説明

機能性フィルム及び表示装置

【課題】ハードコート性、反射防止性および防眩性を単一の塗膜で両立できる機能性フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの上に、相分離可能な複数の樹脂で構成されている樹脂バインダー、硬化性樹脂および中空シリカ粒子を含む塗布液を塗布する塗布工程と、この工程により形成された未乾燥の塗膜を乾燥させる乾燥工程と、この工程により乾燥された塗膜を硬化する硬化工程とを経て機能性フィルムを製造する。このような方法では、一回の塗布工程により、ハードコート性、反射防止性および防眩性を有する機能層を基材フィルムに形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ、ワードプロセッサ、テレビなどの各種液晶ディスプレイなどに好適に用いることができる機能性フィルム、その製造方法、前記機能性フィルムを形成するための塗布液及び前記機能性フィルムを備えた表示装置(液晶表示装置など)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイは、テレビ(TV)用途もしくは動画表示用途で、表示装置としてめざましい進歩を遂げ、急速に普及が進んでいる。例えば、高速応答性を有する液晶材料の開発や、オーバードライブなどの駆動方式の改良により、従来、液晶が苦手としていた動画表示を克服するとともに、表示の大型化に対応した生産技術革新も進んでいる。
【0003】
これらのディスプレイにおいて、画質を重視するテレビやモニタなどの用途、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラなどの用途では、外光の映り込みを防止する処理が表面に施されるのが通例である。その手法の一つに防眩処理があり、例えば、通常、液晶ディスプレイの表面には防眩処理がなされている。防眩処理は、表面に微細な凹凸構造を形成することにより、表面反射光を散乱し、映り込み像をぼかす効果を有する。従って、防眩層では、クリアな反射防止膜とは異なり、鑑賞者、背景の形が映り込むといったことがないため、反射光が映像の邪魔をしにくい。さらに、防眩層の上に低屈折率層が塗工された低反射防眩層においては、ぼかされた映り込み像の光量が低減されるため、いっそう映り込みの少ない高品位な画質を得ることができる。
【0004】
例えば、特開2006−235198号公報(特許文献1)には、支持体上に微粒子(中空シリカなど)とバインダーを含有する組成物が塗設されて薄膜層が形成されてなる光学フイルムであって、該薄膜層全層中の平均粒子充填率(A)に対する、支持体と反対側の上層側30%膜厚中の平均粒子充填率(B)の比率であるSP値[(B/A)×100]]が90%以上333%以下であることを特徴とする光学フイルムが開示されている。
【0005】
この文献には、前記光学フィルムは、透明な基材上に、必要に応じて後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されており、低反射積層体は、最も単純な構成では、基材上に低屈折率層のみを塗設した構成であることが記載されており、具体的な層構成として、基材フィルム/低屈折率層、基材フィルム/防眩層/低屈折率層、基材フィルム/ハードコート層/防眩層/低屈折率層などを開示している。そして、この文献には、前記低屈折率層は、中空シリカ粒子などの無機粒子および屈折率の低い含フッ素ポリマーなどの被膜形成バインダーに加えて、含フッ素ポリマーに防汚性を付与するためのポリシロキサンなどで形成できることが記載されている。
【0006】
しかし、この文献のフィルムでは、防眩性、ハードコート性、反射防止性などの特性を、それぞれの層(複数の層)で付与できるのみであり、これらの特性を一層で両立させることはできない。
【0007】
一方、特開2007−86764号公報(特許文献2)には、透明プラスチックフィルム基材上に、屈折率が1.50以下の低屈折率微粒子(表面処理されていてもよい中空シリカ粒子など)とバインダー樹脂を含有する硬化性組成物が塗設されて乾燥厚みが100nm以上の硬化層が形成されてなる光学フィルムであって、硬化層の基材とは反対側の表面部分に低屈折率微粒子が偏在していることを特徴とする光学フィルムが開示されている。この文献には、硬化層の表面に低屈折率微粒子を偏在させることで、硬化層における表面側は、見掛け上の低屈折率層を形成し、その結果、みかけ低屈折率層の反射防止効果により低反射率が確保できること、さらには、低屈折率微粒子としてシリカ微粒子等の高硬度無機微粒子を用いることで表面の耐擦傷性も同時に付与することができることが記載されている。また、この文献には、前記硬化層の機能としては、反射防止性および耐擦傷性を有するハードコート層が挙げられ、ハードコート層は、硬化性組成物より形成され、硬化性組成物には前記の低屈折率微粒子、バインダーとしてハードコート性を付与するためのバインダー、その他必要に応じて防眩性又は内部散乱性を付与するためのマット粒子、及び高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機微粒子から形成されると記載されている。
【0008】
この文献のフィルムでは、一層の硬化層で、反射防止性、ハードコート性に加えて、マット粒子により防眩性を付与することができる。しかし、防眩性の付与のためには、数μm程度の大粒径粒子であるマット粒子を硬化層表面に突出させる必要があるため、中空シリカ粒子を十分に表面に偏在させることができず、十分な反射防止性を付与できない。また、マット粒子と中空シリカ粒子とが凝集し、反射防止能が低下する場合もある。
【0009】
さらに、特開2000−53921号公報(特許文献3)には、低屈折率硬化被膜を与え得る化合物と、高屈折率硬化被膜を与え得る化合物とを含有する反射防止被膜形成組成物であって、低屈折率硬化被膜を与え得る化合物が硬化されてなる被膜の表面自由エネルギーが高屈折率硬化被膜を与え得る化合物が硬化されてなる被膜の表面自由エネルギーよりも小さいことを特徴とする反射防止被膜形成組成物が開示されている。この文献は、複数の化合物が混合されている場合、表面自由エネルギーの低い化合物が優先的に表面に析出することを利用したものであり、低屈折率化合物を低表面自由エネルギー化することにより表面に析出させ、1回の塗布により、空気界面から低屈折率層、高屈折率層の順で2層の被膜を基材上に形成できる。しかし、この文献の組成物では、基材に反射防止機能を形成できても、防眩性を付与できない。
【特許文献1】特開2006−235198号公報(特許請求の範囲、段落番号[0066]、[0067]、[0082]、[0090]、[0091]、[0096]、[0097])
【特許文献2】特開2007−86764号公報(特許請求の範囲、段落番号[0029]、[0095]、[0107])
【特許文献3】特開2000−53921号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、ハードコート性、反射防止性および防眩性を単一の塗膜で付与できる機能性フィルム、この機能性フィルムの製造方法及びこの機能性フィルムを備えた表示装置(液晶表示装置など)を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、基材フィルムに対する一回の塗工という簡便かつ低コストの方法により、ハードコート性、反射防止性および防眩性を有する機能性フィルムを製造する方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、ハードコート性、反射防止性および防眩性を有する機能性フィルムを得るのに有用な塗布液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、相分離可能な複数の樹脂と、硬化性樹脂と、中空シリカ粒子とを組み合わせると、これらを含む塗布液(塗工液)を基材(特に透明基材)に一回の塗布工程でコーティングする(および硬化させる)という簡便な方法により、高分子の自己秩序化現象(細胞状回転対流現象及び相分離現象)により表面に凹凸構造が形成されるともに、表面に(又は表面の凹凸構造に沿って)中空シリカ粒子を効率よく偏在させることができるためか、通常、両立させることが困難であったハードコート性と反射防止性と防眩性という関連のない3つの特性を有する機能層を基材に形成できること、そして、このような方法により得られる機能性フィルムは、映り込みを抑制でき、かつ外光下でも黒い画像(高い明室コントラストの画像)を表示でき、液晶表示装置などを構成するフィルムとして極めて有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の機能性フィルムは、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された機能層とで構成された機能性フィルムであって、機能層が、相分離可能な複数の樹脂で構成されている樹脂バインダー、硬化性樹脂および中空シリカ粒子を含む塗膜が硬化した硬化層であり、かつ中空シリカ粒子が機能層の表面側に偏在している機能性フィルムである。
【0015】
前記複数の樹脂は、少なくともセルロース誘導体を含んでいてもよい。また、前記複数の樹脂のうち、少なくとも一つのポリマーは、硬化性樹脂と反応可能な官能基を有するポリマーであってもよい。代表的には、前記複数の樹脂が、セルロースエステル類と、硬化性樹脂と反応可能な官能基を側鎖に有する樹脂であって、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、およびポリエステル系樹脂から選択された少なくとも1種の樹脂とで構成されていてもよい。
【0016】
前記中空シリカ粒子は、平均粒子径50〜70nmおよび屈折率1.20〜1.25を有していてもよい。
【0017】
前記機能層は、通常、表面に凹凸構造を有していてもよく、また、この表面の凹凸構造に中空シリカ粒子が追随した形態で偏在していてもよい。前記凹凸構造は、少なくとも複数の樹脂の相分離により形成された凹凸構造であってもよく、特に、前記相分離および対流現象により形成された凹凸構造であってもよい。
【0018】
前記機能層では、その表面のほとんど又は全部が中空シリカ粒子で被覆された構造を有していてもよく、例えば、前記機能層において、一方の面の表面積の90%以上に中空シリカ粒子が存在していてもよい。
【0019】
本発明には、基材フィルムの上に、相分離可能な複数の樹脂で構成されている樹脂バインダー、硬化性樹脂および中空シリカ粒子を含む塗布液を塗布する塗布工程と、この工程により形成された未乾燥の塗膜を乾燥させる乾燥工程と、この工程により乾燥された塗膜を硬化する硬化工程とを経て前記機能性フィルムを製造する方法も含まれる。
【0020】
このような方法において、前記塗布液は、少なくとも2種の沸点の異なる溶媒を含んでいてもよい。特に、前記塗布液は、少なくとも1種の沸点100℃以上の溶媒と、少なくとも1種の沸点100℃未満の溶媒とを含んでいてもよい。
【0021】
前記硬化工程において、活性エネルギー線及び熱から選択された少なくとも1種を照射して塗膜を硬化してもよい。
【0022】
本発明には、前記機能性フィルムを得るための塗布液であって、相分離可能な複数の樹脂で構成されている樹脂バインダー、硬化性樹脂および中空シリカ粒子を含む塗布液も含まれる。
【0023】
また、本発明には、前記機能性フィルムを備えた表示装置も含まれる。このような表示装置は、例えば、液晶表示装置、陰極管表示装置、プラズマディスプレイ、及びタッチパネル式入力装置から選択された表示装置であってもよい。前記液晶表示装置は、さらにプリズム単位の断面形状が略二等辺三角形状であるプリズムシートを備えていてもよい。
【0024】
さらに、本発明には、偏光板の少なくとも一方の面に前記機能性フィルムが積層された光学部材も含まれる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の機能性フィルムでは、相分離可能な複数の樹脂と、硬化性樹脂と、中空シリカ粒子とを組み合わせることにより、両立させることが難しいハードコート性、反射防止性、および防眩性を、単一の塗膜で付与させることができる。そのため、このような機能性フィルムは、外光の写り込みやぎらつきを抑制しつつ、かつ外光下でも黒い画像(明室コントラストの高い画像)を表示できる。また、液晶表示装置(液晶パネル)としては、明るく(輝度が高く)、かつコントラストの高い画像が求められているが、本発明の機能性フィルムと、頂角が略90°のプリズムシートとを組み合わせることにより、10%以上の多大な輝度を向上が可能となる。
【0026】
さらに、本発明では、基材フィルムに対する一回の塗工という簡便かつ低コストの方法により、ハードコート性、反射防止性および防眩性を有する前記機能性フィルムを製造できる。
【0027】
また、本発明の塗布液は、前記のようなハードコート性、反射防止性および防眩性を有する機能性フィルム得るための塗布液として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<機能性フィルム>
本発明の機能性フィルムは、特定の構成成分で形成された機能層(防眩性膜、防眩膜)で少なくとも構成されている。この機能性フィルムは、通常、基材(基材フィルム、基材シート)と、この基材の上に形成された機能層とで構成されていてもよい。
【0029】
[基材]
基材(基材フィルム)としては、通常、光透過性を有する支持体、例えば、合成樹脂フィルムなどの透明支持体が使用される。このような光透過性を有する支持体は、光学部材を形成するための透明ポリマーフィルムで構成されていてもよい。
【0030】
透明支持体(基材シート)としては、例えば、ガラス(基材)、セラミックス(基材)の他、樹脂シート(樹脂フィルム)などが例示できる。透明支持体を構成する樹脂としては、後述の防眩層と同様の樹脂が使用できる。
【0031】
