説明

機能性マルチブロックポリマーの単一工程合成

本発明の組成物は、4つのブロックを含み且つ次のブロック配列:B-S-B-Sを有するブロックポリマーを具える。2つのポリマーブロックBは共役ジエンモノマー構成ユニットからなり、また2つのポリマーブロックSは芳香族ビニル炭化水素モノマー構成ユニットからなる。また、本発明は、かかる組成物を製造する方法並びにかかるブロックコポリマーを含むアスファルト組成物及び/又は熱可塑性エラストマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なテトラブロックの芳香族ビニル炭化水素(S)−共役ジエン(B)コポリマー及びかかるテトラブロックコポリマーを含む組成物に関する。更に具体的には、本発明は、B1-S1-B2-S2ブロックコポリマー構造を有するテトラブロックのスチレン(“S1”)−ブタジエン(“B1”) コポリマー及びかかるテトラブロックスチレン−ブタジエンコポリマーを含む組成物に関する。また、本発明は単一の重合工程でB-S-B-Sブロックコポリマーを含む組成物を製造する新規の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン及びブタジエンのような芳香族ビニル炭化水素及び共役ジエンの直鎖ブロックコポリマーの調製は既知である。最初に開発されたものの一つはスチレン及びブタジエンから製造されたS-B-Sブロックコポリマーである。ブロックコポリマー構造及び調製法の他のいくつかのバリエーションがこれまでに見出されている。
【0003】
スチレン−ブタジエンブロックコポリマーのような多くの熱可塑性エラストマーは、アニオン重合を含む多段階プロセスによって製造する。スチレン−ブタジエンブロックコポリマーは、星形構造又は直鎖構造の何れかを有することができる。一般に、アニオン重合によって製造された直鎖コポリマーには、3つの異なるタイプ、(1)テーパードブロック、(2)ジ/トリブロック及び(3)ランダムがある。
【0004】
テーパード、すなわち段階的ブロックスチレン−ブタジエンコポリマーは、一般にアルキルリチウム触媒、スチレン及びブタジエンをバッチ反応器中で混合する時に形成される。ランダムスチレン−ブタジエンコポリマーは、一般に連続流れ反応器内でアニオン重合を実行する場合に形成される。
【0005】
ジブロック又はトリブロックスチレン−ブタジエンブロックコポリマーのような熱可塑性エラストマー(TPE)は、一般にモノマーの逐次添加によりセミバッチ反応器内で重合を行う場合に形成される。また、TPEの重合は、成分モノマーの非連続的な添加によって実行してもよい。アリルリチウム末端基の“リビング”性の安定性により、広範な異なった構造及び性質のブタジエンースチレンコポリマーを製造することができる。
【0006】
例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(S-B-S)トリブロックコポリマーにおいては、ゴム状の軟質Bブロックが2つの硬質Sブロックの間にある。硬軟ブロックの配列は、商業的に有用な物性を生じる。かかるコポリマーは2つの相及び2つのガラス転移点を有し、また高い生強度、完全な溶解性、及び可逆的な熱可塑性によって特徴付けられる。S-B-Sトリブロックコポリマーは、一般にまずスチレンを重合してSブロックを形成し、次に半量のブタジエンを重合して半Bブロックを形成することを含む多段階プロセスによって製造される。その後、ニ官能価のカップリング剤を加えてリビングポリマー鎖を架橋し、トリブロックポリマーを形成する。
【0007】
S-B-Sトリブロックコポリマーを製造するための一つの方法は次のとおりである。
(a)バッチ反応器にスチレン及び溶媒を投入し
(b) n-ブチルリチウム(BuLi)開始剤を加え、スチレンを重合し、
(c) ブタジエンを加え、ブタジエンを重合し
(d) ニ官能価のカップリング剤を加え、一定時間カップリングし、及び
(e) 停止剤を加えて残りの開始剤及びリビングポリマー鎖を停止させる。
【0008】
従来技術は、ブタジエンのようなジエンモノマー及び芳香族モノビニル炭化水素モノマーをリチウム開始剤化合物と混合して触媒重合反応を行うプロセスを教示している。例えば、ブタジエン重合プロセスの一つは、以下のステップを含む:(1)1,3−ブタジエンをリチウムアミン開始剤化合物と状況に応じて重合調整剤の存在下混合し、ここで上記リチウムアミン開始剤化合物が式R’-N-Liの化合物(式中のR’が3から18の環状炭素原子を有する環状アミン基及び窒素を有する4から19の原子の環である)からなる群から選択し、(2)重合条件を有効にし、(3)重合を停止剤で停止して機能化ジエンエラストマーを形成し、(4)該機能化ジエンエラストマーに非結晶質シリカ充填剤、カーボンブラック充填剤、又はその両方及び加硫剤を混合し、並びに(5)充填剤及び機能化ジエンエラストマー化合物の加硫を行う。有用な重合開始剤としては、リチウムアミドのような金属アミドの混合物、特にリチオヘキサメチルイミン(LiHMI)を含む混合物がある。
