説明

機能性液に実質的に不溶性である添加剤の送達

本発明によれば、機能性液において実質的に不溶性、低溶解性、および/またはそうでなければ機能性液と不適合性である添加剤を、当該添加剤を含むゲル組成物および/または固体添加剤組成物を用いることにより、当該機能性液が、供給添加剤の利益を享受でき、および/または機能性液と添加剤の不適合性のために従来の送達方法による別の方法では達成不可能なレベルの添加剤を含みうるように、機能性液に供給しうることが発見された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は添加剤を機能性液に送達する方法に関し、当該添加剤は機能性液中で実質的に不溶性または低溶解性である。本発明は、実質的に不溶性または低溶解性の添加剤を含むゲル組成物、および、そのようなゲル組成物を用いて機能性液に添加剤を送達する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
機能性液は、使用により時間とともに劣化する。機能性液中の添加剤は、エンジンまたは他の機械的デバイス中の液の寿命を通して減少する。液にその寿命または使用を通して添加剤を供給する能力は、機能性液およびそれが使用される機器の性能を保ち、高めるのにも役立ちうる。エンジンオイルのための時間放出添加剤が公知である。これらの添加剤は典型的に、エンジンオイル中にゆっくりと溶解する熱可塑性ポリマーに取り込まれる。特許文献1を参照。時間放出添加剤は、高いエンジン温度で透油性であるポリマーにも取り込まれている。特許文献2を参照。
【0003】
機能性液に追加的な添加剤を添加するための制御放出ゲルまたは他の手段を用いた機能性液中の添加剤の補充は、機能性液およびこれを使用するデバイスの性能を改善する。特許文献3に記載されるような制御放出ゲルの使用は、潤滑剤に時間をかけて新たな添加剤を補充するための有効な手段であることが示されている。このようなゲルは、添加剤が送達されることとなる機能性液と適合性の添加剤成分を、ゲルマトリックスに取り込むことにより形成される。これらのゲルマトリックスは、塩基性成分と酸性成分の相互作用からゲルが形成されることにより生じることが多い。
【0004】
機能性液に特定の添加剤を供給することも有益であろうが、これらの添加剤が使用される機能性液と適合性でない場合もある。添加剤は、機能性液中で実質的に不溶性、低溶解性、および/またはそうでなければ問題の機能性液と不適合性であり、機能性液中で該添加剤を有効に使用することを不可能にしていればよい。機能性液にこのような添加剤を有効に添加および/または使用する能力により、機能性液および/または機能性液が使用される機器の性能の向上が可能になると考えられる。機能性液においてこのような添加剤を有効に添加および/または利用する手段を特定する必要がある。
【0005】
制御放出ゲルおよび類似の組成物の調製および使用は、上記の通り過去に継続中特許および査定済み特許に記載されている。制御放出ゲルの使用は、時間をかけた新しい添加剤の放出により新しい潤滑剤の決定的性質を保持するための有効な手段であることが示されている。従来の応用は、それらが使用されることとなる機能性液においてそれぞれ可溶性および/またはそうでなければ適合性のゲル成分の使用であり、ゲルから機能性液中への制御放出のために所望される添加剤が含まれる。これらのゲル類においては主な利益は、減損した添加剤に代わる新しい適合性添加剤を液の目標耐用期間を通して放出し、液中の活性添加剤レベルを維持する実用的手段を提供することから生じる。
【0006】
しかし、全ての潤滑剤添加剤が、それらが使用されうる機能性液において溶解性であるわけではなく、全ての潤滑剤添加剤が所望のレベルおよび/または濃度まで可溶性であるわけではない。このような実質的に不溶性または低溶解性の添加剤は、消泡剤、摩擦調整剤および腐食防止剤または防錆剤のような他の表面活性化学薬品を含むことが多い。化学薬品の活性が、不溶性と関係する場合がある(例えば消泡剤)。成分が実質的に不溶性の場合には、それは濃縮物および最終商用液における適合性要件により拘束される潤滑剤製剤に難題を提示する。
【0007】
本発明の制御放出組成物および方法におけるこのような成分の使用は、これらの制約を克服し、したがって、活性であるが別の方法では適合性の制約上、目的の機能性液においては使用できない、このような実質的に不溶性および/または低溶解性の添加剤の使用を可能にする。本発明は、これらの適合性の問題により従来法により達成可能な最大レベルよりも高い、このような添加剤の処理レベルも可能にでき、これにより、場合によっては添加剤が以前には到達不可能だった最適なレベルで機能性液において使用されることが可能になる。
【0008】
溶解性は、不適合性の一例にすぎない。不適合性の他の例には、補足添加剤の、配合物中の一つ以上の他の添加剤との相互作用に関連するものが含まれる。このような不適合性は、濁り、粘性の増加、固体および/またはゲル形成、および/または配合物中の一つ以上の添加剤の失活を生じることが多い。不適合性の別の例は、補足添加剤の添加の結果としての非典型色または濃い色相の出現である。このような不適合性は、このような補足添加剤が、その存在が機能性液において性能優位性を提供するにもかかわらず配合物中で使用されるのを妨げる。
【0009】
添加剤が良好な溶解性および/またはそれが使用される機能性液および濃縮物組成物との適合性を有するという、この実際的要件は、機能性液のタイプおよび用途全体にあてはまる。要件は、従来の実務による機能性液への添加剤の送達に必要である。例えば、機能性液添加剤の製造業者は、パフォーマンス化学薬品の均質な添加剤パッケージを販売すると考えられ、これが基油に添加されて最終潤滑剤が得られ、これが潤滑剤を入れる機器への潤滑剤の最終送達用に、タンク、ドラム、缶およびプラスチック容器において販売されることになる。最終潤滑剤、または他の任意の機能性液の使用される機器中での性能の確かさを維持するために、濃縮物および潤滑剤は、これらのステップの全体で均質にとどまらなければならない。換言すれば、添加剤パッケージから濃縮物から最終液まで、存在する添加剤は全て、それが接触するおよび/またはそれが存在する様々な材料の各々と適合性でなければならない。この厳しい基準は、多くの機能性添加剤の選択肢および利用可能な処理レベルを大きく制限する。機能性液に性能向上を提供できる多くの添加剤は、上記の溶解性および/または適合性要件を満たさないために、広く使用されておらず、および/または最適レベルで使用されていない。
【0010】
これらの溶解性および/または適合性の制約がなければ、例えば潤滑剤またはエンジン、自動変速機、ギヤアセンブリなどの潤滑される機器片の寿命延長を含め、より高い性能および機器防護が達成可能でありうる。燃費および粘度安定性の向上も、達成可能でありうる。より有効な、しかし従来の方法で送達された場合には適合性または溶解性の観点から不適切な化学薬品の選択に応じて、より多い量だけでなくより少ない量の化学薬品で、さらに高い性能も達成可能でありうる。
【0011】
本開示の技術は、通常の溶解性および/または適合性基準ならびにそれが要求する限界により必要とされるバリアの範囲内で実行することが必要であるという課題を解決する。本発明の発明者らは、本発明の添加剤含有組成物の使用およびこれを利用する本発明の方法により、これらの負担から解放され、別の方法では禁じられおよび/または実行不可能なこれらの種類の添加剤および処理レベルの使用を可能にすることにより、前述の様々な考えられる性能強化および利益を達成できることを発見した。デバイスは、使用される機能性液に曝露される容器を含み、ゲルまたはマトリックス材料も伴う。方法には、棒石鹸が水中でするように時間をかけて溶けまたは溶解できる固体の添加による送達も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,075,098号明細書
【特許文献2】米国特許第4,066,559号明細書
【特許文献3】米国特許第6,843,916号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、機能性液において実質的に不溶性、低溶解性、および/またはそうでなければ機能性液と不適合性である添加剤を、機能性液が従来の送達方法による別のやり方では添加剤の機能性液との不適合性により達成できない添加剤の利益を享受し、および/またはレベルの添加剤を含むような方法で、機能性液に供給しうることが発見された。
【0014】
本発明は、機能性液に活性添加剤を受動的に送達する方法を提供し、当該添加剤は、当該機能性液中で実質的に不溶性、低溶解性、またはそうでなければ当該機能性液と不適合性である。それが使用されることとなる機能性液中で実質的に不溶性、低溶解性、またはそうでなければ不適合性であるこの添加剤、および/またはそれが存在することとなる添加剤または濃縮物組成物は、本明細書において「不適合性添加剤」と称される。本方法には、液を、不適合性添加剤または不適合性添加剤を含む組成物と、送達デバイスを用いて接触させるステップが含まれ、当該送達デバイスは、不適合性添加剤または不適合性添加剤含有組成物を含み、機能性液とのその接触を可能にする。
【0015】
