機能性液体吐出装置及び機能性液体吐出方法並びにインプリントシステム
【課題】インクジェット方式を用いて高粘度の機能性液を高周波で連続吐出させる際のロバスト性が維持された好ましい液体吐出が実現される、機能性液体吐出装置及び機能性液体吐出方法並びにインプリントシステムを提供する。
【解決手段】5mPa・s以上20mPa・s以下の粘度の光硬化性樹脂液体を基板(20)上に吐出させるノズル(23)を具備し、圧力室(32)内部の液体を加圧する圧電素子(38)が設けられたヘッド(24)と、基板を搬送させる搬送部(22)と、を備え、圧力室を静定状態から膨張させる引き波形(102)及び膨張させた圧力室を収縮させる押し波形(106)を有し、光硬化性樹脂液体の粘度ηとヘッドの共振周期Tcとの関係が、(2/Tc)≦γ1≦(η/10)、γ2≦γ1を満たす引き波形の傾きγ1、押し波形の傾きγ2を有する駆動電圧を生成し、該駆動電圧を用いてヘッドから基板上に光硬化性樹脂液体を吐出させる。
【解決手段】5mPa・s以上20mPa・s以下の粘度の光硬化性樹脂液体を基板(20)上に吐出させるノズル(23)を具備し、圧力室(32)内部の液体を加圧する圧電素子(38)が設けられたヘッド(24)と、基板を搬送させる搬送部(22)と、を備え、圧力室を静定状態から膨張させる引き波形(102)及び膨張させた圧力室を収縮させる押し波形(106)を有し、光硬化性樹脂液体の粘度ηとヘッドの共振周期Tcとの関係が、(2/Tc)≦γ1≦(η/10)、γ2≦γ1を満たす引き波形の傾きγ1、押し波形の傾きγ2を有する駆動電圧を生成し、該駆動電圧を用いてヘッドから基板上に光硬化性樹脂液体を吐出させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機能性液体吐出装置及び機能性液体吐出方法並びにインプリントシステムに係り、特に、インクジェット方式により基板等の媒体上に機能性を有する液体を付与する液体付与技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化、高集積化に伴い、基板上に微細構造を形成するための技術として、基板上に塗布したレジスト(UV硬化性樹脂)に転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたモールドを押し当てた状態で紫外線を照射してレジストを硬化させモールドを基板上のレジストから分離(離型)することで、モールドに形成された微細パターンを基板(レジスト)へ転写するナノインプリント方法が知られている。
【0003】
基板にインプリント材(レジスト液)を付与する形態として、インクジェット方式が適用されたシステムが提案されている。インクジェット方式は、レジスト液の粘度によって吐出状態が変化してしまうので、レジスト液の粘度を安定させる必要がある。また、レジスト液はグラフィックに用いられるインクよりも高粘度であるために、安定した吐出状態を得ることが難しい。
【0004】
特許文献1は、ピエゾ素子を用いて圧力室を変形させて、圧力室内の液体を加圧する吐出方式において、吐出前に基準容積の圧力室を膨張させるための駆動波形の傾きを、吐出後において収縮状態の圧力室を基準容積まで膨張させるための駆動波形の傾きよりも大きくして、6〜20ミリパスカル秒(mPa・s)の高粘度インクを安定的に吐出させる技術を開示している。
【0005】
特許文献2は、異なる電圧変化率を有する第1膨張要素と第2膨張要素を含む膨張要素と、異なる電圧変化率を有する第1収縮要素と第2収縮要素を含む膨張収縮要素と、を有する駆動電圧を印加し、圧力室を膨張させた後に収縮させてUVインク(紫外線硬化型インク)などの高粘度インクを吐出させる際のミストの発生を防止する液体吐出装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009‐172921号公報
【特許文献2】特開2010‐158843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、多種のインクが用いられる際にインクの種類ごとに駆動波形を設定できるようなシステムでは有効であるものの、温度変化、吐出後の時間経過による溶媒の揮発、インクのロットの違いによる粘度の変化に対応することが困難である。
【0008】
例えば、温度変化によってインクの粘度が変化してミストが発生するなど、吐出安定性に欠けることがありうる。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術は、第1膨張要素と第2膨張要素との関係によっては、ノズルの近傍に付着したミストに対する吐出のロバスト性の低下が懸念される。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式を用いて高粘度の機能性液を高周波で連続吐出させる際のロバスト性が維持された好ましい液体吐出が実現される、機能性液体吐出装置及び機能性液体吐出方法並びにインプリントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る機能性液体吐出装置は、5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ1≦(η/10)を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式γ2≦γ1を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、引き波形要素及び押し波形要素を有する駆動電圧を用いて圧電素子を引き押し駆動させて、5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の高粘度の機能性液体を吐出させる液体塗布装置において、液体吐出ヘッドの共振周期Tc及び機能性液の粘度ηとの関係が(2/Tc)<γ1<(η/10)を満たす引き波形要素の傾きγ1を有するとともに、γ2≦γ1を満たす押し波形要素の傾きγ2を有する駆動電圧を用いることで、溶媒の揮発や温度変化等により機能性液体の粘度変化が生じたとしても、高周波で安定した連続吐出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るナノインプリントシステムの各工程を説明する図
【図2】本発明に係るナノインプリントシステムの全体構成図
【図3】図2に示す光硬化性樹脂液体塗布部の概略構成を示す構成図
【図4】図3に示すインクジェットヘッドの構造例を示す平面図
【図5】図3に示す光硬化性樹脂液体塗布部の他の態様を説明する構成図
【図6】図5に示すインクジェットヘッドの構造例を示す平面図
【図7】図3、5に示すインクジェットヘッドの立体構造を示す断面図
【図8】図2に示すナノインプリントシステムの制御系の概略構成を示すブロック図
【図9】図8に示すヘッドドライバーの構成例を示すブロック図
【図10】図8に示すヘッドドライバーにより生成される駆動電圧の説明図
【図11】図10に示す引き波形の傾きの評価結果の説明図
【図12】図10に示す引き波形の傾きの違いによるメニスカスの挙動を模式的に図示した説明図
【図13】引き波形の傾きの違いによる吐出された液滴の形状の違いを示す説明図
【図14】図10に示す押し波形の傾きの評価結果の説明図
【図15】押し波形の傾きの違いによる吐出された液滴の形状の違いを示す説明図
【図16】引き波形の傾きと押し波形の傾きの関係を示す説明図
【図17】ノズル形状の説明図
【図18】テーパ角度と音響イナータンスの関係を示す説明図
【図19】他のノズル形状を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】
〔ナノインプリント方法の説明〕
まず、図1(a)〜(f)を用いて、本発明の実施形態に係るナノインプリント方法について、工程順を追って説明する。本例に示すナノインプリント方法は、モールド(例えば、Siモールド)に形成された凹凸パターンを、基板(石英基板等)上に形成された光硬化性樹脂液体(機能性液、例えば、レジスト液)を硬化させた光硬化性樹脂膜に転写し、該光硬化性樹脂膜をマスクパターンとして基板上に微細パターンを形成するものである。
【0016】
まず、図1(a)に示す石英基板20(以下、単に「基板」と記載する。)を準備する。図1(a)に示す基板20は、表側面20Aにハードマスク層21が形成されており、この表側面20Aに微細パターンが形成される。基板20は、紫外線などの光を透過させる所定の透過性を有し、厚みが0.3ミリメートル(mm)以上であればよい。光透過性を有することで基板20の裏側面20Bからの露光が可能となる。
【0017】
Siモールドを用いる場合に適用される基板20として、表面をシランカップリング剤で被覆したもの、Cr、W、Ti、Ni、Ag、Pt、Auなどからなる金属層を積層したもの、CrO2、WO2、TiO2などからなる金属酸化膜層を積層したもの、これらの積層体の表面をシランカップリング剤で被覆したものなどが挙げられる。
【0018】
すなわち、図1(a)に図示したハードマスク層21は、上記の金属膜や金属酸化膜等の積層体(被覆材)が用いられる。積層体の厚みが30ナノメートル(nm)を超えると光透過性が低下してしまい、光硬化性樹脂の硬化不良が起こりやすいので、該積層体の厚みは30ナノメートル以下であり、好ましくは20ナノメートル以下である。
【0019】
「所定の透過性」とは、基板20の裏側面20Bから照射した光が表側面20Aから出射して、表面に形成される機能性を有する液体(例えば、図1(c)に符号25を付して図示した光硬化性樹脂液体を十分に硬化させることができればよく、例えば、裏側面から照射された波長200ナノメートル以上の光の光透過率が5%以上であるとよい。
【0020】
また、基板20の構造は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。基板20の材質は、石英以外にも、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂、などを適宜用いることができる。これらの材料は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を適宜合成して併用してもよい。
【0021】
なお、基板20に石英以外の材料を用いるときは、モールド(同図に符号26を付して図示)の材料に石英を用いて、モールド側から露光がされる。
【0022】
基板20の厚みは0.05ミリメートル以上が好ましく、0.1ミリメートル以上がより好ましい。基板20の厚みが0.05ミリメートル未満であると、被パターン形成体とモールドとの密着時に基板側に撓みが発生し、均一な密着状態を確保できない可能性がある。また、ハンドリングやインプリント中の押圧による破損を避けることを考慮して、基板20の厚みを0.3ミリメートル以上とするとより好ましい。
【0023】
基板20の表側面20Aに対して、インクジェットヘッド24から光硬化性樹脂を含有する複数の液滴25’を離散的に吐出させる(図1(b):吐出工程)。詳細は後述する
が、ここでいう「離散的に吐出させる液滴」とは、基板20上における隣接する着弾位置に着弾した他の液滴と接触せずに、所定の間隔を空けて着弾した複数の液滴(符号25を付して図示)を意味している。
【0024】
図1(b)に示す吐出工程では、5ミリパスカル秒(センチポアズ)以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する光硬化性樹脂液体をインクジェットヘッド24から安定して連続的に吐出させるために、インクジェットヘッドの共振周期Tc及び光硬化性樹脂液体の粘度ηに基づき、インクジェットヘッド24を動作させるための駆動電圧の傾きγが規定されている。
【0025】
すなわち、インクジェット方式では、吐出させる液体の粘度が可能な限り一定に維持されることで、安定した高速の連続吐出を行うことが可能であるものの、インクジェット方式に適用される液体は、環境温度の変化による粘度の変化、ロットの違い(ロットごとの溶媒量の違い)による粘度のばらつきが生じやすく、ロバスト性を向上させることが難しい。
【0026】
本例では、インクジェットヘッドの共振周期Tc、及び光硬化性樹脂液体の粘度ηに基づいて駆動電圧の傾き(スリューレート)が決められるので、温度変化等の外乱による連続吐出の安定性が損なわれない。なお、駆動電圧の詳細は後述する。
【0027】
また、光硬化性樹脂液体25の吐出量、吐出密度、吐出(飛翔)速度が予め設定(調整)されている。例えば、吐出量及び吐出密度は、モールド(図1(c)符号26を付して図示)の凹凸パターンの凹部の空間体積が大きい領域では相対的に大きくされ、凹部の空間体積が小さい領域や凹部がない領域では相対的に小さくされるように調整される。調整後、所定の打滴配置(パターン)に従って、基板20上に光硬化性樹脂液体25が配置される。
【0028】
図1(b)に示す打滴工程の後に、凹凸パターンが形成されたモールド26の凹凸パターン面を基板20の表側面20Aに所定の押圧力によって押し付けて基板20上の光硬化性樹脂液体25を拡張させ、拡張させた複数の光硬化性樹脂液体25の結合からなる光硬化性樹脂層25”が形成される(図1(c):光硬化性樹脂層形成工程)。
【0029】
光硬化性樹脂層形成工程では、モールド26と基板20との間の雰囲気を減圧または真空雰囲気にした後に、モールド26を基板20に押し付けることで残留気体を低減させることができる。
【0030】
ただし、高真空雰囲気下では硬化前の光硬化性樹脂層25”が揮発してしまい、均一な膜厚を維持することが困難となる可能性がある。そこで、モールド26と基板20との間の雰囲気を、ヘリウム(He)雰囲気または減圧He雰囲気にすることで残留気体を低減するとよい。Heは石英基板20を透過するため、取り込まれた残留気体(He)は徐々に減少する。Heの透過には時間を要すため減圧He雰囲気とすることがより好ましい。
【0031】
モールド26の押圧力は、100キロパスカル(kPa)以上10メガパスカル(MPa)以下の範囲とされる。押圧力が相対的に大きい方が樹脂の流動が促進され、また残留気体の圧縮、残留気体の光硬化性樹脂への溶解や、基板20中のHeの透過が促進され、タクトアップにつながる。
【0032】
しかし、押圧力が大きすぎるとモールド26が基板20に接触するときに異物を噛みこんでしまい、モールド26及び基板20を破損してしまう可能性があるので、モールド26の押圧力は上記範囲とされる。
【0033】
モールド26の押圧力の範囲は、より好ましくは100キロパスカル以上5メガパスカル以下であり、更に好ましくは100キロパスカル以上1メガパスカル以下である。100キロパスカル以上としたのは、大気中でインプリントを行う際、モールド26と基板20との間が光硬化性樹脂液体25で満たされているためであり、モールド26と基板20との間が大気圧(約101キロパスカル)で加圧されているためである。
【0034】
その後、基板20の裏側面20Bから紫外線を照射して、光硬化性樹脂層25”に対する露光が行われ、光硬化性樹脂層25”を硬化させる(図1(c):光硬化性樹脂層硬化工程)。本例では、光(紫外線)によって光硬化性樹脂層25”を硬化させる光硬化方式を例示したが、熱硬化性樹脂を含有する液体を用いて熱硬化性樹脂層を形成し、加熱によって熱硬化性樹脂層を硬化させる熱硬化方式など、他の硬化方式を適用してもよい。
【0035】
光硬化性樹脂層25”が十分に硬化した後に、光硬化性樹脂層25”からモールド26を剥離させる(図1(d):剥離工程)。モールド26を剥離させる方法は、光硬化性樹脂層25”のパターンに欠損が生じにくい方法であればよく、基板20の縁部から徐々に剥離させる方法や、モールド26の側から加圧しながら剥離させ、モールド26が光硬化性樹脂層25”から剥離する境界線上での光硬化性樹脂層25”へかかる力を低減させて剥離する方法(加圧剥離法)などの方法を用いることができる。
【0036】
さらに、光硬化性樹脂層25”の近傍を加温し、モールド26と光硬化性樹脂層25”との界面での光硬化性樹脂層25”とモールド26の表面との付着力を低減させ、かつ、光硬化性樹脂層25”のヤング率を低下させて、脆性が良化させて変形による破断を抑制して剥離する方法(加熱アシスト剥離)を適用することも可能である。なお、上記の方法を適宜組み合わせた複合的手法を用いてもよい。
