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機能性樹脂積層体の製造方法
説明

機能性樹脂積層体の製造方法

【課題】 所望する機能層そのものを直接所望する箇所に転写することが出来る転写材、及び該転写材を用いた機能性積層体の製造方法、及び該製造方法により得られる機能性積層体を提供する。
【解決手段】 基材フィルムの表面に、離型層と、機能性層と支持層と、をこの順に積層してなる機能性転写フィルムであって、前記機能性層が、単層又は複数層で構成されてなり、前記離型層が、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を添加したものにより形成されてなる機能性転写フィルムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の機能をフィルム状や板状の樹脂積層体に転写するための機能性転写フィルム及びこれを用いた機能性樹脂積層体の製造方法及び機能性樹脂積層体に関するものであって、具体的には、例えばITOなどにより実現される透明導電性という特定の機能をフィルム状の樹脂積層体表面(以下単に「フィルム」とも称する。)に転写して透明導電性フィルムを得る、という利用方法が可能な機能性転写フィルム及びこれを用いた機能性樹脂積層体の製造方法及び機能性樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今爆発的に普及している液晶表示装置用途やタッチパネル用途における電極として、透明でかつ優れた導電性を有する透明導電性フィルムの要求が飛躍的に高まっている。
【0003】
これに対し、従来より、導電性を付与することを所望する基材の表面に対し、例えば直接透明導電性層を積層したり、透明なプラスチックフィルムの表面に透明導電性層を積層したいわゆる透明導電性フィルムを貼着したりすることが行われていた。
【0004】
しかしこのような手法によって透明導電性層を所望する箇所に積層することは、1枚1枚ごとに積層する作業が必要であり、そのため加工性の向上にも限界が生じ、さらに生産性、歩留まりが向上せず、結果として加工コストが高くなる、という問題点があった
【0005】
そこで透明導電性層を積層することを所望する基材表面にこれを積層する方法として、転写法を用いることが考えられた。
【0006】
例えば特許文献1に示される透明導電性転写材は、従来であれば直接所望する基材の表面に透明導電性層を積層していたところ、かかる転写材を用いて容易に透明導電性層を積層することを提案したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許登録第3794167号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、透明導電性層として広く用いられる物質の1つにITO(スズ−インジウム酸化物)があり、特許文献1においてもITOが用いられている。そして特許文献1ではこのITOを積層したい箇所に対しITOを転写することで、ITOを容易に積層した積層体が得られる、とされている。
【0009】
しかし実際に特許文献1に記載された転写材を用いようとすると、例えばガラス基材表面に転写しようとするならば、転写時に転写後のITO層が容易に剥離しないように、転写時に転写材に対し高温・高圧をかけて転写する必要があるが、ITOがそのために「割れて」しまうことが多発してしまう。
【0010】
即ち、ITO層にクラックが生じてしまうことにより、結局所望する導電性が得られない、クラックの発生により外観不良となってしまう、等の問題が生じていた。
【0011】
そこでこの問題を解決するためには、直接ITO層のみを積層するのではなく、何らかのクッション層を設けざるを得ない、という状況が生じていた。
【0012】
しかし前述したような分野では現在軽薄短小化がより一層進められていることより、余分な層を設けることなく、ITO層を単独で積層することが望まれる状況になっている。さらに、余分な層を設けることで透明性を維持することが困難になってしまう、という問題点も発生していた。
【0013】
しかしITOを単独で転写により積層しようとしても、露出したITO層を転写時に高温・高圧に曝すことになってしまい、その結果ITO層は容易に割れてしまい、やはり問題であった。
【0014】
