説明

機能性ジェルの製造方法

【課題】 内部に大量の気体を保持した機能性ジェルを提供する。
【解決手段】容器1内に水または低粘性の溶液を入れ、この水または低粘性の溶液中にガスを送り込んで気泡5を発生させ、発生した気泡5のうち微細な気泡5aの一部が水面まで到達せずに液圧によって圧潰して消失するのを待って、前記水または低粘性の溶液にゲル化剤を添加し、前記水または低粘性の溶液をゲル化せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水または低粘度の溶液から機能性ジェル(ゼリー)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油性ジェル(W/O型エマルション)の製法と、水性ジェル(O/W型エマルション)の製法が記載され、水性ジェルの製法として、水素ガスが溶存する加水素水を作製する工程と、次の工程で前記加水素水に水溶性高分子(ゲル化剤)を溶解させる工程が記載されている。
【0003】
特許文献2には、高温状態の豆乳7にエアーを注入して、気泡を含有させた後、ゲル化剤を添加し、凝固させてフリーズドライ豆腐用豆腐を製造する方法が記載されている。
【0004】
特許文献3には、容器に入れた水中に水素ガスの微細気泡を発生させ、この状態の水を隣接する別の容器内にチューブラーポンプを介して送り込み、微細気泡が水中に留まっている間にゲル化剤を添加し、水をゲル化せしめて内部に水素ガスの微細気泡を保持せしめることが記載されている。
【0005】
特許文献4には、水中に発生する気泡は、その粒径によって全く異なる挙動を示すことが記載されている。
即ち、図3に示すように、粒径が50μm程度の微細気泡は、水中で徐々に小さくなって最終的には消滅してしまう。この消滅のメカニズムは、微細気泡表面と気泡を取り囲む液体との界面(気液界面)の表面張力は、粒径が小さくなると大きくなるため気泡は小さくなる。気泡が小さくなると気泡内は高圧となり気体の溶解度が増し、気泡内のガスが周囲の水(溶媒)に溶解する。この溶解によって気泡は更に小さくなり、気泡内部は更に高圧になる。これを繰り返すことで最終的には気泡は圧潰すると言われている。圧潰する時の圧力は1000気圧以上とも言われている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−314496号公報
【特許文献2】特開2001−000126号公報
【特許文献3】特許第4450863号公報
【特許文献4】特許第4378543号公報
【特許文献5】特許第4144669号公報
【特許文献6】特許第4080440号公報
【特許文献7】特許第4059506号公報
【特許文献8】特開2009−039600号公報
【特許文献9】特開2009−084258号公報
【特許文献10】特開2009−131769号公報
【特許文献11】特開2009−131770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に開示されるように、ジェル内にガスを保持せしめることで、サプリメントとして或いはガスの運搬(担持)手段として従来にはない利用方法が考えられる。
【0008】
しかしながら、ジェル内にガスを保持せしめるとしても保持できるガス量は、ジェルとなる前の水(水溶液)中に溶解しているガスと、ジェル内に気泡として分散しているガスとの和になる。水(水溶液)中に溶解するガスの最大量は飽和濃度で規定され、これ以上の量のガスを保持することはできない。
【0009】
一方、特許文献4〜11には微細気泡の圧潰のメカニズムが記載され、圧潰した後、一時的に溶液内にガスが留まるという記述はあるが、それらを保持する手段についての示唆はなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解消するため本発明は、容器内に水または低粘性の溶液を入れ、この水または低粘性の溶液中にガスを送り込んで気泡を発生させ、発生した気泡のうち微細な気泡の一部が水面まで到達せずに液圧によって圧潰して消失するのを待って、前記水または低粘性の溶液にゲル化剤を添加し、前記水または低粘性の溶液をゲル化せしめるようにした。
【0011】
ここで、本発明における低粘性の溶液とは、気泡が内部で停止せず浮力によって溶液中を上昇し得る粘度を指す。発生した気泡が上昇しないような粘性のものはジェルにする意味がなく、本発明の低粘性の溶液には含まない。具体的には、低粘性の溶液とは水溶液の他に有機溶媒(アルコール、エーテル、ベンゼン、アセトン、トルエン、ヘキサンなど)や低粘性の油脂類(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)を溶媒としたものを含む。また本発明における水には、電離水も含まれる。
【0012】
また、最初に発生させる気泡の粒径は、圧潰によって消失する粒径(約50μm)よりも大きい粒径とする。もともと、高周波振動板などによって形成される気泡の粒径は50μmより大きく、これよりも小さな粒径の気泡を直接作るのは困難であり、また気泡圧潰のメカニズムが、大きな粒径の気泡から小さな気泡が分裂し、この小さな粒径の気泡が更に小さくなって圧潰して消失する。即ち、気泡の圧潰は気泡を発生させた時点から生じるのではなく、ある程度の時間が経過した後に起こる現象である。また、特許文献4〜11にあるように、電気や超音波などの物理的力を利用しなくても同じ溶液を繰り返しバブリングすることで、より多くの気体を圧潰させ含ませることもわっかっている。