【0037】
図1(a)〜(d)に示す各工程を経て、基板20の表側面20Aに形成された光硬化性樹脂層25”にモールド26の凹凸パターンが転写される。基板20上に形成された光硬化性樹脂層25”は、モールド26の凹凸形状や光硬化樹脂を含有する液体の液物性に対応して、光硬化性樹脂層25”となる光硬化性樹脂液体25の配置密度が最適化されているので、残渣厚が均一化され、欠損のない好ましい凹凸パターンが形成される。
【0038】
次に、光硬化性樹脂層25”をマスクとして基板20(又は基板20に被覆させた金属膜等)に微細パターンが形成される。
【0039】
基板20上の光硬化性樹脂層25”の凹凸パターンが転写されると、光硬化性樹脂層25”の凹部内の光硬化性樹脂液体25が除去され、基板20の表側面20A、又は表側面20Aに形成される金属層等を露出させる(図1(e):アッシング工程)。
【0040】
さらに、光硬化性樹脂層25”をマスクとしてドライエッチングが行われ(図1(f):エッチング工程)、光硬化性樹脂層25”が除去されると、光硬化性樹脂層25”に形成された凹凸パターンに対応した微細パターンが基板20上に形成される。
【0041】
なお、基板20の表側面20Aに金属膜や金属酸化膜が形成される場合は、金属膜又は金属酸化膜に対して所定のパターンが形成される。
【0042】
ドライエッチングの具体例としては、光硬化性樹脂層25”をマスクとして用いることができればよく、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、などが挙げられる。これらの中でも、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)が特に好ましい。
【0043】
イオンミリング法は、イオンビームエッチングとも言われ、イオン源にArなどの不活性ガスを導入し、イオンを生成する。これを、グリッドを通して加速させ、試料基板に衝突させてエッチングするものである。
【0044】
イオン源としては、カウフマン型、高周波型、電子衝撃型、デュオプラズマトロン型、フリーマン型、ECR(電子サイクロトロン共鳴)型などが挙げられる。イオンビームエッチングでのプロセスガスとしては、Arガス、RIEのエッチャントとしては、フッ素系ガスや塩素系ガスを用いることができる。
【0045】
以上のように、本例に示すナノインプリント方法を用いた微細パターンの形成は、モールド26の凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂層25”をマスクとして、残膜の厚みムラおよび残留気体による欠陥のない当該マスクを用いてドライエッチングを行っているので、高精度で歩留まりよく基板20に微細パターンを形成することが可能となる。
【0046】
なお、上述したナノインプリント法を適用して、ナノインプリント法に用いられる石英基板のモールドを作製することも可能である。
【0047】
〔ナノインプリントシステムの説明〕
次に、上述したナノインプリント方法を実現するためのナノインプリントシステム(ナノインプリント装置)について説明する。以下の説明では、先の説明と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略することとする。
【0048】
(全体構成)
図2は、本発明の実施形態に係るナノインプリントシステムの概略構成図である。同図に示すナノインプリントシステム10は、石英ガラスなどの光透過性を有する基板20上に光硬化性樹脂液体(レジスト液)を微小液滴化して塗布する光硬化性樹脂液体塗布部12と、基板20上に塗布された光硬化性樹脂液体に所望のパターンを転写するパターン転写部14と、基板20を搬送する搬送部22と、を備えて構成される。
【0049】
光硬化性樹脂液体塗布部12は、複数のノズル(図2中不図示、図4に符号23を付して図示)が形成されるインクジェットヘッド24を備え、各ノズルから光硬化性樹脂液体25を微小液滴化して吐出することにより、基板20の表面(光硬化性樹脂液体配置面)に光硬化性樹脂液体25の塗布を行う。
【0050】
パターン転写部14は、基板20上の光硬化性樹脂液体25に転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたモールド26と、紫外線を照射する紫外線照射装置28と、を備え、光硬化性樹脂液体25が配置された基板20の表面にモールド26を押し当てた状態で、基板20の裏側(モールド26を押し当てた表面と反対側の面)から紫外線照射を行い、基板20上の光硬化性樹脂液体25を硬化させることにより、基板20上の光硬化性樹脂液体25(光硬化性樹脂層25”)に対してパターン転写を行う。
【0051】
モールド26は、シリコンが適用される。また、基板20が紫外線照射装置28から照射される紫外線を透過可能な光透過性材料から構成されることにより、基板20の下方(モールド26とは反対側)に配置される紫外線照射装置28から紫外線照射が行われたとき、基板20で遮られることなく基板20上の光硬化性樹脂液体25に紫外線が照射され、該光硬化性樹脂液体25を硬化させることができる。
【0052】
光透過性材料としては、例えば、ガラス、石英などを使用することができる。
【0053】
モールド26は、図2の上下方向(両矢印線により図示した方向)に移動可能に構成されており、基板20の表面に対してモールド26のパターン形成面が略平行となる状態を維持しながら下方に移動して、基板20の表面全体に略同時に接触するように押し当てられ、パターン転写が行われる。
【0054】
なお、図示は省略するが、モールド26を光透過性材料により構成し、基板20の表側(モールド側)から紫外線を照射する形態も可能である。
【0055】
搬送部22は、例えば、搬送ステージなどの基板20を固定して搬送する搬送手段を含んで構成され、基板20を搬送手段の表面に保持しつつ、該基板20を光硬化性樹脂液体塗布部12からパターン転写部14に向かう方向(以下、「y方向」ということもある。)に搬送を行う。
【0056】
該搬送手段の具体例として、リニアモータとエアスライダーの組み合わせや、リニアモータとLMガイドの組み合わせなどがあり得る。なお、基板20を移動させる代わりに、光硬化性樹脂液体塗布部12やパターン転写部14を移動させるように構成してもよいし、両者を移動させてもよい。
【0057】
(光硬化性樹脂液体吐出部の説明)
図3は、光硬化性樹脂液体塗布部12の概略構成を示す構成図である。同図に示すインクジェットヘッド24は、y方向(基板20の搬送方向)と直交するx方向について、基板20の最大幅LMを超える長さLNにわたって複数のノズル(図3中不図示、図4に符号23を付して図示)が並べられた構造を有する長尺のフルライン型ヘッドである。
【0058】
フルライン型のインクジェットヘッド24を用いた液体吐出では、インクジェットヘッド24をx方向に移動させることなく、y方向について基板20とインクジェットヘッド24を相対的に移動させる動作を1回行うシングルパス方式により、基板20上の所望位置に光硬化性樹脂液体25(図1参照)を配置することができ、光硬化性樹脂液体25の吐出速度の高速化を図ることができる。
【0059】
図4は、インクジェットヘッド24の構造例を示す平面図である。同図に示すように、インクジェットヘッド24は、複数のヘッドモジュール24A(24A‐1〜24A‐4)がx方向について千鳥状に配置された構造を有している。
【0060】
また、ヘッドモジュール24Aは、x方向について複数のノズル23が一列に並べられた構造を有しており、すべてのノズル23をx方向に並ぶように投影させた投影ノズル列は、すべてのノズル23がx方向について等間隔に並べられた構造と等価である。
【0061】
なお、複数のノズル23をマトリクス状に配置させる構造も可能である。例えば、x方向に沿う行方向、及びx方向と所定の角度を成す斜めの列方向に沿って、複数のノズル23を配置させる構造が挙げられる。
【0062】
図5は、光硬化性樹脂液体塗布部12の他の構成例を示す構成図である。同図に示す光硬化性樹脂液体塗布部12’は、シリアル型のインクジェットヘッド24’を具備し、インクジェットヘッド24’は、x方向に沿って設けられたガイド27に沿って移動可能なキャリッジ29に搭載されている。
【0063】
図5に示す光硬化性樹脂液体塗布部12’は、インクジェットヘッド24’をx方向に走査させながらx方向への光硬化性樹脂液体25の吐出を行い、x方向について一回の走査が終了すると基板20をy方向へ所定量移動させて、次の領域への光硬化性樹脂液体25の吐出を行い、この動作を繰り返しながら基板20の全面にわたって光硬化性樹脂液体
の配置を行うように構成されている。
【0064】
図6(a),(b)は、図5に示すシリアル型のインクジェットヘッド24’のノズル配置例を示す平面図である。図6(a)に示すように、インクジェットヘッド24’は、y方向に沿って複数のノズル23が並べられた構造を有している。図6(b)に示すように、複数のノズル23を千鳥状に配置して、y方向の実質的なノズルピッチを小さくすることも可能である。
【0065】
(インクジェットヘッドの構造)
図7は、インクジェットヘッド24の1チャンネル分の液滴吐出素子の立体的構成を示す断面図である。同図に示すように、本例のインクジェットヘッド24は、複数のノズル23の開口が形成されたノズルプレート23Aと、圧力室32や共通流路35等の流路が形成された流路板等を積層接合した構造から成る。
【0066】
ノズルプレート23Aは、インクジェットヘッド24のノズル面23Bを構成し、各圧力室32にそれぞれ連通する複数のノズル23が形成されている。
【0067】
流路板は、圧力室32の側壁部を構成するとともに、共通流路35から圧力室32にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口34を形成する流路形成部材である。
【0068】
なお、説明の便宜上、図7では簡略的に図示しているが、流路板は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート23A及び流路板は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0069】
共通流路35はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路35を介して各圧力室32に供給される。
【0070】
圧力室32の一部の面(図7において天面)を構成する振動板36には、上部(個別)電極37A及び下部(共通)電極37Bを備え、上部電極37Aと下部電極37Bとの間に圧電体38Aがはさまれた構造を有する圧電素子38が接合されている。
【0071】
振動板36を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、圧電素子38の下部電極37Bに相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
【0072】
上部電極37Aに駆動電圧を印加することによって圧電素子38が変形して圧力室32の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル23からインクが吐出される。インク吐出後、圧電素子38が元の状態に戻る際、共通流路35から供給口34を通って新しいインクが圧力室32に再充填される。
【0073】
(制御系の説明)
図8は、ナノインプリントシステム(ナノインプリント装置)10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示す制御系は、通信インターフェース50、システムコントローラ52、メモリ54、モータドライバー56、ヒータドライバー58、吐出制御部60、転写制御部61、バッファメモリ62、ヘッドドライバー64等を備えている。
【0074】
通信インターフェース50は、ホストコンピュータ66から送られてくる光硬化性樹脂液体25(図1参照)の配置分布を表すデータを受信するインターフェース部である。通信インターフェース50としては、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0075】
システムコントローラ52は、通信インターフェース50、メモリ54、モータドライバー56、ヒータドライバー58等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ52は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ66との間の通信制御、メモリ54の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ68やヒータ69を制御する制御信号を生成する。
【0076】
メモリ54は、データの一時記憶領域、及びシステムコントローラ52が各種の演算を行うときの作業領域として使用される記憶手段である。通信インターフェース50を介して入力された光硬化性樹脂液体25の配置データは、ナノインプリントシステム10に取り込まれ、一旦メモリ54に記憶される。
【0077】
また、メモリ54は、光硬化性樹脂液体25の粘度の情報、及びインクジェットヘッド24の共振周期等の機械的性能の情報が記憶されている。光硬化性樹脂液体25の粘度の情報は、不図示のユーザインターフェースから入力されてもよいし、光硬化性樹脂液体25が収容される容器に取り付けられた情報記憶体(ICタグ等)から自動的に読み取られてもよい。
【0078】
また、インクジェットヘッド24の共振周期等の機械的性能の情報は、インクジェットヘッド24が製造されたときに予め把握されており、インクジェットヘッド24が装置(システム)に搭載される際に各種パラメータとともに記憶される。
【0079】
メモリ54としては、半導体素子からなるメモリの他、ハードディスクなどの磁気媒体を用いることができる。
【0080】
モータドライバー56は、システムコントローラ52からの指示に従ってモータ68を駆動するドライバー(駆動回路)である。モータ68には、図2の搬送部22を駆動するためのモータやモールド26を上下動させるためのモータが含まれる。
【0081】
ヒータドライバー58は、システムコントローラ52からの指示に従ってヒータ69を駆動するドライバーである。ヒータ69には、ナノインプリントシステム10の各部に設けられた温度調節用のヒータ(例えば、光硬化性樹脂液体25が配置される前の基板20を加熱するヒータ)が含まれる。
【0082】
吐出制御部60は、システムコントローラ52の制御に従い、メモリ54内の光硬化性樹脂液体25の配置データから吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号をヘッドドライバー64に供給する制御部である。
【0083】
吐出制御部60において所要の信号処理が施され、該配置データに基づいてヘッドドライバー64を介してインクジェットヘッド24から吐出される光硬化性樹脂液体25の吐出量、吐出位置、インクジェットヘッド24の吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望の光硬化性樹脂液体25の液滴の配置(分布)が実現される。
【0084】
吐出制御部60にはバッファメモリ62が備えられており、吐出制御部60における配置データ処理時に、配置データやパラメータなどのデータがバッファメモリ62に一時的に格納される。なお、図8では、バッファメモリ62は吐出制御部60に付随する態様で示されているが、メモリ54と兼用することも可能である。
【0085】
また、吐出制御部60とシステムコントローラ52とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0086】
