説明

機能性デバイスの製造方法及び機能性デバイスの製造装置

【課題】機能性デバイスの高性能化、又はそのような機能性デバイスの製造プロセスの簡素化と省エネルギー化を提供する。
【解決手段】機能性デバイスの製造方法は、型押し工程と、機能性固体材料層形成工程を含む。型押し工程では、機能性固体材料前駆体溶液を出発材とする機能性固体材料前駆体層に対して型押し構造を形成する型を押圧している間の少なくとも一部の時間においてその機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する熱源の第1温度がその機能性固体材料前駆体層の第2温度よりも高くなるように、その機能性固体材料前駆体層に対して型押し加工を施す。また、機能性固体材料層形成工程では、型押し工程の後、酸素含有雰囲気中において、機能性固体材料前駆体層を前述の第1温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性デバイスの製造方法及び機能性デバイスの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低い駆動電圧で高速にスイッチングすることを目的として、ゲート絶縁層として強誘電体材料(例えば、BLT(Bi4−XLaTi12)、PZT(Pb(Zr,Ti1−X)O))を採用した薄膜トランジスタが開示されている。一方、キャリア濃度を高くすることを目的として、酸化物導電性材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、あるいはLSCO(LaSr1−XCuO))をチャネル層として採用した薄膜トランジスタも開示されている(特許文献1)。
【0003】
ここで、上述の薄膜トランジスタの製造方法について見てみると、まず、ゲート電極としてTi及びPtの積層膜が、電子ビーム蒸着法により形成されている。そのゲート電極上に、ゾルゲル法によって上述のBLT又はPZTからなるゲート絶縁層が形成される。さらに、そのゲート絶縁層上には、RFスパッタ法により、ITOからなるチャネル層が形成される。続いて、そのチャネル層上にTi及びPtが電子ビーム蒸着法によって形成されることにより、ソース電極とドレイン電極とが形成される。その後、RIE法及びウェットエッチング法(HFとHClと混合溶液)により、素子領域が他の素子領域から分離されることになる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−121029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の薄膜トランジスタでは、ゲート絶縁層又はチャネルが複合酸化物によって形成された例は幾つか存在するが、薄膜トランジスタとしての高い特性を実現する材料及びそのための適切な製造方法の選定は、未だ道半ばである。
【0006】
また、従来技術では、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を要するプロセスが一般的であるため、原材料や製造エネルギーの使用効率が非常に悪くなる。上述のような製造方法が採用された場合、薄膜トランジスタを製造するために多くの処理と長時間を要するため、工業性ないし量産性の観点から好ましくない。また、従来技術には、大面積化が比較的困難であるという問題も存在する。
【0007】
なお、上述の諸問題は、薄膜トランジスタを製造する方法だけに見られる問題ではない。例えば、機能性デバイスの一類型である、フラッシュメモリ、強誘電体メモリ(FeRAM)、磁気メモリ(MRAM)に代表されるメモリ型トランジスタや、キャパシタ、圧電式インクジェットヘッド、光学デバイス、又は、アクチュエーター、インクジェットヘッド、アクチュエーター、圧力センサー、加速度センサー、流路モジュールを含むMEMSデバイスなどの製造方法全般にも該当し得る問題といえる。
【0008】
本発明は、上述の諸問題の少なくとも1つを解決することにより、上述の薄膜トランジスタやキャパシタ等の機能性デバイスの高性能化、又はそのような機能性デバイスの製造プロセスの簡素化と省エネルギー化を実現する。その結果、本発明は、工業性ないし量産性に優れた機能性デバイスの提供に大きく貢献するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、薄膜トランジスタやキャパシタ等の機能性デバイスに用いることができる酸化物層の形成を、「ナノインプリント」とも呼ばれる「型押し」加工法によって実現すべく、鋭意研究と分析を重ねた。その研究の過程の中で、発明者らは、型押し加工の対象となる材料に対して熱を供給する際に特殊な工夫を加えることにより、より確度高く、及び/又は精度良く型押し構造を形成することが可能となることを見出した。その結果、発明者らは、従来と比較して大幅に簡素化ないし省エネルギー化が可能であるとともに大面積化も容易なプロセスによって、それらの酸化物膜の形成、ひいてはそれらの酸化物層を備えた機能性デバイスの製造が可能であることを知見した。本発明は上述の視点に基づいて創出された。
【0010】
本発明の1つの機能性デバイスの製造方法は、型押し工程と、機能性固体材料層形成工程を含む。具体的には、この機能性デバイスの製造方法の型押し工程は、機能性固体材料前駆体溶液を出発材とする機能性固体材料前駆体層に対して型押し構造を形成する型を押圧している間の少なくとも一部の時間においてその機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する熱源の第1温度がその機能性固体材料前駆体層の第2温度よりも高くなるように、その機能性固体材料前駆体層に対して型押し加工を施す工程である。加えて、この機能性デバイスの製造方法の機能性固体材料層形成工程は、前述の型押し工程の後、酸素含有雰囲気中において、前述の機能性固体材料前駆体層を前述の第1温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、その機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する工程である。
【0011】
この機能性デバイスの製造方法によれば、型押し加工中の少なくとも一部の時間において、機能性固体材料前駆体層の温度(第2温度)よりも高い温度(第1温度)である熱源から、その機能性固体材料前駆体層に対して熱が供給されることになる。現段階では具体的な型押し加工における成型メカニズムは不明確であるが、この型押し工程中の機能性固体材料前駆体層への熱の供給又は移動を積極的に行うことが機能性固体材料前駆体層の成型性の向上、及び比較的低温の成型に再現性良く寄与し得ることを発明者らは知見している。その後、前述の機能性固体材料前駆体層を前述の第1温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、熱に対する配慮なく機能性固体材料前駆体層を型押し加工を施す場合と比べて、格段に確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層を形成することが可能となる。その結果、そのような型押し構造が形成された機能性固体材料層を備えた機能性デバイスを製造することができる。加えて、この機能性デバイスの製造方法によれば、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス、あるいは紫外線の照射プロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を必要とするプロセスが不要になる。また、前述の各プロセスを要せずに、比較的低温の加熱処理と型押し加工処理によって機能性固体材料層が形成されるため、工業性ないし量産性に優れる。
【0012】
また、本発明の1つの機能性デバイスの製造装置は、制御部、型押し部、及び熱処理部を備えている。具体的には、この機能性デバイスの製造装置の制御部は、機能性固体材料前駆体溶液を出発材とする機能性固体材料前駆体層に対して型押し構造を形成する型を押圧している間の少なくとも一部の時間において、その機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する熱源の第1温度がその機能性固体材料前駆体層の第2温度よりも高くなるように制御する。加えて、この機能性デバイスの製造装置の型押し部は、前述の機能性固体材料前駆体層に対して型押し加工を施す。さらに、この機能性デバイスの製造装置の熱処理部は、酸素含有雰囲気中において、型押し構造が形成された前述の機能性固体材料前駆体層を前述の第1温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、その機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する。
【0013】
この機能性デバイスの製造装置によれば、制御部及び型押し部により、型押し加工中の少なくとも一部の時間において、機能性固体材料前駆体層の温度(第2温度)よりも高い温度(第1温度)である熱源から、その機能性固体材料前駆体層に対して熱が供給されることになる。既に述べたとおり、現段階では具体的なメカニズムは不明確であるが、この型押し加工中の機能性固体材料前駆体層への熱の供給又は移動を積極的に行うことが機能性固体材料前駆体層の成型性の向上、及び比較的低温の成型にに再現性良く寄与し得ることを発明者らは知見している。また、熱処理部が前述の機能性固体材料前駆体層を前述の第1温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、熱に対する配慮なく機能性固体材料前駆体層を型押し加工を施す場合と比べて、格段に確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層を形成することが可能となる。その結果、そのような型押し構造が形成された機能性固体材料層を備えた機能性デバイスを製造することができる。加えて、この機能性デバイスの製造装置によれば、真空プロセスやフォトリソグラフィー法に必要な装置、あるいは紫外線の照射に必要な装置等、比較的長時間、及び/又は高価な設備が不要になる。また、比較的低温の型押し部と熱処理部によって機能性固体材料層が形成されるため、工業性ないし量産性に優れる。
【0014】
ここで、上述の各発明における「熱源」は特に限定されないが、代表的には、型押し加工を施す際の型を内部にて、又は外部から加熱するヒーターや、機能性固体材料前駆体層を備えた基板を載置する基台を内部にて、又は外部から加熱するヒーターが挙げられる。また、その他の機能性固体材料前駆体層に熱供給するための「熱源」としては、輻射熱を利用した公知の手段や、マイクロ波を利用した公知の手段が例示される。
【0015】
また、本出願における「機能性固体材料前駆体溶液」は、代表的には、金属アルコキシドを含有する溶液、金属有機酸塩を含有する溶液、金属無機酸塩を含有する溶液、金属ハロゲン化物を含有する溶液、金属、窒素、及び水素を含有する無機化合物を含有する溶液、金属水素化物を含有する溶液、金属ナノ粒子を含有する溶液、及びセラミックス微粒子の群から選ばれる少なくとも1種類を含有する溶液である。そして、これらの各溶液の溶質又は各溶液を層状に形成した際に変質しうる溶質が、本出願における「機能性固体材料前駆体」である。従って、本出願における「機能性固体材料前駆体層」とは、「機能性固体材料前駆体」の層又は膜(本出願では、総称して「層」と呼ぶ)を意味する。
【0016】
また、本出願における「機能性固体材料前駆体層」は、代表的には、本焼成された後に、薄膜トランジスタやメモリ型トランジスタにおけるゲート電極層、ゲート絶縁層(強誘電体層)、ソース層、ドレイン層、チャネル層、及び配線層の群から選ばれる少なくとも1つの層となる前駆体層、圧電式インクジェットヘッド等のアクチュエーターにおける圧電体層及び電極層の群から選ばれる少なくとも1つの層となる前駆体層、キャパシタの誘電体層及び/又は電極層となる前駆体層、あるいは、光学デバイスにおける格子層となる前駆体層である。従って、「機能性固体材料層」は、代表的には、薄膜トランジスタやメモリ型トランジスタにおけるゲート電極層、ゲート絶縁層(強誘電体層)、ソース層、ドレイン層、チャネル層、及び配線層の群から選ばれる少なくとも1つの層、圧電式インクジェットヘッド等のアクチュエーターにおける圧電体層及び電極層の群から選ばれる少なくとも1つの層、キャパシタの誘電体層、あるいは、光学デバイスにおける格子層をいう。但し、既に述べたとおり、機能性デバイスの一類型として、薄膜トランジスタ、メモリ型トランジスタ、圧電式インクジェットヘッド、キャパシタ、光学デバイス、又はMEMSデバイス(アクチュエーター含む)が挙げられるため、それらの一部に採用し得る前駆体層、又は固体材料層も、上述の「機能性固体材料前駆体層」又は「機能性固体材料層」に含まれ得る。
【0017】
なお、上述の各「機能性固体材料前駆体溶液」、各「機能性固体材料前駆体」、及びそれらから形成される各「機能性固体材料」は、いずれも不可避不純物を含み得る。以下の各実施形態の説明においては、記載を簡便化するために不可避不純物についての言及を省略する。
【0018】