好ましい透明支持体としては、透明性ポリマーフィルム、例えば、セルロース誘導体[セルローストリアセテート(TAC)、セルロースジアセテートなどのセルロースアセテートなど]、ポリエステル系樹脂[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート系樹脂など]、ポリスルホン系樹脂[ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)など]、ポリエーテルケトン系樹脂[ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など]、ポリカーボネート系樹脂(PC)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、環状ポリオレフィン系樹脂[商品名「アートン(ARTON)」、商品名「ゼオネックス(ZEONEX)」、商品名「トパス(TOPAS)」など]、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニリデンなど)、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、酢酸ビニル又はビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールなど)などで形成されたフィルムが挙げられる。透明支持体は1軸又は2軸延伸されていてもよいが、光学的に等方性であるのが好ましい。好ましい透明支持体は、低複屈折率の支持シート又はフィルムである。光学的に等方性の透明支持体には、未延伸シート又はフィルムが例示でき、例えば、ポリエステル(PET、PBTなど)、セルロースエステル類、特にセルロースアセテート類(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC3−4アシレートなど)などで形成されたシート又はフィルムが例示できる。二次元的構造の支持体(例えば、樹脂フィルム)の厚みは、例えば、5〜2000μm、好ましくは15〜1000μm、さらに好ましくは20〜500μm程度の範囲から選択できる。
【0032】
[機能層]
本発明の機能性フィルムを構成する機能層は、相分離可能な複数の樹脂(樹脂成分)で構成されている樹脂バインダーおよび中空シリカ粒子で構成(形成)されており、通常、これらの成分(樹脂バインダーおよび中空シリカ粒子)に加えて、さらに硬化性樹脂を含む塗膜が硬化した硬化層である。なお、硬化性樹脂を含むことにより、ハードコート性(耐擦傷性)を向上(又は付与)できる。そして、このような機能層では、後述するように、中空シリカ粒子が、表面側(通常、基材フィルムに対して反対側の表面側)に偏在している。
【0033】
(樹脂バインダー)
樹脂バインダーは、互いに相分離可能な(又は互いに非相溶な)複数の樹脂(樹脂成分、ポリマー成分、ポリマーなどということがある)で構成されていればよい。なお、これらの樹脂は、加工温度又は加工温度付近で、互いに相分離する組み合わせであってもよい。
【0034】
樹脂成分(ポリマー成分)は、通常、熱可塑性樹脂であってよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
スチレン系樹脂には、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体など)、スチレン系単量体と他の重合性単量体[(メタ)アクリル系単量体、無水マレイン酸、マレイミド系単量体、ジエン類など]との共重合体などが含まれる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。好ましいスチレン系樹脂には、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレンとメタクリル酸メチルとを主成分とする共重合体]、AS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などが含まれる。
【0036】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが使用できる。(メタ)アクリル系単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;トリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが例示できる。共重合性単量体には、前記スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特にメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0038】
有機酸ビニルエステル系樹脂としては、ビニルエステル系単量体の単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニルなど)、ビニルエステル系単量体と共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)又はそれらの誘導体が挙げられる。ビニルエステル系樹脂の誘導体には、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール樹脂などが含まれる。
【0039】
ビニルエーテル系樹脂としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルt−ブチルエーテルなどのビニルC1−10アルキルエーテルの単独又は共重合体、ビニルC1−10アルキルエーテルと共重合性単量体との共重合体(ビニルアルキルエーテル−無水マレイン酸共重合体など)が挙げられる。
【0040】
ハロゲン含有樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0041】
オレフィン系樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィンの単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの共重合体が挙げられる。脂環式オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど)の単独又は共重合体(例えば、立体的に剛直なトリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する重合体など)、前記環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体など)などが例示できる。脂環式オレフィン系樹脂は、例えば、商品名「アートン(ARTON)」、商品名「ゼオネックス(ZEONEX)」、商品名「トパス(TOPAS)」などとして入手できる。
【0042】
ポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが含まれる。
【0043】
ポリエステル系樹脂には、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を用いた芳香族ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレートやポリC2−4アルキレンナフタレートなどのホモポリエステル、C2−4アルキレンアリレート単位(C2−4アルキレンテレフタレート及び/又はC2−4アルキレンナフタレート単位)を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルなど]が例示できる。コポリエステルとしては、ポリC2−4アルキレンアリレートの構成単位のうち、C2−4アルキレングリコールの一部を、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、C6−10アルキレングリコール、脂環式ジオール(シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、芳香環を有するジオール(フルオレノン側鎖を有する9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、ビスフェノールA、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)などで置換したコポリエステル、芳香族ジカルボン酸の一部を、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族C6−12ジカルボン酸などで置換したコポリエステルが含まれる。ポリエステル系樹脂には、ポリアリレート系樹脂、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリエステル、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独又は共重合体も含まれる。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、非結晶性コポリエステル(例えば、C2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などのように非結晶性である。
【0044】
ポリアミド系樹脂としては、ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸など)とジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミド、ε−カプロラクタムなどのラクタムから得られるポリアミドなどが挙げられる。ポリアミドは、ホモポリアミドに限らずコポリアミドであってもよい。代表的なポリアミド系樹脂には、例えば、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド系樹脂が挙げられる。
【0045】
セルロース誘導体のうち、セルロースエステル類としては、例えば、脂肪酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC1−6有機酸エステルなど)、芳香族カルボン酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7−12芳香族カルボン酸エステル)、無機酸エステル類(例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロースなど)が例示でき、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。セルロース誘導体には、セルロースカーバメート類(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテル類(例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロース、アセチルアルキルセルロースなど)も含まれる。
【0046】
好ましい熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマーなどが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類など)などが好ましい。特に、本発明においては、熱可塑性樹脂として、少なくともセルロース誘導体を用いるのが好ましい。セルロース誘導体は、半合成高分子であり、他の樹脂や硬化性樹脂前駆体と溶解挙動が異なるため、非常に良好な相分離性を有する。
【0047】
前記ポリマー(熱可塑性樹脂)として、硬化反応に関与する官能基(硬化性前駆体と反応可能な官能基)を有するポリマーを用いることもできる。このようなポリマーは、官能基を主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。前記官能基は、共重合や共縮合などにより主鎖に導入されてもよいが、通常、側鎖に導入される。このような官能基としては、縮合性又は反応性官能基(例えば、ヒドロキシル基、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基又はイミノ基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基など)、重合性官能基(例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリルなどのC2−6アルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニルなどのC2−6アルキニル基、ビニリデンなどのC2−6アルケニリデン基、又はこれらの重合性官能基を有する官能基((メタ)アクリロイル基など)など)などが挙げられる。これらの官能基のうち、重合性基が好ましい。
【0048】
重合性基を側鎖に有する熱可塑性樹脂は、例えば、反応性基(前記縮合性又は反応性官能基の項で例示の官能基と同様の基など)を有する熱可塑性樹脂(i)と、この熱可塑性樹脂の反応性基に対する反応性基と、重合性官能基とを有する化合物(重合性化合物)(ii)とを反応させ、化合物(ii)が有する重合性官能基を熱可塑性樹脂に導入することにより製造できる。
【0049】
前記反応性基を有する熱可塑性樹脂(i)としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂[例えば、(メタ)アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体など)、末端カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂など]、ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂[例えば、(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル共重合体など)、末端ヒドロキシル基を有するポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース)、ポリアミド系樹脂(N−メチロールアクリルアミド共重合体など)など]、アミノ基を有する熱可塑性樹脂(例えば、末端アミノ基を有するポリアミド系樹脂など)、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂(例えば、エポキシ基(グリシジル基など)を有する(メタ)アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂など)などが例示できる。また、前記反応性基を有する熱可塑性樹脂(i)としては、スチレン系樹脂やオレフィン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂に、共重合やグラフト重合により、前記反応性基を導入した樹脂を用いてもよい。これらの熱可塑性樹脂(i)のうち、反応性基としてカルボキシル基又はその酸無水物基、ヒドロキシル基やグリシジル基(特にカルボキシル基又はその酸無水物基)を有する熱可塑性樹脂が好ましい。なお、前記(メタ)アクリル系樹脂のうち、前記共重合体は、(メタ)アクリル酸を50モル%以上含有するのが好ましい。前記熱可塑性樹脂(i)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0050】
重合性化合物(ii)の反応性基としては、熱可塑性樹脂(i)の反応性基に対して反応性の基、例えば、前記ポリマーの官能基の項で例示した縮合性又は反応性官能基と同様の官能基などが挙げられる。
