説明

機能性シートを収容可能なマスク

【課題】機能性シートを鼻の位置で確実に保持でき、高い機能性が付与されたマスクを提供することにある。
【解決手段】不織布で構成されたマスク本体1と、このマスク本体1の背面に形成され、鼻孔をカバー可能であり、かつ上部が開口したポケット部2とを備えたマスクを構成する。このマスクは、前記ポケット部2に機能性シート3を収容可能である。前記ポケット部の開口部2aは、マスク着用者側で開口し、装着状態において、マスク本体1に設けられた蓋部4で閉じられる。なお、ポケット部の開口部は、マスク本体側で開口し、装着状態において、マスク本体の背面で閉じられていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻孔をカバー可能であり、かつ機能性シートを収容可能なポケットを有するマスクに関する。特に、サイズが大きな機能性シート(例えば、厚みが大きく嵩高い機能性シートなど)を収容しても鼻や顎へのフィット性に優れ、密閉性が高く、高い機能性が付与されたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクは、産業用、医療用、家庭用として幅広く使用されている。マスクは、形状に応じて種々のタイプに分類され、例えば、平型マスク、折り畳んで形成したヒダ部(プリーツ部)を着用時に拡げて顎部に密着させるプリーツ型マスク、曲線状の周縁部を顔面に密着させることにより立体的に着用可能な立体型マスクなどが知られている。これらのマスクと機能性シートとを組み合わせて、マスクに機能性を付与する試みがなされている。例えば、機能性シートを収容した平型マスクとして、特開2004−230105号公報(特許文献1)には、多孔質吸着剤を含有する層が開孔不織布で被覆されたマスクが提案されている。しかし、このマスクは外観の寸法安定性を欠き、全体的に硬く鼻や顎に対するフィット性が充分でない。
【0003】
一方、機能性シートを収容したプリーツ型マスクも知られている。例えば、特開2007−319421号公報(特許文献2)には、保水液を保持可能な吸収性コアであって、目付が200〜1000g/mの繊維素材を有する吸収性コアを収容したマスクが開示されている。この文献には、吸収性コアを収容する収容体は、収容体上部のみでマスクに取り付けることが好ましいことが記載されている。また、実用新案登録第3150339号公報(特許文献3)には、鼻部及び口部を覆うマスク本体と、このマスク本体の両側縁に備えた耳掛け部と、前記マスク本体に設けられ、液剤が含浸されるマスク用液剤含浸シートを挿脱自在に収容するポケット部とからなるマスクであって、前記ポケット部は、基シートとポケット用シートが重ねられ、この基シートとポケット用シートとを、口、鼻の位置にポケット部が位置するように、上方が開口されたポケット用接着線をもって接着して形成され、このポケット用接着線により形成されるポケット部の輪郭線は、ポケット部に挿入されるマスク用液剤含浸シートに対応する形状に形成されている。
【0004】
しかし、これらのマスクは、プリーツ型であるものの、鼻や顎に対するフィット性や密閉性が充分でない。すなわち、マスク着用者の鼻梁に対応する位置が開口した収容部に被収容体を収容すると、マスクと鼻及びその周囲との間に隙間が生じやすく、フィット性や密閉性が低下する。特に、被収容体が、厚みの大きな嵩高いシートであると、より一層隙間が生じやすく、フィット性や密閉性が大きく低下する。また、被収容体が多孔質のシートであると息漏れも生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−230105号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2007−319421号公報(特許請求の範囲、段落[0030])
【特許文献3】実用新案登録第3150339号公報(実用新案登録請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、機能性シートを鼻の位置で確実に保持でき、高い機能性が付与されたマスクを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、厚みが大きく嵩高い機能性シートを収容しても、鼻や顎に対するフィット性に優れ、密閉性の高いマスクを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、通気性が高く、息苦しさや暑苦しさなどの不快感を軽減できるマスクを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、眼鏡をかけて装着しても眼鏡の曇りを防止できるマスクを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、サイズの大きな機能性シートを簡便に収容できるマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、マスク本体に機能性シートを収容可能なポケット部を形成し、マスクを装着した状態において、ポケット部の開口部をポケット部のフロント側及び/又は後側に位置させ、ポケット部の開口部を閉じ可能な構造を採用すると、機能性シート(例えば、ポケットの深さよりも縦長の機能性シートなどのサイズの大きな機能性シート)を収容しつつ、機能性シートを鼻の位置で確実に保持でき、高い機能性を付与できること、例えば、(i)ポケット部の後側に開口部を位置させると、開口部を蓋部でカバーして装着することにより、厚みが大きく嵩高い機能性シートを収容しても、マスクと鼻梁及びその周囲との隙間を蓋部で低減でき、フィット性や密閉性を向上できること、(ii)ポケット部のフロント側に開口部を位置させると、装着に伴って、マスク本体の背面で閉じることができ、機能性シート(特に、サイズの大きな機能性シート)を簡便に収容でき、高い機能性を容易に付与できることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明のマスクは、不織布で構成されたマスク本体と、このマスク本体の背面に形成され、鼻孔をカバー可能であり、かつ上部が開口したポケット部とを備えており、前記ポケット部には機能性シートを収容可能である。ポケット部の開口部は、ポケット部のフロント側(マスク本体側)及び/又は後側(マスク着用者側)で開口しており、装着状態で、ポケット部の開口部を閉じることができる。ポケット部の後側に位置する開口部は、マスク本体に設けられた蓋部で閉じ可能であり、ポケット部のフロント側に位置する開口部は、マスク本体の背面で閉じ可能である。
【0013】
前記ポケット部は、不織布シートの上端部を余して折り返して両側部同士を接合(縫合)することにより形成でき、上記上端部[又は非折返し部(又は余剰部)の上端]はマスク本体の上端部で固定できる。すなわち、ポケット部の上端部がマスク本体の上端で固定され、ポケット本体はマスク本体から遊離できる。さらに、マスク本体にプリーツ部が形成されていてもよい。このようにポケット本体がマスク本体から遊離して又は独立して形成されていると、マスク本体にプリーツ部が形成されていても、容易にプリーツ部を拡げることができる。さらに、ポケット部の底部が折り返し構造になっており、折返し部が自由に変形するため、厚みの大きな機能性シートを隙間無く(底部の近傍まで)挿入できる。
【0014】
前記ポケット部はポイントボンド不織布で構成されていてもよい。ポイントボンド不織布は、部分的に繊維が接着されているため、柔軟性が高い上に、油剤(ノニオン界面活性剤など)が残存しているため、帯電防止性も有しており、皮膚刺激性も少ない。
【0015】
前記蓋部はフラップ状に開閉可能であってもよい。すなわち、蓋部を開けることにより機能性シートをポケット部に収容可能であり、蓋部で開口部を塞ぐことにより、機能性シートの脱落を防止したり、機能性シートの露出部を被覆し皮膚との接触を防止できる。このような蓋部は、鼻の形状に応じて、比較的自由に可動でき、着用後のマスクのズレなどに対しても追従し、鼻梁とのフィット性を一層向上できる。