また、本出願における「体積収縮率」とは、「型押し工程後であって収縮前の体積から、機能性固体材料層形成工程における収縮後の体積を引いた値」を「型押し工程後であって、収縮前の体積」で割った値である。すなわち、体積収縮率が大きいほどよく収縮する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の1つの機能性デバイスの製造方法又は本発明の1つの機能性デバイスの製造装置によれば、格段に確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層を形成することが可能となる。また、本発明の1つの機能性デバイスの製造方法又は本発明の1つの機能性デバイスの製造装置によれば、比較的低温の成型が実現できる。その結果、そのような型押し構造が形成された機能性固体材料層を備えた機能性デバイスを製造することができる。加えて、この機能性デバイスの製造方法によれば、比較的低温の加熱処理と型押し加工処理によって機能性固体材料層が形成されるため、工業性ないし量産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態における機能性デバイスの製造装置の構成を示す図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2C】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2D】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2E】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2F】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2G】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2H】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2J】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2K】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2L】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における機能性デバイスの製造工程の一部である型押し工程のフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態における機能性デバイスの製造工程の一部である型押し工程の際の第1ヒーター及び第2ヒーターの温度の時間的変化を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態の変形例における機能性デバイスの製造工程の一部である型押し工程のフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態の変形例(3)におけるメモリ型トランジスタの断面模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の変形例(7)における、パターニングされた機能性固体材料前駆体層と、本焼成後の機能性固体材料層のAFM(原子間力顕微鏡)による測定結果の一例である。
【図8】本発明の第1の実施形態の変形例(7)における、パターニングされた他の機能性固体材料前駆体層と、本焼成後の他の機能性固体材料層のAFM(原子間力顕微鏡)による測定結果の一例である。
【図9】一般的なゲル状態および最終酸化物における前駆体の材料の違いによる反応過程メカニズムを示す想定図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の変形例(8)における機能性デバイスの製造装置の構成を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における圧電式インクジェットヘッドを説明するために示す図。
【図12】本発明の第2の実施形態における圧電式インクジェットヘッドの製造方法の一部を説明するために示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態における圧電式インクジェットヘッドの製造方法の一部を説明するために示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における圧電式インクジェットヘッドの製造方法の一部を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態における機能性デバイスの一例である薄膜トランジスタ100及びその製造方法、並びに本発明の実施形態である機能性デバイスの製造装置700を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態の機能性デバイスの製造装置700の構成を示す図である。また、図2A〜図2Jは、それぞれ、本実施形態における薄膜トランジスタ100の製造方法の一過程を示す断面模式図である。なお、文字の見やすさを考慮して、図2Hの後の図面番号を図2Jとする。また、本実施形態の薄膜トランジスタは、いわゆるボトムゲート構造を採用しているが、本実施形態はこの構造に限定されない。従って、当業者であれば、通常の技術常識を以って本実施形態の説明を参照することにより、工程の順序を変更することにより、トップゲート構造を形成することができる。加えて、図面を簡略化するため、各電極からの引き出し電極のパターニングについての記載は省略する。
【0023】
[機能性デバイスの製造装置700の構成]
図1に示すように、本実施形態の機能性デバイスの製造装置700は、大別して3つの構成部分、すなわち、上部型押し部720、下部型押し部710、及びそれらの制御部760とから構成されている。
【0024】
具体的には、まず、上部型押し部720においては、固定部722によって固定された石英ガラス726が、機能性固体材料前駆体層に対して型押し加工を施すための、例えばゲート電極用型M1を保持している。また、本実施形態では、型押し加工の際に機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する1つの熱源として、ゲート電極用型M1等を加熱するための第2ヒーター724が、固定部722に接続している。なお、上部型押し部720は、図示しない公知の昇降機構及び型押し加工を施す際の機能性固体材料前駆体層に対するゲート電極用型M1等の押圧力をモニターする圧力センサーを備えている。なお、この圧力センサーは、後述する下部型押し部710が備えていても良い。
【0025】
次に、下部型押し部710においては、基台712上に、処理対象となる機能性固体材料前駆体層(例えば、ゲート電極用前駆体層20a)を備えたSiO/Si基板(以下、単に「基板」ともいう)10が載置される。なお、図示しないポンプによって吸引部716から吸引されることにより、基板10が基台712に吸着している。加えて、本実施形態では、型押し加工の際に機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する他の熱源として、基板10並びに機能性固体材料前駆体層を加熱するための第1ヒーター714が、基台712に接続している。ところで、本実施形態では、第1ヒーター714が、機能性固体材料前駆体層の予備焼成(「乾燥工程」と呼ばれることもある)を行う予備焼成部718を兼ねている。従って、本実施形態では、予備焼成部718を含む下部型押し部710が、機能性デバイスの製造装置700の予備焼成部を担うことになる。なお、予備焼成部718が第1ヒーター714と別個に設けられることも採用し得る他の一態様である。
【0026】
また、本実施形態の機能性デバイスの製造装置700は、公知のフィードバック制御による上部型押し部720を利用した型の昇降移動の制御、型の押圧力の制御、第1ヒーター714の温度制御、及び第2ヒーター724の温度制御を含む型押し加工の際の各種制御を担う制御部760、並びに制御部760に接続するコンピューター762を備えている。このコンピューター762は、上述の各構成部分を用いた本実施形態の一連の処理を実行するための機能性デバイスの製造プログラムにより、上述の各構成部分の処理を監視し、又は統合的に制御する。尚、本実施形態では、この機能性デバイスの製造プログラムがコンピューター内のハードディスクドライブ、又はコンピューターに設けられた光ディスクドライブ等に挿入される光ディスク等の公知の記録媒体に保存されているが、この機能性デバイスの製造プログラムの保存先はこれに限定されない。例えば、この機能性デバイスの製造プログラムの一部又は全部は、本実施形態における制御部760内に保存されていてもよい。また、この機能性デバイスの製造プログラムは、ローカルエリアネットワークやインターネット回線等の公知の技術を介して上述の各プロセスを監視し、又は制御することもできる。
【0027】
[薄膜トランジスタ100の製造工程]
次に、機能性デバイスの一例である薄膜トランジスタ100の製造工程について説明する。図2A〜図2Jは、それぞれ、本実施形態における薄膜トランジスタ100の製造方法の一過程を示す断面模式図である。なお、以下の各実施形態における機能性固体材料層は、機能性固体材料前駆体溶液を出発材とする機能性固体材料前駆体層を焼成することによって形成されている。本出願では、前述のように、前駆体溶液を出発材とし、それを焼成することによって機能性固体材料層を形成する方法を、便宜上、「溶液法」とも呼ぶ。
【0028】
(1)ゲート電極の形成
[予備焼成工程]
本実施形態では、まず、図2Aに示すように、基板10上に、公知のスピンコーティング法により、機能性固体材料前駆体溶液である、インジウム(In)を含む前駆体(例えば、塩化インジウムやインジウムアセチルアセトナート)及び錫(Sn)を含む前駆体(例えば、塩化錫)を溶質とする前駆体溶液(ここでは、ゲート電極用前駆体溶液)を出発材とするゲート電極用前駆体層20aを形成する。その後、制御部760が、予備焼成部718を用いて、予備焼成として、約5分間、ゲート電極用前駆体層20aを大気中において150℃に加熱する。予備焼成温度は、80℃以上250℃以下が好ましい。なお、前述の各前駆体の例の他にも、例えば、インジウム(In)を含む前駆体として、インジウムイソプロポキシド、酢酸インジウム、2−エチルヘキサン酸インジウムを採用することができる。また、錫(Sn)を含む前駆体の例として、錫アセチルアセトナート、2−エチルヘキサン酸錫を採用することができる。
【0029】
ここで、予備焼成温度を80℃以上250℃以下としたのは、以下の理由による。まず、予備焼成温度が80℃未満である場合には、ゲート電極用前駆体層20aを十分に乾燥させることができないことから、型押し工程でゲート電極用前駆体層20aに対して均一に型押し加工を施すことが困難となるためである。一方、予備焼成温度が250℃を超える場合には、ゲート電極用前駆体層20aの固化反応が進み過ぎることから、型押し工程においてゲート電極用前駆体層20aを十分に軟化させること(ゲート電極用前駆体層20aの塑性変形能力を十分に高くすること)ができなくなる。その結果、十分な型押し加工の効果を得ることが困難となるからである。従って、前駆体層の固化反応をある程度進めて前駆体層の流動性を予め低くしておくという観点から言えば、予備焼成温度を120℃以上250℃以下にすることがより好ましい。なお、予備焼成における前述の好適な各温度範囲は、ゲート電極用前駆体層20aのみならず、後述する他の前駆体層に対しても適用し得るため、重複する説明は省略する。
【0030】
[型押し工程]
その後、ゲート電極のパターニングを行うために、図2Bに示すように型押し工程が行われる。本実施形態では、図1に示すように、コンピューター762が接続する制御部760により、上部型押し部720の移動と温度制御並びに下部型押し部710の温度制御が行われながら、型押し加工が施される。以下に、図3に示す機能性デバイス(本実施形態では、薄膜トランジスタ100)の製造工程の一部である型押し工程のフローチャートを示しながら具体的な処理を説明する。
【0031】
図3に示すように、まず、ステップS101において、型押し工程の処理対象となる機能性固体材料前駆体層(例えば、ゲート電極用前駆体層20a)を備えた基板10を基台712に吸着させる。加えて、固定部722によって、例えばゲート電極用型M1を、石英ガラス726を介して保持させる。
【0032】
その後、ステップS102において、制御部760は、上部型押し部720を下方に移動させる。そして、例えば、ゲート電極用前駆体層20aに対してゲート電極用型M1を押圧する。なお、本実施形態では、型を用いて、8MPaの圧力で型押し加工が施される。
【0033】
ステップS103では、ステップS102において型が機能性固体材料前駆体層へ押圧すると同時に、あるいは型が機能性固体材料前駆体層へ押圧した直後に、制御部760が第1ヒーター714及び第2ヒーター724の加熱を開始する。また、制御部760は、第1ヒーター714及び第2ヒーター724を加熱するとともに、第1ヒーター714及び第2ヒーター724の温度のモニターを開始する。ここで、上述のとおり、第1ヒーター714の加熱によって、基板10及び機能性固体材料前駆体層が加熱される。また、第2ヒーター724の加熱によって型(例えば、ゲート電極用型M1)が加熱される。従って、本実施形態では、特に言及がない限り、基台712に熱を供給する第1ヒーター714の温度を、基台712の温度として表す。また、特に言及がない限り、型に熱を供給する第2ヒーター724の温度を、型の温度として表す。。なお、ステップS102とステップS103との順序が入れ替わることも採用し得る他の一態様である。
【0034】
