説明

機能性有機分子を透明な基体上へ移す方法

本発明は、層を形成することにより、透明または半透明な基体を機能化するための方法に関係し、この方法は、少なくとも一つのタイプの機能化有機分子または機能化有機金属分子を基体上へ気化させる工程、および上述の層の一部である無機ガラスマトリックスを同時にプラズマ支援化学蒸着に掛ける工程を含むことを特徴とする。また、本発明は、上述の方法により調製された基体、本発明の方法を実行するための装置、および前述の基体の使用にも関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明または半透明な基体、特に高い光学的な品質:輸送用乗り物、建造物、眼科用ガラス、表示システムのスクリーン(テレビ、コンピューター、電話)、道路標識、広告掲示板などに対するグレージング;が要求されるタイプの透明または半透明な基体に関係する。半透明な基体のケースは、表面がテキスチャー化された(surface−texturized)及び/又は印刷された及び/又は厚いプラスチック製もしくはガラス製の基体における適用、特にエレクトロクロミックタイプの拡散グレージングパネル、照明システム、機能化されたグレージングパネルなどにおける適用により代表される。
【0002】
本発明の基体は、ガラス、例えばソーダ石灰シリカガラスもしくは別の組成を有するガラスなど、または透明なプラスチック:ポリカルボナート、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリラート)、エチレン/ビニルアセタートコポリマー、ポリ(エチレンまたはブチレンテレフタラート)、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、シクロオレフィンコポリマー、換言すれば、特にエチレンおよびノルボルネンのコポリマーまたはエチレンおよびシクロペンタジエンのコポリマー、イオノマー樹脂(ポリアミンにより中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーなど)、不飽和ポリエステル、エチレン/ビニルアセタートコポリマーなどである。
【0003】
本発明は、詳細には、ある層を含む透明な基体を利用可能にすることを目的としており、この層は、前述の基体に、殆どの元来存在する透明性および光学的品質を維持しながら、持続的な仕方で、調節および制御可能な程度において、単独または組み合わせて、様々な機能をもたらす。
【背景技術】
【0004】
これらの機能は、本発明との関連において、本質的に有機または有機金属分子により与えられるため、本発明者らは、効果的な量においてこれらの分子を基体上へ移そうと努めた。
【0005】
様々な手段が公知である:気化法、噴霧法、塗布法など。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この層は、例えば熱、湿気、機械的な攻撃(スクラッチなど)、化学的な攻撃、酸素の存在、紫外線の存在などから保護する必要がある。
【0007】
更に、基体自体に対する保護層、特に紫外線または機械的な攻撃に関する保護層もしばしば必要であることが判明しており、特に基体がポリマー、例えばポリカルボナートなどの場合には、基体自体に対する保護層が必要である。
【0008】
公知の保護層は、例えば硬くて熱的に安定した無機ガラス、例えば酸化物及び/又は窒化物(中でもとりわけ、SiO、TiOなどを挙げることができる)から成る無機ガラスである。
【0009】
これらの無機ガラス層は、様々な技法:ラッカー法、ゾル−ゲル法、プラズマ増強化学蒸着法(PECVD);により調製することができ、後者は、一方では硬くて緻密な層の調製を可能にし、この一方では多分子層の調製を可能にする点において特に好ましい。ラッカー法およびゾル−ゲル法には問題がないわけではなく、酸素または水分の拡散に対する抵抗性が乏しく、機械的な強度が乏しく、多分子層を調製するのが難しく、従って、種々の異なる対応する機能を組み合わせるのが難しい。
【0010】
また、有機分子は、比較的低い温度で分解し、とりわけ穏やかな移動条件を必要とする。
【0011】
更に、有機分子の移動生成物が所望の機能を備えた生成物をもたらすような仕方で有機分子を移動させることが明らかに望ましい。
【0012】
最後に、この新しい機能の耐久性に関する条件を確立することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を果たすべく、本発明の主題は、ある層を形成することにより、透明または半透明な基体を機能化するためのプロセスであって、このプロセスは:
−少なくとも一つのタイプの有機または有機金属機能化分子を基体上へ気化させる段階;
−同時に、プラズマ増強化学蒸着により、上述の層の一部を形成する無機ガラスマトリックスを形成する段階;
を含むことにより区別される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
有機分子は、ここでは、C、H、O、N、S、P、ハロゲン原子を含み;有機金属分子は、付加的に金属原子、例えばAl、Ti、Mg、Siなどを含む。有機分子における通常のあらゆるタイプの結合を呈することができ、特にsp炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、ベンゼン環などを呈することができる。
