説明

機能性微粒子及びその製造方法

【課題】簡単な方法で製造することができるので、機能性物質を多孔性微粒子の細孔内に均一且つ安定に封入して、当該機能性物質が細孔内部から微粒子表面にブリードアウトすることのない機能性微粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表面から内部に貫通する多数の細孔を有する多孔性微粒子と、多孔性微粒子の細孔内に充填されて当該細孔内で機能を発現する機能性物質と、多孔性微粒子の細孔内に充填されて機能性物質を細孔内に安定に捕捉する捕捉物質とを有しており、この捕捉物質は、機能性物質と親和性を有する主鎖部と、多孔性微粒子と親和性を有する末端部とを具備して、当該末端部が相互に結合する反応基を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性物質を多孔性微粒子の内部に充填した機能性微粒子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な用途に使用されている機能性物質の中には、気化しやすい物質、液体など流動性のある物質、或いは、温度によって融解して流動性を示すようになる物質など、用途によってはそのままでの取り扱いが難しいものも少なくない。例えば、パラフィンなどの物質は、固体‐液体間で相転移して、これに伴う潜熱の蓄熱と放熱を繰り返すことで機能する潜熱蓄熱物質であり、固体状態と液体状態が繰り返されるので、その取り扱いが非常に難しい。
【0003】
そこで、これらの機能性物質を取り扱いやすくするために、多孔性微粒子の細孔内に機能性物質を充填した機能性微粒子が提案されている。これらの機能性微粒子は、多孔性微粒子の細孔内に機能性物質を充填するという比較的簡単な方法で製造することができるので製造コストが安価である。また、均一な粒子径を有する多孔性微粒子が多く市販されており、これらの多孔性微粒子を用途に合わせて利用することで、製造された機能性微粒子の粒子径を均一に制御することができる。
【0004】
しかし、多孔性微微粒子の細孔は表面から内部にかけて貫通しており、細孔内に充填された機能性物質が細孔内部から微粒子表面にブリードアウトし易いという問題があった。例えば、上述の潜熱蓄熱物質が細孔内に充填された機能性微粒子においては、固体状態にある潜熱蓄熱物質は細孔内に安定に維持されるが、相転移により液体状態に変化した潜熱蓄熱物質は細孔内部から微粒子表面にブリードアウトしてしまい、多孔性微粒子内で蓄熱と放熱を繰り返すことができず機能性微粒子としての機能を繰り返し発現できなくなる。
【0005】
これに対して、機能性物質を細孔内に充填した機能性微粒子の表面を樹脂層などでコーティングして機能性物質を多孔性微粒子内に封入するという方法がとられている。例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの各種反応性樹脂、或いは、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂で機能性微粒子の表面を被覆する。
【0006】
ところが、これらの方法においては、反応性樹脂の硬化反応或いは熱可塑性樹脂の融解のために高温の熱処理が必要となる。そのため、この高温条件においては、細孔内に充填した機能性物質が、気化、或いは、液化してブリードアウトしてしまい、機能性物質を多孔性微粒子内に封入することができなくなる。
【0007】
例えば、上述の潜熱蓄熱物質が細孔内に充填された機能性微粒子の場合には、表面コーティングの熱処理温度が潜熱蓄熱物質の融点より高くなると、相転移により液体状態に変化した潜熱蓄熱物質が細孔内部から微粒子表面にブリードアウトして、表面にコーティングされた樹脂層と混ざり合い、或いは、樹脂層の形成を阻害して潜熱蓄熱物質の封入がうまくできなくなってしまう。
【0008】
そこで、下記特許文献1においては、多孔性粒子の孔内に充填された潜熱蓄熱物質と非相溶である液状硬化性樹脂を多孔性粒子の表面コーティングの樹脂層として使用することが提案されている。具体的には、潜熱蓄熱物質と非相溶である液状硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を採用し、このエポキシ樹脂を多孔性粒子の表面にコーティングして蓄熱硬化性樹脂複合体を調整し、その後、この蓄熱硬化性樹脂複合体にコーティングされたエポキシ樹脂に硬化剤を付与した後、加熱オーブンなどで成形することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−82427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記特許文献1の方法では、多孔性粒子の孔内に充填された潜熱蓄熱物質がエポキシ樹脂の硬化反応時に液体状態に相転移しても、この液体状態の蓄熱成分は、エポキシ樹脂と非相溶であるためブリードアウトしにくくなる。しかし、この方法は、表面コーティングの樹脂層を形成するために、まず、エポキシ樹脂をコーティングし、次にその硬化剤を混合し、更に、加熱処理するという複雑な工程を必要とする。そのため、機能性物質を多孔性微粒子の細孔内に均一且つ安定に封入することが難しく、また、工程数の増加により生産性が悪いという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処して、簡単な方法で製造することができるので、機能性物質を多孔性微粒子の細孔内に均一且つ安定に封入して、当該機能性物質が細孔内部から微粒子表面にブリードアウトすることのない機能性微粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、上記機能性微粒子を製造する機能性微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、機能性物質を多孔性微粒子の細孔内に安定に封入するために、機能性物質と親和性を有する部分とその末端に結合性を有する反応基を備えた特定の物質を併用することで上記目的を達成できることを見出し本発明の完成に至った。
【0013】
即ち、本発明に係る機能性微粒子は、請求項1の記載によると、
表面から内部に貫通する多数の細孔を有する多孔性微粒子と、
この多孔性微粒子の細孔内に充填されて当該細孔内で機能を発現する機能性物質と、
上記多孔性微粒子の細孔内に充填されて上記機能性物質を上記細孔内に安定に捕捉する捕捉物質とを有しており、
上記捕捉物質は、上記機能性物質と親和性を有する主鎖部と、上記多孔性微粒子と親和性を有する末端部とを具備して、当該末端部が相互に結合する反応基を有していることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、多孔性微粒子の細孔内に機能性物質と捕捉物質とが充填されており、この捕捉物質の主鎖部が機能性物質と親和性を有している。従って、機能性物質は、多孔性微粒子の細孔内で捕捉物質と共に安定に存在する。また、この捕捉物質の末端部が多孔性微粒子と親和性を有しており、この末端部が多孔性微粒子へのアンカー効果を発現する。更に、この捕捉物質の末端部は、相互に結合する反応基を有しており、捕捉物質同士が分子間で相互に結合してその分子量を増大させる。
【0015】
このことにより、機能性物質が分子量の増大した捕捉物質の主鎖部に安定に捕捉されると共に、この捕捉物質の末端部を介して多孔性微粒子の細孔内に安定に封入されることとなる。よって、請求項1に記載の発明においては、簡単な方法で製造することができるので、機能性物質を多孔性微粒子の細孔内に均一且つ安定に封入して、当該機能性物質が細孔内部から微粒子表面にブリードアウトすることのない機能性微粒子を提供することができる。
【0016】