【0016】
前記蓋部は、吸水性不織布(親水性繊維と熱融着繊維とを含む不織布など)で構成されていてもよい。蓋部を吸水性不織布で構成すると、眼鏡をかけてマスクを装着しても、眼鏡の曇りを有効に防止できる。また、前記蓋部はポイントボンド不織布で構成されていてもよい。
【0017】
前記マスク本体は、エレクトレット加工されたメルトブローン不織布で構成された芯層と、この芯層の両面に積層され、不織布で構成された被覆層とを備えていてもよい。エレクトレット加工されたメルトブローン不織布で構成された芯層を用いると、マスク本体の防塵機能が向上する。
【0018】
本発明のマスクは、前記ポケット部に機能性シートを収容して利用される。機能性シートの収容形態は、特に限定されず、ポケット部に機能性シートを収容した状態で、開口部が閉じられた形態であればよく、例えば、ポケット部に収容される機能性シートは、縦の長さがポケット部の深さより大きくてもよい。
【0019】
前記機能性シートとしては、特に限定されず、化学物質を吸着可能なシート(活性炭を含有する発泡ウレタンシートなど)であってもよい。機能性シートの厚みは、2mm以上であってもよい。このような厚みの大きな機能性シートを収容しても、鼻梁へのフィット性や密閉性を発揮できる。特に、発泡ウレタンシートは、ポケット部の不織布構造との摩擦により、ポケット部に収容後の脱落も抑制できる。
【0020】
本発明には、前記マスクと機能性シートとのセットも含まれる。
【0021】
なお、本明細書中、特に言及しない限り、マスクの部位の位置は、マスクの着用時を基準とし、上部とはマスク着用時に鼻(鼻梁など)と接触する部位を意味し、下部とはマスク着用時に口や顎と接触する部位を意味し、側部とはマスク着用時に頬部と接触する部位を意味する。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、鼻孔をカバー可能であり、かつ上部に開口部を有するポケット部を形成し、装着状態において、ポケット部の開口部を閉じることができるので、ポケット部に機能性シート(例えば、化学物質を吸着可能な脱臭シート)を収容しつつ、機能性シートを鼻の位置で確実に保持でき、高い機能性(例えば、脱臭性)を付与できる。また、(i)ポケット部の後側の開口部をカバーするための蓋部を備えていると、ポケット部に厚みが大きく嵩高い機能性シートを収容しても鼻梁及びその周囲に対するフィット性が高く、密閉性にも優れる。蓋部が開口部に対してフラップ状に開閉可能であると、鼻梁へのフィット性がより高まる。また、蓋部を吸水性不織布で構成すると、眼鏡着用者がマスクを装着しても眼鏡の曇りを有効に防止できる。さらに、蓋部は機能性シートと皮膚との接触を防止できる。(ii)ポケット部のフロント側の開口部がマスク本体の背面で閉じることができる形態であると、機能性シート(特に、ポケットの深さよりも縦長の機能性シートなどのサイズの大きな機能性シート)をポケット部に簡便に収容でき、高い機能性を容易に付与できる。また、本発明では、マスク本体にプリーツ部を形成すると、鼻梁のみならず顎へのフィット性も高め、ポケット本体がマスク本体から遊離していると、プリーツを拡げるのを阻害しない。さらに、本発明では、ポケット部(及び蓋部)をポイントボンド不織布で構成すると、皮膚刺激性を低減でき、機能性シートを多孔質のシートで構成すると、通気性が高く、息苦しさや暑苦しさなどの不快感も軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明のプリーツ型マスクの一例を示す概略部分切欠背面図である。
【図2】図2は図1のマスクのA−A線概略模式断面図である。
【図3】図3は図1のマスク着用時の状態を示す概略斜視図である。
【図4】図4は本発明のプリーツ型マスクの他の例を示す概略部分切欠背面図である。
【図5】図5は図4のマスクのB−B線概略模式断面図である。
【図6】図6は図4のマスクのポケット部に機能性シートを収容する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要により添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明のマスクは、機能性シートを収容可能なポケット部(収容部又は収納袋)を有し、かつ不織布で構成されたマスクであって、マスク本体と、このマスク本体の背面(内側又は裏面)に形成され、かつ鼻梁に対応する位置に開口部(スリット状開口部など)を有するポケット部とを備えている。そして、ポケットの開口部は、ポケットのフロント側(マスク本体側)及び/又は後側(マスク着用者側)で開口しており、装着状態では、前記ポケットの開口部が閉じられている。
【0026】
ポケットの開口部は、例えば、マスク本体の背面に上端が固定された垂下部(フラップ)と、この垂下部の下端で前方(フロント側)又は後方(後側)に折り返された折返し部とを両側部で接合(縫合)することにより形成でき、ポケットのフロント側又は後側で開口していてもよい。また、ポケットの開口部は、マスク本体の背面に上端が固定された垂下部(フラップ)の少なくとも一方の面に、ポケットのフロント側及び/又は後側で開口した形態で、不織布シートの両側部及び下端部を接合(縫合)することにより形成してもよい。
【0027】
ポケットの後側の開口部を蓋部で閉じる形態のマスクにおいて、蓋部は、マスク本体に対して直接的に取り付けてもよく、マスク本体に接合されたポケット部に取り付けてもよい。また、蓋部は、ポケット開口縁に沿って設けてもよく、ポケット開口縁から上方に離れた部位で取り付けてもよい。蓋部の取付位置が、ポケット開口縁から上方に離れるほど、その分だけサイズの大きい機能性シートを収容できる。
【0028】
また、ポケットのフロント側の開口部をマスク本体の背面で閉じる形態のマスクにおいて、ポケットの開口縁とマスク本体に対するポケット又は垂下部(フラップ)の接合部とは、近接していてもよく、離れていてもよい。ポケットの開口縁とポケットの接合部とが離れるほど、その分だけサイズの大きい機能性シートを収容できる。
【0029】
図1は本発明のプリーツ型マスクの一例を示す概略部分切欠背面図であり、図2は図1のマスクのA−A線概略模式断面図であり、図3は図1のマスクのプリーツを広げた状態(着用時の状態)を示す概略斜視図である。この例では、略矩形状(長方形状)のマスク本体1と、略矩形状であり、かつ前記マスク本体1の内側(着用者側の内面、背面若しくは裏面)に形成され、着用時に鼻孔及び口をカバー可能なポケット部2と、このポケット部2に収容された機能性シート3と、前記ポケット部2の開口部2aに対してフラップ状に開閉可能な蓋部(カバー部)4とを備えている。すなわち、ポケット部2は不織布シートを上下方向に折り畳んで形成され、ポケット部2のマスク本体側の上端部がマスク本体1の上端で固定され、ポケット本体がマスク本体から遊離している。さらに、マスク本体1の四隅(又はその近傍)には、上下両端を連結する耳掛け部5が形成されている。図1のマスクは、ポケット部2の開口部2aがポケット部2の後側(マスク着用者側)で開口し、装着状態で、ポケット部2の開口部2aをマスク本体に設けられた蓋部4でカバーし閉じることができる。
【0030】
前記マスク本体1は、メルトブローン不織布で構成された芯層と、この芯層の両面に形成され、スパンボンド不織布で構成された被覆層とを備えた3層構造(図示せず)である。メルトブローン不織布及びスパンボンド不織布を構成する繊維は、ともにポリプロピレン繊維であり、保形性に優れる。また、メルトブローン不織布はエレクトレット加工されているため、防塵性に優れる。
【0031】