そこで本願発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望する機能層そのものを直接所望する箇所に転写することが出来る転写材、及び該転写材を用いた機能性積層体の製造方法、及び該製造方法により得られる機能性積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の機能性転写フィルムに関する発明は、基材フィルムの表面に、離型層と、機能性層と支持層と、をこの順に積層してなる機能性転写フィルムであって、前記機能性層が、単層又は複数層で構成されてなり、前記離型層が、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を添加したものにより形成されてなること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項2に記載の機能性転写フィルムに関する発明は、請求項1に記載の機能性転写フィルムにおいて、前記機能性層が、ITO層の単層で構成されてなること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項3に記載の機能性転写フィルムに関する発明は、請求項1に記載の機能性転写フィルムにおいて、前記機能性層が、ITO層と、光学調整層と、の2層から構成されてなること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項4に記載の機能性樹脂積層体の製造方法に関する発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の機能性転写フィルムの、前記支持層の何も積層されていない側の表面に、前記機能性転写フィルムの機能性層を積層する対象となる被着体の材料となる原料である樹脂を溶媒に溶融させてなる流動性を持たせた溶液を付着させる、材料付着工程と、前記溶液が付着した状態の前記機能性転写フィルムを加熱することで溶媒を蒸発させて、前記機能性転写フィルムが貼着された状態の被着体を成型してなる、溶媒蒸発工程と、表面に前記機能性転写フィルムが貼着された状態の被着体から前記基材フィルムを離型してなる、離型工程と、を備えてなること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項5に記載の機能性樹脂積層体の製造方法に関する発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の機能性転写フィルムに積層されてなる機能性層を積層する対象となる被着体の材料となる原料である樹脂を溶媒に溶融させてなる流動性を持たせた溶液を、表面を平滑にしたキャスティングドラム又はステンレス製の平滑ベルト上に流し込んで付着させる、樹脂溶液付着工程と、前記付着した溶液の表面に、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の機能性転写フィルムの、前記支持層の何も積層されていない側の表面が接するように、前記機能性転写フィルムを貼着させる貼着工程と、前記溶液が付着した状態の前記機能性転写フィルムを加熱することで溶媒を蒸発させて、前記機能性転写フィルムが貼着された状態の被着体を成型してなる、溶媒蒸発工程と、表面に前記機能性転写フィルムが貼着された状態の被着体から前記基材フィルムを離型してなる、離型工程と、を備えてなること、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項6に記載の機能性樹脂積層体の製造方法に関する発明は、請求項5に記載の機能性樹脂積層体の製造方法において、前記樹脂溶液付着工程を実行した後、前記貼着工程を実行する前に、前記付着した溶液のさらに表面に、接着層となる樹脂を流し込んで付着させる接着層積層工程を実行してなること、を特徴とする。
【0021】
本願発明の請求項7に記載の機能性樹脂積層体に関する発明は、請求項4ないし請求項6の何れか1項に記載の機能性樹脂積層体の製造方法により得られてなること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本願発明にかかる機能性転写フィルムであれば、離型層として紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を添加したものを用いてなることより、転写時に過度の高熱・高圧を加えることなく転写作業を実行する事が出来る。このことにより、機能性転写フィルムの機能性層が例えばITOのように高熱高圧に対し非常に脆い物質であっても、直接それを所望の箇所に転写出来るようになるので、例えばキャスト法によるフィルム製造時に本願発明に係る機能性転写フィルムを用いれば、いわゆるインライン転写を実行することが可能であり、その結果フィルムサポート方法でフィルム製造時に同時に機能性を付与することが容易に可能となる。
【0023】