不適合性添加剤を含む組成物は、ゲル組成物、添加剤が加えられることとなる機能性液の使用温度を上回る融点を有する室温で固体の組成物、またはそれらの組み合わせでもよい。
【0016】
不適合性添加剤は、任意のパフォーマンス添加剤であればよいが、いくつかの実施形態では、添加剤は摩擦調整剤、消泡剤、腐食防止剤、またはその組み合わせである。
【0017】
本発明は、機能性液に不適合性添加剤を供給する方法を提供し、当該機能性液は、エンジンで使用されるエンジンオイルでありうる。エンジンオイルへの不適合性添加剤の送達により、燃費の向上、液の粘度安定性の向上、液の耐用期間の向上、またはその組み合わせが生じうる。
【0018】
本発明は、ゲルが、a)高塩基性(overbased)清浄剤を含む塩基性成分と;b)無水マレイン酸スチレンコポリマー、無灰分散剤、ポリオレフィン、コハク酸化ポリオレフィンまたはその混合物を含む酸性成分と;c)機能性液において実質的に不溶性、低溶解性、またはそうでなければ機能性液と不適合性である添加剤成分との組み合わせにより形成され、d)粘度調整剤(単数または複数)、摩擦調整剤(単数または複数)、清浄剤(単数または複数)、曇り点降下剤(単数または複数)、流動点降下剤(単数または複数)、解乳化剤(単数または複数)、流動性向上剤(単数または複数)、帯電防止剤(単数または複数)、分散剤(単数または複数)、抗酸化剤(単数または複数)、消泡剤(単数または複数)、腐食防止/防錆剤(単数または複数)、極圧/摩耗防止剤(単数または複数)、シール膨張剤(単数または複数)、潤滑補助剤(単数または複数)、霧化防止剤(単数または複数)またはこれらの混合物を含む少なくとも一つの添加剤をさらに任意に含む、ゲル組成物も提供する。
【0019】
本発明は、少なくとも二つの不適合性添加剤を含む室温で固体の添加剤組成物も提供し、添加剤組成物を形成する成分および成分間の比は、固体添加剤組成物が生じるように選択される。いくつかの実施形態においては、固体組成物は、当該液の使用温度を上回る融点を有し、いくつかの実施形態では使用温度を少なくとも℃上回る融点を有する。他の実施形態においては、固体組成物は、当該液の使用温度以下の融点を有する。
【0020】
本発明は、機能性液と、前述の実施形態のいずれかの一つ以上の実質的に不溶性または低溶解性添加剤含有ゲルとの接触を促進する、液調整デバイスもさらに提供する。一実施形態においては、デバイスは、ゲルを部分的または完全に包入するいかなるゲルカップも容器も含まない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
様々な好適な特徴および実施形態を、非限定的な説明として以下に記載する。
【0022】
本開示の技術は、添加剤が従来の送達方法では達成不可能なレベルで液に供給されおよび/または使用可能であるような、送達方法またはデバイスと、それが使用されることとなる機能性液および/または濃縮物において実質的に不溶性、溶解性が不十分、またはそうでなければ不適合性の添加剤との組み合わせを提供する。このような添加剤は、本明細書において「不適合性添加剤」と称される。
【0023】
本開示は、摩擦調整剤を含む、実質的に不溶性または低溶解性の活性成分を含むゲル組成物および固体添加剤組成物の生産方法も記載し、このような添加剤を供給する利益の大部分は、適合性の制約により当初の液において可能であるよりも高いレベルの活性成分の使用に由来する。
【0024】
不適合性添加剤。本発明での使用に適する不適合性添加剤(すなわち、一つ以上の機能性液および/または濃縮物において実質的に不溶性、低溶解性、またはそうでなければ不適合性である添加剤)は、当該添加剤が機能性液において不溶性および/または不適合性であり、機能性液における任意の実用的な処理レベルを可能にするために十分に可溶性および/または適合性でなく、または、機能性液において使用する上で最適な処理レベルを可能にするのに十分に可溶性および/または適合性でないために、一つ以上の機能性液において使用できない添加剤と定義できる。これらの不適合性添加剤は、機能性液の調製において使用される添加剤パッケージおよび濃縮物組成物に関して類似の溶解性および/または適合性の問題を有する添加剤も含む。
【0025】
いくつかの実施形態においては、本明細書で用いられるところの不適合性添加剤とは、その20℃での材料中の最大溶解度を上回るレベルで機能性液、濃縮物組成物および/または添加剤パッケージに送達することが所望される、任意の添加剤を意味する。換言すれば、材料中の不適合性添加剤の所望のレベルは、従来法により添加(直接添加、ブレンディング、混合等)された場合には、溶解限度によりいくつかの実施形態においては当該材料において不適合性またはその他の点で許容できないものである。このような状況では、材料は20℃で濁って見え、および/または沈殿物が存在し、および/または相に分かれ、および/またはゲルまたは固体を形成しうると考えられる。
【0026】
いくつかの実施形態においては、本発明の不適合性添加剤は、20℃で0.5重量%または0.1重量%を上回る濃度で、油または新しい機能性液において完全に可溶性ではない。いくつかの実施形態においては、このような不適合性添加剤が、溶解性/不適合性制限を別とすればより高いレベルで機能性液中に存在することも望ましいだろう。
【0027】
本発明の目的上、鉱油またはいくつかの他の機能性液におけるその溶解度が0.2重量%未満(すなわち、0.2重量%が液中に溶解および/または可溶化する添加剤の最大濃度)である場合には、添加剤は実質的に不溶性であると考えられる。本発明の目的上、鉱油またはいくつかの他の機能性液におけるその溶解度が0.6重量%未満(すなわち、0.6重量%が液中に溶解および/または可溶化する添加剤の最大濃度)である場合には、添加剤は低溶解性またはわずかに可溶性であると考えられる。
【0028】
機能性液に有益な性質を提供できるが不適合性の問題により利用できないこのような添加剤には、性能が界面活性に依存するものが含まれる。性能がその界面活性に依存する潤滑剤のための添加剤が数種類あり、最適活性を得るためには限界溶解度が必要されることが多い。これらには、泡止め剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、および防錆剤等の腐食防止剤が含まれる。これらの添加剤の溶解性特性および全体的適合性は、それらの性能に対するバランスである。添加剤が有効であるためには、良好な性能を提供できることが必要であるが、それが使用されることとなる機能性液と適合性であることも必要である。添加剤は、目的の機能性液中に同じく存在する他の添加剤とも適合性でなければならない。通常、機能性液において使用可能であるためには、添加剤は、機能性液に添加される濃縮物パッケージ(添加剤パッケージ)中だけでなく機能性液中で溶液のままとどまることができなければならない。
【0029】
他の点では有用となるであろう機能性液とのこのような不適合性を有する添加剤は、限定的すぎることはなく、粘度調整剤、摩擦調整剤、清浄剤、曇り点降下剤、流動点降下剤、解乳化剤、流動性向上剤、帯電防止剤、分散剤、抗酸化剤、消泡剤、腐食防止/防錆剤、極圧/摩耗防止剤、シール膨張剤、潤滑補助剤、霧化防止剤およびそれらの混合物を含むがこれら限定されない、潤滑剤などの機能性液において使用される様々なタイプの添加剤が含まれる。一実施形態においては、本発明で使用される実質的に不溶性または低溶解性の添加剤は、摩擦調整剤、粘度調整剤、泡止め剤およびそれらの組み合わせである。
【0030】
摩擦調整剤は、一つ以上の極性基に結合した一つ以上の長鎖または脂肪鎖またはロウ質鎖の化学構造を有することが多い。いくつかの機能性液における溶解限度を有する摩擦調整剤の例には、オレイン酸アミド、グリセロールモノオレエート、C12〜14酒石酸ジアルキルおよびN‐オレイル酒石酸イミドが含まれる。これらの材料は、添加剤濃縮物パッケージおよび/または完成液におけるその溶解度および/または適合性に一定の限度を有するが、十分に低いレベルで「十分に」可溶性および/または適合性であるとみなされうる。より多くの溶解度の問題および/または適合性の問題を有する傾向がある摩擦調整剤には、ステアリン酸アミド、グリセロールモノステアレート、C16〜18酒石酸ジアルキルおよびN‐ステアリル酒石酸イミド等、飽和またはより長鎖の等価な材料が含まれる。これらの材料は、より可溶性および/または適合性の摩擦調整剤と比較して様々な用途において非常に優れた摩擦調整剤でありうるが、これらの摩擦調整剤には、様々な機能性液において有意な溶解度および/または適合性の問題があり、これによってその使用がより不都合となり、場合によっては非実用的となる。このような摩擦調整剤の使用は、これらの問題、および、使用される従来法により機能性液にこれらの添加剤を有効に送達できないことにより制限される。
【0031】
加えて、前述の任意の摩擦調整剤とその不飽和および/またはより短鎖の対応物の混合物を用いて、いずれか単独で得られるものをも上回る摩擦減少の増強を提供できる可能性がある。可溶性添加剤との混合物だけでなく、異なる実質的に不溶性または低溶解性の材料の混合物も、同様の性質調整の可能性のために企図される。可溶性添加剤は、元の機能性液中にあっても、実質的に不溶性または低溶解性の添加剤とともにゲル組成物の一部として送達されてもよい。
【0032】