ヘッドドライバー64は、吐出制御部60から与えられる吐出データに基づいてインクジェットヘッド24の圧電素子38(図7参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子38に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバー64にはインクジェットヘッド24の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0087】
センサ57は、インクジェットヘッド24から吐出させた液滴の飛翔状態を検出するためのセンサ(撮像素子)、基板20の位置を検出するためのセンサなど、本システム(装置)各部に設けられている各種センサが含まれる。
【0088】
センサ57によって得られた情報は、システムコントローラ52へ送られ、装置各部の制御に利用される。
【0089】
転写制御部61は、モールド26(図2参照)を移動させるモールド移動機構63の動作を制御するとともに、紫外線照射装置28のオンオフ、照射光量を制御する。すなわち、光硬化性樹脂液体が塗布された基板20がパターン転写部14へ送られると、モールド26を移動させて基板20に押圧させ、紫外線照射装置28から紫外線を照射させる。
【0090】
モールド26の凹凸パターンが転写され、光硬化性樹脂液体25が硬化して、光硬化性樹脂層25”(図1参照)によるマスクパターンが形成されると、紫外線照射が停止され、モールド26を基板から離間させる。
【0091】
図9は、ヘッドドライバー64の構成例を示すブロック図である。同図に示す構成例は、ヘッドコントローラ82(図8のシステムコントローラ52、吐出制御部60に相当)から伝送されるデジタル形式の波形信号に基づいてアナログ形式の波形信号(駆動波形)を生成する駆動波形生成部84と、該駆動波形を電圧増幅及び電流増幅する増幅部(AMP)86と、を具備している。
【0092】
ヘッドコントローラ82から伝送されるシリアル形式の印字データは、クロック信号に同期してクロック信号とともにシフトレジスタ88へ伝送される。駆動波形生成部84によって生成される駆動波形は、複数の波形要素が含まれる。この複数の波形要素の中から一つ又は複数の波形要素を選択することで、光硬化性樹脂液体25の吐出量を段階的に変更することが可能となっている。
【0093】
シフトレジスタ88に記憶された印字データは、ラッチ信号に基づいてラッチ回路90へラッチされる。ラッチ回路90にラッチされた信号はレベル変換回路92においてスイッチIC94を構成するスイッチ素子96を駆動可能な所定の電圧に変換される。
【0094】
このレベル変換回路92の出力信号によってスイッチ素子96のオンオフが制御することで、複数の波形要素の中から少なくとも1つの波形要素が選択されて吐出量が決められ、ヘッドコントローラ82から送出されるセレクト信号及びイネーブル信号によって駆動される圧電素子38が選択される。
【0095】
なお、インクジェットヘッド24の駆動方式は、共通の駆動電圧(駆動波形)を選択的に印加する方式に限定されず、総ノズル数が比較的少ないインクジェットヘッドでは、ノズルごとに駆動波形が生成される方式を適用することも可能である。
【0096】
〔駆動電圧(波形)の説明〕
次に、本例に適用される駆動電圧について詳細に説明する。図10(a)は、インクジェットヘッド24に具備される圧電素子38に印加される駆動電圧の説明図である。
【0097】
同図に示す駆動電圧100は、静定状態の圧力室32(図7参照)を拡張させるように圧電素子38を動作させる引き波形102と、圧力室32を膨張させた状態を維持するように圧電素子38を動作させる維持波形104と、膨張させた圧力室32を収縮させる押し波形106が含まれる。
【0098】
すなわち、図10(a)に図示した駆動電圧100は、圧電素子38を引き押し駆動させて圧力室32を変形させ、圧力室32と光硬化性樹脂液体との共振現象を利用してノズル23(図7参照)から液滴を吐出させるものである。
【0099】
引き波形102の傾きγ1は、光硬化性樹脂液体の粘度ηとの関係が、次式(1)を満たすように決められている。
【0100】
γ1≦(η/10) …(1)
また、押し波形の傾きγ2は、光硬化性樹脂液体の粘度ηとの関係が、次式(2)を満たすように決められている。
【0101】
γ2≦(η/10) …(2)
なお、上記式(1)及び式(2)における、光硬化性樹脂液体の粘度ηの項の係数「1/10」は、「ナノパスカル秒二乗分の1(1/(nPa・S2))」の単位で表される。
【0102】
さらに、引き波形102の傾きγ1と押し波形106の傾きγ2とは、次式(3)の関係を満たしている。
【0103】
γ2≦γ1 …(3)
駆動電圧の傾き(スリューレート)γとは、駆動電圧の最大値Vmaxと最小値Vminとの差ΔVを1としたときの単位時間(1マイクロ秒)あたりの電圧変化率である。駆動電圧100の最大値Vmaxと最小値Vminとの差ΔVは、ノズルから吐出される液滴が所定の吐出速度を得る条件により最適化されている。
【0104】
引き波形102の時間t1を用いて、引き波形102の傾きγ1は次式(4)により表される。
【0105】
γ1=1/t1 …(4)
また、押し波形106の時間t2を用いて、押し波形106の傾きγ2は次式(5)により表される。
【0106】
γ2=1/t2 …(5)
例えば、最小電圧から最大電圧まで1マイクロ秒で変化したときの傾きγは「1」であり、最小電圧から最大電圧まで2マイクロ秒で変化したときの傾きγは「0.5」である。
【0107】
なお、図10(a)に図示した駆動電圧100の維持波形104が省略された形態も可能である。すなわち、駆動電圧100は、少なくとも引き波形102及び押し波形106が含まれていればよい。
【0108】
ここで、上記式(1)〜(3)の導出について説明する。特開平7‐144410号公報等に開示されているように、メニスカスの振動モードによって吐出される液滴の形状が変化することが知られている。
【0109】
したがって、駆動電圧のスリューレートを変えると、ノズル23のメニスカスに励起される振動を変えることができるので、液滴の吐出状態を変えることが可能である。
【0110】
一方、特開平7‐144410号公報に開示されているように、液滴の吐出量を変えるための駆動電圧を解析的に導き出すことは可能であるものの、高速の連続吐出の安定性を解析的に評価することは困難である。
【0111】
そこで、出願人は、連続吐出の安定性がノズル23(図7参照)の近傍に付着したミストや、吐出時にノズルからわずかに溢れたインクなどの積み重なりに影響されると考え、ミスト発生の防止や、ノズルから溢れたインクの回収に最適な駆動電圧(駆動波形)を検討した。
【0112】
上述したように、駆動電圧のスリューレートγによってノズル23内のメニスカスの振動モードを変えることができることから、駆動電圧のスリューレートγに着目した。また、ノズル23の液体の粘性抵抗によってもメニスカスの振動モードを変えることができると考えられるので、光硬化性樹脂液体の粘度にも着目した。
【0113】
以下に示すように、安定した連続吐出を可能とする駆動電圧のスリューレートγと光硬化性樹脂の粘度ηとの関係を、評価実験により明らかにした。なお、メニスカスの振動モードの主要な振動周期は、インクジェットヘッド24の共振周期Tcであることから、駆動電圧のスリューレートγはインクジェットヘッド24の共振周期Tcと比較して評価した。
【0114】
以下の評価実験におけるインクジェットヘッド24の共振周期Tcは、以下のように決められる。
【0115】
図10(b)に示すように、γ1=γ2=0.5(t1=t2)として固定し、パルス幅を変化させてインクジェットヘッド24から吐出を行い、吐出速度が最大となるときにパルス幅の2倍を共振周期Tcとした。
【0116】
ここで、パルス幅は、「引き波形102における最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差ΔVの50%のタイミングから、押し波形106における最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差ΔVの50%のタイミングまでの時間間隔」とした。
【0117】
すなわち、引き波形102における最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差ΔVの50%のタイミングから、押し波形106における最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差ΔVの50%のタイミングまでの時間間隔は、の共振周期Tcの1/2となる。
【0118】
(評価実験)
実験装置は、ダイマティックス・マテリアルプリンター、DMP‐2831(富士フイルムダイマティック社製)を使用し、インクジェットヘッドから液滴を連続吐出させ、装置に内蔵されている観察用カメラを用いて液滴の飛翔状態を撮影した。
【0119】
吐出周波数をパラメータとし、連続吐出時間を3分間、インクジェットヘッド温度を変えることで吐出時の光硬化性樹脂液体の粘度ηを5ミリパスカル秒、7.5ミリパスカル秒、10ミリパスカル秒として、連続吐出開始直後の液滴の映像と連続吐出終了直前時の液滴の映像とを比較した。
【0120】
駆動電圧の振幅(図10のΔV)は、液滴の吐出速度が条件ごとに一定になるように調整されている。具体的には、駆動電圧印加から37マイクロ秒後に300マイクロメートルの飛翔距離となるように調整されている。
【0121】
以下に当該評価実験の結果を示す。以下に示す評価結果中、評価「○」は吐出周波数が20キロヘルツ以上で安定した連続吐出がされたことを表している。評価「×」は吐出周波数が5キロヘルツ以下で安定した連続吐出がされ、吐出周波数が5キロヘルツを超えると安定した連続吐出がされなかったことを表している。
【0122】
評価「△」は吐出周波数が20キロヘルツ未満で安定した連続吐出がされ、吐出周波数が20キロヘルツ以上になると安定した連続吐出がされなかったことを表している。
【0123】
図11は、図10の引き波形102の傾きγ1を(1.2/Tc=0.2)から(12/Tc=2.0)まで段階的に変えたときの評価結果を示している。なお、インクジェットヘッド24の共振周期Tcは、6.0マイクロ秒である。また、γ2は、γ2=2/Tcとした。
【0124】
図11に示すように、引き波形102の傾きγ1を大きく(急峻に)していくと、吐出安定性が向上した。一方、低粘度では引き波形102の傾きγ1を急峻にしすぎると、吐出安定性が低下した。したがって、光硬化性樹脂液体の粘度ηが5ミリパスカル秒から10ミリパスカル秒の範囲では、該傾きγ1と該粘度ηとの関係が上記式(1)の関係を満たすことで、安定した高速の連続吐出が可能となる。
【0125】
図12(a)〜(c)は、引き波形102の傾きγ1の違いによるメニスカスの挙動を模式的に図示した説明図である。図12(a)は、メニスカス122Aをノズル23の内部に引き込む前の静定状態であり、ノズル面23Bにミスト123が付着している。
【0126】
図12(b)は、メニスカス122Aがノズル23内に引き込まれた状態であり、引き波形102の傾きγ1が急峻な場合である。かかる状態では、ノズル面23Bのミスト123がノズル23内に引き込まれ、その結果、安定した高速の連続吐出が可能になったと考えられる。
【0127】
図12(c)は、メニスカス122Aがノズル23内に引き込まれた状態であり、引き波形102の傾きγ1が緩やかな場合である。引き波形102の傾きγ1が緩やかな場合は、ノズル23への引き込み力が弱く、ノズル面23Bのミスト123をノズル23内に回収できず、安定した連続吐出ができなかったと考えられる。
【0128】
図13(a)〜(f)は、ノズル23から吐出された液滴を5マイクロ秒間隔で撮影した画像である。図13(a)の上端に付した横系列の目盛りは5マイクロ秒を表しており、縦系列は距離を表している。
【0129】
図13(a)〜(c)の吐出条件は、粘度η=10ミリパスカル秒、押し波形106の傾きγ2=2/Tc(一定)であり、図13(a)は引き波形の傾きγ1が2/Tc(=0.33)の場合、図13(b)は引き波形の傾きγ1が3/Tc(=0.5)の場合、図13(c)は引き波形の傾きγ1が6/Tc(=1.0)の場合である。
【0130】
また、図13(d)〜(f)の吐出条件は、粘度η=5ミリパスカル秒、押し波形106の傾きγ2=2/Tc(=0.33)であり、図13(d)は引き波形102の傾きγ1が2/Tc(=0.33)の場合、図13(e)は引き波形102の傾きγ1が3/Tc(=0.5)の場合、図13(f)は引き波形102の傾きγ1が6/Tc(=1.0)の場合である。
【0131】
図13(a)〜(f)を観察すると、粘度ηが10ミリパスカル秒の場合よりも5ミリパスカル秒の場合の方が吐出量が減少しており、さらに、引き波形102の傾きγ1を急峻にすることで吐出量が減少していることがわかる。
【0132】
したがって、粘度ηが低粘度の場合は、引き波形102の傾きγ1を急峻にしすぎると吐出量が小さくなりすぎてしまい、吐出状態が不安定になったものと考えられる。
【0133】
すなわち、引き波形102の傾きγ1と光硬化性樹脂液体の粘度ηが上記式(1)の関係を満たすことで、安定した高速の連続吐出が実現される。
【0134】
図14は、押し波形106の傾きγ2を(1.2/Tc=0.2)から(12/Tc=2.0)まで段階的に変えたときの評価結果を示している。なお、γ1は、γ1=3/Tcとした。
【0135】
図14に示すように、押し波形106の傾きγ2を小さく(緩やかに)することで、吐出安定性が向上した。また、低粘度では押し波形106の傾きγ2を急峻にしすぎると、吐出安定性が低下した。
【0136】
図15(a)〜(e)は、ノズル23から吐出された液滴を5マイクロ秒間隔で撮影した画像である。図15(a)の上端に付した横系列の目盛りは5マイクロ秒を表しており、縦系列は距離を表している。
【0137】
図15(a)〜(c)の吐出条件は、粘度η=10ミリパスカル秒、引き波形102の傾きγ1=3/Tc(=0.5)であり、図15(a)は押し波形106の傾きγ2が2/Tc(=0.33)の場合、図15(b)は押し波形106の傾きγ2が3/Tc(=0.5)の場合、図15(c)は押し波形106の傾きγ2が6/Tc(=1.0)の場合である。
【0138】
また、図15(d),(e)の吐出条件は、粘度η=5ミリパスカル秒、引き波形102の傾きγ1=3/Tc(=0.5)であり、図15(d)は押し波形106の傾きγ2が2/Tc(=0.33)の場合、図15(e)は押し波形106の傾きγ2が6/Tc(=1.0)の場合である。
【0139】
図15(a)〜(e)を観察すると、押し波形106の傾きγ2を急峻にすると、吐出された液滴(液柱)の後端の先端への追いつきが悪化していることがわかる。すなわち、図15(a)の右端の液柱の長さと図15(c)の右端の液柱の長さとを比べると、図15(a)の右端の液柱の長さの方が短くなっており、液柱の後端の先端への追いつきがよいことがわかる。
【0140】
すなわち、押し波形106の傾きγ2を緩やかにすることで、吐出された液滴の後端の先端への追いつきが良化してミストの発生が防止されたために、安定した連続吐出がされたと考えられる。
【0141】
また、図15(d)の右端の液柱と図15(e)の右端の液柱を比べると、図15(e)の右端の液柱は3つに分離しており、吐出量が減少していることがわかる。したがって、粘度ηが低粘度の場合は、押し波形106の傾きγ2を急峻にしすぎると吐出量が小さくなりすぎてしまい、吐出状態が不安定になったものと考えられる。
【0142】
すなわち、押し波形106の傾きγ2と光硬化性樹脂液体の粘度ηが上記式(2)の関係を満たすことで、安定した高速(20キロヘルツ)の連続吐出が実現される。
【0143】
図16は、引き波形102の傾きγ1に対する押し波形106の傾きγ2(γ2/γ1)を変えたときの評価結果を示している。図11〜15に示すように、引き波形102の傾きγ1は急峻であるとよく、押し波形106の傾きγ2は緩やかであるとよいことがわかっているので、引き波形102の傾きγ1と押し波形106の傾きγ2との関係が、次式(3’)満たすことで、安定した高速の連続吐出が可能となる。
【0144】
(γ2/γ1)≦1 …(3’)
なお、上記式(3’)を変形すると、上記式(3)となる。
【0145】
