説明

機能性アルミニウム建材

【課題】トルエン等の強溶剤を使用することなく、耐候性、耐水性、光学特性、防曇性、帯電防止性等に優れ、セルフクリーニング性を有する機能性アルミニウム建材を提供する。
【解決手段】金属酸化物(A)と、アミド基及び/または水酸基を有する水系バインダーを含んでなることを特徴とする水系有機・無機複合組成物から形成された有機・無機複合体を基材上に有するアルミニウム建材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性、耐薬品性、光学特性、防曇性、帯電防止性等に優れ、セルフクリーニング性を有する機能性アルミニウム建材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光触媒の光励起親水化現象を利用した技術が注目されている。光励起に応じて親水性を呈する光触媒性半導体材料を基材表面に形成することで、太陽にさらされると水との接触角が高度に親水化され、降雨を受ける都度、大気中の疎水性物質を主成分とする汚染物質が洗い流され、表面が自己浄化(セルフクリーニング)されることが提案されており、外装建材や建材ガラスへの応用が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミ合金という)製の建築部材、例えばパネル材上に酸化チタン等の光触媒をコーティングすると、光触媒の強い酸化還元作用によってパネル表面が腐食(酸化)され易いという問題がある。また、アルミ合金基材と光触媒の充分な密着性が得られず、コーティングした光触媒の膜が剥離し易いという問題がある。また、複雑な形状を有する建材上に均一に光触媒をコーティングすることは困難であり、さらに、通常、光触媒をコーティングする場合、200℃を超える温度に基材を加熱する必要があり、このような温度にアルミ合金をさらすとアルミ合金の強度が著しく低下してしまうといった問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するべく、例えば特許文献2には、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の表面に陽極酸化皮膜を形成し、さらに該陽極酸化皮膜上に光触媒作用を有する半導体微粒子を含有もしくは担持した塗膜が形成されてなる建築材料が提案されている。本発明によれば、確かに、基材の表面に形成された陽極酸化皮膜はその上に形成される光触媒作用を有する半導体粒子を含有もしくは担持する塗膜との密着性を向上するが、光触媒を有する半導体微粒子の光酸化機能によるバインダー塗料の劣化といった問題は解決されていない。
また、これらの問題を解決すべく、例えば特許文献3には、耐候性にも優れたアルミニウム建材が開示されているが、塗装の際にトルエン等の芳香族系強溶剤を使用しており、塗装環境の悪化が問題となっている。
一方、塗膜表面の親水性を付与する方法として親水性のコロイダルシリカと水系のバインダーを併用する方法が特許文献4、特許文献5、特許文献6にそれぞれ提案されている。しかし、いずれも塗液の安定性、塗膜の耐水性や透明性が不十分になるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】WO96/29375号パンフレット
【特許文献2】特開平08 −302498号公報
【特許文献3】特開2005−060794号公報
【特許文献4】特開平11−001893号公報
【特許文献5】特開平07−026165号公報
【特許文献6】特開昭55−040717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、上記のような問題を解決し、耐候性、耐水性、光学特性、防曇性、帯電防止性等に優れ、セルフクリーニング性を有する機能性アルミニウム建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.金属酸化物(A)と、アミド基及び/または水酸基を有する水系バインダーを含んでなる水系有機・無機複合組成物から形成された有機・無機複合体を基材上に有することを特徴とするアルミニウム建材。
2.該水系バインダーが、水及び乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合して得られる重合体エマルジョン粒子(B)を含有することを特徴とする発明1に記載のアルミニウム建材。
3.該金属酸化物(A)の数平均粒子径が1〜400nmであり、該重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径が10〜800nmであることを特徴とする発明2に記載のアルミニウム建材。
4.該金属酸化物(A)が、二酸化珪素、光触媒活性を有する金属酸化物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする発明1〜3のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【0007】
5.該重合体エマルジョン粒子(B)が、コア/シェル構造であることを特徴とする発明2〜4のいずれかに記載のアルミニウム建材。
6.該重合体エマルジョン粒子(B)が、水及び乳化剤の存在下にビニル単量体(C)及び/又は加水分解性金属化合物(b1)を重合して得られるシード粒子存在下に、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合して得られることを特徴とする発明2〜5のいずれかに記載のアルミニウム建材。
7.該重合体エマルジョン粒子(B)が、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び/又は環状シロキサンオリゴマーを重合して得られるシード粒子存在下に、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合して得られることを特徴とする発明2〜5のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【0008】
8.該乳化剤が、酸性乳化剤及び/又は反応性乳化剤であることを特徴とする発明2〜7のいずれかに記載のアルミニウム建材。
9.該シード粒子のガラス転移温度が、0℃以下であることを特徴とする発明6〜8のいずれかに記載のアルミニウム建材。
10.アルコールを含有することを特徴とする発明1〜9のいずれかに記載の水系有機・無機複合組成物を塗装したアルミニウム建材。
11.発明5に記載の該重合体エマルジョン粒子(B)のシェル相と該金属酸化物(A)が相互作用した状態で連続層を形成し、該粒子(B)のコア相が該連続層中に存在する発明5〜10のいずれかに記載のアルミニウム建材。
12.23℃における水接触角が60°以下であることを特徴とする発明1〜11のいずれかに記載のアルミニウム建材。
13.23℃における水接触角が20°以下であることを特徴とする発明1〜11のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トルエン等の強溶剤を使用することなく、耐候性、耐水性、光学特性、防曇性、帯電防止性等優れ、セルフクリーニング性を有する機能性アルミニウム建材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の機能性アルミニウム建材は、金属酸化物(A)と、アミド基及び/または水酸基を有する水系バインダーを含んでなることを特徴とする水系有機・無機複合組成物から形成された有機・無機複合体を基材上に有する。
本発明の水系有機・無機複合組成物において、金属酸化物(A)は、水系バインダーと相互作用することにより水系バインダーの硬化剤として働く。このことにより、本発明の水系有機・無機複合組成物からは、耐候性、耐薬品性、光学特性、更には防汚性、防曇性、帯電防止性等に優れた有機・無機複合体を形成するが可能となる。
本発明に好適に使用できる金属酸化物(A)としては、例えば二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化セリウム及びそれらの複合酸化物等を例示することができる。それらの中でも、表面水酸基の多い二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモン及びそれらの複合酸化物等が好ましい。
【0011】
ここで、上記金属酸化物(A)と水系バインダーとの相互作用としては、例えば金属酸化物(A)が有する水酸基と水系バインダーが有するアミド基や水酸基との水素結合等を例示することができる。より好ましくは、水系バインダーが水及び乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合して得られる重合体エマルジョン粒子(B)である場合であり、金属酸化物(A)が有する水酸基と重合体エマルジョン粒子(B)が有する2級及び/又は3級アミド基との水素結合や、金属酸化物(A)が有する水酸基と重合体エマルジョン粒子(B)を構成する加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物との縮合(化学結合)等を例示することができる。