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載の機能性微粒子において、
上記多孔性微粒子は、多孔性シリカであることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、多孔性微粒子として多孔性シリカを採用するようにしてもよい。このことにより、請求項2に記載の機能性微粒子においても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果がより具体的に達成され得る。
【0018】
また、本発明は、請求項3の記載によると、請求項1又は2に記載の機能性微粒子において、
上記捕捉物質は、反応性シリル基を上記末端部として有していることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、反応性シリル基を末端部に有する捕捉物質を採用するようにしてもよい。このような捕捉物質は、末端部のシリル基によって多孔性シリカなどの多孔性微粒子に対してより親和性を有するようになる。よって、請求項3に記載の機能性微粒子においても、請求項1又は2に記載の発明と同様の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0020】
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項3に記載の機能性微粒子において、
上記反応性シリル基は、上記反応基として少なくとも1つのアルコキシ基を有していることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、反応性シリル基の反応基としてアルコキシ基を有する捕捉物質を採用するようにしてもよい。このような反応基は、常温で互いに結合することができるので、機能性微粒子の製造時に高温処理を必要とせず、機能性物質のブリードアウトをより抑制することができる。よって、請求項4に記載の機能性微粒子においても、請求項3に記載の発明と同様の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0022】
また、本発明は、請求項5の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載の機能性微粒子において、
上記捕捉物質は、ポリイソブチレン、ポリオキシプロピレン、ポリアクリレート、ポリエーテルポリオール、及び、ポリメタクリレートの群から選ばれる少なくとも1種のオリゴマー或いはポリマーを上記主鎖部として有していることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、上述の群から選ばれる少なくとも1種のオリゴマー或いはポリマーを主鎖部に有する捕捉物質を採用するようにしてもよい。このような捕捉物質は、主鎖部の構造により機能性物質、特に、有機物質からなる機能性物質に対してより親和性を有するようになる。よって、請求項5に記載の機能性微粒子においても、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0024】
また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項1〜5のいずれか1つに記載の機能性微粒子において、
上記機能性物質は、上記細孔内において温度変化による相転移から生じる潜熱を利用して蓄熱機能を発現する潜熱蓄熱物質であることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、機能性物質として、例えば、固体‐液体間で相転移して、これに伴う潜熱の蓄熱と放熱を繰り返すことで機能する潜熱蓄熱物質を採用するようにしてもよい。このような潜熱蓄熱物質は、相転移により液体状態になることにより、多孔性微粒子の細孔からブリードアウトし易いという性質を有する。よって、請求項6に記載の機能性微粒子においては、このようなブリードアウトし易い機能性物質に対しても請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果が具体的に達成され得る。
【0026】
また、本発明は、請求項7の記載によると、請求項6に記載の機能性微粒子において、
上記潜熱蓄熱物質は、パラフィン、ワックス、脂肪酸、ポリアルキレングリコールなどの有機物質を含有して、その相転移温度が−30℃〜200℃であることを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、上述の有機物質を含有する潜熱蓄熱物質を採用するようにしてもよい。このような潜熱蓄熱物質は、その相転移温度が−30℃〜200℃であることが好ましい。このことにより、請求項7に記載の機能性微粒子においても、請求項6に記載の発明と同様の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0028】
また、本発明は、請求項8の記載によると、請求項6又は7に記載の機能性微粒子において、
上記潜熱蓄熱物質を30重量%〜90重量%含有し、潜熱量が50J/g以上であることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、機能性微粒子中の潜熱蓄熱物質の含有率が30重量%〜90重量%の範囲内にあって、且つ、機能性微粒子の潜熱量が50J/g以上であることが好ましい。このことにより、請求項8に記載の機能性微粒子においても、請求項6又は7に記載の発明と同様の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0030】
また、本発明に係る機能性微粒子の製造方法は、請求項9の記載によると、
請求項1〜8のいずれか1つに記載の機能性微粒子の製造方法であって、
上記機能性物質及び上記捕捉物質を含有する組成物と上記多孔性微粒子とを混合し当該多孔性微粒子の細孔内に上記組成物を充填する充填工程と、
上記組成物中の上記捕捉物質が有する上記反応基を相互に結合させる結合反応工程とを有することを特徴とする。
【0031】
上記構成によれば、機能性微粒子の製造方法は、充填工程と結合反応工程とを有している。充填工程においては、まず、機能性物質及び捕捉物質を含有する組成物を作成する。この組成物は、上述のように、機能性物質と捕捉物質の主鎖部が親和性を有していることから安定した組成物を形成する。次に、この組成物に多孔性微粒子を混合して多孔性微粒子の細孔内に組成物を充填する。
【0032】
一方、結合反応工程においては、上述のように、多孔性微粒子の細孔内に充填された組成物を構成する捕捉物質同士がその末端部に有する反応基を分子間で相互に結合してその分子量を増大させる。また、この末端部は、多孔性微粒子と親和性を有しており、この末端部が多孔性微粒子へのアンカー効果を発現する。このことにより、機能性物質が分子量の増大した捕捉物質の主鎖部に安定に捕捉されると共に、この捕捉物質の末端部を介して多孔性微粒子の細孔内に安定に封入されることとなる。
【0033】
なお、この結合反応工程は、上記充填工程が完了した後に進行することもあり、又は、充填工程と結合反応工程とが同時に進行することもあり得る。すなわち、充填工程がある程度進行した状態にはあるが、未だ完結していない状態において、徐々に結合反応工程が進行することがあってもよい。
【0034】
よって、請求項9に記載の発明においては、簡単な方法で製造することができるので、機能性物質を多孔性微粒子の細孔内に均一且つ安定に封入して、当該機能性物質が細孔内部から微粒子表面にブリードアウトすることのない機能性微粒子を製造する機能性微粒子の製造方法を提供することができる。
【0035】
また、本発明は、請求項10の記載によると、請求項9に記載の機能性微粒子の製造方法において、