この例では、マスク本体1の上端中央部であって、マスク本体1の表面と裏面との間に、マスクの上辺と略平行に(横方向に)、鼻の凹凸形状に応じて屈曲可能な線状部材(又はノーズブリッジ)(図示せず)が埋設されている。このノーズブリッジは、変形形状保持性を有するポリエチレン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂とマイカやタルクなどの無機充填剤とを含む材料など)で構成されているため、鼻の形状に応じて屈曲可能であるとともに、変形形状保持性を有する。そして、このノーズブリッジを鼻の凹凸形状に応じて屈曲させることにより、ポケット部2、機能性シート3、及び蓋部4も追従して屈曲するため、マスクと鼻梁及びその周囲(上頬など)との密着性を向上できる。また、この例では、着用時に顎の形状に追従して拡がるように、マスク本体を折り畳んで両端を固定した三段プリーツ部(ひだ部)1aが横方向に並行して形成されている。プリーツ部1aを下方向に広げることで、マスクと口及びその周囲との間に空間が形成されるため、マスク装着者は楽に呼吸できる。
【0032】
前記ポケット部2は、重ね合わせた矩形状不織布シートの両端部同士が封止された袋状であり、上端部が開口し、機能性シート3を収容するための開口部2aを形成している。詳しくは、ポケット部2は、マスク本体1の背面に上端部が固定された垂下部(フラップ、マスク本体側の面)2bと、この垂下部の下端で後方(マスク着用者側の方向)に折り返された折返し部(マスク着用者側の面)2cとが、両側部で接合することにより形成されている。より具体的には、ポケット部2は、不織布シートの上部を余して折り返して両側部(両側縁)同士を接着することにより形成された形状である。ポケット部2の底部を折り返し構造とすることにより、底部が深くなり、機能性シートを底部の近傍まで挿入できる。また、不織布シートの上部を余して折り返すことにより、ポケット部2には開口部2aから延出した余剰部が形成されるので、この余剰部を利用して、マスク本体1とポケット部2と蓋部4とを容易に取り付けることができる。
【0033】
前記ポケット部2の上端(垂下部2bの非開口部側の上端)は、マスク本体1の裏面の上端部で接合され、ポケット部2は、上端部で横方向に延びる接合部を除いてマスク本体1と独立した構造となっているため、プリーツの開閉を阻害しない。
【0034】
この例では、ポケット部2は、縦方向の長さ(又は縦方向の内寸)がマスク本体と略同一であり、横方向の長さ(又は横方向の内寸)がマスク本体の約60%程度の長さである。なお、ポケット部2は、ポイントボンド不織布で構成されているため、肌に馴染みやすく、鼻部、口部、及び頬部との密着性も高まる。詳しくは、ポイントボンド不織布は、熱融着繊維などを利用して部分的に接着されているため、繊維の自由度が高く、柔軟であるだけでなく、油剤(ノニオン性界面活性剤など)が残存し、帯電防止性を有するため、皮膚刺激性も低く、人体に優しい。
【0035】
前記機能性シート3は、前記ポケット部2に収容可能であり、ポケット部と略同一の矩形状である。機能性シート3の縦方向の長さは、ポケット部2の深さ(マスク着用者側の面2cの縦方向の長さ)よりも大きい。この機能性シート3は、ポケット部2に収容されると、マスク着用者の鼻部、口部、及び頬部に対応する位置に位置決めされ、保持されるため、鼻孔及び口を機能性シートで遮蔽できる。この例では、機能性シート3は、ヤシ殻活性炭粒子を含有し、厚みが大きく嵩高い発泡ウレタンシートであるため、脱臭性に優れる。また、この機能性シート3は連続気泡の多孔質であるため、通気性が良好で、息苦しさや暑苦しさなどの不快感を軽減できる。
【0036】
前記蓋部4は、大きな機能性シートを収容するため、ポケット部2の開口縁から上方に離れた部位(詳細には、垂下部2bの開口部側の上端)で接合されている。より具体的には、前記蓋部4は、前記開口部2aに沿って横方向に延びる略矩形状(又は長方形状若しくは帯状形状)の蓋部であって、前記ポケット部2の垂下部(マスク本体側の面)2bの上端部から折返し部(マスク着用者側の面)2cの上端部に向かって庇状に延出し、開口部2aに対してフラップ状に開閉可能であると共に、マスク着用者の少なくとも鼻梁部と接触可能である。詳しくは、蓋部4の縦方向の長さ(又は幅)は20〜30mm程度であり、厚みの大きな機能性シートをポケット部に収容しても、蓋部4は機能性シート3の露出部の略全体を被覆すると共に、鼻梁部と密着できる。そのため、マスクと鼻及びその周囲(上頬など)との隙間を低減でき、フィット性に優れると共に、密閉性も向上できる。また、蓋部4はポケット部2の開口部2aに対してフラップ状に開閉可能であるため、蓋部が顔の形状に応じて比較的自由に動けるため、フィット性が一層向上する。さらに、この例では、蓋部は、吸水性不織布で構成されているため、呼気に含まれる水分が蓋部に吸着され、眼鏡着用者がマスクを装着しても眼鏡の曇りを有効に防止できる。すなわち、前記ポケット部2と機能性シート3と蓋部4とを組み合わせると、蓋部4が開閉式(開閉可能)で自由度が高いため、着用時に鼻の形状に応じて追従できるだけでなく、着用後のズレに対しても追従し、隙間を埋めてフィットすることにより、鼻からの呼気の漏れを抑制できる。なお、蓋部4は、前記ポケット部2とともに、前記機能性シート3の略全面を被覆可能であるため、マスク装着時に機能性シートと肌とが接触することを防止できる。
【0037】
前記耳掛け部5は、断面楕円(又は長円)形状の線状部材で構成され、それぞれの端部がマスク本体1の側辺の両端部に取り付けられている。この耳掛け部5は、伸長可能なゴム紐で形成されており、伸長させた状態で耳に掛けると、マスクを顔により密着させることができる。
【0038】
前記マスクのプリーツを広げた状態を示す図3からも明らかなように、前記マスクでは、比較的厚みが大きく嵩高い機能性シート3を収容しても、ポケット部2の開口部2aに対してフラップ状に開閉可能な蓋部4を設けることにより、蓋部4が鼻梁及びその周囲に密着して、マスクと鼻及びその周囲との隙間が低減され、マスクのフィット性を著しく向上できる。特に、プリーツ型マスクは、顎部ではプリーツを利用して折り返した被覆により呼気の漏れが少ない構造を形成できるのに対して、鼻梁では隙間が発生し易い弱点を有しており、嵩高い機能性シートを収容すると、ノーズブリッジを形成しても、マスク本体と機能性シートとの段差により、呼気の漏れが発生し易い構造となるが、蓋部4の存在により漏れの発生を効果的に抑制できる。一方で、嵩高い機能性シート3が支持体として作用するためか、プリーツ型のマスクの立体構造を安定化することにより、マスクと口及びその周囲との間には空間が形成されており、ポケット部2に収容された機能性シート3が多孔質であるため、通気性が高く、マスク着用者は、息苦しさや暑苦しさなどの不快感を抱かず、楽に呼吸できる。
【0039】
図4は本発明のプリーツ型マスクの他の例を示す概略部分切欠背面図であり、図5は図4のマスクのB−B線概略模式断面図である。
【0040】
図4の例では、マスク本体に対するポケット部の取り付け方が異なる点及び蓋部が設けられていない点を除き、図1と同様に構成されている。この例では、略矩形状のマスク本体11と、このマスク本体11の背面(又は裏面)に形成され、着用時に鼻孔及び口をカバー可能であり、かつ上部に開口部12aを有するポケット部12と、このポケット部12に収容された機能性シート13とを備えている。図4のマスクは、ポケットの開口部12aがフロント側(マスク本体側)で開口し、装着状態で、ポケットの開口部12aをマスク本体11の背面でカバーし閉じることができる。
【0041】
ポケット部12は、前記図1とは逆方向(前方、マスク本体側)に折り返されている点を除き、同様に形成されている。また、大きな機能性シートを収容するため、ポケット部12の開口縁とマスク本体11に対するポケット部12(又は垂下部12b)の接合部とが離れている。
【0042】