また、本発明において、上記金属酸化物(A)として光触媒(a1)を選択すると、本発明の水系有機・無機複合組成物から形成される有機・無機複合体は光照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現するため非常に好ましい。
【0012】
ここで、光触媒(a1)とは、光照射によって酸化、還元反応を起こす物質のことを言う。すなわち伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)の光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる物質であり、このとき、伝導帯に生成した電子の還元力および/または価電子帯に生成した正孔の酸化力を利用して、種々の化学反応を行うことができる。
また、光触媒活性とは、光照射によって酸化、還元反応を起こすことを言う。これらの光触媒活性は、例えば材料表面の光照射時における色素等の有機物の分解性を測定することにより判定することができる。光触媒活性を有する表面は、優れた汚染有機物質の分解活性や耐汚染性を発現する。
さらに、本発明において親水性とは、好ましくは20℃での水の接触角が60゜以下である場合を言うが、特に水の接触角が20゜以下の親水性を有する表面は、降雨等の水による自己浄化能(セルフクリーニング)による耐汚染性を発現するので好ましい。さらに優れた耐汚染性発現や防曇性発現の点からは表面の水の接触角は10゜以下であることが好ましく、更に好ましくは5゜以下である。
【0013】
本発明の金属酸化物(A)として有用に使用できる光触媒(a1)としては、バンドギャップエネルギーが好ましくは1.2〜5.0eV、更に好ましくは1.5〜4.1eVの半導体化合物を挙げることができる。バンドギャップエネルギーが1.2eVより小さいと光照射による酸化、還元反応を起こす能力が非常に弱く好ましくない。バンドギャップエネルギーが5.0eVより大きいと、正孔と電子を生成させるのに必要な光のエネルギーが非常に大きくなるため好ましくない。
上記光触媒(a1)の例としては、例えば、TiO、ZnO、SrTiO、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、RuO、CeO等、さらにはTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−074452号公報、特開平02−172535号公報、特開平07−024329号公報、特開平08−089799号公報、特開平08−089800号公報、特開平08−089804号公報、特開平08−198061号公報、特開平09−248465号公報、特開平10−099694号公報、特開平10−244165号公報等参照)を挙げることができる。
これらの光触媒(a1)の中でTiO(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれも使用できる。
【0014】
また、本発明の金属酸化物(A)に使用する光触媒(a1)として、可視光(例えば約400〜800nmの波長)の照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現することが出来る可視光応答型光触媒を選択すると、本発明の光触媒組成物で処理された光触媒部材は、室内等の紫外線が十分に照射されない場所等における環境浄化効果や防汚効果が非常に大きなものとなるため好ましい。これらの可視光応答型光触媒のバンドギャップエネルギーは、好ましくは1.2〜3.1eV、より好ましくは1.5〜2.9eV、更に好ましくは1.5〜2.8eVである。
上記可視光応答型光触媒は、可視光で光触媒活性及び/又は親水性を発現するものであれば全て使用することが出来るが、例えばTaON、LaTiON、CaNbON、LaTaON、CaTaON等のオキシナイトライド化合物(例えば特開2002−066333号公報参照)やSmTi等のオキシサルファイド化合物(例えば特開2002−233770号公報参照)、CaIn、SrIn、ZnGa、NaSb等のd10電子状態の金属イオンを含む酸化物(例えば特開2002−059008号公報参照)、アンモニアや尿素等の窒素含有化合物存在下でチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)や高表面酸化チタンを焼成して得られる窒素ドープ酸化チタン(例えば特開2002−029750号公報、特開2002−087818号公報、特開2002−154823号公報、特開2001−207082号公報参照)、チオ尿素等の硫黄化合物存在下にチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)を焼成して得られる硫黄ドープ酸化チタン、酸化チタンを水素プラズマ処理したり真空下で加熱処理したりすることによって得られる酸素欠陥型の酸化チタン(例えば特開2001−098219号公報参照)、さらには光触媒粒子をハロゲン化白金化合物で処理したり(例えば特開2002−239353号公報参照)、タングステンアルコキシドで処理(特開2001−286755号公報参照)することによって得られる表面処理光触媒等を好適に挙げることができる。
【0015】
上記可視光応答型光触媒の中でオキシナイトライド化合物、オキシサルファイド化合物は可視光による光触媒活性が大きく、特に好適に使用することができる。
本発明において特に好適に使用できるオキシナイトライド化合物は、遷移金属を含むオキシナイトライドであり、光触媒活性が大きいものとして、好ましくは遷移金属がTa、Nb、Ti、Zr、Wからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とするオキシナイトライドであり、より好ましくは、アルカリ、アルカリ土類及びIIIB族の金属からなる群から選択される少なくとも1つの元素を更に含むことを特徴とするオキシナイトライドであり、更に好ましくはCa、Sr、Ba、Rb、La、Ndからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属元素を更に含むことを特徴とするオキシナイトライドである。
上記遷移金属を含むオキシナイトライドの例としては、LaTiON、LaCaTiON(v+w=3)、LaCaTaON(v+w=3)、LaTaON、CaTaON、SrTaON、BaTaON、CaNbON、CaWON、SrWON等の一般式AMO(A=アルカリ金属、アルカリ土類金属、IIIB族金属;M=Ta、Nb、Ti、Zr、W;x+y=3)で表される化合物やTaON、NbON、WON、LiLaTaN等を挙げることができる。これらの中で、LaTiON、LaCaTiON(v+w=3)、LaCaTaON(v+w=3)、TaONが可視光での光触媒活性が非常に大きいため好ましい。
【0016】
本発明において特に好適に使用できるオキシサルファイド化合物は、遷移金属を含むオキシサルファイドであり、光触媒活性が大きいものとして、好ましくは遷移金属がTa、Nb、Ti、Zr、Wからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とするオキシサルファイドであり、より好ましくは、アルカリ、アルカリ土類及びIIIB族の金属からなる群から選択される少なくとも1つの元素を更に含むことを特徴とするオキシサルファイドであり、更に好ましくは希土類元素を更に含むことを特徴とするオキシサルファイドである。
上記遷移金属を含むオキシサルファイドの例としては、SmTi、NdTi、LaTi、PrTi、SmNbS等を挙げることができる。これらの中で、SmTi、NdTiが可視光での光触媒活性が非常に大きいため非常に好ましい。
更に、上述した光触媒(a1)は、好適にPt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属及び/又はこれらの酸化物を添加あるいは固定化したり、シリカや多孔質リン酸カルシウム等で被覆したり(例えば特開平10−244166号公報参照)して使用することもできる。
【0017】
本発明の水系有機・無機複合組成物において、透明性、強度、耐候性等に優れた有機・無機複合体を形成する為に、金属酸化物(A)の数平均粒子径は1〜400nmであることが必要である。好ましくは、1〜100nm、より好ましくは5〜50nmの金属酸化物(A)が好適に選択される。
本発明に用いる金属酸化物(A)の形態としては粉体、分散液、ゾルのいずれでも用いることが出来る。ここで、本発明に用いる金属酸化物(A)ゾルおよび金属酸化物(A)分散液とは、光触媒粒子が水及び/又は親水性有機溶媒中に0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%で一次粒子及び/または二次粒子として分散されたものである。