そして本願発明に係る機能性転写フィルムを用いた機能性樹脂積層体の製造方法を用いれば、機能性層を転写する時に高熱高圧に曝す必要がないので、加工性も非常に良好なものとなり、生産性や歩留まりも良好な製造方法とすることが出来るようになるし、かかる製造方法により得られる機能性樹脂積層体の生産性等も良好なものとなる。この際選択される被着体としては、フィルムに限定されるものではなく、例えばアクリルボードのような板状の樹脂積層体などへの利用も効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずしもこの実施の形態に限定されるものではない。また本明細書において樹脂積層体と称するものの一例としてフィルムを挙げているが、ここではこれに限定されるものではなく、例えばアクリルボードのような板状のものも樹脂積層体の一種類であるものとして説明をする。
【0025】
(実施の形態1)
本願発明にかかる機能性転写フィルム(以下、単に「転写フィルム」とも言う。)に関して、第1の実施の形態として説明する。
【0026】
本実施の形態にかかる転写フィルムは、基材フィルムの表面に、離型層と、機能性層と、支持層と、をこの順に積層してなる構成を有する。そして機能性層は1種類の層、即ち単層であってもよく、2種類以上の層、即ち複数層であっても構わないが、ここでは単層として説明をする。
【0027】
また離型層については、後述するように転写フィルムを用いて機能性層を所望の箇所に転写する作業を行うときに基材フィルムから美麗に機能性層が剥離するために設けられるものである。理論的には基材フィルムと機能性層とが理想的な相互密着性を有する場合は必ずしも必要としない場合もあり得るが、本実施の形態では離型層を設けてなるものとする。そして離型層は前述の目的を達する事が出来れば特にその材料は何であっても良いが、本実施の形態においては紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を添加したものを用いることとする。これについては改めて後述する。
【0028】
以下、順番に説明をする。
まず基材フィルムであるが、これは従来転写フィルムにおいて周知に用いられる樹脂フィルムを用いれば良く、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、アクリルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、等の合成樹脂フィルム、セルロース系フィルム、あるいはこれらの複合フィルム状物、等が考えられる。
【0029】
本実施の形態ではPETフィルムを用いることとする。尚、ここで用いるPETフィルムの厚みは、やはり従来転写フィルムとして広く用いられている程度の厚みであればよく、具体的には25μm以上200μm以下であればよい。
【0030】
基材フィルムの表面には離型層が積層される。この離型層につき説明する。
一般的に転写フィルムにおける離型層としてはメラミン系樹脂等を用いるものであるが、本実施の形態にかかる転写フィルムにおける離型層としては、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を添加したものを用いることとする。その理由は、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を添加したものによる離型層とすれば、本実施の形態にかかる転写フィルムを後述するような方法で利用する時であって、かつ転写フィルムの機能層がITO層である場合、ITO層を安定して剥離するために、つまり、例えば剥離不良や剥離時にクラックが発生しないように剥離するために最適な原料だからである。
【0031】
さらに述べるなら、本実施の形態における転写フィルムにあって、剥離層は表面エネルギーが小さく、後述するようにこの転写フィルムを製造する為のスパッタ時の真空度等に悪影響を及ぼさないものが好適であり、さらに後述するような方法でITO層を転写した後、ITO表面を汚染しない、さらにITO層を転写した後、ITO層の表面が極力平坦なものとなせること、という目的を達する事が出来る剥離層であれば非常に好適であり、そしてその状態を実現しやすい物質として紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を添加したものを本実施の形態では用いているのである。
【0032】
ここで、シリコーン系レベリング剤は、紫外線(UV)硬化型ウレタンアクリレート樹脂に対する固形分比で0.01〜10.0%が好ましく、さらには0.1〜1.0%であると尚好ましいものであることを付言しておく。
【0033】
剥離層の積層方法としては、従来ウェットコーティング法として知られる手法、例えばバーコート法、流延法、ローラーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法、ダイレクトグラビア法、キスグラビアリバース法、スリットリバース法、等であれば特段制限をしないが、ここではバーコート法を用いるものとする。