【0015】
気化温度における機能化分子の蒸気圧は、蒸着が行われる圧力において、基体上で充分な流動性を得るのに充分に高いことが重要である。典型的には、これらの蒸気圧は、分子に依存して1Paから1000Paまでの間で変動する。この蒸気圧の増大は、例えば、有機分子における特定の原子または基(HまたはCH)のF原子による置換からもたらされ得る。
【0016】
更に、分子は、マトリックス内へのグラフトを促進させることが可能な結合または基を組み入れるため、修飾または変換されてよい。
【0017】
マトリックスは上述の定義による無機ガラスから成っている。マトリックスの例は「SiOマトリックス」であり、このSiOマトリックスは、本質的にはSiおよびO原子から成るが、小さな割合で例えばC、HまたはN原子も含む、架橋された連鎖のネットワークを意味するものと理解される。
【0018】
マトリックスは、プラズマ増強化学蒸着(PECVD)により形成される:ガス状のシリコン含有前駆体、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラメトキシシラン(TMOS)などが、例えばアルゴン−酸素プラズマの下で基体上へ投射される。このようにしてこれらの前駆体が重合/架橋される。
【0019】
本発明者らは、無機ガラスマトリックスのプラズマ重合中における基体への様々な有機及び/又は有機金属分子の蒸気の凝縮により、マトリックスによる優れた保護条件の下で、従って耐久性の優れた条件下において、様々な機能をもたらすことができるこれらの有機及び/又は有機金属分子の誘導体を無機ガラス基体に組み入れることが可能になることをはっきりと理解した。
【0020】
本発明のプロセスは、分子に固有の流動性を制御しやすいことにより、様々な機能の容易な組み込みを可能にする。本発明のプロセスは、特に、場合によっては一つもしくはそれ以上の機能性分子に対する安定剤と組み合わせて、またはマトリックスに対する安定剤と組み合わせて、同じ層に種々の異なる機能性分子(例えば種々の異なる色)を混ぜ合わせることを可能にする。
【0021】
また、本発明のプロセスは、種々の異なる層の積み重ね、特に:
−酸素に対するバリヤーの機能、水分に対するバリヤーの機能、または様々な化合物の拡散を防ぐ機能を有する一つまたはそれ以上の「純粋な」マトリックス層;
−接着層;
−仕上げ層:疎水性、親水性、滑性(低摩擦係数);
−漸進的転移層(勾配層);
−機械的保護層;など
の積み重ねの調製も容易化する。
【0022】
更に、これらの分子とマトリックスとの適合性により、完全な透明性および光学的品質を得ることが可能である。
【0023】
マトリックスに一旦組み込まれたこれらの分子の性状に関して言えば、たぶん、多少なりとも分離した状態にある開始分子のシンプルなグラフト生成物が関与しており、これら開始分子の特性が保持され、マトリックスに移入されている。
【0024】
流量、圧力、温度、プラズマの特性および有機/有機金属分子の性状に関する操作条件は、マトリックスを所望の程度に機能化するために充分な量の分子がマトリックスに組み入れられるように選択することができよう。
【0025】
ある与えられた分子に対して、この蒸気圧は気化温度を変えることにより改変することができるが、ある与えられた温度以上になると幾分かの分子が分解することが知られており、従って、温度が過剰にならないようにすべきである。同様に、ある与えられた温度における流量は注入システムの幾何学的形状および気化器の表面積に依存する。
【0026】
本発明のプロセスにおいて、しばしば、開始時に導入されたある割合(一般的には低い割合)の有機または有機金属分子が、層をもたらされた最終的な基体に結局組み入れられない場合がある。層内への分子の移入が100%でない場合には、単に移入量が充分であることのみが重要である。同様に、これらの分子の一部が移動中に改変される場合には、機能性を担持した充分な数の分子が組み込まれることが重要である。
【0027】
基体の温度は本発明におけるプロセスの一つのパラメーターであり、このパラメーターにより、得られる生成物の曇りを変えることが可能になる。この温度は、組み込まれた有機または有機金属分子の融点未満であるよりも融点以上であることが多い。曇りの程度が低いことが望ましいとき(一般的にはグレイジングの場合)には、蒸着中の基体の温度は充分に高くなければならない。
【0028】
この一方で、基体の温度は、蒸着中に、分子を完全に排除する程度にまでグラフトされる分子の量を制限することができる過剰な高い値に達するのを防ぐことが望ましい。
【0029】
本発明の一つの好適な実施形態においては、それぞれの有機/有機金属分子の蒸気は、蒸気が創出されてから基体と接触するまでの間、加熱され、従って、蒸気の温度は、蒸気が移動しているときに上昇し、特に金属管内を移動しているときに上昇する。この手段を講じることにより、蒸気の望ましい循環が促進される。
【0030】