ここで、上記金属酸化物(A)ゾルまたは金属酸化物(A)分散液に使用される上記親水性有機溶媒としては、例えばエチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等、さらにはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0018】
本発明においては、用いる金属酸化物(A)の形態が、有機・無機複合体の光学特性等の機能発現にとって重要な因子となる。本発明に好適に使用される金属酸化物(A)としては、1次粒子と2次粒子との混合物(1次粒子、2次粒子何れかのみでも良い)の数平均粒子径が400nm以下の金属酸化物(A)ゾルまたは金属酸化物(A)分散液が望ましい。特に数平均粒子径が100nm以下の金属酸化物(A)ゾルまたは金属酸化物(A)分散液を使用した場合、本発明の水系有機・無機複合組成物からは透明性に優れた有機・無機複合体を得ることができるため非常に好ましい。より好ましくは数平均粒子径が80nm以下3nm以上、さらに好ましくは50nm以下3nm以上の金属酸化物(A)ゾルまたは金属酸化物(A)分散液が好適に選択される。
【0019】
本発明のアミド基及び/または水酸基を有する水系バインダーとしては、ポリビニルアルコール、カチオン変成ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド類、デンプン及びデンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、水性媒体中でのラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などによって得られる従来公知のポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、酢酸ビニル−アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、シリコーン系、ポリブタジエン系、スチレンブタジエン系、NBR系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、塩化ビニリデン系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系、スチレン−無水マレイン酸系等の共重合体、シリコーン変性アクリル系、フッソ−アクリル系、アクリルシリコン、エポキシ−アクリル系等の変性共重合体の水分散体が挙げられる。
【0020】
より好ましい水系バインダーは、水及び乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合することにより得られる重合体エマルジョン粒子(B)の水分散体である。
この際、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の質量比[(b1)/(b2)]は5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10である。
このようにして得られる重合体エマルジョン粒子(B)は、加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物が有する水酸基と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合生成物とが水素結合により複合化されたものとなる。
【0021】
本発明の重合体エマルジョン粒子(B)を製造するのに用いる上記加水分解性金属化合物(b1)としては、下記式(1)で表される化合物やその縮合生成物、又はそのキレート化物を例示することができる。
MRx-n (1)
(式中、Mは金属原子を表す。Rは、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか或いは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。Wは、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基、アミド基から選ばれた少なくとも1種の基を表す。xは金属原子Mの原子価、nは1以上x以下の整数を示す。)
本発明に好ましく用いることができる加水分解性金属化合物(b1)としては、塗膜強度の補強効果、取り扱いの容易さ、材料コスト等の観点から、珪素アルコキシド、シランカップリング剤、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、及びそれらの縮合生成物、または、それらのキレート化物を例示することができる。
本発明において、加水分解性金属化合物(b1)は単独でまたは2種以上を混合して、あるいは複合加水分解性金属化合物として用いることができる。
【0022】
上記珪素アルコキシド及びシランカップリング剤の具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等を挙げることができる。また、これらの珪素アルコキシドやシランカップリング剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
上記珪素アルコキシドやシランカップリング剤が縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜1000である。
上記珪素アルコキシドの中では、フェニル基を有する珪素アルコキシド、例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に優れるため非常に好ましい。
また、上記チタンアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
上記チタンアルコキシドが縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜1000である。
【0024】
また、上記ジルコニウムアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
上記ジルコニウムアルコキシドが縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜1000である。
また、遊離の金属化合物に配位させてキレート化物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセチルアセトン;アセト酢酸エチルなどであって分子量1万以下のものを例示することができる。これらのキレート化剤を用いることにより、加水分解性金属化合物(b1)の重合速度を制御することができ、水及び乳化剤の存在下における重合安定性を優れたものにするため非常に好ましい。この際、キレート化剤は、これを配位させる遊離の金属化合物の金属原子1モル当たり、0.1モル〜2モルの割合で用いると効果が大きく好ましい。
【0025】
本発明に用いることができる加水分解性金属化合物(b1)の中で、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等の二重結合を有するシランカップリング剤や、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤は、上述した2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b1)と共重合、あるいは連鎖移動反応により化学結合を生成することが可能である。この為、二重結合やチオール基を有するシランカップリング剤を単独または上述した珪素アルコキシド、シランカップリング剤、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、及びそれらの縮合生成物、または、それらのキレート化物と混合や複合化させて用いた場合、本発明の重合体エマルジョン粒子(B)を構成する加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合生成物は、水素結合に加えて化学結合により複合化できる。この様な重合体エマルジョン粒子(B)を含有する本発明の水系有機・無機複合組成物からは、耐候性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れた有機・無機複合体を形成することができるため、非常に好ましい。
【0026】
本発明の重合体エマルジョン粒子(B)を製造するのに用いる上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)としては、N−アルキルまたはN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミドを例示することができ、具体的には、例えばN−メチルアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルメタアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド等を挙げることができる。
【0027】