【0051】
前記重合性化合物(ii)としては、エポキシ基を有する重合性化合物[例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート(グリシジル(メタ)アクリレート、1,2−エポキシブチル(メタ)アクリレートなどのエポキシC3−8アルキル(メタ)アクリレート;エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレートなどのエポキシシクロC5−8アルケニル(メタ)アクリレートなど)、アリルグリシジルエーテルなど]、ヒドロキシル基を有する化合物[ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−4アルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、アミノ基を有する重合性化合物[例えば、アミノ基含有(メタ)アクリレート;アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン;4−アミノスチレン、ジアミノスチレンなどのアミノスチレン類など)、イソシアネート基を有する重合性化合物[例えば、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレートやビニルイソシアネートなど]、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する重合性化合物[例えば、(メタ)アクリル酸や無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物など]が例示できる。これらの重合性化合物(ii)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0052】
なお、熱可塑性樹脂(i)の反応性基と重合性化合物(ii)の反応性基との組合せとしては、例えば、以下の組合せなどが挙げられる。
【0053】
(i-1)熱可塑性樹脂(i)の反応性基:カルボキシル基又はその酸無水物基
重合性化合物(ii)の反応性基:エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基
(i-2)熱可塑性樹脂(i)の反応性基:ヒドロキシル基
重合性化合物(ii)の反応性基:カルボキシル基又はその酸無水物基、イソシアネート基
(i-3)熱可塑性樹脂(i)の反応性基:アミノ基
重合性化合物(ii)の反応性基:カルボキシル基又はその酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基
(i-4)熱可塑性樹脂(i)の反応性基:エポキシ基
重合性化合物(ii)の反応性基:カルボキシル基又はその酸無水物基、アミノ基。
【0054】
重合性化合物(ii)のうち、特に、エポキシ基含有重合性化合物(エポキシ基含有(メタ)アクリレートなど)が好ましい。
【0055】
前記官能基含有ポリマー、例えば、(メタ)アクリル系樹脂のカルボキシル基の一部に重合性不飽和基を導入したポリマーは、例えば、「サイクロマーP」などとしてダイセル化学工業(株)から入手できる。なお、サイクロマーPは、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートのエポキシ基を反応させて、側鎖に光重合性不飽和基を導入した(メタ)アクリル系ポリマーである。
【0056】
熱可塑性樹脂に対する硬化反応に関与する官能基(特に重合性基)の導入量は、熱可塑性樹脂1kgに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.02〜3モル程度であってもよい。
【0057】
熱可塑性樹脂(ポリマー)のガラス転移温度は、例えば、−100℃〜250℃、好ましくは−50℃〜230℃、さらに好ましくは0〜200℃程度(例えば、50〜180℃程度)の範囲から選択できる。
【0058】
なお、表面硬度の観点から、熱可塑性樹脂(ポリマー)のガラス転移温度は、50℃以上(例えば、70〜200℃程度)、好ましくは100℃以上(例えば、100〜170℃程度)であるのが有利である。ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1,000,000以下、好ましくは1,000〜500,000程度の範囲から選択できる。
【0059】
前記のように、樹脂バインダーは、相分離可能な複数の樹脂成分で構成されている。このような相分離可能な複数の樹脂成分(複数のポリマー)は、互いに(溶媒の不存在下で)相分離可能であり、完全に溶媒が蒸発する前から液相で相分離可能であってもよい。また、複数のポリマーは、通常、互いに非相溶であってもよい。
【0060】
なお、樹脂バインダーは、相分離可能な2種以上の樹脂成分(熱可塑性樹脂)で構成されている限り、相分離可能な樹脂成分と相分離しない樹脂成分を含んでいてもよい。例えば、互いに相分離可能な2種の樹脂成分と、これらの樹脂成分のいずれか一方に対して相分離しない(相溶する)樹脂成分とで構成してもよい。
【0061】
相分離可能な複数の樹脂成分において、樹脂成分の組み合わせは相分離可能な限り特に限定されないが、加工温度付近で互いに非相溶な複数のポリマー、例えば、互いに非相溶な2つのポリマーとして適当に組み合わせて使用できる。複数のポリマー(第1のポリマーと第2のポリマー)の屈折率の差は0〜0.06程度であってもよく、例えば、0〜0.04(例えば、0.0001〜0.04)、好ましくは0.001〜0.03程度であってもよい。複数のポリマー間の屈折率差が大きすぎると、機能層内部に形成させる相分離ドメイン間の屈折率差が大きくなり、内部ヘイズを発生し易くなり、本発明の効果が低減される。
【0062】
複数の樹脂(又は樹脂バインダー)は、少なくともセルロース誘導体、特に、セルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4脂肪族カルボン酸エステル類)で構成してもよい。例えば、第1のポリマーがセルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル類)である場合、第2のポリマーは、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体など)、ポリエステル系樹脂(前記ポリC2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などが好ましく、特に、これらの樹脂の中でも、芳香族環、ハロゲン系元素を含有しないポリマーであるのが好ましい。
【0063】
また、硬化後の耐擦傷性の観点から、前記樹脂バインダーを構成する複数の樹脂成分のうち、少なくとも一つのポリマー(例えば、互いに非相溶なポリマーのうち一方のポリマー)が硬化性樹脂と反応可能な官能基を有する(特に、側鎖に有する)ポリマーであるのが好ましい。
【0064】
第1のポリマーと第2のポリマーとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10程度の範囲から選択でき、通常、20/80〜80/20程度、特に30/70〜70/30程度である。特に、第1のポリマーにセルロース誘導体を用いる場合、第1のポリマーと第2のポリマーとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜30/70、好ましくは5/95〜28/72、さらに好ましくは10/90〜27/73、特に15/85〜25/75程度であってもよい。
【0065】
特に、樹脂バインダーをセルロース誘導体で構成する場合、樹脂バインダー全体に対するセルロース誘導体の割合は、例えば、0.5〜30重量%、好ましくは1〜25重量%、さらに好ましくは2〜20重量%(例えば、3〜15重量%)、特に4〜12重量%程度であってもよい。
【0066】
(硬化性樹脂)
前記のように、機能層は、耐擦傷性(ハードコート性)を付与又は向上するために、通常、さらに硬化性樹脂を含む塗膜が硬化した硬化膜である。すなわち、機能層は、活性エネルギー線(紫外線、電子線など)や熱などにより最終的に硬化し、硬化樹脂を形成する。そのため、機能性フィルムに耐擦傷性(ハードコート性)を付与でき、耐久性を向上できる。また、このような硬化性樹脂を含む塗膜の硬化膜とすることにより、機能層表面の凹凸形状を効率よく固定化できる。
【0067】
硬化性樹脂(又は硬化性樹脂前駆体)としては、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物が使用できる。
【0068】
前記硬化性樹脂(前駆体)としては、例えば、熱硬化性化合物又は樹脂[エポキシ基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)などを有する低分子量化合物(又はプレポリマー、例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの低分子量樹脂など)]、活性光線(紫外線など)により硬化可能な光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマー、プレポリマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示でき、光硬化性化合物は、EB(電子線)硬化性化合物などであってもよい。なお、光硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい光硬化性樹脂などの光硬化性化合物を、単に「光硬化性樹脂」という場合がある。硬化性樹脂前駆体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
前記光硬化性化合物は、通常、光硬化性基、例えば、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)や感光性基(シンナモイル基など)を有しており、特に重合性基を有する光硬化性化合物(例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂))が好ましい。光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0070】
重合性基を有する光硬化性化合物のうち、単量体としては、例えば、単官能性単量体[(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレートなどのC1−24アルキル(メタ)アクリレートなど)、シクロアルキル(メタ)アクリレート、橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなど)、グリシジル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニルなどのビニルエステル、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体など]、少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3〜6個程度の重合性不飽和結合を有する多官能性単量体など]が例示できる。
【0071】
重合性基を有する光硬化性化合物のうち、オリゴマー又は樹脂としては、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。ハイブリッド型光硬化性化合物としては、JSR(株)製、商品名「オプスター」などが上市されている。
【0072】
好ましい硬化性樹脂前駆体は、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物(モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい樹脂など)、EB硬化性化合物である。特に、実用的に有利な樹脂前駆体は、紫外線硬化性モノマー、紫外線硬化性樹脂である。さらに、耐擦傷性などの耐性を向上させるため、光硬化性樹脂は、分子中に2個以上(好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個程度)の重合性不飽和結合を有する化合物であるのが好ましい。
【0073】
硬化性樹脂の分子量としては、ポリマーとの相溶性を考慮して5000以下(例えば、100〜5000)、好ましくは2000以下(例えば、150〜2000)、さらに好ましくは1000以下(例えば、200〜1000)程度である。
【0074】
硬化性樹脂は、その種類に応じて、硬化剤と組み合わせて用いてもよい。例えば、熱硬化性樹脂は、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤と組み合わせて用いてもよく、光硬化性樹脂は光重合開始剤と組み合わせて用いてもよい。
【0075】
前記光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。
【0076】
光硬化剤などの硬化剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であり、3〜8重量部程度であってもよい。
【0077】
さらに、硬化性樹脂前駆体は硬化促進剤、架橋剤、熱重合禁止剤などを含んでいてもよい。例えば、光硬化性樹脂前駆体は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などと組み合わせてもよい。
【0078】
本発明では、前記のように樹脂バインダーが、相分離可能な複数の樹脂成分で構成されていればよく、樹脂バインダーと硬化性樹脂(特に複数の硬化性官能基を有するモノマー又はオリゴマー)とは、互いに相分離可能(又は非相溶性)であってもよく、互いに相分離しなくてもよい(又は相溶性であってもよい)。また、硬化性樹脂前駆体は、非相溶な複数のポリマーのうち、少なくとも1つのポリマーと加工温度付近で互いに相溶する組合せで使用される場合が多い。互いに非相溶な複数のポリマーを、例えば、第1のポリマーと第2のポリマーとで構成する場合、硬化性樹脂は、第1のポリマー及び第2のポリマーのうち少なくともいずれか一方の樹脂と相溶すればよく、両方のポリマー成分と相溶してもよい。両方のポリマー成分に相溶する場合、第1のポリマー及び硬化性樹脂を主成分とした混合物と、第2のポリマー及び硬化性樹脂を主成分とした混合物との少なくとも二相に相分離してもよい。
【0079】
相分離させる両者の相溶性が高い場合、溶媒を蒸発させるための乾燥過程で両者が有効に相分離せず、防眩層としての機能が低下する。
【0080】