図4は、本実施形態における機能性デバイスの製造工程の一部である型押し工程の際の、第1ヒーター714及び第2ヒーター724の温度の時間的変化を示すグラフである。図4において、点線は第1ヒーター714の温度変化を示し、実線は第2ヒーター724の温度変化を示している。本実施形態の型押し工程においては、第1ヒーター714及び第2ヒーター724の温度が十分に冷却されたときに型が機能性固体材料前駆体層から離される。従って、本実施形態の型押し工程において、型が機能性固体材料前駆体層へ押圧している時間は、図4においてTxで示す時間である。
【0035】
図4に示すように、当初、第1ヒーター714の温度(T1)の方が第2ヒーター724の温度(T2)よりも昇温が早いために、第1ヒーター714の温度(T1)の方が第2ヒーター724の温度(T2)よりも高い時間帯(図4のTa)が形成されている。しかし、本実施形態では、予め設定された第2ヒーター724(T2)の最高温度が180℃であり、第1ヒーター714の最高温度(T1)が150℃であるため、第2ヒーター724の温度(T2)の方が第1ヒーター714の温度(T1)の方よりも高い時間帯(図4のTb)が形成される。従って、本実施形態では、図4におけるTaの時間帯においては、機能性固体材料前駆体層(例えば、ゲート電極用前駆体層20a)は基台712側からより積極的に熱を供給されることとなる。一方、図4におけるTbの時間帯においては、機能性固体材料前駆体層は型側からより積極的に熱を供給されることとなる。
【0036】
ステップS104では、制御部760は、第1ヒーター714及び第2ヒーター724の温度のモニターをしながら、機能性固体材料前駆体層に対して型を押圧している間、機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する温度(第1温度)が機能性固体材料前駆体層の温度(第2温度)よりも高くなるか否かを判断する。
【0037】
その後、制御部760は、第1温度が第2温度よりも高くなることを認めると、ステップS105において、制御部760は、ある時間経過後に、型を機能性固体材料前駆体層から離れさせる。なお、本実施形態では、「ある時間」は、後述する「一部の時間」と実質的に一致する。また、本実施形態のように、型を機能性固体材料前駆体層から離れさせる前に、型の温度を急冷ないし徐冷する工程が適宜実施され得る。
【0038】
本実施形態では、機能性固体材料前駆体層に対して型を押圧している間(Tx)のうち、一部の時間(TaとTbの和)において、機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する温度(第1温度)が機能性固体材料前駆体層の温度(第2温度)よりも高くなる状態で、型押し加工が施されることになる。より具体的には、Taの時間帯においては、第1ヒーター714の温度(第1温度)が、型によって加熱された機能性固体材料前駆体層の温度(第2温度)よりも高くなる状態で、型押し加工が施される。しかしながら、Tbの時間帯においては、型の温度(第1温度)が、第1ヒーター714で加熱された機能性固体材料前駆体層の温度(第2温度)よりも高くなる状態で、型押し加工が施されることになる。つまり、本実施形態における「熱源」は、Taの時間帯では基台(第1ヒーター714)であり、Tbの時間帯では、型(第2ヒーター724)である。このように、第1ヒーター714の温度(T1)と第2ヒーター724の温度(T2)との差を生じさせることにより、熱源から機能性固体材料前駆体層への熱の供給又は移動を積極的に促すことになる。その結果、機能性固体材料前駆体層の成型性の向上、及び比較的低温の成型に再現性良く寄与し得ることになる。
【0039】
なお、本実施形態では、機能性固体材料前駆体層に対して型を押圧している間(Tx)のうち、上述の一部の時間(TaとTbの和)の割合は、型を押圧している間(Tx)を100としたときに95以上であったが、この割合は、この数値に限定されない。例えば、一部の時間が、型を押圧している間を100としたときに、20以上であることが好ましい。その一部の時間が20未満であれば、熱の伝わりが不十分となるため、好ましくない。また、上述の一部の時間が、60秒以上であることが好ましい。これは、60秒未満であれば、短時間のために機能性固体材料前駆体層に対して型押し構造が形成され難いためである。
【0040】
上述のとおり、ゲート電極用型M1を用いて型押し加工を施した結果、図2Cに示すように、層厚が約100nm〜約300nmの厚層部と層厚が約10nm〜約100nmの薄層部とを備える、ゲート電極用前駆体層20aが形成される。
【0041】
その後、図2Dに示すように、ゲート電極用前駆体層20aを全面エッチングすることにより、ゲート電極に対応する領域以外の領域からゲート電極用前駆体層20aを除去する(ゲート電極用前駆体層20aの全面に対するエッチング工程)。なお、本実施形態のエッチング工程は、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われたが、プラズマを用いた、いわゆるドライエッチング技術によってエッチングされることを妨げない。なお、プラズマ処理を大気圧下において行う技術を採用することも可能である。
【0042】
[熱処理(本焼成)工程]
さらにその後、本焼成として、ゲート電極用前駆体層20aを酸素雰囲気中(例えば100体積%であるが、これに限定されない。以下の「酸素雰囲気」についても同じ。)において約15分間加熱する。その結果、図2Eに示すように、基板10上に、機能性固体材料層であるゲート電極層20として、インジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物層が形成される。なお、インジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物層は、ITO(indium tin oxide)層とも呼ばれる。
【0043】
本実施形態では、制御部760が、本焼成用ヒーター738の役割も担う第1ヒーター714を加熱することにより、基板10上のゲート電極用前駆体層20aを本焼成する。従って、本実施形態では、本焼成用ヒーター738を含む下部型押し部710が、機能性デバイスの製造装置700の熱処理部を担うことになる。なお、本焼成用ヒーター738をが第1ヒーター714と別個に設けられることも採用し得る他の一態様である。なお、本焼成用ヒーター738の代わりに、RTA(rapid thermal anealing)装置を用いてゲート電極用前駆体層20aを加熱処理することも採用し得る一態様である。また、このRTA装置は、他の本焼成の際にも利用し得る装置である。
【0044】
また、本実施形態における本焼成の際の第1ヒーター714の温度は、500℃である。従って、本焼成の際の第1ヒーター714の温度(本実施形態における第3温度)は、型押し工程における第2ヒーター724の最高温度(本実施形態における第1温度)よりも320℃乃至350℃高い。
【0045】
上述のとおり、ゲート電極用型M1を用いて型押し加工を施し、その後本焼成を行うことにより、確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層を形成することが可能となる。
【0046】
ところで、機能性固体材料前駆体層を形成するための予備焼成温度が80℃以上250℃以下とするとともに、前述の第1温度を予備焼成温度よりも高く、かつ、90℃以上300℃以下とすることは、上述の予備焼成の工程及び型押し工程における更に好ましい一態様である。前述の温度範囲の予備焼成により、機能性固体材料前駆体層中の溶媒を蒸発させるとともに、将来的な塑性変形を可能にする特性を発現させるために好ましいゲル状態(熱分解前であって有機鎖が残存している状態と考えられる)を形成することができる。その上で、前述の温度範囲内の第1温度を採用することにより、機能性固体材料前駆体層の成型性の向上、及び比較的低温の成型に再現性良く寄与し得ることになる。前述の観点で最も好適な予備焼成温度は100℃以上200℃以下であり、最も好適な第1温度は、150℃以上300℃以下である。従って、上述の各条件を実現する予備焼成部及び制御部を備えることが好ましい。
【0047】
他方、上述の予備焼成の工程及び型押し工程において、以下の(1)及び(2)の条件を満たすようにすることは、機能性固体材料前駆体層に対する型押し加工のし易さを高めるという観点から言えば、採用し得る好適な一態様である。
(1)予備焼成の工程おいて、機能性固体材料前駆体層を形成するための予備焼成温度が機能性固体材料前駆体溶液の溶媒の沸点よりも低く設定されること。
(2)型押し工程における第1温度を機能性固体材料前駆体溶液の溶媒の沸点よりも高くすること。
【0048】
ところで、上述のインジウム(In)を含む前駆体の例は、酢酸インジウム、硝酸インジウム、塩化インジウム、又は各種のインジウムアルコキシド(例えば、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド)が採用され得る。また、錫(Sn)を含む前駆体の例として、酢酸錫、硝酸錫、塩化錫、又は各種の錫アルコキシド(例えば、錫イソプロポキシド、錫ブトキシド、錫エトキシド、錫メトキシエトキシド)が採用され得る。
【0049】
また、本実施形態では、インジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物であるゲート電極層20が採用されているが、ゲート電極層20はこの組成に限定されない。例えば、他のゲート電極層20として、酸化インジウム(In)、アンチモンドープ酸化錫(Sb−SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al−ZnO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Ga−ZnO)、酸化ルテニウム(RuO)、酸化イリジウム(IrO)、酸化錫(SnO)、一酸化錫SnO、ニオブドープ二酸化チタン(Nb−TiO)などの酸化物導電体材料を用いることができる。また、本発明の他の一態様の薄膜トランジスタは、前述のゲート電極層20として、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、ガリウムドープ酸化インジウム(In−Ga−O(IGO))、インジウムドープ酸化亜鉛(In−Zn−O(IZO))などのアモルファス導電性酸化物を用いることができる。また、本発明の他の一態様の薄膜トランジスタは、前述のゲート電極層20として、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ニオブドープチタン酸ストロンチウム(Nb−SrTiO)、ストロンチウムバリウム複合酸化物(SrBaO)、ストロンチウムカルシウム複合酸化物(SrCaO)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)、酸化ニッケルランタン(LaNiO)、酸化チタンランタン(LaTiO)、酸化銅ランタン(LaCuO)、酸化ニッケルネオジム(NdNiO)、酸化ニッケルイットリウム(YNiO)、酸化ランタンカルシウムマンガン複合酸化物(LCMO)、鉛酸バリウム(BaPbO)、LSCO(LaSr1−xCuO)、LSMO(La1−xSrMnO)、YBCO(YBaCu7−x)、LNTO(La(Ni1−xTi)O)、LSTO((La1−xSr)TiO)、STRO(Sr(Ti1−xRu)O)、その他のペロブスカイト型導電性酸化物、又はパイロクロア型導電性酸化物を用いることができる。
【0050】
また、本実施形態における効果を適切に奏させるために、ゲート電極用前駆体溶液の溶媒は、以下の(1)乃至(3)のいずれかの溶媒であることが好ましい。
(1)エタノール、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、及び2−ブトキシエタノールの群から2種が選択されるアルコールの混合溶媒。
(2)エタノール、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、及び2−ブトキシエタノールの群から選択される1種のアルコール溶媒。
(3)酢酸、プロピオン酸、及びオクチル酸の群から選択される1種又は2種のカルボン酸たる溶媒。
なお、ゲート電極用前駆体溶液についての前述の好適な溶媒の例は、ゲート電極用前駆体溶液のみならず、後述する他の機能性固体材料前駆体層の出発材としての機能性固体材料前駆体溶液に対しても適用し得るため、重複する説明は省略する。
(2)ゲート絶縁層の形成
次に、図2Fに示すように、基板10及びパターニングされたゲート電極層20上に、ゲート電極用前駆体層20aの形成方法と同様に、シリコン(Si)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とするゲート絶縁層用前駆体層30aを形成する。その後、制御部760が、予備焼成部718を用いて、予備焼成として、約5分間、ゲート絶縁層用前駆体層30aを大気中において150℃に加熱する。予備焼成温度は、80℃以上250℃以下が好ましい。そして、予備焼成を行った後、本焼成として、ゲート絶縁層用前駆体層30aを、酸素雰囲気中、約20分間、550℃に加熱することにより、図2Gに示すゲート絶縁層30が形成される。
なお、本実施形態におけるゲート絶縁層30の厚みは約170nmである。
【0051】