【0034】
剥離層の厚みとしては0.5μm以上10.0μm以下であれば好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であれば尚好適である。
【0035】
ウェットコート法により積層された、シリコーン系レベリング剤を含有したUV硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、溶剤を揮発させるために一定の温度をかけた後、活性エネルギー線、即ち紫外線を照射することにより硬化される。
【0036】
次に機能性層につき説明する。
この機能性層は、例えばITOのように透明でありかつ導電性を有する層を意味し、例えば導電性を有する層であったり、光線反射を防止するための層であったり、その他種々目的を達する為の機能を備えた層であるが、本実施の形態では透明導電性を有する層であることとし、具体的にはITO層であるものとする。
【0037】
さらに具体的に述べると、本実施の形態にかかる転写フィルムにおけるITO層のITOは結晶ITOあるいは非結晶ITOであり、またその膜厚は100Å以上2000Å以下、好ましくは100Å以上500Å以下、であるものとする。2000Åを超えると成膜後に基板がカールしたり、透過率が低下したり、ITO膜そのものにクラック等の欠点が発生しやすくなるからである。
【0038】
ITOによる機能性層は次のようにして積層される。
本実施の形態ではITOのターゲットを用いて、前述の樹脂フィルム表面にスパッタリングによりITO膜を成膜する。このようにすることで、比較的低抵抗なITO層を設ける事が出来る。
【0039】
あるいは、ITOのターゲットを用いて、酸素雰囲気下、スパッタリングによる成膜を実行して樹脂フィルム表面に非晶質のITO膜を成膜し、次いで熱処理を施すことにより結晶化ITO膜とすることで、耐久性に比較的優れたITO層を設けることも考えられる。そしてITO層の厚さを調整することにより、抵抗値を増減させることも出来るが、その手法はやはり周知なものであってよく、ここでは詳述を省略する。
【0040】
尚、このITO層の積層方法の概略は上述の通りであるが、実際に使用される状況に応じて要求される特性との兼ね合いを考慮しつつ積層されるものであることを述べておく。
【0041】
また、ここでは全面にITO層を積層してなることを想定しつつ説明をしたが、例えばこれをマスキング等の周知な手法を用いて、必要な箇所だけ、例えば回路を構成する部分にのみITO層を積層することも考えられる。このようにすることで、後述する転写作業が完了した時には自動的に透明導電性回路が完成している、とすることも考えられる。
【0042】
次に支持層につき説明する。
この支持層は、随時好適な樹脂フィルムを選択すればよく、本実施の形態ではPETフィルムを用いることとする。
【0043】
この支持層は、最終的に機能性層であるITO層が所望の箇所に転写される時に、ITO層を支持しきれるだけの「フィルムの腰の強さ」があればよく、さらにはITO層との層間密着力が十分備わったものであればよい。そしてこの支持層は、ITO層を所望の箇所に転写する際に、支持層のITO層が積層されていない側、即ち本実施の形態にかかる転写フィルムの最表面側に位置する。
【0044】
本実施の形態にかかる転写フィルムは上記の通りの構成であり、即ち、PETフィルム/離型層/ITO層/支持層、という構成を有するものとする。ちなみに、ここではPETフィルムの厚みは50μm、離型層の厚みは2.0μm、ITO層の厚みは100Å、支持層の厚みは1.0μm、であるものとする。
【0045】
次に、この転写フィルムの実際の使用方法につき説明する。
この転写フィルムは、要すれば、フィルム状や板状の樹脂積層体の表面に対し特定の機能、例えば導電性を有するITO層を転写によりそれらに積層することで、樹脂積層体に対し透明導電性機能を付与する為に用いるものである。そして極力、目的とする機能性層、例えばITO層以外の層を設けることなく、直接所望箇所の表面にITO層を設けることを目的としている。以下、ITO層の転写を例に説明を続ける。
【0046】
前述したように、一般的にITO層に対して直接、転写作業においては従来周知なレベルで加圧すると容易にクラックを発生しやすく、また同様に加熱してもITO層が破損しやすくなる、という問題が従来生じている。さらに加熱する場合、転写する対象、即ち被着体がPETフィルムのような樹脂であると、被着体そのものにも加熱による変質、破損が生じて従来問題であった。
【0047】