【0013】
したがって、ゲル化剤を添加するタイミングは、気泡発生の当初から可能になるのではなく、少なくとも一部の微細気泡が圧潰してからとする。例えば、液中パーティクルカウンターなどを利用すれば、容易に溶液中の微細気泡の直径の変化や含有量などを知ることができ、狙ったタイミングでゲル化剤を添加できる。
【0014】
また、気泡を発生させる容器とゲル化する容器を同一としてもよいし分離してもよい。分離する場合は、気泡が発生している水または低粘性の溶液を圧力またはチューブラーポンプなどのポンプを利用してゲル化する容器に送り込む。
【0015】
本発明において、ゲル化剤を添加する前の溶液内の気泡とそれを取り囲む液体の気液界面付近を微視的にみれば、気泡内の圧力と気液界面付近の液体中へのガスの溶解量とは平衡になっていて過飽和ではないが、マクロ的にみた場合、つまり微細気泡が発生してない同体積の飽和状態の液体と比較した場合、溶解しているガスの量は明らかに多くなっているため、過飽和と見做すこともできる。
【発明の効果】
【0016】
一般的にジェルに気体を含ませることで以下に述べるような機能があり、本発明によれば、単位体積あたりの気体の含有量を大きくできるので、以下の効果を更に高めることができる。
(1)ジェルが融解しない限り、気体が溶媒と分離し、大気中に放出されることはない。また、本願ジェルの状態にすると、ジェルが融解しない範囲の、いわゆる常温下においても、気体を固体と同様に運搬や利用できる。
(2)気体を液状のまま保持するためには極低温状態を維持する必要があるが、ジェル化すれば、ジェル化した状態が融解しない限り、常温下で気体を保持できる。
(3)気体を保存するために必要な頑丈で重量のあるタンクや設備は、ジェル中に含有される気体が有毒性や発火性を持つ場合、万が一に備えての対策は必要であるが、液状や気体状のままよりも本願の保全は格段に容易である。
(4)気体が有毒性の場合、液状や気体状であれば、漏洩した場合に一気に大気中に分散し運搬や管理、作用環境に非常に危険が伴うが、ジェル状にして保持している場合には、急激な大気中への分散は起こりにくい。
(5)液体酸素と液体水素を混合燃焼させる宇宙ロケットのエンジンコントロールの難しさに象徴されるように、常温下にて気体を利用する際には、液状から気化、あるいは、気体を直接タンクから放出させるタイミングのコントロールが非常に難しく、単一の液状ガスを液状のまま直接利用するのはコントロールが難しい。しかし、本願ジェルの状態であれば、最初から気体濃度、混合比を調整したままジェル内に、常温で保持できることから、利用や取り扱いが遥かに容易になる。
(6)気体同士を直接混合した後に利用する時のコントロールは、その種類が多くなればなるほど難しくなる。特に動植物の生体内で気体の混合利用をすることは、液状もしくは気体状の形態ではほぼ不可能である。生体内で気体を少量で長時間利用しようとすると、タンクや装置の問題で難しい。まして、複数の気体を少量で長時間利用するのは困難を極める。しかし、本願ジェルを利用すれば、単一の気体を含むジェルを組み合わせ、温度や水分、化学変化を利用することで、生体内で少量、長時間にわたって供給することが可能になる。あるいは、バームクーヘンのような円筒形の層状にすることで、経過時間に合わせて、発生させる気体の種類を変えることができる。
(7)カプセル内に本願ジェルを入れることで(例えばマイクロカプセル、腸溶性カプセル)、特定の場所に気泡ジェルをデリバリーすることが可能になる。また、目的の部位、場所に直接ジェルを挿入したり、塗布したりして、そこでジェルを溶融し、気体を供給することも可能である。
(8)また特許文献4〜11の全てに記述があるように、気体は溶液中に一定期間は存在しているが、逆にこれは、一般的な使用が可能なほど長期間に渡り存在し続けさせることは極めて難しい、ということを述べていることになる。カプセル内に保存しても、液状のままだとカプセル剤の材質の影響を受けやすく、溶液中に気体を保持し続けることは困難であり、また特許文献9にあるように、生体内で利用した場合、体液のpHの変化やミネラル、有機物の存在により、溶液中に存在している気体はたちどころに目的部位から流失することで、抗がん作用という目的を必ずしも引き出すことは難しい。しかし、ジェル内に気体を保持していれば、材質や溶融方法により、叙放性も可能であり、また標的とする場所に長時間に渡り供給し続けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)〜(c)は本発明に係る機能性ジェルの製造方法を工程順に説明した図
【図2】別実施例に係る機能性ジェルの製造方法を説明した図
【図3】微細気泡の圧潰の過程を説明した図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1(a)に示すように、機能性ジェルの製造装置は、気泡を発生させる容器1の底部に高周波電源2に接続された超音波振動板3が設けられ、この超音波振動板3を貫通して下方から容器1内に開口するガス供給管4が設けられている。気泡を発生させる手段としては、超音波振動板3に限らず、多孔板、スターラー、ジェット噴射ノズル、アスピレータなどでもよい。
【0019】
機能性ジェルを製造するには、先ず容器1内に水(水溶液)を充填する。そして、ガス供給管4からガスを供給しつつ超音波振動板3を駆動し、気泡5を発生させる。
【0020】