ここで、引き波形102の傾きγ1の下限値は、図11より、インクジェットヘッド24の共振周波数Tcを用いて次式(6)により表される。
【0146】
(2/Tc)≦γ1 …(6)
また、γ2についても、γ1と同様に次式(7)を満たすことが好ましい。
【0147】
(2/Tc)≦γ2 …(7)
引き波形102の傾きγ1及び押し波形106の傾きγ2を包括して駆動電圧の傾きγと表すと、上記式(1)、(2)、(6)、(7)は、次式(8)のように表すこともできる。
【0148】
(2/Tc)≦γ≦(η/10) …(8)
図10に示す引き波形102及び押し波形106を含み、圧力室32(図7参照)を静定状態から膨張させた後に収縮させて、圧力室32に収容される高粘度の光硬化性樹脂液体の液滴を吐出させる際に、インクジェットヘッド24の共振周波数Tc及び圧力室32に収容される光硬化性樹脂液体の粘度ηとの関係が上記式(8)を満たす傾きγを有する駆動電圧を用いることで、光硬化性樹脂液体の溶媒の揮発や環境温度の変化に起因する光硬化性樹脂液体の粘度変化が生じたとしても、安定した高速の連続吐出が可能である。
【0149】
また、引き波形102の傾きγ1と押し波形106の傾きγ2が、上記式(3)の関係を満たすように構成することで、高速の連続吐出のロバスト性を向上させることが可能となる。
【0150】
なお、上記評価実験では、光硬化性樹脂液体の粘度ηを5ミリパスカル秒から10ミリパスカル秒の範囲で変化させたが、以下の説明のとおり、上記評価実験結果はインクジェット方式により吐出可能な粘度範囲である20ミリパスカル秒以下の液体に対して適用可能である。
【0151】
光硬化性樹脂液体の粘度ηが10ミリパスカル秒を超えると、引き波形によるメニスカス引き込み形状がより緩やかになる。例えば、図12(b)に図示したメニスカス122Aの形状よりも、図12(c)に図示したメニスカス122Aの形状に近くなる。
【0152】
そうすると、吐出される液滴のサイズが小さくならないため、図10(a)に図示した引き波形102の傾きγ1を大きくしても吐出状態が安定する。
【0153】
また、光硬化性樹脂液体の粘度ηが10ミリパスカル秒を超えると、光硬化性樹脂液体の粘度が流路抵抗として機能するため、押し波形106の傾きγ2の違いによるミスト発生の可能性がより低くなる。したがって、押し波形106の傾きγ2をより大きくすることが可能である。
【0154】
〔ノズルの形状との関係〕
次に、インクジェットヘッド24に具備されるノズル23の形状と吐出安定性との関係について詳細に説明する。
【0155】
図17は、ノズル23の形状を示す断面図である。同図に示すように、ノズル23をテーパ形状(略円すい形状)とすることで、光硬化性樹脂液体の液滴25の吐出量のロバスト性を向上させることが可能である。
【0156】
これは、図示のようにノズル23をテーパ形状にすることで、ノズル23とノズル23内の光硬化性樹脂液体との粘性抵抗が減少し、光硬化性樹脂液体を吐出させる際の粘性抵抗の寄与が軽減されたためと考えられる。
【0157】
そこで、集中定数による等価回路モデルを考えると、吐出される液適量は、音響インピーダンスに依存する。ノズル23における音響抵抗R及び音響イナータンスLを算出して、音響インピーダンスへの寄与を比較する。
【0158】
ノズル23の全長をd、ノズル23の吐出側の開口部の断面積をS、ノズル23内部の光硬化性樹脂液体の密度をρとすると、音響抵抗Rは、次式(9)、音響イナータンスLは、次式(10)で表される。
【0159】
R=(8×π×η×d)/S2 …(9)
L=(ρ×d)/S …(10)
図18は、テーパ角度αをパラメータとしたときの、光硬化性樹脂液体の粘度ηに対する音響インピーダンス(R/ωL)の関係を示す。ωは共振角周波数であり、実験的に求められた共振周期Tcから算出され、具体的にはω=2×π/Tc=785×103ラジアン毎秒である。
【0160】
なお、テーパ角度とは、吐出側の開口と液室側の開口とをつなぐ傾斜面の前記吐出側の開口面の垂線に対する傾斜角度である。
【0161】
図18に示すように、テーパ角度αが増加することによって音響抵抗Rの寄与が減り、粘度変化に対する音響インピーダンスの変化が小さくなっていることがわかる。テーパ角度αが20°以上の場合には、光硬化性樹脂液体の粘度ηに対する音響インピーダンス(R/ωL)に差はない。
【0162】
図18に示すように、破線(35°、20°)、点線(30°)により図示した特性は、音響インピーダンスの差がないことがわかる。したがって、テーパ角度は20°以上であることが好ましい。
【0163】
図19は、ノズル23の他の形状を示す斜視図である。ノズルプレート23Aにシリコン基板を適用し、該シリコン基板の(100)面に対して、エッチング液としてKOH(水酸化カリウム)を用いてウエットエッチングを行うと、同図に示すように四角すいの頭部分を切断した形状のノズル23’が形成される。
【0164】
図19に示すノズル23’は、テーパ角度αが35.26°である。このテーパ角度αは、光硬化性樹脂液体の粘度ηに対する音響インピーダンス(R/ωL)が変化しない領域であり、好ましいノズル形状である。
【0165】
シリコン基板に対してウエットエッチングにより形成されたノズルは、上記のようにテーパ角度αが20°以上となり、光硬化性樹脂液体の粘度ηの影響が小さくなる。また、シリコン基板に対してウエットエッチングにより形成されたノズルは、結晶方位によってテーパ角度αが決められるので、テーパ角度αのばらつきがない。
【0166】
したがって、シリコン基板に対してウエットエッチングにより形成されたノズルは、光硬化性樹脂液体の粘度ηのばらつきに対して吐出特性の変化が少なく、ロバスト性が向上する。
【0167】
〔光硬化性樹脂液体の説明〕
次に、本例に示すナノインプリントシステムに適用される光硬化性樹脂液体の一例として、レジスト組成物(以下、単に「レジスト」と記載することがある。)について詳細に説明する。
【0168】
レジスト組成物は、一種以上のフッ素を含む界面活性剤と重合性化合物と、光重合開始剤Iとを少なくとも含有するインプリント用硬化性組成物である。
【0169】
レジスト組成物には、機能として多官能重合性基を有することによる架橋性の発現を狙い、又は炭素密度を高める、又は結合エネルギーの総量を高める、又は硬化後の樹脂中に含まれるO、S、N、等の電気陰性度が高い部位の含有率を抑制する等によりエッチング耐性を向上させる目的で重合性官能基を有する1官能以上のモノマー成分を含んでもよく、更に、必要に応じて、基板とのカップリング剤、揮発性溶剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0170】
基板とのカップリング剤としては、前述の基板の密着処理剤と同様の材料を用いることができる。含有量としては、基板とレジスト層との界面に配置する程度に含有していれば良く、10質量パーセント(質量%)以下であれば良く、5質量パーセント以下がより好ましく、2質量パーセント以下が更により好ましく、0.5質量パーセント以下であることが最も好ましい。
【0171】
レジスト組成物の粘度は、モールド26(図6参照)に形成されたパターンへのレジスト組成物中の固形分(揮発溶剤成分を除いた成分)の入り込みと、モールド26への濡れ広がり性の観点から、固形分の粘度は、1000ミリパスカル秒以下であることが好ましく、100ミリパスカル秒以下であることがより好ましく、20ミリパスカル秒以下であることが更により好ましい。しかしながら、インクジェット方式を利用する場合は、室温またはヘッドで吐出時に温度制御可能であればその温度範囲内にて20ミリパスカル秒以下となることが好ましく、またレジスト組成物の表面張力が20ミリニュートン毎メートル(mN/m)以上40ミリニュートン毎メートル以下の範囲、さらにミリニュートン毎メートル以上、36ミリニュートン毎メートル以下となることが、インクジェットでの吐出安定性を確保する観点で好ましい。
【0172】
(重合性化合物)
レジスト組成物の主成分となる重合性化合物としては、以下の〔数1〕で示される化合物中のフッ素含有率が5%以下であるか、またはフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を実質的に含まない重合性化合物であることとする。
【0173】
【数1】
【0174】
重合性化合物としては、硬化後のパターンの精度及びエッチング耐性等の品質の良好なものであることが好ましい。かかる重合性化合物としては、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含むことが好ましく、多官能単量体は、少なくとも1つの2価又は3価の芳香族基を有するものであることが好ましい。
【0175】
硬化(重合)後に三次元構造を有するレジストの場合は、硬化処理後の形状維持性が良く、モールド剥離時にモールドとレジストとの付着力によって、レジストにかかる応力がレジスト構造体の特定エリアに集中し、パターンが塑性変形することが抑制される。しかしながら、重合後に三次元構造を有する重合体となる多官能モノマーの比率や、重合後に三次元架橋を形成する部位の密度が上昇すると、硬化後のヤング率が大きくなって変形性が低下し、また膜の脆性が悪化するため、モールド剥離時に破断しやすくなってしまうことが懸念される。特にパターンサイズが30ナノメートル幅以下でパターンアスペクト比が2以上のパターンを残膜厚みが10ナノメートル以下となる態様では、ハードディスクパターンや半導体パターンなどの広エリアでの形成を試みた場合に、パターンの剥がれやもげが発生する確率が大きくなると考えられる。
【0176】
従って、多官能単量体は、重合性化合物中に10質量パーセント以上含有されることが好ましく、20質量パーセント以上含有されることがより好ましく、30質量パーセント以上含有されることが更に好ましく、40質量パーセント以上であることが最も好ましいことを見出した。
【0177】
また、次式〔数2〕で表される架橋密度が0.01個/ナノ平方メートル以上10個/ナノ平方メートル以下であることが好ましく、0.1個/ナノ平方メートル以上6個/ナノ平方メートル以下であることがより好ましく、0.5個/ナノ平方メートル以上5.0個/ナノ平方メートル以下であることがもっとも好ましいことを見出した。組成物の架橋密度は、各分子の架橋密度を求め、更に重量平均より求めるか、または組成物の硬化後密度を測定し、Mw、および(Nf−1)についてそれぞれの値を重
量平均した値と次式〔数2〕より求める。
【0178】
【数2】
【0179】
但し、Daは1分子の架橋密度、Dcは硬化後密度、Nfはモノマー1分子中に含まれるアクリレート官能基数、Naはアボガドロ定数、Mwは分子量である。
【0180】
重合性化合物の重合性官能基としては、特に制限されないが、反応性及び安定性が良好であることから、メタクリレート基、アクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
【0181】
ドライエッチング耐性は、レジスト組成物の大西パラメータ及びリングパラメータにより評価することができる。大西パラメータが小さく、また、リングパラメータが大きいものほどドライエッチング耐性に優れる。本発明において、レジスト組成物は、大西パラメータが4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下となるように、また、リングパラメータが0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上となるものを好適としている。
【0182】
上記各パラメータは、レジスト組成物を構成する揮発溶剤成分以外の構成物質について、構造式を元に後述の計算式を用いて算出された材料パラメータ値を、組成重量比を元に組成物全体で平均化した値として求める。従って、レジスト組成物の主成分である重合性化合物についても、レジスト組成物中のその他の成分、及び上記パラメータを考慮して選択することが好ましい。
【0183】
大西パラメータ=(化合物中の総原子数)/{(化合物中の炭素原子数)−(化合物中の酸素原子数)}
リングパラメータ=(環構造を形成する炭素質量)/(化合物の全質量)
重合性化合物としては、以下に示す重合性単量体、及びかかる重合性単量体が数単位重合したオリゴマー等が挙げられる。パターン形成性とエッチング耐性の観点から、重合性単量体(Ax)、及び特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物のうちの少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。
【0184】
(重合性単量体(Ax))
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化1〕に示す一般式(I)で表される。
【0185】
【化1】
【0186】
なお、上記〔化1〕に示す一般式(I)中、Arは置換基を有していてもよい2価または3価の芳香族基を表し、Xは単結合または有機連結基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは2または3を表す。
【0187】
上記の一般式(I)中、Arとしては、n=2のときは2価の芳香族基(すなわちアリーレン基)を表し、n=3のときは3価の芳香族基を表す。アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基などの炭化水素系アリーレン基;インドール、カルバゾールなどが連結基となったヘテロアリーレン基などが挙げられ、好ましくは炭化水素系アリーレン基であり、さらに好ましくは粘度、エッチング耐性の観点からフェニレン基である。アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基が挙げられる。
【0188】
Xの有機連結基としては、鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。その中でも、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。Xとしては、単結合またはアルキレン基であることが特に好ましい。
【0189】
R1は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。R1が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、特に制限はないが、例えば水酸基、ハロゲン原子(フッ素を除く)、アルコキシ基、アシルオキシ基を挙げることができる。nは2または3であり、好ましくは2である。
【0190】
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化2〕に示す一般式(I−a)、又は一般式(I−b)で表される重合性単量体であることが、組成物粘度を低下させる観点から好ましい。
【0191】
【化2】
【0192】
なお、上記の一般式(I‐a)、(I‐b)中、X1、X2は、それぞれ独立に単結合または炭素数1〜3の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0193】
一般式(I‐a)中、前記X1は、単結合またはメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが粘度低減の観点からより好ましい。X2の好ましい範囲は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
【0194】
R1は上記の一般式(I)におけるとR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。重合性単量体(Ax)は25℃において液体であると、添加量を増やした際にも異物の発生が抑制でき好ましい。重合性単量体(Ax)は25℃における粘度が70ミリパスカル秒未満であることがパターン形成性の観点から好ましく、50ミリパスカル秒以下であることがより好ましく、30ミリパスカル秒以下であることが特に好ましい。
【0195】
以下の〔化3〕に好ましい重合性単量体(Ax)の具体例を示す。R1は一般式(I)におけるR1と同義である。R1としては硬化性の観点から、水素原子が好ましい。