本発明の使用に適する粘度調整剤には、一つ以上の機能性液において溶解度および/または適合性の問題があるものが含まれる。粘度調整剤は通常ポリマー材料であり、そのようなものとして、最終潤滑剤において可溶性でありうる一方で、特にポリイソブチレンベースの分散剤のような他のポリマー材料が存在する場合に、潤滑剤用に設計された添加剤濃縮物と適合しないことが多い。これは通常、パフォーマンス化学薬品の分散剤‐清浄剤‐防止剤(DI)パッケージとはわかれた別々のパッケージとして粘度調整剤を添加することにより対処される。したがって、粘度調整剤が制御放出デバイスにおいてゲル中に取り入れられた場合には、それらを所望の速度で潤滑剤または他の機能性液に都合よく送達でき、したがって他の化学薬品との濃縮物において生じうる適合性の問題を迂回しうる。したがって、粘度指数(VI)向上剤を含めた粘度調整剤は、それらが添加剤の濃縮物および/または最終機能性液において不適合性となるときに、本発明の目的上実質的に不溶性または低溶解性であると考えられる。
【0033】
本発明で使用できる実質的に不溶性の添加剤の他の例には、酒石酸ジヘキサデシル、酒石酸ジオクタデシル、ジ‐C14〜18酒石酸ジアルキル、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、オレイン酸アミドおよびステアリン酸アミドの混合物、オレイル酒石酸イミド、N‐ステアリル酒石酸イミドおよびN−オレイル酒石酸イミドの混合物、C24〜28アルケニルコハク酸イミド、C24〜28アルキルフェノール、N−ヘキサデシルマレイミド(malimide)および1−ドデシル−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸ドデシルアミド等の摩擦調整剤、およびトリメチル−トリフルオロプロピルメチルシロキサン等の泡止め剤が含まれる。
【0034】
方法および送達デバイス。本発明は、一つ以上の不適合性添加剤が機能性液に有効に送達される方法を提供する。すなわち本発明は、溶解度の問題ならびに/あるいは機能性液および/または機能性液中に存在する他の添加剤とのその他の適合性の問題により従来の手段によっては機能性液において有効に利用できない不適合性添加剤を、かかる機能性液において使用できる手段を提供する。本発明の方法は、機能性液への不適合性添加剤の送達をもたらす、不適合性添加剤を含有する添加剤組成物の使用、および機能性液と添加組成物との接触を含む。
【0035】
本発明は、移動および静止用途、油圧系、自動変速機、手動変速機とディファレンシャルとを含むギヤボックス、金属加工液、ポンプ、サスペンション系、その他の潤滑される機械系などを含む、内燃エンジンを含む任意の液調整デバイスにおいて利用できる。ゲルを使用しうる液調整デバイスは、内燃エンジン、定置エンジン、ジェネレータ、ディーゼルエンジンおよび/またはガソリンエンジン、オンハイウェイ(on highway)エンジンおよび/またはオフハイウェイ(off highway)エンジン、2サイクルエンジン、航空機エンジン、ピストンエンジン、船舶用エンジン、鉄道用エンジン、生物分解可能燃料エンジンなどや、ギヤボックス、自動変速機、ディファレンシャル、油圧系などの潤滑される機械系が含まれる。いくつかの実施形態においては、本発明は、水性または有機機能性液に使用されうる。他の実施形態においては、本発明は、有機機能性液に添加剤を送達するためだけに用いられる。
【0036】
本発明の方法およびゲル組成物により、さらに添加剤を添加する(additize)のに有用な機能性液には、ギヤオイル、変速機オイル、油圧液、エンジンオイル、2サイクルオイル、金属加工液などが含まれる。一実施形態においては、好適な機能性液はエンジンオイルである。別の実施形態では、好適な機能性液はギヤオイルである。別の実施形態では、好適な機能性液は変速機液である。別の実施形態では、好適な機能性液は油圧液である。
【0037】
添加剤組成物は、添加剤組成物の機能性液との接触により、機能性液に溶解および/または不適合性添加剤を供給する。不適合性添加剤含有添加剤組成物は、ゲル組成物または固体添加剤組成物、またはその組み合わせであり得、添加剤組成物は、系または装置片内において添加剤組成物が機能性液と接触する任意の場所に配置されうる。一実施形態においては、添加剤組成物は、循環する機能性液が添加剤組成物に接触する任意の場所に配置される。
【0038】
一実施形態においては、機能性液はエンジンオイルであり、添加剤組成物は、潤滑系、フィルタ、ドレンパン、オイルバイパスループ、キャニスタ、ハウジング、タンク、フィルタのポケット、フィルタのキャニスタ、フィルタのメッシュ、バイパス系のキャニスタ、バイパス系のメッシュ、オイルラインなどを含む、エンジンオイル系内に配置される。一実施形態においては、機能性液はギヤオイルであり、添加剤組成物は、オイルドレンパン、サンプ、フィルタ、フルフローまたはバイパスオイルライン、ライン、ループおよび/またはフィルタ、キャニスタ、メッシュ、添加剤組成物が含まれうるデバイス中の他のスペースなどを含む、ギヤ系内に位置する。一実施形態においては、機能性液は変速機液であり、添加剤組成物は、変速機磁石の中のホール等のスペース、オイルパン、オイルライン、ライン、キャニスタ、メッシュなどを含む、変速機系内に位置する。一実施形態においては、添加剤組成物はエンジンオイルライン内にあり、これにはフルフローフィルタ、バイパスフィルタ、オイルパンなどが含まれる。一実施形態においては、機能性液は油圧液であり、添加剤組成物は、油圧シリンダ、サンプ、フィルタ、オイルライン、パン、フルフローまたはバイパスオイルループ、ラインおよび/またはフィルタ、キャニスタ、メッシュ、系内の他のスペースなどに位置する。
【0039】
ライン、ループおよび/または機能性液系における一つ以上の場所が、添加剤組成物を含みうる。さらに、一つより多くの添加剤組成物が各々使われる場合には、各添加剤組成物は使用される他の添加剤組成物と同一、類似および/または異なる添加剤組成物でありうる。
【0040】
いくつかの実施形態においては、本発明は、例えば発電のための定置ガスエンジンのバイパスループ内のキャニスタなど、機能性液系の任意の場所に、ハウジング、キャニスタまたは構造メッシュ等の、添加剤組成物を保持するための容器を提供する。容器に必要な設計特徴は、添加剤組成物の少なくとも一部が機能性液と接触していることである。他の実施態様においては、添加剤組成物がこのような容器なしで使われる。さらに他の実施形態においては、添加剤組成物は、機能性液が使用される液系内の位置に拘束、係留、またはそうでなければ固定され、したがってこのように添加剤組成物カップまたは類似の容器内に含まれない。
【0041】
いくつかの実施形態においては、添加剤組成物自体が、実質的に不溶性または低溶解性の添加剤の機能性液への送達を可能にする送達デバイスであると考えられる。他の実施形態においては、添加剤組成物が位置する容器が、送達デバイスであると考えられる。さらに他の実施形態においては、送達デバイスは、容器内に位置してもしなくてもよい、添加剤組成物が中に位置する、フィルタ等のデバイスであると考えられる。記載の実施形態の全体における送達デバイスの主な特徴は、機能性液と添加剤組成物の接触を可能にし、いくつかの実施形態においては、接触を促進および/または制御する、その能力である。
【0042】
添加剤組成物は、機能性液と接触していることが必要とである。一実施形態においては、機能性液の1〜100%が液の使用の間に添加剤組成物と物理的に接触するという点で、添加剤組成物が系内の機能性液の約100%〜約1%の範囲で、機能性液と接触している。他の実施形態においては、添加剤は、系内の機能性液の流量の1〜100%に曝露される。一般的に、添加剤組成物と接触する機能性液の流速が減少するほど、液中への添加剤組成物の溶解が少なくなり、流速が増加するほど添加剤組成物の溶解が多くなる。
【0043】
一実施形態においては、添加剤組成物および/または使用済み添加剤組成物が容易に除去され、新しいおよび/または再利用された添加剤組成物と置き換えられうるように、添加剤組成物が機能性液系内に配置される。
【0044】
添加剤組成物は、時間をかけて放出されることが所望される添加剤組成物および/または実質的に不溶性もしくは低溶解性の添加剤の総量、添加剤組成物の所望の形(例えば堅さ、稠度、均質性など)、添加剤組成物の所望の全体的溶解、一つ以上の特定の成分の所望の放出速度、所望の実行様式および/または上記の任意の組み合わせに応じて、任意の周知の方法により系に加えられうる。
【0045】
添加剤組成物の放出速度、すなわち実質的に不溶性または低溶解性の添加剤または他のある成分が添加剤組成物から機能性液へ放出される速度は、主に添加剤組成物の配合により決定される。放出速度は、添加剤組成物の添加様式、添加剤組成物の位置、機能性液の流速、添加剤組成物の形(例えば堅さ、稠度、均質性など)などにも依存する。添加剤組成物は、添加剤組成物成分の指定および所望の溶解速度に望ましい位置に配置されうる。
【0046】