発生した気泡5はそのまま上昇し、更に気泡5から粒径50μm程度の微細気泡5aが分離する。この微細気泡5aは極めて上昇速度が遅い。そのため図1(b)に示すように、ガスの供給を止めた後、大きな気泡5が水面から飛散しても水中に残っている。
【0021】
更に微細気泡5aは水中で表面張力と溶解によって徐々に小さくなってゆき、最終的には図1(c)に示すように圧潰して消失する。本発明にあっては微細気泡5aの全部または一部が消失した時点でゲル化剤を添加する。
以上の工程で、実質的に過飽和の状態でガスを保持するジェルが得られる。
【0022】
また、バブリング前後、ゲル化過程あるいはゲル化後に、微細気泡や圧潰した気体を溶液中に保持するためだけに
(1)ゲル化調整剤の付加
(2)加熱、
(3)冷却
(4)光、放射線、ラジオ波を含む電磁波の照射
(5)音波、超音波照射
(6)物理的振動、圧力をかける
(7)電場、磁場に晒す
(8)電圧をかける
(9)pHを調整する(有機物やミネラルの添加を含む)
などにより気体の内部留保量調整及びゲル化状態を調整できる。
ところで、微細気泡になると、圧潰しなくても浮力は小さくなる。また、気泡の表面は帯電したり、化学的な特徴を持っていることが多い。そこで圧潰したガスや浮力の小さくなった微細気泡を、上記の(1)〜(9)の方法あるいはそれらの組み合わせを用いて、化学的、電気的、磁気的あるいは電磁気的な力を利用することにより、より多くのガスを安定的に水や溶液中に留めておくことが可能になる。(溶液のpH、還元電位などの調整も含むものとする)
さらに添加するゲル化剤によるpH調整により、より安定的に過飽和の状態を長期的に維持できる。すなわち、より多くのガスを溶液中に留めたまま、ゲル化し、長期保存することが可能になる。
【0023】
ここで、ガス供給管4から供給されるガスについては特に制限されず、以下の(イ)〜(ホ)、更にはこれらを混合したものが考えられる。
(イ)可燃性ガス、毒性ガス、(ロ)爆発性ガス、(ハ)不燃性ガス、(ニ)水溶性ガス、(ホ)非水溶性ガス
【0024】
(イ)に分類されるガスとしては、メタン、プロパン、nブタン、iブタン、nペンタン、エチレン、プロピレン、ブチレン、アセチレン、トルエン、Oキシレン、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、都市ガス(メタン基準)、LPG(イソブタン基準)、ガソリン、灯油、nへキサン、ブタジエン、アセトアルデヒド、塩化ビニル、一酸化炭素、アンモニア、硫化水素、塩素、二酸化硫黄、ベンゼン、アクリロニトリル、臭化メチル、酸化エチレン、シアン化水素、ホスゲン、塩化水素、アルシン、ホスフィン、シラン、ジボラン、ゲルマン、ジクロルシアン、セレン化水素、フッ素、二酸化窒素、三フッ化塩素、フッ化水素、臭化水素、オゾンなどが挙げられる。
【0025】
(ロ)に分類されるガスとしては、発火度G1〜G5、爆発等級1〜3の、アセトン、アンモニア、一酸化炭素、エタン、酢酸、酢酸エチル、トルエン、プロパン、ベンゼン、メタノール、メタン、石炭ガス、水性ガス、水素、エタノール、酢酸イソペンチル、1ブタノール、ブタン、無水酢酸、エチレン、エチレンオキシド、アセチレン、ガソリン、ヘキサン、アセトアルデヒド、エチルエーテル、二硫化炭素、などが挙げられ、国際電気標準会議(IEC)の国際規定による分類では、温度等級がT1〜T5、グループIIA〜IICである、アセトン、アンモニア、一酸化炭素、酢酸エチル、トルエン、プロパン、ベンゼン、メタノール、メタン、LPガス、エタン、酢酸、都市ガス、水素、エタノール、iブタン、1ブタノール、酢酸イソベンチル、無水酢酸、エチレン、エチレンオキシド、アセチレン、ガソリン、nヘキサン、アセトアルデヒド、エチルエーテル、二硫化炭素、などが挙げられる。
【0026】
(ハ)に分類されるガスは、PFでは、法規で定められている「特殊材料ガス」の他、「毒性ガス」、「可燃性ガス」を全てまとめて「特殊ガス」と呼んでいる。
特殊材料ガスは、半導体製造等に用いられる、反応性が高く危険と思われるガスであって、以下の39種類を言う。
シラン系;モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、ジクロルシラン(SiH2Cl2)、三塩化シラン(SiHCl3)、四塩化ケイ素(SiCl4)、四フッ化ケイ素(SiF4)、
ヒ素系;アルシン(AsH3)、三フッ化ヒ素(AsF3)、五フッ化ヒ素(AsF5)、三塩化ヒ素(AsCl3)、五塩化ヒ素(AsCl5)、
リン系;ホスフィン(PH3)、三フッ化リン(PF3)、五フッ化リン(PF5)、三塩化リン(PCl3)、五塩化リン(PCl5)、オキシ塩化リン(POCl3)、
ホウ素系;ジボラン(B2H6)、三フッ化ホウ素(BF3)、三塩化ホウ素(BCl3)、三臭化ホウ素(BBr3)、
金属水素化物;セレン化水素(H2Se)、モノゲルマン(GeH4)、テルル化水素(H2Te)、スチビン(SbH3)、水素化スズ(SnH4)、
ハロゲン化物;三フッ化窒素(NF3)、四フッ化硫黄(SF4)、六フッ化タングステン(WF6)、六フッ化モリブデン(MoF6)、四塩化ゲルマニウム(GeCl4)、四塩化スズ(SnCl4)、五塩化アンチモン(SbCl5)、六塩化タングステン(WCl6)、五塩化モリブデン(MoCl5)、
金属アルキル化物;トリアルキルガリウム(Ga(CH3)3, Ga(C2H5)3等)、トリアルキルインジウム(In(CH3)3, In(C2H5)3等)