そして本実施の形態にかかる転写フィルムを従来のように製造が完了した状態の樹脂フィルムや樹脂基材等の樹脂積層体に対し従来の転写方法を用いて使用しようとするならば、この転写フィルムにはITO層を加熱や加圧から保護するための層が設けられていないことより、結果としてITO層に加熱や加圧を原因としたクラックが発生したり、破損等が発生してしまう。
【0048】
ところで、樹脂フィルムや樹脂基材等の樹脂積層体の製造方法のひとつに溶液流延法(以下「キャスト法」とも言う。)がある。これは、フィルム等に物理的な圧力を加えない製造方法であるので、高分子の配向が起こらず、強度や光学特性などに方向性が生じない、という特徴を有する製造方法である。そしてこの製造方法では、例えば溶融押出成形法に比べ加熱量が少ない、という特徴も有している。
【0049】
そこで、本実施の形態に係る転写フィルムをITO層にクラックや破損を発生させないために、加熱や加圧を行わずに所望の樹脂フィルムや樹脂基材等の樹脂積層体の表面に転写するのであるならば、上記キャスト法により樹脂フィルムや樹脂基材等の樹脂積層体を製造する際に、本実施の形態にかかる転写フィルムを用いれば好適である。
【0050】
そこで、以下、本実施の形態に係る転写フィルムを用いて、機能性を付与された樹脂フィルムや樹脂基材等を得る製造方法に付き説明をする。尚、以下の説明ではフィルム製造を念頭に置いて続けるが、必ずしもフィルムに限定されるものではなく、キャスト法により製造可能なものに対しては同様に実行可能であることを予め断っておく。
【0051】
また被着体の素材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、環状オレフィン系樹脂、その他オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリノルボルネン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等、あるいはこれらの複合フィルム状物、等が考えられ、これ以外であっても構わないが、以下の説明ではPETフィルムを念頭に置いて説明を続ける。
【0052】
基本的には従来周知なキャスト法によるフィルム製造方法を実行する。(以下、フィルム製造を例に取り説明を続ける。)
【0053】
まず得ようとする被着体、ここでは樹脂フィルム(アクリルフィルム)の材料を溶媒に溶融させ、流動性を持たせた溶液を得る。次いでこれを、表面を平滑にしたキャスティングドラム、又はステンレス製の平滑ベルト上に流し込んで付着させる。そしてこれを加熱し、溶媒を蒸発させて、最終的にフィルムを成型する。
【0054】
これはキャスト法の基本的な手法であるが、本実施の形態においては、キャスティングドラム又は平滑ベルトの替わりに、上述した転写フィルムを用いるのである。
【0055】
具体的には、転写フィルムの支持層の、何も積層されていない側の表面に溶液が流し込まれるように転写フィルムをセットし、そして上述したキャスト法を実行するのである。そしてフィルムが成型されたならば、その後、最後に転写フィルムの基材フィルムであるPETフィルムを剥離する。尚、この剥離に伴い剥離層も一緒に剥離される。そして機能性樹脂フィルムが得られる。
【0056】
尚、これとは違う手法も考えられる。即ち、上述のキャスト法をそのまま実行し、溶液を流し込んだ後、加熱する前に転写フィルムの支持層の、何も積層されていない側の表面が流し込まれた溶液に接するように転写フィルムを貼着し、その後フィルムの成型を実行する、という方法である。この場合も、フィルムの成型が終了した後に、転写フィルムの基材フィルムであるPETフィルムを剥離することで、機能性樹脂フィルムが得られる。
【0057】
尚、転写フィルムと、溶液を用いてキャスト法を実行することにより得られる樹脂フィルムと、を接着させるために必要であれば接着層を介在させればよいが、この接着層はUV硬化型樹脂等の利用が考えられる。この接着層を介在させるためには、溶液を流し込んだ後、転写フィルムを貼着する前に、溶液のさらに表面に、接着層となる樹脂を流し込んで付着させる接着層積層工程を実行すればよい。尚、接着層にUV硬化型樹脂を用いる場合、離型前にUV照射が必要であることも付言しておく。
【0058】
そしてこの転写フィルムから基材フィルムであるPETフィルムを剥離する際に、前述したように剥離層を紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を添加したものを用いることで、剥離が非常に美麗に実行出来るのである。
【0059】
