説明

機能性フィルムの製造方法および製造装置

【課題】積層体の長手方向に、基材と保護フィルムとの密着力が変化した場合であっても、基材と保護フィルムとを適正に剥離させることができ、基材の搬送テンションが緩んで、ツレシワが発生したり、熱ダメージを受けて、基材が損傷することを防止する。
【解決手段】処理を行なう前の積層体の搬送中に、基材上の保護フィルムの有無を検出する第1検出工程と、第1検出工程と成膜処理との間に、基材上の保護フィルムの有無を検出する第2検出工程と、第1検出工程と第2検出工程の検出結果に応じて、第1検出工程と第2検出工程との間で、保護フィルムが基材から剥離するように、剥離力を制御する制御工程とを有することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中において、基材と保護フィルムとを積層してなる積層体から保護フィルムを剥離して、基材の表面に処理を行う、機能性フィルムの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面に、ガスバリア膜、光反射膜、光反射防止膜、表面保護など、目的とする機能を発現する膜(以下、便宜的に『機能膜』とする)を成膜してなる機能性フィルムが、各種の用途に利用されている。
さらに、機能性フィルムの製造においては、基材の表面に、平滑化、活性化、清浄化、粗面化、表面改質、貼着性付与などの各種の表面処理を施すことも、行われている。
【0003】
また、機能性フィルムを、高い生産性や生産効率での製造を可能とする方法として、長尺な基材を、ロール状に巻回してなる基材ロールから送り出し、長手方向に搬送しつつガスバリア膜の成膜等を行って、成膜済みの基材をロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll 以下、RtoRともいう)による成膜を行なう装置が知られている。
【0004】
このような機能性フィルムの製造において、搬送ローラ対による搬送や、他の部材との接触等に起因して基材の表面(被処理面)が損傷すると、目的とする性能を有する機能性フィルムが製造できなくなってしまう可能性が生じる。
特に、前述のRtoRによる装置では、基材の巻回によって、基材の表面と裏面とが摺接するので、基材の損傷が生じ易い。さらに、成膜等のために基材ロールの装填空間を真空にすると、基材間の空気が抜けて、いわゆる巻き締まりが生じ、巻回された基材の表面と裏面とが強く摺接して、基材表面を損傷してしまい、目的とする性能を有する機能性フィルムが製造できなくなってしまう可能性が高くなる。
また、高品質な製品を製造するためには、基材の表面は、清浄に保つのが好ましい。
【0005】
そのため、ガスバリアフィルム等の機能性フィルムの製造においては、基材の表面を保護するために、基材の表面に保護フィルム(ラミネートフィルム)を貼着して、基材の表面を保護することが行われている。
このような積層体を用いる機能性フィルムの製造においては、通常、この基材と保護フィルムとの積層体のまま、成膜装置や表面処理装置等の基材の処理装置に装填し、処理装置中において、保護フィルムを剥離して、基材表面に処理を施す。
【0006】
例えば、特許文献1には、保護材が積層され、ロール状に巻かれた基材を保護材と共に巻き出す巻き出しロールと、巻き出しロールから前記保護材と共に巻き出された基材を保護材が接触するように回転自在に支持し、下流側へ搬送する巻出側支持ロールと、基材が保護材と共に巻出側支持ロールを通過する際、基材から保護材を分離する保護材分離手段を備えた巻き出し部とを有することにより、成膜を行なう直前まで基材の表面を保護することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2および3には、フィルムロールから連続的にラミネートフィルムが付与された支持体を送り出し、ラミネートフィルムを剥離し、支持体のコーティング膜上に無機膜を成膜し、支持体をフィルムロールに巻き取ることにより、支持体の表面を保護することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−189957号公報
【特許文献2】特開2010−222702号公報
【特許文献3】特開2010−234340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ガスバリア膜等の各種の機能膜の成膜は、プラズマCVDや真空蒸着など、真空中で行われる場合が多い。また、活性化処理や清浄化処理等の基材の表面処理も、真空中でのプラズマ照射やイオン照射などによって行われる場合が多い。
ここで、前述のように、真空中においては、基材と保護フィルムとを積層してなる積層体をロール状に巻回した積層体ロールにおいて、積層体間の空気が抜けて、巻き締まりが生じる。そのため、基材と保護フィルムとが押圧されて、基材と保護フィルムとの密着力が高くなる。特に、積層体ロールの内径側に向かうに従って、巻き締まりが強くなるため、積層体ロールの内径側の積層体ほど、基材と保護フィルムとの密着力が高くなる。すなわち、積層体の長手方向に、基材と保護フィルムとの密着力が変化してしまう。
【0010】
そのため、特許文献1〜3に記載されるように、保護フィルムを貼着した基材を、RtoRの装置で搬送しつつ、真空中で成膜を行なう場合には、処理が進むに従って、基材と保護フィルムとを剥離するために、保護フィルムを引っ張る力(剥離力)に対して、基材と保護フィルムとの密着力が高くなる。その結果、保護フィルムが基材から剥離されなくなってしまう。
また、保護フィルムを引っ張る力(剥離力)を十分に大きくして、密着力が高くても保護フィルムを剥離できるようにした場合には、基材と保護フィルムとの密着力が弱い状態の時には、基材を過剰に引っ張ってしまうので、基材の搬送テンションが緩んでしまい、基材にツレシワが発生して基材が損傷してしまう。また、基材をドラムに巻き掛けて成膜を行なう場合には、基材とドラムとの密着が緩んでしまい、正常な成膜ができないおそれがある。また、ドラムによって基材を冷却している場合には、基材が十分に冷却されず、熱によって変形してしまう。