また、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、アルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、ジボラン(B2H6)、セレン化水素(H2Se)、モノゲルマン(GeH4)の7種類は、高圧状態(1MPa[〜10気圧]以上)での持ち込みが禁止されている(「特殊高圧ガス」と呼ぶ)。ヒ素系、ホスフィン(PH3)、三フッ化リン(PF3)、三塩化リン(PCl3)、五塩化リン(PCl5)、オキシ塩化リン(POCl3)、ジボラン(B2H6)、三フッ化ホウ素(BF3)、三塩化ホウ素(BCl3)、セレン化水素(H2Se)、四フッ化硫黄(SF4)等、毒物・劇物に指定されているものもある。
毒性ガスとは、有害なガスであって、許容濃度が200ppm以下のものを言い、下表のものが含まれる。アクリロニトリル(C2H3CN)、亜硫酸ガス(SO2)、アンモニア(NH3)、一酸化炭素(CO)、塩化水素(HCl)、塩素(Cl2)、クロルメチル(CH3Cl)、シアン化水素(HCN)、二硫化炭素(CS2)、フッ素(F2)、ブロムメチル(CH3Br)、ベンゼン(C6H6)、ホスゲン(COCl2)、硫化水素(H2S)
これらは、ごく一部の物質を示したに過ぎない。また、シアン化水素(HCN)は毒物、アクリロニトリル(C2H3CN)、アンモニア(NH3)、塩化水素(HCl)、塩素(Cl2)、二硫化炭素(CS2)、ブロムメチル(CH3Br)等は劇物に指定されている。
可燃性ガスとは、空気と混合した場合の爆発限界の下限が10%以下のもの及び爆発限界の上限と下限の差が20%以上のものを言い、下記のものが含まれる。
アクリロニトリル(C2H3CN)、アセチレン(C2H2)、アンモニア(NH3)、一酸化炭素(CO)、エチレン(C2H4)、クロルメチル(CH3Cl)、シアン化水素(HCN)、シクロプロパン(C3H6)、水素(H2)、二硫化炭素(CS2)、ブタジエン(C4H6)、ブタン(C4H10)、プロパン(C3H8)、プロピレン(C3H6)、ブロムメチル(CH3Br)、ベンゼン(C6H6)、メタン(CH4)、メチルエーテル((CH3)2O)、硫化水素(H2S)。
アンモニア(NH3)、二硫化炭素(CS2)、ブロムメチル(CH3Br)等は劇物に指定されている。
【0027】
(ニ)に分類されるガスとしては、日常よく使用される気体として、酸素、窒素、アルゴン、メタン、水素、アセチレン、塩化水素、炭酸ガス、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(一酸化二窒素=N2O)、各種高圧ガス(硫化水素、LPガス、プロパン、アンモニア、塩素、亜硫酸ガス、ブタン、シアン化水素、酸化エチレン)である。
【0028】
(ホ)に分類されるガスとしては、上記のガス群の他に周期律表に表示されているもの(臭素)が挙げられる。
【0029】
ゲル化剤としては、アーモンドガム、エレミ樹脂、ダンマル樹脂、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、アラビニガラクタン、ガティガム、モモ樹脂、アマシードガム、グァーガム酵素分解物、タマリンド種子ガム、カシアガム、サイリュームシードガム、タラガム、カロブビーンガム(ローカストビーンガム)、サバクヨモギシードガム、トリアカンソスガム、グァーガム、セスバニアガム、アルギン酸、フクロノリ抽出物、ファーセレラン、カラギナン、アロエベラ抽出物、キダチアロエ抽出物、ペクチン、オクラ抽出物、トロロアオイ、アエロモナスガム、エンテロバクターガム、納豆菌ガム、アウレオバシジウム培養液、カードラン、プルラン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、マクロホモプシスガム、ウェランガム、ジェランガム、ラムザンガム、エルウィニア・ミツエンシスガム、スクレロガム、レバン、エンテロバクター・シマナスガム、テキストラン、酵母細胞膜、キチン、オリゴグルコサミン、微小繊維状セルロース、キトサン、微結晶セルロース、グルコサミン、寒天、大豆多糖類、ナタデココ、でんぷん、コンニャクイモ抽出物、ゼラチン、レクチン等を用いる。また、機能性を高めるためゲル化剤以外に、ビタミンやミネラルなど入れても良い。
【0030】
また、上記以外のゲル化剤として以下のものが挙げられる。
(1)低分子化合物のオイルゲル化剤
1,3:2,4-ジベンジリデン-D-ソルビトール、12-ヒドロキシステアリン酸、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α,γ-ビス-n-ブチルアミド、スピンラベル化ステロイド、コレステロール誘導体、ジアルキルリン酸アルミニウム、フェノール系環状オリゴマー、2,3-ビス-n-ヘキサデシロキシアントラセン、環状デプシペプチド、部分フッ素化アルカン、シスチン誘導体、ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、トリフェニルアミン誘導体、ブチロラクトン誘導体、4級アンモニウム塩、フッ素化アルキル化オリゴマー、尿素誘導体、ビタミンH誘導体、グルコンアミド誘導体、コール酸誘導体、
(2)アミノ酸系オイルゲル化剤
L-イソロイシン誘導体、L-バリン誘導体
(3)環状ジペプチド型オイルゲル化剤
2,5-ジケトピペラジン誘導体、中性のアミノ酸(L-バリン、L-ロイシン、L-フェニルアラニン)と酸性のアミノ酸(L-グルタミン酸-γ-エステル、L-アスパラギン酸-β-エステル)からなる環状ジペプチド、cyclo(L-asp(OR)L-phe