【0196】
【化3】
【0197】
これらの中でも、以下の〔化4〕に示す化合物が25℃において液体であり、かつ、低粘度で、さらに良好な硬化性を示し、特に好ましい。
【0198】
【化4】
【0199】
レジスト組成物においては、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、必要に応じて重合性単量体(Ax)と、以下に説明する重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体と、を併用することが好ましい。
【0200】
(他の重合性単量体)
他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
【0201】
これらの他の重合性単量体のうち、インプリント適性とドライエッチング耐性、硬化性、粘度等の観点から、特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物をより好ましく含むことが出来る。更に他に含むことが出来る前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
【0202】
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メ
タ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
【0203】
これらの中で特に、芳香族構造および/または脂環炭化水素構造を有する単官能(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性を改善する観点から好ましい。具体例ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、が特に好ましい。
【0204】
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3‐ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9‐ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0205】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9‐ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0206】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0207】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0208】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0209】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)の具体例として、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などが挙げられる。
【0210】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0211】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR‐6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM‐2400、KRM‐2410、KRM‐2408、KRM‐2490、KRM‐2720、KRM‐2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0212】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry ofheterocyclic compoundsSmallRingHeterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,AnInterscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報明細書、特許第2906245号公報明細書、特許第2926262号公報明細書などの文献を参考にして合成できる。
【0213】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2‐エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール‐1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2‐プロパンジオールジビニルエーテル、1,3‐プロパンジオールジビニルエーテル、1,3‐ブタンジオールジビニルエーテル、1,4‐ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1‐トリス〔4‐(2‐ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0214】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,PolymersPaintColour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0215】
また、他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、β‐メチルスチレン、p‐メチル−β‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、p‐メトキシ‐β‐メチルスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0216】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0217】
他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1‐ドデシル‐1‐プロペニルエーテル、1‐ドデシル‐1‐ブテニルエーテル、1‐ブテノキシメチル‐2‐ノルボルネン、1‐4‐ジ(1‐ブテノキシ)ブタン、1,10‐ジ(1‐ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1‐ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1‐ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1‐ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0218】
(含フッ素界面活性剤)
本例に示すインプリントシステムでは、含フッ素界面活性剤は、レジストパターンの一部となるため、良好なパターン形成性、硬化後のモールド離型性及びエッチング耐性の良好なレジスト特性を有するものであることが好ましい。
【0219】
含フッ素界面活性剤の含有量は、レジスト組成物中、例えば、0.001質量パーセント以上5質量パーセント以下であり、好ましくは0.002質量パーセント以上4質量パーセント以下であり、さらに好ましくは、0.005質量パーセント以上3質量パーセント以下である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001質量パーセント以上5質量パーセント以下の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化や、インプリント後のエッチング工程におけるエッチング適性の劣化を招きにくい。
【0220】
(重合開始剤I)
重合開始剤Iとしては、レジスト組成物を硬化させる際に用いる光L1により活性化してレジスト組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始する活性種を発生するものであれば特に制限されない。重合開始剤Iとしては、ラジカル重合開始剤が好ましい。また、本発明において、重合開始剤Iは複数種を併用してもよい。
【0221】
重合開始剤Iとしては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましく、例えば、特開平2008‐105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0222】
重合開始剤Iの含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01質量パーセント以上15質量パーセント以下であり、好ましくは0.1質量パーセント以上12質量パーセント以下であり、さらに好ましくは0.2質量パーセント以上7質量パーセント以下である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0223】
光重合開始剤の含有量が0.01質量パーセント以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量パーセント以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0224】
これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤の添加量が種々検討されてきたが、インプリント用等の光インプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、開始剤がラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、レジスト組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0225】
本例に示すインプリントシステムに適用されるレジストに含有するラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィン系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008‐105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0226】
なお、光L1には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波の他に、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248ナノメートルエキシマレーザー、193ナノメートルエキシマレーザー、172ナノメートルエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0227】
光重合開始剤Iは、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、レジスト組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させてしまったりするなどの問題を生じる。
【0228】
レジスト組成物では、含まれる重合性単量体がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤Iが光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0229】
(その他成分)
既に述べたように、本例に示すインプリントシステムに適用されるレジスト組成物は、上述の重合性化合物、含フッ素界面活性剤、及び光重合開始剤Iの他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。以下にその他の成分について概要を説明する。
【0230】
(酸化防止剤)
レジスト組成物では、公知の酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01質量パーセント以上10質量パーセント以下であり、好ましくは0.2質量パーセント以上5質量パーセント以下である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。
【0231】
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0232】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0233】
(重合禁止剤)
レジスト組成物は、重合禁止剤を少量含有することが好ましい。重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001質量パーセント以上1質量パーセント以下であり、より好ましくは0.005質量パーセント以上0.5質量パーセント以下、さらに好ましくは0.008質量パーセント以上0.05質量パーセント以下である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。
【0234】
(溶剤)
レジスト組成物は、必要に応じて、種々の溶剤を含むことができる。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜280℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
【0235】
レジスト組成物中の溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中0〜99質量パーセントが好ましく、0〜97質量パーセントがさらに好ましい。特に膜厚500ナノメートル以下のパターンを形成する際には20質量パーセント以上99質量パーセント以下が好ましく、40質量パーセント以上9質量パーセント以下がさらに好ましく、70質量パーセント以上98質量パーセント以下が特に好ましい。
【0236】
(ポリマー成分)
レジスト組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量パーセントが好ましく、より好ましくは0〜20質量パーセント、さらに好ましくは0〜10質量パーセント、最も好ましくは0〜5質量パーセントである。
【0237】
レジスト組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点から、ポリマー成分を含有していてもよい。かかるポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000以上100000以下が好ましく、5000以上50000以下がさらに好ましい。
【0238】
ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量パーセントが好ましく、より好ましくは0〜20質量パーセント、さらに好ましくは0〜10質量パーセント、最も好ましくは2質量パーセント以下である。パターン形成性の観点から、レジスト組成物において、溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量パーセント以下である方が好ましい。樹脂成分はできる限り少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0239】
レジスト組成物には、上記した成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0240】
レジスト組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、各成分を混合した後、例えば、孔径0.003マイクロメートル(μm)〜5.0マイクロメートルのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。光インプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0241】