なお、複数のポリマーの相分離性、及び複数のポリマーと硬化性モノマーとの相分離性は、それぞれ双方の成分に対する良溶媒を用いて均一溶液を調製し、溶媒を徐々に蒸発させる過程で、残存固形分が白濁するか否かを目視にて確認することにより簡便に判定できる。
【0081】
さらに、通常、複数のポリマーと、硬化性樹脂の硬化により生成した硬化又は架橋樹脂とは互いに屈折率が異なる。また、複数のポリマー(例えば、第1のポリマーと第2のポリマー)の屈折率も互いに異なる。本発明では、ポリマーと硬化又は架橋樹脂との屈折率の差、複数のポリマー(第1のポリマーと第2のポリマー)の屈折率の差は、例えば、0〜0.06、好ましくは0.0001〜0.05、さらに好ましくは0.001〜0.04程度であってもよい。このような屈折率差のポリマーを選択することにより、相分離したドメインもこのような屈折率差とすることができる。
【0082】
樹脂バインダー(又は複数の樹脂)と硬化性樹脂との割合(重量比)は、特に制限されず、例えば、前者/後者=5/95〜95/5程度の範囲から選択でき、表面硬度の観点から、好ましくは5/95〜80/20程度であり、さらに好ましくは10/90〜70/30、特に15/85〜60/40程度である。特に、樹脂バインダーの全部又は一部にセルロース誘導体を用いる場合、樹脂バインダー(又は複数の樹脂)と硬化性樹脂との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=10/90〜80/20、好ましくは20/80〜70/30、さらに好ましくは30/70〜60/40(例えば、35/65〜55/45)程度であってもよい。
【0083】
(中空シリカ粒子)
前記のように、前記機能層(又は塗膜)は、中空シリカ粒子を含んでいる。なお、本明細書において、中空シリカ粒子とは、内部に空洞部を有するシリカ粒子を意味する。
【0084】
中空シリカ粒子全体の形状としては、特に制限されず、例えば、球状、楕円体状、無定形状などが挙げられる。中空シリカ粒子の形状は、これらの形状のうち、通常、球状であってもよい。
【0085】
中空シリカ粒子において、空洞部の形状や大きさは、特に限定されず、粒子の屈折率が後述する範囲であればよい。
【0086】
中空シリカ粒子は、通常、粒子の外殻(シェル)に対して核(コア)としての1個の空洞部(球状粒子の場合、球状空洞部)を有していてもよく、粒子内に複数の空洞部(球状又は楕円体状など)を有していてもよい。このような中空シリカ粒子については、特開2001−233611号公報、特開2003−192994号公報などに記載されている。これらの文献に記載された中空シリカ粒子は、屈折率が低く、コロイド領域の粒子であり、分散性などに優れており、本発明では、これらの文献に記載された中空シリカ粒子を好ましく使用でき、これらの文献に記載された製造方法で中空シリカ粒子を製造できる。
【0087】
中空シリカ粒子の平均粒子径は、100nm以下(例えば、30nm〜90nm)の範囲から選択でき、例えば、40〜80nm、好ましくは50〜70nm、さらに好ましくは55〜65nm程度であってもよい。中空シリカ粒子の平均粒子径が小さすぎると、粒子の屈折率が高くなるに伴い機能層の屈折率も大きくなるため、明室コントラストが低下し、このため画面が白味を帯び易い。一方、中空シリカ粒子の平均粒子径が大きすぎると、粒子そのものが散乱体となり、不要な光の散乱の原因となることがあるため、この場合も画面が白味を帯び易い。
【0088】
中空シリカ粒子の屈折率(n)は、例えば、1.2〜1.25、好ましくは1.21〜1.24程度であってもよい。中空シリカ粒子の屈折率が低すぎると、生産性が低下し、中空シリカ粒子の屈折率が大きすぎると、機能層の屈折率も大きくなり、明室コントラストが低下し、画面が白味を帯び易い。
【0089】
中空シリカ粒子は、通常、表面処理された粒子[中空シリカ粒子(表面処理剤により表面処理された中空シリカ粒子)など]であってもよい。表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤などのカップリング剤が挙げられる。
【0090】
シランカップリング剤としては、例えば、アルコキシシリル基含有シランカップリング剤[例えば、テトラアルコキシシラン類(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラC1−4アルコキシシラン、テトラフェノキシシランなど)、トリアルコキシシラン類(例えば、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランなどのC1―12アルキルトリC1−4アルコキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのジC2―4アルキルジC1−4アルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどのアリールC1−4アルコキシシランなど)など]、ハロゲン含有シランカップリング剤[例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどのトリフルオロC2―4アルキルジC1−4アルコキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシランなどのパーフルオロアルキルC2―4アルキルジC1−4アルコキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシランなどのクロロC2―4アルキルトリC1―4アルコキシシラン、メチルトリクロロシランなどのC1―4アルキルトリクロロシランなど]、ビニル基含有シランカップリング剤(例えば、ビニルトリメトキシシランなどのビニルトリC1−4アルコキシシランなど)、エチレン性不飽和結合基含有シランカップリング剤[例えば、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシC2−4アルキルC1−4アルコキシシランなど]、エポキシ基含有シランカップリング剤[例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどの脂環式エポキシ基を有するC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシランなどのグリシジルオキシC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−(2−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシランなど]、アミノ基含有シランカップリング剤[例えば、2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノC2−4アルキルC1−4アルコキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシランN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシランなど]、メルカプト基含有シランカップリング剤(例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなど)、カルボキシル基含有シランカップリング剤(2−カルボキシエチルトリメトキシシランなどのカルボキシC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなど)、シラノール基含有シランカップリング剤(例えば、トリメチルシラノールなど)などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0091】
表面処理方法としては、慣用の方法(前述の特開2001−233611号公報、特開2003−192994号公報に記載の方法など)を利用でき、中空シリカ粒子の分散液(アルコールなどの分散液)にシランカップリング剤などのカップリング剤を加え、さらに、この分散液に水を添加し、必用に応じて酸またはアルカリなどの加水分解触媒を添加する方法などが利用できる。
【0092】
なお、このような中空シリカ粒子成分は、例えば、分散液の形態で入手でき、防眩性を付与するための塗工液に添加して使用する。このような分散液は、例えば、触媒化成工業(株)製「SH−1123SIV」などとして入手できる。
【0093】
機能層において、中空シリカ粒子の割合は、例えば、機能層(機能層の固形分全体)に対して、例えば、0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜10重量%、特に0.5〜5重量%程度であってもよい。また、機能層において、中空シリカ粒子の割合は、樹脂バインダー100重量部に対して、例えば、0.5〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは1.5〜20重量部、特に2〜15重量部程度であってもよい。
【0094】
(機能層の構造)
機能層は、樹脂バインダーおよび中空シリカ粒子で構成されており、通常、樹脂バインダー、硬化性樹脂、および中空シリカ粒子を含む塗膜が硬化した硬化層である。
【0095】
このような機能層は、通常、表面に凹凸構造(凹凸形状)を有しており、このような表面の凹凸構造は、通常、少なくとも前記複数の樹脂(又は樹脂バインダー)の相分離により形成されている。特に、前記凹凸構造は、複数の樹脂の相分離および対流現象(塗膜表面の対流現象)により形成された凹凸構造であってもよい。
【0096】
詳細には、機能層は、相分離した複数のドメイン及びマトリックスで構成されるとともに、その表面において、ドメインとマトリックスとの間が凹凸状に形成されている。すなわち、相分離の進行に伴って共連続相構造を形成し、さらに相分離が進行すると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状、楕円体状、長方体状などの独立相の海島構造)となる。従って、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(上記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成できる。本発明において、機能層中の相分離構造は、海島構造(液滴相構造、又は一方の相が独立または孤立した相構造)、共連続相構造(又は網目構造)であってもよく、共連続相構造と液滴相構造とが混在した中間的構造であってもよい。なお、ドメインは規則的又は周期的に形成されていてもよい。相分離構造(ドメイン)は、フィルム断面を透過型電子顕微鏡により観察できる。
【0097】
このように、表面に凹凸構造を有する機能層は、機能層を構成する材料(複数のポリマー、硬化性樹脂の硬化物)の屈折率差を、前述の範囲に調整できるため、微粒子を分散して表面凹凸形状を形成する方法と異なり、層の内部で散乱を引き起こすような散乱媒体を機能層中に実質上含まない。このため、層の内部におけるヘイズ(層の内部で散乱を引き起こす内部ヘイズ)は低く、例えば、0〜3%程度であり、好ましくは0〜2%(例えば、0.1〜1.5%)、さらに好ましくは0〜1%(例えば、0.1〜0.8%)程度である。なお、内部ヘイズは、透明粘着層を介して平滑な透明フィルムと機能層の表面凹凸形状とを貼り合わせて、ヘイズを測定することにより測定できる。
【0098】
本発明では、機能層における表面の複数のドメインは、機能層の製造において形成される対流セル(対流細胞)の配列に応じた比較的制御された間隔で形成されている。特に、その表面においても、対流セルとして、凹凸構造が形成されている。このような凹凸構造(ドメイン)は、閉じた凹凸状(ループ状)域であり、通常、このループ状域は、略閉じていればよい。また、前記ドメインは、略全てが独立していてもよいが、一部の隣接するドメインが細長い(幅の狭い)連絡部で接続されていてもよい。ドメインの形状は、特に限定されず、不定形、円形、楕円形、多角形などであり、通常、円形又は楕円形である。
【0099】
さらに、セル状回転対流によって形成されたドメイン(表面における凹凸構造)は、通常、実質的に規則性又は周期性を有している。このような表面凹凸構造における平均凸間距離[隣接する凸部の頂部間(ドメイン間)におけるピッチ]は50〜200μm程度の範囲から選択でき、例えば、100〜150μm、好ましくは120〜140μm程度である。平均凸間距離は、例えば、対流発生時の塗膜厚みによって制御可能である。
【0100】
さらに、機能層は、表面における各ドメイン内には少なくとも1つの凹凸部(内部セル)が形成されていてもよく、各ドメインの表面形状としては、機能層の面方向に対して垂直な方向から見て、例えば、二重円状であってもよく、各ドメインを形成する円の中に複数の小円を内包する円状であってもよい。すなわち、各ドメイン内に形成された凹凸部は、対流セルの中央部又はその周辺部に相当する位置に、上昇流によって隆起された凸部(微小隆起領域)又は陥没した凹部(微小陥没領域)として形成されていてもよい。この凹凸部も閉じたループ状(内ループ)であり、通常、この内ループは、略閉じていてもよい。また、内ループも、独立している場合が多いが、一部の隣接するループは、細長い(幅の狭い)連絡部で接続されていてもよい。特に、一個のドメイン内に1〜数個(例えば、1〜3個)程度の凹凸部(特に点状凸部)が形成されていてもよい。凹凸部(内ループ)の形状も、特に限定されず、不定形、円形、楕円形、多角形などであり、通常、円形又は楕円形である。なお、一個の対流セル内につき、上昇流又は相分離構造による微小凹凸部が形成されると、光散乱特性が向上するため、映り込み画像のぎらつきを抑制できる。さらに、細胞セルの内ループの間隔がより均等になり、ドメインが均一な凹凸形状を形成するため、特に好ましい。
【0101】
内ループ(微小凹凸部)の大きさ(径)は、例えば、3〜150μm程度であってもよく、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜50μm(特に15〜40μm)程度である。内ループの面積比は、外ループ内の1〜80%、好ましくは3〜50%、さらに好ましくは5〜40%(特に10〜30%)程度である。
【0102】
(低屈折率層)
そして、本発明の機能性フィルムでは、機能層において、中空シリカ粒子が、機能層の表面側(機能層の少なくとも一方の表面側、特に基材と反対側の表面側)に偏在する形で存在している。このような中空シリカ粒子を機能層の少なくとも一方の面に偏在させることにより、液晶表示装置などの表示装置において、低屈折率層を最表面となるように配設した場合などに、外部からの光(外部光源など)が、防眩性フィルムの表面で反射するのを有効に防止できる。すなわち、前記機能層(又は硬化層)は、反射防止性(およびハードコート性)が付与されているため、反射防止機能を有する防眩層(または防眩性ハードコート層)である。