図6に前記マスクのポケット部に機能性シートを収容する方法を概略的に示す。図6からも明らかなように、垂下部12bの上部固定端を支軸としてポケット部12を回動し、ポケット部12をマスク表面(又は前面)側に位置させ、ポケット部の開口部12aを露呈させることにより、機能性シートをポケット部12に簡便に収容できる。さらに、機能性シート13をポケット部12に収容した状態で、ポケット部12を反対方向に回動させることにより、開口部12aをマスク本体11の背面でカバーして容易に閉じることができる。このような収容方法において、機能性シート13は、ポケットの深さよりサイズが大きくても、ポケット部12の回動を阻害しない限り、ポケット部12に容易に収容できる。従って、このようなマスクは、機能性シートを容易に収容でき、高い機能性を簡便に付与することができる。
【0043】
なお、ポケット部は、1枚の不織布シートを折り返して形成してもよいが、垂下部を形成する不織布シートと、垂下部に対してポケットを形成するための不織布シートとを所定部で接合(縫合)することにより形成してもよい。
【0044】
本発明のマスクは前記マスクに限定されず、以下の(A)マスク本体と、(B)ポケット部と、必要により(C)機能性シートと、(D)蓋部と、(E)耳掛け部とを備えたマスクであってもよい。
【0045】
(A)マスク本体
マスク本体の構成材料は、ソフトタッチで柔らかな肌触りを付与できる限り、特に限定されず、編織布(ガーゼなど)であってもよいが、通常、不織布で構成される。不織布を構成する繊維としては、ポリオレフィン系繊維(例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリビニル系繊維(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維などのビニルアルコール系繊維)、アクリル系繊維(例えば、アクリロニトリル繊維など)、ポリエステル系繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維など)、ポリアミド系繊維(例えば、ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維など)、ポリウレタン系繊維(例えば、ポリエステルポリオール型ウレタン繊維など)、セルロース系繊維[例えば、天然繊維(パルプ、木綿、羊毛、絹、麻など)、半合成繊維(トリアセテート繊維などのアセテート繊維など)、再生繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル(例えば、登録商標名:「テンセル」など)など)など]などが例示できる。これらの繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて(又は複合繊維として)使用できる。これらの繊維のうち、通気性、柔軟性、生産性などの点から、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維などが汎用され、保形性の点から、ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維が好ましい。
【0046】
ポリオレフィン系繊維を構成するオレフィン系樹脂(特にポリプロピレン系樹脂)の融点は、例えば、140〜180℃、好ましくは145〜175℃、さらに好ましくは150〜170℃程度であってもよい。
【0047】
不織布を構成する繊維には、熱融着性繊維(バインダー繊維)が含まれていてもよい。熱融着性繊維としては、例えば、鞘成分又は海成分が低融点樹脂で構成され、芯成分又は島成分が高融点樹脂で構成された芯鞘型又は海島型の複合繊維や混合紡糸繊維が例示できる。このような繊維としては、例えば、鞘成分又は海成分がポリエチレン系樹脂で構成され、芯成分又は島成分がポリプロピレン系樹脂で構成された芯鞘型又は海島型の複合繊維や混合紡糸繊維、鞘成分又は海成分がエチレン−ビニルアルコール系共重合体で構成され、芯成分又は島成分がポリプロピレン系樹脂などで構成された芯鞘型又は海島型の複合繊維や混合紡糸繊維などを挙げることができる。低融点樹脂の融点は、例えば、70〜170℃、好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは90〜140℃程度であってもよい。
【0048】
不織布は、繊維の表面又は内部に、慣用の添加剤、例えば、安定剤(銅化合物などの熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、分散剤、増粘剤、微粒子、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤、滑剤、抗菌剤、防虫・防ダニ剤、防カビ剤、つや消し剤、蓄熱剤、香料、蛍光増白剤、湿潤剤、可塑剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、繊維表面に担持されていてもよく、繊維中に含まれていてもよい。これらの添加剤の割合は、不織布全体に対して、例えば、30質量%以下(例えば、0〜30質量%)、好ましくは0.01〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%程度であってもよい。
【0049】
前記繊維の平均繊維径は、例えば、0.1〜100μm程度の範囲から選択でき、例えば、0.5〜80μm、好ましくは1〜50μm程度であってもよい。また、前記繊維の平均繊維長は、例えば、10〜100mm程度の短繊維であってもよいが、100mmを超える長繊維(実質的に連続したフィラメント)であってもよい。
【0050】
不織布の種類としては、フェルト、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、ポイントボンド不織布などが例示できる。
【0051】
マスク本体の構造は、単層構造、2層構造、3層以上の多層構造であってもよく、防塵性などの点から、3層以上の多層構造(特に3層構造)が好ましい。このような多層構造は、少なくとも芯層(又はフィルター層)と、この芯層の両面に形成された被覆層とを含んでいる。
【0052】
(芯層)
芯層を構成する材料としては、前記不織布から選択でき、防塵性などの点から、メルトブローン不織布であってもよい。不織布はエレクトレット加工されているのが好ましい。
【0053】
芯層を構成する不織布を構成する繊維としては、保形性などの点から、ポリオレフィン系繊維であるのが好ましい。ポリオレフィン系繊維を構成するオレフィン系樹脂としては、前記例示の樹脂が挙げられるが、エレクトレット効果及び機械的特性(寸法安定性など)を向上できる点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0054】
芯層を構成する不織布の目付は、防塵性などの点から適宜選択され、例えば、5g/m以上、好ましくは10g/m以上、さらに好ましくは15g/m以上(例えば、15〜25g/m)であってもよい。
【0055】
(被覆層)
被覆層を構成する材料としては、前記不織布から選択でき、例えば、スパンボンド不織布が汎用される。この不織布を構成する繊維としては、保形性などの点から、ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維であるのが好ましい。なお、表面側の被覆層と、マスク着用者側の被覆層とは同一又は異なっていてもよい。特に、マスク着用者側の被覆層としては、ソフトな肌触りや感触を考慮して、熱融着繊維で構成されたポイントボンド不織布であってもよい。
【0056】
被覆層を構成する不織布の目付は、防塵性などの点から適宜選択され、例えば、10〜30g/m、好ましくは12〜28g/m、さらに好ましくは15〜25g/m程度であってもよい。
【0057】
(プリーツ部)