【0009】
かかる重合を、各種ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びこれらの混合物等のような非環式アルカン溶媒中で行うことができる。所望に応じて、共重合のランダム化を促進し、ビニル含量を制御するために、極性重合調整剤のような重合調整剤を重合成分に加えてもよい。望ましい重合調整剤の量はリチウムの当量に対して0から90、又はそれを超える当量の範囲である。かかる量は、所望のビニル量、使用するスチレンのレベル及び重合温度並びに使用する特定の極性重合調整剤の性質に依存する。
【0010】
リチウムアミドのようなアニオン重合開始剤と組み合わせて通常用いる重合調整剤化合物は、図1及び図2にそれぞれ示した構造式I及びIIの重合調整剤化合物であり、式中R1及びR2は独立して水素又はアルキル基で、--CR1R--中の炭素原子の総数は1から9であり、yは1から5の整数、y’は3から5の整数であり、R3’、R3、R4、R5は独立して水素又はCnRH2n+1であり、nは1から6である。構造式Iの重合調整剤は直鎖のオリゴマーであり、構造式IIで表される重合調整剤は環式オリゴマーであり、以後オキソラニル重合調整剤という用語は両構造式の重合調整剤を含むことを意図する。
【0011】
リチウムアミド開始剤と組み合わせて用いるのに適したオキソラニル重合調整剤としては、ビス(2−オキソラニル)メタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)ブタン、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス−(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパンが挙げられる。これら調整剤化合物は、構造式Iで表されるいくつかの二量体化合物を表し、他の直鎖及び環式のオリゴマー重合調整剤はそれらの構造式から明白である。他の有用な重合調整剤としては、テトラヒドロフラン(THF)、モノ及びオリゴアルキレングリコールのジアルキルエーテル、“クラウン”エーテル、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)のような3級アミン、直鎖THFオリゴマー等が挙げられる。
【0012】
また、マルチブロックスチレン−ブタジエンコポリマーからなる熱可塑性エラストマーは、リチウムアミド開始剤及び適当な重合調整剤を用いてスチレン及びブタジエンモノマーに触媒作用を行って開発されてきた。一般に、マルチブロックスチレン−ブタジエンコポリマーを製造するプロセスは、多段階プロセスである。マルチブロックコポリマーを製造するための溶液重合プロセスの一つとしては、スチレンモノマーの重合、次いで重合したスチレンブロックへのブタジエンモノマーの逐次重合が挙げられる。該重合に適した溶媒はシクロヘキサンである。これは、まずスチレン、ついでブタジエンの重合になる。第二の実施態様においては、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーを別々に重合し、次いでスチレンのポリマーブロックをブタジエンのポリマーブロックに結合する。
【0013】
既知のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーの問題点は、該コポリマーが熱的に結合したB1-S1-Bブロックコポリマーの構造を有する不所望な副生物を含むことである。該副生物は前記ブロックコポリマーを蝋状にし、また材料の強度を減少させる。
【0014】
ポリマーを用いてアスファルトの流動学的特性を変性し得ることが既知である。一般に、アスファルトは、“ビチューメン(バインダー)としばしば称するアスファルト材料を含む。アスファルトコンクリートと称するは、アスファルトと結合した凝集体及び/又は充填剤材料の組成物である。ここで”アスファルト”という語は、通常ビチューメン及びアスファルトコンクリートの両方を参照する。アスファルト組成物は、アスファルト及び重合性アスファルト調整剤を含むアスファルト調整剤の組成物を含む。
【0015】