【0103】
中空シリカ粒子は、通常、前記表面の凹凸構造に中空シリカ粒子が追随した形態で偏在していてもよい(又は前記表面の凹凸構造に沿って中空シリカ粒子が積層していてもよい)。すなわち、機能層は、樹脂バインダーの相分離により形成された表面凹凸構造を含む表層部分に、中空シリカ粒子の層[中空シリカ粒子が偏在又は偏在して形成された層(低屈折率層)]を有していてもよい。このような低屈折率層(中空シリカ粒子層)は、いわば、中空シリカ粒子が、基材フィルムの反対側に析出することによって形成される中空シリカ粒子偏在層に相当する。
【0104】
なお、このような機能層では、低屈折率層に中空シリカ粒子が偏在していればよく、表層部分以外においても中空シリカ粒子が含まれていてもよい。なお、低屈折率層は、通常、厚み方向に1層以上の中空シリカ粒子が積層することによって形成されている。
【0105】
低屈折率層(又は表面の凹凸構造を含み、中空シリカ粒子が積層された表層)の厚みは、例えば、70〜120nm、好ましくは80〜100nm、さらに好ましくは85〜95nm程度であってもよい。低屈折率層の厚みは中空シリカ粒子の粒径及びその表面処理によって制御することが可能である。中空シリカ粒子の粒径が大きいと厚みは大きくなり、粒径が小さいと厚みは小さくなる。なお、低屈折率層の厚みが小さすぎると、フレネルの原理より外れた膜厚となる場合があり、反射防止性能が低下したり、明室コントラストが低下することにより画面が白味を帯び易い。一方、低屈折率層の厚みが大きすぎても、フレネルの原理より外れた膜厚となる場合があり、反射防止性能が低下したり、明室コントラストが低下することにより画面が白味を帯び易い。
【0106】
このような機能層においては、機能層の表面のほとんど又は全部が中空シリカ粒子で被覆されている。例えば、機能層の一方の面(特に、基材フィルムと反対側の面)の表面積の90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上に、中空シリカ粒子が存在していてもよい。
【0107】
なお、中空シリカ粒子が表面に偏在する理由については、定かではないが、下記の3種類の駆動力が関係していると考えられる。
【0108】
(i)中空シリカ粒子(シランカップリング剤などにより表面処理された中空シリカ粒子など)の表面自由エネルギーが塗工液中の他成分より低くなる場合、塗膜中から中空シリカ粒子の表面への移動が生じる
(ii)中空シリカ粒子(シランカップリング剤などにより表面処理された中空シリカ粒子など)が、塗工液中の溶剤に対する親和性を有している場合、塗膜からの溶剤の蒸発に伴って、中空シリカ粒子が表面へ移行(又は浮上)する
(iii)中空シリカ粒子(シランカップリング剤などにより表面処理された中空シリカ粒子など)が、塗布液中のすべての樹脂成分と非相溶性を示す場合、塗膜の乾燥による塗膜中の含有溶剤量の減少に伴って、中空シリカ粒子が樹脂相(硬化層)から押し出されるとともに、樹脂バインダーの相分離の進行によって硬化層からの押し出しがさらに促進される。
【0109】
中空シリカ粒子が表面に偏在する際には、上記の駆動力のうち少なくとも一つが作用するものと考えられる。
【0110】
なお、従来技術において、防眩層と低反射率層とを2回の塗布によって作製する場合、中空シリカ粒子を表面凹凸に完全に追随させることは困難である。例えば、中空シリカ粒子を含む塗工液が防眩層に塗布された後、特に凸部に存在する塗工液は、表面張力によるレベリングや重力の影響により凹部に移動しやすいため、凸部は中空シリカ粒子によって被覆されにくい。そのため、反射率を充分に低下させることが出来ない。また、表面凹凸を完全に被覆しようと中空シリカ粒子を多量に使用した場合、表面凹凸そのものが中空シリカ粒子によって埋められてしまい、防眩性が失われてしまうことがある。
【0111】
一方、本発明では、1回の塗工によって、中空シリカ粒子は塗膜の内部から表面張力や相分離などの作用によって表面へ偏在するため、表面凹凸を効率よく被覆することが可能である。この場合、中空シリカ粒子は、前記のように、通常、表面凹凸に追随して被覆するため、効率的に反射防止機能を付与することができる。
【0112】
また、基材と反対側の表面に透明微粒子を突出させて表面凹凸を形成するタイプの防眩膜においては、微粒子が突出している部分を中空シリカ粒子で被覆することは不可能であるため、表面を十分に中空シリカ粒子で被覆することはできず、充分に反射率を低下させることができない。中空シリカ粒子の性状によっては、凹凸付与のための微粒子と凝集物を形成する場合もある。
【0113】
これに対し、本発明のように、相分離(及び対流)によって表面凹凸を形成するタイプの防眩膜においては、中空シリカ粒子の運動を妨害する前記微粒子のような異物が無いため、表面に効率よく中空シリカ粒子を偏在させることが可能であり、反射防止機能を高めることができる。
【0114】
機能層の厚みは、例えば、0.3〜20μm程度、好ましくは1〜18μm(例えば、3〜16μm)程度であってもよく、通常、5〜15μm(特に7〜13μm)程度である。
【0115】
機能性フィルム(又は機能層)表面の粗さとしては、表面の平均傾斜角が0.5〜1.5°程度の範囲であってもよく、例えば、0.7〜1°、好ましくは0.8〜0.95°程度である。平均傾斜角はJIS B0601に準拠して、接触式表面粗さ計(東京精密(株)製、商品名「surfcom570A」)を用いて測定できる。
【0116】
また、本発明の機能性フィルム(又は機能層)の全光線透過率は、例えば、70〜100%、好ましくは80〜99%、さらに好ましくは85〜98%(特に88〜97%)程度である。
【0117】
さらに、機能性フィルム(又は機能層)のヘイズは、1〜10%程度の範囲から選択でき、例えば、5〜6.5%、好ましくは5.5〜6%程度である。
【0118】
なお、ヘイズ及び全光線透過率は、JIS K7136に準拠して、日本電色工業(株)製、NDH−5000Wヘイズメーターを用いて測定できる。
【0119】
また、本発明の機能性フィルム(又は機能層)の写像(透過像)鮮明度は、0.5mm幅の光学櫛を使用した場合、10〜70%程度の範囲から選択でき、例えば、20〜30%、好ましくは25〜30%程度である。
【0120】
写像鮮明度とは、フィルムを透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。写像鮮明度は、フィルムからの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、フィルムが透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。写像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
【0121】
C(%)=[(M−m)/(M+m)]×100
すなわち、Cの値が100%に近づく程、防眩性フィルムによる像のボケが小さい[参考文献;須賀、三田村,塗装技術,1985年7月号]。
【0122】
前記写像鮮明度測定の測定装置としては、写像性測定器(スガ試験機(株)製、ICM−1DP)が使用できる。光学櫛としては、0.125〜2mm幅の光学櫛を用いることができる。
【0123】
写像鮮明度が前記範囲にあると、映り込みの輪郭を十分ぼやかすことができるため、良好な防眩性を付与できる。写像鮮明度が高すぎると、映り込み防止効果が低下する。一方、写像鮮明度が小さすぎると、前記の映り込みは防止できるが、画像の鮮明さが低下する。
【0124】
[機能性フィルムの製造方法]
本発明の機能性フィルム(又は機能層)は、例えば、基材(基材フィルム)の上に、前記樹脂バインダー、前記硬化性樹脂および前記中空シリカ粒子を含む塗布液(塗工液、混合液)を塗布(塗工)する工程(塗布工程)と、この工程により形成された未乾燥の塗膜(未乾燥塗膜、湿潤塗膜)を乾燥させる工程(乾燥工程)と、この工程により乾燥された塗膜(乾燥塗膜)を硬化する工程(硬化工程)とを経ることにより製造される。なお、通常、乾燥工程において、複数の樹脂の相分離(および対流現象)が生じ、表面凹凸構造が形成される。そして、中空シリカ粒子は、塗膜の乾燥過程において、樹脂の相分離や表面自由エネルギーの低さなどを駆動力として、表面(基材と反対側の表面)に偏在する。
【0125】
詳細には、機能層は、前記樹脂バインダーと、前記硬化性樹脂と、前記中空シリカ粒子と、溶媒とを含む混合液(特に混合溶液)を、基材(基材フィルム)上に塗布し、湿潤(未乾燥)塗膜を乾燥させる工程において、湿潤(未乾燥)塗膜に相分離[特に相分離および及び対流現象(細胞状回転対流など)]を発生させ、硬化させることにより製造できる。本発明では、溶媒として沸点100℃以上の溶媒を用い、乾燥工程で、湿潤塗膜に細胞状回転対流(対流セル)及び相分離を発生させた後、その塗膜を硬化して製造するのが好ましい。なお、前記基材として剥離性基材を用いる場合には、基材から機能層を構成する塗膜を剥離して、機能性フィルムとしてもよい。
【0126】
(細胞状回転対流)
本発明では、前記塗布液又は混合液(溶液)を塗布した後、通常、細胞状回転対流により、塗膜表面を隆起させて、表面に規則的又は周期的な凹凸形状を形成する。一般に、回転対流は、溶媒の蒸発乾燥とともに塗膜の表面付近が蒸発熱により冷却された結果、塗膜の上層と下層との間で限界以上の温度差が生じることにより発生する。このような対流は、ベナール型対流と称されている。また、ベナール型対流は、ベナールによって発見され、レイリーによって理論体系付けられたため、ベナール・レイリー対流とも称される。その限界温度差ΔTは、塗膜の厚さd、塗膜(溶液)の動粘性係数ν、塗膜の温度伝導率κ、塗膜の体積膨張係数α、重力加速度gによって決定される。対流は、以下の式で定義されるレイリー数Raが、特定の臨界値を超えると発生する。
【0127】
Ra=(α・g・ΔT・d)/(κ・ν)
このようにして発生した対流は、規則正しく上昇運動と下降運動とが繰り返され、膜表面に規則的又は周期的な凹凸形状が細胞状に配列される。この細胞のアスペクト比(塗布方向/厚み方向)は2/1〜3/1程度になることが知られている。
【0128】
また、細胞状回転対流の方式は特に限定されず、他の対流であってもよく、例えば、表面張力の不均一分布によるマランゴーニ対流(密度差対流)であってもよい。
【0129】
(対流と相分離の併用)
本発明では、このように回転対流を発生させ、対流の流れ及び固形分濃度差によって生じる表面の凹凸形状を形成するが、このような対流とともに、互いに相分離性を有する成分を含有する溶液を用いて前記成分を相分離し、相分離構造を形成してもよい。対流と相分離との併用における詳しいメカニズムは解明できていないが、次のように推定できる。
【0130】
対流と相分離とを併用することにより、まず、塗布後に対流細胞が発生する。次に、それぞれの対流細胞内で相分離が発生し、相分離の構造は時間とともに巨大化していくが、対流の細胞壁で相分離の成長は止まる。その結果として、対流細胞のサイズ、配列に応じた間隔に制御され、相分離構造に伴う良好な形・高さの凹凸形状が形成される。すなわち、形、配列、大きさともに、充分に制御された機能性フィルムが得られる。
【0131】
(塗布液)
本発明では、前記塗布液(又は混合液、特に溶液)中の溶媒を蒸発させることにより、前記対流や相分離を行うことができる。特に、混合液(特に溶液)に含まれる成分の中でも、溶媒は、安定的に対流を発生させるために必要不可欠である。それは、蒸発に伴う気化熱により塗膜表面の温度を低下させる作用を有するからであり、さらに、発生した対流を滞りなく流すための流動性の作用を有するためである。
【0132】
溶媒は、用いる樹脂バインダー及び硬化性樹脂の種類及び溶解性に応じて選択でき、混合溶媒の場合、少なくとも1種類の固形分(樹脂バインダー、硬化性樹脂、反応開始剤、その他添加剤などから選択された少なくとも1種の成分)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0133】
なお、特開2004−126495号公報には、本発明と同様に、少なくとも1つのポリマーと少なくとも一つの硬化性樹脂とを均一に溶解した溶液から溶媒を蒸発させてシートを製造する方法において、適当な条件でスピノーダル分解させ、その後前記前駆体を硬化させることにより防眩層を作製する方法が開示されている。この文献では、スピノーダル分解での相分離により、防眩性フィルムの表面に凹凸形状を形成する方法は開示されているが、細胞状回転対流については記載されていない。
【0134】
本発明では、このような対流セルを発生させるために、溶媒として、常圧で沸点100℃以上の溶媒(高沸点溶媒ということがある)を用いるのが好ましい。さらに、対流セルを発生させるためには、溶媒が少なくとも2種の沸点の異なる溶媒で構成されているのが好ましい。また、高沸点溶媒の沸点は100℃以上であり、通常、100〜200℃程度であり、好ましくは105〜150℃、さらに好ましくは110〜130℃程度である。特に、対流セルと相分離とを併用させる観点から、少なくとも1種の沸点100℃以上の溶媒と、少なくとも1種の沸点100℃未満(例えば、35〜99℃、好ましくは40〜95℃、さらに好ましくは50〜85℃程度)の溶媒とを組み合わせて用いるのが好ましい。このような混合溶媒を用いると、低沸点の溶媒が、蒸発に伴う上層と下層との温度差を発生させ、高沸点の溶媒が塗膜中に残留し、流動性を維持する。
【0135】
常圧で沸点100℃以上の溶媒としては、例えば、アルコール類(ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールなどのC4−8アルキルアルコールなど)、アルコキシアルコール類(メトキシプロパノール、ブトキシエタノールなどのC1−6アルコキシC2−6アルキルアルコールなど)、アルキレングリコール類(エチレングリコールやプロピレングリコールなどのC2−4アルキレングリコールなど)、ケトン類(シクロヘキサノンなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ブタノールなどのC4−8アルキルアルコール、メトキシプロパノールやブトキシエタノールなどのC1−6アルコキシC2−6アルキルアルコール、エチレングリコールなどのC2−4アルキレングリコールなどが好ましい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0136】
沸点の異なる溶媒の比率としては、特に限定されないが、沸点100℃以上の溶媒と、沸点100℃未満の溶媒を併用した場合(それぞれ、2種以上併用した場合は合計の重量比として)、例えば、前者/後者=10/90〜90/10、好ましくは10/90〜80/20、さらに好ましくは15/85〜70/30(特に20/80〜60/40程度)である。
