎないので、材料がより効率的に使用され、作製が比較的簡単である。また、そのような実施形態では、MOF支持体の厚さを横切って先に記載したような反復単位の厚さ勾配を導入することが望ましい。
【0042】
MOF支持体のさらに他の実施形態では、二成分MOF支持体は、約1200〜2000nmの波長の赤外光を反射する上記の6層の交互反復単位を有する交互層の第1の部分と、AB反復単位および実質的に等しい光学的厚さを有し約700〜1200nmの波長の赤外光を反射する交互層の第2の部分と、を利用する。交互層のそのような組合せは、ハイブリッド設計と呼ばれ、赤外波長領域を横切って光の拡張反射を生じる。このハイブリッド設計は、米国特許第5,360,659号明細書などに記載されているように提供しうるが、本明細書に記載のフィルムのいずれにも有用であるという点で、より幅広い用途を有する。角度によるいかなる知覚色変化をも最小限に抑えるように赤外スペクトル内に反射帯域を配置すべく、交互層の両方の部分の層の厚さを調整することができる。
【0043】
MOF支持体のさらに他の実施形態では、MOF支持体は、3種以上の光学的に識別可能なポリマーを含みうる。第3のまたは後続のポリマーは、たとえば、MOF支持体内の第1のポリマーと第2のポリマーとの間の接着促進層として、光学的目的のためのスタックの追加の成分として、光学スタック間の保護境界層として、スキン層として、機能コーティングとして、または任意の他の目的のために、利用することができる。したがって、第3のまたは後続のポリマーの組成物が存在したとしても、限定されるものではない。3種以上の識別可能なポリマーを含有するIR反射性MOF支持体の例としては、米国再発行特許第34,605号明細書に記載されているものが挙げられる。米国再発行特許第34,605号明細書には、3種の異なる実質的に透明な高分子材料A、B、およびCを含みかつABCBの反復単位を有するフィルムが記載されている。層は、約90nm〜約450nmの光学的厚さを有し、各高分子材料は、異なる屈折率niを有する。また、好ましくは、MOF支持体の厚さを横切って層の厚さを単調増加させることにより、そのようなMOF支持体の厚さを横切って層の厚さ勾配を導入することができる。好ましくは、三成分系では、第1の高分子材料(A)は、第2の高分子材料(B)と少なくとも約0.03だけ屈折率が異なり、第2の高分子材料(B)は、第3の高分子材料(C)と少なくとも約0.03だけ屈折率が異なり、そして第2の高分子材料(B)の屈折率は、第1(A)および第3(C)の高分子材料のそれぞれの屈折率の中間である。コポリマーまたはポリマーの混和性ブレンドを利用することにより、所望の屈折率を有するように高分子材料のいずれかまたはすべてを合成することが可能である。
【0044】
MOF支持体のさらに他の実施形態は、米国特許第6,207,260号明細書に記載されている。その特許の光学フィルムおよび他の光学体は、スペクトルの第1の領域で少なくとも1つの偏光電磁放射線に対して一次反射帯域を呈するとともに、第1の反射帯域の少なくとも二次、好ましくは少なくとも三次以上の高調波を除去する。一次高調波の反射パーセントは、本質的に一定に保たれるか、または入射角の関数として増加する。これは、反復順序ABCで配列された高分子材料A、B、およびCからMOF支持体の少なくとも一部分を形成することにより達成される。ここで、Aは、互いに直交する軸x、y、およびzに沿ってそれぞれ屈折率nxA、nyA、およびnzAを有し、Bは、軸x、y、およびzに沿ってそれぞれ屈折率nxB、nyB、およびnzBを有し、そしてCは、軸x、y、およびzに沿ってそれぞれ屈折率nxC、nyC、およびnzCを有する。軸zは、フィルムまたは光学体の平面に直交し、nxA>nxB>nxCまたはnyA>nyB>nyCであり、かつnzC≧nzB≧nzAである。好ましくは、差nzA−nzBおよびnzB−nzCの少なくとも一方は、約−0.05よりも小さいかまたはそれに等しい。これらの拘束条件内でMOF支持体を設計することにより、とくに、一次反射帯域がスペクトルの赤外領域にある場合、入射角による第一高調波反射の実質的減少を伴うことなく、二次、三次、および四次以上の反射の少なくともいくらかの組合せを除去することができる。
【0045】
MOF支持体のさらに他の実施形態では、角度による知覚色変化を最小限に抑えるようにスペクトルの可視領域から離して反射帯域を選択的に配置する場合、上記のMOF支持体のいずれかを、MOF支持体の光学効率を増加させる「ギャップフィラー」成分と組み合わせることができる。そのような成分は、法線角において、可視スペクトルの縁部とIR反射帯域の短波長帯域端との間の領域のIR線を吸収または反射する働きをする。そのようなMOF支持体は、米国特許第6,049,419号明細書中に、より完全に記載されている。
【0046】
スタック中の層に供すべく選択される材料はまた、MOF支持体の反射特性を決定する。多くの異なる材料を使用することが可能であり、所与の用途の材料の正確な選択は、特定の軸に沿って種々の光学層間で得られる屈折率の所望の一致および不一致ならびに完成フィルムの所望の物理的性質に依存する。簡潔にするために、以下に記載の考察では、本明細書中で第1のポリマーおよび第2のポリマーと記される2種の材料だけから作製された層対を含有するMOF支持体に対象を絞る。考察のために、第1のポリマーは大きい絶対値の応力光学係数を有すると仮定する。このため、延伸時、第1のポリマーは大きい複屈折率を生じうる。用途に応じて、MOF支持体の平面内の2つの直交する方向間で、1つ以上の面内方向とMOF支持体フィルム平面に垂直な方向との間で、またはこれらの1つの組合せで、複屈折率を生じるようにすることが可能である。所望の光学特性が完成MOF支持体に付与されるように、第1のポリマーは、延伸後、複屈折率を保持しなければならない。
【0047】
反射型またはミラー型MOF支持体を作製するために、屈折率基準をフィルム平面内のいずれの方向にも同じように適用する。いずれの所与の層についても直交する面内方向の屈折率が等しくなるようにまたはほぼ等しくなるようにするのが一般的である。しかしながら、好ましくは、第1のポリマーの面内屈折率は、第2のポリマーの面内屈折率とできるかぎり大きく異なる。配向前に第1のポリマーが第2のポリマーよりも高い屈折率を有する場合、第1のポリマーの面内屈折率は、好ましくは、延伸方向で増大し、z軸屈折率は、好ましくは、第2のポリマーに一致するように減少する。同様に、配向前に第1のポリマーが第2のポリマーよりも低い屈折率を有する場合、第1のポリマーの面内屈折率は、好ましくは、延伸方向で減少し、z軸屈折率は、好ましくは、第2のポリマーに一致するように増加する。第2のポリマーは、好ましくは、延伸時、ほとんどまたはまったく複屈折率を生じないか、またはその面内屈折率が完成MOF支持体中の第1のポリマーのものとできるかぎり大きく異なるように、逆向き(正−負または負−正)の複屈折率を生じる。ある程度の偏光特性をもMOF支持体にもたせるようにするのであれば、これらの基準を偏光フィルムに対して先に列挙した基準と適切に組み合わせることも可能である。
【0048】
ほとんどの用途では、好ましくは、第1および第2のMOF支持体ポリマーはいずれも、対象となる帯域幅内に認知しうる吸収バンドをもたない。このため、帯域幅内の入射光はすべて、反射または透過されるであろう。しかしながら、いくつかの適用では、第1および第2のポリマーの一方または両方が特定の波長を完全にまたは部分的に吸収することが有用であることもある。
【0049】
以下でより詳細に説明されるように、MOF支持体は、オプションの非光学層を含有することもできる。好ましくは、MOF支持体の光学層(たとえば、第1および第2のポリマー層)およびMOF支持体のオプションの非光学層は、ポリマーで構成される。ポリマーは、コモノマーを用いて形成することができる。好ましくは、そのようなコモノマーの使用により、MOF支持体層の応力光学係数および延伸後の複屈折率の保持性が実質的に低減されるようであってはならない。実際上、これによりコモノマー含有量に実用上限が課されることになろう。その正確な値は、利用されるコモノマーの選択により異なるであろう。しかしながら、コモノマーの組込みにより他の特性が改良されるのであれば、光学特性がいくらか損なわれても一般に許容されうる。
【0050】
ポリエステルは、MOF支持体の作製に使用するのに好ましい第1のポリマーであり、一般的には、カルボキシレートモノマーとグリコールモノマーとの反応により生成されるカルボキシレートおよびグリコールのサブユニットを含む。各カルボキシレートモノマーは、2つ以上のカルボン酸官能基またはエステル官能基を有し、各グリコールモノマーは、2つ以上のヒドロキシ官能基を有する。カルボキシレートモノマーはすべて同一であってもよいし、2つ以上の異なるタイプの分子が存在してもよい。同じことが、グリコールモノマーにもあてはまる。「ポリエステル」という用語には、グリコールモノマーと炭酸のエステルとの反応から誘導されるポリカーボネートも包含される。
【0051】
MOF支持体中のポリエステル層のカルボキシレートサブユニットの形成に使用するのに好ましいカルボキシレートモノマーとしては、たとえば、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびその異性体;テレフタル酸;イソフタル酸;フタル酸;アゼライン酸;アジピン酸;セバシン酸;ノルボルネンジカルボン酸;ビ−シクロオクタンジカルボン酸;1,6−シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体;t−ブチルイソフタル酸、トリメリト酸、ナトリウムスルホン化イソフタル酸;2,2’−ビフェニルジカルボン酸およびその異性体;ならびにメチルエステルまたはエチルエステルのようなこれらの酸の低級アルキルエステルが挙げられる。これに関連して、「低級アルキル」という用語は、C1〜C10直鎖状または分枝状アルキル基を意味する。
【0052】
ポリエステル層のグリコールサブユニットの形成に使用するのに好ましいグリコールモノマーとしては、エチレングリコール;プロピレングリコール;1,4−ブタンジオールおよびその異性体;1,6−ヘキサンジオール;ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール;ジエチレングリコール;トリシクロデカンジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびその異性体;ノルボルナンジオール;ビシクロ−オクタンジオール;トリメチロールプロパン;ペンタエリトリトール;1,4−ベンゼンジメタノールおよびその異性体;ビスフェノールA;1,8−ジヒドロキシビフェニルおよびその異性体;ならびに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0053】
ポリエチレンナフタレート(「PEN」)は、MOF支持体の作製に使用するのにとくに有用なポリエステルであり、第1のポリマーとして選択されることが多い。PENは、たとえば、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとの反応により、作製することができる。ポリエチレン2,6−ナフタレートは、とりわけ好ましいPENである。PENは、大きい正の応力光学係数を有し、延伸後、効果的に複屈折率を保持し、可視領域内にほとんどまたはまったく吸光度をもたない。PENはまた、等方性状態で大きい屈折率を有する。偏光面が延伸方向に平行な場合、550nmの波長の偏光された入射光に対するその屈折率は、約1.64から約1.9程度の高さまで増加する。分子配向の増加に伴って、PENの複屈折率が増加する。分子配向は、より大きな延伸比でMOF支持体を延伸し他の延伸条件を一定に保持することにより、増大させることが可能である。第1のポリマーとして好適な他の半結晶性ナフタレンジカルボン酸のポリエステルとしては、たとえば、ポリブチレン2,6−ナフタレート(「PBN」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、およびそれらのコポリマーが挙げられる。非ポリエステルポリマーもまた、MOF支持体の形成に有用である。たとえば、ポリエーテルイミドをPENまたはPENコポリマー(「coPEN」)のようなポリエステルと併用することにより、多層反射ミラーを形成することができる。PETおよびポリエチレン(たとえば、商品名エンゲージ(ENGAGE)TM 8200としてダウ・ジュポン・エラストマーズ(Dow−Dupont Elastomers)から入手可能なポリ(エチレン−co−オクテン)または「PE−PO」)のような他のポリエステル/非ポリエステルの組合せを使用することもできる。他の好適な第1のポリマーは、たとえば、米国特許第6,268,961号明細書、PCT出願国際公開第99/36248号パンフレットおよび同第99/36262号パンフレット、ならびに米国特許第6,498,683号明細書に記載されている。他の好ましい第1のポリマーは、90モル%のジメチルナフタレンジカルボキシレートおよび10モル%のジメチルテレフタレートから誘導されるカルボキシレートサブユニットと、100モル%のエチレングリコールサブユニットから誘導されるグリコールサブユニットと、を有する0.48dL/gの固有粘度(「IV」)のcoPENである。屈折率は、ほぼ1.63である。このポリマーは、本明細書中では「低融点PEN(90/10)」と記されている。さらに他の好ましい第1のポリマーは、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)から入手可能な0.74dL/gのIVを有するPETである。
【0054】
先に述べたように、MOF支持体中の第2のポリマーは、好ましくは、第2のポリマーの屈折率が完成MOF支持体において少なくとも1方向で同一の方向の第1のポリマーの屈折率と有意に異なるように、選択される。高分子材料は典型的には分散性であるので、すなわち、それらの屈折率は波長により異なるので、これらの条件は、対象となる特定のスペクトル帯域幅に関連させて考えなければならない。以上の考察から当然のことながら、第2のポリマーの選択は、本発明のフィルムの目的の用途だけでなく、第1のポリマーに対して行われる選択ならびにMOF支持体およびフィルムの加工条件にも依存する。第2の光学層は、第1のポリマーのガラス転移温度に適合するガラス転移温度および第1のポリマーの等方性屈折率に類似した屈折率を有するさまざまな第2のポリマーから作製することができる。好適な第2のポリマーの例としては、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート、およびメタクリレートのようなモノマーから作製されるビニルポリマーおよびコポリマーが挙げられる。そのようなポリマーのさらなる例としては、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)のようなポリメタクリレート、およびアイソタクチックまたはシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。他の好適な第2のポリマーとしては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミド酸、およびポリイミドのような縮合ポリマーが挙げられる。MOF支持体中の第2の光学層はまた、ポリエステルおよびポリカーボネートのようなポリマーから形成することもできる。
【0055】
MOF支持体の好ましい第2のポリマーとしては、商品名CP71およびCP80としてイネオス・アクリリックス・インコーポレーテッド(Ineos Acrylics,Inc.)から入手可能なようなPMMAのホモポリマーおよびPMMAよりも低いガラス転移温度を有するポリエチルメタクリレート(「PEMA」)が挙げられる。このほかの好ましい第2のポリマーとしては、PMMAのコポリマー(「coPMMA」)、たとえば、商品名パースペックス(PERSPEX)TM CP63としてイネオス・アクリリックス・インコーポレーテッド(Ineos Acrylics,Inc.)から入手可能なような75重量%のメチルメタクリレート(「MMA」)モノマーと25重量%のエチルアクリレート(「EA」)モノマーとから作製されるcoPMMA;MMAコモノマーユニットとn−ブチルメタクリレート(「nBMA」)コモノマーユニットとで形成されるcoPMMA;商品名ソレフ(SOLEF)TM 1008としてソルペイ・ポリマーズ・インコーポレーテッド(Solvay Polymers,Inc.)から入手可能なようなPMMAとポリ(ビニリデンフルオリド)(「PVDF」)とのブレンドが挙げられる。さらに他の好ましい第2のポリマーとしては、上述したPE−POエンゲージ(ENGAGE)TM 8200のようなポリオレフィンコポリマー;商品名Z9470としてフィナ・オイル・アンド・ケミカル・カンパニー(Fina Oil and Chemical Co.)から入手可能なポリ(プロピレン−co−エチレン)(「PPPE」);および商品名レクスフレックス(REXFLEX)TM W111としてハンツマン・ケミカル・コーポレーション(Huntsman Chemical Corp.)から入手可能なアタクチックポリプロピレン(「aPP」)とアイソタクチックポリプロピレン(「iPP」)とのコポリマーが挙げられる。第2の光学層はまた、官能化ポリオレフィン、たとえば、商品名バイネル(BYNEL)TM 4105としてイー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.)から入手可能なような線状低密度ポリエチレン−g−無水マレイン酸(「LLDPE−g−MA」)から;商品名エクデル(ECDEL)TMとしてイーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)から入手可能なようなコポリエステルエーテルエラストマー(「COPE」)から;シンジオタクチックポリスチレン(「sPS」)から;テレフタル酸(「coPET」)をベースとするコポリマーまたはブレンドから;第2のグリコール、たとえば、シクロヘキサンジメタノールを利用するPETのコポリマー(「PETG」)から;ならびに商品名THVTMとしてスリーエム・カンパニー(3M Company)から入手可能なフルオロポリマーから作製することもできる。
【0056】
IR反射性MOF支持体フィルム中の光学層用の第1/第2のポリマーのとりわけ好ましい組合せとしては、PEN/PMMA、PET/PMMAまたはPET/coPMMA、PEN/COPE、PET/COPE、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/coPET、PEN/PETG、およびPEN/THVが挙げられる。これらの組合せのいくつかは、入射光の角度に対して一定の反射率を提供する(すなわち、ブルースター角が存在しない)。たとえば、特定の波長において、二軸配向PENの場合、面内屈折率を1.76にして、面内z軸屈折率を1.49まで低下させるようにすることが可能である。多層構成体中の第2のポリマーとしてPMMAを使用する場合、同一の波長におけるその屈折率を3つの方向すべてにおいて1.495にすることが可能である。他の例は、PET/COPE系であり、この場合、PETの類似の面内およびz軸屈折率を1.66および1.51にしてCOPEの等方性屈折率を1.52にすることが可能である。
【0057】
MOF支持体は、場合により、1層以上の非光学層、たとえば、1層以上の非光学スキン層または1層以上の非光学内部層、具体例としては、光学層のパケット間の保護境界層(「PBL」)を含む。非光学層を使用することにより、MOF支持体にさらなる強度もしくは剛性を付与したり、または加工時もしくは加工後、損害もしくは損傷からそれを保護したりすることができる。いくつかの用途では、1層以上の犠牲保護スキンを組み込むことが望ましいこともある。この場合、使用前にスキン層をMOF支持体からまたは完成フィルムの下面から取り除くことができるように、スキン層とMOF支持体との間の界面接着力を調節する。非光学層の材料はまた、種々の特性、たとえば、本発明のMOF支持体またはフィルムの耐引裂性、耐穿刺性、靭性、耐候性、および耐溶剤性を付与または改良するように選択可能である。典型的には、MOF支持体または本発明のフィルムにより透過、偏光、または反射される光の少なくとも一部分がこれらの層中をも伝播するように、1層以上の非光学層を配置する(言い換えれば、MOF支持体または本発明のフィルムを通って伝播するかまたはそれらにより反射される光の経路にこれらの非光学層を配置することができる)。非光学層は、好ましくは、対象となる波長領域にわたり、MOF支持体または本発明のフィルムの反射特性に実質的に影響を及ぼさない。極端に湾曲した基材にラミネーションしたときに亀裂も皺も生じないフィルムを提供するために、MOF支持体の光学層の特性と一緒に、結晶化度および収縮特性のような非光学層の特性を考慮することが必要になることもある。
【0058】
そのようなMOF支持体中の非光学層は、多くの適切な材料から選択することができる。非光学層の材料を選択する際に考慮すべき因子としては、破断伸びパーセント、ヤング率、引裂強度、内部層への接着力、対象となる電磁帯域幅における透過および吸収のパーセント、光学的透明度またはヘイズ、振動数の関数としての屈折率、テクスチャー、粗さ、溶融熱安定性、分子量分布、溶融レオロジー、共押出性、光学層および非光学層の材料間の混和性および相互拡散速度、粘弾性応答、延伸条件下における緩和および結晶化の挙動、使用温度における熱安定性、耐候性、コーティングへの接着能力、ならびに種々のガスおよび溶媒に対する浸透性が挙げられる。当然ながら、先に述べたように、選択される非光学層材料はMOF支持体の光学特性に有害な光学特性を有していないことが重要である。非光学層は、MOF支持体の第1および第2の光学層で使用されるポリマーのいずれをも含めて、ポリエステルのようなさまざまなポリマーから形成可能である。いくつかの実施形態では、非光学層に供すべく選択される材料は、第2の光学層に供すべく選択される材料に類似しているかまたは同一であろう。たとえば、スキン層にcoPEN、coPET、または他のコポリマー材料を使用することにより、MOF支持体の「層間剥離」(歪みにより誘起される結晶化および配向の方向へのポリマー分子の大多数のアライメントにより生じるMOF支持体の破壊分離)を減少させることができる。coPENを含有する非光学層は、典型的には、第1の光学層を配向させるために使用される条件下で延伸したとき、ごくわずかに配向されるにすぎないであろう。したがって、歪みにより誘起される結晶化はほとんど起こらない。
【0059】