マスク本体にはプリーツ部が形成されていなくてもよいが、マスクのフィット性の点やマスクと口及びその周囲との間に空間を形成し息苦しさや暑苦しさを軽減できる点から、プリーツ部が形成されているのが好ましい。プリーツ部は、伸縮の程度に応じて、1段又は複数段(例えば、1〜5段、好ましくは2〜4段程度)のヒダで構成されていてもよい。具体的には、同方向(下方向など)にヒダを連ねてもよく、上下対称に一段又は複数段の凹部状ヒダを連ねてもよい。なお、下方向のみにヒダを連ねると、下方向に選択的にプリーツを拡げることが可能となる。
【0058】
プリーツ部の両端部における固定方法としては、特に限定されず、例えば、超音波溶着する方法、バインダー繊維を利用する方法、縫製する方法などが挙げられる。また、両端部に不織布や織編物などで構成されたカバー部材を利用して融着又は縫製する方法であってもよい。
【0059】
マスク本体の形状は、マスク着用者の少なくとも鼻及び口を被覆可能な限り、矩形状(長方形状)に限定されず、円形状、楕円形状、菱形状、台形状であってもよいが、通常、矩形状である。矩形状のマスクの寸法としては、顔のサイズを考慮して、例えば、縦方向が50〜250mm(例えば、50〜240mm、好ましくは80〜220mm、さらに好ましくは100〜210mm、通常150〜200mm)程度、横方向が100〜250mm(例えば120mm〜220mm、好ましくは150〜200mm、さらに好ましくは160〜190mm、通常170〜180mm)程度であってもよい。なお、縦及び横方向の長さとは、プリーツ部が形成されている場合には、プリーツを拡げた場合の長さを意味する。
【0060】
マスク本体の目付は、例えば、10〜100g/m、好ましくは20〜80g/m、さらに好ましくは30〜70g/m程度である。
【0061】
マスク本体の通気度(JIS L 1096のフラジール形法に準拠した方法)は、例えば、10〜200cm/(cm・秒)、好ましくは30〜150cm/(cm・秒)、さらに好ましくは50〜100cm/(cm・秒)程度である。
【0062】
(ノーズブリッジ)
マスク本体にはノーズブリッジを設けず、鼻の凹凸形状に応じてマスク本体を中心で屈曲させてもよいが、マスクのフィット性(鼻部でのマスクの支持性など)の点から、ノーズブリッジを設けるのが好ましい。ノーズブリッジ(又はノーズクリップ、ノーズワイヤ、ノーズピースなど)の材料としては、マスク着用者の鼻部の凹凸形状に対応して屈曲可能であり、変形形状保持性を有する限り特に限定されず、例えば、金属(鉄、アルミニウムなど)、金属とプラスチックとの複合材料(例えば、金属をプラスチックで被覆した材料など)などであってもよいが、廃棄の容易性、安全性などの点から、プラスチック(ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリ乳酸などの生分解性樹脂など)と無機充填剤(ガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなど)とを含む材料が好ましい。なお、この材料において、プラスチックと無機充填剤との割合(重量比)は、前者/後者=50/50〜95/5(好ましくは60/40〜90/10)程度であってもよい。
【0063】
ノーズブリッジの形状は、鼻梁に追従して変形可能であれば特に限定されないが、通常、線状部材であり、断面形状は、楕円状、円状、四角形状などであってもよい。線状部材の全長(幅)は、例えば、5〜200mm、好ましくは10〜180mm、さらに好ましくは50〜150mm程度であってもよく、厚みは0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜1.2mm程度であってもよい。
【0064】
ノーズブリッジは、マスク本体の表面と裏面との間に設けてもよく、マスク本体の表面又は裏面に取り付けてもよい。
【0065】
なお、必要により、ノーズブリッジと同じ材質の部材をマスク本体の下端部に設けてもよい。このような部材を設けることにより、マスク着用者の顎の形状に応じて屈曲させて、マスクのフィット性を向上させることができる。
【0066】
(B)ポケット部
ポケット部(収容部)は、機能性シート(厚みが大きく嵩高い機能性シートなどのサイズの大きな機能性シート)を収容可能であるとともに、この機能性シートをマスク着用者の少なくとも鼻部及び口部(特に鼻部、口部、及び頬部)に対応する位置に位置決めしつつ保持可能である。
【0067】
ポケット部(ポケット部用シート)の構成材料としては、マスク本体と同様の材料が例示でき、通常、不織布であり、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ポイントボンド不織布で構成される場合が多い。スパンボンド不織布やメルトブローン不織布は、通常、ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維で構成される。一方、ポイントボンド不織布は、通常、ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維又は前記熱融着繊維で構成される。これらのうち、皮膚に対する風合いや低刺激性などの点から、ポイントボンド不織布(特に、ポリプロピレン系繊維を含むポイントボンド不織布)が好ましい。
【0068】
不織布の目付は、特に限定されず、例えば、通気性などの点から、10〜30g/m、好ましくは12〜28g/m、さらに好ましくは15〜25g/m程度であってもよい。
【0069】
ポケット部の形状は、特に限定されず、マスク本体に対して1枚の不織布シートを固定して上部に開口部を形成した形状(詳細には、1枚の不織布シートの下部及び両側部をマスク本体と縫合(接着)した形状)、箱状などの立体形状であってもよいが、厚みが小さく、かつマスク本体から遊離又は独立してプリーツの自由度を損なわない点などから、平面矩形状の袋状(矩形シートを重ねて合わせて形成された袋状)が好ましい。具体的には、2枚の矩形形状の不織布シートを重ねて上部を除く三つの辺を接着することにより形成された形状であってもよく、1枚の矩形形状の不織布シートを下部で折り返して両側部(両側縁)同士を接着することにより形成された形状であってもよいが、厚みの大きな長尺なシートの収容性に優れる点などから、1枚の矩形形状の不織布シートを下部で折り返して両側部(両側縁)同士を接着することにより形成された形状が好ましい。さらに、ポケット部の形状は、1枚の矩形形状の不織布シートの両端(上下端)を揃えて折り返して両側部を接合した形状であってもよいが、1枚の矩形形状の不織布シートの上部を余して折り返して両側部を接合した形状であるのが好ましい。ポケット部の取付方法は、ポケット部のマスク本体側の全面や全周をマスク本体と接着してもよいが、プリーツ型マスクではプリーツを広げるのを阻害しない点から、ポケット本体をマスク本体から遊離させて取り付けられるのが好ましく、通常、ポケット部の上端がマスク本体の上端に取り付けられる。接着方法としては、縫製、超音波溶着、熱融着などであってもよいが、簡便かつ強固に接着できる点から、超音波溶着(特に、バインダー繊維を利用した超音波溶着)が好ましい。
【0070】
開口部の位置や大きさは、鼻梁と接触する位置であれば、特に限定されないが、鼻孔や口を充分にカバーできる大きさでポケット部の上部に形成するのが好ましい。
【0071】
ポケット部の大きさは、収容される機能性シートが鼻孔及び口をカバーできる大きさであればよい。ポケット部(又はポケット部のマスク本体側の面若しくはマスク着用者側の面)の縦横の長さは、後述の機能性シートの大きさに応じて適宜選択されるが、縦の長さ(又は縦方向の内寸)は、例えば、機能性シートの縦の長さよりも30mm以上大きくてもよく、110〜150mm程度であり、横の長さ(又は横方向の内寸)は、例えば、機能性シートの横の長さよりも5mm以上大きくてもよく、110mm以上、好ましくは120mm以上(例えば、130〜160mm程度)である。
【0072】
(C)機能性シート