このような製造方法とすることで、ITO層を転写する際には、フィルム成形時の加熱が加わるだけであって、加圧されることは一切無い。そしてフィルム成形時の加熱温度は、通常数10℃から150℃程度で十分なのであるが、この範囲の温度であればITO層の破壊等は発生しない。即ち、上記製造方法における過程で高温加熱や加圧が転写フィルム、ITO層に加えられること実質的には無いことになり、その結果、非常に簡潔にITO層を所望の箇所に転写したと同等の物を容易に得ることが出来るのである。
【0060】
またこのような製造方法を用いることより、先述したように、ITO層を予め回路図のまま当該部分にのみITO層を積層しておけば、即ち予めパターニングしたITO層としておけば、最後にPETフィルムを剥離すればそのまま透明導電回路を有した機能性フィルムを得る事が出来るので、エッチング等のさらなる作業の必要がなく、非常に簡潔に透明導電性フィルムを得る事が出来る。
【0061】
(実施の形態2)
次に、第2の実施の形態として、第1の実施の形態における機能性層部分が相違する構成を有する転写フィルムにつき説明する。
【0062】
第1の実施の形態にかかる転写フィルムは、基材フィルム/離型層/機能性層/支持層、という構成であり、機能性層は単層であったが、この第2の実施の形態では機能性層が複数層あるものとする。
【0063】
例えば、第1の実施の形態では機能性層はITO層の単層としたが、本実施の形態においては、さらに光学調整を目的とした光学調整層をITO層に隣接し、これらをまとめて機能性層、と称する。このように、機能性層を単層とした場合に比して、機能性層を補強するための層、保管するための層、その他の目的を達する為に、さらに1層又は2層以上を隣接して積層させることが考えられる。
【0064】
この第2の実施の形態にかかる転写フィルムにおいては、このような構成を有するものとし、以下の説明ではITO層と光学調整層と、の2層からなるものとして更に説明を続ける。
【0065】
前述したように本願発明の転写フィルムを用いて、例えばPMMAフィルム表面にITO層を積層した場合、確かにそれだけでも透明導電性フィルムとすることが出来るのであるが、実際にはITO層積層後、ITO層をエッチングしてこれを回路とすることにより、ITO層積層部分とエッチングされた部分との間に色目差が発生するという問題が生じたり、視認性や光線透過率が低下する、という問題が生じることが考えられる。
【0066】
エッチングされた部分との間に色目差についてさらに説明を加える。
回路形成部分ではITO膜の積層部分とこれが積層されていない部分との間でいわゆる色目の差が生じてしまう。そして外見上本来であれば均等に透明であることが望まれるITO層の外観にあって、回路を構成するITO膜の積層部分がある程度の輪郭をもって視認できてしまう、といった事態が生じる。即ち一見して回路部分があたかも浮き上がって見える、といった視認性阻害と言える現象が生じてしまい、問題となる。
【0067】
そこで、これらの問題に対処すべく、通常の透明導電性フィルムであればITO層を積層後、その表面に光学調整層を積層することが行われる。光学調整層を積層することにより、ITO層の一部をエッチングした後に、該エッチングを施してITO層を除去した箇所である除去部と、該エッチングを施した後もITO層が残留している箇所である残留部と、それぞれの箇所における透過色目差(L*値、a*値、b*値を用いた特定式による値)や反射色目差(L*値、a*値、b*値を用いた特定式による値)を極力小さくすることが可能となり、略均等に透明な外観が得られる。
【0068】
また、本願発明に係る転写フィルムという考え方を用いるのであれば、予めITO層に光学調整層を積層しておけば、これらを一気に転写することにより、ITO層積層後に別途光学調整層を積層する、という工程を省くことが可能となり、即ち全体としての製造工程数の削減が可能となり、その結果作業効率性を向上させたり、コストダウンをはかることが出来るようになる。
【0069】
この光学調整層につき簡単に説明を加えておく。
例えば、ITO層の更に表面に、低屈折率層と高屈折率層とを積層する場合、低屈折率層と高屈折率層とがいわゆる光学調整層と称される機能を呈する。低屈折率層としては光線屈折率nが1.4〜1.6程度のものをいう。また高屈折率層としては光線屈折率nが1.6〜2.0程度のものをいう。
【0070】
このような光学調整層を積層しておくことにより、単純にITO層だけであると入射光の反射の加減により黄色っぽい見栄えがしてしまう状態が生じるとしても、光学調整層により入射光の入射角が操作されることで、その反射光の加減により透明感を保つことが可能となる。
【0071】