本発明の別の主題は、上述のプロセスにより調製された機能層を含む透明な基体であり、ここで、有機または有機金属分子によりもたらされたこの機能は、着色、角度によって変わり得る可視光の反射、電気伝導度、赤外線の吸収または反射、紫外線の吸収または反射、フォトクロミズム、サーモクロミズム、エレクトロクロミズム、電界発光、燐光発光、蛍光発光、抗菌作用、光触媒作用、殺菌作用、臭いの吸収または放出、タバコの煙に対する抵抗性、親水性または疎水性の機能である。
【0031】
有利には、この機能層は、有機または有機金属分子を保護するための少なくとも一つの物質、例えば紫外線吸収剤または酸化防止剤などを含む。
【0032】
有機または有機金属分子の例は、ナフタレン、アントラセン、ピレン、アントラキノンおよび前述の分子の誘導体である。後者の代表として:
−1,4−ジ(ブチルアミノ)アントラキノン;
−1,2−ジヒドロキシアントラキノン;
−1,5−ジヒドロキシアントラキノン;
−1,8−ジヒドロキシアントラキノン;
を挙げることができる。
【0033】
更に:
−アゾ染料のファミリー、ペリレンのファミリーおよびフタロシアニン染料のファミリー;
−カラーレーザーで使用される染料、例えばポリフェニルのファミリーまたはフェニルオキサゾールのファミリーなど(例えば、Lambdachromeにより製造された染料−LC 3300、3400、3500、359、3600、3640、3650、3690、3700、4230、3690、3930、3590、3720など);
−医療用、生物学用または産業用の染料として使用される分子、例えば毛髪、組織(インダンスレン)、ポリマーなどを染色するために使用される分子、より一般的には、着色特性を有し、本発明のプロセスに適合する蒸気圧を有するあらゆる分子;
−導電性ポリマーに対する前駆体として作用することが公知である分子、例えばN−アリル−N−メチルアニリン(CAS 6628−0−7−5)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(CAS 104934−50−1)、フェニルビニルスルホキシド(CAS 20451−53−0)またはp−キシリレンビス(テトラヒドロチオフェニウム)クロリド(CAS 52547−07−6);
−フォトクロミック分子として、スピロベンゾピランのファミリー、フリルフルギドのファミリーおよびジアリールエテンのファミリー;
−サーモクロミック分子として、様々に置換されたリーレン(rylenes)の誘導体(Stefan Becker,Monomere und polymere Rylenfarbstoffe als funktionelle Materialien [Monomeric and polymeric rylene colorants as functional materials],Thesis,Mainz,2000)、特に、以下の様々なR置換基を伴う、次の式を有する化合物:
【0034】
【化1】

【0035】
−有機LEDs(発光素子)の製造用として公知である分子;
−遷移金属錯体、例えばルテニウムトリス(ビピリジン)など;
を挙げることができる。
【0036】
添加剤および安定剤として、ポリマー用に一般的に使用されている安定剤および酸化防止剤、特にベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、シアノアクリラート、オキサニリド、トリアジンまたはフェニルサリチラートを挙げることができる。これらの分子は、製造業者による様々な登録商標の下で存在する:
−Ciba−Geigy:Tinuvin−123、−144、−213、−234、−312、−326、−327、−328、−360、−571、−622、−765、−770、−1577,−P;Chimassorb−81、Irganox−245、−1010、−1076、−1098、−1135、−1141、−5057、Uvitex OB;
−Cyrec:Cyasorb UV−9、−24、−81、−90、−531、−1164、−2908、−3638、−3853、−3853S、−5411;Cyanox 425;
−BASF:Uvinul−3000、−3030、−3040、−3049、−3050、−3035、−MBC 95;−D 50、−BMBM、−A Plus、−N 539 T、−MC 80。
【0037】
更に、アルミニウムを含む分子、例えばアルミニウムアルコキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムβ−ジケトナート、(β−ジケトナト)−アルコキシアルミナート、アルミニウムアセチルアセタートまたはアルミニウム2,4−ペンタンジオナートなどを挙げることができる。
【0038】
本発明のプロセスにより可能に成される有利な特性により、得られる基体は透明であり、高々2%に等しい曇りを有している。
【0039】
更に、本発明の主題は、上で説明されているプロセスを実行するための装置であり、この装置は:
−それぞれの有機または有機金属分子に対し、気化させ、および、生成された蒸気を分配するための手段であって、基体の表面上に一様に配分されたノズルから成るインジェクショングリッドを含む手段;
−無機ガラスマトリックスの少なくとも一つの前駆体を分配するための手段であって、特定のインジェクショングリッドを含む手段;および