(4)シクロヘキサンジアミン誘導体誘導体のオイルゲル化剤
ジアミド(トランス型1,2-シクロヘキサンジアミンンから合成したもの)
尿素誘導体(トランス型1,2-シクロヘキサンジアミンンから合成したもの)
(5)双頭型アミノ酸誘導体のオイルゲル化剤
双頭型L-イソロイシン誘導体、双頭型L-バリン誘導体、
(6)その他のオイルゲル化剤
1,3;2,4-ジベンジリデン-D-ソルビトール、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α,γ-ビス-n-ブチルアミド、ベンゾイルグルコンアミド誘導体、L-イソロイシン誘導体、L-バリル-L−バリン誘導体、ジアミド(トランス型1,2-シクロヘキサンジアミンンから合成したもの)、ジ尿素誘導体(トランス型1,2-シクロヘキサンジアミンンから合成したもの)、双頭型アミノ酸誘導体、L-リシン誘導体、O-メチル-4,6-ベンジリデン-D-ガラクトース、2,3-O-イソプロピリデングリセルアルデヒド誘導体。
(7)アミノ酸誘導体のヒドロゲル化剤
ジベンゾイル-L-シスチン、L-シスチン誘導体、グルタミン酸モノエステルをジイソシオネートで架橋した化合物(リン酸緩衝液のみで溶解)、L-ロイシン、L-バリン、L-フェニルグリシンをシュウ酸で架橋した双頭型アミノ酸誘導体、L-リシンを基盤とした有機ゲル化剤(正電荷または負電荷をかける)、ピリジン基をもつエタノール化合物、L-セリンを基盤としたヒドロゲル化剤、
(8)糖を含むヒドロゲル化剤
D-ラクトース誘導体、D-マルトース誘導体、D-グルコース誘導体、D-マンノース誘導体、D-ガラクトース誘導体、アゾベンゼン化合物。
(9)その他のヒドロゲル化剤
アルポロルタイプのデンドリマー、ヌクレオチド含有双頭型ヒドロゲル化剤、胆汁酸誘導体、バンコマイシン、中心にリンを持つデンドリマー、リクサレンン誘導体、双頭型界面活性剤からなるヒドロゲル、ナフタレンスルホン酸を持つカチオン性グルタミン酸化合物、デオキシウリジン化合物。
(10) 温度応答性高分子
ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体、
ポリエーテル類(ポリエチレンオキシド=PEO、ポリ(EO/PO)コポリマー、PEO-PPO-PEOトリブロック界面活性剤、アルキールPEO界面活性剤、ポリ(ビニルメチルエーテル)=PVME、ポリ(オキシエチレンビニルエーテル)=POE VE)、ヒドロキシプロピルアクレート、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、ポリビニルアルコール誘導体、ポリ(N-置換アクリルアミド)誘導体(ポリ(N−置換アクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオクサゾリン)、ポリ(N−ビニルイソブチルアミド)=PNVIBA、ポリ(2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド)=PCIPAAm、ポリ(N−イソプロピルアミド)。
【0031】
次に水素ジェル、酸素ジェル、オゾンジェル、一酸化窒素ジェル、亜酸化窒素ジェル、二酸化炭素ジェルの具体的利用法について述べる。
【0032】
[水素ジェル]
水素は老化などの原因となる活性酸素を中和する機能を有すると考えられている。一方水素は経口で摂取しても、10分以内で体外に霧散してしまうため、従来の方法では小腸まで水素を小腸まで届けることができない。
本発明によれば、ジェルを腸溶性とすることで、容易に水素を小腸まで運ぶことが可能になる。
【0033】
[酸素ジェル]
水中に溶存する気体の量は極めて微量であり、通常の利用法では、高圧の状態でタンクに保存されている気体を除き、大量に気体を利用できない。特殊な環境下で保存すれは液状化させた気体も利用できるが、通常の環境ではまずない。
本発明方法によれば大量の気体をジェルの中に固定することができる。
また、気泡内の酸素濃度は自由に調節できる。さらに酸素に他の気体を加えることで、混合ガスとし利用しても良い。混合ガスとしては、水素と酸素とを2:1の割合で混合したブラウンガスが考えられる。
気体を酸素にしてみると、ジェルの中に酸素が大量に存在する。このジェルの材料を水溶性のものにすると、水を加えることで酸素を発生させることができる。また、難溶性や不溶性の素材を加えることで、このジェルは水に対し、徐々に溶解し、酸素を徐々に供給するようにすることも可能である。
これを「酸素徐放性ジェル」(OTRG=Oxygen Time Releasing Gel)と呼ぶことにする。
【0034】
OTRG実用例1
魚類などを運ぶ水槽では、モーターポンプなどを使用し、常に酸素を送り込み、容器内の魚類などに対し、酸素を供給し続けていく必要性がある。しかし、電気あるいは機械的トラブルにより酸素供給が停止すると、水槽などの容器内の業類は死滅し、救うことは困難である。
しかし、このOTRGを容器内に投入することで、一定時間、酸素を供給し続けることが可能になる。万が一、過剰量のOTRGを投入しても、1気圧下においては、温度条件ものと、一定量の酸素以上は溶存せず、容器外に逃げていくため、過酸素状態にはならない。
【0035】
OTRG実用例2