好ましくは、MOF支持体中の第1の光学層、第2の光学層、およびオプションの非光学層のポリマーは、流動の乱れを生じることなく共押出することができるように類似のレオロジー特性(たとえば、溶融粘度)を有するように選択される。好ましくは、MOF支持体中の第2の光学層、スキン層、およびオプションの他の非光学層は、第1の光学層のガラス転移温度未満であるかまたはそれよりも約40℃高い温度を超えることのないガラス転移温度(「Tg」)を有する。より好ましくは、第2の光学層、スキン層、およびオプションの非光学層のTgは、第1の光学層のTg未満である。長さ配向(「LO」)ローラーを使用してMOF支持体を配向させる場合、低いTgの材料がローラーに付着するおそれがあるので、所望の低いTgのスキン材料を使用できない可能性がある。LOローラーを使用しないのであれば、この制約は問題になることはない。いくつかの用途では、好ましいスキン層材料として、PMMAおよびポリカーボネートが挙げられる。なぜなら、これらの材料は、耐久性があり、UV線からMOF支持体を保護する能力があるからである。
【0060】
フィードブロックおよびダイの壁に沿った高剪断条件からMOF支持体光学層を保護するために、その製造時にMOF支持体の一方または両方の主要表面上にスキン層を共押出することもできる。このほか、製造時、スキン層を構成するポリマー溶融体中にUV安定剤などの1種以上の好適な添加剤を混合し、得られたスキン層をMOF支持体層の片面または両面に共押出することにより、望ましい化学的または物理的性質を有するスキン層を得ることができる。所望により、MOF支持体の製造時、追加の層をスキン層の外側に共押出したり;別々のコーティング操作でMOF支持体上にそれらをコーティングしたり;あるいは個別のフィルム、フォイル、または剛性もしくは半剛性補強基材としてMOF支持体にそれらをラミネーションしたりすることが可能である。
【0061】
MOF支持体中のスキン層および他のオプションの非光学層は、MOF支持体の光学層と比べて、厚さを厚くしたり、薄くしたり、または同一にしたりすることができる。スキン層およびオプションの非光学層の厚さは、一般的には、MOF支持体の個々の光学層の少なくとも1つの厚さの少なくとも4倍、典型的には少なくとも10倍であり、少なくとも100倍にすることも可能である。非光学層の厚さは、特定の厚さを有するMOF支持体を作製すべく変化させることができる。MOF支持体の全体的な物理的厚さは、所望の用途に依存するであろう。好ましくは、MOF支持体は、約0.01〜約1mmの厚さである。
【0062】
とりわけ好ましいMOF支持体を作製するための技術は、上述したPCT出願国際公開第99/36248号パンフレットおよび同第01/96104号パンフレット中に詳細に記載されている。
【0063】
本発明のフィルムは、MOF支持体の上に金属もしくは金属合金(metal)の層および架橋高分子層を含む。これらの層は、いずれかの順序で、すなわち、MOF支持体と架橋高分子層との間に金属もしくは金属合金の層を配置して、またはMOF支持体と金属もしくは金属合金の層との間に架橋高分子層を配置して、存在しうる。好ましくは、2層以上の金属もしくは金属合金の層を開示されたフィルム中に存在させる。先に述べたように、これらの金属もしくは金属合金の層は、簡潔にするために金属層と記されることもある。最も好ましくは、開示されたフィルムは、金属層および架橋高分子スペーシング層により赤外線遮断ファブリー・ペロー光学干渉スタックを形成した状態で、架橋高分子スペーシング層により分離された少なくとも2層の金属層を含む。所望により、2つ以上のそのようなスタックをフィルム中に存在させることができる。追加のスタックは、前のスタックの上に追加の架橋高分子層および金属層を配置することにより便利に形成することができる。
【0064】
フィルム中の第1、第2、および任意の追加の金属層は、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましい金属としては、元素の銀、金、銅、ニッケル、クロム、およびステンレス鋼が挙げられるが、銀がとくに好ましい。これらの金属を互いにまたは他の金属と混合した状態で含有する合金または分散体を利用することもできる。金属層は、同一の厚さを持つ必要はない。好ましくは、金属層は、連続的になるようにするのに十分な程度に厚く、フィルムおよびフィルムを含有する物品が所望の可視光透過度を有することを保証するのに十分な程度に薄い。好ましくは、金属層の物理的厚さ(光学的厚さと対比される)は、約3〜約50nm、より好ましくは約4〜約15nmである。第1および任意の追加の金属層は、好ましくは、スパッタリング(たとえば、カソードスパッタリングまたは平面マグネトロンスパッタリング)、蒸発(たとえば、抵抗蒸発または電子ビーム蒸発)、化学気相堆積、メッキなどのようなフィルム金属化技術分野で利用される技術を用いて適用される。
【0065】
それらの光学的機能に加えて、アンテナ、電磁遮蔽のような目的で、およびフォグ除去、ミスト除去、フロスト除去、またはアイス除去のような薄膜加熱用途で、金属層を使用することができる。薄膜加熱用途では、実質的な通電能力が必要になることもある。好ましくは、そのような薄膜加熱用途では、たとえば、米国特許第3,529,074号明細書、同第4,782,216号明細書、同第4,786,783号明細書、同第5,324,374号明細書、および同第5,332,888号明細書に示されるように、母線を用いて2層以上の金属化フィルム層を電気的に並列に接続して一体化させる。「可撓性導電性赤外干渉フィルター」という名称の同時係属の米国特許出願第10/222,449号明細書および「耐久性透明EMI遮蔽フィルム」という名称の同時係属の米国特許出願第10/222,465号明細書に、より詳細に記載されているように、架橋高分子スペーシング層により分離された複数の通電性金属層の組合せは、湾曲、屈曲、および延伸を受けたときに離層または破損に対して増大された耐性を有するスタックを提供する。金属層内の非常に小さい引掻傷または破損でさえも、フィルムの通電性実施形態の初期故障を引き起こす可能性がある。とくに、引掻傷または破損が金属層を通過する電流の流れの方向に垂直な場合、そのような破損は、ホットスポット形成が原因であることが多い。好ましくは、層は、0.15W/cm2を超える電力をフィルムに印加した後で導電率を保持するであろう。
【0066】
好ましくは、支持体の適切な前処理により、第1の金属層の平滑性および連続性ならびに支持体へのその接着力を向上させる。好ましい前処理レジメンでは、反応性または非反応性雰囲気(たとえば、プラズマ、グロー放電、コロナ放電、誘電体バリヤー放電、もしくは大気圧放電)の存在下における支持体の放電前処理;化学的前処理;火炎前処理;または米国特許第3,601,471号明細書および同第3,682,528号明細書に記載されている酸化物および合金のような核形成層の適用が必要とされる。これらの前処理は、支持体の表面が続いて適用される金属層に対して受容性になることを保証するうえで役立つ。プラズマ前処理が、とくに好ましい。さらにとくに好ましい前処理レジメンでは、先に論述した図4の層132のような無機または有機ベースコート層を支持体にコーティングし、場合により、続いて、以上に記載したプラズマまたは他の前処理の1つを用いてさらなる前処理を行うことが必要とされる。有機ベースコート層、とりわけ架橋高分子ベースコート層は、とくに好ましい。したがって、好ましい実施形態では、架橋高分子層は、MOF支持体と金属層との間に位置する。
【0067】
架橋高分子層は、MOF支持体に(または支持体の上の第1の金属層に)さまざまな方法で適用することができる。最も好ましくは、米国特許第4,696,719号明細書、同第4,722,515号明細書、同第4,842,893号明細書、同第4,954,371号明細書、同第5,018,048号明細書、同第5,032,461号明細書、同第5,097,800号明細書、同第5,125,138号明細書、同第5,440,446号明細書、同第5,547,908号明細書、同第6,045,864号明細書、同第6,231,939号明細書、および同第6,214,422号明細書;PCT出願国際公開第00/26973号パンフレット;ディー・ジー・ショウ(D.G.Shaw)およびエム・ジー・ラングロイス(M.G.Langlois)著、「ペーパーおよびポリマーのウェブをコーティングするための新しい気相堆積法」、第6回国際真空コーティング会議(1992年);ディー・ジー・ショウ(D.G.Shaw)およびエム・ジー・ラングロイス(M.G.Langlois)著、「アクリレート薄膜を気相堆積させるための新しい高速プロセス:最新版」、真空コーター学会、第36回年次技術会議予稿集(1993年);ディー・ジー・ショウ(D.G.Shaw)およびエム・ジー・ラングロイス(M.G.Langlois)著、「金属化フィルムのバリヤー性を改良するための気相堆積アクリレートコーティングの使用」、真空コーター学会、第37回年次技術会議予稿集(1994年);ディー・ジー・ショウ(D.G.Shaw)、エム・レーリング(M.Roehrig)、エム・ジー・ラングロイス(M.G.Langlois)、およびシー・シェーハン(C.Sheehan)著、「ポリエステルおよびポリプロピレンフィルム基材の表面を平滑にするための蒸発アクリレートコーティングの使用」、RadTech(1996年);ジェイ・アフィニト(J.Affinito)、ピー・マーチン(P.Martin)、エム・グロス(M.Gross)、シー・コロナド(C.Coronado)、およびイー・グリーンウェル(E.Greenwell)著、「光学用途の真空堆積ポリマー/金属多層フィルム」、薄固体フィルム(Thin Solid Films) 270、43−48(1995年);ならびにジェイ・ディー・アフィニト(J.D.Affinito)、エム・イー・グロス(M.E.Gross)、シー・エイ・コロナド(C.A.Coronado)、ジー・エル・グラフ(G.L.Graff)、イー・エヌ・グリーンウェル(E.N.Greenwell)、およびピー・エム・マーチン(P.M.Martin)著、「ポリマー−オキシド透明バリヤー層」、真空コーター学会、第39回年次技術会議予稿集(1996年)に記載されているように、フラッシュ蒸発および放射線架橋性モノマー(たとえば、アクリレートモノマー)の気相堆積、それに続くin situ架橋(たとえば、電子ビーム装置、UV光源、放電装置、または他の好適な装置を用いて)により、架橋高分子層を形成する。所望により、ロールコーティング法(たとえば、グラビアロールコーティング法)またはスプレーコーティング法(たとえば、静電スプレーコーティング法)のような従来のプレポリマーコーティング法を用いて架橋高分子層を適用し、次に、UV線などを用いて架橋させることができる。架橋高分子層の所望の化学組成および厚さは、部分的にMOF支持体の性質に依存するであろう。たとえば、MOF支持体に対して、架橋高分子層は、好ましくは、アクリレートモノマーから形成され、典型的には、わずか数nm〜2マイクロメートルの厚さを有するにすぎないであろう。
【0068】
架橋高分子層は、さまざまな有機材料から形成することができる。好ましくは、適用後、スペーシング層をin situで架橋させる。最も好ましくは、先に記載したように、モノマーのフラッシュ蒸発、気相堆積、および架橋により、架橋高分子層を形成する。揮発可能な(メタ)アクリレートモノマーは、そのような方法に使用するのに好ましく、揮発可能なアクリレートモノマーがとくに好ましい。好ましい(メタ)アクリレートは、約150〜約600、より好ましくは約200〜約400の範囲の数平均分子量を有する。他の好ましい(メタ)アクリレートは、1分子あたりの分子量とアクリレート官能基の数との比の値が、約150〜約600g/モル/(メタ)アクリレート基、より好ましくは約200〜約400g/モル/(メタ)アクリレート基の範囲である。フッ素化(メタ)アクリレートは、より大きい分子量範囲または比、たとえば、約400〜約3000の分子量または約400〜約3000g/モル/(メタ)アクリレート基で使用することができる。支持体を冷却することにより、コーティング効率を改良することができる。とりわけ好ましいモノマーとしては、単独で使用されるかまたは他の多官能性もしくは単官能性(メタ)アクリレート、たとえば、ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シアノエチル(モノ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベータカルボキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジニトリルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ニトロフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、ナフチルオキシエチル(naphthloxyethyl)アクリレート、ユーシービー・ケミカルズ(UCB Chemicals)製のIRR−214環状ジアクリレート、ラド・キュアー・コーポレーション(Rad−Cure Corporation)製のエポキシアクリレートRDX80095、およびそれらの混合物と併用して使用される多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。さまざまな他のキュアー性材料、たとえば、ビニルエーテル、ビニルナフチレン、アクリロニトリル、およびそれらの混合物を、架橋高分子層に組み込むことができる。架橋高分子層の物理的厚さは、部分的にその屈折率におよび部分的に膜スタックの所望の光学特性に依存するであろう。赤外線遮断ファブリー・ペロー干渉スタック中の有機スペーシング層として使用する場合、架橋高分子層は、典型的には、約1.3〜約1.7の屈折率を有し、好ましくは約75〜約200nm、より好ましくは約100〜約150nmの光学的厚さ、および約50〜約130nm、より好ましくは約65〜約100nmの対応する物理的厚さを有するであろう。
【0069】
開示された物品中の好適な層の厚さを設計するために、光学的モデリングを利用することができる。たとえば、ベースコート、架橋高分子スペーシング層、およびトップコートがトリプロピレングリコールジアクリレート(屈折率1.4662)で作製され、金属層がマグネトロンスパッタード銀(屈折率0.154)で作製される5層の赤外線遮断アクリレート/金属/アクリレート/金属/アクリレート光学スタックでコーティングされた厚さ51マイクロメートルのPET支持体の場合、2つの代表的目標構造は、ベースコートからトップコートまでの対応する層の物理的厚さが、129/12/104/12/54nmまたは116/10/116/10/55nmである。
【0070】
架橋高分子スペーシング層は、非架橋高分子スペーシング層よりも優れたいくつかの利点を有する。架橋高分子スペーシング層は、加熱時に非架橋高分子スペーシング層ほど顕著に溶融したり軟化したりしない。したがって、成形時またはラミネーション加工時のように温度および圧力の影響を同時に受けた時、有意に流動したり、変形したり、薄くなったりする可能性は低い。架橋高分子スペーシング層は、高い耐溶媒性があるのに対して、非架橋高分子スペーシング層は、非架橋高分子スペーシング層を形成するのに使用されるような溶媒に溶解したり、かなり軟化したりする可能性がある。架橋高分子スペーシング層は、本発明のフィルムが遭遇する可能性のある液体、たとえば、窓に適用されるクリーニング溶液、および自動車用途のガソリン、油、トランスミッション流体などのような自動車用流体に対してより大きな耐性を有しうる。架橋高分子スペーシング層はまた、類似のポリマーから製造された非架橋高分子スペーシング層と比較して望ましい物理的性質、たとえば、より高いモジュラスおよび剛性、歪みを受けたときのより良好な弾性回復、またはより良好なレジリエンスを有する可能性がある。
【0071】
架橋高分子層への第1の金属層の接着力は、架橋高分子層間に第1の金属層を配置することにより改良することができる。架橋高分子層中に接着促進添加剤または腐食防止添加剤を組み込むことにより、接着力を改良することもできる。これにより、架橋高分子層と第1の金属層との間の界面の表面エネルギーまたは他の適切な特性に影響を及ぼすことができる。好適な接着促進添加剤または腐食防止添加剤としては、メルカプタン類、酸(たとえば、カルボン酸または有機リン酸)、トリアゾール類、染料、および湿潤剤が挙げられる。エチレングリコールビス−チオグリコレート(米国特許第4,645,714号明細書に記載されている)は、とりわけ好ましい添加剤である。添加剤は、好ましくは、第1の金属層の過度の酸化または他の分解を引き起こすことなく所望の度合に増大された接着力を得るのに十分な量で存在する。
【0072】
所望により、追加の架橋高分子スペーシング層および金属層を第1の金属層の上に適用することができる。たとえば、3層の金属層または4層の金属層を含有するスタックは、いくつかの用途に望ましい特性を提供する。各金属層がその各面に隣接して架橋高分子層を有する2〜4層の金属層を含有するスタックは、とくに好ましい。
【0073】
好ましくは、第2の金属層の適用前に下側層に適切な前処理を施すことにより、または下側層中に好適な添加剤を組み込むことにより、第2の金属層の平滑性および連続性ならびに下側層への(たとえば、架橋高分子スペーシング層への)その接着力を向上させる。好ましい前処理としては、先に記載した支持体前処理が挙げられるが、スペーシング層のプラズマ前処理がとくに好ましい。
【0074】
驚くべきことに、上記の前処理の一方または両方を利用した場合、およびスペーシング層の形成に使用されるモノマー混合物中に上記のベースコート層添加剤の一方または両方を組み込んだ場合、電流の影響下における腐食に対する金属層の耐性が著しく向上することをも本発明者らは見いだした。プラズマ処理は好ましい前処理であり、窒素プラズマはとくに好ましい。エチレングリコールビス−チオグリコレートは、モノマー混合物中に組み込むための好ましい添加剤である。
【0075】
最上部の金属層は、好ましくは、上記の層122のような好適な保護層でオーバーコーティングされる。所望により、ロールコーティング法(たとえば、グラビアロールコーティング法)またはスプレーコーティング法(たとえば、静電スプレーコーティング法)のような従来のコーティング法を用いて保護層を適用し、次に、UV線などを用いて架橋することができる。最も好ましくは、先に記載したように、モノマーのフラッシュ蒸発、気相堆積、および架橋により、保護層を形成する。揮発可能な(メタ)アクリレートモノマーは、そのような保護層に使用するのに好ましく、揮発可能なアクリレートモノマーがとくに好ましい。本発明のフィルムが保護層または他の表面層を含み、PVBのような機械的エネルギー吸収材料のシート間にラミネーションされる場合、保護層または他の表面層の屈折率は、PVBとフィルムとの間のなんらかの屈折率差により引き起こされる界面での反射を最小限に抑えるように選択することができる。また、PVBのような機械的エネルギー吸収材料への保護層の接着力を向上させるために、保護層に後処理を施すこともできる。好ましい後処理としては、先に記載した支持体前処理が挙げられるが、フィルムの両面のプラズマ後処理がとくに好ましい。保護層に対する好ましい添加剤としては、先に記載した架橋高分子層添加剤が挙げられる。
【0076】
開示されたフィルムを作製するために便利に使用することのできる装置180を図8に示す。電動リール181aおよび181bにより、MOF支持体182を装置180に通して前進および後退させる。温度制御された回転ドラム183aおよび183b、ならびにアイドラー184a、184b、184c、184d、および184eは、金属スパッタリング適用器185、プラズマ前処理器186、モノマー蒸発器187、およびEビーム架橋装置188を通過するようにMOF支持体182を搬送する。液体モノマー189は、リザーバー190から蒸発器187に供給される。装置180に複数回通すことにより、逐次層をMOF支持体182に適用することができる。種々の前処理、モノマーコーティング、架橋、およびスパッタリングのステップが酸素、水蒸気、塵埃、および他の大気汚染物質により妨害されることがないように、装置180を好適なチャンバー(図8に示されていない)で取り囲んで、真空下で保持したり、または好適な不活性雰囲気を供給したりすることができる。
【0077】
本発明のフィルム中の金属層および架橋高分子層の形成に関するさらに詳細な内容は、「ポリマー−金属赤外干渉フィルター」という名称の同時係属の米国特許出願第10/222,466号明細書中に見いだすことができる。
【0078】
開示されたプレラミネートは、層134のような1層以上の機械的エネルギー吸収層に本発明のフィルムを接合させるにより形成される。機械的エネルギー吸収層は、PVB、ポリウレタン(「PUR」)、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセタール、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、およびサーリン(SURLYN)TM樹脂(イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.duPont de Nemours & Co.))を含めて、当業者の熟知するさまざまな材料から作製することができる。PVBは、機械的エネルギー吸収層の好ましい材料である。機械的エネルギー吸収層の厚さは、所望の用途に依存するであろうが、典型的には約0.3〜約1mmであろう。
【0079】
本発明のMOF支持体、フィルム、またはプレラミネートに、種々の機能層またはコーティングを付加することにより、とくに、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートの表面のうちの1つで、それらの物理的または化学的特性を変化または改良することができる。そのような層またはコーティングとしては、たとえば、製造プロセス時におけるMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの取扱いをより容易する低摩擦コーティングまたはスリップ粒子;MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートに拡散性を付与したり、またはMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートを他のフィルムもしくは表面に隣接して配置したときにウェットアウトもしくはニュートンリングを防止したりする粒子;感圧接着剤またはホットメルト接着剤のような接着剤;隣接層への接着を促進するプライマー;およびMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートを接着剤ロールの形態で使用するときに用いられる低接着性バックサイズ材料を挙げることができる。機能層またはコーティングとしては、耐飛散性、耐貫入性、または耐穿刺引裂性のフィルムおよびコーティング、たとえば、国際公開第01/96115号パンフレットに記載されている機能層を挙げることもできる。追加の機能層またはコーティングとしては、国際公開第98/26927号パンフレットおよび米国特許第5,773,102号明細書に記載されているような振動減衰フィルム層、および水もしくは有機溶媒のような液体、または酸素、水蒸気、もしくは二酸化炭素のようなガスに対してMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートを保護するかまたはそれらに対するMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの透過性を変更するバリヤー層を挙げることができる。これらの機能コンポーネントは、MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの1つ以上の最外層中に組み込んだり、または個別のフィルムまたはコーティングとして適用したりすることができる。