かかるレジスト組成物は、インクジェット方式による微小液滴化が可能な範囲の粘度に調整される。インクジェット方式による吐出可能な粘度の範囲は、5ミリパスカル秒から20ミリパスカル秒であり、好ましくは8ミリパスカル秒から15ミリパスカル秒である。このときの溶媒量は、10重量パーセント以下とされる。また、経時により溶媒が揮発した場合の粘度上昇は、10ミリパスカル秒以下とされる。
【0242】
上記のようにインクジェット方式に適した粘度に調整されたレジスト組成物の表面張力は、20ミリニュートン毎メートル以上40ミリニュートン毎メートル以下であり、好ましくは25ミリニュートン毎メートル以上35ミリニュートン毎メートル以下である。
【0243】
上記実施形態では、光硬化性樹脂液体塗布部12と、パターン転写部14と備えたナノインプリントシステム10を例示したが、光硬化性樹脂液体塗布部12及びパターン転写部14を個別の装置として構成する態様も可能である。
【0244】
本発明のパターン転写装置及びパターン形成方法については、以下のような製造の際に好適に用いることができる。
【0245】
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。
【0246】
第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro-Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。
【0247】
第三の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。
【0248】
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶、反射防止構造体(モスアイ)などの永久膜形成用途においても有用である。
【0249】
すなわち、本発明に係るナノインプリントシステム(装置)10として、光硬化性樹脂液体吐出装置と、パターン転写装置と、を備える構成も可能である。
【0250】
以上、本発明に係る機能性液体吐出装置及び機能性液体吐出方法並びにナノインプリントシステムの具体例として、ナノインプリントシステム(装置)について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
【0251】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0252】
(発明1):5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ1≦(η/10)を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式γ2≦γ1を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、を備えたことを特徴とする機能性液体吐出装置。
【0253】
本発明によれば、引き波形要素及び押し波形要素を有する駆動電圧を用いて圧電素子を引き押し駆動させて、5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の高粘度の機能性液体を吐出させる液体塗布装置において、液体吐出ヘッドの共振周期Tc及び機能性液の粘度ηとの関係が(2/Tc)<γ1<(η/10)を満たす引き波形要素の傾きγ1を有するとともに、γ2≦γ1を満たす押し波形要素の傾きγ2を有する駆動電圧を用いることで、溶媒の揮発や温度変化等により機能性液体の粘度変化が生じたとしても、高周波で安定した連続吐出が可能となる。
【0254】
本発明における「機能性を有する液体」とは、基板上に微細パターンを形成し得る機能性材料の成分を含有する液体であり、その一例としてレジスト液などの光硬化樹脂液体や、加熱により硬化する熱硬化樹脂液体などが挙げられる。
【0255】
液体吐出ヘッドの共振周期Tcの単位をマイクロ秒とし、引き波形要素の傾きγ1及び押波形要素の傾きγ2の単位をマイクロ秒分の1、機能性液体の粘度ηの単位をミリパスカル秒とすると、機能性液体の粘度ηの項の係数1/10は、「ナノパスカル秒二乗分の1」の単位で表される。
【0256】
(発明2):発明1に記載の機能性液体吐出装置において、前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ2≦(η/10)を満たすことを特徴とする。
【0257】
(発明3):発明1又は2に記載の機能性液体吐出装置において、前記駆動電圧生成手段は、20キロヘルツ以下の周波数を有する駆動電圧を生成することを特徴とする。
【0258】
かかる態様によれば、吐出周波数が20キロヘルツの高周波の連続吐出が可能である。
【0259】
(発明4):発明1から3のいずれかに記載の機能性液体吐出装置において、前記機能性液体は、前記溶媒が揮発した状態において、前記溶媒が揮発する前の状態に対する粘度の上昇が10ミリパスカル秒以下であることを特徴とする。
【0260】
かかる態様によれば、溶媒が揮発して粘度が上昇した状態においても、高周波の安定した連続吐出が可能である。
【0261】
(発明5):発明1から4のいずれかに記載の機能性液体吐出装置において、前記ノズルは、吐出側の開口と液室側の開口とをつなぐ傾斜面の前記吐出側の開口面の垂線に対する傾斜角度が20度以上であることを特徴とする。
【0262】
かかる態様によれば、ノズルの吐出側の開口と液室側の開口とをつなぐ傾斜面の前記吐出側の開口面の垂線に対する傾斜角度である「ノズルのテーパ角度」が20°以上になると、液体吐出ヘッドの音響インピーダンスが略一定となり、液体吐出におけるロバスト性が向上する。
【0263】
(発明6):発明1から5のいずれかに記載の機能性液体吐出装置において、前記ノズルは、シリコン基板の(100)に対する異方性エッチングにより形成され、略正方形形状の吐出側の開口及び略正方形形状の前記圧力室側の開口を有すことを特徴とする。
【0264】
かかる態様において、シリコン基板に異方性エッチング処理が施されて形成された略正方形形状のノズルが適用される液体吐出ヘッドにおいても、高周波の安定した連続吐出が可能である。
【0265】
(発明7):発明1から6のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置において、前記ノズルは、吐出側の開口の直径D1と、液室側の開口の直径D2との関係が、次式D1>2×D2を満たす構造を有することを特徴とする。
【0266】
かかる態様において、ノズルの形状をテーパ形状(略円すい形状)とする形態がありうる。
【0267】
(発明8):5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと前記基板とを相対的に移動させる相対移動工程と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ1≦(η/10)を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式γ2≦γ1を満たす駆動電圧が生成される駆動電圧生成工程と、前記生成された駆動電圧を前記圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる機能性液体塗布工程と、を含むことを特徴とする機能性液体吐出方法。
【0268】
本発明において、駆動電圧生成工程は、20キロヘルツ以下の周波数を有する駆動電圧を生成する態様がありうる。
【0269】
かかる態様によれば、吐出周波数が20キロヘルツの高周波の連続吐出が可能である。
【0270】
(発明9):発明8に記載の機能性液体吐出方法において、前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ2≦(η/10)を満たすことを特徴とする。
【0271】
(発明10):5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ1≦(η/10)を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式γ2≦γ1を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、前記基板の機能性液体が塗布された面に対して、所定の凹凸パターンが形成された型の前記凹凸パターンを転写する転写手段と、を備えたことを特徴とするインプリントシステム。
【0272】
本発明によれば、溶媒の揮発や温度変化等により機能性液体の粘度変化が生じたとしても、高周波で安定した連続吐出がされるので、残渣ばらつき等のない好ましい機能性液体による層が形成されうる。
【0273】
本発明は、サブミクロンの微細パターンを形成するナノインプリントリソグラフィに特に好適である。また、本発明おける各手段を備えたインプリント装置とすることも可能である。
【0274】
(発明11):発明10に記載のインプリントシステムにおいて、前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ2≦(η/10)を満たすことを特徴とする。
【0275】
(発明12):発明10又は11に記載のインプリントシステムにおいて、前記機能性液体は、エネルギーの付与によって硬化反応を発現させる成分を含むことを特徴とする。
【0276】
かかる態様における機能性液体の一例として、光エネルギーの付与(光の照射)により硬化反応を発現させる光硬化型液体や、熱エネルギーの付与(加熱)により硬化反応を発現させる熱硬化型液体が挙げられる。
【0277】
(発明13):発明10から12のいずれかに記載のインプリントシステムにおいて、前記機能性液体は、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び溶媒を含み、前記転写手段は、前記パターンが転写された機能性液体に対して光を照射させて硬化させることを特徴とする。
【0278】
かかる態様において、光重合性モノマー、光重合開始剤が反応しうる様々な波長の光を適用しうる。例えば、紫外線、可視光線などが挙げられる。
【0279】
(発明14):発明10から13のいずれかに記載のインプリントシステムにおいて、前記機能性液体は、フッ素モノマーを含有することを特徴とする。
【0280】
かかる態様によれば、型との濡れ性を制御することができ、型に形成されるパターン内へ機能性液体を充填することが容易になる。
【0281】
また、機能性液体を、液体吐出ヘッドの吐出性が良好となる表面張力に調整することができる。
【0282】
(発明15):発明10から14のいずれかに記載のインプリントシステムにおいて、前記転写手段は、前記型の凹凸パターンが形成されている面を前記基板の液体が塗布された面に押し当てる押圧手段と、前記型と前記基板との間の液体を硬化させる硬化手段と、前記型と前記基板とを剥離させる剥離手段と、を備えたことを特徴とする。
【0283】
かかる態様によれば、型の凹凸パターンが転写されたマスクパターンが形成される。
【0284】
(発明16):発明10から14のいずれか1項に記載のインプリントシステムにおいて、前記転写手段による転写の後に、前記型を前記基板から剥離させる剥離手段と、凹凸パターンが転写され硬化させた液体から成る膜をマスクとして、前記型の凹凸パターンに対応するパターンを前記基板に形成するパターン形成手段と、前記膜を除去する除去手段と、を備えたことを特徴とする。
【0285】
かかる態様によれば、好ましいサブミクロンの微細パターンが形成される。
【符号の説明】
【0286】
10…ナノインプリントシステム(装置)、12…光硬化性樹脂液体塗布部、14…パターン転写部、20…基板、22…搬送部、23…ノズル、24,24’…インクジェットヘッド、25…光硬化性液体(膜)、26…モールド、28…紫外線照射装置。32…圧力室、38…圧電素子、52…システムコントローラ、60…塗布制御部、61…転写制御部、84…駆動波形生成部、100…駆動電圧(波形)、102…引き波形、106…押し波形
【技術分野】
【0001】
本発明は機能性液体吐出装置及び機能性液体吐出方法並びにインプリントシステムに係り、特に、インクジェット方式により基板等の媒体上に機能性を有する液体を付与する液体付与技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化、高集積化に伴い、基板上に微細構造を形成するための技術として、基板上に塗布したレジスト(UV硬化性樹脂)に転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたモールドを押し当てた状態で紫外線を照射してレジストを硬化させモールドを基板上のレジストから分離(離型)することで、モールドに形成された微細パターンを基板(レジスト)へ転写するナノインプリント方法が知られている。
【0003】
基板にインプリント材(レジスト液)を付与する形態として、インクジェット方式が適用されたシステムが提案されている。インクジェット方式は、レジスト液の粘度によって吐出状態が変化してしまうので、レジスト液の粘度を安定させる必要がある。また、レジスト液はグラフィックに用いられるインクよりも高粘度であるために、安定した吐出状態を得ることが難しい。
【0004】
特許文献1は、ピエゾ素子を用いて圧力室を変形させて、圧力室内の液体を加圧する吐出方式において、吐出前に基準容積の圧力室を膨張させるための駆動波形の傾きを、吐出後において収縮状態の圧力室を基準容積まで膨張させるための駆動波形の傾きよりも大きくして、6〜20ミリパスカル秒(mPa・s)の高粘度インクを安定的に吐出させる技術を開示している。
【0005】
特許文献2は、異なる電圧変化率を有する第1膨張要素と第2膨張要素を含む膨張要素と、異なる電圧変化率を有する第1収縮要素と第2収縮要素を含む膨張収縮要素と、を有する駆動電圧を印加し、圧力室を膨張させた後に収縮させてUVインク(紫外線硬化型インク)などの高粘度インクを吐出させる際のミストの発生を防止する液体吐出装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009‐172921号公報
【特許文献2】特開2010‐158843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、多種のインクが用いられる際にインクの種類ごとに駆動波形を設定できるようなシステムでは有効であるものの、温度変化、吐出後の時間経過による溶媒の揮発、インクのロットの違いによる粘度の変化に対応することが困難である。
【0008】
例えば、温度変化によってインクの粘度が変化してミストが発生するなど、吐出安定性に欠けることがありうる。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術は、第1膨張要素と第2膨張要素との関係によっては、ノズルの近傍に付着したミストに対する吐出のロバスト性の低下が懸念される。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式を用いて高粘度の機能性液を高周波で連続吐出させる際のロバスト性が維持された好ましい液体吐出が実現される、機能性液体吐出装置及び機能性液体吐出方法並びにインプリントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る機能性液体吐出装置は、5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ1≦(η/10)を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式γ2≦γ1を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、引き波形要素及び押し波形要素を有する駆動電圧を用いて圧電素子を引き押し駆動させて、5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の高粘度の機能性液体を吐出させる液体塗布装置において、液体吐出ヘッドの共振周期Tc及び機能性液の粘度ηとの関係が(2/Tc)<γ1<(η/10)を満たす引き波形要素の傾きγ1を有するとともに、γ2≦γ1を満たす押し波形要素の傾きγ2を有する駆動電圧を用いることで、溶媒の揮発や温度変化等により機能性液体の粘度変化が生じたとしても、高周波で安定した連続吐出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るナノインプリントシステムの各工程を説明する図