本発明のマスクは、ポケット部に機能性シートを収容して利用される。機能性シートは、特に限定されず、各種の機能性シートが収容可能である。機能性シートは、マスクに機能性を付与できる限り、特に限定されず、例えば、不純物吸着可能なシート(化学物質吸着可能なシートなど)、薬剤含有シート(抗菌又は抗ウィルス性シートなど)などであってもよい。なお、機能性シートは、ドライシート[実質的に液体成分(水など)を含有しないシート]である。また、機能性シートは表面凹凸構造を有するシート[多孔質シート(例えば、多孔度10〜95%、特に50〜95%程度の多孔質シートなど)]であってもよい。本発明では、嵩高くて、厚みの大きい機能性シート、例えば、化学物質吸着可能なシートに対して有効である。
【0073】
化学物質吸着可能なシートとしては、活性炭を含む発泡ウレタンシートなどが挙げられる。活性炭としては、例えば、植物系の炭素質材料(木材、木炭、もみ殻、ヤシ殻、パーム殻などの果実殻など)、鉱物系の炭素質材料(石油系ピッチ、石炭系ピッチ、コークスなど)、天然繊維(木綿、麻など)、再生繊維(レーヨン、ビスコースレーヨンなど)、半合成繊維(アセテート、トリアセテートなど)などが挙げられる。活性炭は被吸着体の種類に応じても選択でき、例えば、ホルムアルデヒド吸着用としては、前記活性炭にリンゴ酸を付着させるのが好ましい。これらの活性炭は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの活性炭のうち、ヤシ殻、パーム殻(特にヤシ殻)などが好ましい。
【0074】
活性炭の形状は、粉状、粒状、繊維状であってもよく、粒状が好ましい。活性炭粒子の平均粒径は、例えば、10〜100μm、好ましくは15〜70μm、さらに好ましくは20〜50μm程度であってもよい。なお、粒径100μm以上(好ましくは70μm以上)の活性炭粒子の重量割合が10%未満であることが望ましい。また、活性炭の比表面積は、例えば、500〜2500m/g、好ましくは700〜2000m/g程度である。
【0075】
発泡ウレタンシート(ポリウレタン系発泡体)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなど)又は末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと、ポリオール成分(例えば、エチレングリコールやテトラメチレングリコールなどのアルキレングリコール又はこれらのアルキレンオキサイド付加物、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなど)又はポリアミン成分(例えば、エチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、ジアミノトルエンやジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンなど)と、発泡剤(水、炭酸ガス、空気、揮発性発泡剤など)と、硬化剤とを含む組成物で形成された発泡シートなどであってもよい。
【0076】
発泡ウレタンシートは、通気性の点から、少なくとも連続気泡構造を有しており、独立気泡構造と連続気泡構造との組み合わせであってもよいが、通常、連続気泡構造である。
【0077】
発泡倍率は、例えば、1.1〜200倍、好ましくは1.5〜100倍、さらに好ましくは2〜50倍程度の範囲から選択できる。このような倍率で発泡され、かつ連続気泡構造を有する発泡ウレタンシートは、表面多孔質構造を有するため、ポケット部に収容すると、ポケット部の繊維構造との摩擦力により脱落が抑制されるとともにポケット部で滑ってずれることなく所定の位置で位置決めされる。
【0078】
発泡ウレタンに対する活性炭の付着量は、厚みに応じて選択できるが、例えば、10〜300g/m、好ましくは30〜200g/m、さらに好ましくは50〜150g/m、(特に80〜130g/m)程度であってもよい。前記粒径の活性炭粒子をこのような割合で担持した発泡シートは、剛性を有し、肌触りも悪いシートであるが、蓋材でカバーできるとともに、鼻梁に対するフィット性を向上できる。
【0079】
活性炭を含有する発泡ウレタンシートは、慣用の方法により製造でき、例えば、発泡ウレタンシートに活性炭を付着又は含浸させることにより得てもよい。
【0080】
抗菌性シートとしては、例えば、抗菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化ジステアリルメチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩;安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステルなどの安息香酸類;サリチル酸、サリチル酸ナトリウムなどのサリチル酸類;銀系抗菌剤;カテキンなど)を含む不織布シートであってもよい。この不織布を構成する繊維としては、マスク本体の項で例示した繊維が挙げられ、通常、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維などである。また、不織布の目付は、例えば、50〜300g/m、好ましくは100〜250g/m、さらに好ましくは120〜200g/m(例えば、150〜180g/m)程度であってもよい。
【0081】
機能性シートの形状は、ポケット部に収容可能である限り、特に限定されず、例えば、ポケット部と相似形又は略同一の形状であってもよく、通常、矩形状(長方形状)である。縦の長さは、縦方向のリークを防止する点から、80〜100mm程度である。なお、本発明では、縦の長さがポケット部の深さより大きくてもよい。このような縦長の機能性シートであっても、ポケット部の開口部を閉じつつ、ポケット部と蓋部及び/又はマスク本体の背面とで機能性シートの略全面をカバーできる。横の長さは、横方向のリークを防止する点から、100mm以上、好ましくは110mm以上、さらに好ましくは120mm以上(例えば120〜150mm程度)である。縦横の長さが前記範囲にあると、リークが大きくなって機能性シートからの吸排気ができずに機能性を損なうことを防止できる。
【0082】
機能性シートの厚みは、特に限定されず、例えば、1mm以上(例えば1〜5mm程度)であってもよく、好ましくは1.5mm以上(例えば、1.5〜4mm程度)、さらに好ましくは2mm以上(例えば、2〜3mm程度)であってもよい。また、機能性シートの目付量は、例えば、30〜500g/m、好ましくは50〜400g/m、さらに好ましくは100〜300g/m(特に150〜250g/m)程度であってもよい。本発明では、比較的厚みの大きく嵩高い機能性シートを収容してもフィット性を著しく向上できる。
【0083】
(D)蓋部(カバー部)
蓋部は、マスク着用者の少なくとも鼻梁と接触可能であるのが好ましく、マスクの鼻梁に対するフィット性向上の機能を有するが、他にも、機能性シートの脱落防止(特に、向きを誤って着用した場合における機能性シートの脱落防止)や、機能性シートと皮膚との接触防止などの機能も有する。
【0084】
蓋部の構成材料としては、通気性や可撓性(柔軟性)を有し、柔らかな肌触りで、鼻梁との密着性を損なわない材料であれば、特に限定されず、通常、不織布である。蓋部を構成する不織布は、スパンボンド不織布又はメルトブローン不織布であってもよいが、皮膚に対する風合いや低刺激性などの点から、ポイントボンド不織布が好ましい。
【0085】
蓋部を構成する不織布の材質としては、特に限定されず、眼鏡着用者がマスクを装着しても眼鏡の曇りを防止できる点から、マスク着用者の呼気に含まれる水分を吸着可能な不織布(吸水性不織布)であるのが好ましい。吸水性不織布としては、少なくとも親水性繊維を含み、蓋部の接着性の点から、親水性繊維と熱融着繊維との組み合わせが好ましい。
【0086】