本発明の添加剤組成物は、自己保持性(free−standing)ゲルまたは非自己保持性ゲルを含みうる。自己保持性ゲルは、ゲルの形および寸法を保つ型の中に含まれずに使用されうる。非自己保持性ゲルは、ゲルが完全な形ではそこから除去されることがない容器内に調製される。ゲルおよびその形成デバイスはいずれも、ゲルが用いられる任意の機能性液調整デバイスの一部になる。自己保持性ゲルは、一旦形成されるとその形成デバイスから完全な形で除去でき、形成デバイスを機能性液調整デバイス中に一体化すること必要とせずに、機能性液調整デバイス内に配置されまたは組み込まれうる。いくつかの実施形態においては、自己保持性ゲルは、調整デバイス内に配置され、またはその他の方法で、いかなる容器も伴わずに使用されうる。これにより、液調整デバイスとは別にゲル形成または硬化容器を設計する機会が提供され、ゲルおよび調整デバイスの製造コストが減少する。単独または前述および後述で提供される実施形態の一つ以上と組み合わせて考慮されるいくつかの実施形態では、本発明の自己保持性ゲルは、ゲルを取り囲みまたは、そうでなければゲルを含む容器または保持デバイスの存在しで、機能性液と接触させられ、または、いずれかのタイプの容器またはホルダーがゲルと供に用いられる場合には、側壁または類似の構造が存在しない。
【0047】
固体組成物。いくつかの実施形態においては、本発明の添加剤組成物は、室温で固体である。このような実施形態においては、組成物が少なくとも一つの塩基性成分と少なくとも一つの酸性成分との相互作用により形成される半固体材料ではないという点で、添加剤組成物はゲルではない。むしろこのような実施形態においては、添加剤組成物は、室温で固体であるが、ゲルとは異なりより高い温度では溶解して液体を形成し、より低い温度では凍って固体を形成する、一つ以上の添加剤の混合物である。
【0048】
いくつかの実施形態においては、固体添加剤組成物は、40℃以上、70℃以上、100℃以上、または130℃以上の融点を有する。いくつかの実施形態においては、固体添加剤組成物の融点は、機能性液がその設計された用途での使用中に達する使用温度以下である。それらの場合においては、固体添加剤組成物中に存在する添加剤は、急速に油中に放出される。他の実施態様においては、固体添加剤組成物は、機能性液がその設計された用途での使用中に達する使用温度の少なくともすぐ上から50℃超の融点を有する。例えば、エンジンオイル中で実質的に不溶性または低溶解性の添加剤を送達するように設計された添加剤組成物の融点は、運転エンジンにおけるその使用中にエンジンオイルが達する温度のすぐ上の融点を有しうる。このような実施形態においては、固体添加剤組成物の配合物は、所望の融点をもたらし、固体添加剤組成物が機能性液の耐用期間中に機能性液に曝露されている間に固体の形でとどまれるように慎重に均衡を保たれる。
【0049】
いくつかの実施形態においては、固体添加剤組成物の融点は、それが使用されることとなる機能性液の使用温度を5℃上回る。他の実施形態においては、固体添加剤組成物は、機能性液の使用温度を10℃上回る。さらに他の実施形態においては、固体添加剤組成物は、機能性液の使用温度を20℃上回る。
【0050】
本発明の固体添加剤組成物は、固体添加剤組成物の成分が相互作用してゲルを形成しないという条件で、上記の一つ以上の不適合性添加剤を含み、ゲル組成物を構成する成分(a)および(b)に後述の添加剤のいずれかをさらに含みうる。本発明の固体添加剤組成物は、成分(d)に後述の任意の追加の添加剤も含みうる。いくつかの実施形態においては、本発明の固体添加剤組成物中に存在する成分(a)、(b)および(c)の量は、下記のゲル組成物に記載のものと同じである。
【0051】
本発明の固体添加剤組成物は、二つ以上の実質的に不溶性または低溶解性の添加剤の混合物を含みうる。二つの成分が存在する実施形態においては、重量ベースでの二つの成分の比は、1:99〜99:1の間である。いくつかの実施形態においては、比は25:75〜75:25、または60:40〜40:60である。他の実施形態では、成分自体および成分の比は、所望の融点の固体組成物を生じるように選択される。
【0052】
ゲル組成物。いくつかの実施形態においては、本発明の添加剤組成物は、制御放出添加剤ゲル組成物である。本発明の放出制御ゲル組成物は、上記の不適合性添加剤を含み、それが使用される機能性液へのその制御放出を可能にする。ゲル組成物は、時間をかけて放出される不適合性添加剤を劣化から保護する働きをし、添加剤が他の方法により可能であるよりも長期間にわたり機能性液の性能を向上させるのを可能にし、添加剤がより長期間にわたり所望の濃度で機能性液中に存在することを可能にし、そうでなければ、不適合性である添加剤がその使用過程で機能性液に有効に送達されることを可能にし、またはこれらの組み合わせを可能にする。
【0053】
本発明の使用に適するゲル組成物は、所望の性能を同時に提供し、混合時または混合と後の熱硬化後にゲルを形成するように選択される添加剤の混合物をブレンドすることによって、典型的に作られる。いくつかの実施形態においては、ゲル組成物は、清浄剤、分散剤、酸類、塩基類、高塩基性清浄剤、およびコハク酸化ポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも二つの成分を組み合わせることにより形成される。成分は、組み合わせられたときにゲルを形成するように選択され、特定の比で組み合わせられる。
【0054】
本発明のゲルは、上記の不適合性添加剤の存在下で形成され、不適合性添加剤が溶解および/または分散されたゲル組成物を生じる。いくつかの実施形態においては、不適合性添加剤は、ゲルマトリックスの形成に関与するのではなく、形成するゲル組成物に含まれる、追加的に存在する添加剤であるにとどまる。他の実施態様においては、添加剤自体が、存在する他の成分と相互作用してゲル組成物を形成するという点で、不適合性添加剤がゲル形成に積極的に関与する。さらに他の実施形態においては、複数の不適合性添加剤が存在する場合には、上記の実施形態の組み合わせが生じうる。
【0055】
いくつかの実施形態においては、不適合性添加剤は、ゲル組成物を形成する一つ以上の成分に添加、分散、または融解されうる。そして、成分が組み合わせられてゲルが形成されうる。他の実施態様においては、不適合性添加剤は、ゲルの形成の前、間または後に他の存在する成分に別々の成分として添加されうる。
【0056】
ゲルの配合物は、(a)高塩基性清浄剤、無灰分散剤、またはこれらの混合物を含む塩基性成分と、(b)無水マレイン酸スチレンコポリマー、無灰分散剤、ポリオレフィン、コハク酸化ポリオレフィンまたはこれらの混合物を含む酸性成分と、(c)上記のように機能性液において実質的に不溶性、低溶解性、またはそうでなければ機能性液と不適合性であり、本明細書において「不適合性添加剤」と呼ばれる、添加剤成分と、(d)任意に、一つ以上の粘度調整剤、摩擦調整剤、清浄剤、曇り点降下剤、流動点降下剤、解乳化剤、流動性向上剤、帯電防止剤、分散剤、抗酸化剤、消泡剤、腐食防止/防錆剤、極圧/摩耗防止剤、シール膨張剤、潤滑補助剤、霧化防止剤またはこれらの組み合わせを含む、少なくとも一つの添加剤から構成されうる。
【0057】
成分(a)。塩基性成分は、高塩基性清浄剤、全アルカリ価(TBN)が13より大きい無灰分散剤、またはその混合物を含む。
【0058】
成分(a)での使用に適する分散剤には、分散剤が13より大きい全アルカリ価(TBN)を有する限りで、ポリイソブテニルコハク酸イミド等の無灰分散剤が含まれる。ポリイソブテニルコハク酸イミド無灰分散剤は、約300〜10,000の数平均分子量(「Mn」)を有するポリイソブチレンと無水マレイン酸を一緒に反応させてポリイソブテニル無水コハク酸(「PIBSA」)を形成し、こうして得られた生成物をポリアミン、典型的には分子あたり2〜10の窒素原子を含むエチレンポリアミンと反応させることにより典型的に製造される、市販の製品である。
【0059】
成分(a)での使用に好適な清浄剤には、高塩基性スルホン酸塩類、フェネート類、サリチル酸塩類、カルボン酸塩類、市販の高塩基性カルシウムスルホン酸塩清浄剤、Mg、Ba、Sr、Na、CaおよびK等の金属類を含む高塩基性清浄剤およびこれらの混合物などが含まれる。
【0060】
成分(a)は、エチレン−プロピレンジエンモノマー(EPDM)コポリマー等のコポリマー類をさらに含みうる。好適なエチレン−プロピレンジエンモノマー(EPDM)コポリマー類には、数平均分子量が1×10および1×10の間のものが含まれる。一実施形態においては、成分(a)には、コポリマー、高塩基性清浄剤、またはこれらの組み合わせが含まれる。一実施形態においては、コポリマーには、エチレン−プロピレンジエンモノマー(EPDM)コポリマーが含まれる。別の実施形態では、高塩基性清浄剤には、高塩基性水酸化カルシウムアルキルベンゼンスルホン酸塩清浄剤が含まれる。さらに別の実施形態においては、EPDMコポリマーおよび高塩基性水酸化カルシウムアルキルベンゼンスルホン酸塩清浄剤が互いに組み合わせて用いられる。
【0061】
成分(a)すなわち塩基性成分は、成分(b)に対する成分(a)の重量比が、一実施形態においては0.01〜0.99、別の実施形態では0.05〜0.2であるような、範囲内で存在する。これは、一実施形態においては、ゲル中の成分(a)および(b)を組み合わせたものについて約1重量%〜約100重量%の範囲、別の実施形態においては約1重量%〜約50重量%の範囲に対応する。成分(a)単独に関しては、ゲルは、一実施形態においては約0.1重量%〜約80重量%の成分(a)、別の実施形態では約0.5重量%〜約70重量%の成分(a)でありうる。さらに他の実施形態においては、成分(a)は、0.5重量%〜60重量%、30〜60重量%、40〜60重量%、50〜60重量%、または55〜58重量%、ゲル中に存在する。