上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の中で、特にN,N−ジエチルアクリルアミドは、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に非常に優れるとともに、上述した加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物の水酸基や金属酸化物(A)の水酸基と強固な水素結合を形成することが可能であるため、非常に好ましい。
また、本発明において、上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合を、これと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)と共に行うと、生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物との相溶性等)を制御することが可能となり好ましい。この際、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)は、最低でも全ビニル単量体中の0.5質量%以上を使用する必要があるが、好ましくは5質量%、さらに好ましくは20質量%以上使用する。
【0028】
該ビニル単量体(b2’)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル系単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体の様な官能基を含有する単量体等を挙げることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
ここで、(メタ)アクリルとはメタアクリル又はアクリルを簡便に表記したものである。
(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、1種または2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において好ましくは0〜99.9質量%、より好ましくは5〜80質量%である。
【0029】
上記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、無水マレイン酸、あるいはイタコン酸、マレイン酸、フマール酸などの2塩基酸のハーフエステル等である。カルボン酸基含有のビニル単量体を用いることによって、重合体エマルジョン粒子(B)にカルボキシル基を導入することができ、エマルジョンとしての安定性を向上させ、外部からの分散破壊作用に抵抗力を持たせることが可能となる。この際、導入したカルボキシル基は、一部または全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類やNaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。
カルボキシル基含有ビニル単量体の使用量は、1種または2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。30質量%を超えると塗膜の耐水性が低下する恐れがあるため好ましくない。
【0030】
また、上記水酸基含有ビニル単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピリ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルやジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、アリルアルコールやエチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」[ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名]や、その他のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類などを挙げることができる。上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。また、(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。水酸基含有ビニル単量体を用いることによって、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)との重合生成物の水素結合力を制御することが可能となるとともに、重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性を向上させることが可能となる。
【0031】
上述した水酸基含有ビニル単量体の使用量は、1種または2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
また、上記グリシジル基含有ビニル単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
上記カルボニル基含有ビニル単量体としては、例えばアクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトンジカルボン酸、ジヒドロキシアセトン、モノヒドロキシアセトン、及びジヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる、ただし、カルボン酸およびエステル類の持つカルボニル基を含有するビニル単量体は除外する。
【0032】
グリシジル基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体を使用すると、重合体エマルジョン粒子(B)が反応性を有し、ヒドラジン誘導体やカルボン酸誘導体、イソシアネート誘導体等により架橋させて耐溶剤性等の優れた有機・無機複合体の形成が可能となる。グリシジル基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体の使用量は、全ビニル単量体中において好ましくは0〜50質量%である。
また、上記以外のビニル単量体(b2’)の具体例としては、例えば(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらに4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。
【0033】
本発明においては、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な上記ビニル単量体(b2’)を用いても良い]の重合生成物の分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を使用しても良い。
かかる連鎖移動剤の一例としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンの如きアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンの如き芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸の如きチオカルボン酸あるいは、それらの塩もしくは、それらのアルキルエステル類、またはポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィドおよびチオグリコール、さらにはα−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物等を挙げることができる。
これら連鎖移動剤の使用量は、全ビニル単量体に対して好ましくは0.001〜30質量%、さらに好ましくは0.05〜10質量%の範囲で用いることができる。
【0034】
本発明において、重合体エマルジョン粒子(B)の合成に用いることができる乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤、酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤や、例えばアルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、アルキルピリジニウムブロマイド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤等を例示することができる。
【0035】
これらの乳化剤の中で、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を選択すると、本発明の重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性が非常に良好になると共に、該重合体エマルジョン粒子(B)を含有する本発明の水系有機・無機複合組成物からは、耐水性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れた有機・無機複合体を形成することができるため、非常に好ましい。