一般に、重合性アスファルト調整剤は、重合ネットワークを作り出すが元のアスファルトセメントからの相中に残留する分散系と見なすか、又はポリマーとアスファルトの間の化学反応によって特徴付けられる反応系と見なしてもよい。ステレオン(登録商標)(STEREON)210(オハイオ州アクロンのファイアストンポリマー社から市販されている)及びダイナソール1205(メキシコ州アルタミラタマウリパスのダイナソール社から市販されている)は、アスファルト重合調整剤として商用のスチレン/共役ジエンブロックポリマー組成物の例である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本発明者らは、ユニークなバランス特性を有する直鎖のテトラブロックコポリマーを発見した。特に、本発明者らはB-S-B-Sのブロック配列[式中(a)Bポリマーブロックが共役ジエンモノマー構成単位を有し、(b)Sポリマーブロックが芳香族ビニル炭化水素モノマーの構成単位を有する]を有する4つの交互のポリマーブロックを含む直鎖テトラブロックコポリマーを発見した。
【0017】
また、本発明者らは上記直鎖のテトラブロックコポリマーの製造方法を発見した。直鎖のテトラブロックコポリマーの製造方法は、(1)リチウム及びアミンが同じ化合物の成分又は別々の化合物の各成分とし得るリチウム及びアミンを含む開始剤及び(2)重合中に約50%を超える芳香族ビニル炭化水素及び共役ジエンモノマーをランダム化するために必要な量未満の量のビニル重合調整剤の存在下で、一定量の芳香族ビニル炭化水素モノマー及び一定量の共役ジエンモノマーを重合させることを含む。B-Sのブロック配列を有するジブロックコポリマーの一定量を、重合中頭尾に結合して、一定量のB-S-B-Sのブロック配列を有するテトラブロックコポリマーを形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明のテトラブロックコポリマーは、一定量のビニル芳香族炭化水素モノマー“S”と一定量の共役ジエンモノマー“B”を接触させ、炭化水素溶媒中で一定量の官能化開始剤と共に重合してB-Sのブロック配列を有する一定量のジブロックコポリマーを形成することによって調製した官能化直鎖コポリマー組成物である。複数のジブロックコポリマーの結合が重合中に生じて、B-S-B-Sのブロック配列を有する一定量のテトラブロックコポリマーを形成する。このタイプの結合は、一つのジブロックの芳香族ビニルブロックを別のジブロックの共役ジエンブロックに結合する頭尾結合であると言ってもよい。一つの好適実施態様において、テトラブロックコポリマーは、最初のB上にアミンを設けた(Am)-B-S-B-Sのブロック配列を更に有する。
【0019】
本発明の一つの実施態様における官能化開始剤は官能化リチウムアミン開始剤である。適当な望ましいリチウムアミン開始剤としては、一般式
(Am) Li(SOL)y
を有する可溶化リチオアミンが挙げられ、式中のyは約0から約3である。SOLが存在しない場合y=0であり、SOLが存在する場合、yは約0.5から約3であるのが好ましい。上記一般式のかっこ内は、該式がAm-Li-SOLy;SOLy-Am-Li;又はAm-SOLy-Liを含み得ることを示す。
【0020】
(SOL)は溶解性成分で、炭化水素、エーテル、アミン又はこれらの混合物とすることができる。典型的な(SOL)基は3から約300のポリマーユニットの重合度を有するジエニル又はビニル芳香族ポリマー又はコポリマーを含む。かかるポリマーは、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン及びこれらのコポリマーを含む。(SOL)の他の例は、テトラヒドロフラン(THF)及びテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)のような極性リガンドを含む。
【0021】
(Am)成分はアミン官能価を表し、その少なくとも一つが開始部位又はその頭部に添合することによるような、結果として生じるポリマーによってもたらされる。例えば、(Am)は、図3に示した一般式を有するアルキル、ジアルキル、シクロアルキル又はジシクロアルキルアミンラジカル、及び図4に示した一般式を有する環式アミンとすることができる。かかる式において、R1は1から約20の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基で、両R1基が同じでも異なってもよく(すなわち、それらはその群から独立に選択される)、R2は約3から約12のメチレン基を有する2価のアルキレン基、ビシクロアルカン基、オキシアルキレン基又はアミノアルキレン基である。典型的なR1基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、シクロへキシル基、3-フェニル-1-プロピル基及びイソブチル基等が挙げられる。典型的なR2基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オキシジエチレン基及びN-アルキルアザジエチレン基等が挙げられる。例えば、(Am)は、ピロリジンの誘導体、すなわちC4H8NH;例えばピペリジン及び3-メチルピペリジンのようなピペリジン類;例えば4-プロピルピペラジンのような4-アルキルピペラジン;ヘキサメチレンイミンとしても既知のパーヒドロアゼピン;又は1−アザシクロオクタンとすることができ、またパーヒドロイソキノリン、パーヒドロインドール等のような二環体を含んでもよい。