−プラズマ源、
を含む。
【0040】
後者は有利にはオフセットされており、換言すれば、プラズマは基体から特定の距離を置いて放射され、プラズマは、これらの部分が基体付近に制限された状態で、マトリックスの前駆体および有機/有機金属分子の流れを通過しながら、基体へ向けて投射される。
【0041】
本発明の別の主題は、上で定義されている基体の、陸、海または空用の輸送用乗り物のグレージング、建造物のグレージング、インテリアデコレーション、アクアリウム、家庭用電気器具、街路備品、バスの待合所、広告掲示板、掲示板、照明システム、特にヘッドライトを含めた輸送用乗り物のライトのカバー、温室、鏡、バックミラー、コンピューター、テレビまたは電話タイプの表示システムのスクリーン、電気的に制御可能なグレージング、例えばエレクトロクロミックグレージング、液晶グレージングもしくはエレクトロルミネセントグレージング、または太陽電池のグレージングなどへの適用である。
【0042】
本発明を以下に続く実施例により例証する。
【実施例1】
【0043】
2.45GHzの周波数において16kWの全最大出力を有する後放電(post−discharge)モードで作動する幾つかの個別のマイクロ波アンテナから成る大型(350×900mm)のマイクロ波プラズマ源を備えた蒸着チャンバーを使用する。蒸着プロセスに必要なガス(酸素、アルゴンおよびヘキサメチルジシロキサン)は、バルクフロー制御装置および45℃に加熱された金属管を通じて上述のチャンバーに導入される。
【0044】
有機/有機金属分子は、気化器(金属キャニスター)内に保存され、この分子により加熱された電気空気式弁を通じて、ツリー構造に配列された金属管を介して前述のチャンバー内に導入される。従って、これらの分子の蒸気は、上述の管を通じて移動する際に常に高まる温度を有することが保証され、これにより、この移動が促進されることが判明している。
【0045】
有機分子に対するインジェクショングリッドおよびヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)に対するインジェクショングリッドは、基体(ポリカルボナートグレージング)のすぐ近くにあり、基体からの距離の順に後から立ち上げられる。また、これらのインジェクショングリッドを相互に基体から等しい距離に取り付けるようにすることも可能であろう。
【0046】
蒸着中のチャンバーの圧力は2Paであり、通常は1Paから10Paまでの間である。
【0047】
この有機分子は1,4−ジ(ブチルアミノ)アントラキノン(CAS 17354−14−2)である。
【0048】
様々な構成成分の蒸着継続時間、sccm(立方センチメートル毎分)単位におけるアルゴン、酸素およびHMDSOの流量、ならびにマイクロ波電力(kW)が以下の表に明記されている。
【0049】
【表1】

【0050】
基体は95℃に加熱され、および、蒸着の間95℃に維持され、1,4−ジ(ブチルアミノ)アントラキノンの融点は120−122℃である。
【0051】
気化器内の1,4−ジ(ブチルアミノ)アントラキノンの温度を184℃から219℃へ変えることにより、試験を数回実施する。この温度範囲内において、この分子の蒸気圧は1Paから15Paまでの間で変動し、この与えられたインジェクションシステムおよび気化システムの場合、前述の蒸気圧の変動に対応して、流量は大凡0.1sccmから5sccmまでの間で変動する。
【0052】
これら二つの温度の間で、595nmの波長における光透過率は87%から66%へ低下する。換言すれば、この蒸着層はグレージングに青色の着色を与え、気化器の温度を高めると、この着色度合いが一層促進されることとなる。
【0053】
このグレージングの曇りは最高0.25%である。
【実施例2】
【0054】
1,4−ジ(ブチルアミノ)アントラキノンをピレン(CAS 129−00−0)で置き換える。この分子は、シクロヘキサンの溶液中において約325nmに吸収ピークを有し、約400nmに蛍光ピーク(励起波長317nm)を有している。
【0055】
ピレンは、175℃において約100Paの蒸気圧(蒸着材料L5)、190℃において200Paの蒸気圧(蒸着材料L4)および200℃において約300Paの蒸気圧(蒸着材料L3)を有しており、この与えられたインジェクションシステムおよび気化システムの場合、前述の蒸気圧は、それぞれ、約150sccm、500sccmおよび1250sccmの流量に対応する。
【0056】
上述のそれぞれの層がもたらされたこれら三つの基体の光学密度が、有機分子を欠いた層がもたらされた基体の光学密度を対照として測定される。330nm付近にピークが観測され、このピークの強度はこの分子の流量と共に増大し、これは、この層に組み込まれる有機分子の量が増大していることを示している。
【0057】
図1は、励起波長317nmにおける蒸着材料L4の層の蛍光スペクトルを示している。この蛍光発光は、波長(nm)の関数としての10進対数目盛で表されている。400nm付近を中心としたピークが観測され、この分子を伴う基体が蛍光特性を有していることを示している。
【実施例3】
【0058】