【0080】
いくつかの用途では、たとえば、MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートに染色フィルム層をラミネーションしたり、MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの表面に顔料着色コーティングを適用したり、またはMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの作製に使用される1つ以上の材料中に染料もしくは顔料を組み込んだりすることにより、MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの外観または性能を変化させることが望ましいこともある。染料または顔料は、赤外、紫外、または可視スペクトルの部分を含めて、スペクトルの1つ以上の所定の領域で吸収することができる。染料または顔料は、とくに、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートがいくつかの周波数を透過すると同時に他の周波数を反射する場合、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートの特性を補完するために使用することができる。本発明のMOF支持体、フィルム、またはプレラミネートで利用できるとくに有用な顔料着色層は、国際公開第2001/58989号パンフレットに記載されている。この層は、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネート上にスキン層として、ラミネーション、押出コーティング、または共押出することができる。所望に応じて可視光透過率を変化させるべく、顔料充填レベルを約0.01〜約1.0重量%の間で変化させることができる。UV線に暴露したときに不安定になるおそれのあるMOF支持体またはフィルムのいずれかの内層を保護するために、UV吸収性カバー層を追加することが望ましいこともある。
【0081】
MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートに付加することのできる追加の機能層またはコーティングとしては、たとえば、帯電防止コーティングまたはフィルム;難燃材;UV安定材;耐摩耗性材料またはハードコート材料;光学的コーティング;フォグ除去材料;磁気コーティングもしくはフィルムまたは磁気光学コーティングもしくはフィルム;液晶パネル;エレクトロクロミックパネルまたはエレクトロルミネセンスパネル;写真乳剤;プリズムフィルム;およびホログラフィックフィルムまたは画像が挙げられる。追加の機能層またはコーティングは、たとえば、国際公開第97/01440号パンフレット、同第99/36262号パンフレット、および同第99/36248号パンフレットに記載されている。
【0082】
MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートは、たとえば、インク、または製品識別、方位情報、広告、警告、装飾、もしくは他の情報を表示するために使用されるような他の印刷表示で処理することができる。種々の技術を用いて、たとえば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷、凸版印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、スティップル印刷、レーザー印刷などのような技術を用いて、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネート上に印刷することができる。また、種々のタイプのインク、たとえば、一成分および二成分インク、酸化乾燥インクおよびUV乾燥インク、溶解インク、分散インク、および100%インク系を使用することができる。
【0083】
開示されたフィルムおよびプレラミネートは、多種多様な基材に接合またはラミネーションすることができる。典型的な基材材料としては、ガラスのようなグレージング材料(断熱処理、テンパー処理、ラミネーション処理、アニーリング処理、または熱強化処理が施されていてもよい)およびプラスチック(たとえば、ポリカーボネートおよびポリメチルメタクリレート)が挙げられる。開示されたフィルムおよびプレラミネートは、非平面状基材(とくに、複合的な湾曲を有するもの)と組み合わせるのにとりわけ有用である。フィルムまたはプレラミネートは、好ましくは、ラミネーションおよび脱気の処理時に実質的な亀裂も折り目も生じることなく、そのような非平面状基材に整合させることができる。
【0084】
開示されたフィルム(またはそのようなフィルムを上に形成しうるMOF支持体)は、配向させることが可能であり、場合により、実質的な皺を生じることなくフィルムを非平面状基材に整合させるのを支援するのに十分な条件下で熱セットさせることができる。これは、フィルムをラミネーションさせる非平面状基材が既知の形状または湾曲を有する場合、とくに基材が既知のきわめて複合的な湾曲を有する場合、とりわけ有用である。各面内方向でフィルムまたはMOF支持体の収縮率を個別に制御することにより、ラミネーション時、とくにニップロールラミネーション時、フィルムを制御下で収縮させることができる。たとえば、フィルムをラミネーションさせる非平面状基材が複合的な湾曲を有する場合、フィルムの収縮率を各面内方向でそれらの方向の基材の特定の湾曲特性に一致するように適合させることができる。最大の収縮率を有する面内のフィルムまたはMOF支持体の方向は、好ましくは、最小の湾曲(すなわち最大の曲率半径)を有する基材の寸法にアライメントされる。曲率半径による湾曲の特性づけに加えてまたはその代わりに、所望により、他の測定値(たとえば、基材の主要表面により規定される幾何学的表面から測定される隆起した領域または窪んだ領域の深さ)を使用することもできる。典型的な非平面状基材にラミネーションする場合、フィルム収縮率は、好ましくは、両方の面内方向で約0.4%超、より好ましくは少なくとも1つの面内方向で約0.7%超、最も好ましくは1つの面内方向で少なくとも約1%超であろう。好ましくは、縁部離層または「引込み」を減少させるために、全体的フィルム収縮率を制限する。このため、フィルム収縮率は、好ましくは各面内方向で約3%未満、より好ましくは各面内方向で約2.5%未満である。収縮挙動は、主として、利用されるフィルムまたは支持体の材料、およびフィルムまたは支持体の延伸比、熱セット温度、滞留時間、およびトーイン(最大のレール設定値と対比して測定されるテンター熱セットゾーンにおけるレール間隔の減少)のような因子により支配されるであろう。コーティングもまた、フィルムの収縮特性を変化させうる。たとえば、プライマーコーティングは、横方向(「TD」)の収縮率を約0.2%〜約0.4%減少させ、縦方向(「MD方向」)の収縮率を約0.1〜約0.3%増加させる可能性がある。配向および熱セット装置は大幅に変化しうるので、理想的なプロセス設定値は、典型的には、いずれの場合においても実験的に決定される。目標収縮特性を有するMOF支持体を作製するための技術に関するさらに詳細な内容は、国際公開第01/96104号パンフレットに記載されている。
【0085】
先に述べたように、最初に、開示されたフィルムを1層または複数層の機械的エネルギー吸収層にラミネーションしてプレラミネート140または150のようなプレラミネートを形成し、その後、1枚または複数枚の車両用グレージングシートにラミネーションすることができる。フィルム、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層、および1枚または複数枚のグレージングシートを含有するサンドイッチ体を単一のラミネーションステップで集成することもできる。いずれの場合においても、各ラミネーションステップ時、種々の層の間から空気を除去しなければならない。一般的には、ラミネーション前にフィルムおよび1層または複数層の機械的エネルギー吸収層を、最も外側のフィルム層のTg未満の温度までオーブン中で予備加熱することが好ましいであろう。好ましくは、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層、フィルム、および1枚または複数枚のグレージングシートの間でなんらかの接着力レベルを確保しなければならない。しかしながら、好ましくは、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層は、最終的なラミネーションステップを行う前に流動するのに十分な程度に軟質になってはならない。1層または複数層の機械的エネルギー吸収層は、好ましくは、フィルムが縮小してそれ自体が完成ラミネートの形状をとることができるように、所定の位置でプレラミネートの縁部を固定するのに役立つものでなければならない。ラミネートは、好ましくは、フィルムの縁部で発生す可能性のあるフィルム内の皺または離層を回避するために、オートクレーブ処理後、制御速度で冷却される。脱気は、真空脱気法または先に記載したニップロール法を用いて促進することができる。好ましくは、脱気およびラミネーションは、1つ以上のニップローラーを用いて行われる。代表的なニップロール装置は、米国特許第5,085,141号明細書に示されている。他のそのような装置は、当業者の熟知するものであろう。
【0086】
ラミネーションの後、好ましくは、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層および本発明のフィルムを1枚または複数枚のグレージングシートの輪郭に整合させて最終ラミネーテッドグレージング物品を形成するのに十分な温度まで、オートクレーブ中でラミネートを加熱する。また、ラミネートの種々の層の少なくとも部分的な接合が得られるように、ラミネーション時、十分な圧力を加えなければならない。PVBを含有するラミネートでは、約138℃〜約150℃の温度および約0.5〜約1.5MPaの圧力が典型的である。熱および圧力を加えると、最小限の時間で残留空気を除去しながら(またはPVB中に残留空気を溶解させながら)、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層は、流動して拡がり、ボイドを満たし、均一なサンドイッチ構成体を形成し、そしてラミネート層を強固に接合一体化させる。オートクレーブサイクルは製造業者に依存して有意に変化する可能性があるが、1つの典型的なオートクレーブサイクルでは、(a)温度および圧力を周囲条件から約93℃および約0.55MPaまで約15分間以内で上昇させること、(b)圧力を約0.55MPaに保持しながら約40分間以内で温度を約143℃まで上昇させること、(c)温度を約143℃に保持しながら約10分間以内で圧力を約1.38MPaまで上昇させること、(d)この最大の温度および圧力を約20分間保持すること、(e)約15分間以内で温度および圧力を約38℃および約1MPaまで減少させること、ならびに(f)約4分間以内で圧力を周囲条件まで減少させることが必要とされる。全オートクレーブサイクルは、典型的には、約60分〜約120分である。
【0087】
開示されたフィルムはまた、建築用グレージング、たとえば、米国特許第4,799,745号明細書に記載されているグレージング物品などで利用することができる。そのようなグレージング物品を作製する方法は、当業者には自明なものであろう。たとえば、有用な建築用グレージング物品は、米国特許第4,799,745号明細書中のインタフェース層20の代わりにMOF支持体を使用し、スペーシング層18の代わりに架橋高分子層を使用するにより、作製することができる。完成グレージング物品は、好ましくは、光学的に透明である。図9は、MOF支持体192と、スペーシング層195により分離された第1および第2の金属層194および196を含有するファブリー・ペロースタック193と、を含有するフィルム191を示している。フィルム191は、感圧接着剤の層197を用いてガラスシート198に接合される。
【0088】
開示されたフィルムは、スパッターコーテッド無機誘電体層または溶媒適用非架橋高分子誘電体層を用いて作製されるフィルムよりも非常に迅速に作製することができる。後者の2つの方法では、誘電体層堆積ステップが律速因子であるが、開示された方法では、それよりもかなり迅速に誘電体層を堆積させることが可能である。このほか、開示された方法は、コーティングステップ間でフィルムを取り除くことなく単一のチャンバー内で行うことができるが、報告された溶媒適用非架橋誘電体層は、金属層の堆積が行われたチャンバーの外部で形成されたようにみえる。
【0089】
以下の試験を用いて、本明細書中に開示されているフィルムを評価した。
【0090】
導電率vs歪みの試験
フィルムが導電を停止させるおそれのある歪みパーセントを決定するために、シンテックTM200/Sテンシル・テスター(SINTECHTM 200/S TENSILE TESTER)(イントロン・コーポレーション(Instron Corp.))を用いてフィルムを延伸した。幅25.4mm×長さ約200mmのストリップをフィルムサンプルの中央から切り出した。No.22−201銀ペイント(カティー・カンパニー(Katy Company))を用いてストリップの細い端部の両側をペインティングした。銀ペイントを乾燥させた後、ペインティングされた縁部上に銅を重ねてストリップの各端部に耐久性電極を形成した。作製されたストリップを引張試験機のジョー中に掴持し、ワニ口クリップを用いて銅電極に電源を接続した。101.6mmのゲージ長および25.4mm/分のクロスヘッド速度を用いつつ、4ボルトの定電圧をストリップに供給し、電流の流れを測定し、歪み%に対して記録した。
【0091】
シート抵抗試験
非接触導電率測定装置(デルコム・インストラメンツ・インコーポレーテッド製のモデル717Bベンチトップ・コンダクタンス・モニター(Model 717B Benchtop Conductance Monitor,Delcom Instruments Inc.))を用いて本発明のフィルムのシート抵抗を評価した。
【0092】
太陽熱利得係数および遮蔽係数
値Teは、250nm〜2500nmで試料により透過された太陽エネルギーを全入射太陽エネルギーで割ってパーセントで表される比として定義される。値Aeは、250nm〜2500nmで試料により吸収された太陽エネルギーを全入射太陽エネルギーで割ってパーセントで表される比として定義される。ソーラー特性は、エアマス1.5を用いてASTM E891の日射量データにより算出される。太陽熱利得係数(SHGC)は、
SHGC=Te+0.27(Ae)
として算出される。遮蔽係数(SC)は、所与のグレージングを通過するときの太陽熱利得係数と1枚の標準的な厚さ3.2mmの窓ガラスを通過するときの太陽熱利得係数との比として定義され、
SC=SHGC/87.0
として算出される。
【0093】
次に、以下の実施例を参照しながら、本発明について説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。ここで、とくに明示されていないかぎり、部およびパーセントはすべて重量基準である。
【実施例】
【0094】
実施例1
(層1)厚さ0.05mmのMOF支持体フィルム(スリーエムTM・ソーラー・リフレンティング・フィルム(3MTM Solar Reflecting Film)No.41−4400−0146−3)の長さ約6メートルのセクションを、厚さ0.05mm×幅508mmのPET支持体(デュポン・テイジン・フィルムズ製の453メリネックスTM(453 MELINEXTM,DuPont Teijin Films))の長さ約300メートルのロールに接合した。得られた接合フィルムを図8に示されるようなロールツーロール真空チャンバーに装填した。真空チャンバー内の圧力を3×10-4トルに減少させた。支持体を同時にプラズマ前処理して36.6m/分のウェブ速度でアクリレートをコーティングした。プラズマ前処理では、102sccmの窒素ガス流動を行って窒素雰囲気下で1000ワットのパワー(402ボルトおよび2.5アンペア)で操作されるクロムターゲットおよび非平衡dcマグネトロンを利用した。アクリレートコーティングでは、液体モノマー混合物の容器をガラス鐘に入れて約1ミリトルまで圧力を減少させることにより1時間脱ガスされたIRR214アクリレート(ユーシービー・ケミカルズ(UCB Chemicals))とラウリルアクリレートとの50:50混合物を利用した。超音波噴霧器により脱ガスモノマーを276℃に保持された蒸発チャンバー中に2.45ml/分の流量でポンプ送入した。−21℃のドラム温度を用いて、モノマー蒸気を移動ウェブ上に凝縮させ、8.0kVおよび6.5ミリアンペアで操作されるシングルフィラメント銃を用いて電子ビーム架橋させた。
【0095】
(層2)ウェブ方向を逆転させた。36.6m/分で再び操作して、アクリレート表面をプラズマ処理し、マグネトロンスパッタード銀をコーティングした。プラズマ前処理は、前と同じであったが、ただし、309ボルトおよび3.34アンペアであった。10,000ワットのパワー(570ボルトおよび7.88アンペア)、21℃のドラム温度、および93.2sccmのアルゴンガスフローのアルゴン雰囲気で、銀をスパッタリングした。
【0096】
(層3)ウェブ方向を再び逆転させた。36.6m/分で再び操作して、銀表面をプラズマ前処理してから、高分子スペーシング層の堆積および架橋を行った。プラズマ前処理では、クロムターゲットおよび1000ワットのパワー(308ボルトおよび3.33のアンペア)を利用した。−23℃のドラム温度および先に記載した他のモノマー堆積条件を用いて、モノマー蒸気を移動ウェブ上に凝縮させ、8.0kVおよび6.0ミリアンペアで操作されるシングルフィラメント銃を用いて電子ビーム架橋させた。
【0097】
(層4)ウェブ方向を再び逆転させた。36.6m/分で再び操作して、アクリレート表面をプラズマ前処理し、マグネトロンスパッタード銀をコーティングした。プラズマ前処理は、前と同じであったが、ただし、316ボルトおよび3.22のアンペアを使用した。前と同じように銀をスパッタリングした。ただし、567ボルト、17.66アンペア、20℃のドラム温度、および90sccmのアルゴンガスフローであった。
【0098】
(層5)ウェブ方向を再び逆転させた。銀表面をプラズマ前処理してから、保護層の堆積を行った。プラズマ前処理は、層3のときと同じであった。−23℃のドラム温度および先に記載した他のモノマー堆積条件を用いて、モノマー蒸気を移動ウェブ上に凝縮させ、8.0kVおよび6.2ミリアンペアで操作されるシングルフィラメント銃を用いて電子ビーム架橋させた。
【0099】
得られた赤外線遮断フィルムおよび非コーテッド支持体の光学特性を、それぞれ、図10および図11に示す。図10および図11のいずれにおいても、曲線TおよびRは、それぞれ、透過率および反射率を示す。約700〜約1100nmの反射曲線を調べることによりわかるように、得られた赤外線遮断フィルムは有意に拡張された反射帯域を呈した。
【0100】
実施例2および3
実施例1の方法を用いて、オプションのトップコートプラズマ後処理を施して5層の赤外線遮断アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学スタックを同一のMOF支持体上に形成した。得られたフィルムの外観、透過率(Trans−ルミナスY(Luminous Y)(Tvis))、反射(Refl−ルミナスY(Luminous Y))、太陽熱利得係数、遮蔽係数、および面積抵抗率を評価した。加工条件および評価結果を以下の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示される結果は、約73%程度の高いTvisおよび3.9オーム/スクエア程度の低いシート抵抗を有するコーテッドフィルムの形成を示している。また、導電率vs歪み試験を用いて実施例3のフィルムの2つのサンプルを評価した。フィルムサンプルは両方とも、50%までまたはそれ以上の歪みで電流が流れた。
【0103】
比較例1
導電率vs歪み試験を用いて、透明銀層および酸化インジウム無機誘電体をベースにした市販品(XIRTM 75フィルム、サウスウォール・テクノロジーズ・インコーポレーテッド(Southwall Technologies Inc.))を評価した。サンプルは、わずか1%の歪みを受けたときに破損した。
【0104】
実施例4
実施例2および実施例3のフィルムの片面または両面にオプションのプラズマ後処理を施し、その後、2枚の2mmガラスシート間に配置された厚さ0.05mmの2枚のPVBシートから作製されたサンドイッチ体の中央にフィルムの304mm×304mmサンプルを配置することにより、ガラスシート間にラミネーションした。得られたラミネート集成体を真空により脱気し、次に、オートクレーブ処理にかけて光学的に透明なグレージング物品を形成した。グレージング物品を評価し、それらの圧縮剪断強度を決定した。以下の表2に、フィルムの実施例番号、スタックの最上層の上からのプラズマ後処理または支持体の下面へのプラズマ後処理の有無、および測定された圧縮剪断強度を示す。
【0105】
【表2】
【0106】
本発明の種々の修正形態および変更形態は本発明から逸脱することなく当業者に自明なものとなろう。本発明は、単に例示を目的として本明細書に明記された事項に制限されるものでない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折性誘電体多層反射フィルムおよびそれから作製される光学物品に関する。