親水性繊維としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系繊維、ポリ乳酸などのポリ乳酸系繊維、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体繊維、パルプ、レーヨン繊維、アセテート繊維などのセルロース系繊維などが挙げられる。さらに、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの親水性樹脂を鞘部や海部に有する複合繊維であってもよい。これらの親水性繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、パルプやレーヨン繊維などのセルロース系繊維や、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維などのビニルアルコール系繊維で構成された不織布などが好ましい。熱融着繊維としては、前記マスク本体の項で例示された熱融着繊維を利用でき、ポリオレフィン系のバインダー繊維などであってもよい。
【0087】
親水性繊維と熱融着繊維との割合(質量比)は、例えば、前者/後者=99/1〜1/99程度の範囲から選択でき、90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70程度であってもよい。
【0088】
蓋部を構成する不織布の目付は、鼻梁に対するフィット性を損なわない限り、特に限定されず、例えば、10〜30g/m、好ましくは12〜28g/m、さらに好ましくは15〜25g/m程度であってもよい。
【0089】
蓋部を構成する不織布の見かけ密度は、例えば、0.2〜2.0g/cm、好ましくは0.3〜1.0g/cm、さらに好ましくは0.5〜0.8g/cm程度であってもよい。
【0090】
蓋部を構成する不織布の通気度は、例えば、10〜200cm/(cm・秒)、好ましくは30〜150cm/(cm・秒)、さらに好ましくは50〜100cm/(cm・秒)程度であってもよい。
【0091】
蓋部の形状は、ポケット部の開口部をカバーできれば特に限定されず、円形状、楕円形状、台形状などであってもよいが、通常、ポケット部の形状に対応させて、矩形状又はフラップ状(長方形状)である。さらに、蓋部の大きさは、ポケット部の開口部の少なくとも一部をカバー可能であれば、特に限定されないが、機能性シートが皮膚と接触せず、かつ鼻梁とのフィット性を向上させる点から、開口部全体をカバー可能なフラップ状(又は長尺状)であるのが好ましい。
【0092】
蓋部の幅(縦方向の長さ)は、鼻梁との接触性や機能性シートの厚みなどに応じて適宜選択でき、例えば、10〜50mm、好ましくは15〜40mm、さらに好ましくは20〜30mm程度であってもよい。
【0093】
蓋部の厚みは、フィット性を損なわない限り、特に限定されず、例えば、0.01〜2mm、好ましくは0.1〜1.8mm、さらに好ましくは0.5〜1.5mm程度であってもよい。
【0094】
蓋部の取付部位は、特に限定されないが、自由度を持たせる点から、蓋部の上端部をマスク本体及び/又はポケット部の上端部に取り付けるのが好ましい。すなわち、蓋部をこのような部位に取り付けることにより、蓋部が開口部に対してフラップ状に開閉可能となり、鼻梁及びその周囲の形状に合わせて自由に屈曲できるため、マスクと鼻梁及びその周囲との密着性を著しく向上できる。また、蓋部が開閉式であると、機能性シートを挿脱可能となり、機能性シートを交換することにより、マスクをリサイクルして使用できる。特に、蓋部がフラップ状に開閉可能であり、自由度が高いため、左右方向だけでなく、上下方向にも撓むことが可能であり、鼻梁とマスクとの隙間を埋めることができ、かつ着用時のずれなどにも柔軟に追従できる。接着方法としては、縫製、超音波溶着、熱融着などであってもよいが、簡便かつ強固に接着できる点から、超音波溶着(特に、バインダー繊維を利用した超音波溶着)が好ましい。
【0095】
(E)耳掛け部
マスク本体には、耳掛け部を設けずに、マスク本体の両側部において耳を収容する孔部を形成してもよいが、通常、マスク本体の両側部(両側縁)に耳掛け部を設ける。
【0096】
耳掛け部の構成材料としては、特に限定されず、装着性の点から柔軟な材料であり、長期間に亘るマスク着用によっても劣化しない耐久性を有していれば好ましく、通常、ゴム(丸ゴム、平ゴムなど)である。
【0097】
耳掛け部の形状は、特に限定されず、通常、線状部材であり、断面形状は、装着性の点から、楕円状、長円状、棒状、円状などが挙げられるが、通常、円状、長円状(又は棒状)であるが、長時間使用しても肌に負担が少ない点から、長円状(又は棒状)が好ましい。
【0098】
本発明のマスクとしては、平型マスク、立体型マスクであってもよいが、フィット性や呼気の漏れを有効に防止できる点からプリーツ型マスクが好ましい。
【0099】
マスクの重量は、特に限定されず、不織布の目付によっても変動するが、例えば、1〜10g、好ましくは2〜8g、さらに好ましくは3〜5g程度であってもよい。
【0100】
本発明のマスクは、フィット性が高く、息漏れ(特に鼻部からの息漏れ)を有効に防止できる。また、本発明のマスクは、通気性が高く、マスク着用者の息苦しさや暑苦しさなどの不快感を軽減でき、例えば、通気度は、10cc/cm・秒以上(例えば、10〜200cc/cm・秒)、20〜150cc/cm・秒、さらに好ましくは30〜100cc/cm・秒(特に40〜60cc/cm・秒程度)であってもよい。
【0101】
[マスクの製造方法]
本発明のマスクは、慣用の方法により製造でき、例えば、マスク本体とポケット部と蓋部とを接着することにより得てもよい。接着順序は特に限定されず、例えば、マスク本体とポケット部とを接着した後、必要により蓋部をマスク本体又はポケット部に接着してもよい。接着方法としては、例えば、熱又は超音波による接着、縫製などが挙げられる。
【0102】
なお、マスク本体は、例えば、不織布を積層した不織布積層体の端部を接着することにより形成できる。また、プリーツは、慣用の方法、例えばローラー加工、ヒートプレス加工などにより形成できる。
【0103】
ポケット部の形成方法は、ポケット部の形状に応じて選択でき、特に限定されず、例えば、マスク本体と独立してポケット部を形成する場合、不織布シートを折り返して両側縁を接着することにより形成してもよい。
【0104】
蓋部の接着工程は、例えば、ポケット部の形成工程において、不織布シートを両側で折り返すことにより、省略することもできるが、蓋部とポケット部との材質を異なる材質で構成される場合など、独立した蓋部をポケット部に接着してもよい。
【0105】
ポケット部への機能性シートの収容方法としては、特に限定されず、ポケット部の製造過程で機能性シートを収容する方法(例えば、ポケット部用シートで機能性シートを被覆する方法など)であってもよいが、ポケット部の開口部を介して機能性シートを挿入する方法であってもよい。なお、後者の収容方法では、例えば、U字状の挟持部材により機能性シートを挟持した状態でポケット部へ挿入し、機能性シートを押さえつつ、挟持部材のみを取り出すことにより、機能性シートをポケット部の底部近傍まで挿入可能である。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0107】
実施例1
(マスク本体の形成工程)
第1の被覆材[ポリプロピレン繊維で構成されたスパンボンド不織布(目付20g/m、厚み0.2mm、通気度350cm/(cm・秒))]と、フィルター部材[ポリプロピレン繊維で構成されたメルトブローン不織布((株)クラレ製、PS0020、目付20g/m、厚み0.23mm/枚、通気度70cm/(cm・秒))]と、第2の被覆材[ポリプロピレン繊維で構成されたスパンボンド不織布(目付25g/m、厚み0.26mm、通気度280cm/(cm・秒))]とを順次重ねた不織布積層体に対して、プリーツ加工した後、ノーズブリッジを挿入して、上端と下端とを超音波で接着させて、長手方向に裁断し、裁断した端面を不織布でカバーして超音波により接着して、マスク本体とした。このマスク本体の四隅に、横方向の上下両端を連結する耳掛け部(ゴム紐)を接着した。