【0062】
成分(b)。酸性成分は、酸性基を有する官能化ポリマー、無灰分散剤、ポリオレフィン、コハク酸化ポリオレフィンまたはこれらの混合物を含みうる。
【0063】
本発明において有用な官能化ポリマー類には、オレフィンコポリマー類およびアクリレートコポリマー類またはメタクリレートコポリマー類が含まれる。官能化オレフィンコポリマー類は、例えば無水マレイン酸等の活性モノマーとグラフトされてから、アルコールまたはアミンにより誘導体化される、エチレンおよびプロピレンのインターポリマー類でありうる。他のこのようなコポリマー類は、窒素化合物と反応またはグラフトされるエチレンおよびプロピレンのコポリマー類である。ポリアクリレートエステル類の誘導体は、分散剤粘度指数調整剤添加剤として周知である。RohMaxからのAcryloid(商標)985またはViscoplex(商標)6−054等の分散剤アクリレートまたはポリメタクリレート粘度調整剤が特に有用である。PIB、メタクリレート、ポリアルキルスチレン(polyalkystyrene)、エチレン/プロピレンおよびエチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエンポリマー類等の固体の油溶性ポリマーも、粘度(visjcosity)指数向上剤として用いられうる。
【0064】
一実施形態においては、本発明の酸性成分は、無水マレイン酸スチレンコポリマー(MSC)を含み、無灰分散剤をさらに含みうる。
【0065】
無水マレイン酸スチレンコポリマーは、アルコールにより部分的にエステル化され得、酸性基に対するアルコールの当量比が一実施形態においては約0.1〜約0.99であり、別の実施形態では0.45〜0.95である。コポリマーを調製するのに用いられる適切なアルコール類には、6〜32の炭素原子を含むアルコール類、別の実施形態では8〜18の炭素原子を含むアルコール類が含まれる。適切な無水マレイン酸スチレンコポリマー類は、全酸価(TAN)が一実施形態では1より大きいもの、別の実施形態では3より大きいものを含み、TANは材料1グラム当たりのKOHの等量における単位である。
【0066】
成分(b)における使用に適する無灰分散剤は、成分(b)に用いられるのに適切な無灰分散剤が測定可能な全酸価(TAN)を有することを除き、成分(a)に関して上記した分散剤と同じである。いくつかの実施形態においては、適切な分散剤は、15より大きいTANを有する。一実施形態においては、成分(b)は、ポリイソブテニルコハク酸イミド分散剤を含む。
【0067】
成分(b)すなわち酸性成分は、成分(a)の成分(b)に対する重量比が典型的に0.01〜0.99、より典型的には0.05〜0.2であるような範囲内で存在する。これは、一実施形態においてはゲル中の成分(a)および(b)を組み合わせたものにつき約1重量%〜約100重量%の範囲、別の実施形態においては約1重量%〜約50重量%の範囲に対応する。成分(b)単独に関しては、ゲルは、一実施形態においては約0.5重量%〜約99重量%の成分(b)、もう別の実施形態では約0.5重量%〜約98重量%の成分(a)でありうる。他の実施形態においては、成分(b)は、0.1重量%〜40重量%、0.1重量%〜20重量%、0.1重量%〜10重量%、または5〜10重量%、ゲル中に存在しうる。
【0068】
成分(c)。不適合性添加剤成分は、上記のセクションに記載されている。成分(c)は、成分(c)の成分(a)、(b)、(c)、および(d)を合わせた合計に対する重量比が典型的に0.001〜0.99、より典型的に0.01〜0.5であるような範囲で存在する。これは、一実施形態ではゲル中の約0重量%〜約99重量%の範囲の成分(c)、別の実施形態においては約1重量%〜約50重量%の範囲に対応する。他の実施形態成分においては、成分(c)は0.1重量%〜40重量%、0.1重量%〜30重量%、0.1重量%〜15重量%、10〜20重量%、または10〜15重量%、ゲル中に存在する。
【0069】
成分(d)。ゲル組成物は、機能性液への制御放出のための少なくとも一つの追加的な所望の添加剤を含みうる。これらの任意のゲル成分添加剤には、粘度調整剤(単数または複数)、摩擦調整剤(単数または複数)、清浄剤(単数または複数)、曇り点降下剤(単数または複数)、流動点降下剤(単数または複数)、解乳化剤(単数または複数)、流動性向上剤(単数または複数)、帯電防止剤(単数または複数)、分散剤(単数または複数)、抗酸化剤(単数または複数)、消泡剤(単数または複数)、腐食防止/防錆剤(単数または複数)、極圧/摩耗防止剤(単数または複数)、シール膨張剤(単数または複数)、潤滑補助剤(単数または複数)、霧化防止剤(単数または複数)およびこれらの混合物が、これらの追加の添加剤がゲル組成物中の他の成分のいずれに存在する添加剤と、同じタイプの添加剤でもよいが同一ではないという条件で含まれる。これらの任意の添加剤の一つ以上の存在が、ゲルが機能性液と接触させられると機能性液に所望の添加剤(単数または複数)を時間をかけて放出する、制御放出ゲルをもたらす。所望の添加剤成分は、機能性液の配合、性能特性、機能など、および所望の機能に応じてどの添加剤が使用済み添加剤に加えられおよび/または新たな添加剤加えられることが所望されるかにより、さらに決定される。
【0070】
成分(d)、すなわち制御放出のための一つ以上の所望の添加剤を含む任意の成分は、存在する場合には、成分(d)の成分(a)、(b)、(c)、および(d)を合わせた合計に対する重量比が、一実施形態においては0.001〜0.99、別の実施形態においては0.01〜0.5であるような範囲で存在する。これは、一実施形態においてはゲル中の約0重量%〜約99重量%の成分(d)の範囲、別の実施形態においては約1重量%〜約50重量%の範囲に対応する。他の実施形態においては、成分(d)は、ゲル中に0〜40重量%、0〜30重量%、0〜25重量%、0〜20重量%、0〜20重量%、15〜30重量%、および15〜25重量%存在する。
【0071】
好適な抗酸化剤には、アルキル−置換フェノール類、立体的にかさ高いフェノール類(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール等)、およびヒンダードエステル−置換フェノール類が含まれるがこれに限られない。
【0072】
好適な極圧/摩耗防止剤には、硫黄および/または塩化硫黄EP剤、塩素化炭化水素EP剤、リン系EP剤、またはその混合物が含まれる。
【0073】
好適な消泡剤には、ポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリアクリレート類およびポリメタクリレート類、トリメチル−トリフルオロ−プロピルメチルシロキサンなど等の有機シリコン類が含まれる。
【0074】
好適な粘度調整剤には、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドンおよびN,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレートならびに一つ以上のアルキルアクリレート類の重合から得られるポリアクリレート類が含まれる。
【0075】
好適な摩擦調整剤には、モリブデンジチオカルバメートを含む有機モリブデン化合物、およびオレイン酸(グリセロールモノオレエート等)およびステアリン酸ベースのものを含む脂肪酸ベース材料が含まれる。
【0076】
好適な霧化防止剤には、1.5Mnポリイソブチレン(例えば商標名Vistanex(登録商標)の材料)等の超高(>100,000Mn)ポリオレフィン類、または2−(N−アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸(別名AMPS(登録商標))を含むポリマー類、またはこれらの誘導体などが含まれる。
【0077】
好適な腐食防止剤には、アルキル化コハク酸類およびその無水物誘導体類、有機ホスホン酸類などが含まれる。防錆剤は、単独または組み合わせて使用されうる。
【0078】
好適な金属不活性化剤には、ベンゾトリアゾール類(トリルトリアゾールなど等)の誘導体が含まれる。好適な解乳化剤には、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドコポリマー類などが含まれる。好適な潤滑補助剤には、グリセロールモノオレエート、ソルビタンモノオレエートなどが含まれる。好適な流動性向上剤には、エチレン酢酸ビニルコポリマー類などが含まれる。好適な曇り点降下剤には、アルキルフェノール類およびその誘導体、エチレン酢酸ビニルコポリマー類などが含まれる。好適な流動点降下剤には、アルキルフェノール類およびその誘導体、エチレン酢酸ビニルコポリマー類などが含まれる。好適なシール膨張剤には、チオフェン、3−(デシルオキシ)テトラヒドロ−1,1−ジオキシド(すなわち3−デシルオキシスルホラン)など等の有機硫黄化合物が含まれる。
【0079】
いくつかの実施形態においては、成分(d)は、成分(a)および(b)に関して記載されるもの等の分散剤および清浄剤を含みうる。加えて、成分(d)は追加のタイプの分散剤も含みうる。これらの追加的タイプの分散剤には、マンニッヒ分散剤、カルボン酸分散剤、アミン分散剤、およびポリマー分散剤が含まれる。