【背景技術】
【0002】
グレージング材料は、グレージングの性能を向上させるように工学的処理の施された1層以上の機能層を備えることもある。重要な機能層の1層は、赤外線の透過率を減少させる。赤外線遮断機能層は、典型的には、望ましくない太陽放射線を反射または吸収する部分透明な金属化または染色ポリマーフィルム構成体で作製される。そのような機能層が記載されている参考文献としては、米国特許第4,590,118号明細書、同第4,639,069号明細書、および同第4,799,745号明細書が挙げられる。
【0003】
とくに有用な赤外線遮断機能層は、赤外線遮断ファブリー・ペロー1/4波長スタックから形成することができる。そのようなスタックでは、透明誘電体スペーシング層により、2層以上の部分反射性の薄い金属もしくは金属合金の層を分離させる。金属もしくは金属合金の層(本明細書中では簡潔にするために「金属層」と記すこともある)は、典型的には、元素のまたは合金化された銀、銅、または金を含有する。誘電体層は、典型的には、無機酸化物(有機溶液から適用されるかもしくはスパッター堆積を用いて適用される)または有機ポリマー(溶媒溶液にポリマーを溶解させることにより適用される)を含有する。誘電体層の光学的厚さ(誘電体層の物理的厚さ×その面内屈折率として定義される)は、好ましくは、所望の通過帯域の中心波長の約1/4である。通過帯域内にある波長を有する光は、大部分が薄金属層を透過する。通過帯域を超える波長を有する光は、大部分が薄金属層により反射されるかまたは弱め合う干渉により除去される。そのような赤外線遮断ファブリー・ペロー1/4波長スタックが記載されている参考文献としては、米国特許第4,590,118号明細書、同第4,639,069号明細書、および同第4,799,745号明細書が挙げられる。
【0004】
赤外線遮断機能層は、誘電体材料の交互層を含有する複屈折性非金属フィルムからも作製されてきた。複屈折性誘電体多層フィルム(多層光学フィルムすなわち「MOF」とも呼ぶことができる)は、対象となるスペクトル領域で所望の量の光を反射または吸収するとともにスペクトルの可視領域で十分な可視光を透過して実質的に透明になるように工学的処理を施すことができる。多層光学フィルムは、好ましくは、第1の屈折率を有する第1の材料と、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の材料との交互層を備える。多層光学フィルムは、非常に大きいかまたは存在しないブルースター角(p偏光光の反射率がゼロになる角度)を有することができる。このフィルムを用いると、p偏光光に対する反射率が入射角と共に徐々に減少するか、入射角に依存しないか、または法線から入射角が離れるにつれて増加する多層ミラーを作製することができる。多層光学フィルムは、任意の入射方向に対して高い反射率(sおよびp偏光光の両方について)を有することができる。そのような多層光学フィルムが記載されている参考文献としては、米国特許第5,699,188号明細書、同第5,882,774号明細書、および同第6,049,419号明細書、ならびにPCT出願国際公開第97/01778号パンフレットが挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
透明金属化フィルム構成体を含有する機能層を建築用および車両用安全グレージングなどのグレージングに組み込む試みがなされてきた。しかしながら、これらの試みは、限られた成功を収めたにすぎなかった。非平面状グレージングの製造は、とくに困難である。これらの障害は、スタック層の1層以上の脆弱性、金属層の腐食傾向、またはラミネーション処理時、オートクレーブ処理時、および後続のグレージングの使用時に生じる延伸、加熱、および冷却により引き起こされる金属層間の離れた位置における局所的変化が原因の一部をなしうると本発明者らは考える。これらの障害は、機能層をポリビニルブチラール(「PVB」)のような耐引裂性機械的エネルギー吸収層に隣接して配置した場合に増大しうると本発明者らは考える。PVBシートは、典型的には、有意量の可塑剤および他の補助剤を含有する。これらの補助剤は、赤外線遮断機能層中に移動して、腐食、膨潤、ファブリー・ペロースタックの金属層間の離れた位置における局所的変化、または製造上もしくは性能上の問題を引き起こす可能性のある他の影響をもたらしうると本発明者らは考える。
【0006】
複屈折性誘電体多層支持体の上に薄金属層および架橋高分子層をいずれかの順序で形成することにより、場合により、その上に1層以上の追加の薄金属層または架橋高分子層を形成することにより、改良された機能フィルムを取得しうることを本発明者らは見いだした。また、層間接着性を向上させるようにフィルム内の1層または複数層の薄金属層と隣接層との界面を改変することにより、さらなる改良を達成しうることを本発明者らは見いだした。
【0007】
本出願は、
a)対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する可視光透過性複屈折性誘電体多層支持体を提供することと、
b)該支持体の上に、いずれかの順序で、
i)可視光透過性の金属もしくは金属合金の層と、
ii)架橋高分子層と、
を形成することと、
を含む、フィルムの作製方法であって、
該フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように、該金属もしくは金属合金の層の厚さが設定される、方法を開示する。別の言い方をすれば、完成フィルムの反射帯域は、支持体単独の反射帯域よりも広い。
【0008】
本出願はまた、グレージング材料の層と、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(該支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層、および架橋高分子層、を含むフィルムと、を集成することと、該グレージング材料と該フィルムとを接合一体化させて単一の物品にすることと、を含む、グレージング物品の作製方法を開示する。
【0009】
本出願はまた、
a)以下、
i)第1のグレージング材料層と、
ii)第1の機械的エネルギー吸収層と、
iii)対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層、および架橋高分子層、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムと、
iv)第2の機械的エネルギー吸収層と、
v)第2のグレージング材料層と、
を集成することと、
b)これらの層間から残留空気を除去することと、
c)加熱および加圧によりこれらの層を接合一体化させて単一の物品にすることと、
を含む、ラミネート物品の作製方法を開示する。
【0010】
本出願はまた、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含むフィルムを開示する。
【0011】
本出願はまた、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムに接合された少なくとも1層のグレージング材料の層を含むグレージング物品を開示する。
【0012】
本出願はまた、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムに接合された少なくとも1層の機械的エネルギー吸収材料の層を含む安全グレージングプレラミネートを開示する。
【0013】
本出願はまた、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が(支持体単独の反射帯域と対比して)拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムを含む少なくとも1つのウィンドシールド、後窓、側窓、または天窓を含むグレージングを備える車両を開示する。
【0014】
上記の一般的な概要は、閲覧者の便宜のために提供されている。それらは、折に触れて補正される可能性のある本明細書に添付されている特許請求の範囲の代わりになるものではなく、それと混同してはならない。なぜなら、本発明の範囲は、特許請求の範囲により規定されるからである。
【0015】
図面中の種々の図において、参照記号が同じであれば、それらは同じ要素であることを意味する。図面中の要素は、一定の縮尺率にはなっていない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】界面を形成する2層の高分子層よりなるスタックの概略斜視図である。
【図2A】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図2B】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図2C】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図2D】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図2E】本発明のフィルムの概略断面図である。
【図3】接着剤バッキングを有する本発明のフィルムの概略断面図である。
【図4】本発明のプレラミネートの概略断面図である。
【図5】本発明のプレラミネートの概略断面図である。
【図6】本発明のウィンドシールドの概略断面図である。
【図7】図6のウィンドシールドの斜視図である。
【図8】本発明の方法を実施するための装置の概略図である。
【図9】本発明の建築用グレージングの概略断面図である。
【図10】実施例1に記載されている複屈折性誘電体多層支持体と金属層とを有するフィルムの透過率および反射率を示すグラフである。
【図11】金属層を含まない図10の複屈折性誘電体多層支持体の透過率および反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のフィルム中または物品中の種々の層の位置に関して、「〜の上に(atop)」、「〜上に(on)」、「最上部の〜」などのような向きを表す用語が使用される場合、水平な支持体層に対する1層以上の層の相対位置を意味する。フィルムまたは物品が製造中または製造後に空間内のいかなる特定の向きをも有することを意図したものではない。
【0018】
「架橋」ポリマーとは、網状ポリマーを形成するように共有化学結合により(通常は、分子または基を架橋することにより)ポリマー鎖が連結一体化されているポリマーを意味する。架橋ポリマーは、一般的には、不溶性により特性づけられるが、適切な溶媒の存在下で膨潤可能なものもある。「ポリマー」という用語は、ホモポリマーおよびコポリマーを包含し、さらに共押出によりまたはエステル交換などの反応により混和性ブレンドの状態で形成されうるホモポリマーまたはコポリマーをも包含する。「コポリマー」および「コポリエステル」という用語は、ランダムコポリマーとブロックコポリマーの両方を包含する。
【0019】
「伸張可能な」金属もしくは金属合金の層とは、可視光透過性フィルム中に組み込んだ場合、電気的連続性を損なうことなく、かつ約0.25メートルの距離で肉眼により検出したときに金属もしくは金属合金の層の表面に目に見える不連続部を形成することなく、面内方向に少なくとも3%延伸することのできる層を意味する。
【0020】
「可視光透過性」の支持体、層、フィルム、または物品とは、支持体、層、フィルム、または物品の法線軸に沿って測定されるスペクトルの可視部における透過率Tvisが少なくとも約20%であることを意味する。「赤外線反射性」の支持体、層、フィルム、または物品とは、支持体、層、フィルム、または物品が、法線角近傍で(たとえば、約6°の入射角で)測定したときに約700nm〜約2000nmの波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも約50%を反射することを意味する。「光」とは、太陽放射線を意味する。
【0021】
「反射帯域」とは、当該フィルムまたは物品により実質的に反射される光の波長の範囲を意味する。フィルムまたは他の物品が多層支持体と、支持体とは異なる追加の層と、を含む場合、フィルムまたは他の物品の反射帯域は、全フィルムまたは全物品の光の実質的な反射波長の範囲が(1)多層支持体単独および(2)追加の層単独に対応する光の実質的な反射波長の範囲よりも大きい波長範囲をカバーするときに、「拡張された」と言われる。
【0022】
「非平面状」の表面または物品(たとえば、ガラスまたは他のグレージング材料の表面または物品)とは、表面または物品が連続的、断続的、一方向的、または複合的な湾曲を有することを意味する。「複合的な湾曲」を有する表面または物品とは、表面または物品が単一点から2つの異なる非共線的方向に湾曲していることを意味する。
【0023】
「実質的な亀裂も折り目も生じることなく」とは、約1メートル、好ましくは約0.5メートルの距離で肉眼により検出したときにフィルムの表面にも目視可能な金属もしくは金属合金の層の表面にも目に見える不連続部が存在しない状態でラミネーションされて物品を形成しているフィルムを意味する。「実質的な皺を生じることなく」とは、約1メートル、好ましくは約0.5メートルの距離で肉眼により検出したときに平滑フィルム表面の収縮の結果として生じる小さな稜も溝も存在しない状態でラミネーションされて物品を形成しているフィルムを意味する。「光学的に透明な」とは、約1メートル、好ましくは約0.5メートルの距離で肉眼により検出したときにはっきりと識別可能な歪みもヘイズも欠陥も存在しないラミネーテッド物品を意味する。
【0024】
図1について説明する。この図には、二層のMOF支持体4が斜視図で示されている。典型的には、支持体は、数十もしくは数百さらには数千のそのような層を有するであろう。層6は、x軸およびy軸の方向に面内屈折率n1xおよびn1yを有し、z軸方向に屈折率n1zを有する。層8は、x軸およびy軸の方向に面内屈折率n2xおよびn2yを有し、z軸方向に屈折率n2zを有する。入射光線7は、層6を通過するときに屈折され、界面7で反射され、層6をもう一度通過するときに屈折され、そして反射光線9として層6を出る。多層支持体の反射特性(単独で考えた場合)は、支持体内の層の面内屈折率により決定される。とくに、反射率は、x、y、およびz方向の各層の材料の屈折率の関係に依存する。MOF支持体は、好ましくは、2つの屈折率(典型的にはx軸およびy軸に沿った屈折率、すなわちnxおよびny)がほぼ等しくかつ第3の屈折率(典型的にはz軸に沿った屈折率、すなわちnz)と異なる少なくとも1種の一軸性複屈折性材料を用いて、形成される。
【0025】
図2Aには、フィルム10が断面概略図で示されている。層12は延伸されており、隣接層14の屈折率n2よりも高い屈折率n1を有する。一体化されて、層12、14のスタックは、MOF支持体15を形成する。架橋高分子層16は、支持体15の上に位置する。金属もしくは金属合金の層18(先に述べたように、単純に「金属層」と記すこともある)は、層16の上に位置する。光線20のような入射光線は、金属層18の第1の表面、層18と16との界面22、層16と隣接層12との界面24、および隣接層12と14との間の26a、26bなどのような界面で部分反射される。層18は、層18およびフィルム10が全体として可視光透過性であるようにするのに十分な程度に薄い。層18は、フィルム10の反射帯域が全体として拡張されるようにするのに十分な程度に厚い。このため、そのようなフィルムでは、金属層だけまたはMOF支持体だけを含有するフィルムと比較して拡張された反射帯域(たとえば、赤外線に対する反射帯域)を有するフィルムを提供するように、金属層18をMOF支持体15と組み合わせる。架橋高分子層16は金属層18と密接した状態にあり、フィルム10が延伸されたときまたは他の形で歪みを受けたとき、金属層18の亀裂、皺、または分離を阻止するものと考えられる。フィルム10で架橋高分子層を使用すれば、近傍の金属層に損傷を与えたり、そのような金属層のスタックの間隔を変化させたりすることなく、より容易に向きを変えることのできるフィルム10の作製が可能になる。
【0026】
図2Bには、他のフィルム28が断面概略図で示されている。フィルム28はフィルム10に類似しているが、金属層18は、支持体15と架橋高分子層29との間に位置する。層18は、層18およびフィルム28が全体として可視光透過性であるようにするのに十分な程度に薄い。層18は、フィルム28の反射帯域が全体として拡張されるようにするのに十分な程度に厚い。架橋高分子層29は金属層18と密接した状態にあり、フィルム28が延伸されたときまたは他の形で歪みを受けたとき、金属層18の亀裂、皺、または分離を阻止するものと考えられる。層29はまた、金属層18を覆う保護層の機能も担う。
【0027】
図2Cには、第3のフィルム30が断面概略図で示されている。フィルム30はフィルム10および28に類似しているが、金属層18は、その各面に隣接して架橋高分子層32、34を有する。架橋高分子層32、34は両方とも、金属層18と密接した状態であり、フィルム30が延伸されたときまたは他の形で歪みを受けたとき、金属層18の亀裂、皺、または分離を阻止するのにとくに有効である。
【0028】
図2Dには、第4のフィルム40が断面概略図で示されている。フィルム40では、架橋高分子層42は、金属層18の上に位置し、金属層18と第2の金属層44との間のスペーシング層としての役割を果たす。架橋高分子保護層46は、第2の金属層44の上に位置する。一体化されて、層18、42、44は、ファブリー・ペロー干渉フィルタースタック48を形成する。スタック48中の金属層18、44は、層18、44、およびフィルム40が全体として可視光透過性であるようにするのに十分な程度に薄い。層18、44、および架橋高分子スペーシング層42は、フィルム40の反射帯域が全体として拡張されるようにするのに十分な程度に厚い。
【0029】
図2Eには、第5のフィルム50が断面概略図で示されている。フィルム50はフィルム30に類似しているが、第2の架橋高分子層52は、第2の金属層44の上に位置し、第2の金属層44と第3の金属層54との間のスペーシング層としての役割を果たす。架橋高分子保護層56は、第3の金属層54の上に位置する。層18、44、54は、層18、44、54、およびフィルム50が全体として可視光透過性であるようにするのに十分な程度に薄い。層18、44、54、および架橋高分子スペーシング層42、52は、フィルム50の反射帯域が全体として拡張されるようにするのに十分な程度に厚い。
【0030】
図3には、接着剤付きフィルム60が断面概略図で示されている。フィルム60は、図2Dのフィルム40に似ているが、支持体15の最下部の表面上に接着剤の層62を有する。接着剤があるため、非平面状表面および複合的な湾曲を有する表面を含めてさまざまな表面上にフィルム60を取り付けることが可能である。
【0031】
図4は、プレラミネート140を示している。プレラミネート140は、フィルム130の保護層122に接合されたPVB製の機械的エネルギー吸収層134を含む。フィルム130は、2種のポリエステルの交互層(図4には示されていない)で作製されたMOF支持体112を含む。ファブリー・ペロー干渉スタック114は、支持体112の上に位置する。スタック114は、銀で作製された第1の薄層116、架橋アクリレートポリマーで作製された架橋高分子スペーシング層118、および銀で作製された第2の薄金属層120を含む。架橋高分子ベースコート層132は、スタック114と支持体112との間に位置する。架橋アクリレートポリマーで作製されたオプションの保護層122は、スタック114の上に位置する。
【0032】
図5は、他のプレラミネート150を示している。プレラミネート150は、フィルム140のMOF支持体112に接合された第2の機械的エネルギー吸収層134を含む。これは、図4に示されるプレラミネートよりも耐久性のあるプレラミネートを提供する。
【0033】
図6は、ラミネーテッド安全ウィンドシールド160の断面図を示している。ウィンドシールド160は、連続的湾曲表面を有し、その曲率半径は、ウィンドシールド160の中央領域(図6に破線としてのみ示されている)の近傍で比較的大きく、より鋭く湾曲した端部領域161の近傍で比較的小さい値に減少する。これらはすべて、「ポリマー−金属赤外線干渉フィルター」という名称の同時係属の米国特許出願第10/222,466号明細書に記載されているとおりである。図6に示されるように、2枚のガラス片32aと32bとの間で脱気およびプレラミネート150の取付けを行うためにニップローラー166、168が使用されている。
【0034】
図7は、図6のウィンドシールド160の斜視図を示している。湾曲領域161、162、163、および164は、複合的な湾曲を有する。ウィンドシールド160を形成するために使用される脱気/ラミネーションおよびオートクレーブのステップ時にプレラミネート150がいくらか収縮したとしても、ウィンドシールド160を介して皺のない景観がより容易に得られるであろう。
【0035】
開示されたフィルムは、多層光学フィルム支持体を含む。さまざまなMOF支持体を利用することができる。好適なMOF支持体を作製する好ましい方法では、好適な多層高分子フィルムを二軸配向させること(2つの軸に沿って延伸すること)が必要とされる。隣接層が異なる応力誘起複屈折率を有する場合、多層光学フィルムの二軸配向を行うと、両方の軸に平行な平面に関して隣接層の屈折率間に差異を生じ、両方の偏光面の光が反射されるようになる。一軸性複屈折性材料は、正または負のいずれかの一軸性複屈折率を有しうる。z方向の屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも大きい場合、正の一軸性複屈折率を生じる。z方向の屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも小さい場合、負の一軸性複屈折率を生じる。
【0036】
n2x=n2y=n2zに一致するようにn1zを選択して多層光学フィルムを二軸配向させた場合、そのような層間の界面はp偏光光に対してブルースター角をもたず、すべての入射角で一定の反射率が存在する。2つの互いに垂直な面内軸で配向された多層光学フィルムは、層の数、f比(二成分多層光学フィルムの光学的厚さの比、米国特許第6,049,419号明細書参照)、および屈折率のような因子に依存して並外れて高いパーセントの入射光を反射することができ、高効率のミラーである。
【0037】