なお、本実施形態では、ゲート絶縁層のパターニングをー行うために、ゲート絶縁層用前駆体層30aに対する予備焼成の後に、ゲート電極のパターニングと同様に、ゲート絶縁層専用の型(図示しない)を用いて型押し加工を施すことも、採用し得る他の一態様である。すなわち、ゲート絶縁層用の前駆体溶液を出発材とするゲート絶縁層用前駆体層30aを、ゲート絶縁層30を形成する前に、酸素雰囲気中又は大気中(以下、総称して、「酸素含有雰囲気」ともいう。)において、ゲート電極層20の形成方法と同様に第1ヒーター714及び第2ヒーター724を加熱した状態で型押し加工を施す工程をさらに含むことも、採用し得る他の一態様である。また、ゲート絶縁層を形成するための型押し加工に対しても、ゲート電極のパターニングと同様の好適な加熱温度範囲や圧力等の諸条件が適用し得る。
【0052】
(3)チャネルの形成
その後、ゲート絶縁層30上に、ゲート電極用前駆体層20aの形成方法と同様に、インジウム(In)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とするチャネル用前駆体溶液を出発材とするチャネル用前駆体層が形成する。その後、上述のゲート電極の形成方法と同様に、第1の実施形態と同様に予備焼成及び本焼成が行われる。その結果、ゲート絶縁層30上に、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなるチャネル用酸化物層40(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。なお、本実施形態のチャネル用酸化物層40の厚みは約20nmである。
【0053】
なお、本実施形態では、チャネルのパターニングをー行うために、チャネル用前駆体層に対する予備焼成の後に、ゲート電極のパターニングと同様に、チャネル専用の型(図示しない)を用いて型押し加工を施すことも、採用し得る他の一態様である。すなわち、チャネル用前駆体溶液を出発材とするチャネル用前駆体層を、チャネル用酸化物を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、ゲート電極層20の形成方法と同様に第1ヒーター714及び第2ヒーター724を加熱した状態で型押し加工を施す工程をさらに含むことも、採用し得る他の一態様である。また、チャネルを形成するための型押し加工に対しても、ゲート電極のパターニングと同様の好適な加熱温度範囲や圧力等の諸条件が適用し得る。
【0054】
(4)ソース電極及びドレイン電極の形成
本実施形態では、その後、溶液法を採用した上で型押し加工を施すことにより、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物層であるソース電極54及びドレイン電極52(但し、いずれも不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。なお、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物層は、LNO層とも呼ばれる。具体的には、以下のとおりである。
【0055】
まず、チャネル用酸化物層40上に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体(例えば、ランタンイソプロポキシド)及びニッケル(Ni)を含む前駆体(例えば、酢酸ニッケル)を溶質とするソース/ドレイン電極用前駆体溶液(以下、ソース/ドレイン電極用前駆体の溶液に対して同じ。)を出発材とするソース/ドレイン電極用前駆体層50aを形成する。
【0056】
その後、予備焼成として、約1分間、ソース/ドレイン電極用前駆体層50aを大気中において120℃に加熱する。その後、ソース/ドレイン電極のパターニングを行うために、図2Jに示すように、ソース/ドレイン電極用型M2を用いて、8MPaの圧力で型押し加工を施す。
【0057】
ここで、ソース/ドレイン電極用前駆体層50aに対する型押し加工に際しても、ゲート電極用前駆体層20aの型押し工程と同様に第1ヒーター714(基台712側)と第2ヒーター724(型側)とを加熱した状態で型押し加工を施す。但し、この例では、第1ヒーター714の最高温度は150℃であり、第2ヒーター724の最高温度は180℃である。
【0058】
その結果、将来的にソース電極及びドレイン電極となる領域(図2Kの(a))上には、約100nm〜約300nmの層厚のソース/ドレイン電極用前駆体層50aが形成される。また、将来的にチャネル用酸化物層40が残される領域(図2Kの(b))上には、約10nm〜約100nmの層厚のソース/ドレイン電極用前駆体層50aが形成される。一方、将来的にチャネル用酸化物層40が取り除かれる領域(図2Kの(c))上には、約10nm〜約100nmの層厚のソース/ドレイン電極用前駆体層50aが形成される。なお、ソース/ドレイン電極用型M2を用いて、1MPa以上20MPa以下の圧力で型押し加工を施すことにより、本実施形態の効果の少なくとも一部が奏され得る。
【0059】
その後、本焼成として、ソース/ドレイン電極用前駆体層50aを、大気中で、約5分間、550℃以上650℃以下に加熱することによりソース/ドレイン電極用酸化物層50が形成される。
【0060】
その後、ソース/ドレイン電極用酸化物層50の全面に対して、アルゴン(Ar)プラズマによるドライエッチングを行う。その結果、最も薄い領域(図2Kの(c))のソース/ドレイン電極用酸化物層50が最初にエッチングされ、その後継続して、露出したチャネル用酸化物層40がエッチングされることになる。続いて、2番目に薄い領域(図2Kの(b))のソース/ドレイン電極用酸化物層50が完全にエッチングされるとともに、最も薄い領域(図2Kの(c))におけるチャネル用酸化物層40が完全にエッチングされたときに、プラズマ処理を停止する。このように、本実施形態では、上述の領域(b)と領域(c)の各層厚を調整することにより、領域(b)のチャネル用酸化物層40を残した状態で、領域(c)のチャネル用酸化物層40が取り除かれる。その結果、図2Lに示すように、チャネル領域自身の分離が実現されるとともに、ソース電極54及びドレイン電極52がチャネル領域を介して完全に分離されるように形成される。
【0061】
本実施形態では、さらに、窒素雰囲気中で、約15分間、500℃に加熱することにより、本実施形態の薄膜トランジスタ100が製造される。この加熱処理により、ITO中の酸素が欠損し、この欠損が導電性の酸素欠損キャリアとなるため、導電性向上が図られる。本実施形態の型押し工程によって、サブミクロンオーダー(具体的には、約500nm)のチャネル領域の分離が実現できる。また、本実施形態において形成されたソース電極54及びドレイン電極52の抵抗率は、10−3Ωcmのオーダー以下であった。
【0062】
なお、本実施形態のエッチング工程は、アルゴン(Ar)プラズマによるドライエッチングによってエッチングされたが、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われることを妨げない。
【0063】
また、発明者らの研究と分析によれば、型押し加工において確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層を形成するためには、上述の実施形態における熱源の第1温度の好ましい範囲は、100℃以上200℃以下であり、各機能性固体材料前駆体層の第2温度の好ましい範囲は、90℃以上190℃以下である。また、更に好適な熱源の第1温度の範囲は、160℃以上180℃以下であり、各機能性固体材料前駆体層の更に好適な第2温度の好適な範囲は、150℃以上170℃以下である。前述の各温度範囲であれば、各機能性固体材料前駆体層の塑性変形能力が高くなるとともに、主溶媒を十分に除去できる。
【0064】
なお、第1温度と第2温度との好適な差は、10℃以上である。これは、その差が10℃未満であれば、機能性固体材料前駆体層に対する熱源からの熱の供給又は移動を促すことが困難となるためである。従って、例えば、本実施形態のように、型の温度が、基台の温度よりも10℃以上高くなるように予め設定される、又は制御部760がそのような温度差となるように制御することは、各機能性固体材料前駆体層に対する熱源からの熱の供給又は移動をより確度高く、より積極的に促すことになるため、確度高く及び/又は精度良く型押し構造を形成することに貢献する。また、現時点ではメカニズムが明確ではないが、確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層を形成するためには、型押し加工においては、基台の温度よりも型の温度が高くなるように設定、又は制御されることが好ましい。
【0065】
型の好適な温度を90℃以上300℃以下としたのは、以下の理由による。まず、90℃未満の場合には、各前駆体層の温度が低下することに起因して各前駆体層の塑性変形能力が低下することになる。加えて、300℃を超える場合には、各前駆体層の固化反応が進みすぎることに起因して各前駆体層の塑性変形能力が低下する。上記観点から言えば、型押し工程において、100℃以上250℃以下に加熱した型を用いて型押し加工を施すことがより好ましい。
【0066】
さらに、本実施形態のように、型押し工程の後、酸素含有雰囲気中において、機能性固体材料前駆体層を熱源である第1温度(より具体的には、熱源の最高温度)よりも高い本焼成温度(第3温度)で熱処理することによって機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成することも好適な一態様である。これは、第1温度よりも高い第3温度で本焼成することにより、固化反応を進めるとともに、仮に機能性固体材料層が結晶性の材料の場合は、その結晶化を進めて十分な機能性を発現させるためである。
【0067】
上述のように、本実施形態では、少なくとも一部の酸化物層に対して型押し加工を施すことによって型押し構造を形成する、「型押し工程」が採用されている。この型押し工程が採用されることにより、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス、あるいは紫外線の照射プロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を必要とするプロセスが不要になる。また、本実施形態では、ゲート電極、ゲート絶縁膜、チャネル、ソース電極、及びドレイン電極というデバイスを構成する全ての層が溶液法によって形成されている点は、特筆に値する。従って、本実施形態の薄膜トランジスタ100は、極めて工業性ないし量産性に優れている。
【0068】
ところで、本実施形態では、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物であるソース/ドレイン電極用酸化物層50が採用されているが、ソース/ドレイン電極用酸化物層50はこの組成に限定されない。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム(In)、アンチモンドープ酸化錫(Sb−SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al−ZnO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Ga−ZnO)、酸化ルテニウム(RuO)、酸化イリジウム(IrO)、酸化錫(SnO)、一酸化錫SnO、ニオブドープ二酸化チタン(Nb−TiO)などの酸化物導電体材料を用いることができる。また、本発明の他の一態様の薄膜トランジスタは、前述のソース/ドレイン電極用酸化物層50として、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、ガリウムドープ酸化インジウム(In−Ga−O(IGO))、インジウムドープ酸化亜鉛(In−Zn−O(IZO))などのアモルファス導電性酸化物を用いることができる。また、本発明の他の一態様の薄膜トランジスタは、前述のソース/ドレイン電極用酸化物層50として、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ニオブドープチタン酸ストロンチウム(Nb−SrTiO)、ストロンチウムバリウム複合酸化物(SrBaO)、ストロンチウムカルシウム複合酸化物(SrCaO)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)、酸化ニッケルランタン(LaNiO)、酸化チタンランタン(LaTiO)、酸化銅ランタン(LaCuO)、酸化ニッケルネオジム(NdNiO)、酸化ニッケルイットリウム(YNiO)、酸化ランタンカルシウムマンガン複合酸化物(LCMO)、鉛酸バリウム(BaPbO)、LSCO(LaSr1−xCuO)、LSMO(La1−xSrMnO)、YBCO(YBaCu7−x)、LNTO(La(Ni1−xTi)O)、LSTO((La1−xSr)TiO)、STRO(Sr(Ti1−xRu)O)、その他のペロブスカイト型導電性酸化物、又はパイロクロア型導電性酸化物を用いることができる。
【0069】
また、本実施形態における「機能性固体材料前駆体溶液」は、金属アルコキシドを含む溶液(以下、「金属アルコキシドを溶質とする溶液」ともいう。その他の機能性固体材料前駆体溶液についても同じ)、金属有機酸塩を含む溶液、金属無機酸塩を含む溶液、金属ハロゲン化物を含む溶液、金属、窒素、及び水素を含む無機化合物を含む溶液、金属水素化物を含む溶液、金属ナノ粒子を含む溶液、及びセラミックス微粒子の群から選ばれる少なくとも1種類を含む溶液であることが好ましい。
【0070】