【0022】
本発明の好ましい実施態様において、官能化リチウムアミン開始剤はリチオヘキサメチレンイミン(LiHMI)であり、状況に応じて含リチウム化合物及び含アミン化合物から反応容器中現場で形成してもよい。本発明は現場で形成される開始剤に限定するものでない。
【0023】
本発明の好ましい一つの実施態様において、テトラブロックコポリマーはB1-S1-B2-S2のブロック配列を有する4つのブロックからなり、式中B1及びB2ポリマーブロックがブタジエンモノマー構成ユニットを有し、またS1及びS2ポリマーブロックがスチレンモノマー構成ユニットを有する。ブロックB1及びB2は実質的に同じでも異なっても良く、同様にブロックS1及びS2も実質的に同じでも異なっても良い。一実施態様において、ブロックB1及びB2はブタジエンモノマーから誘導したブロックからなり、それぞれ実質的に同じ分子量を有し、またブロックS1及びブロックS2はスチレンモノマーから誘導したブロックからなり、それぞれ実質的に同じ分子量を有する。
【0024】
本発明の好ましい一つの態様は、テトラブロックコポリマーの各ブロックの分子量を制御することである。これはモノマーと開始剤の比率を制御することによって達成される。本発明の好ましい実施態様において、ブタジエン/スチレンが25/75から75/25の重量比を有するモノマー混合物を反応容器にヘキサン溶媒と共に投入し、ヘキサン中で12.5から25重量%のモノマー混合物濃度を達成する。リチウムアミン開始剤の成分反応体をヘキサン/モノマー混合物と共に反応器に投入する。モノマー混合物100グラム当たり0.04から0.10グラムのブチルリチウムを供給する開始剤反応体量が、一般に約100%のモノマーからポリマーへの転化率を提供する。
【0025】
上述したような重合を、使用によりポリマーのランダム化を生じ得るに十分な量の従来技術で用いるオキソラニル重合調整剤のような重合調整剤の不在下で行うことにより、ランダム化を防止する。本発明の好ましい実施態様において、ビニル重合調整剤の存在量は、存在するスチレンモノマー及びブタジエンモノマーの約50%以下の重合ランダム化に必要な有効量未満、好ましくは存在するスチレンモノマー及びブタジエンモノマーの約20%以下の重合ランダム化に必要な有効量未満、更に好ましくは存在するスチレンモノマー及びブタジエンモノマーの約5%以下の重合ランダム化に必要な有効量未満である。本発明の好ましい実施態様において、存在するオキソラニル重合調整剤のようなビニル重合調整剤の存在するモノマーに対する割合は、約100万分の70部(“ppm”)未満である。一つの特定の実施態様において、存在する重合調整剤の量は、少なくとも1ppmから約70ppm未満までである。
【0026】
重合調整剤は、反応器に投入した別体化合物とするか、又は開始剤の一部として反応器に投入することができる。重合調整剤は、THF又はTMEDAのような極性リガンドであるSOLを選択することにより開始剤の一部とすることができる。
【0027】
一つの実施態様において、B-S-B-Sテトラブロックコポリマーの数平均分子量は約50,000から約200,000であり、好ましくはB-S-B-Sテトラブロックコポリマーの数平均分子量は約75,000から約175,000、さらに好ましくはB-S-B-Sテトラブロックコポリマーの数平均分子量は約100,000から約150,000である。Sブロックの各数平均分子量はそれぞれ少なくとも約6,000である。
【0028】
本発明は、マルチブロックコポリマーを製造するための新規の単一初期投入重合プロセスを含む。本発明の態様はB-S-B-Sのブロック配列を有するテトラブロックコポリマーの製造方法にある。第一に、ビニル芳香族炭化水素モノマー”S”の一定量及び共役ジエンモノマー”B”の一定量を有する炭化水素溶媒の溶液を反応容器又はそれに相当するものに投入する。かかる量のS及びBを反応容器に同時に加えてもよい。成分S及びBは、いずれも計量して反応容器に供給することを必要としない。第二に、リチウム化合物の一定量及びアミン化合物の一定量をビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーの初期投入物に加えて一定量の官能化リチウムアミン開始剤を現場で形成する。開始剤が含リチウム化合物及び含アミン化合物を含む場合、かかる2つの化合物を反応器に如何なる順番で添加することができ、例えば、最初にアミン化合物、次いでリチウム化合物を加えるか、最初にアミン化合物、次いでリチウム化合物を加えるか、又はリチウム化合物及びアミン化合物の両方を同時に加えてもよい。