上記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、例えばスルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体等を挙げることができる。
上記反応性乳化剤の具体例として、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体の塩を例にとって述べると、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6または10のアリール基及びコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物である。硫酸エステル基を有するビニル単量体は、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基及び炭素数6または10のアリール基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物である。
【0036】
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物の具体例としては、アリルスルホコハク酸塩が挙げられる。これらの具体例として、例えば、エレミノールJS−2(商品名)(三洋化成(株)製)、ラテムルS−120、S−180AまたはS−180(商品名)(花王(株)製)等を挙げることができる。
また、上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の具体例として、例えばアクアロンHS−10またはKH−1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−1025NまたはSR−1025(商品名)(旭電化工業(株)製)等を挙げることができる。
その他、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物の具体例として、p−スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩等が挙げられる。
【0037】
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物として例えば、2−スルホエチルアクリレート等のアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸等のアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。
また、上記の硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキエーテル基を有する化合物としては、例えばスルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物等がある。
また、ノニオン基を有するビニル単量体の具体例としては、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)等を挙げることができる。
【0038】
上記乳化剤の使用量としては、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、10質量部以下となる範囲内が適切であり、なかでも、0.001〜5質量部となる範囲内が好ましい。
また、上記乳化剤以外に、本発明の重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性を向上させる目的で分散安定剤を使用することもできる。該分散安定剤としては、ポリカルボン酸およびスルホン酸塩よりなる群から選ばれる各種の水溶性オリゴマー類や、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性あるいは水分散性アクリル樹脂などの合成あるいは天然の水溶性あるいは水分散性の各種の水溶性高分子物質が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
これらの分散安定剤を使用する場合、その使用量としては、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、10質量部以下となる範囲内が適切であり、なかでも、0.001〜5質量部となる範囲内が好ましい。
【0039】
本発明において、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合は、重合触媒存在下で実施するのが好ましい。
ここで、加水分解性金属化合物(b1)の重合触媒としては、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類、硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類、酸性あるいは弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、硝酸のごとき酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのごとき塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫化合物等を挙げることができる。
これらの中で、加水分解性金属化合物(b1)の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としての作用を有する酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)が非常に好ましい。
【0040】
一方、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b1)の重合触媒としては、熱または還元性物質などによってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適であり、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用される。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等があり、その量としては全ビニル単量体100質量部に対して、0.001〜5質量部の配合が好ましい。なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望むときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
【0041】
上述したように、本発明の水系有機・無機複合組成物に用いる重合体エマルジョン粒子(B)は、水及び乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)を用いても良い]を、好ましくは重合触媒存在下で重合することにより得ることができる。
ここで、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合は、別々に実施することも可能であるが、同時に実施することにより水素結合等によるミクロな有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
また、本発明において、重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径が10〜800nmであることが重要である。この様な粒子径の範囲に調整し、数平均粒子径が1〜400nmの金属酸化物(A)と組み合わせて水系有機・無機複合組成物とすることにより、はじめて耐候性、耐薬品性、光学特性、更には防汚性、防曇性、帯電防止性等に優れた有機・無機複合体を形成することが可能となる。また、重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径も10nm〜800nmであることが好ましく、より好ましくは50〜300nmである。
【0042】
この様な粒子径の重合体エマルジョン粒子(B)を得る方法として、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下に加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合する、いわゆる乳化重合が最も適した方法である。