このような作用効果を期待して、通常ITO層の表面に光学調整層を積層することが行われるのであるが、本実施の形態のように、予め転写フィルムに光学調整層を設けておけば、一気に作業を完了させられるので好適な転写フィルムとすることが出来るのである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明した機能性転写フィルムであれば、高温加熱、加圧等を要すること無く所望の機能性層を転写することが可能であり、またそれが故に該機能性転写フィルムを、キャスト法により製造されるフィルムのキャスト法実行時に用いることで、高温加熱、加圧をすることなく所望のフィルム表面に機能性層を転写することが出来るので、転写時に高温加熱、加圧を嫌うITO層のような機能性層を転写することに用いれば、従来に比して非常に簡潔に、かつ従来は必要とされていたITO層を保護するためのクッション層等を積層する必要がなく、つまりITO層を直接転写により積層可能となるので、積層作業が非常に簡潔に実行可能となり、また作業性も向上するようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの表面に、離型層と、機能性層と支持層と、をこの順に積層してなる機能性転写フィルムであって、
前記機能性層が、単層又は複数層で構成されてなり、
前記離型層が、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を添加したものにより形成されてなること、
を特徴とする、機能性転写フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の機能性転写フィルムにおいて、
前記機能性層が、ITO層の単層で構成されてなること、
を特徴とする、機能性転写フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の機能性転写フィルムにおいて、
前記機能性層が、ITO層と、光学調整層と、の2層から構成されてなること、
を特徴とする、機能性転写フィルム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の機能性転写フィルムの、前記支持層の何も積層されていない側の表面に、
前記機能性転写フィルムの機能性層を積層する対象となる被着体の材料となる原料である樹脂を溶媒に溶融させてなる流動性を持たせた溶液を付着させる、材料付着工程と、
前記溶液が付着した状態の前記機能性転写フィルムを加熱することで溶媒を蒸発させて、前記機能性転写フィルムが貼着された状態の被着体を成型してなる、溶媒蒸発工程と、
表面に前記機能性転写フィルムが貼着された状態の被着体から前記基材フィルムを離型してなる、離型工程と、
を備えてなること、
を特徴とする、機能性樹脂積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の機能性転写フィルムに積層されてなる機能性層を積層する対象となる被着体の材料となる原料である樹脂を溶媒に溶融させてなる流動性を持たせた溶液を、表面を平滑にしたキャスティングドラム又はステンレス製の平滑ベルト上に流し込んで付着させる、樹脂溶液付着工程と、
前記付着した溶液の表面に、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の機能性転写フィルムの、前記支持層の何も積層されていない側の表面が接するように、前記機能性転写フィルムを貼着させる貼着工程と、
前記溶液が付着した状態の前記機能性転写フィルムを加熱することで溶媒を蒸発させて、前記機能性転写フィルムが貼着された状態の被着体を成型してなる、溶媒蒸発工程と、
表面に前記機能性転写フィルムが貼着された状態の被着体から前記基材フィルムを離型してなる、離型工程と、
を備えてなること、
を特徴とする、機能性樹脂積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の機能性樹脂積層体の製造方法において、
前記樹脂溶液付着工程を実行した後、前記貼着工程を実行する前に、
前記付着した溶液のさらに表面に、接着層となる樹脂を流し込んで付着させる接着層積層工程を実行してなること、
を特徴とする、機能性樹脂積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6の何れか1項に記載の機能性樹脂積層体の製造方法により得られてなること、
を特徴とする、機能性樹脂積層体。


【公開番号】特開2013−91190(P2013−91190A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233435(P2011−233435)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【特許番号】特許第5039850号(P5039850)
【特許公報発行日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】