【0029】
複数のビニル芳香族炭化水素モノマー及び複数の共役ジエンモノマーを官能化リチウムアミン開始剤の存在下で重合して、B-Sのブロック配列を有する一定量のジブロックコポリマーを形成する。複数のジブロックコポリマーをむ重合中に結合してB-S-B-Sのブロック配列を有するテトラブロックコポリマーを形成する。
【0030】
本発明の方法の好ましい実施態様においては、B1-S1-B2-S2のブロック配列を有するテトラブロックコポリマーを調製する。第一に、一定量のスチレンモノマー及び一定量のブタジエンを有する溶液を反応容器又はそれに相当するものに投入する。スチレン及びブタジエンを溶媒、例えば炭化水素溶媒中に分散させることができる。適切な溶媒の例としては、ヘキサン及びシクロヘキサンが挙げられる。第二に、一定量のリチウム化合物及び一定量のアミン化合物をスチレンモノマー及びブタジエンモノマーの初期投入物に加えて、一定量の官能化リチウムアミン開始剤を現場で形成する。複数のスチレンモノマー及び複数のブタジエンモノマーを官能化リチウムアミン開始剤の存在下で重合してB1-S1のブロック配列を有する一定量のジブロックコポリマーを形成する。複数のジブロックコポリマーを結合してB1-S1-B2-S2のブロック配列を有する一定量のテトラブロックコポリマーを形成し、ここでポリマーブロックB1及びB2がブタジエンモノマー構成ユニットを含み、ポリマーブロックSがスチレンモノマー構成ユニットを含む。
【0031】
本発明の方法の別の好ましい実施態様において、官能化リチウムアミン開始剤は、一定量のn-ブチルリチウム(BuLi)及び一定量のヘキサメチレンイミン(HMI)をブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの初期投入物と共に混合することにより現場で形成し得るリチオヘキサメチルイミン(LiHMI)である。一定量のヘキサメチレンイミンをほぼモル当量のn-ブチルリチウムと混合することが好ましい。
【0032】
本発明の他の特定の実施態様において、一定量のスチレンモノマー及び一定量のブタジエンモノマーを含む約16重量パーセントから約17重量パーセントのモノマー類を有する任意のヘキサン溶液を反応容器に投入する。モノマー混合物の重量比は、ブタジエン/スチレンが80/20から50/50である。スチレンモノマーの量が、一般にブタジエンモノマー量のモル当量であることが好ましい。次いで、一定量のn-ブチルリチウム(BuLi)及び一定量のヘキサメチレンイミン(HMI)をスチレンモノマー及びブタジエンモノマーの初期投入物に加えて、リチオヘキサメチルイミン(LiHMI)を現場で形成する。或いは、LIHMIを単一の化合物として反応器に加えてもよい。一定量のヘキサメチレンイミンをほぼモル当量のn-ブチルリチウムと混合することが好ましい。開始剤のモノマー混合物に対する重量比は、モノマー混合物100グラム当たりブチルリチウムが約0.04から約0.10グラムである。開始剤のモノマー混合物に対する重量比は、約100パーセントのモノマーからポリマーへの転化率とするために、モノマー混合物100グラム当たりブチルリチウムが約0.05から約0.08グラムであることが好ましい。
【0033】
所望に応じて、エチルヘキサン酸、アルコール、水及びこれらの混合物のような一定量の適当な停止剤を加えることによってアニオン重合を停止することができる。
【0034】
したがって、本発明の利点の一つは、B1-S1-B2-S2のブロック配列を有する新規な機能性テトラブロックスチレンブタジエンコポリマー及びB1-S1-B2-S2の配列を有するテトラブロックコポリマーを含むスチレンブタジエンコポリマーから形成した機能性テトラブロックコポリマー組成物を合成することにある。別の特定の実施態様においては、かかる新規なポリマーは、S-B-Sの特徴及びTPE物性を有するという利点を持つ。
【0035】
本発明の更なる利点は、ビニル芳香族炭化水素モノマー又は共役ジエンモノマーのいずれか一つを計量して供給することなしにテトラブロックコポリマーが形成できることである。また、前記ポリマーは、モノマーを別々に投入することなしに合成することができる。さらに、ポリマーは単一の重合工程により製造してもよい。
【0036】
本発明の別の利点は、ポリマーをアスファルト混合物として使用可能に強化された引張り強度を含む改良された熱可塑弾性を有するようなテトラブロックコポリマーを合成することにある。
【0037】
本発明の更なる利点は、反応容器へのブタジエン及びスチレンの初期投入物を後続の反応器を用いることなしにB1-S1-B2-S2のブロック配列を有するテトラブロックコポリマーに重合できることにある。本発明の更なる利点は、LiHMI開始剤をHMI(ヘキサメチレンイミン)とn-ブチルリチウム(BuLi)との反応により現場で形成できることである。