有機層の蒸着と保護層の蒸着(表参照)との間に、先行する実施例によるピレンを組み込む段階を差し挟み、実施例1を繰り返す。
【0059】
結果として得られる層は緑色の着色を有している。
【実施例4】
【0060】
気化器内の1,4−ジ(ブチルアミノ)アントラキノンをTinuvin 328の登録商標の下でCiba−Geigyから販売されている2−(2H−ベンゾトリアゾル−2−イル)−4,6−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェノールで置き換えて、実施例1を繰り返す。
【0061】
気化器の温度は213℃である。図2は、nm単位の波長の関数として%で表された、真の透過率(即ち、有機分子を欠いた層の透過率を差し引いた透過率)を示している。この分子による層では実際に紫外線の吸収機能が与えられていることが分かる。
【実施例5】
【0062】
基体の温度を様々に変えながら、実施例1を繰り返す。それぞれの試験で曇りを測定する。
【0063】
【表2】

【0064】
従って、曇りは、蒸着中の基体の温度の関数として制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、励起波長317nmにおける蒸着材料L4の層の蛍光スペクトルを示している。
【図2】図2は、nm単位の波長の関数として%で表された、真の透過率(即ち、有機分子を欠いた層の透過率を差し引いた透過率)を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層の形成による、透明または半透明な基体の機能化プロセスであって、
−少なくとも一つのタイプの有機または有機金属機能化分子を前記基体上へ気化させる段階;
−同時に、プラズマ増強化学蒸着により、前記層の一部を形成する無機ガラスマトリックスを形成する段階;
を含むことを特徴とする、前記基体の機能化プロセス。
【請求項2】
蒸気の創出と蒸気の基体との接触の間に、前記蒸気が加熱されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
請求項1に記載のプロセスにより調製された機能層を含む透明または半透明な基体であって、有機または有機金属分子によりもたらされる機能が、着色、角度によって変わり得る可視光の反射、電気伝導度、赤外線の吸収または反射、紫外線の吸収または反射、フォトクロミズム、サーモクロミズム、エレクトロクロミズム、電界発光、燐光発光、蛍光発光、抗菌作用、光触媒作用、殺菌作用、臭いの吸収または放出、タバコの煙に対する抵抗性、親水性または疎水性の機能であることを特徴とする、透明または半透明な基体。
【請求項4】
機能層が、紫外線吸収剤または酸化防止剤などの、有機または有機金属分子を保護するための少なくとも一つの物質を含むことを特徴とする、請求項3に記載の基体。
【請求項5】
有機または有機金属分子がナフタレン、アントラセン、ピレン、アントラキノンおよびそれらの誘導体から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の基体。
【請求項6】
基体が透明であり、ならびに最高で2%に等しい曇りを有することを特徴とする、請求項3に記載の基体。
【請求項7】
請求項1に記載のプロセスを実行するための装置であって、
−それぞれの有機または有機金属分子に対し、気化させ、および、生成された蒸気を分配するための手段であって、基体の表面上に一様に配分されたノズルから成るインジェクショングリッドを含む手段;
−無機ガラスマトリックスの少なくとも一つの前駆体を分配するための手段であって、特定のインジェクショングリッドを含む手段;および
−プラズマ源;
を含む、装置。
【請求項8】
プラズマ源がオフセットされていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
陸、海または空用の輸送用乗り物のグレージング、建造物のグレージング、インテリアデコレーション、アクアリウム、家庭用電気器具、街路備品、バスの待合所、広告掲示板、掲示板、照明システム、特にヘッドライトを含めた輸送用乗り物のライトのカバー、温室、鏡、バックミラー、コンピューター、テレビまたは電話タイプの表示システムのスクリーン、電気的に制御可能なグレージング、例えばエレクトロクロミックグレージング、液晶グレージングもしくはエレクトロルミネセントグレージング、または太陽電池のグレージングなどへの、請求項3から6のうち一項に記載の基体の適用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−510887(P2008−510887A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528944(P2007−528944)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050682
【国際公開番号】WO2006/024808
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(399052888)サン−ゴバン グラス フランス (23)
【Fターム(参考)】