【0011】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、基材と保護フィルムを貼着した積層体を用いる機能性フィルムの製造において、積層体の長手方向に、基材と保護フィルムとの密着力が変化した場合であっても、基材と保護フィルムとを適正に剥離させることができ、基材の搬送テンションが緩んで、ツレシワが発生したり、熱ダメージを受けて、基材が損傷することを防止して、目的とする性能を有する機能性フィルムを、安定して製造できる機能性フィルムの製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、真空中において、基材の被処理面に貼着性を有する保護フィルムを積層して貼着してなる積層体を、ロール状に巻回してなる積層体ロールから、前記積層体を引き出し、長手方向に搬送しつつ、前記基材から前記保護フィルムを剥離し、前記基材の被処理面に処理を行うに際し、前記処理を行なう前の前記積層体の搬送中に、所定の第1の検出位置で、前記基材上の前記保護フィルムの有無を検出し、前記第1の検出位置と前記処理との間の、所定の第2の検出位置で、前記基材上の前記保護フィルムの有無を検出し、前記第1の検出位置と前記第2の検出位置での検出結果に応じて、前記第1の検出位置と前記第2の検出位置との間で、前記保護フィルムが前記基材から剥離するように、剥離力を制御することを有することを特徴とする機能性フィルムの製造方法を提供する。
【0013】
このような本発明の機能性フィルムの製造方法において、前記第2の検出位置で、前記保護フィルムが検出された場合に、前記保護フィルムを剥離させる際の剥離力が大きくなるように制御するのが好ましい。
また、前記第1の検出位置で、前記保護フィルムが検出されなかった場合に、前記保護フィルムを剥離させる際の剥離力が小さくなるように制御するのが好ましい。
【0014】
また、前記処理は、前記基材を円筒状のドラムの周面に巻き掛けて、長手方向に搬送しつつ、前記ドラムの周面に対面して配置された処理手段によって行なうものであるのが好ましい。
また、前記第2の検出位置は、前記処理手段と前記ドラムの直上流側の搬送ロールとの間に配置されるのが好ましい。
さらに、前記第2の検出位置は、前記基板が前記ドラムに巻き掛かけられている位置に配置されるのが好ましい。
また、前記ドラムの周面を冷却する冷却手段を有するのが好ましい。
【0015】
また、前記保護フィルムの巻取り手段のトルクおよび/または回転速度を制御することにより、前記保護フィルムを剥離させる際の剥離力を制御するのが好ましい。
また、前記第1の検出位置で前記保護フィルムの有無を検出する第1検出手段、および、前記第2の検出位置で前記保護フィルムの有無を検出する第2検出手段が、光の透過率を検出することにより、前記保護フィルムの有無を検出するものであるのが好ましい。
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、真空中で、基材の被処理面に貼着性を有する保護フィルムを積層して貼着してなる積層体を、ロール状に巻回してなる積層体ロールから、前記積層体を引き出し、長手方向に搬送しつつ、前記基材から前記保護フィルムを剥離し、前記基材の被処理面に成膜処理を行う機能性フィルムの製造装置において、前記基材から剥離した前記保護フィルムを巻き取る巻取り手段と、前記基材に所定の処理を行なう処理手段と、前記基材の搬送方向において、前記処理手段よりも上流側に配置され、前記基材上の前記保護フィルムの有無を検出する第1検出手段と、前記処理手段と前記第1検出手段との間に配置され、前記基材上の前記保護フィルムの有無を検出する第2検出手段と、前記第1検出手段および前記第2検出手段の検出結果に応じて、前記第1検出手段と前記第2検出手段との間で、前記保護フィルムが前記基材から剥離するように、前記巻取り手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする機能性フィルムの製造装置を提供する。
【0017】
ここで、前記制御手段は、前記第2検出手段が前記保護フィルムを検出した場合に、前記巻取り手段のトルクおよび/または回転速度が大きくなるように制御するのが好ましい。
また、前記制御手段は、前記第1検出工程で前記保護フィルムを検出しなかった場合に、前記巻取り手段のトルクおよび/または回転速度が小さくなるように制御するのが好ましい。
また、前記第2検出手段は、前記処理手段と前記処理手段の直上流側の搬送ロールとの間に配置されるのが好ましい。
また、周面が前記処理手段に対面するように配置され、前記基板を周面の所定領域に巻き掛けて搬送する円筒状のドラムを有するのが好ましい。
さらに、前記第2検出手段は、前記基板が前記ドラムに巻き掛かけられている位置で、前記基板上の前記保護フィルムの有無を検出するのが好ましい。
また、前記ドラムの周面を冷却する冷却手段を有するのが好ましい。
【0018】
また、前記第1検出手段、および、前記第2検出手段が、光の透過率を検出することにより、前記保護フィルムの有無を検出するものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の機能性フィルムの製造方法および製造装置は、真空中で、基材に保護フィルムを貼着してなる積層体を、ロール状に巻回してなる積層体ロールから、積層体を引き出し、長手方向に搬送しつつ、基材から保護フィルムを剥離し、基材の被処理面に処理を行うに際し、処理を行なう前の積層体の搬送中に、所定の第1の検出位置で、基材上の保護フィルムの有無を検出し、第1の検出位置と処理との間の、所定の第2の検出位置で、基材上の保護フィルムの有無を検出し、第1の検出位置と第2の検出位置での検出結果に応じて、第1の検出位置と第2の検出位置との間で、保護フィルムが基材から剥離するように、剥離力を制御する制御工程とを有する。
【0020】
そのため、積層体の長手方向に、基材と保護フィルムとの密着力が変化した場合であっても、保護フィルムが適正な位置で剥離するように、保護フィルムの剥離力を制御するので、保護フィルムが基板から剥離しないことを防止できる。また、剥離力が過剰に大きくなって基材を引っ張り、基材の搬送テンションが緩んでしまうことを防止できるので、基材にツレシワが発生したり、ドラムとの密着が緩んで熱によって変形したりすることを防止できる。これにより、本発明の製造方法は、目的とする性能を有する機能性フィルムを、安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の機能性フィルムの製造方法を実施する装置の一例を概念的に示す図である。
