説明

機能性床材およびその製造方法

【課題】床材の本来的な物性に加えて、たばこや室内のこもった臭い、生ゴミ臭等不快臭等の消臭機能や、室内汚染物質等、有害物質の分解機能等を長期に亘って持続する機能性床材を提供する。
【解決手段】塗装された木質基板6の表面に上塗り塗料を塗布し、仕上げてなる床材であって、該上塗り塗料が硬化した塗膜中には光触媒1を内包したマイクロカプセル2が混在し、該光触媒1は上記塗膜の摩耗によりカプセル壁が削られるとともに露出し、光触媒機能を発揮するようにされた機能性床材A。好ましくは、上記光触媒1が酸化チタンとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材に関する。さらに詳しくは、消臭機能や化学物質等を分解する分解機能を有する機能性床材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、普通合板や強化合板、パーティクルボード、MDF、その他の木質系基板からなる床材について、耐久性や意匠性、耐薬品性、耐擦過傷性等の基本的な物性に加えて、たばこの臭いや生ゴミ臭等不快臭、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)等の室内汚染物質の臭いを消臭し、あるいはこれらの臭気発生源を分解する等の機能を有する木質系床材が開発されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、木質系基板へ最終的に塗工されたトップコート層が、光触媒活性酸化チタンの微粒子を有する粒子状消臭成分を混合した無溶剤型紫外線硬化樹脂塗料の硬化塗膜から形成されていることを特徴とする木質系床材とその製造法が開示されている。
【特許文献1】特開2006−219855号公報(第1〜4頁、第1図、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公知技術においては、トップコート層を形成する樹脂塗料としては、エポキシアクリレート樹脂やウレタンアクリレート樹脂等の公知の紫外線硬化型樹脂が用いられている。しかしながら、光触媒活性酸化チタンの微粒子が塗膜中に存在しているため、最終工程で上記紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射すると、酸化チタンが活性化され、上記木質系床材の製造工程で触媒能を発揮し、床材として使用したとき、消臭能力や化学物質の分解能力が劣化し、触媒としてのライフが短くなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記した問題を解決して、木質系基板を塗装してなる床材に、表面の耐久性や意匠性、耐薬品性、耐擦過傷性等の本来的な機能に加えて、たばこや室内のこもった臭い、生ゴミ臭等不快臭等の消臭機能や、室内汚染物質等、有害物質の分解機能等を長期に亘って持続する機能性床材を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明においては、つぎのような技術的手段を講じている。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、塗装された木質基板の表面に上塗り塗料を塗布し、仕上げてなる床材であって、該上塗り塗料が硬化した塗膜中には光触媒を内包したマイクロカプセルが混在し、該光触媒は上記塗膜の摩耗によりカプセル壁が削られるとともに露出し、光触媒機能を発揮するようにされた機能性床材が提供される。
【0007】
上記木質基板としては、普通合板や強化合板、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボード、集積材等をあげることができる。また、上塗り塗料としては、エポキシアクリレート樹脂やウレタンアクリレート樹脂等、公知の紫外線硬化型の塗料が用いられる。
【0008】
マイクロカプセルの製法としては、公知のマイクロカプセル化法、例えば、化学的方法、機械的方法等があげられる。例えば、化学的方法によって芯物質としての光触媒をカプセル化する場合、光触媒が溶解し、反応物Aを含む水溶液を油相に注入し、まず激しく攪拌する。このとき、水と油とは溶け合わないため、光触媒は小さな水性液滴となって、油相中に懸濁する。このような分散系に油相に溶ける反応物質Bを注入すると水滴内に溶けている反応物Aと反応物Bとの反応が水滴と油相の界面で起こり、反応生成物Cが水滴を囲むように生成され、光触媒のカプセル化が行われる。このようにして形成された光触媒内包マイクロカプセルが上記上塗り塗料に混合される。
【0009】
請求項2に記載の機能性床材は、請求項1に記載の発明に加えて、上記光触媒は、アナターゼ型あるいはルチル型の酸化チタンとされる。酸化チタン(二酸化チタン、TiO2 、式量79.9)はチタンの酸化物であり、塗料、絵の具、トラフィックペイント、ゴム練込み用着色剤、陶磁器の釉薬等に用いられる白色顔料、あるいは食品や化粧品の着色料として大量に使用されている。
【0010】
しかし、近年、光を吸収することにより、触媒作用を示す、いわゆる光触媒としての機能が見いだされ「本多−藤嶋効果」として、種々の分野へ応用が広がりつつある。例えば、粉末状の酸化チタンを水中に入れ、光(主として紫外線)を照射すると水の分解反応が進行し、水素と酸素に分解される。このような強力な酸化作用が光照射だけで得られる手軽さを活かし、例えば、病院の手術室の壁・床を酸化チタンでコ−ティングすることにより、ブラックライト(紫外光ランプ)を照らすだけで殺菌処理を行うことが可能となり、実用化されつつある。
【0011】
このような酸化チタンの有する光触媒作用を利用することにより、たばこや室内のこもった臭い、生ゴミ臭等の不快臭、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)等の室内汚染物質の臭いを消臭し、あるいはこれらの臭気発生源を分解すること等が可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、木質基板の表面に下塗り塗料を塗布し、その後、光触媒を内包したマイクロカプセルが略均一に混合された光硬化性塗料を上塗り塗装し、紫外線照射により硬化させてなる機能性床材の製造方法が提供される。この場合、下塗りの上に中塗りを重ね塗りする場合も含めて下塗りという。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明にかかる機能性床材は上記のとおりであり、木質基板の表面の上塗り塗料が硬化した塗膜中には光触媒を内包したマイクロカプセルが混在しているため、上記機能性床材の製造の際の上塗り塗膜を形成させる仕上げ工程で紫外線を照射しても、光触媒の微粉はマイクロカプセルに内包され、カプセル壁で紫外線はブロックされることにより、この段階で光触媒が触媒能を発揮することなく、ライフを永くすることができる。また、歩行等の使用によって塗膜が摩耗し、カプセル壁が削られて露出することにより長期に亘って、光触媒能を発揮することができる。