MOF支持体中の層の厚さはまた、多層光学フィルムの反射特性に影響を及ぼす。本明細書中で論じられるMOFの層の物理的厚さはすべて、なんらかの配向または他の加工を行った後で測定される。隣接する層対(一方が高屈折率を有し、他方が低屈折率を有する)は、好ましくは、反射される光の波長の1/2である合計光学的厚さを有する。二成分系で最大の反射率を達成するために、MOF支持体の個々の層は、好ましくは、反射される光の波長の1/4である光学的厚さを有するが、他の理由で、層対内の光学的厚さの他の比を選択することも可能である。たとえば、近赤外光を反射するようにMOFの層の厚さを選択し、斜入射角でさえも反射帯域がスペクトルの可視領域内にシフトしないように反射帯域端を赤外領域内に配置することにより、高入射角でさえもスペクトルの可視領域で赤外MOF支持体を透明にすることができる。
【0038】
好ましいMOF支持体は、任意の入射方向のsおよびp偏光光の両方に対して高反射性であり、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域にわたり少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%の平均反射率を有する。対象となる波長領域は、目的の用途に依存して大幅に変化する可能性がある。好ましい実施形態では、対象となる波長領域は、赤外領域(約700nm〜約2000nm)内にあり、フィルムは、その領域で少なくとも幅100nmの帯域にわたり入射放射線を反射するように工学的処理に付される。好ましくは、そのようなIR反射性MOF支持体はまた、550nmにおいて少なくとも約70%の可視光透過率を有するであろう。
【0039】
IR反射性MOF支持体の好ましい一実施形態では、MOF支持体は、約1200nmを超えるIR領域で生じる一次反射帯域からスペクトルの可視領域で生じるより高次の反射による可視色を除去するように設計された二成分狭帯域多層光学フィルムである。ゼロ度の観察角でこのMOF支持体により遮断される(すなわち、透過されない)光の帯域幅は、約700〜1200nmである。非法線角で可視色をさらに減少させるために、短波長帯域端は、典型的には、反射帯域が最大使用角でスペクトルの可視領域内にシフトしないように、長波長可視帯域端からIR側へ約100〜150nmだけシフトされる。これにより、法線角で約850nm〜約1200nmを反射する狭帯域IR反射性MOF支持体が提供される。1/4波長スタックでは、そのようなMOF支持体の層対は、好ましくは、近赤外光を反射するように425〜600nmの範囲の光学的厚さ(反射させたい光の波長の1/2)を有する。より好ましくは、1/4波長スタックでは、そのようなIR反射性MOF支持体は、近赤外光を反射するように212〜300nmの範囲の光学的厚さ(反射させたい光の波長の1/4)をそれぞれ有する個々の層を有する。
【0040】
MOF支持体の他の実施形態では、MOF支持体中の層対は、さまざまな相対厚さを有する。本明細書中では、これを層の厚さ勾配と呼ぶ。この相対厚さは、拡幅された反射帯域にわたり所望の反射帯域幅を達成するように選択される。たとえば、各層対が前の層対の厚さよりも特定のパーセントだけ厚くなるようにMOF支持体の厚さを横切って一定の比率で層対の厚さを増大させることにより、層の厚さ勾配を線形にしてもよい。また、MOF支持体の一方の主要表面から他方の主要表面まで、層の厚さを減少させ、次に、増大させ、次に、再び減少させてもよいし、または米国特許第6,157,490号明細書などに記載されているように一方または両方の帯域端の鮮鋭度を増大させるように設計された交互層厚さ分布をもたせてもよい。
【0041】
MOF支持体のさらに他の実施形態では、MOF支持体は、米国特許第5,360,659号明細書に記載されているような6層の交互反復単位を有する拡張帯域端二成分IR反射性フィルム構成体を含みうる。この構成では、約380〜約700nmの可視波長領域で望ましくない二次、三次、および四次の反射が除去されるとともに、約700〜約2000nmの赤外波長領域の光が反射される。四次よりも高次の反射は、一般的には、スペクトルの可視領域ではなく紫外領域に存在するか、または当たり障りがない程度に低い強度であろう。そのようなMOF支持体は、6層の交互反復単位が約.778A.111B.111A.778B.111A.111Bの相対光学的厚さを有する第1(A)および第2(B)の高分子材料の交互層を有する。反復単位でわずか6層が使用されるにすぎないので、材料がより効率的に使用され、作製が比較的簡単である。また、そのような実施形態では、MOF支持体の厚さを横切って先に記載したような反復単位の厚さ勾配を導入することが望ましい。
【0042】
MOF支持体のさらに他の実施形態では、二成分MOF支持体は、約1200〜2000nmの波長の赤外光を反射する上記の6層の交互反復単位を有する交互層の第1の部分と、AB反復単位および実質的に等しい光学的厚さを有し約700〜1200nmの波長の赤外光を反射する交互層の第2の部分と、を利用する。交互層のそのような組合せは、ハイブリッド設計と呼ばれ、赤外波長領域を横切って光の拡張反射を生じる。このハイブリッド設計は、米国特許第5,360,659号明細書などに記載されているように提供しうるが、本明細書に記載のフィルムのいずれにも有用であるという点で、より幅広い用途を有する。角度によるいかなる知覚色変化をも最小限に抑えるように赤外スペクトル内に反射帯域を配置すべく、交互層の両方の部分の層の厚さを調整することができる。
【0043】
MOF支持体のさらに他の実施形態では、MOF支持体は、3種以上の光学的に識別可能なポリマーを含みうる。第3のまたは後続のポリマーは、たとえば、MOF支持体内の第1のポリマーと第2のポリマーとの間の接着促進層として、光学的目的のためのスタックの追加の成分として、光学スタック間の保護境界層として、スキン層として、機能コーティングとして、または任意の他の目的のために、利用することができる。したがって、第3のまたは後続のポリマーの組成物が存在したとしても、限定されるものではない。3種以上の識別可能なポリマーを含有するIR反射性MOF支持体の例としては、米国再発行特許第34,605号明細書に記載されているものが挙げられる。米国再発行特許第34,605号明細書には、3種の異なる実質的に透明な高分子材料A、B、およびCを含みかつABCBの反復単位を有するフィルムが記載されている。層は、約90nm〜約450nmの光学的厚さを有し、各高分子材料は、異なる屈折率niを有する。また、好ましくは、MOF支持体の厚さを横切って層の厚さを単調増加させることにより、そのようなMOF支持体の厚さを横切って層の厚さ勾配を導入することができる。好ましくは、三成分系では、第1の高分子材料(A)は、第2の高分子材料(B)と少なくとも約0.03だけ屈折率が異なり、第2の高分子材料(B)は、第3の高分子材料(C)と少なくとも約0.03だけ屈折率が異なり、そして第2の高分子材料(B)の屈折率は、第1(A)および第3(C)の高分子材料のそれぞれの屈折率の中間である。コポリマーまたはポリマーの混和性ブレンドを利用することにより、所望の屈折率を有するように高分子材料のいずれかまたはすべてを合成することが可能である。
【0044】
MOF支持体のさらに他の実施形態は、米国特許第6,207,260号明細書に記載されている。その特許の光学フィルムおよび他の光学体は、スペクトルの第1の領域で少なくとも1つの偏光電磁放射線に対して一次反射帯域を呈するとともに、第1の反射帯域の少なくとも二次、好ましくは少なくとも三次以上の高調波を除去する。一次高調波の反射パーセントは、本質的に一定に保たれるか、または入射角の関数として増加する。これは、反復順序ABCで配列された高分子材料A、B、およびCからMOF支持体の少なくとも一部分を形成することにより達成される。ここで、Aは、互いに直交する軸x、y、およびzに沿ってそれぞれ屈折率nxA、nyA、およびnzAを有し、Bは、軸x、y、およびzに沿ってそれぞれ屈折率nxB、nyB、およびnzBを有し、そしてCは、軸x、y、およびzに沿ってそれぞれ屈折率nxC、nyC、およびnzCを有する。軸zは、フィルムまたは光学体の平面に直交し、nxA>nxB>nxCまたはnyA>nyB>nyCであり、かつnzC≧nzB≧nzAである。好ましくは、差nzA−nzBおよびnzB−nzCの少なくとも一方は、約−0.05よりも小さいかまたはそれに等しい。これらの拘束条件内でMOF支持体を設計することにより、とくに、一次反射帯域がスペクトルの赤外領域にある場合、入射角による第一高調波反射の実質的減少を伴うことなく、二次、三次、および四次以上の反射の少なくともいくらかの組合せを除去することができる。
【0045】
MOF支持体のさらに他の実施形態では、角度による知覚色変化を最小限に抑えるようにスペクトルの可視領域から離して反射帯域を選択的に配置する場合、上記のMOF支持体のいずれかを、MOF支持体の光学効率を増加させる「ギャップフィラー」成分と組み合わせることができる。そのような成分は、法線角において、可視スペクトルの縁部とIR反射帯域の短波長帯域端との間の領域のIR線を吸収または反射する働きをする。そのようなMOF支持体は、米国特許第6,049,419号明細書中に、より完全に記載されている。
【0046】
スタック中の層に供すべく選択される材料はまた、MOF支持体の反射特性を決定する。多くの異なる材料を使用することが可能であり、所与の用途の材料の正確な選択は、特定の軸に沿って種々の光学層間で得られる屈折率の所望の一致および不一致ならびに完成フィルムの所望の物理的性質に依存する。簡潔にするために、以下に記載の考察では、本明細書中で第1のポリマーおよび第2のポリマーと記される2種の材料だけから作製された層対を含有するMOF支持体に対象を絞る。考察のために、第1のポリマーは大きい絶対値の応力光学係数を有すると仮定する。このため、延伸時、第1のポリマーは大きい複屈折率を生じうる。用途に応じて、MOF支持体の平面内の2つの直交する方向間で、1つ以上の面内方向とMOF支持体フィルム平面に垂直な方向との間で、またはこれらの1つの組合せで、複屈折率を生じるようにすることが可能である。所望の光学特性が完成MOF支持体に付与されるように、第1のポリマーは、延伸後、複屈折率を保持しなければならない。
【0047】
反射型またはミラー型MOF支持体を作製するために、屈折率基準をフィルム平面内のいずれの方向にも同じように適用する。いずれの所与の層についても直交する面内方向の屈折率が等しくなるようにまたはほぼ等しくなるようにするのが一般的である。しかしながら、好ましくは、第1のポリマーの面内屈折率は、第2のポリマーの面内屈折率とできるかぎり大きく異なる。配向前に第1のポリマーが第2のポリマーよりも高い屈折率を有する場合、第1のポリマーの面内屈折率は、好ましくは、延伸方向で増大し、z軸屈折率は、好ましくは、第2のポリマーに一致するように減少する。同様に、配向前に第1のポリマーが第2のポリマーよりも低い屈折率を有する場合、第1のポリマーの面内屈折率は、好ましくは、延伸方向で減少し、z軸屈折率は、好ましくは、第2のポリマーに一致するように増加する。第2のポリマーは、好ましくは、延伸時、ほとんどまたはまったく複屈折率を生じないか、またはその面内屈折率が完成MOF支持体中の第1のポリマーのものとできるかぎり大きく異なるように、逆向き(正−負または負−正)の複屈折率を生じる。ある程度の偏光特性をもMOF支持体にもたせるようにするのであれば、これらの基準を偏光フィルムに対して先に列挙した基準と適切に組み合わせることも可能である。
【0048】
ほとんどの用途では、好ましくは、第1および第2のMOF支持体ポリマーはいずれも、対象となる帯域幅内に認知しうる吸収バンドをもたない。このため、帯域幅内の入射光はすべて、反射または透過されるであろう。しかしながら、いくつかの適用では、第1および第2のポリマーの一方または両方が特定の波長を完全にまたは部分的に吸収することが有用であることもある。
【0049】
以下でより詳細に説明されるように、MOF支持体は、オプションの非光学層を含有することもできる。好ましくは、MOF支持体の光学層(たとえば、第1および第2のポリマー層)およびMOF支持体のオプションの非光学層は、ポリマーで構成される。ポリマーは、コモノマーを用いて形成することができる。好ましくは、そのようなコモノマーの使用により、MOF支持体層の応力光学係数および延伸後の複屈折率の保持性が実質的に低減されるようであってはならない。実際上、これによりコモノマー含有量に実用上限が課されることになろう。その正確な値は、利用されるコモノマーの選択により異なるであろう。しかしながら、コモノマーの組込みにより他の特性が改良されるのであれば、光学特性がいくらか損なわれても一般に許容されうる。
【0050】
ポリエステルは、MOF支持体の作製に使用するのに好ましい第1のポリマーであり、一般的には、カルボキシレートモノマーとグリコールモノマーとの反応により生成されるカルボキシレートおよびグリコールのサブユニットを含む。各カルボキシレートモノマーは、2つ以上のカルボン酸官能基またはエステル官能基を有し、各グリコールモノマーは、2つ以上のヒドロキシ官能基を有する。カルボキシレートモノマーはすべて同一であってもよいし、2つ以上の異なるタイプの分子が存在してもよい。同じことが、グリコールモノマーにもあてはまる。「ポリエステル」という用語には、グリコールモノマーと炭酸のエステルとの反応から誘導されるポリカーボネートも包含される。
【0051】
MOF支持体中のポリエステル層のカルボキシレートサブユニットの形成に使用するのに好ましいカルボキシレートモノマーとしては、たとえば、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびその異性体;テレフタル酸;イソフタル酸;フタル酸;アゼライン酸;アジピン酸;セバシン酸;ノルボルネンジカルボン酸;ビ−シクロオクタンジカルボン酸;1,6−シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体;t−ブチルイソフタル酸、トリメリト酸、ナトリウムスルホン化イソフタル酸;2,2’−ビフェニルジカルボン酸およびその異性体;ならびにメチルエステルまたはエチルエステルのようなこれらの酸の低級アルキルエステルが挙げられる。これに関連して、「低級アルキル」という用語は、C1〜C10直鎖状または分枝状アルキル基を意味する。
【0052】
ポリエステル層のグリコールサブユニットの形成に使用するのに好ましいグリコールモノマーとしては、エチレングリコール;プロピレングリコール;1,4−ブタンジオールおよびその異性体;1,6−ヘキサンジオール;ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール;ジエチレングリコール;トリシクロデカンジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびその異性体;ノルボルナンジオール;ビシクロ−オクタンジオール;トリメチロールプロパン;ペンタエリトリトール;1,4−ベンゼンジメタノールおよびその異性体;ビスフェノールA;1,8−ジヒドロキシビフェニルおよびその異性体;ならびに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0053】
ポリエチレンナフタレート(「PEN」)は、MOF支持体の作製に使用するのにとくに有用なポリエステルであり、第1のポリマーとして選択されることが多い。PENは、たとえば、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとの反応により、作製することができる。ポリエチレン2,6−ナフタレートは、とりわけ好ましいPENである。PENは、大きい正の応力光学係数を有し、延伸後、効果的に複屈折率を保持し、可視領域内にほとんどまたはまったく吸光度をもたない。PENはまた、等方性状態で大きい屈折率を有する。偏光面が延伸方向に平行な場合、550nmの波長の偏光された入射光に対するその屈折率は、約1.64から約1.9程度の高さまで増加する。分子配向の増加に伴って、PENの複屈折率が増加する。分子配向は、より大きな延伸比でMOF支持体を延伸し他の延伸条件を一定に保持することにより、増大させることが可能である。第1のポリマーとして好適な他の半結晶性ナフタレンジカルボン酸のポリエステルとしては、たとえば、ポリブチレン2,6−ナフタレート(「PBN」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、およびそれらのコポリマーが挙げられる。非ポリエステルポリマーもまた、MOF支持体の形成に有用である。たとえば、ポリエーテルイミドをPENまたはPENコポリマー(「coPEN」)のようなポリエステルと併用することにより、多層反射ミラーを形成することができる。PETおよびポリエチレン(たとえば、商品名エンゲージ(ENGAGE)TM 8200としてダウ・ジュポン・エラストマーズ(Dow−Dupont Elastomers)から入手可能なポリ(エチレン−co−オクテン)または「PE−PO」)のような他のポリエステル/非ポリエステルの組合せを使用することもできる。他の好適な第1のポリマーは、たとえば、米国特許第6,268,961号明細書、PCT出願国際公開第99/36248号パンフレットおよび同第99/36262号パンフレット、ならびに米国特許第6,498,683号明細書に記載されている。他の好ましい第1のポリマーは、90モル%のジメチルナフタレンジカルボキシレートおよび10モル%のジメチルテレフタレートから誘導されるカルボキシレートサブユニットと、100モル%のエチレングリコールサブユニットから誘導されるグリコールサブユニットと、を有する0.48dL/gの固有粘度(「IV」)のcoPENである。屈折率は、ほぼ1.63である。このポリマーは、本明細書中では「低融点PEN(90/10)」と記されている。さらに他の好ましい第1のポリマーは、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)から入手可能な0.74dL/gのIVを有するPETである。
【0054】
先に述べたように、MOF支持体中の第2のポリマーは、好ましくは、第2のポリマーの屈折率が完成MOF支持体において少なくとも1方向で同一の方向の第1のポリマーの屈折率と有意に異なるように、選択される。高分子材料は典型的には分散性であるので、すなわち、それらの屈折率は波長により異なるので、これらの条件は、対象となる特定のスペクトル帯域幅に関連させて考えなければならない。以上の考察から当然のことながら、第2のポリマーの選択は、本発明のフィルムの目的の用途だけでなく、第1のポリマーに対して行われる選択ならびにMOF支持体およびフィルムの加工条件にも依存する。第2の光学層は、第1のポリマーのガラス転移温度に適合するガラス転移温度および第1のポリマーの等方性屈折率に類似した屈折率を有するさまざまな第2のポリマーから作製することができる。好適な第2のポリマーの例としては、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート、およびメタクリレートのようなモノマーから作製されるビニルポリマーおよびコポリマーが挙げられる。そのようなポリマーのさらなる例としては、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)のようなポリメタクリレート、およびアイソタクチックまたはシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。他の好適な第2のポリマーとしては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミド酸、およびポリイミドのような縮合ポリマーが挙げられる。MOF支持体中の第2の光学層はまた、ポリエステルおよびポリカーボネートのようなポリマーから形成することもできる。
【0055】
MOF支持体の好ましい第2のポリマーとしては、商品名CP71およびCP80としてイネオス・アクリリックス・インコーポレーテッド(Ineos Acrylics,Inc.)から入手可能なようなPMMAのホモポリマーおよびPMMAよりも低いガラス転移温度を有するポリエチルメタクリレート(「PEMA」)が挙げられる。このほかの好ましい第2のポリマーとしては、PMMAのコポリマー(「coPMMA」)、たとえば、商品名パースペックス(PERSPEX)TM CP63としてイネオス・アクリリックス・インコーポレーテッド(Ineos Acrylics,Inc.)から入手可能なような75重量%のメチルメタクリレート(「MMA」)モノマーと25重量%のエチルアクリレート(「EA」)モノマーとから作製されるcoPMMA;MMAコモノマーユニットとn−ブチルメタクリレート(「nBMA」)コモノマーユニットとで形成されるcoPMMA;商品名ソレフ(SOLEF)TM 1008としてソルペイ・ポリマーズ・インコーポレーテッド(Solvay Polymers,Inc.)から入手可能なようなPMMAとポリ(ビニリデンフルオリド)(「PVDF」)とのブレンドが挙げられる。さらに他の好ましい第2のポリマーとしては、上述したPE−POエンゲージ(ENGAGE)TM 8200のようなポリオレフィンコポリマー;商品名Z9470としてフィナ・オイル・アンド・ケミカル・カンパニー(Fina Oil and Chemical Co.)から入手可能なポリ(プロピレン−co−エチレン)(「PPPE」);および商品名レクスフレックス(REXFLEX)TM W111としてハンツマン・ケミカル・コーポレーション(Huntsman Chemical Corp.)から入手可能なアタクチックポリプロピレン(「aPP」)とアイソタクチックポリプロピレン(「iPP」)とのコポリマーが挙げられる。第2の光学層はまた、官能化ポリオレフィン、たとえば、商品名バイネル(BYNEL)TM 4105としてイー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.)から入手可能なような線状低密度ポリエチレン−g−無水マレイン酸(「LLDPE−g−MA」)から;商品名エクデル(ECDEL)TMとしてイーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)から入手可能なようなコポリエステルエーテルエラストマー(「COPE」)から;シンジオタクチックポリスチレン(「sPS」)から;テレフタル酸(「coPET」)をベースとするコポリマーまたはブレンドから;第2のグリコール、たとえば、シクロヘキサンジメタノールを利用するPETのコポリマー(「PETG」)から;ならびに商品名THVTMとしてスリーエム・カンパニー(3M Company)から入手可能なフルオロポリマーから作製することもできる。
【0056】