【図2】本発明に係るナノインプリントシステムの全体構成図
【図3】図2に示す光硬化性樹脂液体塗布部の概略構成を示す構成図
【図4】図3に示すインクジェットヘッドの構造例を示す平面図
【図5】図3に示す光硬化性樹脂液体塗布部の他の態様を説明する構成図
【図6】図5に示すインクジェットヘッドの構造例を示す平面図
【図7】図3、5に示すインクジェットヘッドの立体構造を示す断面図
【図8】図2に示すナノインプリントシステムの制御系の概略構成を示すブロック図
【図9】図8に示すヘッドドライバーの構成例を示すブロック図
【図10】図8に示すヘッドドライバーにより生成される駆動電圧の説明図
【図11】図10に示す引き波形の傾きの評価結果の説明図
【図12】図10に示す引き波形の傾きの違いによるメニスカスの挙動を模式的に図示した説明図
【図13】引き波形の傾きの違いによる吐出された液滴の形状の違いを示す説明図
【図14】図10に示す押し波形の傾きの評価結果の説明図
【図15】押し波形の傾きの違いによる吐出された液滴の形状の違いを示す説明図
【図16】引き波形の傾きと押し波形の傾きの関係を示す説明図
【図17】ノズル形状の説明図
【図18】テーパ角度と音響イナータンスの関係を示す説明図
【図19】他のノズル形状を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】
〔ナノインプリント方法の説明〕
まず、図1(a)〜(f)を用いて、本発明の実施形態に係るナノインプリント方法について、工程順を追って説明する。本例に示すナノインプリント方法は、モールド(例えば、Siモールド)に形成された凹凸パターンを、基板(石英基板等)上に形成された光硬化性樹脂液体(機能性液、例えば、レジスト液)を硬化させた光硬化性樹脂膜に転写し、該光硬化性樹脂膜をマスクパターンとして基板上に微細パターンを形成するものである。
【0016】
まず、図1(a)に示す石英基板20(以下、単に「基板」と記載する。)を準備する。図1(a)に示す基板20は、表側面20Aにハードマスク層21が形成されており、この表側面20Aに微細パターンが形成される。基板20は、紫外線などの光を透過させる所定の透過性を有し、厚みが0.3ミリメートル(mm)以上であればよい。光透過性を有することで基板20の裏側面20Bからの露光が可能となる。
【0017】
Siモールドを用いる場合に適用される基板20として、表面をシランカップリング剤で被覆したもの、Cr、W、Ti、Ni、Ag、Pt、Auなどからなる金属層を積層したもの、CrO2、WO2、TiO2などからなる金属酸化膜層を積層したもの、これらの積層体の表面をシランカップリング剤で被覆したものなどが挙げられる。
【0018】
すなわち、図1(a)に図示したハードマスク層21は、上記の金属膜や金属酸化膜等の積層体(被覆材)が用いられる。積層体の厚みが30ナノメートル(nm)を超えると光透過性が低下してしまい、光硬化性樹脂の硬化不良が起こりやすいので、該積層体の厚みは30ナノメートル以下であり、好ましくは20ナノメートル以下である。
【0019】
「所定の透過性」とは、基板20の裏側面20Bから照射した光が表側面20Aから出射して、表面に形成される機能性を有する液体(例えば、図1(c)に符号25を付して図示した光硬化性樹脂液体を十分に硬化させることができればよく、例えば、裏側面から照射された波長200ナノメートル以上の光の光透過率が5%以上であるとよい。
【0020】
また、基板20の構造は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。基板20の材質は、石英以外にも、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂、などを適宜用いることができる。これらの材料は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を適宜合成して併用してもよい。
【0021】
なお、基板20に石英以外の材料を用いるときは、モールド(同図に符号26を付して図示)の材料に石英を用いて、モールド側から露光がされる。
【0022】
基板20の厚みは0.05ミリメートル以上が好ましく、0.1ミリメートル以上がより好ましい。基板20の厚みが0.05ミリメートル未満であると、被パターン形成体とモールドとの密着時に基板側に撓みが発生し、均一な密着状態を確保できない可能性がある。また、ハンドリングやインプリント中の押圧による破損を避けることを考慮して、基板20の厚みを0.3ミリメートル以上とするとより好ましい。
【0023】
基板20の表側面20Aに対して、インクジェットヘッド24から光硬化性樹脂を含有する複数の液滴25’を離散的に吐出させる(図1(b):吐出工程)。詳細は後述する
が、ここでいう「離散的に吐出させる液滴」とは、基板20上における隣接する着弾位置に着弾した他の液滴と接触せずに、所定の間隔を空けて着弾した複数の液滴(符号25を付して図示)を意味している。
【0024】
図1(b)に示す吐出工程では、5ミリパスカル秒(センチポアズ)以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する光硬化性樹脂液体をインクジェットヘッド24から安定して連続的に吐出させるために、インクジェットヘッドの共振周期Tc及び光硬化性樹脂液体の粘度ηに基づき、インクジェットヘッド24を動作させるための駆動電圧の傾きγが規定されている。
【0025】
すなわち、インクジェット方式では、吐出させる液体の粘度が可能な限り一定に維持されることで、安定した高速の連続吐出を行うことが可能であるものの、インクジェット方式に適用される液体は、環境温度の変化による粘度の変化、ロットの違い(ロットごとの溶媒量の違い)による粘度のばらつきが生じやすく、ロバスト性を向上させることが難しい。
【0026】
本例では、インクジェットヘッドの共振周期Tc、及び光硬化性樹脂液体の粘度ηに基づいて駆動電圧の傾き(スリューレート)が決められるので、温度変化等の外乱による連続吐出の安定性が損なわれない。なお、駆動電圧の詳細は後述する。
【0027】
また、光硬化性樹脂液体25の吐出量、吐出密度、吐出(飛翔)速度が予め設定(調整)されている。例えば、吐出量及び吐出密度は、モールド(図1(c)符号26を付して図示)の凹凸パターンの凹部の空間体積が大きい領域では相対的に大きくされ、凹部の空間体積が小さい領域や凹部がない領域では相対的に小さくされるように調整される。調整後、所定の打滴配置(パターン)に従って、基板20上に光硬化性樹脂液体25が配置される。
【0028】
図1(b)に示す打滴工程の後に、凹凸パターンが形成されたモールド26の凹凸パターン面を基板20の表側面20Aに所定の押圧力によって押し付けて基板20上の光硬化性樹脂液体25を拡張させ、拡張させた複数の光硬化性樹脂液体25の結合からなる光硬化性樹脂層25”が形成される(図1(c):光硬化性樹脂層形成工程)。
【0029】
光硬化性樹脂層形成工程では、モールド26と基板20との間の雰囲気を減圧または真空雰囲気にした後に、モールド26を基板20に押し付けることで残留気体を低減させることができる。
【0030】
ただし、高真空雰囲気下では硬化前の光硬化性樹脂層25”が揮発してしまい、均一な膜厚を維持することが困難となる可能性がある。そこで、モールド26と基板20との間の雰囲気を、ヘリウム(He)雰囲気または減圧He雰囲気にすることで残留気体を低減するとよい。Heは石英基板20を透過するため、取り込まれた残留気体(He)は徐々に減少する。Heの透過には時間を要すため減圧He雰囲気とすることがより好ましい。
【0031】
モールド26の押圧力は、100キロパスカル(kPa)以上10メガパスカル(MPa)以下の範囲とされる。押圧力が相対的に大きい方が樹脂の流動が促進され、また残留気体の圧縮、残留気体の光硬化性樹脂への溶解や、基板20中のHeの透過が促進され、タクトアップにつながる。
【0032】
しかし、押圧力が大きすぎるとモールド26が基板20に接触するときに異物を噛みこんでしまい、モールド26及び基板20を破損してしまう可能性があるので、モールド26の押圧力は上記範囲とされる。
【0033】
モールド26の押圧力の範囲は、より好ましくは100キロパスカル以上5メガパスカル以下であり、更に好ましくは100キロパスカル以上1メガパスカル以下である。100キロパスカル以上としたのは、大気中でインプリントを行う際、モールド26と基板20との間が光硬化性樹脂液体25で満たされているためであり、モールド26と基板20との間が大気圧(約101キロパスカル)で加圧されているためである。
【0034】
その後、基板20の裏側面20Bから紫外線を照射して、光硬化性樹脂層25”に対する露光が行われ、光硬化性樹脂層25”を硬化させる(図1(c):光硬化性樹脂層硬化工程)。本例では、光(紫外線)によって光硬化性樹脂層25”を硬化させる光硬化方式を例示したが、熱硬化性樹脂を含有する液体を用いて熱硬化性樹脂層を形成し、加熱によって熱硬化性樹脂層を硬化させる熱硬化方式など、他の硬化方式を適用してもよい。
【0035】
光硬化性樹脂層25”が十分に硬化した後に、光硬化性樹脂層25”からモールド26を剥離させる(図1(d):剥離工程)。モールド26を剥離させる方法は、光硬化性樹脂層25”のパターンに欠損が生じにくい方法であればよく、基板20の縁部から徐々に剥離させる方法や、モールド26の側から加圧しながら剥離させ、モールド26が光硬化性樹脂層25”から剥離する境界線上での光硬化性樹脂層25”へかかる力を低減させて剥離する方法(加圧剥離法)などの方法を用いることができる。
【0036】
さらに、光硬化性樹脂層25”の近傍を加温し、モールド26と光硬化性樹脂層25”との界面での光硬化性樹脂層25”とモールド26の表面との付着力を低減させ、かつ、光硬化性樹脂層25”のヤング率を低下させて、脆性が良化させて変形による破断を抑制して剥離する方法(加熱アシスト剥離)を適用することも可能である。なお、上記の方法を適宜組み合わせた複合的手法を用いてもよい。
【0037】
図1(a)〜(d)に示す各工程を経て、基板20の表側面20Aに形成された光硬化性樹脂層25”にモールド26の凹凸パターンが転写される。基板20上に形成された光硬化性樹脂層25”は、モールド26の凹凸形状や光硬化樹脂を含有する液体の液物性に対応して、光硬化性樹脂層25”となる光硬化性樹脂液体25の配置密度が最適化されているので、残渣厚が均一化され、欠損のない好ましい凹凸パターンが形成される。
【0038】
次に、光硬化性樹脂層25”をマスクとして基板20(又は基板20に被覆させた金属膜等)に微細パターンが形成される。
【0039】
基板20上の光硬化性樹脂層25”の凹凸パターンが転写されると、光硬化性樹脂層25”の凹部内の光硬化性樹脂液体25が除去され、基板20の表側面20A、又は表側面20Aに形成される金属層等を露出させる(図1(e):アッシング工程)。
【0040】
さらに、光硬化性樹脂層25”をマスクとしてドライエッチングが行われ(図1(f):エッチング工程)、光硬化性樹脂層25”が除去されると、光硬化性樹脂層25”に形成された凹凸パターンに対応した微細パターンが基板20上に形成される。
【0041】
なお、基板20の表側面20Aに金属膜や金属酸化膜が形成される場合は、金属膜又は金属酸化膜に対して所定のパターンが形成される。
【0042】
ドライエッチングの具体例としては、光硬化性樹脂層25”をマスクとして用いることができればよく、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、などが挙げられる。これらの中でも、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)が特に好ましい。
【0043】
イオンミリング法は、イオンビームエッチングとも言われ、イオン源にArなどの不活性ガスを導入し、イオンを生成する。これを、グリッドを通して加速させ、試料基板に衝突させてエッチングするものである。
【0044】
イオン源としては、カウフマン型、高周波型、電子衝撃型、デュオプラズマトロン型、フリーマン型、ECR(電子サイクロトロン共鳴)型などが挙げられる。イオンビームエッチングでのプロセスガスとしては、Arガス、RIEのエッチャントとしては、フッ素系ガスや塩素系ガスを用いることができる。
【0045】
以上のように、本例に示すナノインプリント方法を用いた微細パターンの形成は、モールド26の凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂層25”をマスクとして、残膜の厚みムラおよび残留気体による欠陥のない当該マスクを用いてドライエッチングを行っているので、高精度で歩留まりよく基板20に微細パターンを形成することが可能となる。
【0046】
なお、上述したナノインプリント法を適用して、ナノインプリント法に用いられる石英基板のモールドを作製することも可能である。
【0047】
〔ナノインプリントシステムの説明〕
次に、上述したナノインプリント方法を実現するためのナノインプリントシステム(ナノインプリント装置)について説明する。以下の説明では、先の説明と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略することとする。
【0048】
(全体構成)
図2は、本発明の実施形態に係るナノインプリントシステムの概略構成図である。同図に示すナノインプリントシステム10は、石英ガラスなどの光透過性を有する基板20上に光硬化性樹脂液体(レジスト液)を微小液滴化して塗布する光硬化性樹脂液体塗布部12と、基板20上に塗布された光硬化性樹脂液体に所望のパターンを転写するパターン転写部14と、基板20を搬送する搬送部22と、を備えて構成される。
【0049】
光硬化性樹脂液体塗布部12は、複数のノズル(図2中不図示、図4に符号23を付して図示)が形成されるインクジェットヘッド24を備え、各ノズルから光硬化性樹脂液体25を微小液滴化して吐出することにより、基板20の表面(光硬化性樹脂液体配置面)に光硬化性樹脂液体25の塗布を行う。
【0050】
パターン転写部14は、基板20上の光硬化性樹脂液体25に転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたモールド26と、紫外線を照射する紫外線照射装置28と、を備え、光硬化性樹脂液体25が配置された基板20の表面にモールド26を押し当てた状態で、基板20の裏側(モールド26を押し当てた表面と反対側の面)から紫外線照射を行い、基板20上の光硬化性樹脂液体25を硬化させることにより、基板20上の光硬化性樹脂液体25(光硬化性樹脂層25”)に対してパターン転写を行う。
【0051】
モールド26は、シリコンが適用される。また、基板20が紫外線照射装置28から照射される紫外線を透過可能な光透過性材料から構成されることにより、基板20の下方(モールド26とは反対側)に配置される紫外線照射装置28から紫外線照射が行われたとき、基板20で遮られることなく基板20上の光硬化性樹脂液体25に紫外線が照射され、該光硬化性樹脂液体25を硬化させることができる。
【0052】
光透過性材料としては、例えば、ガラス、石英などを使用することができる。
【0053】
モールド26は、図2の上下方向(両矢印線により図示した方向)に移動可能に構成されており、基板20の表面に対してモールド26のパターン形成面が略平行となる状態を維持しながら下方に移動して、基板20の表面全体に略同時に接触するように押し当てられ、パターン転写が行われる。
【0054】
なお、図示は省略するが、モールド26を光透過性材料により構成し、基板20の表側(モールド側)から紫外線を照射する形態も可能である。