乳化重合のやり方としては、例えば、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)]は、そのまま、若しくは乳化した状態で、一括、若しくは分割、或は連続的に反応容器中に滴下し、前記重合触媒の存在下、好ましくは圧力としては大気圧から必要により10MPa、反応温度約30〜150℃の温度で重合させれば良い。場合によっては、これ以上の圧力あるいは、これ以下の温度条件でも重合させても差し支えない。加水分解性金属化合物(b1)および全ビニル単量体量の総量と水との比率は最終固形分量が0.1〜70質量%、好ましくは1〜55質量%の範囲になるように設定するのが好ましい。又、乳化重合をするにあたり粒子径を成長もしくは制御させるために、予め水相中にエマルジョン粒子を存在させ重合させるシード重合法によっても良い。重合反応は、系中のpHが好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは1.0〜6.0の範囲で進行させればよい。pHの調節は、燐酸2ナトリウムやボラックスあるいは、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどのpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
【0043】
また、本発明の重合体エマルジョン粒子(B)を得る方法として、加水分解性金属化合物(b1)を重合させるのに必要な水および乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を添加する手法も適用できるが、上述した乳化重合方法と比べ、得られる重合体エマルジョン粒子(B)の粒子径制御が困難である。
本発明において、重合体エマルジョン粒子(B)がコア/シェル構造であると、該重合体エマルジョン粒子(B)を含有する水系有機・無機複合組成物からは機械的物性(強度と柔軟性のバランス等)に優れた有機・無機複合体を形成することが可能となり好ましい。
上記コア/シェル構造の重合体エマルジョン粒子(B)を製造する方法として、多段乳化重合が非常に有用である。
ここで、多段乳化重合とは、2種類以上の異なった組成の加水分解性金属化合物(b1)や2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)]を調整し、これらを別々の段階に分けて重合することを意味する。
【0044】
以下に、多段乳化重合の中で最も単純で有用な2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成を例に、本発明の多段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成について説明する。
本発明において、2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成として、例えば水及び乳化剤の存在下にビニル単量体(C)及び/又は加水分解性金属化合物(b1)を重合して得られるシード粒子存在下に、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合する方法を例示できる。
ここで、ビニル単量体(C)とは、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)及び/又は上述した他のビニル単量体(b2’)を意味する。
上記2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成は、第1系列[ビニル単量体(C)及び/又は加水分解性金属化合物(b1)]を供給して乳化重合する第1段の重合と、第1段に引き続き、第2系列{加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)]}を供給し、水性媒体中において乳化重合する第2段の重合からなる2段階の重合行程により得られる。この際、第1系列中の固形分質量(M1)と第2系列中の固形分質量(M2)との質量比は、好ましくは(M1)/(M2)=9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8、更に好ましくは7/3〜3/7である。
【0045】
本発明において、好ましいコア/シェル構造の重合体の特徴は、第1段の重合で得られたシード粒子の粒子径が、粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)の大きな変化なしに(好ましくは単分散の状態で)、第2段の重合によって大きくなる(粒子径の増大)ことを挙げることができる。
また、コア/シェル構造の確認は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により実施することが可能である。
また、上述したコア/シェル構造の重合体エマルジョン粒子(B)において、コア相のガラス転移温度(Tg)が0℃以下、すなわち上記シード粒子のガラス転移温度が0℃以下のものは、それを含有する水系有機・無機複合組成物からは室温における柔軟性に優れ、割れ等が生じにくい有機・無機複合体を形成することが可能となり、好ましい。
コア相のガラス転移温度(Tg)が0℃以下で耐候性に優れた重合体エマルジョン粒子(B)の製造方法として、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び/又は環状シロキサンオリゴマーを重合して得られるシード粒子存在下に、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合する方法を好適に例示できる。
【0046】
ここで、環状シロキサンオリゴマーとしては、下記式(2)で表される化合物を例示することができる。
(R’SiO) (2)
(式中、R’は、水素原子、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか或いは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種を表す。mは整数であり、2≦m≦20である。)
上記環状シロキサンオリゴマーの中で、反応性等の点からオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
上記環状シロキサンオリゴマーは、加水分解性金属化合物(b1)の重合触媒として例示したものを好適に重合触媒として使用することができる。
【0047】
本発明において、3段以上の多段乳化重合を実施する場合は、上述した2段重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成例を参考に、重合する系列の数を増加させれば良い。
本発明の水系有機・無機複合組成物は、上述した数平均粒子径が1〜400nmの金属酸化物(A)と、水及び乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合して得られる数平均粒子径が10〜800nmである重合体エマルジョン粒子(B)を含んでなることを特徴とする。
ここで、金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の質量比(A)/(B)は、1/99〜99/1、好ましくは5/95〜90/10、さらに好ましくは10/90〜80/20である。
該水系有機・無機複合組成物は、無溶媒の状態であっても水に分散した状態であっても良く、特に制限はないが、コーティング剤として用いる場合は、粘度調整の観点から水に分散した状態が好ましい。この際、水系有機・無機複合組成物の固形分は、好ましくは0.01〜60質量%、より好ましくは1〜40質量%である。その時の粘度は、好ましくは20℃において0.1〜100000mPa・s、好ましくは1〜10000mPa・sである。
【0048】
また、本発明の水系有機・無機複合組成物には、水素結合等による金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の相互作用を制御する目的で、アルコール類を添加することもできる。アルコールの添加により、貯蔵安定性等が非常に向上する。
上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2―ブタノール、変性エタノール、グリセリン、アルキル鎖の炭素数が3〜8のモノアルキルモノグリセリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル又はジないしテトラエチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましい。これらの中で、エタノールが環境上最も好ましい。
【0049】
また、本発明の水系有機・無機複合組成物には、その用途ならびに使用方法などに応じて、通常、塗料や成型用樹脂に添加配合される成分、例えば、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤あるいは帯電調整剤等をそれぞれの目的に応じて選択、組み合わせて配合することができる。
本発明の有機・無機複合体は耐候性、耐薬品性等に非常に優れ、また23℃における水接触角が60°以下で防汚性にも優れる。特に、金属酸化物(A)として二酸化珪素及び/又は光触媒活性を有する金属酸化物(光触媒)を用いた場合は、23℃における水接触角が20°以下となり、防汚性、防曇性、帯電防止性等に優れたものになる。