【0038】
一つの実施態様において、HMIをB-Sジブロックコポリマーのブタジエン末端に結合し、また活性なリチウムをHMI-B-S-Li配列のスチレンの末端に結合すると思われる。さらに、リチウムを含むジブロック(尾部)の活性末端が第2のジブロックのAm末端と反応してテトラブロックポリマーを形成すると思われる。これは信じられている理論ではあるが、かかる理論は本発明の範囲を限定するものとしてみなすべきではなく、本発明はかかる理論に制約されない。請求項が本発明を定義する。
【0039】
本発明の方法の上述した好ましい実施態様による重合反応生成物の一つの実施態様は、B1-S1-B2-S2のブロック配列を有する4つのブロックを備えるブロックコポリマーを約50重量パーセントまで、好ましくは約10から約40重量パーセント、更に好ましくは約15から約32重量パーセント、また更に好ましくは約20から30重量パーセント含む各種ブロックコポリマーの重合組成物であり、更に任意に約5重量パーセント以下がB-S-S-B-(B-S)nのブロック配列を有するマルチブロックコポリマーであり、式中のnは1と等しいか又はそれより大きい整数である。該組成物の残余、すなわち約40から95重量パーセント、好ましくは約45から約90重量パーセントがB-Sジブロックコポリマーからなる。
【0040】
重合反応生成物のビニル含量は約5重量パーセントから約70重量パーセントとすることができる。該ビニル含量は約6重量パーセントから約30重量パーセントが好ましい。該ビニル含量は約7重量パーセントから約25重量パーセントが更に好ましく、該ビニル含量は約8重量パーセントから約20重量パーセントがまた更に好ましい。
【0041】
頭尾結合したテトラブロックコポリマーを含む組成物を観察すると、該組成物は少なくとも約500p.s.i.の引張り強度を有すると思われる。
【0042】
本発明の一つの実施態様の重合反応生成物は、2種の分子量分布を有するジブロック及びテトラブロックコポリマーの重合組成物である。該組成物の約5から約50重量パーセントが、105,000から 200,000、好ましくは約126,000から154,000の平均分子量、更に好ましくは133,000から147,000の平均分子量、最も好ましくは約140,000の平均分子量を有するB-S-B-Sブロックコポリマーからなる。該組成物の約50から約95重量パーセントが、約50,000から約80,000の平均分子量、好ましくは約63,000から約77,000、更に好ましくは約66,500 から約73,500の平均分子量、また最も好ましくは約70,000の平均分子量を有するB-Sブロックコポリマーからなる。
【0043】
重合反応生成物は、アスファルト屋根システム及びアスファルト舗装システムを含む改質アスファルト用の一次ポリマーとして著しい有用性を有する。改質アスファルト組成物の特定実施態様において、本発明の組成物を約10重量%又はそれ以下、好ましくは約4重量%又はそれ以下、更にまた好ましくは約3.5重量%又はそれ以下、より更に好ましくは約3重量%未満の濃度レベルで使用することができる。かかる重合反応生成物をペレットの形態に成形することができ、また高速若しくは低速剪断のアスファルト混合装置での使用用の適切な成分に容易に配合することができる。重合反応生成物は、ポリスチレン及びポリオレフィン樹脂と容易に混合して優れた耐衝撃性及び堅牢性を有する合金化プラスチック生成物を付与する高効率のスチレンブタジエンマルチブロック熱可塑性エラストマーである。自由流動性のペレット形態では、重合反応生成物を従来のプラスチック処理システムで処理することができる。
【0044】
本発明の実施態様の一例は、アスファルト、骨材及び重合性アスファルト調整剤の混合物から形成したポリマー改質アスファルト組成物を備える。重合性アスファルト調整剤は、B-S-B-Sのブロック配列を有する4つのブロックからなるブロックコポリマー約5から約50重量パーセントと、B-Sのブロック配列を有する2つのブロックからなるブロックコポリマー約50から95重量%を有するブロックポリマー組成物を備える。B-S-B-Sテトラブロックコポリマーの数平均分子量は約50,000から約 200,000で、B-Sジブロックコポリマーの数平均分子量は約25,000から約100,000である。
【0045】
本発明のコポリマーを含むポリマー改質アスファルト組成物の他の例は、アスファルト、骨材及び重合性アスファルト調整剤を含む。重合性アスファルト調整剤は、B-S-B-Sのブロック配列を有する4つのブロックからなるブロックコポリマー約5から約50重量パーセント及びB-Sのブロック配列を有するジブロックコポリマー約50から約95重量パーセントを備えることができる。ポリマーブロックBは共役ジエンモノマー構成ユニット、又ポリマーブロックSは芳香族モノマー構成ユニットである。ジブロックの数平均分子量は約25, 000から約100,000、好ましくは約50,000から約 90,000、更に好ましくは約60,000から約80,000、また更に好ましくは約65,000から約75,000とすることができる。