【0014】
請求項2に記載の機能性床材は上記のとおりであり、請求項1の機能性床材の有する効果に加え、上記光触媒が酸化チタンであるため、たばこの臭いや室内の悪臭を消臭するとともに、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)等の室内汚染物質の臭いを消臭し、あるいはこれらの臭気発生源を分解すること等が可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明にかかる機能性床材の製造方法は上記のとおりであり、木質基板の表面に下塗り塗料を塗布し、その後、光触媒を内包したマイクロカプセルが略均一に混合された光硬化性塗料を上塗り塗装し、紫外線照射により硬化させ仕上げてなるため、上記機能性床材の製造の際の上塗り塗膜を形成させる仕上げ工程において、上塗り塗料中に光触媒の微粉を内包したマイクロカプセルを混合するだけで、簡単に機能性床材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明にかかる機能性床材Aを示す断面図である。図1に示すように、上記機能性床材Aは、木質基板6の上に下塗り塗装および中塗り塗装を施して下塗り塗膜5と中塗り塗膜4とを形成し、さらに上塗り塗料を塗布するとともに、紫外線を照射して硬化させ、上塗り塗膜3を形成する工程を含んでなる。
【0017】
図1に示すように、上塗り塗膜3には光触媒1として酸化チタンの微粉を内包したマイクロカプセル2が混合され、上塗り塗膜3中に略均一に混在している。このとき、酸化チタンの粒径は、0.1〜50μmとされ、マイクロカプセル2の粒径は1〜1,000μmとされる。酸化チタンは、微粉のまま、マイクロカプセル化してもよいが、シリカ、アルミナ、活性炭、あるいは非晶質リン酸カルシウム等の担体に担持して、マイクロカプセル化してもよい。
【0018】
図2は、図1に示す機能性床材Aを長期間使用して表面の上塗り塗膜3が摩耗した状態を示す断面図である。図2に示すように、上塗り塗膜3の摩耗によりマイクロカプセル2のカプセル壁が削られ、露出した酸化チタンに紫外線が当たり、光触媒機能を発揮する。その結果、室内のこもった臭い、たばこの臭い、生ゴミ臭等不快臭を消臭し、あるいはホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)等の臭いを消臭するとともに、シックハウスの原因物質を分解する等の効果を発揮する。
【0019】
図3は、上記機能性床材Aの製造工程を示す模式図である。図3に示すように、木質基板6に下塗り工程で下塗りロールコータ71により下塗り塗装を行い、硬化後、中塗り工程で中塗りロールコータ72により中塗り塗装を行う。その後、上塗り工程で上塗りロールコータ73で上塗り塗装を行う。
【0020】
この上塗り工程では、上塗り塗料としてウレタン系紫外線硬化型塗料を塗布量0.7〜1.5g/尺2で用いるとともに、上記酸化チタンの微粉を内包したマイクロカプセル2を混合して塗布する。最後に紫外線照射装置8で、紫外線を照射して上記ウレタン系紫外線硬化型塗料を硬化させる。このとき、酸化チタンの微粉はマイクロカプセル2に内包され、カプセル壁で紫外線はブロックされているため、この段階で光触媒機能を発揮することはなく、酸化チタンの光触媒としてのライフを永くすることができる。
【0021】
このように、塗装時に紫外線照射により触媒が活性化することを防がれているため、施工後、歩行等によって表面が摩耗し、カプセル壁が削られたとき、露出した酸化チタンに紫外線が当たることにより初めて触媒活性を示し、室内のこもった臭い、たばこの臭い、生ゴミ臭等不快臭、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)等の室内汚染物質の臭いを消臭し、あるいはこれらの臭気発生源を分解すること等が可能となる。
【0022】
なお、上記実施形態は光触媒として酸化チタンを用いた場合について述べたが、酸化チタン以外の光触媒についても、実施可能であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる機能性床材を示す断面図である。
【図2】図1に示す機能性床材を長期間使用して表面の上塗り塗膜が摩耗した状態を示す断面図である。
【図3】本発明にかかる機能性床材の製造工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0024】
A 本発明にかかる機能性床材
1 光触媒
2 マイクロカプセル
3 上塗り塗膜
4 中塗り塗膜
5 下塗り塗膜
6 木質基板
71 下塗りロールコータ
72 中塗りロールコータ
73 上塗りロールコータ
8 紫外線照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装された木質基板の表面に上塗り塗料を塗布し、仕上げてなる床材であって、該上塗り塗料が硬化した塗膜中には光触媒を内包したマイクロカプセルが混在し、該光触媒は上記塗膜の摩耗によりカプセル壁が削られるとともに露出し、光触媒機能を発揮するようにされた機能性床材。
【請求項2】
上記光触媒が酸化チタンである請求項1に記載の機能性床材。
【請求項3】
木質基板の表面に下塗り塗料を塗布し、その後、光触媒を内包したマイクロカプセルが略均一に混合された光硬化性塗料を上塗り塗装し、紫外線照射により硬化させ仕上げてなる機能性床材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−261093(P2008−261093A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102412(P2007−102412)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】