【0080】
マンニッヒ分散剤は、アルキル基が少なくとも約30の炭素原子を含むアルキルフェノール類と、アルデヒド類(特にホルムアルデヒド)およびアミン類(特にポリアルキレンポリアミン類)との反応生成物である。
【0081】
別の種類の分散剤は、カルボン酸分散剤である。これらの「カルボン酸分散剤」の例は、特許米国特許第3,219,666号に記載されている。
【0082】
アミン分散剤は、比較的高分子量の脂肪族ハライド類およびアミン類の反応生成物、好ましくはポリアルキレンポリアミン類である。その例は米国特許第3,565,804号に記載されている。
【0083】
ポリマー分散剤は、デシルメタクリレート、ビニルデシルエーテルおよび高分子量オレフィン類等の油溶性モノマー類の、極性置換基を含むモノマー類、例えばアミノアルキルアクリレート類またはアシルアミド類およびポリ−(オキシエチレン)−置換アクリレート類とのインターポリマー類である。そのポリマー分散剤の例は、以下の米国特許第3,329,658号および第3,702,300号に記載されている。
【0084】
分散剤は、様々な薬剤のいずれかとの反応により後処理されてもよい。これらの中には、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール類、二硫化炭素、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、炭化水素−置換無水コハク酸類、ニトリル類、エポキシド類、ホウ素化合物、およびリン化合物がある。
【0085】
任意に、自己保持性添加剤ゲルが維持される限りにおいて、基油ストック、不活性担体、染料、静菌剤、固体粒子添加剤などを含む他の成分が添加剤ゲルに加えられうる。
【0086】
いくつかの実施形態においては、本発明のゲルは、熱可塑性ポリマー類を含まない。このような実施形態においては、本発明のゲルは熱可塑性ポリマー類を実質的に含まず、または熱可塑性ポリマー類を全く含まないものでありうる。
【0087】
本発明のゲル組成物は、液体より固体に近い半固体の状態で存在する。Parker,Dictionary of Scientific and Technical Terms,Fifth Edition,McGraw Hill,(著作権)1994を参照。Larson,“The Structure and rheology of Complex Fluids”,Chapter 5,Oxford University Press,New York,New York,(著作権)1999も参照。これらは各々が参照により本明細書に組み込まれるものとする。ゲルの流動学的性質は、小振幅振動剪断試験で測定されうる。この技術は、ゲルの構造的特徴を測定し、弾性エネルギーの貯蔵を表す貯蔵弾性率、およびそのエネルギーの粘性散逸を表す損失弾性率と呼ばれる項を生じる。損失弾性率/貯蔵弾性率の比は、損失正接または「tanデルタ」と呼ばれ、液体様材料では>1であり、固体様材料では<1である。本発明のゲルは、一実施形態において約≦0.75、別の実施形態においては約≦0.50、別の実施形態においては約≦0.25のtanデルタ値を有する。ゲルは、一実施形態において約0.1〜0.75、一実施形態においては約0.15〜0.50、一実施形態においては約0.20〜0.33のtanデルタ値を有する。
【0088】
添加剤ゲルの硬度または堅さを評価する別の手段は、そのコーン貫入値(cone penetration value)すなわちcone penを測定することである。Cone penはASTM D217およびASTM D1403により測定でき、これらの試験法はグリースの硬度および稠度を試験するために用いられることが多い。これらの試験手順は、特定のサイズおよび輪郭のコーンが材料のサンプルにおいて特定時間後に達する貫入の量を測定するステップを伴う。cone pen値が小さいほど、液添加剤ゲルはより堅く、および/または硬度が高い。本発明のゲルは、手順において示されるように1/4penを用いてASTM D217により測定されるところで、約0〜約100、別の実施形態では約0〜約50、別の実施形態では約0〜約20のcone pen値を有する。ゲルは、一実施形態においては約≦100、一実施形態においては約≦50、一実施形態においては約≦20のcone pen値を有する。これらのcone pen値は、十分の一ミリメータであり、尺度調整されない。
【0089】
いくつかの実施形態においては、本発明のゲル組成物は、自己保持性ゲル組成物でありうる。ゲルは、調製された後に十分に堅く固体様であるために、ゲルが調製された容器等の容器またはデバイスから除去され、支持されなくなったときにその形状および寸法を保持できる場合に、「自己保持性」であるとされる。いくつかの実施形態においては、ゲルはこれらの自己保持特性を無期限に保持し、他の実施形態では、ゲルはこれらの特性を少なくとも6時間、少なくとも1時間、または少なくとも15分間保持する。いくつかの実施形態においては、自己保持性ゲル組成物は、上記のtanデルタ値が約0.1〜0.33、一実施形態では約0.15〜0.33、一実施形態では約0.20〜0.33、または一実施形態では約0.21〜0.33である。いくつかの実施形態では、自己保持性ゲル組成物は、上記のcone pen値が約40〜約75、別の実施形態では約40〜約70、別の実施形態では約45〜約70である。
【0090】
ゲル形成マトリックスに関与する高塩基性清浄剤のTBNは、通常少なくとも200、より典型的には300〜1,000、最も典型的には350〜650である。高塩基性清浄剤の混合物が用いられる場合には、少なくとも一つが、これらの範囲内のTBN値を有しなければならない。しかし、これらの混合物の平均TBNもこれらの値に対応しうる。
【0091】
添加剤ゲルは典型的に、少量(約5〜40%)の基油ストックを含み、これには鉱物ベース、合成物またはこれらの混合物が含まれるがこれに限られない。任意に、不活性担体が必要に応じて用いられうる。さらに、有益および所望の機能を提供する他の活性成分がゲルに含まれてもよい。加えて、PTFE、MoSおよびグラファイト等の固体の、粒状添加剤が含まれうる。いくつかの実施形態においては、本発明のゲル組成物は、基油ストックを含むこれらの追加的成分を機能性液に制御された様式で放出しうる。
【0092】
任意に、染料が用いられ、これにはハロ−アルカンなどが含まれうる。染料は、単独または組み合わせて用いられうる。染料は、添加剤ゲルの総重量の約0%〜約90%の範囲、一実施形態においては約.0005%〜約50%の範囲、別の実施形態では約.0025%〜約30%の範囲で存在する。
【0093】
任意に、静菌剤(bacterostatic agents)が使用され、これにはホルムアルデヒド、グルテルアルデヒド(gluteraldehyde)および誘導体、カタン(kathan)などが含まれうる。静菌剤(bacterostatic agents)は、単独または組み合わせて用いられうる。静菌剤(bacterostatic agents)は、添加剤ゲルの総重量の約0%〜約90%の範囲、一実施形態においては約.0005%〜約50%の範囲、別の実施形態では約.0025%〜約30%の範囲で存在する。
【0094】
ゲル組成物の成分は、任意の順序で順次にまたは全て一度に混合されて、混合物が形成される。ゲルの成分の混合後には、ゲル化が生じるために硬化が必要とされうる。硬化が必要とされる場合には、それは典型的に約20℃〜約165℃で約1分〜約60日間、好ましくは約50℃〜約120℃で約1〜約24時間、より好ましくは約85℃〜約115℃で約4〜約12時間の範囲で行われる。
【0095】
機能性液中の他の添加剤または可溶化剤。本発明の方法で使用される機能性液中に存在する他の添加剤は、それらの通常の機能を果たすが、不適合性添加剤の機能性液への送達/溶解を助ける促進剤または可溶化剤(solublizer)としても働きうる。いくつかの実施形態においては、このような添加剤には、酸化防止剤、分散剤、清浄剤または摩耗防止剤が含まれる。実質的に不溶性の添加剤を構成するもの以外の摩擦調整剤、腐食防止剤、または粘度調整剤も、このような目的で機能性液中に存在しうる。酸化の生成物が実質的に不溶性の添加剤の溶解を促進しうるとも認められる。それらは、存在および/または形成または酸化生成物から生じる極性の増大または酸性度の増大によりこのことを行うことができる。
【実施例】
【0096】
特に有利な実施形態を記載した以下の実施例により、本発明をさらに説明する。実施例は本発明を説明するために提供するものであり、制限することを目的とするものではない。
【0097】
以下の実施例は、使用するのに望ましい機能性液、ここではエンジンオイルにおいて低溶解性の、二つの添加剤の調製についてのものである。
【0098】