IR反射性MOF支持体フィルム中の光学層用の第1/第2のポリマーのとりわけ好ましい組合せとしては、PEN/PMMA、PET/PMMAまたはPET/coPMMA、PEN/COPE、PET/COPE、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/coPET、PEN/PETG、およびPEN/THVが挙げられる。これらの組合せのいくつかは、入射光の角度に対して一定の反射率を提供する(すなわち、ブルースター角が存在しない)。たとえば、特定の波長において、二軸配向PENの場合、面内屈折率を1.76にして、面内z軸屈折率を1.49まで低下させるようにすることが可能である。多層構成体中の第2のポリマーとしてPMMAを使用する場合、同一の波長におけるその屈折率を3つの方向すべてにおいて1.495にすることが可能である。他の例は、PET/COPE系であり、この場合、PETの類似の面内およびz軸屈折率を1.66および1.51にしてCOPEの等方性屈折率を1.52にすることが可能である。
【0057】
MOF支持体は、場合により、1層以上の非光学層、たとえば、1層以上の非光学スキン層または1層以上の非光学内部層、具体例としては、光学層のパケット間の保護境界層(「PBL」)を含む。非光学層を使用することにより、MOF支持体にさらなる強度もしくは剛性を付与したり、または加工時もしくは加工後、損害もしくは損傷からそれを保護したりすることができる。いくつかの用途では、1層以上の犠牲保護スキンを組み込むことが望ましいこともある。この場合、使用前にスキン層をMOF支持体からまたは完成フィルムの下面から取り除くことができるように、スキン層とMOF支持体との間の界面接着力を調節する。非光学層の材料はまた、種々の特性、たとえば、本発明のMOF支持体またはフィルムの耐引裂性、耐穿刺性、靭性、耐候性、および耐溶剤性を付与または改良するように選択可能である。典型的には、MOF支持体または本発明のフィルムにより透過、偏光、または反射される光の少なくとも一部分がこれらの層中をも伝播するように、1層以上の非光学層を配置する(言い換えれば、MOF支持体または本発明のフィルムを通って伝播するかまたはそれらにより反射される光の経路にこれらの非光学層を配置することができる)。非光学層は、好ましくは、対象となる波長領域にわたり、MOF支持体または本発明のフィルムの反射特性に実質的に影響を及ぼさない。極端に湾曲した基材にラミネーションしたときに亀裂も皺も生じないフィルムを提供するために、MOF支持体の光学層の特性と一緒に、結晶化度および収縮特性のような非光学層の特性を考慮することが必要になることもある。
【0058】
そのようなMOF支持体中の非光学層は、多くの適切な材料から選択することができる。非光学層の材料を選択する際に考慮すべき因子としては、破断伸びパーセント、ヤング率、引裂強度、内部層への接着力、対象となる電磁帯域幅における透過および吸収のパーセント、光学的透明度またはヘイズ、振動数の関数としての屈折率、テクスチャー、粗さ、溶融熱安定性、分子量分布、溶融レオロジー、共押出性、光学層および非光学層の材料間の混和性および相互拡散速度、粘弾性応答、延伸条件下における緩和および結晶化の挙動、使用温度における熱安定性、耐候性、コーティングへの接着能力、ならびに種々のガスおよび溶媒に対する浸透性が挙げられる。当然ながら、先に述べたように、選択される非光学層材料はMOF支持体の光学特性に有害な光学特性を有していないことが重要である。非光学層は、MOF支持体の第1および第2の光学層で使用されるポリマーのいずれをも含めて、ポリエステルのようなさまざまなポリマーから形成可能である。いくつかの実施形態では、非光学層に供すべく選択される材料は、第2の光学層に供すべく選択される材料に類似しているかまたは同一であろう。たとえば、スキン層にcoPEN、coPET、または他のコポリマー材料を使用することにより、MOF支持体の「層間剥離」(歪みにより誘起される結晶化および配向の方向へのポリマー分子の大多数のアライメントにより生じるMOF支持体の破壊分離)を減少させることができる。coPENを含有する非光学層は、典型的には、第1の光学層を配向させるために使用される条件下で延伸したとき、ごくわずかに配向されるにすぎないであろう。したがって、歪みにより誘起される結晶化はほとんど起こらない。
【0059】
好ましくは、MOF支持体中の第1の光学層、第2の光学層、およびオプションの非光学層のポリマーは、流動の乱れを生じることなく共押出することができるように類似のレオロジー特性(たとえば、溶融粘度)を有するように選択される。好ましくは、MOF支持体中の第2の光学層、スキン層、およびオプションの他の非光学層は、第1の光学層のガラス転移温度未満であるかまたはそれよりも約40℃高い温度を超えることのないガラス転移温度(「Tg」)を有する。より好ましくは、第2の光学層、スキン層、およびオプションの非光学層のTgは、第1の光学層のTg未満である。長さ配向(「LO」)ローラーを使用してMOF支持体を配向させる場合、低いTgの材料がローラーに付着するおそれがあるので、所望の低いTgのスキン材料を使用できない可能性がある。LOローラーを使用しないのであれば、この制約は問題になることはない。いくつかの用途では、好ましいスキン層材料として、PMMAおよびポリカーボネートが挙げられる。なぜなら、これらの材料は、耐久性があり、UV線からMOF支持体を保護する能力があるからである。
【0060】
フィードブロックおよびダイの壁に沿った高剪断条件からMOF支持体光学層を保護するために、その製造時にMOF支持体の一方または両方の主要表面上にスキン層を共押出することもできる。このほか、製造時、スキン層を構成するポリマー溶融体中にUV安定剤などの1種以上の好適な添加剤を混合し、得られたスキン層をMOF支持体層の片面または両面に共押出することにより、望ましい化学的または物理的性質を有するスキン層を得ることができる。所望により、MOF支持体の製造時、追加の層をスキン層の外側に共押出したり;別々のコーティング操作でMOF支持体上にそれらをコーティングしたり;あるいは個別のフィルム、フォイル、または剛性もしくは半剛性補強基材としてMOF支持体にそれらをラミネーションしたりすることが可能である。
【0061】
MOF支持体中のスキン層および他のオプションの非光学層は、MOF支持体の光学層と比べて、厚さを厚くしたり、薄くしたり、または同一にしたりすることができる。スキン層およびオプションの非光学層の厚さは、一般的には、MOF支持体の個々の光学層の少なくとも1つの厚さの少なくとも4倍、典型的には少なくとも10倍であり、少なくとも100倍にすることも可能である。非光学層の厚さは、特定の厚さを有するMOF支持体を作製すべく変化させることができる。MOF支持体の全体的な物理的厚さは、所望の用途に依存するであろう。好ましくは、MOF支持体は、約0.01〜約1mmの厚さである。
【0062】
とりわけ好ましいMOF支持体を作製するための技術は、上述したPCT出願国際公開第99/36248号パンフレットおよび同第01/96104号パンフレット中に詳細に記載されている。
【0063】
本発明のフィルムは、MOF支持体の上に金属もしくは金属合金(metal)の層および架橋高分子層を含む。これらの層は、いずれかの順序で、すなわち、MOF支持体と架橋高分子層との間に金属もしくは金属合金の層を配置して、またはMOF支持体と金属もしくは金属合金の層との間に架橋高分子層を配置して、存在しうる。好ましくは、2層以上の金属もしくは金属合金の層を開示されたフィルム中に存在させる。先に述べたように、これらの金属もしくは金属合金の層は、簡潔にするために金属層と記されることもある。最も好ましくは、開示されたフィルムは、金属層および架橋高分子スペーシング層により赤外線遮断ファブリー・ペロー光学干渉スタックを形成した状態で、架橋高分子スペーシング層により分離された少なくとも2層の金属層を含む。所望により、2つ以上のそのようなスタックをフィルム中に存在させることができる。追加のスタックは、前のスタックの上に追加の架橋高分子層および金属層を配置することにより便利に形成することができる。
【0064】
フィルム中の第1、第2、および任意の追加の金属層は、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましい金属としては、元素の銀、金、銅、ニッケル、クロム、およびステンレス鋼が挙げられるが、銀がとくに好ましい。これらの金属を互いにまたは他の金属と混合した状態で含有する合金または分散体を利用することもできる。金属層は、同一の厚さを持つ必要はない。好ましくは、金属層は、連続的になるようにするのに十分な程度に厚く、フィルムおよびフィルムを含有する物品が所望の可視光透過度を有することを保証するのに十分な程度に薄い。好ましくは、金属層の物理的厚さ(光学的厚さと対比される)は、約3〜約50nm、より好ましくは約4〜約15nmである。第1および任意の追加の金属層は、好ましくは、スパッタリング(たとえば、カソードスパッタリングまたは平面マグネトロンスパッタリング)、蒸発(たとえば、抵抗蒸発または電子ビーム蒸発)、化学気相堆積、メッキなどのようなフィルム金属化技術分野で利用される技術を用いて適用される。
【0065】
それらの光学的機能に加えて、アンテナ、電磁遮蔽のような目的で、およびフォグ除去、ミスト除去、フロスト除去、またはアイス除去のような薄膜加熱用途で、金属層を使用することができる。薄膜加熱用途では、実質的な通電能力が必要になることもある。好ましくは、そのような薄膜加熱用途では、たとえば、米国特許第3,529,074号明細書、同第4,782,216号明細書、同第4,786,783号明細書、同第5,324,374号明細書、および同第5,332,888号明細書に示されるように、母線を用いて2層以上の金属化フィルム層を電気的に並列に接続して一体化させる。「可撓性導電性赤外干渉フィルター」という名称の同時係属の米国特許出願第10/222,449号明細書および「耐久性透明EMI遮蔽フィルム」という名称の同時係属の米国特許出願第10/222,465号明細書に、より詳細に記載されているように、架橋高分子スペーシング層により分離された複数の通電性金属層の組合せは、湾曲、屈曲、および延伸を受けたときに離層または破損に対して増大された耐性を有するスタックを提供する。金属層内の非常に小さい引掻傷または破損でさえも、フィルムの通電性実施形態の初期故障を引き起こす可能性がある。とくに、引掻傷または破損が金属層を通過する電流の流れの方向に垂直な場合、そのような破損は、ホットスポット形成が原因であることが多い。好ましくは、層は、0.15W/cm2を超える電力をフィルムに印加した後で導電率を保持するであろう。
【0066】
好ましくは、支持体の適切な前処理により、第1の金属層の平滑性および連続性ならびに支持体へのその接着力を向上させる。好ましい前処理レジメンでは、反応性または非反応性雰囲気(たとえば、プラズマ、グロー放電、コロナ放電、誘電体バリヤー放電、もしくは大気圧放電)の存在下における支持体の放電前処理;化学的前処理;火炎前処理;または米国特許第3,601,471号明細書および同第3,682,528号明細書に記載されている酸化物および合金のような核形成層の適用が必要とされる。これらの前処理は、支持体の表面が続いて適用される金属層に対して受容性になることを保証するうえで役立つ。プラズマ前処理が、とくに好ましい。さらにとくに好ましい前処理レジメンでは、先に論述した図4の層132のような無機または有機ベースコート層を支持体にコーティングし、場合により、続いて、以上に記載したプラズマまたは他の前処理の1つを用いてさらなる前処理を行うことが必要とされる。有機ベースコート層、とりわけ架橋高分子ベースコート層は、とくに好ましい。したがって、好ましい実施形態では、架橋高分子層は、MOF支持体と金属層との間に位置する。
【0067】
架橋高分子層は、MOF支持体に(または支持体の上の第1の金属層に)さまざまな方法で適用することができる。最も好ましくは、米国特許第4,696,719号明細書、同第4,722,515号明細書、同第4,842,893号明細書、同第4,954,371号明細書、同第5,018,048号明細書、同第5,032,461号明細書、同第5,097,800号明細書、同第5,125,138号明細書、同第5,440,446号明細書、同第5,547,908号明細書、同第6,045,864号明細書、同第6,231,939号明細書、および同第6,214,422号明細書;PCT出願国際公開第00/26973号パンフレット;ディー・ジー・ショウ(D.G.Shaw)およびエム・ジー・ラングロイス(M.G.Langlois)著、「ペーパーおよびポリマーのウェブをコーティングするための新しい気相堆積法」、第6回国際真空コーティング会議(1992年);ディー・ジー・ショウ(D.G.Shaw)およびエム・ジー・ラングロイス(M.G.Langlois)著、「アクリレート薄膜を気相堆積させるための新しい高速プロセス:最新版」、真空コーター学会、第36回年次技術会議予稿集(1993年);ディー・ジー・ショウ(D.G.Shaw)およびエム・ジー・ラングロイス(M.G.Langlois)著、「金属化フィルムのバリヤー性を改良するための気相堆積アクリレートコーティングの使用」、真空コーター学会、第37回年次技術会議予稿集(1994年);ディー・ジー・ショウ(D.G.Shaw)、エム・レーリング(M.Roehrig)、エム・ジー・ラングロイス(M.G.Langlois)、およびシー・シェーハン(C.Sheehan)著、「ポリエステルおよびポリプロピレンフィルム基材の表面を平滑にするための蒸発アクリレートコーティングの使用」、RadTech(1996年);ジェイ・アフィニト(J.Affinito)、ピー・マーチン(P.Martin)、エム・グロス(M.Gross)、シー・コロナド(C.Coronado)、およびイー・グリーンウェル(E.Greenwell)著、「光学用途の真空堆積ポリマー/金属多層フィルム」、薄固体フィルム(Thin Solid Films) 270、43−48(1995年);ならびにジェイ・ディー・アフィニト(J.D.Affinito)、エム・イー・グロス(M.E.Gross)、シー・エイ・コロナド(C.A.Coronado)、ジー・エル・グラフ(G.L.Graff)、イー・エヌ・グリーンウェル(E.N.Greenwell)、およびピー・エム・マーチン(P.M.Martin)著、「ポリマー−オキシド透明バリヤー層」、真空コーター学会、第39回年次技術会議予稿集(1996年)に記載されているように、フラッシュ蒸発および放射線架橋性モノマー(たとえば、アクリレートモノマー)の気相堆積、それに続くin situ架橋(たとえば、電子ビーム装置、UV光源、放電装置、または他の好適な装置を用いて)により、架橋高分子層を形成する。所望により、ロールコーティング法(たとえば、グラビアロールコーティング法)またはスプレーコーティング法(たとえば、静電スプレーコーティング法)のような従来のプレポリマーコーティング法を用いて架橋高分子層を適用し、次に、UV線などを用いて架橋させることができる。架橋高分子層の所望の化学組成および厚さは、部分的にMOF支持体の性質に依存するであろう。たとえば、MOF支持体に対して、架橋高分子層は、好ましくは、アクリレートモノマーから形成され、典型的には、わずか数nm〜2マイクロメートルの厚さを有するにすぎないであろう。
【0068】
架橋高分子層は、さまざまな有機材料から形成することができる。好ましくは、適用後、スペーシング層をin situで架橋させる。最も好ましくは、先に記載したように、モノマーのフラッシュ蒸発、気相堆積、および架橋により、架橋高分子層を形成する。揮発可能な(メタ)アクリレートモノマーは、そのような方法に使用するのに好ましく、揮発可能なアクリレートモノマーがとくに好ましい。好ましい(メタ)アクリレートは、約150〜約600、より好ましくは約200〜約400の範囲の数平均分子量を有する。他の好ましい(メタ)アクリレートは、1分子あたりの分子量とアクリレート官能基の数との比の値が、約150〜約600g/モル/(メタ)アクリレート基、より好ましくは約200〜約400g/モル/(メタ)アクリレート基の範囲である。フッ素化(メタ)アクリレートは、より大きい分子量範囲または比、たとえば、約400〜約3000の分子量または約400〜約3000g/モル/(メタ)アクリレート基で使用することができる。支持体を冷却することにより、コーティング効率を改良することができる。とりわけ好ましいモノマーとしては、単独で使用されるかまたは他の多官能性もしくは単官能性(メタ)アクリレート、たとえば、ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シアノエチル(モノ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベータカルボキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジニトリルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ニトロフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、ナフチルオキシエチル(naphthloxyethyl)アクリレート、ユーシービー・ケミカルズ(UCB Chemicals)製のIRR−214環状ジアクリレート、ラド・キュアー・コーポレーション(Rad−Cure Corporation)製のエポキシアクリレートRDX80095、およびそれらの混合物と併用して使用される多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。さまざまな他のキュアー性材料、たとえば、ビニルエーテル、ビニルナフチレン、アクリロニトリル、およびそれらの混合物を、架橋高分子層に組み込むことができる。架橋高分子層の物理的厚さは、部分的にその屈折率におよび部分的に膜スタックの所望の光学特性に依存するであろう。赤外線遮断ファブリー・ペロー干渉スタック中の有機スペーシング層として使用する場合、架橋高分子層は、典型的には、約1.3〜約1.7の屈折率を有し、好ましくは約75〜約200nm、より好ましくは約100〜約150nmの光学的厚さ、および約50〜約130nm、より好ましくは約65〜約100nmの対応する物理的厚さを有するであろう。
【0069】
開示された物品中の好適な層の厚さを設計するために、光学的モデリングを利用することができる。たとえば、ベースコート、架橋高分子スペーシング層、およびトップコートがトリプロピレングリコールジアクリレート(屈折率1.4662)で作製され、金属層がマグネトロンスパッタード銀(屈折率0.154)で作製される5層の赤外線遮断アクリレート/金属/アクリレート/金属/アクリレート光学スタックでコーティングされた厚さ51マイクロメートルのPET支持体の場合、2つの代表的目標構造は、ベースコートからトップコートまでの対応する層の物理的厚さが、129/12/104/12/54nmまたは116/10/116/10/55nmである。
【0070】
架橋高分子スペーシング層は、非架橋高分子スペーシング層よりも優れたいくつかの利点を有する。架橋高分子スペーシング層は、加熱時に非架橋高分子スペーシング層ほど顕著に溶融したり軟化したりしない。したがって、成形時またはラミネーション加工時のように温度および圧力の影響を同時に受けた時、有意に流動したり、変形したり、薄くなったりする可能性は低い。架橋高分子スペーシング層は、高い耐溶媒性があるのに対して、非架橋高分子スペーシング層は、非架橋高分子スペーシング層を形成するのに使用されるような溶媒に溶解したり、かなり軟化したりする可能性がある。架橋高分子スペーシング層は、本発明のフィルムが遭遇する可能性のある液体、たとえば、窓に適用されるクリーニング溶液、および自動車用途のガソリン、油、トランスミッション流体などのような自動車用流体に対してより大きな耐性を有しうる。架橋高分子スペーシング層はまた、類似のポリマーから製造された非架橋高分子スペーシング層と比較して望ましい物理的性質、たとえば、より高いモジュラスおよび剛性、歪みを受けたときのより良好な弾性回復、またはより良好なレジリエンスを有する可能性がある。
【0071】
架橋高分子層への第1の金属層の接着力は、架橋高分子層間に第1の金属層を配置することにより改良することができる。架橋高分子層中に接着促進添加剤または腐食防止添加剤を組み込むことにより、接着力を改良することもできる。これにより、架橋高分子層と第1の金属層との間の界面の表面エネルギーまたは他の適切な特性に影響を及ぼすことができる。好適な接着促進添加剤または腐食防止添加剤としては、メルカプタン類、酸(たとえば、カルボン酸または有機リン酸)、トリアゾール類、染料、および湿潤剤が挙げられる。エチレングリコールビス−チオグリコレート(米国特許第4,645,714号明細書に記載されている)は、とりわけ好ましい添加剤である。添加剤は、好ましくは、第1の金属層の過度の酸化または他の分解を引き起こすことなく所望の度合に増大された接着力を得るのに十分な量で存在する。
【0072】
所望により、追加の架橋高分子スペーシング層および金属層を第1の金属層の上に適用することができる。たとえば、3層の金属層または4層の金属層を含有するスタックは、いくつかの用途に望ましい特性を提供する。各金属層がその各面に隣接して架橋高分子層を有する2〜4層の金属層を含有するスタックは、とくに好ましい。
【0073】
好ましくは、第2の金属層の適用前に下側層に適切な前処理を施すことにより、または下側層中に好適な添加剤を組み込むことにより、第2の金属層の平滑性および連続性ならびに下側層への(たとえば、架橋高分子スペーシング層への)その接着力を向上させる。好ましい前処理としては、先に記載した支持体前処理が挙げられるが、スペーシング層のプラズマ前処理がとくに好ましい。
【0074】
驚くべきことに、上記の前処理の一方または両方を利用した場合、およびスペーシング層の形成に使用されるモノマー混合物中に上記のベースコート層添加剤の一方または両方を組み込んだ場合、電流の影響下における腐食に対する金属層の耐性が著しく向上することをも本発明者らは見いだした。プラズマ処理は好ましい前処理であり、窒素プラズマはとくに好ましい。エチレングリコールビス−チオグリコレートは、モノマー混合物中に組み込むための好ましい添加剤である。
【0075】
最上部の金属層は、好ましくは、上記の層122のような好適な保護層でオーバーコーティングされる。所望により、ロールコーティング法(たとえば、グラビアロールコーティング法)またはスプレーコーティング法(たとえば、静電スプレーコーティング法)のような従来のコーティング法を用いて保護層を適用し、次に、UV線などを用いて架橋することができる。最も好ましくは、先に記載したように、モノマーのフラッシュ蒸発、気相堆積、および架橋により、保護層を形成する。揮発可能な(メタ)アクリレートモノマーは、そのような保護層に使用するのに好ましく、揮発可能なアクリレートモノマーがとくに好ましい。本発明のフィルムが保護層または他の表面層を含み、PVBのような機械的エネルギー吸収材料のシート間にラミネーションされる場合、保護層または他の表面層の屈折率は、PVBとフィルムとの間のなんらかの屈折率差により引き起こされる界面での反射を最小限に抑えるように選択することができる。また、PVBのような機械的エネルギー吸収材料への保護層の接着力を向上させるために、保護層に後処理を施すこともできる。好ましい後処理としては、先に記載した支持体前処理が挙げられるが、フィルムの両面のプラズマ後処理がとくに好ましい。保護層に対する好ましい添加剤としては、先に記載した架橋高分子層添加剤が挙げられる。