【図2】本発明の機能性フィルムの製造方法を実施する装置の他の一例を概念的に示す図である。
【図3】本発明の機能性フィルムの製造方法を実施する装置の他の一例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の機能性フィルムの製造方法および製造装置について、添付の図面に示される好適例を基に、詳細に説明する。
【0023】
図1に、本発明の機能性フィルムの製造方法の一例を実施する基材表面の処理装置の一例の概念図を示す。
図1に示す処理装置10は、基材12の表面に当接して、保護フィルム14を積層して貼着してなる積層体16を用い、真空中において、基材12から保護フィルム14を剥離して、基材12の表面を処理して、機能性フィルム(機能性フィルムの中間体も含む)20を製造するものである。
なお、基材12の表面とは、被処理面であり、すなわち、後述する成膜や各種の表面処理等の処理を施される面である。
【0024】
図示例の処理装置10は、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll 以下、RtoRともいう)によって、基材12の処理を行うもので、長尺な基材12(ウエブ状の基材)と長尺な保護フィルム14とを積層してなる長尺な積層体16を、ロール状に巻回してなる基材ロール24から、積層体16を引き出して、長手方向に搬送しつつ、積層体16から保護フィルム14を剥離して、基材12の表面を処理して、処理済の基材12すなわち本発明の製造方法による機能性フィルム20を、再度、ロール状に巻回する。
【0025】
図示例の処理装置10は、一例として、真空チャンバ26と、この真空チャンバ26内に配置される、回転軸28、テンションピックロール30、ドラム32、処理手段34、巻取り軸36、テンションピックロール38、第2巻取り軸40、ガイドローラ44、第1検出手段46、および、第2検出手段48と、真空チャンバ26内を排気する真空排気手段42と、第1検出手段46および第2検出手段48の検出結果から第2巻取り軸40のトルクおよび回転速度を制御する制御手段50とを有して構成される。
なお、本発明の機能性フィルムの製造方法を実施する処理装置10には、これらの部材以外にも、積層体16や基材12の搬送ガイド、各種のセンサなど、真空中において、積層体16および基材12を長手方向に搬送しつつ、保護フィルム14を剥離して、基材12の表面を処理する装置に配置される、各種の部材を有してもよい。
【0026】
本発明において、基材(基板)12には、特に限定はなく、真空中での成膜や表面処理を行うことが可能でものあれば、各種のシート状物が利用可能である。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどの有機物からなるプラスチック(樹脂)フィルムや、アルミニウム、ステンレスなどの金属シート状物等が、基材12として、好適に利用可能である。
【0027】
また、本発明においては、このようなプラスチックフィルム等を支持体として、その上に、保護層、貼着層、光反射層、遮光層、平坦化層、緩衝層、応力緩和層、ガスバリア膜等の、各種の機能を得るための膜(層)が成膜されているものを、基材12として用いてもよい。この場合には、通常、これらの膜の表面が、基材12の表面となる。
この際においては、支持体の上に1層のみが成膜されたものを基材12として用いてもよく、あるいは、支持体の複数層が成膜されたものを基材12として用いてもよい。また、基材12が、支持体の上に複数層の膜が成膜されたものである場合には、同じ層を複数層有してもよく、例えば、平坦化層とガスバリア膜との組み合わせを複数回繰り返し積層した構成のように、2層以上を組み合わせてなる膜を、複数回、繰り返し積層したものであってもよい。
【0028】
保護フィルム(ラミネートフィルム)14は、このような基材12の表面を保護するためのものであり、表面に当接して、基材12に積層/貼着される。
本発明の製造方法において、保護フィルム14には、特に限定はなく、機能性フィルムの製造において利用されている、粘着性を有する保護フィルムが、各種、利用可能である。
従って、保護フィルム14は、基材12の表面との当接面に貼着剤層(粘着剤層/接着剤層)が形成されたものであっても、保護フィルム14自身が粘着性を有するものであってもよい。
【0029】
なお、基材12の表面の保護を考慮すると、保護フィルム14は、基材12(基材12の表面)よりも剛性や硬さの低い物を用いるのが、一般的である。
【0030】
図示例の処理装置10において、このような積層体16を巻回してなる基材ロール24は、回転軸28に装填される。
積層体16は、この回転軸28に装填された基材ロール24から引き出されて、長手方向に搬送されつつ、テンションピックロール30およびガイドローラ44に案内された後、基材12から保護フィルム14が剥離される。
保護フィルム14が剥離された基材12は、ドラム32巻き掛けられた状態で搬送され、処理装置34によって、成膜や表面処理等の処理が行われた後、テンションピックロール38に案内されて、巻取り軸36に巻き取られる。
【0031】
他方、基材12と剥離された保護フィルム14は、第2巻取り軸40に巻き取られる。
ここで、本発明の製造方法においては、第1検出手段46および第2検出手段48が、保護フィルム14の有無を検出し、この検出結果に応じて、第2巻取り軸40が保護フィルム14を巻き取る際の、第2巻取り軸40のトルクおよび/または回転速度を制御することによって、保護フィルム14と基材12との剥離が所定の範囲内で起こるようにするものである。この点に関しては後に詳述する。
【0032】
テンションピックロール30は、搬送される積層体16を所定の経路に案内するためのものであると共に、搬送される積層体16(基材12)にかかるテンション(張力)を測定するためのものである。テンションピックロール30、および、後述するテンションピックロール38が測定したテンションの測定結果は、図示しない搬送制御手段に送られ、所定のテンションとなるように、搬送制御手段により、回転軸28および巻取り軸36が制御される。
【0033】
積層体16(基材12)の張力を測定するためのテンションピックロール30としては、ロードセルにより張力を検出するものや、ローラの変位を測定して張力を検出するもの等、ロール・ツー・ロールの成膜装置等に利用されている公知のテンションピックロールが、各種利用可能である。この点に関しては、後述するテンションピックアップロール38も同様である。