上記機能性物質は、上記細孔内において温度変化による相転移から生じる潜熱を利用して蓄熱機能を発現する潜熱蓄熱物質であって、
上記充填工程において、
上記組成物を上記機能性物質の相転移による液体状態に維持して、当該組成物を上記多孔性微粒子の細孔内に充填し、
上記結合反応工程において、
上記多孔性微粒子の細孔内に充填された上記組成物を上記機能性物質の相転移による固体状態に維持して、上記反応基を相互に結合させることを特徴とする。
【0036】
上記構成によれば、機能性物質として、上述の潜熱蓄熱物質を採用し、充填工程においては、潜熱蓄熱物質を相転移により液体状態に維持して組成物を多孔性微粒子の細孔内に充填する。このように潜熱蓄熱物質が液体状態にあることにより、組成物の流動性が向上し多孔性微粒子の細孔内に容易に充填されることとなる。
【0037】
次に、結合反応工程においては、潜熱蓄熱物質を相転移により固体状態に維持して捕捉物質の末端部が有する反応基を分子間で相互に結合させる。このように潜熱蓄熱物質が固体状態にあることにより組成物の流動性が抑えられ、潜熱蓄熱物質が多孔性微粒子の細孔内に安定に捕捉された状態で反応基の結合が行われる。
【0038】
よって、請求項10に記載の機能性微粒子の製造方法においても、請求項9に記載の発明と同様の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0039】
また、本発明に係る機能性微粒子の製造方法は、請求項11の記載によると、
請求項1〜8のいずれか1つに記載の機能性微粒子の製造方法であって、
上記機能性物質と上記多孔性微粒子とを混合し当該多孔性微粒子の細孔内に上記機能性物質を充填する充填工程と、
この充填工程後に、上記捕捉物質を含有する処理液に上記機能性物質を充填した上記多孔性微粒子を混合して、当該多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に上記捕捉物質を付与する捕捉物質付与工程と、
上記多孔性微粒子の表面に存在する細孔部において、上記捕捉物質が有する上記反応基を相互に結合させる結合反応工程とを有することを特徴とする。
【0040】
上記構成によれば、機能性微粒子の製造方法は、充填工程と捕捉物質付与工程と結合反応工程とを有している。充填工程においては、機能性物質に多孔性微粒子を混合して多孔性微粒子の細孔内に機能性物質を充填する。
【0041】
続く捕捉物質付与工程においては、まず、捕捉物質を含有する処理液を作成する。次に、この処理液に含有される捕捉物質を多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に付与する。このとき、多孔性微粒子の全ての細孔内(表面に存在する細孔部のみでない)には既に機能性物質が充填されており、捕捉物質は細孔の奥部にまでは到達できない。しかし、上述のように、機能性物質と捕捉物質の主鎖部が親和性を有していることにより、多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に捕捉物質が付与されることとなる。
【0042】
このとき、細孔内に充填された機能性物質のうち、表面に存在する細孔部付近に充填された機能性物質が処理液中に含有される捕捉物質の主鎖部と親和性をもって結合し、捕捉物質が多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に安定に付与されることとなる。すなわち、捕捉物質は、細孔部のうち表面付近に集中し、その内部に機能性物質が充填されているものと思われる。
【0043】
次に、結合反応工程においては、上述のように、多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に充填された捕捉物質がその末端部に有する反応基を分子間で相互に結合してその分子量を増大させる。また、この末端部は、多孔性微粒子と親和性を有しており、この末端部が多孔性微粒子へのアンカー効果を発現する。このことにより、機能性物質が分子量の増大した捕捉物質の主鎖部に安定に捕捉される。ここで、捕捉物質は、細孔部のうち表面付近に集中して存在するので、その末端部を介して多孔性微粒子の細孔のうち表面に存在する細孔部に安定に維持され、その細孔部の内部に充填された機能性物質は、細孔内に安定に封入されることとなる。
【0044】
よって、請求項11に記載の発明においては、簡単な方法で製造することができるので、機能性物質を多孔性微粒子の細孔内に均一且つ安定に封入して、当該機能性物質が細孔内部から微粒子表面にブリードアウトすることのない機能性微粒子を製造する機能性微粒子の製造方法を提供することができる。
【0045】
また、本発明は、請求項12の記載によると、請求項11に記載の機能性微粒子の製造方法において、
上記機能性物質は、上記細孔内において温度変化による相転移から生じる潜熱を利用して蓄熱機能を発現する潜熱蓄熱物質であって、
上記充填工程において、
上記機能性物質を相転移による液体状態に維持して、当該機能性物質を上記多孔性微粒子の細孔内に充填し、
上記捕捉物質付与工程において、
上記多孔性微粒子の細孔内に充填された上記機能性物質を相転移による固体状態に維持して、上記多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に上記処理液を付与し、
上記結合反応工程において、
上記機能性物質を相転移による固体状態に維持して、上記反応基を相互に結合させることを特徴とする。
【0046】
上記構成によれば、機能性物質として、上述の潜熱蓄熱物質を採用し、充填工程においては、潜熱蓄熱物質を相転移により液体状態に維持して多孔性微粒子の細孔内に充填する。このように潜熱蓄熱物質が液体状態にあることにより、潜熱蓄熱物質の流動性が向上し多孔性微粒子の細孔内に容易に充填されることとなる。
【0047】
続く捕捉物質付与工程においては、潜熱蓄熱物質を相転移により固体状態に維持して多孔性微粒子の細孔内から潜熱蓄熱物質がブリードアウトすることを抑制するようにして、処理液に含有される捕捉物質を多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に付与する。このとき、細孔内に充填され固体状態に維持された機能性物質のうち、表面に存在する細孔部付近に充填された機能性物質が処理液中の捕捉物質の主鎖部と親和性をもって結合し、捕捉物質が多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に安定に付与されるものと思われる。
【0048】
次に、結合反応工程においては、潜熱蓄熱物質を固体状態に維持したまま捕捉物質の末端部が有する反応基を分子間で相互に結合させる。このように潜熱蓄熱物質が固体状態にあることにより、組成物の流動性が抑えられ潜熱蓄熱物質が多孔性微粒子の細孔内に安定に捕捉された状態で反応基の結合が行われる。
【0049】
よって、請求項12に記載の機能性微粒子の製造方法においても、請求項11に記載の発明と同様の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る機能性微粒子は、多孔性微粒子の細孔内に機能性物質と捕捉物質とが充填されている。また、捕捉物質の主鎖部が機能性物質と親和性を有しており、機能性物質は、捕捉物質と共に多孔性微粒子の細孔内に安定に封入されている。更に、この捕捉物質の末端部が多孔性微粒子と親和性を有しており、捕捉物質は、この末端部のアンカー効果により多孔性微粒子の細孔内に保持されている。
【0051】