【0137】
また、混合液又は塗布液を基材(透明支持体)に塗布する場合、透明支持体の種類に応じて、透明支持体を溶解や侵食、又は膨潤させない溶媒を選択してもよい。例えば、透明支持体としてトリアセチルセルロースフィルムを用いる場合、混合液又は塗布液の溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、トルエンなどを用いると、フィルムの性質を損なうことなく、機能層を形成できる。
【0138】
本発明では、対流に伴い隆起した表面の凹凸形状が保持でき、かつ対流が滞りなく流れる粘度とするために、塗布液(又は混合液、特に混合溶液)の固形分濃度は、例えば、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜35重量%程度である。
【0139】
なお、塗布液において、固形分の割合は、前記と同様の範囲から選択できる。例えば、樹脂バインダーと硬化性樹脂との割合(重量比)は、前者/後者=5/95〜95/5、好ましくは5/95〜80/20程度であり、さらに好ましくは10/90〜70/30、特に15/85〜60/40程度であってもよい。特に、樹脂バインダーの全部又は一部にセルロース誘導体を用いる場合、樹脂バインダーと硬化性樹脂との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=10/90〜80/20、好ましくは20/80〜70/30、さらに好ましくは30/70〜60/40(例えば、35/65〜55/45)程度であってもよい。また、塗布液において、中空シリカ粒子の割合は、固形分全体に対して、例えば、0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜10重量%、特に0.5〜5重量%程度であってもよい。
【0140】
このような塗布液は、前記樹脂バインダーと、前記硬化性樹脂と、前記中空シリカ粒子とで構成されており、機能性フィルムを形成するための塗布液として有用である。そのため、本発明には、このような塗布液も含まれる。
【0141】
(塗布厚み)
所望のサイズの細胞状回転対流を発生させるためには、混合液(溶液)の塗布厚み(未乾燥塗膜の厚み)は、例えば、10〜200μm、好ましくは15〜100μm、さらに好ましくは20〜50μm程度である。対流細胞のアスペクト比が2〜3になることを利用して、例えば、凹凸形状の凸間距離を100μm程度にする場合は、30〜80μm程度の塗布厚みで、基材上に溶液を塗布すれば、溶液中の低沸点溶媒の一部が蒸発することにより、塗膜厚みが薄くなると同時に塗膜の上層と下層との間で温度差が発生し、50μm程度のサイズを有する細胞状回転対流を発生させることができる。
【0142】
(塗布方法)
塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。一般的に、防眩層の製造において、製膜方向(フィルムのMD方向、又はバーコーターなどのコーターを動かした方向)に細胞状対流は並び易い傾向がある。
【0143】
(乾燥温度)
前記混合液(特に溶液)を流延又は塗布した後、溶媒の沸点よりも低い温度(例えば、高沸点溶媒の沸点よりも1〜120℃、好ましくは5〜80℃、特に10〜60℃程度低い温度)で溶媒を蒸発させることにより、細胞状回転対流および相分離を誘起するのが好ましい。例えば、溶媒の沸点に応じて、30〜200℃(例えば、30〜100℃)、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜100℃程度の温度で乾燥させてもよい。
【0144】
また、細胞状回転対流を発生させるためには、支持体上に塗布して流延又は塗布させた後、直ちにオーブンなどのなどの乾燥機に投入して乾燥させるのではなく、一定時間(例えば、1秒〜1分間、好ましくは3〜30秒間、さらに好ましくは5〜20秒間程度)、常温又は室温(例えば、0〜40℃、好ましくは5〜30℃程度)で放置した後に、乾燥機に投入するのが好ましい。
【0145】
また、乾燥風量は、特に限定されないが、風量が強すぎると、回転対流が充分に発生する前に乾燥して固化するため、乾燥風量は50m/分以下(例えば、1〜50m/分)、好ましくは1〜30m/分、さらに好ましくは1〜20m/分程度であってもよい。乾燥風を防眩性フィルムに当てる角度は、特に限定されず、例えば、フィルムに対して平行であってもよいし、垂直であってもよい。
【0146】
特に、細胞状回転対流を発生させるために、溶媒存在下で、対流セルの形成を阻害しない外力又は相分離域での対流を阻害しない外力、例えば、無風又は低風量で乾燥するのが好ましい。すなわち、具体的には、前述の乾燥温度を有する乾燥器内で、無風又は低風量(例えば、0.1〜8m/分、好ましくは0.5〜6m/分、さらに好ましくは1〜5m/分程度)で加熱することにより、細胞状回転対流を発生することができる。なお、低風量とする代わりに、乾燥風をフィルムに当てる角度を、例えば、70°以下、好ましくは5〜60°、さらに好ましくは10〜50°程度に低めに設定してもよい。無風又は低風量での加熱時間は、例えば、1秒〜1分、好ましくは3〜30秒、さらに好ましくは5〜20秒(特に7秒〜15秒)程度である。
【0147】
(硬化処理)
前記混合液(溶液)を乾燥した後、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)により、塗膜を硬化又は架橋させる。硬化方法は、硬化性樹脂の種類に応じて選択できるが、通常、紫外線や電子線などの光照射により硬化する方法が用いられる。汎用的な露光源は、通常、紫外線照射装置である。なお、光照射は、必要であれば、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0148】
[光学部材]
本発明の機能性フィルムは、相分離(および細胞状回転対流)により、各凸部が均一に制御された凹凸形状を有しており、最表層には、中空シリカ粒子が偏在した低屈折率層が形成されているため、均質で高品位な防眩性を有している。さらに、本発明の機能性フィルムは、高い耐擦傷性(ハードコート性)を有するとともに、フィルム内部に散乱媒体を実質上含まないため、外光により白味を帯びることなく、高い明室コントラストを実現できる。そのため、本発明の機能性フィルムは、光学部材などの用途に適しており、前記支持体を、種々の光学部材を形成するための透明ポリマーフィルムで構成することもできる。透明ポリマーフィルムと組み合わせて得られた機能性フィルムは、そのまま光学部材として用いてもよく、光学要素(例えば、偏光板、位相差板、導光板などの光路内に配設される種々の光学要素)と組み合わせて光学部材を形成してもよい。すなわち、光学要素の少なくとも一方の光路面に前記機能性フィルムを配設又は積層してもよい。例えば、位相差板の少なくとも一方の面に機能性フィルムを積層してもよく、導光板の出射面に機能性フィルムを配設又は積層してもよい。
【0149】
機能性フィルムは、耐擦傷性が付与されているため、保護フィルムとしても機能させることができる。そのため、本発明の機能性フィルムは、偏光板の2枚の保護フィルムのうち少なくとも一方の保護フィルムに代えて、機能性フィルムを用いた積層体(光学部材)、すなわち、偏光板の少なくとも一方の面に機能性フィルムが積層された積層体(光学部材)として利用するのに適している。
【0150】
[表示装置]
本発明の機能性フィルムは、種々の表示装置、例えば、液晶表示(LCD)装置、陰極管表示装置、有機又は無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、リアプロジェクションテレビディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、タッチパネル付き表示装置などの表示装置に使用できる。そのため、本発明には、前記機能性フィルムを備えた表示装置も含まれる。
【0151】
これらの表示装置は、前記機能性フィルムや光学部材(特に偏光板と防眩性フィルムとの積層体など)を光学要素として備えている。特に、高精細又は高精彩液晶ディスプレイなどの大型液晶表示装置に装着しても映り込みを防止できるため、液晶表示装置などに好ましく使用できる。
【0152】
図1は、本発明の機能性フィルムと偏光板とを積層させた光学部材の概略断面図である。この光学部材は、両面に保護層3及び5が形成された偏光層4、保護層3の上に形成された機能層2で構成されており、この機能層2の表層には中空シリカ粒子が偏在した低屈折率層1が形成されている。この光学部材において、偏光層4は、ポリビニルアルコールを延伸し、ヨウ素化合物又は染料で染色したフィルムであり、保護層3及び5は、透明樹脂、例えば、トリアセチルセルロースなどのセルロースアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂などのアクリル系樹脂、ノルボルネン樹脂などの環状ポリレフィン系樹脂などで構成されている。
【0153】
なお、液晶表示装置は、外部光を利用して、液晶セルを備えた表示ユニットを照明する反射型液晶表示装置であってもよく、表示ユニットを照明するためのバックライトユニットを備えた透過型液晶表示装置であってもよい。前記反射型液晶表示装置では、外部からの入射光を、表示ユニットを介して取り込み、表示ユニットを透過した透過光を反射部材により反射して表示ユニットを照明できる。反射型液晶表示装置では、前記反射部材から前方の光路内に前記防眩性フィルムや光学部材(特に偏光板と防眩性フィルムとの積層体)を配設できる。例えば、反射部材と表示ユニットとの間、表示ユニットの前面などに前記機能性フィルムや光学部材を配設又は積層できる。
【0154】
液晶テレビなどの透過型液晶表示装置は、主に直下型のバックライトユニットを採用している。バックライトユニットは、光源(冷陰極管や熱陰極管などの管状光源、発光ダイオードなどの点状光源など)からの光を拡散して、均一にする目的で、拡散板を備えている。さらに、拡散板の前面側には、正面輝度を上げるために、プリズムシートを配設してもよい。このプリズムシートは、断面形状が略二等辺三角形状である三角柱状プリズム単位が、平行に並列して複数のプリズム列を形成したシートであり、環状オレフィンなどのオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリル酸メチル系樹脂などの透明樹脂で構成されている。プリズムシートとしては、例えば、住友3M(株)製、BEFシリーズなどが市販されている。本発明では、プリズムシートは、プリズム単位が略二等辺三角形状であれば、特に限定されないが、二等辺三角形の頂角部分が、R(アール)をつけて曲面状に形成されたシートよりも、頂角部分が、アールでなく、線状となる形状の方が好ましい。具体的に、アールが存在する場合であっても、アール部分の大きさ(半径)は、例えば、5μm以下、好ましくは1μm以下であってもよい。頂角は、通常、略90°程度である。
【0155】
さらに、プリズムシートの前面側には、偏光反射シートを配設してもよい。偏光反射シートは、例えば、ポリエチレン系樹脂で構成あれた多層膜であってもよく、光の利用効率を向上させる役割を有している。偏光反射シートとしては、例えば、住友3M(株)製、商品名「DBEF」などが上市されている。
【0156】
液晶表示装置において、液晶モードは、特に限定されず、例えば、VA(Vertically Aligned)モード、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、IPSモード(In−Plane Switching)、OCB(Optical Compensuted Bend)モードなどであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、防眩性、ハードコート性及び光散乱性が必要とされる種々の用途、例えば、前記光学部材や、液晶表示装置(特に高精細又は高精彩表示装置)などの表示装置(又はその光学要素)として有用である。特に、防眩性フィルムと液晶パネルとをマッチングさせることにより、明室でのコントラスト感を向上させ、反射色をニュートラルな黒表示を実現できるため、液晶表示装置、PDP、有機ELなどに用いられる機能性フィルム(防眩性フィルム)として特に適している。
【実施例】
【0158】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0159】
実施例及び参考例で得られた防眩性フィルムは、以下の項目で評価した。
【0160】
[全光線透過率およびヘイズ]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いて測定した。
【0161】
[写像(透過像)鮮明度]
防眩性フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM−1DP」)を用いて、光学櫛(櫛歯の幅=0.5mm)を用いて、JIS K7105に基づいて測定した。写像鮮明度は、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定した。
【0162】
防眩性フィルムの裏側に黒フィルムを貼り合せ、レーザー反射顕微鏡にてフィルム表面を撮影し、表面凹凸形状の有無を確認した。
【0163】
[鉛筆硬度]
硬度の指標として、JIS K5400に準拠して、防眩性フィルムの鉛筆硬度を評価した。
【0164】
[耐擦傷性]
耐擦傷性の指標として、♯0000のスチールウールを加重250g/cmで防眩性フィルムの上を10往復させ、フィルム上に生じた傷の本数を測定し、以下の基準で評価した。
【0165】
◎:2本以下
○:3〜4本
△:5〜6本
×:7本以上。
【0166】
[実装評価]
図2に示すように、液晶セル22の両面に偏光板21と偏光板23とを偏光板の吸収軸が直角となるように貼り合わせて液晶パネルを作製した。この偏光板21は、基材フィルム(保護層)21Cの上に、機能層21Bを積層し、基材防眩層フィルム21Cの下に偏光層21D及び保護層21Eを積層している。なお、機能層21Bの表面層には、中空シリカ粒子が偏在した粒子層(低屈折率層)21Aが形成されている。前記偏光板23は、偏光層23Bの両面に保護層23A及び23Cが形成されている。
【0167】
なお、図2においては、機能性フィルム(防眩性フィルム)としては、実施例で得られた機能性フィルムであるが、参考例では、参考例で得られた機能性フィルムとなる。
【0168】