【0034】
ガイドローラ44は、積層体16を所定の搬送経路で案内する通常のガイドローラである。
【0035】
第2巻取り軸40は、基材12から剥離された保護フィルム14を巻き取るものである。
また、第2巻取り軸40は、巻取りの回転速度および/またはトルクを、後述する制御手段50によって制御されることにより、保護フィルム14と基材12との剥離が所定の位置で起こるように、保護フィルム14の剥離力を制御するものである。
この点に関しては、後に詳述する。
【0036】
第1検出手段46は、基材12上の保護フィルム14の有無を検出するものであり、基材12の搬送方向において、ガイドローラ44と第2検出手段48との間に配置される。
第1検出手段46は、光照射部46aと受光部46bとを有する。
【0037】
光照射部46aと受光部46bとは、基材12(積層体16)を挟むように配置されている。
光照射部46aは基材12(積層体16)を挟んで配置される受光部46bに向かって光を照射するものである。
光照射部46aとしては、特に限定はなく、レーザ光源やLED光源等の種々の公知の光源を用いることができる。
【0038】
受光部46bは、光照射部46aが照射した光を受光するものである。
ここで、保護フィルム14が基材12から剥離する位置である剥離点Pが第1検出手段46よりも、搬送方向下流側である場合には、光照射部46aが照射した光は、剥離済みの保護フィルム14と積層体16(基材12と保護フィルム14)とを通過して、受光部46bにて受光される。他方、剥離点Pが第1検出手段46よりも搬送方向上流側である場合には、光照射部46aが照射した光は、基材12のみを通過して、受光部46bにて受光される。
【0039】
すなわち、剥離点Pの位置に応じて、光が通過するフィルムが異なることにより、受光部46bが受光する光の状態が変化するので、受光部46bは、受光した光の状態によって、基材12上に保護フィルム14が貼着しているか否かを検出する。
例えば、基材12が光を透過する材料で形成され、保護フィルム14が光を透過しない材料で形成される場合には、受光部46bが光を受光した場合に保護フィルム14が基材12上に無いことを検出し、光を受光しない場合に保護フィルム14が基材12上に在ることを検出する。あるいは、基材12および保護フィルム14共に光を透過する場合には、保護フィルム14の有無によって、受光部46bが受光する光の強度(透過率)が変化するので、受光した光の強度によって、保護フィルム14の有無を検出すればよい。
受光部46bは、検出結果を制御手段50に供給する。
【0040】
第2検出手段48は、基材12上の保護フィルム14の有無を検出するものであり、基材12の搬送方向において、第1検出手段46と処理手段34との間に配置される。
図示例においては、第2検出手段48は、基材12がドラム32に巻き掛けられた位置で、基材12に対面して配置されている。
第2検出手段48は、基材12に向かって光を照射すると共に、基材12を透過し、ドラム32から反射された光を受光するものである。
【0041】
ここで、保護フィルム14が基材12から剥離する位置である剥離点Pが第2検出手段48よりも、搬送方向上流側である場合には、第2検出手段48が照射した光は、基材12のみを通過してドラム32に反射され、再び、基材12を通過して、第2検出手段48にて受光される。他方、剥離点Pが第2検出手段48よりも搬送方向下流側である場合には、第2検出手段48が照射した光は、保護フィルム14と積層体16(基材12と保護フィルム14)とを通過して、ドラム32に反射されて、再び、積層体16と保護フィルム14とを通過して、第2検出手段48にて受光される。
すなわち、剥離点Pの位置に応じて、第2検出手段48が受光する光の状態が変化するので、第2検出手段48は、受光した光の状態によって、基材12上に保護フィルム14が貼着しているか否かを検出する。
【0042】
なお、第1検出手段および第2検出手段はいずれも、第1検出手段のように、光を透過させて保護フィルム14を検出するものであってもよく、第2検出手段のように、光を反射させて保護フィルム14を検出するものであってもよい。ここで、光を反射させて保護フィルムの14の有無を検出する手段は、光が往復して各フィルムを2度通過するため、検出能が向上し、好ましい。
【0043】
また、第2検出手段のように、基材12を巻き掛けた位置で、ドラム32に光を反射させて検出することにより、ドラム32(反射物)と基材12(積層体16)との間に空気が介在しないため、反射した光を検出する際に、誤差が生じにくく、検出能が向上する。
第2検出手段48は、検出結果を制御手段50に供給する。
【0044】
制御手段50は、第1検出手段46および第2検出手段48が検出した保護フィルム14の有無の検出結果に応じて、第2巻取り軸40のトルクおよび/または回転速度を制御するものである。
具体的には、第1検出手段46が保護フィルム14を検出し、第2検出手段48が保護フィルム14を検出しない場合には、剥離点Pが、第1検出手段46と第2検出手段48との間に在るので、正常に剥離が行なわれていると判断して、第2巻取り軸40のトルクおよび/または回転速度を、変更しない。
【0045】
これに対して、第1検出手段46が保護フィルム14を検出しなかった場合には、剥離点Pが第1検出手段46よりも上流側に在る。すなわち、保護フィルム14を引っ張る力(剥離力)が大きすぎるおそれがある。したがって、第2巻取り軸40のトルクおよび/または回転速度を低くして、剥離力が小さくなるように制御する。他方、第2検出手段48が保護フィルム14を検出した場合には、剥離点Pが第2検出手段48よりも下流側に在る。すなわち、保護フィルム14の剥離力が小さすぎるので、第2巻取り軸40のトルクおよび/または回転速度を高くして、剥離力が大きくなるように制御する。
【0046】
前述のとおり、真空中で、RtoRによって長尺な基板に連続的に処理を行なう装置において、基材の表面を保護するために、基材と保護フィルムとを積層してなる積層体をロール状に巻回した積層体ロールを用いる場合には、積層体ロールの積層体間の空気が抜けて、巻き締まりが生じる。そのため、基材と保護フィルムとが押圧されて、基材と保護フィルムとの密着力が高くなる。特に、積層体ロールの内径側に向かうに従って、巻き締まりが強くなるため、積層体ロールの内径側の積層体ほど、基材と保護フィルムとの密着力が高くなり、積層体の長手方向に、基材と保護フィルムとの密着力が変化してしまう。