本発明において、多孔性微粒子とは、その表面から内部にかけて貫通する細孔を有する無機物質又は有機物質からなる微粒子であって、その内部に空洞を有する中空微粒子であってもよく、或いは、空洞を有していない微粒子であってもよい。例えば、無機物質からなる多孔性微粒子としては、シリカ、アルミナなどの金属酸化物、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、リン酸マグネシウム、アパタイトなどのリン酸塩などからなるものを挙げることができる。また、有機物質からなる多孔性微粒子としては、ポリエチレン、ポリウレタンなどの各種樹脂からなる発泡体などを挙げることができる。
【0052】
但し、本発明においては、機能性微粒子として作用することから機械的強度、化学的安定性などが要求される。このことから、無機物質からなる多孔性微粒子を使用することが好ましく、また、均一な粒子径を有する微粒子が多く市販されていることなどから多孔性シリカを使用することがより好ましい。
【0053】
ここで、多孔性微粒子の粒子径は、特に限定するものではないが、一般に1μm〜500μmの範囲にあることが好ましく、更に、5μm〜300μm程度の範囲にあることがより好ましい。
【0054】
本発明において、機能性物質とは、多孔性微粒子内に充填することが可能で多孔性微粒子内でその機能を発現できるものであれば、特に限定するものではない。特に本発明は、揮発性、流動性などの性質によりそのままでは取り扱いが難しい機能性物質を取り扱う際に効果を発揮する。例えば、固体‐液体間で相転移して、これに伴う潜熱の蓄熱と放熱を繰り返すことで機能する潜熱蓄熱物質を挙げることができる。これらの潜熱蓄熱物質は、蓄熱機能を発現するために固体状態と液体状態が繰り返され、固体状態では取り扱いが容易であるが、相転移により液体状態になると流動性が生じて取り扱いが難しくなる。
【0055】
これらの潜熱蓄熱物質は、その融点(相転移温度)で相転移して蓄熱と放熱を繰り返すことができ、利用温度範囲にその融点があるものを使用すればよい。一般に潜熱の大きな物質として、例えば、パラフィン、ワックス、脂肪酸、ポリアルキレングリコール、或いは、ポリアルキレングリコールのエーテル類などを挙げることができる。中でも、パラフィン、ワックスなどは融点の異なる多くの物質が市販されており、任意の発熱温度に制御し易く潜熱蓄熱物質として好ましい。
【0056】
また、これらの潜熱蓄熱物質の融点(相転移温度)は、機能性微粒子の目的とする温度範囲にあればよいが、一般に−30℃〜200℃で使用されるものが多く、更に、−10℃〜100℃で使用されるものが更に多い。これらの物質としては、例えば、n−テトラデカン(C1430):融点5.9℃、潜熱量333.9J/gがあり、n−オクタデカン(C1838):融点28.2℃、潜熱量243.6J/gがあり、n−イサコン(C2042):融点36.8℃、潜熱量247.3J/gがある。
【0057】
なお、潜熱蓄熱物質を充填した機能性微粒子の蓄熱量は、使用する多孔性微粒子の細孔容積及びこれに充填する潜熱蓄熱物質の量により調節する。一般に、多孔性微粒子に充填する潜熱蓄熱物質の量は、機能性微粒子に対して30重量%〜90重量%の範囲にあることが好ましく、50重量%〜80重量%の範囲であることがより好ましい。多孔性微粒子に充填する潜熱蓄熱物質の量が30重量%〜90重量%の範囲にあることにより、機能性微粒子の潜熱量を50J/g以上に維持することができ蓄熱材として好ましい。
【0058】
また、本発明において、捕捉物質とは、多孔性微粒子内に充填される機能性物質と親和性を有する主鎖部と、多孔性微粒子と親和性を有する末端部とを有する物質である。このような捕捉物質としては、機能性物質の種類と多孔性微粒子の種類とによって様々な物質が該当するが、本発明においては、機能性物質と多孔性微粒子との性質が異なっている場合に特に捕捉物質の役割が大きくなる。すなわち、捕捉物質とは、多孔性微粒子を構成する物質と性質の異なる機能性物質を当該多孔性微粒子の細孔内に安定に充填する役割を果たすものである。
【0059】
ここで、機能性物質と多孔性微粒子との性質の違いを評価する方法としては、両者を混合した時の相溶性でもって評価してもよく、両者の表面張力の違いによる濡れ難さでもって評価してもよい。または、両者の溶解パラメーター(SP値)、或いは、有機性値・無機性値などの測定値で評価してもよい。
【0060】
例えば、上述のパラフィンなどの潜熱蓄熱物質を機能性物質とし、多孔性シリカを多孔性微粒子とした場合を考える。ここで、パラフィンは有機物質であり多孔性シリカは無機物質であることから、これらは非常に性質が異なる。従って、多孔性シリカの細孔内にパラフィンを充填しても互いに親和性が低く、容易にブリードアウトすることとなる。そこで、本発明においては、捕捉物質をこれらの間に介在させる。このとき、パラフィンは有機物質であることから、捕捉物質の主鎖部は有機物質に親和性を有する構造となる。一方、多孔性シリカは無機物質であることから、捕捉物質の末端部は無機物質に親和性を有する構造となる。
【0061】
ここで、捕捉物質の分子構造は、上述のように、主鎖部とこの主鎖部の端部に位置する末端部とからなる。この捕捉物質の主鎖部は、機能性物質に親和性を有するものであるが、直鎖状であってもよく或いは分岐鎖状であってもよい。また、主鎖部の分子量はどの程度であってもよく、特に限定するものではないが、後述するように、多孔性微粒子の細孔内において、捕捉物質同士はその末端部で相互に分子間結合してその分子量を増大させる。従って、捕捉物質は、低い分子量で多孔性微粒子の細孔内に充填され易く、その後の分子間結合で分子量を増大させることで細孔内に留まり易くなることが好ましい。
【0062】
ここで、例として上述のパラフィンなどの潜熱蓄熱物質を機能性物質とし、多孔性シリカを多孔性微粒子とした場合を考える。このとき、捕捉物質の主鎖部は、パラフィンなどの有機物質に親和性を有する物質、例えば、ポリイソブチレン、ポリオキシプロピレン、ポリアクリレート、ポリエーテルポリオール、及び、ポリメタクリレートなどのオリゴマー或いはポリマーを挙げることができる。これらのオリゴマー或いはポリマーは有機物質であり、パラフィンなどの潜熱蓄熱物質に強い親和性を有している。また、その分子量は、上述の理由からポリマーであるよりオリゴマーであることが好ましい。
【0063】
一方、捕捉物質の末端部は、多孔性微粒子に親和性を有するものであり、この親和性が捕捉物質の多孔性微粒子へのアンカー効果を発現し、捕捉物質を多孔性微粒子の細孔内に強く保持するものと考えられる。また、この捕捉物質の末端部は、主鎖部の有する複数の端部の全ての位置に多孔性微粒子に親和性を有する末端部が存在するものでなくてもよいが、複数の端部のうちの多くの位置に多孔性微粒子に親和性を有する末端部が存在することが好ましい。
【0064】
例えば、捕捉物質の主鎖部が直鎖状である場合には、その両端部の両方に多孔性微粒子に親和性を有する末端部を有することにより、分子間結合が多く生じて捕捉物質の分子量がより大きくなり細孔内に留まり易くなる。また、捕捉物質の主鎖部が分岐鎖状である場合には、その端部の多くに多孔性微粒子に親和性を有する末端部を有することにより、分子間結合で捕捉物質同士が網目構造を形成して分子量がより大きくなり細孔内に留まり易くなる。
【0065】
また、捕捉物質は、多孔性微粒子に親和性を有する末端部が相互に結合する反応基を有している。ここで、例として上述のパラフィンなどの潜熱蓄熱物質を機能性物質とし、多孔性シリカを多孔性微粒子とした場合を考える。このとき、捕捉物質の末端部は、多孔性シリカに親和性を有して、且つ、相互に結合する反応基を有している。この場合には、捕捉物質の末端部として、例えば、反応性シリル基を挙げることができる。
【0066】