また、本実施形態における基板10は、SiO/Si基板であったが、基板10は、この材質に限定されない。例えば、絶縁性基板(例えば、石英ガラス(SiO)基板、Si基板の表面にSiO層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板、アルミナ(Al)基板、SRO(SrRuO)基板、STO(SrTiO)基板)、又は半導体基板(例えば、シリコン(Si)基板、炭化硅素(SiC)基板)等の固体基板を用いることができる。
【0071】
また、上述の型押し工程のうち、ソース電極54及びドレイン電極52のパターニングにおいては、本焼成後にソース/ドレイン電極用酸化物層50の全面エッチングが行われたが、この全面エッチングが本焼成前に行われても良い。すなわち、上述の型押し工程と前述の機能性固体材料層形成工程(すなわち、本焼成)との間に、型押し加工が施された機能性固体材料前駆体層(例えば、ゲート電極用前駆体層20a)のうち最も層厚が薄い領域においてその機能性固体材料前駆体層が除去される条件で、その機能性固体材料前駆体層を全体的にエッチングする工程が含まれることが好ましい。これは、機能性固体材料前駆体層を本焼成した後にエッチングするよりも容易に不要な領域を除去することが可能なためである。
【0072】
<第1の実施形態の変形例(1)>
数多くの実験と分析の結果、発明者らは、第1ヒーター714と第2ヒーター724とが用いられる上述の第1の実施形態や各変形例とは異なる制御であっても、好適な型押し工程の例が存在することを知見した。第1の実施形態では、型が機能性固体材料前駆体層へ押圧すると同時に、あるいは型が機能性固体材料前駆体層へ押圧した直後に第1ヒーター714及び第2ヒーター724を加熱する温度制御が行われているが、第1ヒーター714及び第2ヒーター724の温度制御はその例に限定されないことが確認された。
【0073】
具体的には、制御部760が、機能性固体材料前駆体層に型を押圧する前に、第2ヒーター724の温度(T2)が第1ヒーター714の温度(T1)よりも高くなるように予め制御することも採用し得る他の一態様である。図5は、機能性デバイス(本実施形態も、薄膜トランジスタ100)の製造工程の一部である型押し工程(代表的に、ゲート電極用前駆体層20aに対する型押し工程)の他の例を示すフローチャートである。型押し工程を除く工程は、第1の実施形態の各工程を同様であるため、説明を省略する。
【0074】
[型押し工程の変形例]
図5に示すように、まず、ステップS201において、型押し工程の処理対象となるゲート電極用前駆体層20aを備えた基板10を基台712に吸着させる。加えて、固定部722によって、例えばゲート電極用型M1を、石英ガラス726を介して保持させる。
【0075】
ステップS202では、制御部760が第1ヒーター714及び第2ヒーター724の加熱を開始する。また、制御部760は、第1ヒーター714及び第2ヒーター724を加熱するとともに、第1ヒーター714及び第2ヒーター724の温度のモニターを開始する。なお、本実施形態では、ステップS202において前述の各温度のモニターを開始するが、前述の各温度のモニターが常時行われることも、採用し得る他の一態様である。
【0076】
その後、ステップS203に示すように、制御部760は、第1ヒーター714の温度(T1)と第2ヒーター724の温度(T2)とを比較し、第2ヒーター724の温度(T2)が第1ヒーター714の温度(T1)よりも高くなるまで、各ヒーターの温度を調整ないし制御する。そして、第2ヒーター724の温度(T2)が第1ヒーター714の温度(T1)よりも高くなれば、ステップS204に示すように、制御部760が上部型押し部720を下方に移動させる。なお、制御部760は、例えば、ゲート電極用前駆体層20aに対してゲート電極用型M1を1MPa以上20MPa以下の圧力で押圧する。なお、本実施形態では、第1ヒーター714の温度(T1)が100℃であり、第2ヒーター724の温度(T2)が180℃である。
【0077】
その後、一定の時間(例えば、300秒)が経過した後、ステップS205に示すように、制御部760が、型を機能性固体材料前駆体層から離れさせる。
【0078】
この変形例においても、機能性固体材料前駆体層に対して型押し構造を形成する型を押圧している間の少なくとも一部の時間において、機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する型の温度(第1温度)が、第1ヒーター714で加熱された機能性固体材料前駆体層の温度(第2温度)よりも高くなる状態で、型押し加工が施されることになる。従って、第1の実施形態と同様に、確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層を形成することが可能となる。その結果、そのような型押し構造が形成された機能性固体材料層を備えた機能性デバイスを製造することができる。
【0079】
<第1の実施形態の変形例(2)>
加えて、第1の実施形態では、第1ヒーター714と第2ヒーター724との両方が加熱される例が示されたが、機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する又は熱の移動を実現するための手段はこの例に限定されない。例えば、第1ヒーター714のみが加熱されることによって機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給又は熱の移動を実現することも採用し得る変形例の一つである。但し、機能性固体材料層の積層化を見据えたアライメントの観点から言えば、第1ヒーター714のみが加熱されるよりも、第1ヒーター714と第2ヒーター724との両方が加熱される方が好ましい。
【0080】
<第1の実施形態の変形例(2’)>
さらに、上述の第1の実施形態の変形例(2)のバリエーションの一例として、第1ヒーター714の温度(T1)は一定であるが、第2ヒーター724の温度(T2)のみが第1ヒーター714の温度(T1)よりも高くなるまで上昇するように温度制御することも、採用し得る他の一態様である。
【0081】
具体的には、第1ヒーター714の温度(T1)は、制御部760により、型押し加工が開始されるまでに一定温度(例えば、100℃又は150℃)となるように制御される。その結果、基板10上の機能性固体材料前駆体層の温度(第2温度)は、第1ヒーター714の温度で安定する。また、機能性固体材料前駆体層から離間した状態の第2ヒーター724の温度(T2)、すなわち型の温度は、制御部760により、例えば80℃になるように加熱される。その後、型押し加工が施された直後に、制御部760は、最終的に、第2ヒーター724の温度(T2)が例えば180℃になるまで第2ヒーター724を加熱した後、一定時間その温度を維持するように制御する。その後、制御部760は、第1ヒーター714及び第2ヒーター724を冷却し、型を機能性固体材料前駆体層から離れさせる。
【0082】
前述の型押し工程を経ることによっても、機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する熱源(本実施形態では、型)の第1温度が、機能性固体材料前駆体層の第2温度よりも高くなるように、機能性固体材料前駆体層に対して型押し加工を施すことになる。従って、機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給又は熱の移動を実現できるため、第1の実施形態と同様に、確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層を形成することが可能となる。その結果、そのような型押し構造が形成された機能性固体材料層を備えた機能性デバイスを製造することができる。
【0083】
<第1の実施形態の変形例(3)>
また、第1の実施形態における第1ヒーター714の最高温度と第2ヒーター724の最高温度とが同じとなるように温度制御することも、採用し得る他の一態様である。このような温度に制御される場合であっても、第1の実施形態で述べたとおり、当初、第1ヒーター714の温度(T1)の方が第2ヒーター724の温度(T2)よりも昇温が早いために、第1ヒーター714の温度(T1)の方が第2ヒーター724の温度(T2)よりも高い時間帯(例えば、図4におけるTaに相当する時間帯)が形成される。その結果、型押し工程中の機能性固体材料前駆体層への熱の供給又は移動が事実上生じることになるため、機能性固体材料前駆体層の成型性の向上、及び比較的低温の成型にに再現性良く寄与し得る。
【0084】
具体例を以下に説明する。
図6は、本実施形態におけるメモリ型トランジスタ200の断面模式図である。本実施形態のメモリ型トランジスタ200は、基板10上に、ゲート電極層120として、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる、パターニングされた酸化物層(LNO層)が形成されている。このゲート電極層120の製造方法は、第1の実施形態におけるソース電極54及びドレイン電極52を形成する際に用いた材料、並びにゲート電極層20の形成方法と同様の方法を用いて、LNO層が形成される。従って、重複する説明は省略する。
【0085】
次に、ゲート電極層120上には、強誘電体層130として、PZT(Pb(ZrTi1−x)O)層が形成されている。本実施形態では、溶液法を採用した上で型押し加工を施すことにより、鉛(Pb)とZr(ジルコニウム)とチタン(Ti)とからなる酸化物層(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)である強誘電体層130が形成される。具体的には、以下のとおりである。
【0086】
まず、ゲート電極層120上に、公知のスピンコーティング法により、鉛(Pb)を含む前駆体、Zr(ジルコニウム)を含む前駆体、及びチタン(Ti)を含む前駆体を溶質とする強誘電体層用前駆体溶液を出発材とする強誘電体層用前駆体層を形成する。
【0087】
その後、予備焼成として、約5分間、強誘電体層用前駆体層を大気中において150℃に加熱する。その後、強誘電体層のパターニングを行うために、図示しない強誘電体層用型を用いて、8MPaの圧力で型押し加工を施す。
【0088】
ここで、強誘電体層用前駆体層に対する型押し工程においては、制御部760は、第1ヒーター714の最高温度と第2ヒーター724の最高温度とが、いずれも180℃になるように、第1ヒーター714(基台712側)と第2ヒーター724(型側)とを加熱する。この型押し工程においては、当初、第1ヒーター714の温度(T1)の方が第2ヒーター724の温度(T2)よりも昇温が早いために、第1ヒーター714の温度(T1)の方が第2ヒーター724の温度(T2)よりも高い時間帯(一部の時間)が形成される。なお、本実施形態では、機能性固体材料前駆体層である強誘電体層用前駆体層に対して型を押圧している間のうち、前述の「一部の時間」の割合は約80%であった。
【0089】
その後、本焼成として、第1の実施形態におけるゲート電極用前駆体層20aの本焼成と同様に、第1ヒーター714を650℃に加熱することにより、PZT(Pb(ZrTi1−x)O)層が形成される。
【0090】
その後、第1の実施形態におけるチャネル用酸化物層40の形成方法と同様に、チャネル用酸化物層40が強誘電体層130上に形成される。さらにその後、第1の実施形態におけるゲート電極層20を形成する際に用いた材料、及びソース電極54及びドレイン電極52で用いたLNO層の形成方法と同様の方法を用いて、ITO層が形成される。従って、重複する説明は省略する。
【0091】
上述のとおり、第1ヒーター714の最高温度と第2ヒーター724の最高温度とが同じである場合であっても、型押し工程中の機能性固体材料前駆体層への熱の供給又は移動が事実上生じることにより、確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層が得られる。
【0092】
なお、本実施形態のメモリ型トランジスタにおいては、前述の強誘電体材料として、PZT(Pb(ZrTi1−x)O)の他に、NbドープPZT、LaドープPZT、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、BTO(BiTi12)、BLT(Bi4−xLaTi12)、SBT(SrBiTa)、BZN(Bi1.5Zn1.0Nb1.5)又はビスマスフェライト(BiFeO)を用いることができる。
【0093】
ところで、本実施形態とは異なるが、仮に、第1ヒーター714の最高温度と第2ヒーター724の最高温度が同じであるとともに、それらの昇温の経緯が同じ場合であっても、実質的に機能性固体材料前駆体層の温度(第2温度)が、型又は基台の温度(第1温度)よりも低くなる時間帯を作り出すことは可能である。例えば、第1ヒーター714と基板10との間にのみ、熱伝導率の低い部材(例えば、樹脂製の板)を介在させることにより、型の昇温速度を基板10の昇温速度よりも早めることによって、型の温度が機能性固体材料前駆体層の温度よりも高い時間帯を形成することができる。従って、そのような場合であっても、機能性固体材料前駆体層への熱の供給又は移動が生じるため、機能性固体材料前駆体層の成型性の向上、及び比較的低温の成型にに再現性良く寄与し得る。すなわち、型押し工程において型の昇温及び/又は基板10の昇温を行うことは、前述のとおり、機能性固体材料前駆体層への熱の供給又は移動の実現性を高めることになるため、好ましい一態様である。
【0094】
<第1の実施形態の変形例(4)>