【0047】
そのため、従来の成膜方法では、処理が進むに従って、基材と保護フィルムとを剥離するために、保護フィルムを引っ張る力(剥離力)に対して、基材と保護フィルムとの密着力が高くなり、保護フィルムが基材から剥離されなくなってしまう。
また、保護フィルムを引っ張る力(剥離力)を十分に大きくして、密着力が高くても保護フィルムを剥離できるようにした場合には、基材と保護フィルムとの密着力が弱い状態の時には、基材を過剰に引っ張ってしまうので、基材の搬送テンションが緩んでしまう。これにより、基材にツレシワが発生して基材が損傷してしまう。また、ドラムによって基材を冷却している場合には、基材とドラムとの密着が緩んで冷却が不十分になってしまい、熱ダメージを受けてしまう。
【0048】
これに対して、本発明の機能膜の製造方法においては、第1検出手段46および第2検出手段48が、保護フィルム14の有無を検出し、この検出結果に応じて、第2巻取り軸40が保護フィルム14を巻き取る際の、第2巻取り軸40のトルクおよび回転速度を制御することによって、保護フィルム14と基材12との剥離が所定の範囲内で起こるようにするので、積層体の長手方向に、基材12と保護フィルム14との密着力が変化した場合であっても、保護フィルム14を剥離させる剥離力を適正な値にすることができ、基材12と保護フィルム14とを所定の位置で剥離させることができ、保護フィルム14が剥離されずに搬送されてしまうことがない。また、剥離力が大きすぎて、基材12の搬送テンションが緩んで、ツレシワが発生したり、熱ダメージを受けて、基材12が損傷することを防止することができる。また、保護フィルム14を剥離しつつ、基材12を安定して搬送することができるので、目的とする性能を有する機能性フィルムを、安定して製造することができる。
【0049】
前述のように、処理装置10において、保護フィルム14が剥離された基材12は、ドラム32に搬送される。
ドラム32は、基材12を所定の処理位置に位置しつつ、長手方向に搬送する円筒状の物である。基材12は、ドラム32の所定領域に巻き掛けられて、長手方向に搬送されつつ、処理手段34によって、成膜や表面処理等の処理に供される。
【0050】
本発明の機能性フィルムの製造方法において、基材12の表面に施す処理には、特に限定はなく、真空中で行う各種の成膜や表面処理が、いずれも利用可能である。また、これらの処理は、公知の方法で行えばよい。
従って、処理手段34は、処理装置10で基材12の表面に施す処理に応じた、公知の構成を有する。
【0051】
一例として、処理装置10が、ICP−CVD法(誘導結合型プラズマCVD)によって成膜を行なう装置であれば、処理手段34、誘導磁場を形成するための誘導コイルや、成膜領域に原料ガスを供給するためのガス供給手段等を有して構成される。
処理装置10が、CCP−CVD法(容量結合型プラズマCVD)によって成膜を行なう装置であれば、処理手段34は、中空状で多数の小孔を有し電極および原料ガス供給部として作用するシャワー電極、プラズマ励起電力を供給する高周波電源(13.56MHz等)、原料ガスの供給手段等を有して構成される。
処理装置10が、スパッタリングによって成膜を行なう装置であれば、処理手段34は、ターゲットの保持手段や高周波電極、スパッタガスの供給手段等を有して構成される。処理手段34が、反応性スパッタリングによって成膜を行うものであれば、さらに、反応ガスの供給手段を有して構成される。
処理装置10が、成膜室が真空蒸着によって成膜を行う装置であれば、処理手段34は、蒸発源(ルツボ)、電子銃や抵抗加熱電源などの成膜材料の加熱手段、蒸発源のシャッタ等を有して構成される。
【0052】
また、基材12の表面の処理は、成膜に限定はされず、真空中で行う処理であれば、活性化、清浄化、粗面化、平坦化等の公知の表面処理も、好適に利用可能であり、また、基材12の脱ガス処理も好適に利用可能である。
一例として、処理装置10が、プラズマによる表面の活性化や清浄化等を行う装置である場合には、前記シャワー電極、プラズマ励起電力を供給する高周波電源(13.56MHz等)、プロセスガスの供給手段等を有して構成される。
また、処理像値10が、熱アニールによる表面の平坦化や、基材12からの脱ガスを行なう装置である場合には、シースヒータや温度を測定する熱電対等を有して構成される。
【0053】
ここで、本発明の製造方法によれば、所定の剥離工程によって剥離されるまで、基材12の表面を保護フィルム14で保護できる。
従って、ガスバリア膜の成膜によるガスバリアフィルムの製造のように、基材表面に高い平滑性等を要求される用途には、好適である。
【0054】
また、処理装置10による処理の際に、基材12に熱が加わる場合には、ドラム32が冷却手段を有して、基材12を冷却する構成としてもよい。
【0055】
テンションピックロール38は、ドラム32上で処理された基材12を所定の経路に案内するものであると共に、搬送される基材12にかかるテンション(張力)を測定するためのものである。テンションピックロール38測定したテンションの測定結果は、図示しない搬送制御手段に送られる。
【0056】
真空排気手段42は、真空チャンバ26内を排気して、実施する処理に応じた所定の圧力にするものである。
真空排気手段42には、特に限定はなく、ターボポンプ、メカニカルブースターポンプ、ドライポンプ、ロータリーポンプなどの真空ポンプ、さらには、クライオコイル等の補助手段、到達真空度や排気量の調整手段等を利用する、真空成膜装置に用いられている公知の(真空)排気手段が、各種、利用可能である。
【0057】
ドラム32に巻き掛けられて長手方向に搬送されつつ、処理手段34によって成膜等の処理を行われた基材12、すなわち本発明の製造方法による機能性フィルム20は、テンションピックロール38に案内されて、巻取り軸36によって巻回され、再度、ロール状にされる。
【0058】
以下、図1に示す処理装置10の作用を説明する。
前述のように、長尺な積層体16は、ロール状に巻回されて基材ロール24として供給される。