一般的に、病気などにより、血中酸素飽和度の下がった人に対しては、酸素マスクあるいは酸素供給装置を利用し、通常の気体中に存在する酸素以上の濃度(20→30%にする)の酸素を体内に供給し、サチュレーション(飽和度)を上げる必要がある。
しかし、酸素を供給する装置は酸素ボンベを必要とするものから、透過膜を利用するものまでを含め、装置がかさばる欠点がある。
そこで、一例として、OTRGを利用したマスク型の小型かつ簡便な酸素供給装置を作成することができる。このマスクを利用すると、航空機内に設置された緊急時の酸素マスクや登山、旅行などで高地に行く人にとって絶好の酸素供給方法となる。また、近年の研究によれば、うつ症状と脳内の酸素飽和度の低下との関連性が解明されつつあるが、このようなケースの治療においてもOTRGは有用である。
【0036】
OTRG実用例3
このOTRGをサプリメントとして利用することができる。現在、通常の水より溶存酸素を多く含んだといわれている「酸素水」が世界中で製造され、販売されている。
通常の水は、温度にもよるが、8ppm程度の濃度の溶存酸素をもつが、「酸素水」はメーカーによると、その10倍〜40倍程度の溶存酸素量を持つとうたっている。
大量に酸素を含んだ水を摂取することで、体内に酸素が供給され、以下のような効能が期待されるとしている。
(1)脳細胞を活性化し、学習能力を上げ、眠気を取ることができる。
(2)免疫賦活
(3)運動などで発生した疲労物質「乳酸」を分解し疲労回復を促進する
(4)脂肪分解を促進し、ダイエット効果が期待できる
(5)酸素療法に見られるように、皮膚細胞を刺激し、皮膚の新陳代謝を活発にするなどである。
しかし、「酸素水」は飲んだ後、体内での温度上昇に伴い、溶存酸素量の低下が起こるため、殆どの酸素は胃の中で気化してしまうため、腸あるいは血液中までとどく酸素量は極めて微量となる。
そのため、「酸素水」の効能に対し、測定が難しく、効果に疑問を呈する医学関係者も圧倒的に多い。
一方で、OTRGは、そのまま摂取すると、胃の内部で溶け、酸素を発生するが、腸溶性物質を添加してジェルを作るか、腸溶性カプセルに入れて飲むと、OTRGは胃の中では酸素を発生せず、腸のみでの酸素供給が容易に行えることで、「酸素水」にくらべ、圧倒的に体内への酸素供給量が増える。
また、酸素を含んだOTRGは、単位容積当たりの酸素含有量を、「酸素水」の何倍かそれ以上に設定することが極めて容易である。
また、OTRGは腸内で、長時間にわたって酸素を発生し続けることが可能である。1回の呼吸で500mlの空気を吸い込むことで、約100mlの酸素を体内に取り入れることがわかっている。従って、運動能力向上のための酸素水の供給は一般的に否定される論文が多い。
しかし、陸上、水泳などの競技、特に、無呼吸で行う短距離競技において、体内酸素の補給の役割をすることが期待できる。スタート直前に大量の酸素含有水を飲むことは不可能であるが、酸素ジェルと腸溶性カプセルの組み合わせで酸素の体内補給をすることは極めて容易である。
【0037】
OTRG実用例4
このジェルを動植物の表面や内部組織に塗布したり、挿入することができる。
例えば、創傷(切創、刺創、挫創、割創、擦創、裂創、銃創、爆創、咬創、挫傷、打撲傷を含むものとする)、あるいは口蓋、膣内など、表面ではあるが、大気中の酸素に曝露されていない部位では、嫌気性のバクテリアやカビ、菌類が繁殖し、病気の原因となっている。
そこで、このOTRGを大気中に曝露されていない部位に塗布、付着させたり、あるいはカプセル、錠剤などの形にして挿入することにより、長時間に渡って酸素を供給し続け、嫌気性微生物を殺したり、弱体化させることが可能になる。
また、このジェルに、抗生物質など医薬品の類や医薬部外品などの薬効成分、あるいは化粧品、動植物抽出物質の成分を混ぜても良い。
医学的データによると、傷口は縫合して酸素を遮断するよりも、大気中の酸素に暴露されている方が直りが早いことが知られている。これは酸素の存在により毛細血管の再生が早まることが理由と考えられている。それゆえ、高圧酸素療法が活用されている。
しかし、高圧酸素療法は、創傷などの治療には有効であるがタンクを始めとする設備が大掛かりで小型化が困難であり、さらに高圧の酸素を使用するため管理も大変であり、通常の生活において、携行は不可能に近く利便性において大きく劣る。そこで、創傷、特に大気に接触しない部位に、OTRGを塗布あるいは注入することによって、毛細血管再生を促進することが期待できる。
このときに、ジェルに含有する気泡内の酸素濃度を調整したり、酸素と他の気体を組み合わせた混合ガスも使用できる。
さらに、ジェルの成分として、ヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチン、プラセンタエキスなどの結合組織再生用のジェルを組み合わせて使用できる。
【0038】
OTRG実用例5
酸素ジェルを可燃物と組み合わせることで、燃焼促進剤として使える。
また、対象を「酸化」させる作用を利用した「酸化促進素材」として利用できる。
【0039】
OTRG実用例6
スキューバダイビングの際には、人間は酸素ボンベを利用しなくては長時間水中に滞在することはできない。
しかし、通常、ボンベ内には最大で200気圧程度の大気が圧縮され、詰め込まれているが、その酸素は、潜る深度にもよるが、一般的に1から1.5時間で消費してしまい、水中から出なくてはならなくなる。
しかし、ボンベの中、あるいは隣接する場所で、酸素ジェルを温度融解や水溶化させる、あるいは化学変化させ融解させることで、気泡状の酸素を取り出し、タンク内の空気に加えることで酸素補給し、水中の滞在時間を飛躍的に延ばすことが可能になる。