ところで、第1の実施形態の機能性デバイスの製造装置700では、機能性固体材料前駆体層を備えた基板10を載置する基台712を加熱する第1ヒーター714や、機能性固体材料前駆体層に熱供給するための熱源として、型押し加工を施す際の型を加熱する第2ヒーター724が採用されているが、第1の実施形態のヒーターはこれらに限定されない。例えば、機能性固体材料前駆体層に熱供給するための「熱源」の他の例としては、輻射熱を利用した公知の手段や、マイクロ波を利用した公知の手段が挙げられる。これらの手段も、制御部760を用いて第1の実施形態の制御と同様の制御することが可能である。
【0095】
<第1の実施形態の変形例(5)>
また、機能性固体材料前駆体層を形成するための予備焼成工程における予備焼成温度を機能性固体材料前駆体溶液の溶媒の沸点よりも低くし、かつ、その後の本焼成における「熱源」の温度(第1温度)をその溶媒の沸点よりも高くすることは、採用し得る他の好適な一態様である。例えば、予備焼成工程における予備焼成温度を機能性固体材料前駆体溶液の溶媒の沸点よりも10℃〜30℃低くする制御が採用され得る。この温度調整により、機能性固体材料前駆体層中に溶媒が比較的残存しやすい状況における型押し加工が施されることになる。その結果、機能性固体材料前駆体層中に溶媒が無いか、あるいは溶媒が極めて少ないために、機能性固体材料前駆体層が、いわば硬くなって型押しし難い状況を避けることができるため、より容易に型押し構造を形成することが可能となると。
【0096】
第1の実施形態及びその変形例(1)〜(4)における熱源及び熱の供給手段に関する各態様及び好ましい温度範囲は、以下の各実施形態に対しても適用し得るため、重複した説明は省略する。
【0097】
<第1の実施形態の変形例(6)>
また、第1の実施形態及びその変形例の型押し工程におけるより好適な例として、予め、型押し面が接触することになる各前駆体層の表面に対する離型処理及び/又はその型の型押し面に対する離型処理を施しておき、その後、各前駆体層に対して型押し加工が施される。そのような処理を施すことにより、各前駆体層と型との間の摩擦力を低減することができるため、各前駆体層に対してより一層精度良く型押し加工を施すことが可能となる。なお、離型処理に用いることができる離型剤としては、界面活性剤(例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等を例示することができる。前述の各離型処理も、以下の各実施形態に対しても適用し得るため、重複した説明は省略する。
【0098】
<第1の実施形態の変形例(7)>
また、第1の実施形態及びその変形例の型押し工程における他の好適な例として、「機能性固体材料前駆体溶液」が、金属アルコキシドを含有する溶液、金属有機酸塩を含有する溶液、及び金属無機酸塩を含有する溶液の群から選ばれる少なくとも1種類であるときは、型押し工程における機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する際の体積収縮率が、20%以上80%以下である。従って、前述の各溶液が採用されることは、型押し構造の寸法精度の向上の観点から好ましい。
【0099】
加えて、特に「機能性固体材料前駆体溶液」が、金属ハロゲン化物を含む溶液、金属、窒素、及び水素を含む無機化合物を含む溶液、金属水素化物を含む溶液、金属ナノ粒子を含む溶液、及びセラミックス微粒子の群から選ばれる少なくとも1種類を含む溶液であるときは、機能性固体材料層形成工程における機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する際の体積収縮率が、1%以上30%以下である。従って、前述の各溶液が採用されることも、本焼成前後の寸法制御の容易化の観点から好ましい。
【0100】
なお、発明者らによる研究と分析によれば、金属アルコキシドを含有する溶液と金属有機酸塩を含有する溶液とを混合した複合溶液を機能性固体材料前駆体溶液として用いて型押し工程を行うと、型押し工程において機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する際の体積収縮率が小さくなることが確認された。そして、前述の複合溶液を採用することが、型押し工程における塑性変形の容易化と、本焼成前後の寸法制御の容易化という、互いに両立させ難い技術課題を解する有効な手段の一つであることが発明者らによって知見された。
【0101】
具体例として、以下の(1)及び(2)の溶液を用いた例について説明する。なお、溶媒は、いずれも2−メトキシエタノールである。
(1)金属アルコキシドとしてランタンイソプロポキシドを選択し、金属有機酸塩として酢酸ニッケルを選択した例。
(2)金属有機酸塩として酢酸ランタンを選択し、金属有機酸塩として酢酸ニッケルを選択した例。
【0102】
上述のうち、(1)を採用して130℃で予備焼成を行った機能性固体材料前駆体層を形成し、その後、ゲート電極用前駆体層20aの型押し工程と同様に第1ヒーター714(基台712側)と第2ヒーター724(型側)とを加熱した状態で型押し加工を施す。但し、この例では、第1ヒーター714の最高温度は160℃であり、第2ヒーター724の最高温度は180℃である(但し、初期の温度は80℃)。また、型による押圧の圧力は、8MPaであり、型を押圧している時間は5分であった。その後、本焼成として、第1ヒーター714により、パターニングされた機能性固体材料前駆体層に対して大気中、450℃の加熱処理を施す。
【0103】
ここで、本焼成の前後における体積収縮率、すなわち、機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する際の体積収縮率を計算すると、(1)の例での体積収縮率は24%であり、(2)の例での体積収縮率は73%であった。
【0104】
図7は、前述の(1)の例における、パターニングされた機能性固体材料前駆体層と、本焼成後の機能性固体材料層のAFM(原子間力顕微鏡)による測定結果である。図6に示すように、本焼成後の機能性固体材料層のパターンは、本焼成前の機能性固体材料前駆体層のパターンと比較して、幅と高さの尺度において大きな収縮は見られなかった。
【0105】
また、図8は、第1の実施形態の変形例(6)における複合溶液の組み合わせ及び予備焼成温度のみを変更した別の具体例におけるAFMによる測定結果である。具体的には、溶質である金属アルコキシドとしてジルコニウムブトキシドを採用した。また、その溶媒は2−メトキシエタノールであった。一方、溶質である金属有機酸塩として2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを採用した。また、その溶媒は、プロピオン酸であった。また、予備焼成温度は、150℃であった。
【0106】
図8に示すように、この例では、型押し工程における機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する際の体積収縮率が、54%であった。
【0107】
発明者らは、上述のように材料によって異なる体積収縮率となる主なメカニズムを次のように推定している。図9は、一般的なゲル状態および最終酸化物における前駆体の材料の違いによる反応過程メカニズムを示す想定図である。
【0108】
図9(a)に示すように、金属アルコキシドの前駆体溶液を出発材とする前駆体層を用いた場合、酸化物の生成までに次の反応過程を経るものと推察される。まず、金属アルコキシドの加水分解により、アルキル基が水酸基に部分置換し、アルコールを生じる。その後、脱水し、一部で重縮合反応が起こり、M(金属)−O(酸素)−M(金属)のネットワークが形成される。さらにその後、熱分解反応により炭酸ガス及び水を生成しながら、酸化物に変化する。その結果、より密な酸化物層が形成され易くなる。一方、図9(b)に示すように、金属有機酸塩をの前駆体溶液を出発材とする前駆体層を用いた場合、前駆体がそのまま熱分解によって、炭酸ガス及び水をを生成しながら、急激に酸化物に変化すると考えられる。その結果、より疎な、換言すれば多孔質状ともいえる酸化物層が形成され易くなる。
【0109】
そこで、金属アルコキシドの前駆体溶液と金属有機酸塩の前駆体溶液との複合溶液を出発材とする前駆体層は、図9(a)の物性と図9(b)の物性とを併せ持っているため、図9(c)に示すように、最終的に密でも疎でもない中間的な物性を有する酸化物層が形成されることになると考えられる。その結果、型押し工程においては、型押し構造が比較的形成され易い状態を保つことができるとともに、本焼成後の体積収縮率も小さいという優れた特性が得らると考えられる。従って、上述のとおり、複合溶液を採用することが、型押し工程における塑性変形の容易化と、本焼成前後の寸法制御の容易化という、互いに両立させ難い技術課題を解する有効な手段の一つであると考えられる。
【0110】
上述のとおり、材料による差はあるが、型押し工程における機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する際に、20%以上80%以下の体積収縮率が得られることが確認された。また、金属アルコキシドを含有する溶液と金属有機酸塩を含有する溶液とを混合した複合溶液を用いることは、その体積収縮率が20%以上55%以下の範囲に収まるため、型押し構造の寸法制御の容易性ないし寸法精度の安定性の観点からより好ましい一態様であるといえる。
【0111】
<第1の実施形態の変形例(8)>
図10は、本実施形態の機能性デバイスの製造装置800の構成を示す図である。本実施形態では、第1の実施形態の機能性デバイスの製造装置700の変形例としての機能性デバイスの製造装置800を用いた型押し工程の例を説明する。
【0112】
[機能性デバイスの製造装置800の構成]
図10に示すように、本実施形態の機能性デバイスの製造装置800は、大別して3つの構成部分、すなわち、固定された上部型押し部、型を保持するとともに基板10が載置された水平移動可能な下部型押し部、及びそれらの制御部860とから構成されている。
【0113】
具体的には、まず、上部型押し部は、回転しながら型(例えば、M1)を押圧するローラー822と、ローラー822を保持するローラー保持部823、及びローラー822内に収容され、ローラー822を加熱するローラー用ヒーター824とを備えている。なお、本実施形態における型は、ニッケル(Ni)製である。また、ローラー用ヒーター824は、型押し加工の際に機能性固体材料前駆体層(例えば、図10に示したゲート電極用前駆体層20a)に対して熱を供給する1つの熱源として機能する。なお、上部型押し部は、ローラー822を回転させる公知の回転機構、昇降させるための公知の昇降機構(いずれも図示しない)、並びに型押し加工を施す際の機能性固体材料前駆体層に対するゲート電極用型M1等に対するローラー822の押圧力(図10において、概念的に示した下向きの矢印)をモニターする圧力センサー(図示しない)を備えている。
【0114】
次に、下部型押し部では、基台812上に、処理対象となる機能性固体材料前駆体層(例えば、ゲート電極用前駆体層20a)を備えた基板10が載置される。なお、図示しないポンプによって吸引部816から吸引されることにより、基板10が基台812に吸着している。加えて、本実施形態では、型押し加工の際に機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する他の熱源として、基板10並びに機能性固体材料前駆体層を加熱するための基台用ヒーター814が、基台712に接続している。また、本実施形態の下部型押し部は、基台812及び基台用ヒーター814を支持するとともに、装置設置台811上を水平方向に移動する移動台818を備えている。さらに、移動台818は、型を保持する型保持部819と、公知の昇降機構によって基板10を持ち上げて基板10を基台から離れさせるリフト817とを備えた型保持用ステージ825を備えている。従って、型保持用ステージ825も、移動台818が装置設置台811上を水平方向に移動するのに伴って移動する。
【0115】
また、本実施形態の機能性デバイスの製造装置800は、公知のフィードバック制御による上部型押し部を利用したローラー822の回転運動及び昇降移動の制御、ローラー822による型への押圧力の制御、移動台818の水平移動、ローラー用ヒーター824の温度制御、及び基台用ヒーター814の温度制御を含む型押し加工の際の各種制御を担う制御部860、並びに制御部860に接続するコンピューター862を備えている。なお、本実施形態の制御部860及びコンピューター862も、第1の実施形態の機能性デバイスの製造装置700と同様に、上述の各構成部分を用いた本実施形態の一連の処理を実行するための機能性デバイスの製造プログラムにより、上述の各構成部分の処理を監視し、又は統合的に制御する。
【0116】
なお、本実施形態では、基台用ヒーター814が、機能性固体材料前駆体層の予備焼成(「乾燥工程」と呼ばれることもある)を行う予備焼成用ヒーターを兼ねている。従って、本実施形態では、予備焼成用ヒーターを含む下部型押し部が、機能性デバイスの製造装置800の予備焼成部を担うことになる。なお、予備焼成用ヒーターが基台用ヒーター814と別個に設けられることも採用し得る他の一態様である。また、基台用ヒーター814が型押し工程の後に行われる本焼成用のヒーターを兼ねることも採用し得る他の一態様である。
【0117】
上述のとおり、本実施形態の機能性デバイスの製造装置800を用いて型押し工程を行った場合、ローラー822は、例えば、圧力1MPa以上20MPa以下の押圧力で直接的には型を押すことにより、機能性固体材料前駆体層の型押し加工を施すことになる。このとき、制御部860によって温度制御された、ローラー用ヒーター824及び/又は基台用ヒーター814は、機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する。また、ローラー822の回転速度に合わせて、移動台818は、ローラー保持部823に対して相対的に水平移動する。本実施形態では、例えば、0.05mm/秒の速度でローラー保持部823に対して相対的に水平移動する。