【0076】
開示されたフィルムを作製するために便利に使用することのできる装置180を図8に示す。電動リール181aおよび181bにより、MOF支持体182を装置180に通して前進および後退させる。温度制御された回転ドラム183aおよび183b、ならびにアイドラー184a、184b、184c、184d、および184eは、金属スパッタリング適用器185、プラズマ前処理器186、モノマー蒸発器187、およびEビーム架橋装置188を通過するようにMOF支持体182を搬送する。液体モノマー189は、リザーバー190から蒸発器187に供給される。装置180に複数回通すことにより、逐次層をMOF支持体182に適用することができる。種々の前処理、モノマーコーティング、架橋、およびスパッタリングのステップが酸素、水蒸気、塵埃、および他の大気汚染物質により妨害されることがないように、装置180を好適なチャンバー(図8に示されていない)で取り囲んで、真空下で保持したり、または好適な不活性雰囲気を供給したりすることができる。
【0077】
本発明のフィルム中の金属層および架橋高分子層の形成に関するさらに詳細な内容は、「ポリマー−金属赤外干渉フィルター」という名称の同時係属の米国特許出願第10/222,466号明細書中に見いだすことができる。
【0078】
開示されたプレラミネートは、層134のような1層以上の機械的エネルギー吸収層に本発明のフィルムを接合させるにより形成される。機械的エネルギー吸収層は、PVB、ポリウレタン(「PUR」)、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセタール、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、およびサーリン(SURLYN)TM樹脂(イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.duPont de Nemours & Co.))を含めて、当業者の熟知するさまざまな材料から作製することができる。PVBは、機械的エネルギー吸収層の好ましい材料である。機械的エネルギー吸収層の厚さは、所望の用途に依存するであろうが、典型的には約0.3〜約1mmであろう。
【0079】
本発明のMOF支持体、フィルム、またはプレラミネートに、種々の機能層またはコーティングを付加することにより、とくに、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートの表面のうちの1つで、それらの物理的または化学的特性を変化または改良することができる。そのような層またはコーティングとしては、たとえば、製造プロセス時におけるMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの取扱いをより容易する低摩擦コーティングまたはスリップ粒子;MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートに拡散性を付与したり、またはMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートを他のフィルムもしくは表面に隣接して配置したときにウェットアウトもしくはニュートンリングを防止したりする粒子;感圧接着剤またはホットメルト接着剤のような接着剤;隣接層への接着を促進するプライマー;およびMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートを接着剤ロールの形態で使用するときに用いられる低接着性バックサイズ材料を挙げることができる。機能層またはコーティングとしては、耐飛散性、耐貫入性、または耐穿刺引裂性のフィルムおよびコーティング、たとえば、国際公開第01/96115号パンフレットに記載されている機能層を挙げることもできる。追加の機能層またはコーティングとしては、国際公開第98/26927号パンフレットおよび米国特許第5,773,102号明細書に記載されているような振動減衰フィルム層、および水もしくは有機溶媒のような液体、または酸素、水蒸気、もしくは二酸化炭素のようなガスに対してMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートを保護するかまたはそれらに対するMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの透過性を変更するバリヤー層を挙げることができる。これらの機能コンポーネントは、MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの1つ以上の最外層中に組み込んだり、または個別のフィルムまたはコーティングとして適用したりすることができる。
【0080】
いくつかの用途では、たとえば、MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートに染色フィルム層をラミネーションしたり、MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの表面に顔料着色コーティングを適用したり、またはMOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの作製に使用される1つ以上の材料中に染料もしくは顔料を組み込んだりすることにより、MOF支持体、フィルム、もしくはプレラミネートの外観または性能を変化させることが望ましいこともある。染料または顔料は、赤外、紫外、または可視スペクトルの部分を含めて、スペクトルの1つ以上の所定の領域で吸収することができる。染料または顔料は、とくに、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートがいくつかの周波数を透過すると同時に他の周波数を反射する場合、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートの特性を補完するために使用することができる。本発明のMOF支持体、フィルム、またはプレラミネートで利用できるとくに有用な顔料着色層は、国際公開第2001/58989号パンフレットに記載されている。この層は、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネート上にスキン層として、ラミネーション、押出コーティング、または共押出することができる。所望に応じて可視光透過率を変化させるべく、顔料充填レベルを約0.01〜約1.0重量%の間で変化させることができる。UV線に暴露したときに不安定になるおそれのあるMOF支持体またはフィルムのいずれかの内層を保護するために、UV吸収性カバー層を追加することが望ましいこともある。
【0081】
MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートに付加することのできる追加の機能層またはコーティングとしては、たとえば、帯電防止コーティングまたはフィルム;難燃材;UV安定材;耐摩耗性材料またはハードコート材料;光学的コーティング;フォグ除去材料;磁気コーティングもしくはフィルムまたは磁気光学コーティングもしくはフィルム;液晶パネル;エレクトロクロミックパネルまたはエレクトロルミネセンスパネル;写真乳剤;プリズムフィルム;およびホログラフィックフィルムまたは画像が挙げられる。追加の機能層またはコーティングは、たとえば、国際公開第97/01440号パンフレット、同第99/36262号パンフレット、および同第99/36248号パンフレットに記載されている。
【0082】
MOF支持体、フィルム、またはプレラミネートは、たとえば、インク、または製品識別、方位情報、広告、警告、装飾、もしくは他の情報を表示するために使用されるような他の印刷表示で処理することができる。種々の技術を用いて、たとえば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷、凸版印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、スティップル印刷、レーザー印刷などのような技術を用いて、MOF支持体、フィルム、またはプレラミネート上に印刷することができる。また、種々のタイプのインク、たとえば、一成分および二成分インク、酸化乾燥インクおよびUV乾燥インク、溶解インク、分散インク、および100%インク系を使用することができる。
【0083】
開示されたフィルムおよびプレラミネートは、多種多様な基材に接合またはラミネーションすることができる。典型的な基材材料としては、ガラスのようなグレージング材料(断熱処理、テンパー処理、ラミネーション処理、アニーリング処理、または熱強化処理が施されていてもよい)およびプラスチック(たとえば、ポリカーボネートおよびポリメチルメタクリレート)が挙げられる。開示されたフィルムおよびプレラミネートは、非平面状基材(とくに、複合的な湾曲を有するもの)と組み合わせるのにとりわけ有用である。フィルムまたはプレラミネートは、好ましくは、ラミネーションおよび脱気の処理時に実質的な亀裂も折り目も生じることなく、そのような非平面状基材に整合させることができる。
【0084】
開示されたフィルム(またはそのようなフィルムを上に形成しうるMOF支持体)は、配向させることが可能であり、場合により、実質的な皺を生じることなくフィルムを非平面状基材に整合させるのを支援するのに十分な条件下で熱セットさせることができる。これは、フィルムをラミネーションさせる非平面状基材が既知の形状または湾曲を有する場合、とくに基材が既知のきわめて複合的な湾曲を有する場合、とりわけ有用である。各面内方向でフィルムまたはMOF支持体の収縮率を個別に制御することにより、ラミネーション時、とくにニップロールラミネーション時、フィルムを制御下で収縮させることができる。たとえば、フィルムをラミネーションさせる非平面状基材が複合的な湾曲を有する場合、フィルムの収縮率を各面内方向でそれらの方向の基材の特定の湾曲特性に一致するように適合させることができる。最大の収縮率を有する面内のフィルムまたはMOF支持体の方向は、好ましくは、最小の湾曲(すなわち最大の曲率半径)を有する基材の寸法にアライメントされる。曲率半径による湾曲の特性づけに加えてまたはその代わりに、所望により、他の測定値(たとえば、基材の主要表面により規定される幾何学的表面から測定される隆起した領域または窪んだ領域の深さ)を使用することもできる。典型的な非平面状基材にラミネーションする場合、フィルム収縮率は、好ましくは、両方の面内方向で約0.4%超、より好ましくは少なくとも1つの面内方向で約0.7%超、最も好ましくは1つの面内方向で少なくとも約1%超であろう。好ましくは、縁部離層または「引込み」を減少させるために、全体的フィルム収縮率を制限する。このため、フィルム収縮率は、好ましくは各面内方向で約3%未満、より好ましくは各面内方向で約2.5%未満である。収縮挙動は、主として、利用されるフィルムまたは支持体の材料、およびフィルムまたは支持体の延伸比、熱セット温度、滞留時間、およびトーイン(最大のレール設定値と対比して測定されるテンター熱セットゾーンにおけるレール間隔の減少)のような因子により支配されるであろう。コーティングもまた、フィルムの収縮特性を変化させうる。たとえば、プライマーコーティングは、横方向(「TD」)の収縮率を約0.2%〜約0.4%減少させ、縦方向(「MD方向」)の収縮率を約0.1〜約0.3%増加させる可能性がある。配向および熱セット装置は大幅に変化しうるので、理想的なプロセス設定値は、典型的には、いずれの場合においても実験的に決定される。目標収縮特性を有するMOF支持体を作製するための技術に関するさらに詳細な内容は、国際公開第01/96104号パンフレットに記載されている。
【0085】
先に述べたように、最初に、開示されたフィルムを1層または複数層の機械的エネルギー吸収層にラミネーションしてプレラミネート140または150のようなプレラミネートを形成し、その後、1枚または複数枚の車両用グレージングシートにラミネーションすることができる。フィルム、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層、および1枚または複数枚のグレージングシートを含有するサンドイッチ体を単一のラミネーションステップで集成することもできる。いずれの場合においても、各ラミネーションステップ時、種々の層の間から空気を除去しなければならない。一般的には、ラミネーション前にフィルムおよび1層または複数層の機械的エネルギー吸収層を、最も外側のフィルム層のTg未満の温度までオーブン中で予備加熱することが好ましいであろう。好ましくは、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層、フィルム、および1枚または複数枚のグレージングシートの間でなんらかの接着力レベルを確保しなければならない。しかしながら、好ましくは、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層は、最終的なラミネーションステップを行う前に流動するのに十分な程度に軟質になってはならない。1層または複数層の機械的エネルギー吸収層は、好ましくは、フィルムが縮小してそれ自体が完成ラミネートの形状をとることができるように、所定の位置でプレラミネートの縁部を固定するのに役立つものでなければならない。ラミネートは、好ましくは、フィルムの縁部で発生す可能性のあるフィルム内の皺または離層を回避するために、オートクレーブ処理後、制御速度で冷却される。脱気は、真空脱気法または先に記載したニップロール法を用いて促進することができる。好ましくは、脱気およびラミネーションは、1つ以上のニップローラーを用いて行われる。代表的なニップロール装置は、米国特許第5,085,141号明細書に示されている。他のそのような装置は、当業者の熟知するものであろう。
【0086】
ラミネーションの後、好ましくは、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層および本発明のフィルムを1枚または複数枚のグレージングシートの輪郭に整合させて最終ラミネーテッドグレージング物品を形成するのに十分な温度まで、オートクレーブ中でラミネートを加熱する。また、ラミネートの種々の層の少なくとも部分的な接合が得られるように、ラミネーション時、十分な圧力を加えなければならない。PVBを含有するラミネートでは、約138℃〜約150℃の温度および約0.5〜約1.5MPaの圧力が典型的である。熱および圧力を加えると、最小限の時間で残留空気を除去しながら(またはPVB中に残留空気を溶解させながら)、1層または複数層の機械的エネルギー吸収層は、流動して拡がり、ボイドを満たし、均一なサンドイッチ構成体を形成し、そしてラミネート層を強固に接合一体化させる。オートクレーブサイクルは製造業者に依存して有意に変化する可能性があるが、1つの典型的なオートクレーブサイクルでは、(a)温度および圧力を周囲条件から約93℃および約0.55MPaまで約15分間以内で上昇させること、(b)圧力を約0.55MPaに保持しながら約40分間以内で温度を約143℃まで上昇させること、(c)温度を約143℃に保持しながら約10分間以内で圧力を約1.38MPaまで上昇させること、(d)この最大の温度および圧力を約20分間保持すること、(e)約15分間以内で温度および圧力を約38℃および約1MPaまで減少させること、ならびに(f)約4分間以内で圧力を周囲条件まで減少させることが必要とされる。全オートクレーブサイクルは、典型的には、約60分〜約120分である。
【0087】
開示されたフィルムはまた、建築用グレージング、たとえば、米国特許第4,799,745号明細書に記載されているグレージング物品などで利用することができる。そのようなグレージング物品を作製する方法は、当業者には自明なものであろう。たとえば、有用な建築用グレージング物品は、米国特許第4,799,745号明細書中のインタフェース層20の代わりにMOF支持体を使用し、スペーシング層18の代わりに架橋高分子層を使用するにより、作製することができる。完成グレージング物品は、好ましくは、光学的に透明である。図9は、MOF支持体192と、スペーシング層195により分離された第1および第2の金属層194および196を含有するファブリー・ペロースタック193と、を含有するフィルム191を示している。フィルム191は、感圧接着剤の層197を用いてガラスシート198に接合される。
【0088】
開示されたフィルムは、スパッターコーテッド無機誘電体層または溶媒適用非架橋高分子誘電体層を用いて作製されるフィルムよりも非常に迅速に作製することができる。後者の2つの方法では、誘電体層堆積ステップが律速因子であるが、開示された方法では、それよりもかなり迅速に誘電体層を堆積させることが可能である。このほか、開示された方法は、コーティングステップ間でフィルムを取り除くことなく単一のチャンバー内で行うことができるが、報告された溶媒適用非架橋誘電体層は、金属層の堆積が行われたチャンバーの外部で形成されたようにみえる。
【0089】
以下の試験を用いて、本明細書中に開示されているフィルムを評価した。
【0090】
導電率vs歪みの試験
フィルムが導電を停止させるおそれのある歪みパーセントを決定するために、シンテックTM200/Sテンシル・テスター(SINTECHTM 200/S TENSILE TESTER)(イントロン・コーポレーション(Instron Corp.))を用いてフィルムを延伸した。幅25.4mm×長さ約200mmのストリップをフィルムサンプルの中央から切り出した。No.22−201銀ペイント(カティー・カンパニー(Katy Company))を用いてストリップの細い端部の両側をペインティングした。銀ペイントを乾燥させた後、ペインティングされた縁部上に銅を重ねてストリップの各端部に耐久性電極を形成した。作製されたストリップを引張試験機のジョー中に掴持し、ワニ口クリップを用いて銅電極に電源を接続した。101.6mmのゲージ長および25.4mm/分のクロスヘッド速度を用いつつ、4ボルトの定電圧をストリップに供給し、電流の流れを測定し、歪み%に対して記録した。
【0091】
シート抵抗試験
非接触導電率測定装置(デルコム・インストラメンツ・インコーポレーテッド製のモデル717Bベンチトップ・コンダクタンス・モニター(Model 717B Benchtop Conductance Monitor,Delcom Instruments Inc.))を用いて本発明のフィルムのシート抵抗を評価した。
【0092】
太陽熱利得係数および遮蔽係数
値Teは、250nm〜2500nmで試料により透過された太陽エネルギーを全入射太陽エネルギーで割ってパーセントで表される比として定義される。値Aeは、250nm〜2500nmで試料により吸収された太陽エネルギーを全入射太陽エネルギーで割ってパーセントで表される比として定義される。ソーラー特性は、エアマス1.5を用いてASTM E891の日射量データにより算出される。太陽熱利得係数(SHGC)は、
SHGC=Te+0.27(Ae)
として算出される。遮蔽係数(SC)は、所与のグレージングを通過するときの太陽熱利得係数と1枚の標準的な厚さ3.2mmの窓ガラスを通過するときの太陽熱利得係数との比として定義され、
SC=SHGC/87.0
として算出される。
【0093】
次に、以下の実施例を参照しながら、本発明について説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。ここで、とくに明示されていないかぎり、部およびパーセントはすべて重量基準である。
【実施例】
【0094】
実施例1
(層1)厚さ0.05mmのMOF支持体フィルム(スリーエムTM・ソーラー・リフレンティング・フィルム(3MTM Solar Reflecting Film)No.41−4400−0146−3)の長さ約6メートルのセクションを、厚さ0.05mm×幅508mmのPET支持体(デュポン・テイジン・フィルムズ製の453メリネックスTM(453 MELINEXTM,DuPont Teijin Films))の長さ約300メートルのロールに接合した。得られた接合フィルムを図8に示されるようなロールツーロール真空チャンバーに装填した。真空チャンバー内の圧力を3×10-4トルに減少させた。支持体を同時にプラズマ前処理して36.6m/分のウェブ速度でアクリレートをコーティングした。プラズマ前処理では、102sccmの窒素ガス流動を行って窒素雰囲気下で1000ワットのパワー(402ボルトおよび2.5アンペア)で操作されるクロムターゲットおよび非平衡dcマグネトロンを利用した。アクリレートコーティングでは、液体モノマー混合物の容器をガラス鐘に入れて約1ミリトルまで圧力を減少させることにより1時間脱ガスされたIRR214アクリレート(ユーシービー・ケミカルズ(UCB Chemicals))とラウリルアクリレートとの50:50混合物を利用した。超音波噴霧器により脱ガスモノマーを276℃に保持された蒸発チャンバー中に2.45ml/分の流量でポンプ送入した。−21℃のドラム温度を用いて、モノマー蒸気を移動ウェブ上に凝縮させ、8.0kVおよび6.5ミリアンペアで操作されるシングルフィラメント銃を用いて電子ビーム架橋させた。
【0095】
(層2)ウェブ方向を逆転させた。36.6m/分で再び操作して、アクリレート表面をプラズマ処理し、マグネトロンスパッタード銀をコーティングした。プラズマ前処理は、前と同じであったが、ただし、309ボルトおよび3.34アンペアであった。10,000ワットのパワー(570ボルトおよび7.88アンペア)、21℃のドラム温度、および93.2sccmのアルゴンガスフローのアルゴン雰囲気で、銀をスパッタリングした。
【0096】
(層3)ウェブ方向を再び逆転させた。36.6m/分で再び操作して、銀表面をプラズマ前処理してから、高分子スペーシング層の堆積および架橋を行った。プラズマ前処理では、クロムターゲットおよび1000ワットのパワー(308ボルトおよび3.33のアンペア)を利用した。−23℃のドラム温度および先に記載した他のモノマー堆積条件を用いて、モノマー蒸気を移動ウェブ上に凝縮させ、8.0kVおよび6.0ミリアンペアで操作されるシングルフィラメント銃を用いて電子ビーム架橋させた。