また、金属酸化物(A)として光触媒を用いた場合の有機・無機複合体は、それに含まれる光触媒のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより優れた汚染有機物質の分解活性や耐汚染性、さらには光電変換機能を示す。
ここで、光触媒のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光の光源としては、太陽光や室内照明灯等の一般住宅環境下で得られる光の他、ブラックライト、キセノンランプ、水銀灯、LED等の光が利用できる。
【0050】
本発明においては、金属酸化物(A)が重合体エマルジョン粒子(B)の硬化剤として有効に働いた状態で有機・無機複合体を形成しているのが好ましい。この様な好ましい有機・無機複合体の例として、金属酸化物(A)が、重合体エマルジョン粒子(B)と相互作用しながら重合体エマルジョン粒子(B)の粒子間に連続層を形成して存在している形態を挙げることができる。この様な形態の有機・無機複合体は、特に耐薬品性、光学特性等に優れたものになる。
上述したような形態の有機・無機複合体を形成する為には、水系有機・無機複合組成物における金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の質量比(A)/(B)を最適範囲にする事が最も有効である。該質量比(A)/(B)の最適範囲は、例えば質量比(A)/(B)を変化させた水系有機・無機複合組成物から生成する有機・無機複合体の透明性を測定し、相対的に透明性が良好な質量比(A)/(B)の範囲として求めることができる。ここで、使用する金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)が同一の場合、上記最適な質量比(A)/(B)の範囲は、金属酸化物(A)の粒径(rA)と重合体エマルジョン粒子(B)の粒径(rB)の比(rA)/(rB)により異なる。
例えば、(rA)/(rB2)が0.05〜0.2の場合、質量比(A)/(B)の範囲は、好ましくは20/80〜80/20であり、より好ましくは30/70〜70/30であり、最も好ましくは40/60〜60/40である。
また、金属酸化物(A)として、二酸化珪素(A1)と光触媒活性を有する金属酸化物(A2)を組み合わせて用いると、アルミニウム建材のセルフクリーニング性を長期間持続させることができる。ここで、二酸化珪素(A1)と光触媒活性を有する金属酸化物(A2)の質量比(A1)/(A2)の範囲は、好ましくは50/50〜99/1であり、より好ましくは80/20〜97/3であり、最も好ましくは85/15〜95/5である。
一方、重合体エマルジョン粒子(B)に対する光触媒活性を有する金属酸化物(A2)の質量比(A2)/(B)が高すぎると、基材上に形成された有機・無機複合体の光照射による劣化が著しくなり、好ましくない。よって、質量比(A2)/(B)の範囲は、好ましくは1/99〜50/50であり、より好ましくは3/97〜20/80であり、最も好ましくは5/95〜15/85である。
【0051】
本発明において、有機・無機複合体の最も好ましい形態は、重合体エマルジョン粒子(B)がコア/シェル構造であり、そのシェル相が金属酸化物(A)と相互作用した状態で連続層を形成し、粒子状のコア相が該連続層中に存在するものである。この様な形態の有機・無機複合体は、耐薬品性、光学特性に優れるばかりか、機械的特性(強度と柔軟性のバランス等)にも優れたものになる。
本発明における機能性アルミニウム建材は、例えば金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)を含んでなることを特徴とする水系有機・無機複合組成物をアルミニウム建材基材に塗布し、乾燥した後、所望により好ましくは20℃〜500℃、より好ましくは40℃〜250℃の熱処理や紫外線照射等を行い、基材上に有機・無機複合体皮膜を形成することにより得ることができる。上記塗布方法としては、例えばスプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
【0052】
本発明の有機・無機複合体をアルミニウム建材基材に皮膜状として形成させる場合、該皮膜の厚みは0.05〜100μm、好ましくは0.1〜10μmである事が好ましい。透明性の面から100μm以下の厚みであることが好ましく、防汚性、防曇性、帯電防止性、光触媒活性等の機能を発現するためには0.05μm以上の厚みであることが好ましい。
なお、本明細書では、皮膜という表現を使用しているが、必ずしも連続膜である必要はなく、不連続膜、島状分散膜等の態様であっても構わない。
本発明の機能性アルミニウム建材の製造方法は、アルミニウム建材基材上に本発明の有機・無機複合体皮膜を形成する場合に限定されない。基材と本発明の有機・無機複合体を同時に成形、たとえば、一体成形してもよい。また、本発明の有機・無機複合体を成形後、基材の成形を行ってもよい。また、本発明の有機・無機複合体と基材を個別に成形後、接着、融着等により機能性アルミニウム建材としてもよい。
本発明の機能性アルミニウム建材の表面層には、Ag 、Cu 、Zn のような金属を添加することができる。前記金属を添加した表面層は、表面に付着した細菌や黴を暗所でも死滅させることができる。
【0053】
本発明の機能性アルミニウム建材は、アルミニウムまたはアルミ合金からなる基材の表面に陽極酸化皮膜が形成され、さらにこの陽極酸化皮膜上に光触媒含有皮膜が形成されたものが好ましい。陽極酸化皮膜は絶縁膜であり、しかも表面に直径約5nm 〜200nmの細孔が無数に開いた微多孔質で、しかも凹凸のある構造を有している。従って、該金属酸化物(A)が、光触媒活性を有する金属酸化物である場合、陽極酸化皮膜の絶縁効果によってアルミ合金地金に対する光触媒の酸化還元作用がある程度バリヤーされ、しかも、微多孔質構造によるアンカー効果によって、本発明の有機・無機複合体の密着性を向上させることができる。
本発明の機能性アルミニウム建材を得るのに使用できるアルミニウム建材基材には、下地調整、密着性向上、多孔質基材の目止め、平滑化、模様付けなどを目的として、予め表面処理を施すこともできる。表面処理としては、例えば、研磨、脱脂、メッキ処理、クロメート処理、火炎処理、カップリング処理などを挙げることができる。
【実施例】
【0054】
実施例、参考例及び比較例中において、各種の物性は下記の方法で測定した。
1.数平均粒子径
試料中の固形分含有量が1〜20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて測定した。
2.塗膜硬度
JIS−K5400に準じ、鉛筆硬度(皮膜のすり傷)として求めた。
3.透明性
透明性の度合いを目視にて評価した。
○:透明、△:若干白く、やや不透明、×:白く不透明
4.塗膜表面に対する水の接触角
塗膜の表面に脱イオン水の滴を乗せ、23℃で1分間放置した後、協和界面科学製CA−X150型接触角計を用いて測定した。
塗膜に対する水の接触角が小さいほど、塗膜表面は親水性が高い。
【0055】
5.耐水試験後の透明性
試料を23℃水中に10日間浸漬した後、23℃で1日乾燥させ、透明性を上記3の方法で評価した。
6.耐候試験後の透明性及び水の接触角
スガ試験器製サンシャインウェザーメーターを使用して曝露試験(ブラックパネル温度63℃、降雨18分/2時間)を行った。曝露500時間後の透明性を上記3の方法で、水の接触角を上記4の方法で評価した。
7.耐汚染性
試験板を一般道路(トラック通行量500〜1000台/日程度)に面したフェンスに1ヶ月間、及び6ケ月間張りつけた後、汚染の度合いを目視にて評価した。
○:汚れなし、△:やや雨スジ汚れ有り、×:著しく雨スジ汚れ有り
【0056】
8.光触媒活性
塗膜表面にメチレンブルーの5質量%エタノール溶液を塗布した後、東芝ライテック製FL20S BLB型ブラックライトの光を3日間照射した。なおこのとき、日本国トプコン製UVR−2型紫外線強度計{受光部として、日本国トプコン製UD−36型受光部(波長310〜400nmの光に対応)を使用}を用いて測定した紫外線強度が1mW/cmとなるよう調整した。
その後、メチレンブルーの分解の程度(塗膜表面の退色の程度に基づき、目視で評価)に基づき、光触媒の活性を以下の3段階で評価した。
○:メチレンブルーが完全に分解。
△:メチレンブルーの青色がわずかに残る。
×:メチレンブルーの分解はほとんど観測されず。
【0057】
[参考例1]
重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体の合成
還流冷却器、滴下槽、温度計および撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1750g、ドデシルベンゼンスルホン酸2gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、アクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液とジエチルアクリルアミド197g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1950gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10.0質量%に調整し、数平均粒子径100nmの重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体を得た。