【0118】
上述のように、ローラー822が機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する1つの熱源となり、基台用ヒーター814の温度との関係において上述の第1温度となる熱を供給する役割を担うことになった場合でも、型押し工程中の機能性固体材料前駆体層への熱の供給又は移動が事実上生じさせることができる。その結果、確度高く、及び/又は精度良く型押し構造が形成された機能性固体材料層が得られる。
【0119】
<第2の実施形態>
図11は、本実施形態に係る圧電式インクジェットヘッド300を説明するために示す図である。なお、図11(a)は圧電式インクジェットヘッド300の断面図である。また、図11(b)及び図11(c)は、圧電式インクジェットヘッド300がインクを吐出するときの様子を示す図である。なお、圧電式インクジェットヘッド300の製造方法においては、第1の実施形態の機能性デバイスの製造装置700を用いて型押し工程が行われているため、第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0120】
[圧電式インクジェットヘッド300の構成]
図11(a)に示すように、本実施形態に係る圧電式インクジェットヘッド300は、キャビティ部材340と、キャビティ部材340の一方側に取り付けられ、圧電体素子320が形成された振動板350と、キャビティ部材340の他方側に取り付けられ、ノズル孔332が形成されたノズルプレート330と、キャビティ部材340、振動板350及びノズルプレート330によって画成されるインク室360とを備える。振動板350には、インク室360に連通しインク室360にインクを供給するためのインク供給口352が設けられている。
【0121】
本実施形態に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、まず、図11(b)及び図11(c)に示すように、圧電体素子320に適宜の電圧を印加することにより、振動板350を一旦上方に撓ませて図示しないリザーバからインクをインク室360に供給する。その後、振動板350を下方に撓ませることにより、ノズル孔332を介してインク室360からインク滴iを吐出させる。これによって、被印刷物に鮮やかな印刷を行うことができる。
【0122】
[本実施形態に係る圧電式インクジェットヘッド300の製造方法]
上述の構造を有する圧電式インクジェットヘッド300の圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324、及び第2電極層326)、及びキャビティ部材340の少なくとも一部は、いずれも本実施形態の機能性デバイスの製造方法を用いて形成されたものである。以下、本実施形態に係る圧電式インクジェットヘッド300の製造方法を工程順に説明する。
【0123】
図12乃至図14は、本実施形態に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図である。また、図12(a)乃至図12(f)、図13(a)乃至図13(d)、及び図14(a)乃至図14(e)は各工程図である。
【0124】
(1)圧電体素子320の形成
(1−1)第1電極層322の形成
まず、公知のスピンコーティング法により、ダミー基板310上に、ランタン(La)を含む前駆体(例えば、ランタンイソプロポキシド)及びニッケル(Ni)を含む前駆体(例えば、酢酸ニッケル)を溶質とする機能性固体材料前駆体溶液を出発材とする機能性固体材料(LNO)前駆体層322’(以下、単に「前駆体層322’」ともいう)を形成する。
【0125】
その後、予備焼成として、約1分間、前駆体層322’を大気中において120℃に加熱する。本実施形態の予備焼成後の前駆体層322’の層厚は約300nmである。
【0126】
その後、機能性固体材料層のパターニングを行うために、図12(b)に示すように、圧電体素子320の一部を担う第1電極層322に対応する領域が凹となるように形成された型M3(高低差300nm)を用いて、8MPaの圧力で前駆体層322’に対して型押し加工を施す。
【0127】
ここで、前駆体層322’に対する型押し加工に際しても、第1の実施形態の変形例(3)における強誘電体層用前駆体層の型押し工程と同様に、第1ヒーター714(基台712側)と第2ヒーター724(型側)とを加熱した状態で型押し加工を施す。但し、この例では、第1ヒーター714の最高温度は180℃であり、第2ヒーター724の最高温度は180℃である。本実施形態の型押し工程により、型押し構造を備えた前駆体層322’が形成される。なお、この型押し構造の凸部の層厚の例は300nmであり、凹部の層厚の例は50nmである。
【0128】
その後、前駆体層322’を全面エッチングすることにより、第1電極層322に対応する領域以外の領域から前駆体層322’が除去される(全面エッチング工程)。全面エッチング工程は、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われる。
【0129】
その後、本焼成として、RTA装置を用いて前駆体層322’を550℃で10分間熱処理する。その結果、図12(c)に示すように、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物層である第1電極層322(但し、不可避不純物を含み得る。以下、溶液法によって形成されるその他の酸化物層において同じ。)が形成される。
【0130】
(1−2)圧電体層324の形成
次に、図12(d)に示すように、公知のスピンコーティング法により、ダミー基板310及び第1電極層322上に、金属アルコキシドをを溶質とする前駆体溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)を出発材とする機能性固体材料(PZT)の前駆体層324’(以下、単に「前駆体層324’」ともいう)を形成する。
【0131】
その後、予備焼成として、約5分間、前駆体層324’を大気中において150℃に加熱する。本実施形態の予備焼成後の前駆体層324’の層厚は、約1μm〜約10μmである。
【0132】
その後、機能性固体材料層のパターニングを行うために、図12(e)に示すように、圧電体素子320の一部を担う圧電体層324に対応する領域が凹となるように形成された型M4(高低差500nm)を用いて、8MPaの圧力で前駆体層324’に対して型押し加工を施す。
【0133】
ここで、前駆体層324’に対する型押し加工に際しても、第1の実施形態の変形例(3)における強誘電体層用前駆体層の型押し工程と同様に、第1ヒーター714(基台712側)と第2ヒーター724(型側)とを加熱した状態で型押し加工を施す。但し、この例では、第1ヒーター714の最高温度は180℃であり、第2ヒーター724の最高温度は180℃である。本実施形態の型押し工程により、型押し構造を備えた前駆体層324’が形成される。なお、この型押し構造の凸部の層厚の例は1μm〜10μmであり、凹部の層厚の例は50nmである。
【0134】
その後、前駆体層324’を全面エッチングすることにより、圧電体層324に対応する領域以外の領域から前駆体層322’が除去される(全面エッチング工程)。全面エッチング工程は、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われる。
【0135】
その後、本焼成として、RTA装置を用いて前駆体層324’を650℃で10分間熱処理する。その結果、図12(f)に示すように、機能性固体材料層(PZT)からなる圧電体層324が形成される。
【0136】
(1−3)第2電極層326の形成
まず、公知のスピンコーティング法により、ダミー基板310及び圧電体層324上に、ランタン(La)を含む前駆体(例えば、ランタンイソプロポキシド)及びニッケル(Ni)を含む前駆体(例えば、酢酸ニッケル)を溶質とする機能性固体材料前駆体溶液を出発材とする機能性固体材料(LNO)前駆体層326’(以下、単に「前駆体層326’」ともいう)を形成する。
【0137】
その後、予備焼成として、約1分間、前駆体層326’を大気中において120℃に加熱する。本実施形態の予備焼成後の前駆体層326’の層厚は約300nmである。
【0138】
その後、機能性固体材料のパターニングを行うために、図13(b)に示すように、圧電体素子320の一部を担う第2電極層326に対応する領域が凹となるように形成された型M5(高低差300nm)を用いて、8MPaの圧力で前駆体層326’に対して型押し加工を施す。
【0139】
ここで、前駆体層326’に対する型押し加工に際しても、第1の実施形態の変形例(3)における強誘電体層用前駆体層の型押し工程と同様に、第1ヒーター714(基台712側)と第2ヒーター724(型側)とを加熱した状態で型押し加工を施す。但し、この例では、第1ヒーター714の最高温度は180℃であり、第2ヒーター724の最高温度は180℃である。本実施形態の型押し工程により、型押し構造を備えた前駆体層326’が形成される。なお、この型押し構造の凸部の層厚の例は300nmであり、凹部の層厚の例は50nmである。
【0140】
その後、前駆体層326’を全面エッチングすることにより、第2電極層326に対応する領域以外の領域から前駆体層326’が除去される(全面エッチング工程)。全面エッチング工程は、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われる。
【0141】
その後、本焼成として、RTA装置を用いて前駆体層326’を550℃で10分間熱処理する。その結果、図13(c)に示すように、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物層である第2電極層326(但し、不可避不純物を含み得る。以下、溶液法によって形成されるその他の酸化物層において同じ。)が形成される。以上の工程を経て、第1電極層322、圧電体層324、及び第2電極層326からなる圧電体素子320が形成される。
【0142】
(2)振動板350と圧電体素子320との貼り合わせ
図13(d)に示すように、インク供給口352を有する振動板350と圧電体素子320とを接着剤を用いて貼り合わせる。
【0143】
(3)キャビティ部材340の形成
まず、図14(a)に示すように、公知のスピンコーティング法により、振動板350上に、金属アルコキシド(イソプロピルシリケート(Si(OC)を溶質とする機能性固体材料前駆体溶液を出発材とする機能性固体材料(石英ガラス)前駆体層340’(以下、単に「前駆体層340’」ともいう)を形成する。
【0144】
その後、予備焼成として、約5分間、前駆体層340’を大気中において150℃に加熱する。本実施形態の予備焼成後の前駆体層340’の層厚は、例えば10μm〜20μmである。
【0145】
その後、機能性固体材料のパターニングを行うために、図14(b)に示すように、インク室360等に対応する形状を有する型M6を用いて、8MPaの圧力で前駆体層340’に対して型押し加工を施す。
【0146】
ここで、前駆体層340’に対する型押し加工に際しても、第1の実施形態の変形例(3)における強誘電体層用前駆体層の型押し工程と同様に、第1ヒーター714(基台712側)と第2ヒーター724(型側)とを加熱した状態で型押し加工を施す。但し、この例では、第1ヒーター714の最高温度は180℃であり、第2ヒーター724の最高温度は180℃である。本実施形態の型押し工程により、型押し構造を備えた前駆体層340’が形成される。なお、この型押し構造の凸部の層厚の例は10μm〜20μmであり、凹部の層厚の例は50nmである。
【0147】
その後、本焼成として、RTA装置を用いて前駆体層326’を650℃で10分間熱処理する。その結果、図14(c)に示すように、機能性固体材料層(石英ガラス)からなるキャビティ部材340が形成される。
【0148】
(4)キャビティ部材340とノズルプレート330との貼り合わせ
図14(d)に示すように、キャビティ部材340と、ノズル孔332を有するノズルプレート330とを接着剤を用いて貼り合わせる。
【0149】
(5)ダミー基板310の取り外し
図14(e)に示すように、圧電体素子320からダミー基板310を取り外す。以上の工程を経ることにより、本実施形態の圧電式インクジェットヘッド300が製造される。
【0150】
<その他の実施形態>
【0151】
ところで、上述の第1実施形態で説明した機能性デバイスの製造装置700の例、及びその変形例(8)において説明した機能性デバイスの製造装置800は、第1の実施形態のその他の変形例、及び第2の実施形態においても適用し得る。
【0152】
また、上述の各実施形態では、薄膜トランジスタ、メモリ型トランジスタ、及び圧電式インクジェットヘッドを例にとって説明したが上述の各実施形態で採用された製造方法は、それらに限定されない。例えば、他の機能性デバイスの製造方法の実施形態として、基板上に金属酸化物セラミックス層又は金属層が格子状に形成された構造を有する反射型偏光板その他の各種光学デバイスを製造する際、あるいは、キャパシタを製造する際にも上述の各実施形態で採用された製造方法は適用できる。
【0153】