【0097】
(層4)ウェブ方向を再び逆転させた。36.6m/分で再び操作して、アクリレート表面をプラズマ前処理し、マグネトロンスパッタード銀をコーティングした。プラズマ前処理は、前と同じであったが、ただし、316ボルトおよび3.22のアンペアを使用した。前と同じように銀をスパッタリングした。ただし、567ボルト、17.66アンペア、20℃のドラム温度、および90sccmのアルゴンガスフローであった。
【0098】
(層5)ウェブ方向を再び逆転させた。銀表面をプラズマ前処理してから、保護層の堆積を行った。プラズマ前処理は、層3のときと同じであった。−23℃のドラム温度および先に記載した他のモノマー堆積条件を用いて、モノマー蒸気を移動ウェブ上に凝縮させ、8.0kVおよび6.2ミリアンペアで操作されるシングルフィラメント銃を用いて電子ビーム架橋させた。
【0099】
得られた赤外線遮断フィルムおよび非コーテッド支持体の光学特性を、それぞれ、図10および図11に示す。図10および図11のいずれにおいても、曲線TおよびRは、それぞれ、透過率および反射率を示す。約700〜約1100nmの反射曲線を調べることによりわかるように、得られた赤外線遮断フィルムは有意に拡張された反射帯域を呈した。
【0100】
実施例2および3
実施例1の方法を用いて、オプションのトップコートプラズマ後処理を施して5層の赤外線遮断アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学スタックを同一のMOF支持体上に形成した。得られたフィルムの外観、透過率(Trans−ルミナスY(Luminous Y)(Tvis))、反射(Refl−ルミナスY(Luminous Y))、太陽熱利得係数、遮蔽係数、および面積抵抗率を評価した。加工条件および評価結果を以下の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示される結果は、約73%程度の高いTvisおよび3.9オーム/スクエア程度の低いシート抵抗を有するコーテッドフィルムの形成を示している。また、導電率vs歪み試験を用いて実施例3のフィルムの2つのサンプルを評価した。フィルムサンプルは両方とも、50%までまたはそれ以上の歪みで電流が流れた。
【0103】
比較例1
導電率vs歪み試験を用いて、透明銀層および酸化インジウム無機誘電体をベースにした市販品(XIRTM 75フィルム、サウスウォール・テクノロジーズ・インコーポレーテッド(Southwall Technologies Inc.))を評価した。サンプルは、わずか1%の歪みを受けたときに破損した。
【0104】
実施例4
実施例2および実施例3のフィルムの片面または両面にオプションのプラズマ後処理を施し、その後、2枚の2mmガラスシート間に配置された厚さ0.05mmの2枚のPVBシートから作製されたサンドイッチ体の中央にフィルムの304mm×304mmサンプルを配置することにより、ガラスシート間にラミネーションした。得られたラミネート集成体を真空により脱気し、次に、オートクレーブ処理にかけて光学的に透明なグレージング物品を形成した。グレージング物品を評価し、それらの圧縮剪断強度を決定した。以下の表2に、フィルムの実施例番号、スタックの最上層の上からのプラズマ後処理または支持体の下面へのプラズマ後処理の有無、および測定された圧縮剪断強度を示す。
【0105】
【表2】
【0106】
本発明の種々の修正形態および変更形態は本発明から逸脱することなく当業者に自明なものとなろう。本発明は、単に例示を目的として本明細書に明記された事項に制限されるものでない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する可視光透過性複屈折性誘電体多層支持体を提供することと、
b)該支持体の上に、いずれかの順序で、
i)可視光透過性の金属もしくは金属合金の層と、
ii)架橋高分子層と、
を形成することと、
を含む、フィルムの作製方法であって、
該フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように、該金属もしくは金属合金の層の厚さが設定される、方法。
【請求項2】
前記対象となる波長領域が赤外領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属もしくは金属合金の層が、前記支持体と前記架橋高分子層との間に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋高分子層が、前記支持体と前記金属もしくは金属合金の層との間に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋高分子層が、放射線架橋性モノマーのフラッシュ蒸発、気相堆積、および架橋により形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルムが伸張可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属もしくは金属合金の層が銀を含みかつ前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
層間接着性を向上させるように前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と少なくとも1層の隣接層との間の界面を改変することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と隣接層との間でプラズマ処理が利用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と2層の隣接層との間でプラズマ処理が利用される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記金属もしくは金属合金の層の実質的な亀裂も折り目も生じることなく前記フィルムを延伸することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フィルムが、加熱された場合、2つの面内方向に異なる収縮率を呈する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
安全グレージングプレラミネートを提供するように前記フィルムと少なくとも1層の機械的エネルギー吸収材料の層とを加熱して連結一体化させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
a)グレージング材料の層と、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層、および架橋高分子層、を含むフィルムと、を集成することと、
b)該グレージング材料と該フィルムとを接合一体化させて単一の物品にすることと、
を含む、グレージング物品の作製方法。
【請求項15】
前記グレージング材料がガラスを含みかつ前記物品が前記フィルムと該ガラスとの間に接着剤層を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a)以下:
i)第1のグレージング材料層と、
ii)第1の機械的エネルギー吸収層と、
iii)対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層、および架橋高分子層、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムと、
iv)第2の機械的エネルギー吸収層と、
v)第2のグレージング材料層と、
を集成することと、
b)これらの層間から残留空気を除去することと、
c)加熱および加圧によりこれらの層を接合一体化させて単一の物品にすることと、
を含む、ラミネート物品の作製方法。
【請求項17】
前記残留空気の除去または前記層への加圧が、少なくとも1つのニップロールを用いて行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記グレージング材料層が非平面状である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記層が、前記フィルムの実質的な亀裂も折り目も皺も生じることなく接合一体化される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記架橋高分子層が、放射線架橋性モノマーのフラッシュ蒸発、気相堆積、および架橋により形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む、フィルム。
【請求項23】
前記対象となる波長領域が赤外領域である、請求項22に記載のフィルム。
【請求項24】
前記金属もしくは金属合金の層が、前記支持体と前記架橋高分子層との間に存在する、請求項22に記載のフィルム。
【請求項25】
前記架橋高分子層が、前記支持体と前記金属もしくは金属合金の層との間に存在する、請求項22に記載のフィルム。
【請求項26】
前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と隣接層との界面が接着性向上処理に付されているかまたは1層以上の隣接層が接着性向上補助剤を含み、それによりこれらの層間の接着性が増大されている、請求項22に記載のフィルム。
【請求項27】
前記金属もしくは金属合金の層または隣接層がプラズマ処理に付されている、請求項26に記載のフィルム。
【請求項28】
延伸される、請求項22に記載のフィルム。
【請求項29】
前記金属もしくは金属合金の層がその各面に隣接して架橋高分子層を有する、請求項22に記載のフィルム。
【請求項30】
追加の架橋高分子層と追加の金属もしくは金属合金の層とをさらに1対以上含む、請求項22に記載のフィルム。
【請求項31】
前記金属もしくは金属合金の層が銀を含む、請求項22に記載のフィルム。
【請求項32】
前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項22に記載のフィルム。
【請求項33】
実質的な皺を生じることなく自動車のウィンドシールドにラミネーションできる、請求項22に記載のフィルム。
【請求項34】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムに接合された少なくとも1層の機械的エネルギー吸収材料の層を含む、安全グレージングプレラミネート。
【請求項35】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムに接合された少なくとも1層のグレージング材料の層を含む、グレージング物品。
【請求項36】
前記金属もしくは金属合金の層が、前記支持体と前記架橋高分子層との間に存在する、請求項35に記載の物品。
【請求項37】
前記架橋高分子層が、前記支持体と前記金属もしくは金属合金の層との間に存在する、請求項35に記載の物品。
【請求項38】
前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と隣接層との界面が接着性向上処理に付されているかまたは1層以上の隣接層が接着性向上補助剤を含み、それによりこれらの層間の接着性が増大されている、請求項35に記載の物品。
【請求項39】
前記金属もしくは金属合金の層または隣接層がプラズマ処理に付されている、請求項35に記載の物品。
【請求項40】
前記金属もしくは金属合金の層が銀を含みかつ前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項35に記載の物品。
【請求項41】
前記グレージング材料がガラスを含みかつ前記グレージング物品が前記フィルムと該ガラスとの間に接着剤層を含む、請求項35に記載の物品。
【請求項42】
前記グレージング材料が非平面状ガラスを含みかつ前記ラミネート物品が光学的に透明で赤外線反射性である、請求項35に記載の物品。
【請求項43】
ウィンドシールドを含む、請求項35に記載の物品。
【請求項44】
建築用グレージングを含む、請求項35に記載の物品。
【請求項45】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムを含む少なくとも1つのウィンドシールド、後窓、側窓、または天窓を含むグレージングを備える、車両。
【請求項46】
前記架橋高分子層が銀を含みかつ前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項45に記載の車両。
【請求項1】
a)対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する可視光透過性複屈折性誘電体多層支持体を提供することと、
b)該支持体の上に、いずれかの順序で、
i)可視光透過性の金属もしくは金属合金の層と、
ii)架橋高分子層と、
を形成することと、
を含む、フィルムの作製方法であって、
該フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように、該金属もしくは金属合金の層の厚さが設定される、方法。
【請求項2】
前記対象となる波長領域が赤外領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属もしくは金属合金の層が、前記支持体と前記架橋高分子層との間に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋高分子層が、前記支持体と前記金属もしくは金属合金の層との間に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋高分子層が、放射線架橋性モノマーのフラッシュ蒸発、気相堆積、および架橋により形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルムが伸張可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属もしくは金属合金の層が銀を含みかつ前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
層間接着性を向上させるように前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と少なくとも1層の隣接層との間の界面を改変することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と隣接層との間でプラズマ処理が利用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と2層の隣接層との間でプラズマ処理が利用される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記金属もしくは金属合金の層の実質的な亀裂も折り目も生じることなく前記フィルムを延伸することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フィルムが、加熱された場合、2つの面内方向に異なる収縮率を呈する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
安全グレージングプレラミネートを提供するように前記フィルムと少なくとも1層の機械的エネルギー吸収材料の層とを加熱して連結一体化させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
a)グレージング材料の層と、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層、および架橋高分子層、を含むフィルムと、を集成することと、
b)該グレージング材料と該フィルムとを接合一体化させて単一の物品にすることと、
を含む、グレージング物品の作製方法。
【請求項15】
前記グレージング材料がガラスを含みかつ前記物品が前記フィルムと該ガラスとの間に接着剤層を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a)以下:
i)第1のグレージング材料層と、
ii)第1の機械的エネルギー吸収層と、
iii)対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層、および架橋高分子層、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムと、
iv)第2の機械的エネルギー吸収層と、
v)第2のグレージング材料層と、
を集成することと、
b)これらの層間から残留空気を除去することと、
c)加熱および加圧によりこれらの層を接合一体化させて単一の物品にすることと、
を含む、ラミネート物品の作製方法。
【請求項17】
前記残留空気の除去または前記層への加圧が、少なくとも1つのニップロールを用いて行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記グレージング材料層が非平面状である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記層が、前記フィルムの実質的な亀裂も折り目も皺も生じることなく接合一体化される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記架橋高分子層が、放射線架橋性モノマーのフラッシュ蒸発、気相堆積、および架橋により形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む、フィルム。
【請求項23】
前記対象となる波長領域が赤外領域である、請求項22に記載のフィルム。
【請求項24】
前記金属もしくは金属合金の層が、前記支持体と前記架橋高分子層との間に存在する、請求項22に記載のフィルム。
【請求項25】
前記架橋高分子層が、前記支持体と前記金属もしくは金属合金の層との間に存在する、請求項22に記載のフィルム。
【請求項26】
前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と隣接層との界面が接着性向上処理に付されているかまたは1層以上の隣接層が接着性向上補助剤を含み、それによりこれらの層間の接着性が増大されている、請求項22に記載のフィルム。
【請求項27】
前記金属もしくは金属合金の層または隣接層がプラズマ処理に付されている、請求項26に記載のフィルム。
【請求項28】
延伸される、請求項22に記載のフィルム。
【請求項29】
前記金属もしくは金属合金の層がその各面に隣接して架橋高分子層を有する、請求項22に記載のフィルム。
【請求項30】
追加の架橋高分子層と追加の金属もしくは金属合金の層とをさらに1対以上含む、請求項22に記載のフィルム。
【請求項31】
前記金属もしくは金属合金の層が銀を含む、請求項22に記載のフィルム。
【請求項32】
前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項22に記載のフィルム。
【請求項33】
実質的な皺を生じることなく自動車のウィンドシールドにラミネーションできる、請求項22に記載のフィルム。
【請求項34】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムに接合された少なくとも1層の機械的エネルギー吸収材料の層を含む、安全グレージングプレラミネート。
【請求項35】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムに接合された少なくとも1層のグレージング材料の層を含む、グレージング物品。
【請求項36】
前記金属もしくは金属合金の層が、前記支持体と前記架橋高分子層との間に存在する、請求項35に記載の物品。
【請求項37】
前記架橋高分子層が、前記支持体と前記金属もしくは金属合金の層との間に存在する、請求項35に記載の物品。
【請求項38】
前記フィルム内の前記金属もしくは金属合金の層と隣接層との界面が接着性向上処理に付されているかまたは1層以上の隣接層が接着性向上補助剤を含み、それによりこれらの層間の接着性が増大されている、請求項35に記載の物品。
【請求項39】
前記金属もしくは金属合金の層または隣接層がプラズマ処理に付されている、請求項35に記載の物品。
【請求項40】
前記金属もしくは金属合金の層が銀を含みかつ前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項35に記載の物品。
【請求項41】
前記グレージング材料がガラスを含みかつ前記グレージング物品が前記フィルムと該ガラスとの間に接着剤層を含む、請求項35に記載の物品。
【請求項42】
前記グレージング材料が非平面状ガラスを含みかつ前記ラミネート物品が光学的に透明で赤外線反射性である、請求項35に記載の物品。
【請求項43】
ウィンドシールドを含む、請求項35に記載の物品。
【請求項44】
建築用グレージングを含む、請求項35に記載の物品。
【請求項45】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光の少なくとも50%を反射する複屈折性誘電体多層支持体と、フィルムが可視光透過性であるようにかつその反射帯域が該支持体の反射帯域と対比して拡張されるように設定された厚さを有する金属もしくは金属合金の層と、架橋高分子層と、を含む可視光透過性かつ赤外線反射性のフィルムを含む少なくとも1つのウィンドシールド、後窓、側窓、または天窓を含むグレージングを備える、車両。
【請求項46】
前記架橋高分子層が銀を含みかつ前記架橋高分子層がアクリレートポリマーを含む、請求項45に記載の車両。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−228888(P2012−228888A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−165494(P2012−165494)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2010−18317(P2010−18317)の分割
【原出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165494(P2012−165494)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2010−18317(P2010−18317)の分割
【原出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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