基材ロール24は、処理装置10の回転軸28に回転可能に装填される。基材ロール24を回転軸28に装填したら、積層体16を引き出し、テンションピックロール30およびガイドローラ44に巻き掛けられた後に、基材12と保護フィルム14とが剥離される。基材12から剥離された保護フィルム14は、第2巻取り軸40に送られ、所定の搬送経路で挿通される。一方、基材12は、ガイドローラ44から、ドラム32の所定領域に巻き掛けられ、テンションピックロール38によって案内され、巻取り軸36に巻き掛けられる、所定の搬送経路で挿通される。
【0059】
積層体16、基材12および保護フィルム14を挿通したら、真空チャンバ26を閉塞して、真空排気手段42を駆動して、真空チャンバ26内の排気を開始する。並行して、処理手段34において、基材12の表面に施す処理の準備を開始する。
真空チャンバ26内が所定の圧力で安定し、また、処理手段34が処理を実施できる状態となったら、巻取り軸36および第2巻取り軸40による巻取り、ドラム32による基材12の搬送、ならびに、回転軸28による基材ロール24からの積層体16の送り出しを同期して行って、基材12等の搬送を開始する。
【0060】
基材12等の搬送が安定したら、基材12の表面の処理を開始する。
これにより、積層体16を長手方向に搬送しつつ、基材12と保護フィルム14との剥離を行い、保護フィルム14を第2巻取り軸40に巻取り、基材12を長手方向に搬送しつつ、処理手段34によって成膜等の基材12の処理を行う。また、処理済の基材12すなわち本発明の製造方法による機能性フィルム20は、巻取り軸36に巻き取られ、機能性フィルム20のロールとされる。
【0061】
ここで、本発明の製造方法を実施する処理装置10では、基材12の搬送方向において、ガイドローラ44と処理手段34との間に配置される第1検出手段46と第2検出手段とによって、基材12上の保護フィルム14の有無を検出して、この検出結果に応じて、第2巻取り軸40が保護フィルム14を巻き取る際の、第2巻取り軸40のトルクおよび/または回転速度を制御することによって、保護フィルム14と基材12との剥離が所定の第1検出手段46と第2検出手段48との間で起こるようにするので、積層体の長手方向に、基材12と保護フィルム14との密着力が変化した場合であっても、保護フィルム14を剥離させる剥離力を適正な値にすることができ、基材12と保護フィルム14とを所定の位置で剥離させることができる。そのため、保護フィルム14が剥離されずに搬送されてしまうことがない。また、剥離力が大きすぎて、基材12の搬送テンションが緩んで、ツレシワが発生したり、熱ダメージを受けて、基材12が損傷することを防止することができる。
【0062】
以上、本発明の機能性フィルムの製造方法について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
【0063】
例えば、図示例においては、ドラム32に基材を巻き掛けて長手方向に搬送しつつ、処理を行う装置に利用した例であるが、本発明は、これに限定はされない。例えば、本発明は、搬送ローラ対等を用いて、長尺な積層体を長手方向に直線状に搬送しながら、保護フィルムの剥離や、基材表面の処理を行う装置にも、好適に利用可能である。
【0064】
また、図示例においては、第1検出手段46として、基材12(積層体16)に光を透過させて保護フィルム14を検出する手段を用い、第2検出手段48として、基材12(積層体16)を透過した光をドラム32に反射させて保護フィルム14を検出する手段を用いたが、本発明は、これに限定はされず、保護フィルム14の有無を検出できればよく、第1検出手段46および第2検出手段48のいずれも、光を透過させて保護フィルム14を検出するものであっても、光を反射させて保護フィルム14を検出するものであってもよい。
【0065】
また、図示例においては、剥離点Pの位置が、基材12がドラム32に巻き掛かる直前の位置となるようにしたが、本発明は、これに限定はされず、剥離点Pの位置が、基材12がドラムに巻き掛かった位置となるようにしてもよい。すなわち、積層体16がドラム32に巻き掛かった状態で、保護フィルム14を基材12から剥離してもよい。
【0066】
図2は、本発明の製造方法を実施する処理装置の他の一例を概念的に示す図である。
なお、図2に示す処理装置80は、図1に示す処理装置10において、第1検出手段46に代えて、第1検出手段82を有する以外は、同じ構成を有するので、同じ部位には、同じ符号を付し、以下の説明は異なる部位を主に行なう。
【0067】
処理装置80は、第1検出手段82が、ドラム32に巻き掛けられた積層体16(基材12)に対面する位置に配置される構成を有する。
第1検出手段82は、基材12上の保護フィルム14の有無を検出するものであり、基材12に向かって光を照射すると共に、ドラム32から反射された光を受光することにより、保護フィルム14の有無を検出する。
第1検出手段82は、検出結果を制御手段50に供給する。
【0068】
第1検出手段82と第2検出手段48とを、ドラム32に巻き掛けられた積層体16(基材12)に対面する位置に配置する構成とすることで、基材12がドラム32に巻き掛かった状態で、保護フィルム14を基材12から剥離することができるので、保護フィルム14の剥離の際に、基材12が揺動することを防止でき、より好適に安定して基材12の搬送を行なうことができる。
【0069】
また、図示例においては、第1検出手段46と第2検出手段48とを、ドラム32の直上流のガイドローラ44と、ドラム32との間に配置したが、本発明はこれに限定はされず、処理手段34よりも上流側に配置されていればよく、例えば、ガイドローラ44とテンションピックロール30との間に配置してもよい。
【0070】
図3は、本発明の製造方法を実施する処理装置の他の一例を概念的に示す図である。
なお、図3に示す処理装置100は、図1に示す処理装置10において、剥離点Pおよび第1検出手段46をテンションピックロール30とガイドローラ44との間に配置し、第2検出手段48に代えて、第2検出手段104を有する以外は、同じ構成を有するので、同じ部位には、同じ符号を付し、以下の説明は異なる部位を主に行なう。
【0071】
処理装置100は、第1検出手段46と第2検出手段104、および、剥離点Pが、テンションピックロール30とガイドローラ44との間に配置される構成を有する。
第2検出手段104は、基材12上の保護フィルム14の有無を検出するものであり、光照射部104aと受光部104bとを有する。
【0072】