実施例I:N−ステアリル酒石酸イミド。不溶性添加剤を、以下のように調製する。メカニカルスターラー、窒素導入口、サーモウェル、Dean−Stark装置、Friedrichのコンデンサおよびサーマルテープに包まれた滴下漏斗を備えた5リットル4口丸底フラスコに、d,l−酒石酸(310g、2.07モル)およびキシレン(1388g)を充填する。酒石酸の炭化を防ぐために激しく撹拌しながら、反応物を130℃に加熱する。それから、1−オクタデシルアミン(557g、2.07モル)を、固体で8時間かけて徐々に加える(15〜30分毎に約25g)。アミンの添加が終了した後、反応物を3時間130℃で、続けて加熱する。この温度で、3時間かけてDean−Stark装置を介してキシレンを留去する。それから蒸留装置をフラスコから除去し、ドライアイス冷却された受け取りフラスコと置き換える。それから反応混合物を、1.5時間130℃および<20mm Hgで真空ストリッピングする。
【0099】
反応混合物をジャーへ移し、これを冷ますと暗褐色固体(700g)となる。生成物は、3.65重量%の窒素含有量、9.6のTAN、2.5のTBN、および5.92重量%のOH含有量を有する。
【0100】
実施例II:N−オレイル酒石酸イミド。不溶性添加剤を、以下のように調製する。1−オクタデシルアミンをオレイルアミンと置き換えることを除いては、実施例Iの手順にしたがう。
【0101】
上記の実施例を、いくつかの実地試験で評価した。これらの実地試験を、試験のために調製されたゲル組成物および固体添加剤組成物の例とともに後述し、これらの例には上記の実施例Iおよび実施例IIの添加剤が含まれる。
【0102】
Ford Focus(商標)実地試験。後述の実施例A−1、A−2、およびA−3の材料を、2002Ford Focus(商標)の4シリンダエンジンにおいて試験する。各試験の開始時に、自動車エンジンを二回洗浄してから、追加的な摩擦調整剤を含まないSAE 10W−30 GF−4モーター油で満たす。エンジンは、試験するゲル組成物または固体添加剤組成物を保持するカップを収容するための特注短縮濾材を含むステンレス鋼ハウジングを有するオイルフィルタを備えている。オイルフィルタの他の構成要素はいずれも変更しなかった。各試験で、車が普通に運転される。ほぼ一定の間隔でエンジンを検査し、分析のためにエンジンオイルのサンプルをとる。試験には、Societyof Automotive Engineers paper SAE−2007−01−4134,Copyright(著作権)2007,SAE Internationalに記載のPCS Instruments HFRR High Frequency Reciprocating Rig(HFRR)機械を使用した摩擦係数(COF)、被膜形成率、および摩耗痕の測定を含む。
【0103】
実施例A−1。PIBSAおよびテトラエチレンペンタミンから得られた10pbwの無灰分散剤と、40pbwの部分エステル化無水マレイン酸とスチレンのコポリマーと、50pbwの実施例Iの添加剤を混合することにより、ゲル組成物を調製する。混合物を所望の形状の型に加え、約8時間100℃で保つ。混合物が、実施例Iの不溶性添加剤を含むゲルを形成する。
【0104】
実施例A−2。PIBSAおよびテトラエチレンペンタミンから得られた10pbwの無灰分散剤と、40pbwの部分エステル化無水マレイン酸とスチレンコのポリマーと、50pbwの実施例IIの添加剤を混合することにより、ゲル組成物を調製する。混合物を所望の形状の型に加え、約8時間100℃で保つ。混合物が、実施例IIの不溶性添加剤を含むゲルを形成する。
【0105】
実施例A−3。50pbwの実施例Iの不溶性添加剤と50pbwの実施例IIの不溶性添加剤を混合することにより、固体添加剤組成物を調製する。組成物を、液体になるまで温めて混合し、それから所望の形状の型に配置する。混合物を冷まし、所望の形状の固体添加剤組成物を形成させる。
【0106】
比較実施例A−1。ベースライン試験を、上記のオイルおよび標準の(無改変)オイルフィルタを使用してFord Focus(商標)において完了した。
【0107】
比較実施例A−2。オイルを0.25重量%の実施例Iの添加剤オレイル酒石酸イミドを含むようにトップ処理したことを除きA−1ベースラインを繰り返す、トップ処理試験も完了した。
【0108】
比較実施例A−1およびA−2のいずれにおいても、ゲル組成物または固体添加剤組成物は存在しなかった。Ford Focus(商標)における試験の結果が以下の表にまとめられているが、いくつかのサンプルの試験は出願時にまだ進行中であった。
【0109】
【表1】

結果は、ゲル組成物および固体添加剤組成物からオイル中への実質的に不溶性の添加剤の時間をかけた制御放出が、ベースラインオイルおよびトップ処理比較実施例を上回る性能の向上を提供することを示す。
【0110】
Toyota Camry(商標)実地試験。実施例B−1の材料を、2005Toyota Camry(商標)の4シリンダエンジンにおいて試験する。上記の実地試験の手順を、この実地試験にも用いる。
【0111】
実施例B−1。実施例A−1の手順にしたがい、ゲル組成物を調製する。これにより、Toyota Camry(商標)実地試験用の実施例Iの不溶性添加剤を含むゲルが得られる。
【0112】
比較実施例B−1。上記のオイルおよび標準(無改変)オイルフィルタを使用して、Toyota Camry(商標)においてベースライン試験を完了した。
【0113】
比較実施例B−2。オイルを0.25重量%の実施例Iの添加剤オレイル酒石酸イミドを含むようにトップ処理したことを除き実施例B−1ベースラインを繰り返す、トップ処理試験も完了した。
【0114】
比較実施例B−1およびB−2のいずれにおいても、ゲル組成物または固体添加剤組成物は存在しなかった。Toyota Camry(商標)における試験の結果が以下の表にまとめられている。
【0115】
【表2】

結果は、ゲル組成物からオイル中への実質的に不溶性の添加剤の時間をかけた制御放出が、ベースラインオイルおよびトップ処理比較実施例を上回る性能の向上を提供することを示す。
【0116】
Saturn Relay(商標)実地試験。下記の実施例C−1およびC−2の材料を、2006 Saturn Relay(商標)の6シリンダエンジンにおいて試験する。上記の実地試験の手順を、この実地試験にも用いる。
【0117】
実施例C−1。実施例A−1の手順にしたがい、ゲル組成物を調製する。これにより、Saturn Relay(商標)実地試験用の実施例Iの不溶性添加剤を含むゲルが得られる。
【0118】
実施例C−2。100pbwの実施例IIの不溶性添加剤を混合することにより、固体添加剤組成物を調製する。組成物を液体になるまで温めてから、所望の形状の型に配置する。混合物を冷まし、所望の形状の固体添加剤組成物を形成させる。
【0119】
比較実施例C−1。上記のオイルおよび標準(無改変)オイルフィルタを使用して、Ford Focus(商標)においてベースライン試験を完了した。
【0120】
比較実施例C−2。オイルを0.25重量%の実施例Iの添加剤オレイル酒石酸イミドを含むようにトップ処理したことを除きA−1ベースラインを繰り返す、トップ処理試験も完了した。
【0121】
比較実施例A−1およびA−2のいずれにおいても、ゲル組成物または固体添加剤組成物は存在しなかった。Ford Focus(商標)における試験の結果が以下の表にまとめられているが、いくつかのサンプルの試験は出願時にまだ進行中であった。
【0122】
【表3】

結果は、ゲル組成物および固体添加剤組成物からオイル中への実質的に不溶性の添加剤の時間をかけた制御放出が、ベースラインオイルおよびトップ処理比較実施例を上回る性能の向上を提供することを示す。
【0123】
実験室試験。250mlビーカーに5グラムの組成物を配置し、95グラムのValvoline(商標)All Climate 10W−30 SJオイルを添加することにより、後述の実施例D−1およびD−2の材料を試験する。それから、混合物を100℃に加熱し、5時間保つ。オイルのサンプルをビーカーからとり、組成物中の不適合性添加剤のオイル中への放出率を測定するために分析する。この分析は、オイル中の窒素含有量を測定し、組成物中に存在する添加剤の総量に対して放出されねばならない添加剤の量を算出して、オイルの測定窒素含有量を提供することにより達成される。
【0124】
実施例D−1。PIBSAおよびテトラエチレンペンタミンから得られた60pbwの無灰分散剤と、40pbwの実施例Iの添加剤を混合することにより、不適合性添加剤組成物を調製する。材料を130℃で混合してから、所望の形状の型に加え、100℃で約6時間保つ。混合物により、実施例Iの不溶性添加剤を含む組成物が形成される。
【0125】
実施例D−2。PIBSAおよびテトラエチレンペンタミンから得られた70pbwの無灰分散剤と、30pbwの実施例Iの添加剤を混合することにより、不適合性添加剤組成物を調製する。材料を140℃で混合してから、所望の形状の型に加え、140℃で約1時間保つ。混合物により、実施例Iの不溶性添加剤を含む組成物が形成される。
【0126】
実施例D−1およびD−2の実験室試験からの結果が、下表にまとめられる。
【0127】
【表4】

実験室試験の結果は、不適合性添加剤の小さいが有意な部分が、不適合性添加剤含有組成物からオイルへテスト期間を通して、ここでは5時間放出されることを示す。結果は、本発明の組成物により、不適合性添加剤の機能性液への時間をかけた放出が可能となることを示す。
【0128】