反応性シリル基とは、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性基を反応基として含有し、水分や触媒の存在下に縮合反応してシロキサン結合を形成して相互に結合するシリル基をいう。ここで、加水分解性基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基をいい、加水分解により反応性の水酸基を形成するものをいう。従って、上述の例においては、捕捉物質の末端部は、反応基としてアルコキシ基を有する反応性シリル基(以下、「アルコキシシリル基」という)とすることが好ましい。このアルコキシシリル基が有する反応基としてのアルコキシ基の数は、モノ、ジ、トリのいずれであってもよい。
【0067】
この例のように、捕捉物質の末端部がアルコキシシリル基の場合には、上述のように、捕捉物質同士がそれらの末端部においてシロキサン結合を形成して相互に結合し、複数の捕捉物質が直線状或いは網目状に結合して大分子量の捕捉物質を形成する。この結合は、多孔性微粒子の細孔内で反応するので、捕捉物質は機能性物質をその主鎖部で保持したまま、自らの分子量を増大し、多孔性微粒子の細孔内に強固に留まることとなる。よって、機能性物質は、捕捉物質を介してより強く多孔性微粒子の細孔内に封入されることとなる。
【0068】
更に、上述の例においては、捕捉物質のアルコキシシリル基、或いは、これらが結合したシロキサン結合部は、ケイ素原子を骨格としており、二酸化ケイ素からなる多孔性シリカとは非常に親和性が強い。また、多孔性シリカの表面に水酸基が存在する場合には、アルコキシシリル基は、この水酸基とも反応し、その結果、捕捉物質自体が多孔性シリカとシロキサン結合を介して多孔性シリカの表面に強固に結合することができる。
【0069】
ここで、本発明に係る機能性微粒子の製造方法を下記の各実施形態によって説明する。これらの実施形態においては、製造方法をより具体的に説明するため、多孔性微粒子として多孔性シリカを使用し、その細孔内に充填する機能性物質としてパラフィンからなる潜熱蓄熱物質を使用する。また、パラフィンを多孔性シリカの細孔内に捕捉する捕捉物質として、炭化水素オリゴマーを主鎖部とし、その両末端にアルコキシシリル基を有する両末端反応性炭化水素オリゴマーを使用する。
【0070】
(第1実施形態)
本第1実施形態に係る機能性微粒子の製造方法は、充填工程と結合反応工程とを有している。以下、各工程について説明する。
【0071】
A1:充填工程
充填工程においては、まず、機能性物質及び捕捉物質を含有する組成物を作成する。本第1実施形態においては、機能性物質はパラフィンであり、捕捉物質の主査部は炭化水素オリゴマーであることから、これらは親和性が強く相溶性を示す。まず、使用するパラフィンをその融点以上の温度にして液体状態とし、これに捕捉物質を混合する。機能性物質としてのパラフィンに混合する捕捉物質の割合は、多孔性微粒子としての多孔性シリカの細孔内にパラフィンを補足するに足りる量であればよいが、本第1実施形態においては、多孔性シリカの細孔内に充填するパラフィンの量に対して1重量%〜20重量%の範囲であることが好ましく、2重量%〜10重量%の範囲であることがより好ましい。パラフィンに混合する捕捉物質の割合が1重量%〜20重量%の範囲にあることにより、多孔性シリカの細孔部にパラフィンを最も効率よく補足することができる。
【0072】
ここで、組成物には、機能性物質と捕捉物質以外に溶媒、架橋剤、触媒などを混合することができる。但し、溶媒は組成物を多孔性微粒子の細孔内に充填した後に除去する必要があることから、できるだけ使用しないか、使用するとしても最小限に使用することが好ましい。一方、架橋剤及び触媒は、捕捉物質の有する反応基に合わせて必要により使用する。本第1実施形態においては、捕捉物質の反応基がアルコキシ基であることから、アルコキシ基の加水分解に必要な水分を組成物に混合するようにしてもよい。また、組成物中にアルコキシ基の反応触媒として、ジオクチル錫ラウレートなどの有機錫化合物やテトライソプロポキシチタンなどの有機チタン化合物を混合するようにしてもよい。
【0073】
次に、上述のようにして作成した組成物をパラフィンの融点以上の温度で液体状態に維持して、多孔性シリカの細孔内に充填する。このとき、組成物の流動性を高めるには、融点よりも十分に高い温度にすることが好ましい。このように液体状態とした組成物の中に多孔性シリカを混合撹拌することにより、当該組成物を多孔性シリカの細孔内に充填することができる。なお、この充填時に減圧或いは加圧、又は、減圧と加圧を行うことにより、多孔性シリカの細孔内への組成物の充填をより完全に行うようにしてもよい。
【0074】
組成物の充填後は、多孔性シリカの温度をパラフィンの融点以下に下げるようにする。このことにより、パラフィンが相転移して組成物が固体状態となり細孔内に安定に保持される。従って、組成物が細孔内からブリードアウトすることがない。
【0075】
B1:結合反応工程
結合反応工程においては、上述のように、多孔性微粒子の細孔内に充填された組成物を構成する捕捉物質同士がその末端部に有する反応基を分子間で相互に結合してその分子量を増大させる。本第1実施形態においては、捕捉物質の両末端にあるアルコキシシリル基のアルコキシ基が組成物中の水分或いは環境中の水分により加水分解して水酸基となり末端部が反応性の高いヒドロキシシリル基となる。このヒドロキシシリル基が隣り合う捕捉物質のヒドロキシシリル基との間で縮合反応してシロキサン結合を形成して大分子量の捕捉物質が形成される。
【0076】
また、捕捉物質の末端部に形成された反応性のヒドロキシシリル基は、上述のように、多孔性微粒子である多孔性シリカの表面に水酸基が存在する場合には、この水酸基とも反応し、その結果、捕捉物質自体が多孔性シリカとシロキサン結合を形成する。
【0077】
これらの結合反応は、特に高温処理を必要とせず、パラフィンの融点以下の温度或いは室温においても生じる。従って、本第1実施形態における結合反応工程は、上述の充填工程が行われている間にもその一部は進行しているものと思われる。また、上記充填工程後に多孔性シリカをパラフィンの融点以下の温度に維持している間にも進行し、その後、完結するものと思われる。
【0078】
このようにして、結合反応工程が完結することで本発明に係る機能性微粒子が完成する。本第1実施形態においては、当該機能性微粒子は、機能性物質としてのパラフィンがシロキサン結合により分子量の増大した捕捉物質の主鎖部に安定に捕捉されると共に、この捕捉物質の末端部を介して多孔性微粒子の細孔内に安定に封入されることとなる。
【0079】
(第2実施形態)
本第2実施形態に係る機能性微粒子の製造方法は、上記第1実施形態と異なり、充填工程と結合反応工程との間に捕捉物質付与工程を有して、機能性物質の充填と捕捉物質の付与を別工程とする。すなわち、本第2実施形態においては、充填工程と捕捉物質付与工程と結合反応工程とを有している。以下、各工程について説明する。
【0080】
A2:充填工程
充填工程においては、多孔性微粒子の細孔内に機能性物質を充填する。まず、機能性物質としてのパラフィンをその融点以上の温度に維持して液体状態とする。このとき、パラフィンの流動性を高めるには、融点よりも十分に高い温度にすることが好ましい。このように液体状態としたパラフィンの中に多孔性微粒子としての多孔性シリカを混合撹拌することにより、当該パラフィンを多孔性シリカの細孔内に充填することができる。なお、この充填時に減圧或いは加圧、又は、減圧と加圧を行うことにより、多孔性シリカの細孔内へのパラフィンの充填をより完全に行うようにしてもよい。
【0081】
パラフィンの充填後は、多孔性シリカの温度をパラフィンの融点以下に下げるようにする。このことにより、パラフィンが相転移して固体状態となり多孔性シリカの細孔内に安定に保持される。従って、機能性物質としてのパラフィンが多孔性シリカの細孔内からブリードアウトすることがない。
【0082】
B2:捕捉物質付与工程