【0040】
OTRG実用例7
水素ジェルと組み合わせて、「水素燃料」として燃料電池の役割を果たす。
例えば、1気圧ではなく、数気圧、あるいは数十気圧の環境下で水素や酸素を充填した状態を、非常に粘度の高いジェル化した場合、含有する水素や酸素の量を増やすことができる。
【0041】
[オゾンジェル]
オゾンの微細気泡を含有するジェルは、ノロウイルスなどの不活性化に効果的と考えられる。即ち、オゾンジェルが融解しオゾンが放出されて酸素に分解する際に発生するフリーラジカルによって殺菌作用が働く。この場合、オゾン濃度が低くてもオゾンの気泡はマイナスに帯電しており、一方ウイルスにはプラスに帯電しているものが多いため、オゾンの気泡に引き寄せられて殺菌される。しかしながら、先行技術(特許文献4)にあるような、従来の水中にオゾン気泡を含有させる方法では、媒体が水であるため、生体内部や標的となる場所へのオゾン提供を的確に行うことは容易ではなかった。また、水分厳禁の環境においては水状の物質は致命的に不向きである。しかしながら、オゾンを内部に保持したジェルであれば、水溶性、脂溶性、揮発性などの選択肢もあり、生体内部や標的となる場所に的確にオゾンを運び、狙ったタイミングで融解させ、オゾンを提供できる。
【0042】
[窒素系ジェル]
(a)最近では一酸化窒素(NO)が注目されている。血管拡張作用から循環器系疾患のための医薬品、ED治療などである。また、ボディビルダーたちもこのNOを利用して筋肉増強を図っている。
(1)一酸化窒素のナノ、マイクロ気泡を大量に含んだ徐放性ジェルまたはカプセルを飲めば、筋肉増強、ED解消に役立つ。
(2)がん細胞周辺のマクロファージはNOを産生し、ガン細胞のミトコンドリア機能を麻痺させ、DNA合成を妨げることで、死に追いやっている。
(3)糖尿病の治療用にインシュリンを投与すると、NOを減らす欠点がある。
(4)脳内の信号伝達の役割をNOは持っている。
そこで、一酸化窒素ジェル、あるいは腸溶性カプセルを組み合わせて、徐放性にすれば、上記の(1)〜(4)のスポーツ、医学などの分野で役立つ。また、場合によっては、一酸化窒素ジェルを直接、動植物内の必要な部位(例えば、がん組織周辺や臓器)に注入または塗布することで、(1)〜(4)及び(6)の医学的な効用を期待できる。また、一酸化窒素単独ではなく、他の薬剤(例えば抗がん剤、ビタミンC製剤、放射線治療によるフリーラジカルなど)と組み合わせて使用することにより、より治療効果が期待できる。
(b)一酸化二窒素ジェル(亜酸化窒素ジェル)
一酸化二窒素は麻酔薬として有用である。笑気ガスとも呼ばれているが、現状ではボンベに充填されたガス状でしか利用できない。しかしながら、一酸化二窒素ジェルを利用すれば、さらに人体の細かい部位や、携行性に優れた麻酔薬として利用可能になる。また小動物への利用も容易になる。
【0043】
[二酸化炭素ジェル]
(1)化粧品として用い、血行促進と皮膚の活性化をはかる。
(2)ジェルのまま、飲料水に入れると、手軽に炭酸飲料が作れる。また、一度抜けてしまった炭酸を補充し、炭酸飲料や発泡酒の風味を取り戻すことができる。
(3)二酸化炭素は「呼吸興奮薬」として知られており、過換気症候群の治療にも利用されている。従って、二酸化炭素ジェルは、過換気症候群のほか、呼吸興奮薬が必要な人にとって有効に利用できる。
(4)スキューバダイブングや医療用に使用される酸素ボンベによる酸素吸引の際には、酸素単独よりも、二酸化炭素を5〜10%混ぜた方が、有効であることが知られている。従って、酸素ボンベの中に二酸化炭素ジェルを入れることで、手軽に混合気体を作ることができる。
(5)二酸化炭素を固体にした「ドライアイス」は、人間や動物の遺体の防腐剤として使用される。しかし、マイナス80℃近い低温のため、直接触れると凍傷を起こす危険性があり、扱いが難しい。さらに、ドライアイスは昇華して直接、気体となった時に、750倍に膨らむため、ペットボトルなどの容器が破裂する危険性も持っている。
また、昇華した際に発生する二酸化炭素量が多いため、大気中の濃度が10〜50%に達することがあり、二酸化炭素中毒を引き起こす危険性がある。
二酸化炭素ジェルを遺体に直接塗布、または同梱密封することによって、いつでもどこでも、手軽に安全に防腐剤として使用できる。
(6)工業製品や部品を密閉した容器や部屋で保管する時に、密閉直前に、十分な二酸化炭素ジェルを使用してから密閉すると、防腐、防錆効果が安価に安全に得られる。
(7)温室での大量の植物栽培時や、冬場の温室では植物の光合成に不可欠な二酸化炭素が不足し植物の成長が止まってしまう「二酸化炭素飢餓」という現象が深刻である。
対策として、二酸化炭素を補給するために、二酸化炭素施肥の必要があるが、プロパンガスを燃焼させて二酸化炭素を発生させ補う方法があるが、コスト、危険性、補給量を考えると非常に難しい問題であった。
そこで、二酸化炭素ジェルを温室内または、直接植物に設置、塗布、または散布しておくことで、二酸化炭素が徐々に発生し補給できるため、「二酸化炭素飢餓」を回避できる。さらに、二酸化炭素ジェルを使うと、安価で安全であることが大きな利点である。