以上に言及した文書の各々は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。実施例以外においては、または特に明記しない限りは、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを特定する、本記述における全ての数量は、「約」という語により修飾されるものと理解されなければならない。特に明記しない限り、本明細書において言及される各化学薬品または組成物は、異性体、副産物、誘導体、および商用グレード中に存在すると通常理解される他のそのような材料を含みうる、商用グレード材料であるものと理解されなければならない。しかし、各化学成分の量は、特に明記しない限り商用材料に慣習的に存在しうるいかなる溶媒または希釈剤も除いて示される。当然のことながら、本明細書に記載の量、範囲、および比の上限および下限は、独立に組み合わせられうる。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の任意の要素の範囲または量と共に用いられうる。本明細書において用いられるところの、「から基本的になる」という表現は、目的の組成物の基本的かつ新規な特徴に具体的に影響を及ぼさない物質の包含を許容する。特に明記しない限り、本明細書において提供される全てのパーセンテージ値は、重量パーセントである。
【0129】
加えて、上記の全ての実施形態は、その使用に関して、単独および上記の他の全ての実施形態との組み合わせが企図されており、これらの組み合わせは本発明の一部であると考えられる。上記のアミン類およびアルコール類の具体的実施形態は、本発明に有用なカルボン酸類の特定実施形態と組み合わせて企図されている。
【0130】
本明細書中、および特に液に添加剤を送達する記載の方法に関して使用されるところの、受動的にという用語は、機械的投与または類似の能動的手段を使用しない方法をさしうる。いくつかの実施形態においては、このような受動的方法には、添加剤含有組成物の溶解、融解および/または浸食、および/または組成物から液への添加剤の拡散、浸出および/または抽出を含みうる。いくつかの実施形態においては、本発明の方法は、デバイスが添加剤含有組成物から液を分離するように働き得、組成物を保持する容器の開口部付近に配置され、および/または組成物から液への添加剤の送達を制御するために働く、いかなる膜、液浸透性または半透性エレメント、スクリーン、メッシュ、カバーまたは類似のデバイスも利用しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性液に活性添加剤を受動的に送達する方法であり、該添加剤が、該機能性液において実質的に不溶性、低溶解性、またはそうでなければ該機能性液と不適合性であり、該方法が、
I. 送達デバイスを用いて、該液を、該添加剤または該添加剤を含む組成物と接触させるステップであり、該送達デバイスが、該添加剤または添加剤含有組成物を含み、該機能性液との接触を可能にする、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記添加剤を含む前記組成物が、ゲル組成物、前記添加剤が添加されることとなる前記機能性液の使用温度を上回る融点を有する固体組成物、またはこれら組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記添加剤を含む前記組成物が、ゲル組成物を含み、該ゲルが、清浄剤、分散剤、酸類、塩基類、高塩基性清浄剤、およびコハク酸化ポリオレフィン類からなる群より選択される少なくとも二つの成分の組み合わせにより形成され、
該選択された添加剤が、組み合わせられるとゲルを形成し;
該ゲルが、前記実質的に不溶性または低溶解性の添加剤の存在下で形成され、前記実質的に不溶性または低溶解性の添加剤が溶解および/または分散された、ゲル組成物を生じる、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記ゲルが、
a)高塩基性清浄剤を含む塩基性成分と;
b)無水マレイン酸スチレンコポリマー、無灰分散剤、ポリオレフィン、コハク酸化ポリオレフィンまたはこれらの混合物を含む、酸性成分と;
c)機能性液において実質的に不溶性または低溶解性の添加剤成分と;
の組み合わせにより形成され、
d 粘度調整剤(単数または複数)、摩擦調整剤(単数または複数)、清浄剤(単数または複数)、曇り点降下剤(単数または複数)、流動点降下剤(単数または複数)、解乳化剤(単数または複数)、流動性向上剤(単数または複数)、帯電防止剤(単数または複数)、分散剤(単数または複数)、抗酸化剤(単数または複数)、消泡剤(単数または複数)、腐食防止/防錆剤(単数または複数)、極圧/摩耗防止剤(単数または複数)、シール膨張剤(単数または複数)、潤滑補助剤(単数または複数)、霧化防止剤(単数または複数)、またはその混合物を含む、少なくとも一つの添加剤
を任意にさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ゲルが、0.330未満のtanデルタ値および75未満のcone pen値を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記添加剤を含む前記組成物が、室温では固体であって、前記添加剤が添加されることとなる前記機能性液の使用温度を上回る融点を有する、固体を含む、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記送達デバイスが、液フィルタを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記実質的に不溶性または低溶解性の添加剤が、摩擦調整剤、泡止め剤、腐食防止剤、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記添加剤が送達されることとなる前記機能性液が、油圧液、自動変速機液、ギヤボックス液、手動変速機液、ディファレンシャル液、金属加工液、サスペンション系液、エンジン液、潤滑油、エンジンオイル、変速機液、グリース、ギヤオイル、不凍液、冷却系液、農耕用トラクタ液、変圧器液、燃料、機械系液、工業用液、およびこれらの組み合わせを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記機能性液がエンジンオイルであり、前記添加剤の前記送達が、燃費の向上、前記液の前記粘度安定性の向上、前記液の耐用期間の向上、またはその組み合わせを生じる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ゲル組成物であり、該ゲルが、
a)高塩基性清浄剤を含む塩基性成分と;
b)無水マレイン酸スチレンコポリマー、無灰分散剤、ポリオレフィン、コハク酸化ポリオレフィンまたはその混合物を含む酸性成分と;
c)機能性液において実質的に不溶性または低溶解性の添加剤成分と;
の組み合わせにより形成され、
d)粘度調整剤(単数または複数)、摩擦調整剤(単数または複数)、清浄剤(単数または複数)、曇り点降下剤(単数または複数)、流動点降下剤(単数または複数)、解乳化剤(単数または複数)、流動性向上剤(単数または複数)、帯電防止剤(単数または複数)、分散剤(単数または複数)、抗酸化剤(単数または複数)、消泡剤(単数または複数)、腐食防止/防錆剤(単数または複数)、極圧/摩耗防止剤(単数または複数)、シール膨張剤(単数または複数)、潤滑補助剤(単数または複数)、霧化防止剤(単数または複数)、またはこれらの混合物を含む、少なくとも一つの添加剤
を任意にさらに含む、ゲル組成物。
【請求項12】
室温で固体である添加剤組成物であり、機能性液において実質的に不溶性または低溶解性の少なくとも二つの添加剤成分を含み;
該添加剤組成物を構成する成分、および該成分間の比が、該液の使用温度よりも5℃上回る融点を有する固体添加剤組成物を生じるように選択される、添加剤組成物。
【請求項13】
前記実質的に不溶性または低溶解性の添加剤が、酒石酸ジヘキサデシル、酒石酸ジオクタデシル、N−ステアリル酒石酸イミド、N−オレイル酒石酸イミド、ジ−C14〜18ジアルキル酒石酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、オレイル酒石酸イミド、C24〜28アルケニルコハク酸イミド、C24〜28アルキルフェノール、N−ヘキサデシルマルイミド、1−ドデシル−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸ドデシルアミド、トリメチル−トリフルオロプロピルメチルシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
機能性液と請求項11〜13のいずれかに記載のゲル組成物との接触を促進する、液調整デバイス。


【公表番号】特表2012−504683(P2012−504683A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530111(P2011−530111)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/057943
【国際公開番号】WO2010/039509
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】