捕捉物質付与工程においては、充填工程後の多孔性シリカに捕捉物質を付与する。まず、捕捉物質を含有する処理液を作成する。処理液は、捕捉物質そのものでもよいが、捕捉物質を溶媒により適切な濃度に希釈して処理液とすることが好ましい。特に、捕捉物質自体が液体状態でないときには溶媒により希釈して液体状態の処理液を作成するようにする。本第2実施形態においては、捕捉物質は両末端反応性炭化水素オリゴマーであるが、主査部の炭化水素オリゴマーの分子量により液体状態であってもその粘度が異なり、高粘度の場合には多孔性シリカへの均一な付与が難しくなる。従って、捕捉物質の分子量が大きく粘度が高い場合には、溶媒により希釈することが好ましい。
【0083】
ここで、処理液には、捕捉物質と溶媒以外に、架橋剤、触媒などを混合することができる。架橋剤及び触媒は、捕捉物質の有する反応基に合わせて必要により使用する。本第2実施形態においては、捕捉物質の反応基がアルコキシ基であることから、アルコキシ基の加水分解に必要な水分を処理液に混合するようにしてもよい。また、処理液中にアルコキシ基の反応触媒として、ジオクチル錫ラウレートなどの有機錫化合物やテトライソプロポキシチタンなどの有機チタン化合物を混合するようにしてもよい。
【0084】
次に、上述のようにして作成した処理液を多孔性シリカに付与する。このとき、細孔内に充填された機能物質としてのパラフィンは、その融点以下の温度で固体状態に維持されている。多孔性シリカに対する処理液の付与量は、含有される捕捉物質の量として、多孔性シリカの細孔内のパラフィンを補足するに足りる量であればよいが、本第2実施形態においては、多孔性シリカの細孔内に充填されたパラフィンの量に対して1重量%〜20重量%の範囲であることが好ましく、2重量%〜10重量%の範囲であることがより好ましい。多孔性シリカに付与される捕捉物質の量が細孔内に充填されたパラフィンの量に対して1重量%〜20重量%の範囲にあることにより、多孔性シリカの細孔内に機能性物質としてのパラフィンを最も効率よく補足することができる。
【0085】
ここで、多孔性シリカの全ての細孔内には上記充填工程により既にパラフィンが充填されており、処理液は細孔の奥部にまでは到達することができない。しかし、本第2実施形態においては、先に細孔内に充填されている機能性物質はパラフィンであり、後から処理液として付与される捕捉物質の主査部は炭化水素オリゴマーであることから、これらは親和性が強く相溶性を示す。このことにより、多孔性シリカの細孔内に充填されたパラフィンのうち、表面に存在する細孔部付近に充填されたパラフィンが処理液中の捕捉物質の主鎖部に親和性をもって捕捉されるものと思われる。その後、処理液中の溶媒を除去することにより、捕捉物質が多孔性シリカの表面に存在する細孔部(細孔のうちシリカ表面に存在する部分)に安定に付与されるものと思われる。
【0086】
C2:結合反応工程
結合反応工程においては、多孔性シリカの表面に存在する細孔部に付与された捕捉物質同士がその末端部に有する反応基を分子間で相互に結合してその分子量を増大させる。本第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様に、捕捉物質の両末端にあるアルコキシシリル基のアルコキシ基が処理液中の水分或いは環境中の水分により加水分解して水酸基となり末端部が反応性の高いヒドロキシシリル基となる。このヒドロキシシリル基が隣り合う捕捉物質のヒドロキシシリル基との間で縮合反応してシロキサン結合を形成して大分子量の捕捉物質が多孔性シリカの表面に存在する細孔部に形成される。
【0087】
また、捕捉物質の末端部に形成された反応性のヒドロキシシリル基は、上述のように、多孔性微粒子である多孔性シリカの表面に水酸基が存在する場合には、この水酸基とも反応し、その結果、捕捉物質自体が多孔性シリカとシロキサン結合を形成する。
【0088】
これらの結合反応は、特に高温処理を必要とせず、パラフィンの融点以下の温度或いは室温においても生じる。従って、本第2実施形態における結合反応工程は、上述の捕捉物質付与工程が行われている間にもその一部は進行しているものと思われる。また、上記捕捉物質付与工程後にも進行し、その後、完結するものと思われる。
【0089】
このようにして、結合反応工程が完結することで本発明に係る機能性微粒子が完成する。本第2実施形態においては、当該機能性微粒子は、機能性物質としてのパラフィンがシロキサン結合により分子量の増大した捕捉物質の主鎖部に安定に捕捉されると共に、この捕捉物質の末端部を介して多孔性微粒子の細孔内に安定に封入されることとなる。
【0090】
特に、本第2実施形態においては、多孔性微粒子の細孔のうち奥部には主に機能性物質としてのパラフィンが充填され、細孔のうち多孔性シリカの表面に存在する細孔部には主に捕捉物質が充填されるようになる。このことにより、捕捉物質が細孔の出口を封鎖する形で機能性物質が細孔内からブリードアウトすることを高度に防止することができる。
【実施例】
【0091】
ここで、上記第1及び第2実施形態に係る機能性微粒子の製造方法を用いて下記の各実施例を行った。
【0092】
実施例1:
本実施例1は、上記第1実施形態に係る製造方法によって潜熱蓄熱物質を機能性物質とする機能性微粒子1を作成した。本実施例1においては、多孔性微粒子として平均粒子径100μmの多孔性シリカ(デグサジャパン株式会社製)を使用した。また、多孔性シリカの細孔内に充填する潜熱蓄熱物質として融点(相転移温度)66℃、潜熱量210J/gのパラフィン(Paraffin Wax−150、日本精蝋株式会社製)を使用した。また、このパラフィンを多孔性シリカの細孔内に捕捉する捕捉物質として、ポリイソブチレンオリゴマーを主鎖部とし、その両末端にメチルジメトキシシリル基を有する両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマー(エピオン100S、株式会社カネカ製)を使用した。
【0093】
A1:充填工程
パラフィン700gをその融点66℃以上の温度である80℃に加熱して液体状態とし、この液体状態のパラフィンの中に両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマー30g、及び、反応触媒としてジオクチル錫ラウレートを0.1g混合して組成物1を作成した。
【0094】
次に、万能混合撹拌機(株式会社ダルトン製)に多孔性シリカ500gを投入し、上記組成物1を80℃に維持したまま、更に、メトキシ基の加水分解に必要な水3gを混合後、直ちに多孔性シリカの中に注入し、万能混合撹拌機を80℃に維持した状態で30分間撹拌混合して上記組成物1を多孔性シリカの細孔内に充填した。撹拌混合30分後の多孔性シリカは、組成物1をその細孔内に完全に充填し表面はサラサラとした紛体状態を示していた。
【0095】
B1:結合反応工程
次に、組成物1を細孔内に充填した多孔性シリカを撹拌しながら万能混合撹拌機をパラフィンの融点66℃以下の温度である60℃に降温した。この状態においては、多孔性シリカの細孔内に充填された組成物1は固体状態となって当該細孔内からブリードアウトすることがない。万能混合撹拌機を60℃に維持した状態で更に120分間撹拌混合して両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマー同士の結合反応を完結した。その後、万能混合撹拌機を降温してから完成した機能性微粒子1を取り出した。
【0096】
実施例2:
本実施例2は、上記第2実施例に係る製造方法によって上記実施例1と同様の潜熱蓄熱物質を機能性物質とする機能性微粒子2を作成した。具体的には、多孔性微粒子として上記実施例1と同じ平均粒子径100μmの多孔性シリカ(デグサジャパン株式会社製)に融点(相転移温度)66℃、潜熱量210J/gのパラフィン(Paraffin Wax−150、日本精蝋株式会社製)を充填した。また、捕捉物質として上記実施例1と同じ両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマー(エピオン100S、株式会社カネカ製)を使用した。