【0046】
本発明に用いるアスファルトは、天然由来のアスファルト又は石油の精製により生じた合成アスファルトのいずれかとすることができる。本発明の使用に適した天然由来のアスファルトとしては、例えば、レーキアスファルト及びロックアスファルト等が挙げられる。好適な合成アスファルトとしては、例えば、直留アスファルト、プロパンアスファルト、エアブローンアスファルト、耐熱アスファルト及び混合アスファルト等が挙げられる。
【0047】
本発明の他の利点は、本発明の一つの実施態様の重合反応生成物、すなわち2種の分子量分布を有するジブロック及びテトラブロックコポリマーの重合性組成物がテトラブロックコポリマーの分散を助けてアスファルトセメント内に重合ネットワークを作り出すための溶媒和剤を必要としないことである。クラム形状の重合性組成物をアスファルトに加えてアスファルト組成物を形成することができる。混合プロセスの温度及び圧力は、B-Sブロックコポリマーを非結晶質にし、また溶媒和性を発揮させることが好ましい。かかるプロセスは、より効率的に重合性組成物クラムを減少し、元のアスファルトセメント全体のポリマーネットワーク内でB-S-B-Sブロックコポリマーをより効率的に分散させる。生成したアスファルト組成物は堅牢性及び粘着性の両方で優れた性能を有する。
【0048】
本発明の他の態様は、約50重量パーセントまでのB1-S1-B2-S2のブロック配列を有する4つのブロックからなるブロックコポリマーを含む熱可塑性エラストマー組成物であり、ここで(a)2つのポリマーブロックB1及びB2がブタジエンモノマー構成ユニットを含み、また(b)2つのポリマーブロックS1及びS2がスチレンモノマー構成ユニットを含む。
【0049】
他の態様において、本発明者らは(a)約50重量パーセントまでのB1-S1-B2-S2のブロック配列を有する4つのブロックからなるブロックコポリマー、(b)約5重量パーセント未満のB-S-S-B-(B-S)nのブロック配列を有するブロックからなるマルチブロックコポリマー、及び(c)約50から約95重量パーセントのB-Sのブロック配列を有する2つのブロックからなるブロックコポリマーを備える熱可塑性エラストマー組成物を発見しており、ここでポリマーブロックB、B1及びB2がブタジエンモノマー構成ユニットを含み、ポリマーブロックS、S1及びS2がスチレンモノマー構成ユニットを含み、またnは1と同じ又はそれより大きい整数である。
【0050】
本発明を好ましい実施態様につき記載した。修正及び変更は、明細書を読み又理解した他の者が思いつくであろう。本発明は、かかる修正及び変更が開示及び請求項の範囲内である限りこれらを含むことを意図している。
【実施例】
【0051】
本発明の実施を実証するために、以下の例を準備しテストした。しかしながら、かかる例は本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。請求項が本発明を定義するのに役立つ。
【0052】
(実施例)
撹拌機の付いたバッチ反応器を先ず10psig未満にガス抜きし、次いでヘキサン147.9 ポンドを反応器に加えた。該反応器を再び10psig未満にガス抜きした。該反応器の内容物を反応中約100rpmの速度で撹拌した。該反応器に23.2%の1,3−ブタジエン溶液258.6 ポンド及び31.2%のスチレン溶液64.1 ポンドを投入し、70°Fで安定化させた。該反応器に3.4%のBuLi触媒溶液1.074 Kgを投入した。70°Fで安定化した反応器温度で、該反応器にヘキサメチレンイミンの10%溶液0.385 Kgを投入した。次いで、反応器ジャケットの温度を130°Fにセットし、反応を71分間続け、反応混合物のピーク温度に達してから5分後まで反応を進行させた。次いで、エチルヘキサン酸90.7gを該反応器に投入し、ジャケット温度を100°Fまで下げた。生成物は表1に挙げた性質を有していることが見出された。
【0053】
【表1】

【0054】
当業者には、本発明の範囲及び精神から逸脱しない種々の変形及び変更が明らかである。本発明は、ここに示した説明用の例に正規に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は直鎖オリゴマー重合調整剤の一般化学構造式Iを示す。
【図2】図2は環式オリゴマー重合調整剤の一般化学構造式IIを示す。
【図3】図3は一般式(Am)Li(SOL)yを有する可溶化リチオアミンのアルキル、ジアルキル、シクロアルキル又はジシクロアルキルアミンラジカルの一般式を示す。