この液晶パネルを用いて、図3に示すように、バックライト光源35の上に、拡散フィルム34、プリズムシート33、偏光反射フィルム32、液晶パネル31をこの順で配置し、液晶パネルとバックライトの駆動回路とを備えた液晶表示装置を作製した。すなわち、この液晶表示装置においては、液晶パネル31の表側に防眩性フィルムと積層した偏光板21が積層され、吸収軸が直交するように裏側に別の偏光層24が積層されている。この液晶表示装置において、液晶モードは、垂直配向モード(VAモード)を適用した。垂直配向モードの液晶パネルは、面内位相差が略ゼロの状態で黒表示を行うパネルである。このような液晶表示装置を用いて、液晶パネルに電圧を印加し、以下の評価を行った。
なお、プリズムシート33の概略斜視図を図4に示す。このシートは、プリズム部の二等辺三角形の頂角部分が、略90°に形成されたシートであり、例えば、住友3M(株)製、商品名「BEFIII」が該当し、市販されている。一方、プリズム部の二等辺三角形の頂角部分が、アールRをつけて曲面状に形成されたシートとしては、住友3M(株)製、商品名「RBEF」が市販されている。
【0169】
また、バックライト光源35の概略斜視図を図5に示す。このバックライト光源は、管状光源51が並列して配設された直下型のバックライトユニットである。
【0170】
(防眩性)
蛍光管がむき出しの蛍光灯をパネル表面に反射させて、蛍光管の輪郭がぼかされているかどうかを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0171】
◎:蛍光灯の輪郭が全く映り込まない
○:蛍光灯の輪郭の映り込みはわずかに認められるが、気にならないレベルである
△:蛍光灯の輪郭の映り込みが認められ、気になるレベルである
×:強く蛍光灯の輪郭が映り込み、非常に気になる。
【0172】
(反射像の黒さ)
明室環境で、パネル表面に顔を映り込ませ、顔が充分に暗く、目鼻が判別できないかどうかを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0173】
◎:顔が充分に暗く、顔の輪郭が全く映り込まない
○:顔の映り込みはわずかに認められるが、目鼻が判別できない
△:顔の映り込みが認められ、目鼻が判別できる
×:強く顔が映り込み、非常に気になる。
【0174】
(黒味)
液晶パネルの表面は、床に対し、略垂直に設置し、500ルクス(lx)以上で、かつ、左右に白い壁がある明室環境において、黒表示をしたとき、表面が黒く感じるかどうかを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0175】
◎:表面が非常に黒く感じる
○:表面が黒く感じる
△:表面があまり黒く感じない
×:表面が殆ど黒く感じない。
【0176】
(白表示の明るさ)
液晶パネルを白単色表示して、明るさを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0177】
◎:非常に明るい
○:明るい
△:あまり明るくない
×:全く明るくない。
【0178】
また、以下に、実施例および参考例で使用した中空シリカ粒子分散液および塗布液の組成およびその調製方法を示す。
【0179】
(中空シリカ分散液)
メチルエチルケトンに、中空シリカ粒子(平均粒子径60nm、屈折率1.26)が20重量%の割合で分散した分散液(触媒化成工業(株)製、「SH−1151SIV」)を用いた。
【0180】
(塗布液1の調製)
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP、固形分濃度44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール溶液)14.1重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000;イーストマン社製、CAP−482−20)1.5重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、DPHA)11.3重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、PETIA)5.7重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.9重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア907)0.4重量部、及び中空シリカ分散液(固形分濃度20重量%)2.5重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)35.1重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)21.8重量部の混合溶媒に溶解した。なお、セルロースアセテートプロピオネートとアクリル樹脂は非相溶であり、得られた溶液は濃縮とともに相分離性を示す。
【0181】
(塗布液2の調製)
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP、固形分濃度44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール溶液)14.1重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000;イーストマン社製、CAP−482−20)1.5重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、DPHA)11.3重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、PETIA)5.7重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.9重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア907)0.4重量部、及び中空シリカ分散液(固形分濃度20重量%)2.5重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)42.5重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)14.3重量部の混合溶媒に溶解した。なお、セルロースアセテートプロピオネートとアクリル樹脂は非相溶であり、得られた溶液は濃縮とともに相分離性を示す。
【0182】
(塗布液3の調製)
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP、固形分濃度44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール溶液)14.1重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000;イーストマン社製、CAP−482−20)1.5重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、DPHA)11.3重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、PETIA)5.7重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.9重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア907)0.4重量部、及び中空シリカ分散液(固形分濃度20重量%)2.5重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)49.9重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)6.9重量部の混合溶媒に溶解した。なお、セルロースアセテートプロピオネートとアクリル樹脂は非相溶であり、得られた溶液は濃縮とともに相分離性を示す。
【0183】
(塗布液4の調製)
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP、固形分濃度44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール溶液)14.1重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000;イーストマン社製、CAP−482−20)1.5重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、DPHA)11.3重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、PETIA)5.7重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.9重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア907)0.4重量部、及び中空シリカ分散液(固形分濃度20重量%)3.7重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)34.1重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)21.8重量部の混合溶媒に溶解した。なお、セルロースアセテートプロピオネートとアクリル樹脂は非相溶であり、得られた溶液は濃縮とともに相分離性を示す。
【0184】
(塗布液5の調製)
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP、固形分濃度44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール溶液)14.1重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000;イーストマン社製、CAP−482−20)1.5重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、DPHA)11.3重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、PETIA)5.7重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.9重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア907)0.4重量部、及び中空シリカ分散液(固形分濃度20重量%)1.2重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)36.0重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)21.8重量部の混合溶媒に溶解した。なお、セルロースアセテートプロピオネートとアクリル樹脂は非相溶であり、得られた溶液は濃縮とともに相分離性を示す。
【0185】
(塗布液6の調製)
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP、固形分濃度44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール溶液)14.1重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000;イーストマン社製、CAP−482−20)1.5重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、DPHA)11.3重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、PETIA)5.7重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.9重量部、及び光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア907)0.4重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)37.0重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)21.8重量部の混合溶媒に溶解した。なお、セルロースアセテートプロピオネートとアクリル樹脂は非相溶であり、得られた溶液は濃縮とともに相分離性を示す。
【0186】
(塗布液7の調製)
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP、固形分濃度44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール溶液)14.1重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000;イーストマン社製、CAP−482−20)1.5重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、DPHA)11.4重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、PETIA)2.5重量部、多官能ハイブリッド系UV硬化剤(JSR(株)製、Z7501)6.2重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.9重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア907)0.4重量部、及び中空シリカ分散液(固形分濃度20重量%)2.5重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)32.1重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)21.8重量部の混合溶媒に溶解した。なお、セルロースアセテートプロピオネートとアクリル樹脂は非相溶であり、得られた溶液は濃縮とともに相分離性を示す。
【0187】
(塗布液8の調製)
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP、固形分濃度44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール溶液)32.6重量部、及び中空シリカ分散液(固形分濃度20重量%)2.5重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)32.1重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)21.8重量部の混合溶媒に溶解した。なお、樹脂を1種類しか使用していないので、得られた溶液は濃縮とともに相分離性を示さない。