【0097】
A2:充填工程
パラフィン700gをその融点66℃以上の温度である80℃に加熱して液体状態とした。次に、万能混合撹拌機(株式会社ダルトン製)に多孔性シリカ500gを投入し、この中に上記液体状態のパラフィンを注入し、万能混合撹拌機を80℃に維持した状態で30分間撹拌混合して上記パラフィンを多孔性シリカの細孔内に充填した。撹拌混合30分後の多孔性シリカは、パラフィンをその細孔内に完全に充填し表面はサラサラとした紛体状態を示していた。
【0098】
B2:捕捉物質付与工程
次に、両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマー30gを70gの溶媒キシレンに溶解し、この溶液に反応触媒としてジオクチル錫ラウレートを0.1g混合して処理液2を作成した。この処理液2の温度は、50℃とした。
【0099】
次に、パラフィンを細孔内に充填した多孔性シリカを撹拌しながら万能混合撹拌機をパラフィンの融点66℃以下の温度である60℃に降温した。この状態においては、多孔性シリカの細孔内に充填されたパラフィンは固体状態となって当該細孔内からブリードアウトすることがない。
【0100】
ここで、万能混合撹拌機を60℃に維持した状態で、上記処理液2にメトキシ基の加水分解に必要な水3gを混合後、直ちに多孔性シリカの中に注入し、万能混合撹拌機を更に30分間撹拌混合して上記処理液2を多孔性シリカの表面に付与した。
【0101】
C2:結合反応工程
次に、処理液2をその表面にコーティングした多孔性シリカを万能混合撹拌機を60℃に維持した状態で更に120分間撹拌混合した。このとき、処理液2は、その溶媒を揮発させていき、両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマーが多孔性シリカの表面に存在する細孔部に付与される。また、この間に両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマー同士の結合反応が完結する。その後、万能混合撹拌機を降温してから完成した機能性微粒子2を取り出した。
【0102】
比較例1:
本比較例1は、従来の製造方法によって上記実施例1と同様の潜熱蓄熱物質を機能性物質とする機能性微粒子3を作成した。具体的には、多孔性微粒子として上記実施例1と同じ平均粒子径100μmの多孔性シリカ(デグサジャパン株式会社製)に融点(相転移温度)66℃、潜熱量210J/gのパラフィン(Paraffin Wax−150、日本精蝋株式会社製)を充填した。但し、上記実施例1及び2と異なり、両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマーなどの捕捉物質を使用しなかった。
【0103】
A2:充填工程
パラフィン700gをその融点66℃以上の温度である80℃に加熱して液体状態とした。次に、万能混合撹拌機(株式会社ダルトン製)に多孔性シリカ500gを投入し、この中に上記液体状態のパラフィンを注入し、万能混合撹拌機を80℃に維持した状態で30分間撹拌混合して上記パラフィンを多孔性シリカの細孔内に充填した。撹拌混合30分後の多孔性シリカは、パラフィンをその細孔内に完全に充填し表面はサラサラとした紛体状態を示していた。本比較例1においては、捕捉物質付与工程及び結合反応工程を実施することなく、万能混合撹拌機を降温してから完成した機能性微粒子3を取り出した。
【0104】
次に、上記実施例1、実施例2及び比較例1で作成した機能性微粒子1〜3について、その性能を評価した。評価項目としては、蓄熱量測定及びブリードアウト評価を行った。
【0105】
以下、各試験項目及び評価結果について説明する。
【0106】
a.蓄熱量測定:
機能性微粒子の蓄熱量は、示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6000(セイコーインスツル株式会社製)を使用して測定したDSCチャートから算出した。
【0107】
b.ブリードアウト評価:
(1)ブリードアウト評価1:
ビ−カ−に機能性微粒子10gを採取し、水を90g加える。このビーカーを80℃の湯バス中にて30分間加熱する。その後、30℃以下に冷却する。この加熱時(昇温中、昇温後)及び冷却後の状態を目視観察し、下記の評価基準で判定する。
○;昇温中、昇温後、冷却後のいずれにおいても、シリカからのパラフィンのブリードアウトが確認できない。
×;昇温中、昇温後の融点以上の温度においてパラフィンが水層上部に浮き、冷却後はパラフィン塊(固化物)が確認される。
(2)ブリードアウト評価2:
アルミ皿に機能性微粒子を5g採取する。このアルミ皿を100℃の乾燥機中にて10時間加熱後その重量を測定し、下記の評価基準で判定する。また、同様にして150℃の乾燥機中にて5時間加熱後その重量を測定し、同様の評価基準で判定する。
○;機能性微粒子の重量減少が認められない。
×;機能性微粒子の重量が明らかに減少している。
(3)ブリードアウト評価3:
ブリードアウト評価2の終了後、冷却してから機能性微粒子の表面状態を目視観察し、下記の評価基準で判定する。
○;機能性微粒子の表面状態に変化がなく、サラサラした白色粉体状態である。
×;機能性微粒子が固着して紛体状態になく、色も薄い茶色に変色している。
【0108】
上記実施例1、実施例2及び比較例1で作成した機能性微粒子に対する各評価結果を表1に示す。
【0109】
【表1】

表1から分かるように、蓄熱量測定においては、実施例1、実施例2及び比較例1において大きな差異が認められない。従って、いずれも潜熱蓄熱物質であるパラフィンがシリカの内部に充填されて機能性微粒子が形成されていることが分かる。
【0110】
一方、ブリードアウト評価1においては、実施例1及び実施例2で作成した機能性微粒子1及び2は、いずれも、パラフィンの融点より高温に加熱された場合でも、パラフィンがシリカ表面にブリードアウトすることもなく、安定して充填されている。これに対して、比較例1で作成した機能性微粒子3は、パラフィンの融点より高温に加熱された場合、シリカの外部にパラフィンがブリードアウトしている。
【0111】
次に、ブリードアウト評価2においては、実施例1、実施例2及び比較例1は、いずれも、100℃或いは150℃の温度において重量減が認められない。
【0112】
しかし、ブリードアウト評価3においては、実施例1及び実施例2で作成した機能性微粒子1及び2がサラサラした白色粉体状態であるのに対して、比較例1で作成した機能性微粒子3は、シリカの表面にブリードアウトしたパラフィンが固化してシリカの粒子間を融着し、しかも、そのパラフィンがシリカ表面で薄い茶色に熱変色している。
【0113】
これらのことから、実施例1及び実施例2で作成した機能性微粒子1及び2は、いずれも、ブリードアウト評価2の高温状態においても、パラフィンがシリカ表面にブリードアウトすることもなく、安定して充填されている。
【0114】
これに対して、比較例1で作成した機能性微粒子3は、ブリードアウト評価2の高温状態において、シリカの内部に充填されたパラフィンが液状化し、シリカ表面にブリードアウトしたものと思われる。しかし、ブリードアウトしたパラフィンは、その蒸気圧が高いため、100℃或いは150℃に長時間加熱されても蒸発せず、ブリードアウト評価2における重量変化が生じなかったものと思われる。
【0115】
しかし、重量変化が生じていなくても、比較例1で作成した機能性微粒子3は、シリカの表面にパラフィンがブリードアウトしており、機能性微粒子として繰り返し使用に耐える状態にないことは明らかである。