【図4】図4は一般式(Am)Li(SOL)yを有する可溶化リチオアミンの環式アミンラジカルの一般式を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
B-S-B-Sのブロック配列を有する4つのポリマーブロックからなり、2つのポリマーブロックBが共役ジエンモノマーの構成単位を含み、2つのポリマーブロックSがビニル芳香族炭化水素モノマーの構成単位を含むことを特徴とするテトラブロックコポリマー。
【請求項2】
前記テトラブロックコポリマーが、ただ一つのSブロックに結合したBブロックにアミンを備える請求項1記載のコポリマー。
【請求項3】
B-S-B-Sのブロック配列を有する4つのブロックからなるブロックコポリマーを約50重量%まで含み、2つのポリマーブロックBが共役ジエンモノマー構成ユニットを含み、また2つのポリマーブロックSがビニル芳香族炭化水素モノマー構成ユニットを含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
更にB-S-S-B-(B-S)nのブロック配列を有するブロックからなるマルチブロックコポリマーを約5重量%未満含み、2つのポリマーブロックBが共役ジエンモノマー構成ユニットを含み、2つのポリマーブロックSがビニル芳香族炭化水素モノマー構成ユニットを含み、またnは1と等しいか又はそれより大きい整数である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
更にB-Sのブロック配列を有する2つのブロックからなるジブロックコポリマーを約50から約95重量%含み、ポリマーブロックBが共役ジエンモノマー構成ユニットを含み、またポリマーブロックSがビニル芳香族炭化水素モノマー構成ユニットを含む請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
前記請求項の何れか一つに記載の組成物を備えることを特徴とするアスファルト添加剤。
【請求項7】
ビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーを(1)リチウム及びアミンを含む開始剤及び(2)ビニル重合調整剤の存在下で重合し、ここで前記重合調整剤の量が前記重合中にビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンモノマーの約50%を超えてランダム化するのに必要な量未満の量であり、これによりB-Sのブロック配列を有するジ−ブロックコポリマーを形成し、また前記重合が該ジ−ブロックコポリマーの一定量を結合してB-S-B-Sの配列を有するテトラブロックコポリマーを形成することを特徴とする一定量のブロックコポリマーを製造する方法。
【請求項8】
存在するビニル重合調整剤の量が、ビニル芳香族モノマー及び共役ジエンモノマーの約5%を超えてランダム化するに必要な量未満である請求項7記載の方法。
【請求項9】
アスファルト、骨材及び約50重量%までのB-S-B-Sのブロック配列を有する4つのブロックからなるテトラ−ブロックコポリマー及び約50から約95重量%のB-Sのブロック配列を有する2つのジ−ブロックからなるブロックコポリマーを含む重合性アスファルト調整剤を備え、ポリマーブロックBが共役ジエンモノマー構成ユニットを含み、ポリマーブロックSが芳香族ビニル炭化水素モノマー構成ユニットを含み、またB-S-B-Sテトラ-ブロックコポリマーの数平均分子量が約50,000から約200,000であり、B-Sジ−ブロックコポリマーの数平均分子量が約25,000から約100,000であることを特徴とするポリマー変性アスファルト組成物。
【請求項10】
前記アスファルトが、レーキアスファルト、ロックアスファルト、直留アスファルト、プロパンアスファルト、エアブローンアスファルト、耐熱アスファルト、混合アスファルト及びこれらの混合物からなる群より選択した材料である請求項9記載のポリマー変性アスファルト組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−509254(P2008−509254A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525047(P2007−525047)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/027971
【国際公開番号】WO2006/017776
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(504396748)ファイヤーストーン ポリマーズ エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】