光照射部104aと受光部104bとは、基材12(積層体16)を挟むように配置されており、光照射部104aは基材12(積層体16)を挟んで配置される受光部104bに向かって光を照射するものである。受光部104bは、光照射部104aから照射された光の状態から、保護フィルム14の有無を検出する。
第2検出手段104は、検出結果を制御手段50に供給する。
【0073】
このように、第1検出手段46と第2検出手段48とを、テンションピックロール30とガイドローラ44との間に配置した場合であっても、保護フィルム14を剥離させる剥離力を適正な値にすることができ、基材12と保護フィルム14とを所定の位置で剥離させることができる。そのため、保護フィルム14が剥離されずに搬送されてしまうことがない。また、剥離力が大きすぎて、基材12の搬送テンションが緩んで、ツレシワが発生したり、熱ダメージを受けて、基材12が損傷することを防止することができる。
なお、基材12の表面(被処理面)を好適に保護できる点で、第1検出手段46と第2検出手段48とは、処理手段34(ドラム32)の直上流に配置することが好ましい。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。
[実施例1]
図1に示す処理装置10を用いて、積層体の搬送を行なった。
基材12として、厚さ100μm、幅700mmのPETフィルムを用意した。
また、保護フィルム14として、幅700mmのサンエー化研社製のPAC−3−50THKを用意した。この粘着性シートの粘着力は、0.04N/25mmである。
また、真空チャンバ26内の真空度は、5×10−4Paとした。
また、処理手段34による処理として、プラズマCVD法によるSiN膜の成膜を行なった。
また、ドラム32は冷却手段を有し、基材12を冷却する構成とした。
また、搬送速度は、1m/minとし、搬送テンションは、50N/700mmとして、500mの積層体16の搬送を行なった。
【0075】
基材の熱負け、基材のツレシワ、および、保護フィルムの剥離異常の有無を、50mごとに評価した。
なお、基材の熱負けは、処理後に基材を取り出して確認した。また、基材のツレシワ、および、保護フィルムの剥離異常は、真空チャンバ26に形成された除き窓から、積層体16を目視して評価した。
基材の熱負けが発生した場合を『A』、基材のツレシワが発生した場合を『B』、保護フィルムの剥離異常が発生した場合を『C』、異常なしの場合を『N』と評価した。
評価結果を、下記表1に示す。
【0076】
[実施例2]
第1検出手段および第2検出手段をテンションピックロールとガイドローラとの間に配置する構成(図3)とした以外は、実施例1と同様にして機能性フィルムの製造を行い、基材の熱負け、基材のツレシワ、および、保護フィルムの剥離異常の有無を、50mごとに評価した。評価結果を、下記表1に併記する。
【0077】
[比較例1]
第1検出手段を配置せず、第2検出手段のみを有する構成とした以外は、実施例1と同様にして機能性フィルムの製造を行い、基材の熱負け、基材のツレシワ、および、保護フィルムの剥離異常の有無を、50mごとに評価した。評価結果を、下記表1に併記する。
【0078】
[比較例2]
第1検出手段を配置せず、第2検出手段のみを有する構成とした以外は、実施例2と同様にして機能性フィルムの製造を行い、基材の熱負け、基材のツレシワ、および、保護フィルムの剥離異常の有無を、50mごとに評価した。評価結果を、下記表1に併記する。
【0079】
[比較例3]
第1検出手段および第2検出手段を有さない構成とした以外は、実施例1と同様にして機能性フィルムの製造を行い、基材の熱負け、基材のツレシワ、および、保護フィルムの剥離異常の有無を、50mごとに評価した。評価結果を、下記表1に併記する。
【0080】
[比較例4]
第1検出手段および第2検出手段を有さない構成とした以外は、実施例2と同様にして機能性フィルムの製造を行い、基材の熱負け、基材のツレシワ、および、保護フィルムの剥離異常の有無を、50mごとに評価した。評価結果を、下記表1に併記する。
【0081】
【表1】

【0082】
上記表1に示されるように、本発明の機能膜の製造方法においては、第1検出手段および第2検出手段が、保護フィルムの有無を検出し、この検出結果に応じて、第2巻取り軸が保護フィルムを巻き取る際の、第2巻取り軸のトルクおよび回転速度を制御することによって、保護フィルムと基材との剥離が所定の範囲内で起こるようにするので、基材の熱負け、基材のツレシワ、および、保護フィルムの剥離異常を好適に防止できる。
なお、第1検出手段および第2検出手段をテンションピックロール30とガイドローラ44との間に配置する実施例2においては、保護フィルム14を剥離した基材12の表面の損傷を防止するために、ガイドローラ44として段付きローラを用いたところ、ガイドローラ44の位置で若干、クニックが発生した。これに対して、第1検出手段および第2検出手段をドラム32(処理手段34)の直上流に配置する実施例1においては、処理手段34の直前まで、基材12の表面を保護フィルム14で保護しているので、ガイドローラ44として段付きローラを用いる必要がなく、より好適に基材12の損傷を防止できる。
【0083】
これに対して、検出手段を1つにした比較例1および2においては、保護フィルムの剥離異常は抑制できるものの、剥離力が大きくなりすぎて基材の搬送テンションが緩んでしまうので、250m以降に、基材の熱負けや基材のツレシワが断続的に発生した。
また、検出手段を有さない比較例3および4においては、200m以降に、保護フィルムが基材から剥離されず、剥離異常が発生した。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
基材の表面にガスバリア膜を成膜するガスバリアフィルムの製造など、基材の表面に所定の機能を発現する機能性フィルムの製造等に、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
10、80、100 処理装置
12 基材
14 保護フィルム
16 積層体
20 機能性フィルム
24 基材ロール
26 真空チャンバ
28 回転軸
30、38 テンションピックロール
32 ドラム
36 巻取り軸
40 第2巻取り軸
42 真空排気手段
44 ガイドローラ
46、82、 第1検出手段
46a、104a 光照射部