【0108】
(ポケット部の形成工程)
熱処理されたポリプロピレン繊維のポイントボンド不織布の上部を余して折り返し、超音波により両端縁を接着してポケット部を形成した。
【0109】
(マスク本体とポケット部との接着工程)
マスク本体の上端とポケット部の上端(非開口部側の上端)とを合わせて、両者を超音波により接着させた。
【0110】
(蓋部の接着工程)
親水性繊維としてのレーヨンと、熱融着繊維(芯部がポリエステルで構成され、かつ鞘部がポリエチレンで構成された複合繊維)とを前者/後者(質量比)=60/40の割合で含むポイントボンド不織布で構成された蓋部の上端とポケット部の上端(開口部側の上端)とを超音波で接着させた。
【0111】
(機能性シートの収容工程)
先端がU字状の薄板で形成された治具で機能性シート[クラシート#1000(クラレケミカル(株)製、活性炭粒子を含有する発泡ウレタンシート、寸法85mm×120mm、厚み2mm、発泡ウレタンに対する活性炭の付着量90g/m、シートの目付量160g/m)]を挟持し、ポケット部へ挿入後、U字の内部を押さえて、治具のみを取り出すことにより、機能性シートを挿入した。
【0112】
以上の工程を経て、図1に示すようなプリーツ型マスクを作製した。
【0113】
得られたマスクを眼鏡をかけて着用した結果、顎部だけでなく、鼻梁部においても隙間無くフィットし、眼鏡の曇りも抑制された。
【0114】
実施例2
機能性シートとして、銀系抗菌剤を練り込んだポリエステル繊維と熱融着繊維(芯部がポリエステルで構成され、かつ鞘部がポリエチレンで構成された複合繊維)とを前者/後者(質量比)=70/30の割合で含むニードルパンチ不織布(目付100g/m、厚み1mm)を140℃の熱風処理した抗菌シート(寸法80mm×110mm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてプリーツ型マスクを作製した。
【0115】
得られたマスクを眼鏡をかけて着用した結果、顎部だけでなく、鼻梁部においても隙間無くフィットし、眼鏡の曇りも抑制された。
【0116】
実施例3
機能性シートとして、緑茶から抽出されたカテキン系抗菌防臭剤を練り込んだポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布(目付150g/m、厚み1.5mm)で構成されたシート(寸法85mm×120mm)を用いた以外は実施例1と同様にしてプリーツ型マスクを作製した。
【0117】
得られたマスクを眼鏡をかけて着用した結果、顎部だけでなく、鼻梁部においても隙間無くフィットし、眼鏡の曇りも抑制された。
【0118】
比較例1
実施例1と同様の第1の被覆材、機能性シート(クラシート♯1000)、PPMB不織布、及び第2の被覆材を重ねてプリーツ加工したが、クラシートの基材が発泡ウレタンであるため、超音波シールできず、他の資材がオレフィン系繊維のため接着もできなかった。
【0119】
比較例2
実施例2と同様の第1の被覆材、抗菌シートと、PPMB不織布、及び第2の被覆材を重ねてプリーツ加工を試みたが、厚みが大きすぎて反発が発生してプリーツ加工できなかった。
【0120】
比較例3
抗菌ポリプロピレンスパンボンド不織布(厚み0.5mm、目付75g/m)をプリーツ加工しマスク本体とした。しかし、マスク本体には厚みがあり曲げ難く、マスクのフィット性が低下した。
【0121】
実施例4
マスク本体の上端とポケット部の上端(開口部側の上端)とを超音波により接着させる点、及び蓋部を形成しない点を除き、実施例1と同様にして、図4に示すようなプリーツ型マスクを作製した。
【0122】
得られたマスクは、ポケット部の深さよりも縦長の機能性シートを簡便に収容でき、装着状態において、機能性シートを鼻の位置で固定でき、機能性(脱臭性)に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のマスクは、種々の用途、例えば、家庭用、医療用、産業用などに適用できる。特に、本発明のマスクは、ポケット部に厚みが大きく嵩高い機能性シートを収容しても、鼻梁に対して高いフィット性及び機能性を付与できる。そのため、化学物質過敏症用マスク、花粉症マスク、防塵マスク、脱臭マスク、衛生マスク、抗菌マスク、抗ウィルスマスクなどとしても好適に利用できる。具体的には、本発明のマスクは、粉塵の発生する作業環境、臭いの発生する作業環境(例えば、石油化学工場、製薬工場、塗料・塗装工場、自動車修理工場、肥料工場などの各種工場、各種研究所、除草・殺虫作業環境など)などにおいて有効に利用できる。
【符号の説明】
【0124】
1,11…マスク本体
1a,11a…プリーツ部
2,12…ポケット部
2a,12a…開口部
2b,12b…垂下部
2c,12c…折返し部
3,13…機能性シート
4…蓋部
5,15…耳掛け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布で構成されたマスク本体と、このマスク本体の背面に形成され、鼻孔をカバー可能であり、かつ上部が開口したポケット部とを備え、前記ポケット部に機能性シートを収容可能なマスクであって、ポケット部の開口部が、ポケット部のフロント側及び/又は後側で開口しており、装着状態で、ポケット部の開口部が閉じているマスク。
【請求項2】
ポケット部の後側に位置する開口部が、マスク本体に設けられた蓋部で閉じ可能であり、ポケット部のフロント側に位置する開口部が、マスク本体の背面で閉じ可能である請求項1記載のマスク。
【請求項3】
ポケット部がポイントボンド不織布で構成されている請求項1又は2記載のマスク。
【請求項4】
ポケット部が、不織布シートの上端部を余して折り返して両側部同士を接合することにより形成され、前記上端部がマスク本体の上端部で固定されている請求項1〜3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
蓋部がフラップ状に開閉可能である請求項1〜4のいずれかに記載のマスク。
【請求項6】
蓋部が吸水性不織布で構成されている請求項1〜5のいずれかに記載のマスク。
【請求項7】
吸水性不織布が親水性繊維と熱融着繊維とを含む請求項6記載のマスク。
【請求項8】
蓋部がポイントボンド不織布で構成されている請求項1〜7のいずれかに記載のマスク。
【請求項9】
マスク本体にプリーツ部が形成されている請求項1〜8のいずれかに記載のマスク。
【請求項10】
マスク本体が、エレクトレット加工されたメルトブローン不織布で構成された芯層と、この芯層の両面に積層され、不織布で構成された被覆層とを備えた請求項1〜9のいずれかに記載のマスク。
【請求項11】
さらに機能性シートがポケット部に収容された請求項1〜10のいずれかに記載のマスク。
【請求項12】
機能性シートの縦の長さが、ポケット部の深さよりも大きい請求項11記載のマスク。
【請求項13】
機能性シートが、化学物質を吸着可能なシートである請求項11又は12記載のマスク。
【請求項14】
化学物質を吸着可能なシートが、活性炭を含有する発泡ウレタンシートである請求項13記載のマスク。
【請求項15】
機能性シートの厚みが2mm以上である請求項11〜14のいずれかに記載のマスク。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかに記載のマスクと機能性シートとのセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−135598(P2012−135598A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43909(P2011−43909)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(307046545)クラレクラフレックス株式会社 (50)
【Fターム(参考)】