(8)二酸化炭素は、植物の「光合成」に不可欠である。そこで、植物が「光合成」を行っている間、二酸化炭素ジェルを植物の枝葉に塗布または噴霧することで、植物の周りに二酸化炭素が継続的に発生する環境を作り、光合成促進をはかり、植物の促成栽培を行う。二酸化炭素施肥には、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水溶液や固体に二酸化炭素を吸収させたものがよく使用されるが、二酸化炭素放出後に、アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物が残る不都合がある。しかし、二酸化炭素ジェルを使用した場合、ジェル溶融二酸化炭素放出後には、有害な成分は一切残らない。
【0044】
[ヘリウム・ジェル]
(1)ヘリウムは微細孔にも入り込む。そのため、非破壊検査法にも利用されている。
配管の中にヘリウムガスを注入し、ヘリウムディテクターで検知するが、ヘリウムガスを使用した場合、極短時間で、一部の場所しか検知できない。しかし、ヘリウム・ジェルを使用すると、もっと広範囲にわたりヘリウムを発生させることができるので、検知の効率が飛躍的に良くなる。
(2)パーティーグッズの一つとして、声を変性させるのにヘリウムガスが用いられる(ドナルド・ダック効果)。
これは、ヘリウム中では音速が約3倍になるために起こる。通常はヘリウム80%+酸素20%の混合気をボンベに入れて利用するが、ヘリウム・ジェルを使用した場合、ジェルを鼻の穴に塗布または噴霧するだけで簡単に声の変性が可能になる。
【0045】
[塩素ジェル、臭素ジェル、フッ素ジェル]
強力な酸化剤として使用できるが、ジェル状にすることで、長時間にわたり発生させることができる。
【0046】
図2は別実施例に係る機能性ジェルの製造方法を説明した図であり、この実施例にあっては、気泡の発生を行う容器1を密閉容器とし、この容器1とは別にゲル化する容器11を設け、これら容器1と容器11とをバルブを備えた配管12で繋ぎ、容器1内の圧力で気泡が発生している水または低粘性の溶液を容器11に送り込み、容器11内で微細気泡5aを圧潰せしめるとともに、ゲル化剤を添加するようにしている。
【0047】
図2では、圧力で気泡が発生している水または低粘性の溶液を容器11に送り込むようにしたが、チューブラーポンプなどのポンプを利用して送り込むようにしてもよい。また、容器11内に予めゲル化剤をセットしておいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る機能性ジェルは、抗酸化食品、化粧品、医薬品、様々な分野にわたり利用することができる。
例えば、可燃性ガス、爆発性ガスは燃焼促進作用を利用する。
毒性ガスは、動植物の忌避行動を誘導するほか、殺虫、殺菌、枯草などを始めとする動植物の駆除に利用する。
水溶性ガスと非水溶性ガスは、ジェル内に取り入れた状態を安定して保持するために、ジェル素材やコーティング剤、賦形剤の材質を選択できる。
吸熱性の気体を含む場合は熱吸収性ゲルとして、また非吸熱性気体の場合、断熱用、保温、保冷用ゲルとして、「衣類」「靴類」「寝具」「スポーツ用品」「建築材」「日用品」「機械」などに利用できる。
窒素、二酸化炭素ガスは、植物の生育にも利用できる。
上記、燃焼、爆発、吸熱、放熱作用などを含む化学反応の促進、抑制及びコントロールのために本願のジェルを加える。
全てのジェルは、その含有する気体の種類により、医薬品、化粧品、建築材、化学反応の促進抑制、触媒作用及びコントロール剤、様々な分野に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1・・・気泡を発生させる容器、2・・・高周波電源、3・・・超音波振動板配管、4・・・ガス供給管、5・・・気泡、5a・・・微細気泡、11・・・ゲル化する容器、12・・・配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に水または低粘性の溶液を入れ、この水または低粘性の溶液中にガスを送り込んで気泡を発生させ、発生した気泡のうち微細な気泡の一部が水面まで到達せずに液圧によって圧潰して消失するのを待って、前記水または低粘性の溶液にゲル化剤を添加し、前記水または低粘性の溶液をゲル化せしめることを特徴とする機能性ジェルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の機能性ジェルの製造方法において、前記気泡の発生を行う容器とゲル化する容器とを分離し、気泡が発生している水または低粘性の溶液を圧力またはポンプを利用してゲル化する容器に送り込むことを特徴とする機能性ジェルの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の機能性ジェルの製造方法において、水または低粘度の溶液中の圧潰したものを含めた浮力の小さな微細気泡のガスを、溶液中に保持するためだけに電気的、磁気的、電磁気的あるいは化学的な力を利用して、より多くのガスを溶液内に留めておき、さらにゲル化剤のpH調整によりより長期的かつ安定的にガスを内部に留保せしめることのできる機能性ジェルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−50898(P2012−50898A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178917(P2010−178917)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(500457519)
【出願人】(000124764)
【出願人】(509030490)
【出願人】(509029933)
【Fターム(参考)】