46b、104b 受光部
48、104 第2検出手段
50 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空中において、基材の被処理面に貼着性を有する保護フィルムを積層して貼着してなる積層体を、ロール状に巻回してなる積層体ロールから、前記積層体を引き出し、長手方向に搬送しつつ、前記基材から前記保護フィルムを剥離し、前記基材の被処理面に処理を行うに際し、
前記処理を行なう前の前記積層体の搬送中に、所定の第1の検出位置で、前記基材上の前記保護フィルムの有無を検出し、
前記第1の検出位置と前記処理との間の、所定の第2の検出位置で、前記基材上の前記保護フィルムの有無を検出し、
前記第1の検出位置と前記第2の検出位置での検出結果に応じて、前記第1の検出位置と前記第2の検出位置との間で、前記保護フィルムが前記基材から剥離するように、剥離力を制御することを有することを特徴とする機能性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第2の検出位置で、前記保護フィルムが検出された場合に、前記保護フィルムを剥離させる際の剥離力が大きくなるように制御する請求項1に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1の検出位置で、前記保護フィルムが検出されなかった場合に、前記保護フィルムを剥離させる際の剥離力が小さくなるように制御する請求項1または2に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記処理は、前記基材を円筒状のドラムの周面に巻き掛けて、長手方向に搬送しつつ、前記ドラムの周面に対面して配置された処理手段によって行なうものである請求項1〜3のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第2の検出位置は、前記処理手段と前記ドラムの直上流側の搬送ロールとの間に配置される請求項4に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第2の検出位置は、前記基板が前記ドラムに巻き掛かけられている位置に配置される請求項5に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ドラムの周面を冷却する冷却手段を有する請求項4〜6のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記保護フィルムの巻取り手段のトルクおよび/または回転速度を制御することにより、前記保護フィルムを剥離させる際の剥離力を制御する請求項1〜7のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記第1の検出位置で前記保護フィルムの有無を検出する第1検出手段、および、前記第2の検出位置で前記保護フィルムの有無を検出する第2検出手段が、光の透過率を検出することにより、前記保護フィルムの有無を検出するものである請求項1〜8のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項10】
真空中で、基材の被処理面に貼着性を有する保護フィルムを積層して貼着してなる積層体を、ロール状に巻回してなる積層体ロールから、前記積層体を引き出し、長手方向に搬送しつつ、前記基材から前記保護フィルムを剥離し、前記基材の被処理面に成膜処理を行う機能性フィルムの製造装置において、
前記基材から剥離した前記保護フィルムを巻き取る巻取り手段と、
前記基材に所定の処理を行なう処理手段と、
前記基材の搬送方向において、前記処理手段よりも上流側に配置され、前記基材上の前記保護フィルムの有無を検出する第1検出手段と、
前記処理手段と前記第1検出手段との間に配置され、前記基材上の前記保護フィルムの有無を検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段および前記第2検出手段の検出結果に応じて、前記第1検出手段と前記第2検出手段との間で、前記保護フィルムが前記基材から剥離するように、前記巻取り手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする機能性フィルムの製造装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第2検出手段が前記保護フィルムを検出した場合に、前記巻取り手段のトルクおよび/または回転速度が大きくなるように制御する請求項10に記載の機能性フィルムの製造装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第1検出工程で前記保護フィルムを検出しなかった場合に、前記巻取り手段のトルクおよび/または回転速度が小さくなるように制御する請求項10または11に記載の機能性フィルムの製造装置。
【請求項13】
前記第2検出手段は、前記処理手段と前記処理手段の直上流側の搬送ロールとの間に配置される請求項10〜12のいずれかに記載の機能性フィルムの製造装置。
【請求項14】
周面が前記処理手段に対面するように配置され、前記基板を周面の所定領域に巻き掛けて搬送する円筒状のドラムを有する請求項10〜13のいずれかに記載の機能性フィルムの製造装置。
【請求項15】
前記第2検出手段は、前記基板が前記ドラムに巻き掛かけられている位置で、前記基板上の前記保護フィルムの有無を検出する請求項14に記載の機能性フィルムの製造装置。
【請求項16】
前記ドラムの周面を冷却する冷却手段を有する請求項14または15に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記第1検出手段、および、前記第2検出手段が、光の透過率を検出することにより、前記保護フィルムの有無を検出するものである請求項10〜16のいずれかに記載の機能性フィルムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−177179(P2012−177179A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41446(P2011−41446)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】