【0116】
これに対して、実施例1及び実施例2で作成した機能性微粒子1及び2は、100℃或いは150℃に長時間加熱されても重量減することもなく、また、パラフィンがシリカ内部に安定して保持されており、繰り返し使用できる機能性微粒子を構成している。
【0117】
よって、本発明においては、簡単な方法で製造することができるので、機能性物質を多孔性微粒子の細孔内に均一且つ安定に封入して、当該機能性物質が細孔内部から微粒子表面にブリードアウトすることのない機能性微粒子及びその製造方法を提供することができる。
【0118】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施形態においては、潜熱蓄熱物質を機能性物質とする機能性微粒子を作成したが、これに限るものではなく、種々の機能性微粒子を作成することができる。特に、内部に充填される機能性物質が気化しやすい物質、液体など流動性のある物質、或いは、温度によって融解して流動性を示すようになる物質などを作成することができる。
(2)上記各実施形態においては、多孔性微粒子として多孔性シリカを使用するものであるが、これに限るものではなく、内部に充填する機能性物質に合わせて、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、アパタイトなどの無機微粒子、或いは、樹脂発泡体などの有機微粒子を使用するようにしてもよい。
(3)上記各実施形態においては、捕捉物質として両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマーを使用したが、これに限るものではなく、捕捉物質の主鎖部が捕捉する機能性物質、或いは、末端部がアンカー効果を発揮する多孔性微粒子に合わせて、種々の構造の捕捉物質を使用することができる。また、上記両末端反応性ポリイソブチレンオリゴマーの主鎖部を捕捉する機能性物質に合わせてより極性のあるポリオキシプロピレン或いはポリアクリレートなどに変更してもよい。
(4)上記各実施形態においては、捕捉物質の持つ末端部としてアルコキシシリル基、具体的にはメチルジメトキシシリル基を使用したが、これに限るものではなく、末端部がアンカー効果を発揮するように、多孔性微粒子に合わせて他の反応性基を使用するようにしてもよい。また、シランカップリング剤等のシラノール基及びその他の反応基と反応し、結合する化合物を併用するようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から内部に貫通する多数の細孔を有する多孔性微粒子と、
この多孔性微粒子の細孔内に充填されて当該細孔内で機能を発現する機能性物質と、
前記多孔性微粒子の細孔内に充填されて前記機能性物質を前記細孔内に安定に捕捉する捕捉物質とを有しており、
前記捕捉物質は、前記機能性物質と親和性を有する主鎖部と、前記多孔性微粒子と親和性を有する末端部とを具備して、当該末端部が相互に結合する反応基を有していることを特徴とする機能性微粒子。
【請求項2】
前記多孔性微粒子は、多孔性シリカであることを特徴とする請求項1に記載の機能性微粒子。
【請求項3】
前記捕捉物質は、反応性シリル基を前記末端部として有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性微粒子。
【請求項4】
前記反応性シリル基は、前記反応基として少なくとも1つのアルコキシ基を有していることを特徴とする請求項3に記載の機能性微粒子。
【請求項5】
前記捕捉物質は、ポリイソブチレン、ポリオキシプロピレン、ポリアクリレート、ポリエーテルポリオール、及び、ポリメタクリレートの群から選ばれる少なくとも1種のオリゴマー或いはポリマーを前記主鎖部として有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の機能性微粒子。
【請求項6】
前記機能性物質は、前記細孔内において温度変化による相転移から生じる潜熱を利用して蓄熱機能を発現する潜熱蓄熱物質であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の機能性微粒子。
【請求項7】
前記潜熱蓄熱物質は、パラフィン、ワックス、脂肪酸、ポリアルキレングリコールなどの有機物質を含有して、その相転移温度が−30℃〜200℃であることを特徴とする請求項6に記載の機能性微粒子。
【請求項8】
前記潜熱蓄熱物質を30重量%〜90重量%含有し、潜熱量が50J/g以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の機能性微粒子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の機能性微粒子の製造方法であって、
前記機能性物質及び前記捕捉物質を含有する組成物と前記多孔性微粒子とを混合し当該多孔性微粒子の細孔内に前記組成物を充填する充填工程と、
前記組成物中の前記捕捉物質が有する前記反応基を相互に結合させる結合反応工程とを有することを特徴とする機能性微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記機能性物質は、前記細孔内において温度変化による相転移から生じる潜熱を利用して蓄熱機能を発現する潜熱蓄熱物質であって、
前記充填工程において、
前記組成物を前記機能性物質の相転移による液体状態に維持して、当該組成物を前記多孔性微粒子の細孔内に充填し、
前記結合反応工程において、
前記多孔性微粒子の細孔内に充填された前記組成物を前記機能性物質の相転移による固体状態に維持して、前記反応基を相互に結合させることを特徴とする請求項9に記載の機能性微粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の機能性微粒子の製造方法であって、
前記機能性物質と前記多孔性微粒子とを混合し当該多孔性微粒子の細孔内に前記機能性物質を充填する充填工程と、
この充填工程後に、前記捕捉物質を含有する処理液に前記機能性物質を充填した前記多孔性微粒子を混合して、当該多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に前記捕捉物質を付与する捕捉物質付与工程と、
前記多孔性微粒子の表面に存在する細孔部において、前記捕捉物質が有する前記反応基を相互に結合させる結合反応工程とを有することを特徴とする機能性微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記機能性物質は、前記細孔内において温度変化による相転移から生じる潜熱を利用して蓄熱機能を発現する潜熱蓄熱物質であって、
前記充填工程において、
前記機能性物質を相転移による液体状態に維持して、当該機能性物質を前記多孔性微粒子の細孔内に充填し、
前記捕捉物質付与工程において、
前記多孔性微粒子の細孔内に充填された前記機能性物質を相転移による固体状態に維持して、前記多孔性微粒子の表面に存在する細孔部に前記処理液を付与し、
前記結合反応工程において、
前記機能性物質を相転移による固体状態に維持して、前記反応基を相互に結合させることを特徴とする請求項11に記載の機能性微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2013−13844(P2013−13844A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147216(P2011−147216)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000177014)三木理研工業株式会社 (20)
【出願人】(591210909)協同組合ラテスト (6)
【Fターム(参考)】