【0058】
[参考例2]
重合体エマルジョン粒子(B−2)水分散体の合成
還流冷却器、滴下槽、温度計および撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1750g、ドデシルベンゼンスルホン酸4gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13gの混合液とジエチルアクリルアミド197g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1950gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10.0質量%に調整し、数平均粒子径180nmの重合体エマルジョン粒子(B−2)水分散体を得た。
【0059】
[実施例1]
参考例1で合成した重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体100gに、数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)50g、数平均粒子径10nmのシリカ被覆酸化チタンヒドロゾル(商品名「MPT−422」、石原産業(株)製、固形分20%)5gを混合、攪拌する事により水系汚染防止用組成物(E−1)を得た。
硫酸電解浴中で膜厚10μmの陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム板上に上記水系汚染防止用組成物(E−1)を膜厚が2μmとなるようにバーコートした後、50℃で10分間乾燥する事により塗装物(F−1)を得た。その評価結果を表1に示した。
【0060】
[実施例2]
参考例2で合成した重合体エマルジョン粒子(B−2)水分散体100gに、数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)50g、数平均粒子径10nmのシリカ被覆酸化チタンヒドロゾル(商品名「MPT−422」、石原産業(株)製、固形分20%)5gを混合、攪拌する事により水系汚染防止用組成物(E−2)を得た。
硫酸電解浴中で膜厚10μmの陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム板上に上記水系汚染防止用組成物(E−2)を膜厚が2μmとなるようにバーコートした後、50℃で10分間乾燥する事により、塗装物(F−2)を得た。その評価結果を表1に示した。
【0061】
[実施例3]
参考例1で合成した重合体エマルジョン粒子(B−2)水分散体100gに、数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)50gを混合、攪拌する事により水系汚染防止用組成物(E−3)を得た。
硫酸電解浴中で膜厚10μmの陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム板上に上記水系汚染防止用組成物(E−3)を膜厚が2μmとなるようにバーコートした後、50℃で10分間乾燥する事により塗装物(F−3)を得た。その評価結果を表1に示した。
【0062】
[比較例1]
参考例1で合成した重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体100gに、数平均粒子径10nmのシリカ被覆酸化チタンヒドロゾル(商品名「MPT−422」、石原産業(株)製、固形分20%)5gを混合、攪拌する事により水系汚染防止用組成物(E−4)を得た。
硫酸電解浴中で膜厚10μmの陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム板上に上記水系汚染防止用組成物(E−4)を膜厚が2μmとなるようにバーコートした後、50℃で10分間乾燥する事により塗装物(F−4)を得た。その評価結果を表1に示した。
【0063】
[比較例2]
硫酸電解浴中で膜厚10μmの陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム板上に参考例1で合成した重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体を膜厚が2μmとなるようにバーコートした後、50℃で10分間乾燥する事により塗装物(F−5)を得た。その評価結果を表1に示した。
【0064】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、トルエン等の強溶剤を使用することなく、耐候性、耐水性、光学特性、防曇性、帯電防止性等に優れ、セルフクリーニング性を有する機能性アルミニウム建材を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物(A)と、アミド基及び/または水酸基を有する水系バインダーを含んでなる水系有機・無機複合組成物から形成された有機・無機複合体を基材上に有することを特徴とするアルミニウム建材。
【請求項2】
該水系バインダーが、水及び乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合して得られる重合体エマルジョン粒子(B)を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム建材。
【請求項3】
該金属酸化物(A)の数平均粒子径が1〜400nmであり、該重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径が10〜800nmであることを特徴とする請求項2に記載のアルミニウム建材。
【請求項4】
該金属酸化物(A)が、二酸化珪素、光触媒活性を有する金属酸化物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【請求項5】
該重合体エマルジョン粒子(B)が、コア/シェル構造であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【請求項6】
該重合体エマルジョン粒子(B)が、水及び乳化剤の存在下にビニル単量体(C)及び/又は加水分解性金属化合物(b1)を重合して得られるシード粒子存在下に、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合して得られることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【請求項7】
該重合体エマルジョン粒子(B)が、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び/又は環状シロキサンオリゴマーを重合して得られるシード粒子存在下に、加水分解性金属化合物(b1)と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合して得られることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【請求項8】
該乳化剤が、酸性乳化剤及び/又は反応性乳化剤であることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【請求項9】
該シード粒子のガラス転移温度が、0℃以下であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【請求項10】
アルコールを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水系有機・無機複合組成物を塗装したアルミニウム建材。
【請求項11】
請求項5に記載の該重合体エマルジョン粒子(B)のシェル相と該金属酸化物(A)が相互作用した状態で連続層を形成し、該粒子(B)のコア相が該連続層中に存在する請求項5〜10のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【請求項12】
23℃における水接触角が60°以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のアルミニウム建材。
【請求項13】
23℃における水接触角が20°以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のアルミニウム建材。

【公開番号】特開2008−31299(P2008−31299A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206241(P2006−206241)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】