また、上述の各実施形態では、幾つかの酸化物層の形成の際に、型押し加工を施す「型押し工程」が行われている。この型押し工程における圧力は、代表的に例示されている8MPaには限定されない。既に述べたとおり、この型押し工程における圧力が1MPa以上20MPa以下の範囲内の圧力であれば、上述の各実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。
【0154】
上述の各実施形態では、高い塑性変形能力を得た各前駆体層に対して型押し加工を施すこととしている。その結果、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa以上20MPa以下という低い圧力であっても、各前駆体層が型の表面形状に追随して変形するようになり、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。また、その圧力を1MPa以上20MPa以下という低い圧力範囲に設定することにより、型押し加工を施す際に型が損傷し難くなるとともに、大面積化にも有利となる。
【0155】
ここで、上記の圧力を「1MPa以上20MPa以下」の範囲内としたのは、以下の理由による。まず、その圧力が1MPa未満の場合には、圧力が低すぎて各前駆体層を型押しすることができなくなる場合があるからである。他方、その圧力が20MPaもあれば、十分に前駆体層を型押しすることができるため、これ以上の圧力を印加する必要がないからである。前述の観点から言えば、上述の第5及び第6の実施形態における型押し工程においては、2MPa以上10MPa以下の範囲内にある圧力で型押し加工を施すことがより好ましい。
【0156】
また、上述の各実施形態の型押し工程における「型押し加工」は、凹凸型を用いて機能性固体材料前駆体層の一部に型押し加工を施す場合、及び平坦型を用いて機能性固体材料前駆体層の全面に対して型押し加工を施す場合の両方を含む。
【0157】
さらに、上述の各実施形態の型押し工程においては、上述の機能性デバイスの製造装置700又は機能性デバイスの製造装置800の代わりに、ローラーの表面に処理対象となる基板を取り付けた上で、平板上の凹凸を備えた型に対して、そのローラーを回転させながら、基板に対して型押し加工する機能性デバイスの製造装置を採用しても良い。また、ローラーの表面に型を取り付けることも他の採用し得る一態様である。その場合には、型をローラーの表面に取り付ける代わりに、ローラーの表面自体が凹凸状の又は平板状の型を備えていてもよい。
【0158】
以上述べたとおり、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0159】
10 基板
20 ゲート電極層
20a ゲート電極用前駆体層
30a ゲート絶縁層用前駆体層
30 ゲート絶縁層
40 チャネル用酸化物層
50 ドレイン電極用酸化物層
50a ドレイン電極用前駆体層、
52 ドレイン電極
54 ソース電極
100 薄膜トランジスタ
120 ゲート電極層
130 強誘電体層
200 メモリ型トランジスタ
300 圧電式インクジェットヘッド
320 圧電体素子
322 第1電極
324 圧電体層
326 第2電極
326’ 機能性固体材料(LNO)前駆体層
330 ノズルプレート
332 ノズル孔
340 キャビティ部材
340’ 機能性固体材料(石英ガラス)前駆体層
350 振動板
352 インク供給口
360 インク室
700,800 機能性デバイスの製造装置
710 上部型押し部
712,812 基台
714 第1ヒーター
716,816 吸引部
718 予備焼成部
720 下部型押し部
722 固定部
724 第2ヒーター
726 石英ガラス
738 本焼成用ヒーター
760,860 制御部
762,862 コンピューター
811 装置設置台
814 基台用ヒーター
817 リフト
818 移動台
819 型保持部
822 ローラー
823 ローラー保持部
824 ローラー用ヒーター
825 型保持用ステージ
M1 ゲート電極用型
M2 ソース/ドレイン電極用型
M3,M4,M5,M6 型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性固体材料前駆体溶液を出発材とする機能性固体材料前駆体層に対して型押し構造を形成する型を押圧している間の少なくとも一部の時間において前記機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する熱源の第1温度が前記機能性固体材料前駆体層の第2温度よりも高くなるように、前記機能性固体材料前駆体層に対して型押し加工を施す型押し工程と、
前記型押し工程の後、酸素含有雰囲気中において、前記機能性固体材料前駆体層を前記第1温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前記機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する機能性固体材料層形成工程と、を含む、
機能性デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1温度を昇温させる、
請求項1に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記熱源が、前記型を加熱するヒーターである、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記熱源が、前記型を加熱するヒーター及び前記機能性固体材料前駆体層を備えた基板を載置する基台を加熱するヒーターである、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記型の温度が、前記基台の温度よりも10℃以上高い、
請求項4に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記一部の時間が、前記型を押圧している時間を100としたときに、20以上である、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記予備焼成温度が、80℃以上250℃以下であり、
前記第1温度が前記予備焼成温度よりも高く、かつ、90℃以上300℃以下である、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記機能性固体材料前駆体層を形成するための予備焼成工程における予備焼成温度が、前記機能性固体材料前駆体溶液の溶媒の沸点よりも低く、かつ、
前記第1温度が、前記溶媒の沸点よりも高い、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記型押し工程においては、1MPa以上20MPa以下の圧力で型押し加工を施す、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記型押し工程においては、少なくとも前記前駆体層の表面に対する離型処理又は前記型の型押し面に対する離型処理を施した後、前記前駆体層に対して型押し加工を施す、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記機能性固体材料前駆体溶液は、
金属アルコキシドを含む溶液、
金属有機酸塩を含む溶液、
金属無機酸塩を含む溶液、
金属ハロゲン化物を含む溶液、
金属、窒素、及び水素を含む無機化合物を含む溶液、
金属水素化物を含む溶液、
金属ナノ粒子を含む溶液、及び
セラミックス微粒子
の群から選ばれる少なくとも1種類を含む溶液である、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記機能性固体材料前駆体溶液は、前記金属アルコキシドを含む溶液、前記金属有機酸塩を含む溶液、及び前記金属無機酸塩を含む溶液の群から選ばれる少なくとも1種類であり、
前記型押し工程における前記機能性固体材料前駆体層から前記機能性固体材料層を形成する際の体積収縮率が、20%以上80%以下である、
請求項11に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記機能性固体材料前駆体溶液は、
前記金属ハロゲン化物を含む溶液、
前記金属、窒素、及び水素を含む無機化合物を含む溶液、
前記金属水素化物を含む溶液、
前記金属ナノ粒子を含む溶液、及び
前記セラミックス微粒子
の群から選ばれる少なくとも1種類を含む溶液であり、
前記機能性固体材料層形成工程における前記機能性固体材料前駆体層から前記機能性固体材料層を形成する際の体積収縮率が、1%以上30%以下である、
請求項11に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記型押し工程と前記機能性固体材料層形成工程との間に、
型押し加工が施された前記機能性固体材料前駆体層のうち最も層厚が薄い領域において前記機能性固体材料前駆体層が除去される条件で、前記機能性固体材料前駆体層を全体的にエッチングする工程をさらに含む、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記機能性デバイスは、薄膜トランジスタであり、
前記機能性固体材料層は、前記薄膜トランジスタにおけるゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、及びチャネル層の群から選ばれる少なくとも1つの層である、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記機能性デバイスは、メモリ型トランジスタであり、
前記機能性固体材料層は、前記メモリ型トランジスタにおけるゲート電極層、強誘電体層、ソース層、ドレイン層、及びチャネル層の群から選ばれる少なくとも1つの層である、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記機能性デバイスは、キャパシタであり、
前記機能性固体材料層は、誘電体層及び/又は電極層である、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記機能性デバイスは、圧電体層を備えるアクチュエーターであり、
前記機能性固体材料層は、前記圧電体層である、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項19】
前記機能性デバイスは、基材上に複数の格子層を備える光学デバイスであり、
前記機能性固体材料層は、前記格子層である、
請求項1又は請求項2に記載の機能性デバイスの製造方法。
【請求項20】
機能性固体材料前駆体溶液を出発材とする機能性固体材料前駆体層に対して型押し構造を形成する型を押圧している間の少なくとも一部の時間において前記機能性固体材料前駆体層に対して熱を供給する熱源の第1温度が前記機能性固体材料前駆体層の第2温度よりも高くなるように制御する制御部と、
前記機能性固体材料前駆体層に対して型押し加工を施す型押し部と、
酸素含有雰囲気中において、型押し構造が形成された前記機能性固体材料前駆体層を前記第1温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前記機能性固体材料前駆体層から機能性固体材料層を形成する熱処理部と、を備える、
機能性デバイスの製造装置。
【請求項21】
前記制御部が、前記第1温度を昇温させる、
請求項20に記載の機能性デバイスの製造装置。
【請求項22】
前記熱源が、前記型を加熱するヒーターである、
請求項20又は請求項21に記載の機能性デバイスの製造装置。
【請求項23】
前記熱源が、前記型を押圧するとともに加熱する、ヒーターを備えたローラーである、
請求項20又は請求項21に記載の機能性デバイスの製造装置。
【請求項24】
前記熱源が、前記型を加熱するヒーター及び前記機能性固体材料前駆体層を備えた基板を載置する基台を加熱するヒーターである、
請求項20又は請求項21に記載の機能性デバイスの製造装置。
【請求項25】
前記型の温度が、前記基台の温度よりも10℃以上高い、
請求項24に記載の機能性デバイスの製造装置。
【請求項26】
前記機能性固体材料前駆体層を形成するための予備焼成温度が80℃以上250℃以下に設定される予備焼成部をさらに備え、
前記制御部が、前記第1温度を前記予備焼成温度よりも高く、かつ、90℃以上300℃以下にする、
請求項20又は請求項21に記載の機能性デバイスの製造装置。
【請求項27】
前記機能性固体材料前駆体層を形成するための予備焼成温度が前記機能性固体材料前駆体溶液の溶媒の沸点よりも低く設定される予備焼成部をさらに備え、
前記制御部が、前記第1温度を前記溶媒の沸点よりも高くする、
請求項20又は請求項21に記載の機能性デバイスの製造装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2J】
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【図2K】
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【図2L】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−99904(P2013−99904A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245922(P2011−245922)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】