【0188】
(塗布液9の調製)
多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、DPHA)32.6重量部、及び中空シリカ分散液(固形分濃度20重量%)2.5重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)32.1重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)21.8重量部の混合溶媒に溶解した。なお、樹脂を1種類しか使用していないので、得られた溶液は濃縮とともに相分離性を示さない。
【0189】
(塗布液10の調製)
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP、固形分濃度44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール溶液)12.6重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセルサイテック(株)製、DPHA)20.0重量部、及び中空シリカ分散液(固形分濃度20重量%)2.5重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)39.6重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)7.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)21.8重量部の混合溶媒に溶解した。なお、アクリル樹脂と多官能アクリルUV硬化モノマーは相溶性が高いため、得られた液は濃縮とともに相分離性を示さない。
【0190】
(実施例1)
塗布液1を用いてトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム(株)製、商品名「TD80UL G」、厚み80μm)上に連続機械塗工を行った。塗工方式はマイクログラビア方式であり、乾燥炉は、前半ゾーンと後半ゾーンとに分けて乾燥条件を制御できる乾燥炉を用いて、表面凹凸構造を有する厚さ約11μmのコート層を形成させた。そして、乾燥炉から出てきたコート層に、メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)からの紫外線を約30秒間照射することによりUV硬化処理し、ハードコート性および表面凹凸構造を有する機能性フィルムを作製した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0191】
なお、実装評価において、プリズムシートとして、住友3M(株)製、商品名「RBEF」を使用した。
【0192】
次に、このフィルムにおける表面凹凸形状のレーザー反射顕微鏡写真を図6に示す。図6の写真から明らかなように、対流及び相分離により凹凸形状が形成されていることがわかる。また、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図7に、図7の一部を拡大したものを図8に示す。SEM写真より、凹部凸部の違いなく全表面が中空シリカ粒子によって被覆されていることがわかる。さらに、膜表面付近の断面構造の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図9に示す。TEM写真より、機能層(防眩層)の空気界面に約100nmの厚みを有する中空シリカ粒子偏在層が存在していることがわかる。
【0193】
(実施例2)
塗布液1に代えて、塗布液2を用いる以外は、実施例1と同様の方法でトリアセチルセルロースフィルム上に連続機械塗工を行い、約11μmのコート層を形成させた。乾燥炉から出てきたコート層を実施例1と同様にUV硬化することにより、ハードコート性および表面凹凸構造を有する機能性フィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0194】
(実施例3)
塗布液1に代えて、塗布液3を用いる以外は、実施例1と同様の方法でトリアセチルセルロースフィルム上に連続機械塗工を行い、約11μmのコート層を形成させた。乾燥炉から出てきたコート層を実施例1と同様にUV硬化することにより、ハードコート性および表面凹凸構造を有する機能性フィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0195】
(実施例4)
塗布液1に代えて、塗布液4を用いる以外は、実施例1と同様の方法でトリアセチルセルロースフィルム上に連続機械塗工を行い、約11μmのコート層を形成させた。乾燥炉から出てきたコート層を実施例1と同様にUV硬化することにより、ハードコート性および表面凹凸構造を有する機能性フィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0196】
(実施例5)
塗布液1に代えて、塗布液5を用いる以外は、実施例1と同様の方法でトリアセチルセルロースフィルム上に連続機械塗工を行い、約11μmのコート層を形成させた。乾燥炉から出てきたコート層を実施例1と同様にUV硬化することにより、ハードコート性および表面凹凸構造を有する機能性フィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0197】
(参考例1)
塗布液1に代えて、塗布液6を用いる以外は、実施例1と同様の方法でトリアセチルセルロースフィルム上に連続機械塗工を行い、約11μmのコート層を形成させた。乾燥炉から出てきたコート層を実施例1と同様にUV硬化することにより、ハードコート性および表面凹凸構造を有する機能性フィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0198】
(参考例2)
塗布液1に代えて、塗布液7を用いる以外は、実施例1と同様の方法でトリアセチルセルロースフィルム上に連続機械塗工を行い、約11μmのコート層を形成させた。乾燥炉から出てきたコート層を実施例1と同様にUV硬化することにより、ハードコート性および表面凹凸構造を有する機能性フィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0199】
(参考例3)
塗布液1に代えて、塗布液8を用いる以外は、実施例1と同様の方法でトリアセチルセルロースフィルム上に連続機械塗工を行い、約11μmのコート層を形成させた。乾燥炉から出てきたコート層を実施例1と同様にUV硬化することにより、ハードコート性を有するが表面凹凸構造は有さないフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0200】
(参考例4)
塗布液1に代えて、塗布液9を用いる以外は、実施例1と同様の方法でトリアセチルセルロースフィルム上に連続機械塗工を行い、約11μmのコート層を形成させた。乾燥炉から出てきたコート層を実施例1と同様にUV硬化することにより、ハードコート性を有するが表面凹凸構造は有さないフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0201】
(参考例5)
塗布液1に代えて、塗布液10を用いる以外は、実施例1と同様の方法でトリアセチルセルロースフィルム上に連続機械塗工を行い、約11μmのコート層を形成させた。乾燥炉から出てきたコート層を実施例1と同様にUV硬化することにより、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩性フィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0202】
【表1】

【0203】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜5の防眩性フィルムは、反射率が充分に低く、明室及び暗室でのコントラスト、防眩性が高い。また、ハードコート性も十分である。特に、実施例1〜3の結果から、高沸点溶剤が多いほど、低反射率を示すことがわかるが、高沸点溶剤が多すぎると乾燥が不十分になって機械特性や耐久性に悪影響を与えるため注意が必要であると考えられる。
【0204】
一方、中空シリカ粒子の添加量が少ない場合、フィルム表面を完全に被覆することができないため、低反射率化の効果が低くなる。逆に添加量が多すぎると表面ではなく膜内部に取り残されるため、内部ヘイズの発生源となり、実施例4の結果が示すように、画像の黒味が若干損なわれる。参考例1の機能性フィルムは、充分な防眩性を有するものの、中空シリカ粒子が使用されていないため、反射率が高く、明室環境でのコントラストが低い。参考例2の結果においては、多官能ハイブリッド系UV硬化剤(JSR(株)製Z7510)の表面自由エネルギーが、中空シリカ粒子のそれよりも低いと考えられ、中空シリカ粒子よりも優先的に表面へ析出して、中空シリカ粒子の表面偏在を妨害するため低反射率化が達成されないと推測できる。
【0205】
乾燥過程において相分離が誘発されない参考例3および4では、中空シリカ粒子を使用しているにも関わらず、表面に偏在しないため反射率が低下しなかった。また、同様に乾燥過程において相分離が誘発されない参考例5においても、形成された表面凹凸に中空シリカ粒子が追随しないため、反射率が低下せず、明室コントラストが低かった。実施例1と参考例3〜5との結果の比較からは、樹脂同士の相分離が誘起されることにより、中空シリカ粒子が樹脂内部から押し出されて、表面方向に浮上すると推察できる。すなわち、樹脂の相分離が中空シリカ粒子の表面偏在に非常に重要な役割を果たすと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】図1は、本発明の機能性フィルムと偏向板とを積層させた光学部材の概略断面図である。
【図2】図2は、実施例で作製した液晶パネルの概略断面図である。
【図3】図3は、実施例で作製した液晶表示装置の概略断面図である。
【図4】図4は、実施例で用いたプリズムシートの斜視図である。
【図5】図5は、実施例で用いたバックライト光源の斜視図である。
【図6】図6は、実施例1で得られた機能性フィルムのレーザー反射顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例1で得られた機能性フィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図8】図8は、図7の一部を拡大した写真である。
【図9】図9は、実施例1で得られた機能性フィルムの表面付近の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【符号の説明】
【0207】
1,21A・・・低屈折率層
2,21B・・・機能層
4,23B・・・偏光層
21,23・・・偏光板
31・・・液晶パネル
33・・・プリズムシート
51・・・管状光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された機能層とで構成された機能性フィルムであって、機能層が、相分離可能な複数の樹脂で構成されている樹脂バインダー、硬化性樹脂および中空シリカ粒子を含む塗膜が硬化した硬化層であり、かつ中空シリカ粒子が機能層の表面側に偏在している機能性フィルム。
【請求項2】
複数の樹脂が、少なくともセルロース誘導体を含む請求項1記載の機能性フィルム。
【請求項3】
複数の樹脂のうち、少なくとも一つのポリマーが硬化性樹脂と反応可能な官能基を有するポリマーである請求項1又は2記載の機能性フィルム。
【請求項4】
複数の樹脂が、セルロースエステル類と、硬化性樹脂と反応可能な官能基を側鎖に有する樹脂であって、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、およびポリエステル系樹脂から選択された少なくとも1種の樹脂とで構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の機能性フィルム。
【請求項5】
中空シリカ粒子が、平均粒子径50〜70nmおよび屈折率1.20〜1.25を有する請求項1〜4のいずれかに記載の機能性フィルム。
【請求項6】
機能層が表面に凹凸構造を有し、この表面の凹凸構造に中空シリカ粒子が追随した形態で偏在している請求項1〜5のいずれかに記載の機能性フィルム。
【請求項7】
凹凸構造が、複数の樹脂の相分離および対流現象により形成された凹凸構造である請求項6記載の機能性フィルム。
【請求項8】
機能層において、一方の面の表面積の90%以上に中空シリカ粒子が存在している請求項1〜7のいずれかに記載の機能性フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の機能性フィルムを製造する方法であって、基材フィルムの上に、相分離可能な複数の樹脂で構成されている樹脂バインダー、硬化性樹脂および中空シリカ粒子を含む塗布液を塗布する塗布工程と、この工程により形成された未乾燥の塗膜を乾燥させる乾燥工程と、この工程により乾燥された塗膜を硬化する硬化工程とを経て機能性フィルムを製造する方法。
【請求項10】
塗布液が、少なくとも2種の沸点の異なる溶媒を含む請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
塗布液が、少なくとも1種の沸点100℃以上の溶媒と、少なくとも1種の沸点100℃未満の溶媒とを含む請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
硬化工程において、活性エネルギー線及び熱から選択された少なくとも1種を照射して塗膜を硬化する請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
機能性フィルムを得るための塗布液であって、相分離可能な複数の樹脂で構成されている樹脂バインダー、硬化性樹脂および中空シリカ粒子を含む塗布液。
【請求項14】
請求項1記載の機能性フィルムを備えた表示装置。
【請求項15】
液晶表示装置、陰極管表示装置、プラズマディスプレイ、及びタッチパネル式入力装置から選択された表示装置である請求項14記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−128488(P2009−128488A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301619(P2007−301619)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】