【0055】
搬送部22は、例えば、搬送ステージなどの基板20を固定して搬送する搬送手段を含んで構成され、基板20を搬送手段の表面に保持しつつ、該基板20を光硬化性樹脂液体塗布部12からパターン転写部14に向かう方向(以下、「y方向」ということもある。)に搬送を行う。
【0056】
該搬送手段の具体例として、リニアモータとエアスライダーの組み合わせや、リニアモータとLMガイドの組み合わせなどがあり得る。なお、基板20を移動させる代わりに、光硬化性樹脂液体塗布部12やパターン転写部14を移動させるように構成してもよいし、両者を移動させてもよい。
【0057】
(光硬化性樹脂液体吐出部の説明)
図3は、光硬化性樹脂液体塗布部12の概略構成を示す構成図である。同図に示すインクジェットヘッド24は、y方向(基板20の搬送方向)と直交するx方向について、基板20の最大幅LMを超える長さLNにわたって複数のノズル(図3中不図示、図4に符号23を付して図示)が並べられた構造を有する長尺のフルライン型ヘッドである。
【0058】
フルライン型のインクジェットヘッド24を用いた液体吐出では、インクジェットヘッド24をx方向に移動させることなく、y方向について基板20とインクジェットヘッド24を相対的に移動させる動作を1回行うシングルパス方式により、基板20上の所望位置に光硬化性樹脂液体25(図1参照)を配置することができ、光硬化性樹脂液体25の吐出速度の高速化を図ることができる。
【0059】
図4は、インクジェットヘッド24の構造例を示す平面図である。同図に示すように、インクジェットヘッド24は、複数のヘッドモジュール24A(24A‐1〜24A‐4)がx方向について千鳥状に配置された構造を有している。
【0060】
また、ヘッドモジュール24Aは、x方向について複数のノズル23が一列に並べられた構造を有しており、すべてのノズル23をx方向に並ぶように投影させた投影ノズル列は、すべてのノズル23がx方向について等間隔に並べられた構造と等価である。
【0061】
なお、複数のノズル23をマトリクス状に配置させる構造も可能である。例えば、x方向に沿う行方向、及びx方向と所定の角度を成す斜めの列方向に沿って、複数のノズル23を配置させる構造が挙げられる。
【0062】
図5は、光硬化性樹脂液体塗布部12の他の構成例を示す構成図である。同図に示す光硬化性樹脂液体塗布部12’は、シリアル型のインクジェットヘッド24’を具備し、インクジェットヘッド24’は、x方向に沿って設けられたガイド27に沿って移動可能なキャリッジ29に搭載されている。
【0063】
図5に示す光硬化性樹脂液体塗布部12’は、インクジェットヘッド24’をx方向に走査させながらx方向への光硬化性樹脂液体25の吐出を行い、x方向について一回の走査が終了すると基板20をy方向へ所定量移動させて、次の領域への光硬化性樹脂液体25の吐出を行い、この動作を繰り返しながら基板20の全面にわたって光硬化性樹脂液体
の配置を行うように構成されている。
【0064】
図6(a),(b)は、図5に示すシリアル型のインクジェットヘッド24’のノズル配置例を示す平面図である。図6(a)に示すように、インクジェットヘッド24’は、y方向に沿って複数のノズル23が並べられた構造を有している。図6(b)に示すように、複数のノズル23を千鳥状に配置して、y方向の実質的なノズルピッチを小さくすることも可能である。
【0065】
(インクジェットヘッドの構造)
図7は、インクジェットヘッド24の1チャンネル分の液滴吐出素子の立体的構成を示す断面図である。同図に示すように、本例のインクジェットヘッド24は、複数のノズル23の開口が形成されたノズルプレート23Aと、圧力室32や共通流路35等の流路が形成された流路板等を積層接合した構造から成る。
【0066】
ノズルプレート23Aは、インクジェットヘッド24のノズル面23Bを構成し、各圧力室32にそれぞれ連通する複数のノズル23が形成されている。
【0067】
流路板は、圧力室32の側壁部を構成するとともに、共通流路35から圧力室32にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口34を形成する流路形成部材である。
【0068】
なお、説明の便宜上、図7では簡略的に図示しているが、流路板は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート23A及び流路板は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0069】
共通流路35はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路35を介して各圧力室32に供給される。
【0070】
圧力室32の一部の面(図7において天面)を構成する振動板36には、上部(個別)電極37A及び下部(共通)電極37Bを備え、上部電極37Aと下部電極37Bとの間に圧電体38Aがはさまれた構造を有する圧電素子38が接合されている。
【0071】
振動板36を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、圧電素子38の下部電極37Bに相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
【0072】
上部電極37Aに駆動電圧を印加することによって圧電素子38が変形して圧力室32の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル23からインクが吐出される。インク吐出後、圧電素子38が元の状態に戻る際、共通流路35から供給口34を通って新しいインクが圧力室32に再充填される。
【0073】
(制御系の説明)
図8は、ナノインプリントシステム(ナノインプリント装置)10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示す制御系は、通信インターフェース50、システムコントローラ52、メモリ54、モータドライバー56、ヒータドライバー58、吐出制御部60、転写制御部61、バッファメモリ62、ヘッドドライバー64等を備えている。
【0074】
通信インターフェース50は、ホストコンピュータ66から送られてくる光硬化性樹脂液体25(図1参照)の配置分布を表すデータを受信するインターフェース部である。通信インターフェース50としては、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0075】
システムコントローラ52は、通信インターフェース50、メモリ54、モータドライバー56、ヒータドライバー58等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ52は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ66との間の通信制御、メモリ54の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ68やヒータ69を制御する制御信号を生成する。
【0076】
メモリ54は、データの一時記憶領域、及びシステムコントローラ52が各種の演算を行うときの作業領域として使用される記憶手段である。通信インターフェース50を介して入力された光硬化性樹脂液体25の配置データは、ナノインプリントシステム10に取り込まれ、一旦メモリ54に記憶される。
【0077】
また、メモリ54は、光硬化性樹脂液体25の粘度の情報、及びインクジェットヘッド24の共振周期等の機械的性能の情報が記憶されている。光硬化性樹脂液体25の粘度の情報は、不図示のユーザインターフェースから入力されてもよいし、光硬化性樹脂液体25が収容される容器に取り付けられた情報記憶体(ICタグ等)から自動的に読み取られてもよい。
【0078】
また、インクジェットヘッド24の共振周期等の機械的性能の情報は、インクジェットヘッド24が製造されたときに予め把握されており、インクジェットヘッド24が装置(システム)に搭載される際に各種パラメータとともに記憶される。
【0079】
メモリ54としては、半導体素子からなるメモリの他、ハードディスクなどの磁気媒体を用いることができる。
【0080】
モータドライバー56は、システムコントローラ52からの指示に従ってモータ68を駆動するドライバー(駆動回路)である。モータ68には、図2の搬送部22を駆動するためのモータやモールド26を上下動させるためのモータが含まれる。
【0081】
ヒータドライバー58は、システムコントローラ52からの指示に従ってヒータ69を駆動するドライバーである。ヒータ69には、ナノインプリントシステム10の各部に設けられた温度調節用のヒータ(例えば、光硬化性樹脂液体25が配置される前の基板20を加熱するヒータ)が含まれる。
【0082】
吐出制御部60は、システムコントローラ52の制御に従い、メモリ54内の光硬化性樹脂液体25の配置データから吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号をヘッドドライバー64に供給する制御部である。
【0083】
吐出制御部60において所要の信号処理が施され、該配置データに基づいてヘッドドライバー64を介してインクジェットヘッド24から吐出される光硬化性樹脂液体25の吐出量、吐出位置、インクジェットヘッド24の吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望の光硬化性樹脂液体25の液滴の配置(分布)が実現される。
【0084】
吐出制御部60にはバッファメモリ62が備えられており、吐出制御部60における配置データ処理時に、配置データやパラメータなどのデータがバッファメモリ62に一時的に格納される。なお、図8では、バッファメモリ62は吐出制御部60に付随する態様で示されているが、メモリ54と兼用することも可能である。
【0085】
また、吐出制御部60とシステムコントローラ52とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0086】
ヘッドドライバー64は、吐出制御部60から与えられる吐出データに基づいてインクジェットヘッド24の圧電素子38(図7参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子38に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバー64にはインクジェットヘッド24の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0087】
センサ57は、インクジェットヘッド24から吐出させた液滴の飛翔状態を検出するためのセンサ(撮像素子)、基板20の位置を検出するためのセンサなど、本システム(装置)各部に設けられている各種センサが含まれる。
【0088】
センサ57によって得られた情報は、システムコントローラ52へ送られ、装置各部の制御に利用される。
【0089】
転写制御部61は、モールド26(図2参照)を移動させるモールド移動機構63の動作を制御するとともに、紫外線照射装置28のオンオフ、照射光量を制御する。すなわち、光硬化性樹脂液体が塗布された基板20がパターン転写部14へ送られると、モールド26を移動させて基板20に押圧させ、紫外線照射装置28から紫外線を照射させる。
【0090】
モールド26の凹凸パターンが転写され、光硬化性樹脂液体25が硬化して、光硬化性樹脂層25”(図1参照)によるマスクパターンが形成されると、紫外線照射が停止され、モールド26を基板から離間させる。
【0091】
図9は、ヘッドドライバー64の構成例を示すブロック図である。同図に示す構成例は、ヘッドコントローラ82(図8のシステムコントローラ52、吐出制御部60に相当)から伝送されるデジタル形式の波形信号に基づいてアナログ形式の波形信号(駆動波形)を生成する駆動波形生成部84と、該駆動波形を電圧増幅及び電流増幅する増幅部(AMP)86と、を具備している。
【0092】
ヘッドコントローラ82から伝送されるシリアル形式の印字データは、クロック信号に同期してクロック信号とともにシフトレジスタ88へ伝送される。駆動波形生成部84によって生成される駆動波形は、複数の波形要素が含まれる。この複数の波形要素の中から一つ又は複数の波形要素を選択することで、光硬化性樹脂液体25の吐出量を段階的に変更することが可能となっている。
【0093】
シフトレジスタ88に記憶された印字データは、ラッチ信号に基づいてラッチ回路90へラッチされる。ラッチ回路90にラッチされた信号はレベル変換回路92においてスイッチIC94を構成するスイッチ素子96を駆動可能な所定の電圧に変換される。
【0094】
このレベル変換回路92の出力信号によってスイッチ素子96のオンオフが制御することで、複数の波形要素の中から少なくとも1つの波形要素が選択されて吐出量が決められ、ヘッドコントローラ82から送出されるセレクト信号及びイネーブル信号によって駆動される圧電素子38が選択される。
【0095】
なお、インクジェットヘッド24の駆動方式は、共通の駆動電圧(駆動波形)を選択的に印加する方式に限定されず、総ノズル数が比較的少ないインクジェットヘッドでは、ノズルごとに駆動波形が生成される方式を適用することも可能である。
【0096】
〔駆動電圧(波形)の説明〕
次に、本例に適用される駆動電圧について詳細に説明する。図10(a)は、インクジェットヘッド24に具備される圧電素子38に印加される駆動電圧の説明図である。
【0097】
同図に示す駆動電圧100は、静定状態の圧力室32(図7参照)を拡張させるように圧電素子38を動作させる引き波形102と、圧力室32を膨張させた状態を維持するように圧電素子38を動作させる維持波形104と、膨張させた圧力室32を収縮させる押し波形106が含まれる。
【0098】
すなわち、図10(a)に図示した駆動電圧100は、圧電素子38を引き押し駆動させて圧力室32を変形させ、圧力室32と光硬化性樹脂液体との共振現象を利用してノズル23(図7参照)から液滴を吐出させるものである。
【0099】
引き波形102の傾きγ1は、光硬化性樹脂液体の粘度ηとの関係が、次式(1)を満たすように決められている。
【0100】
γ1≦(η/10) …(1)
また、押し波形の傾きγ2は、光硬化性樹脂液体の粘度ηとの関係が、次式(2)を満たすように決められている。
【0101】
γ2≦(η/10) …(2)
なお、上記式(1)及び式(2)における、光硬化性樹脂液体の粘度ηの項の係数「1/10」は、「ナノパスカル秒二乗分の1(1/(nPa・S2))」の単位で表される。
【0102】
さらに、引き波形102の傾きγ1と押し波形106の傾きγ2とは、次式(3)の関係を満たしている。
【0103】
γ2≦γ1 …(3)
駆動電圧の傾き(スリューレート)γとは、駆動電圧の最大値Vmaxと最小値Vminとの差ΔVを1としたときの単位時間(1マイクロ秒)あたりの電圧変化率である。駆動電圧100の最大値Vmaxと最小値Vminとの差ΔVは、ノズルから吐出される液滴が所定の吐出速度を得る条件により最適化されている。
【0104】
引き波形102の時間t1を用いて、引き波形102の傾きγ1は次式(4)により表される。
【0105】
γ1=1/t1 …(4)
また、押し波形106の時間t2を用いて、押し波形106の傾きγ2は次式(5)により表される。
【0106】
γ2=1/t2 …(5)
例えば、最小電圧から最大電圧まで1マイクロ秒で変化したときの傾きγは「1」であり、最小電圧から最大電圧まで2マイクロ秒で変化したときの傾きγは「0.5」である。
【0107】
なお、図10(a)に図示した駆動電圧100の維持波形104が省略された形態も可能である。すなわち、駆動電圧100は、少なくとも引き波形102及び押し波形106が含まれていればよい。
【0108】
ここで、上記式(1)〜(3)の導出について説明する。特開平7‐144410号公報等に開示されているように、メニスカスの振動モードによって吐出される液滴の形状が変化することが知られている。
【0109】
したがって、駆動電圧のスリューレートを変えると、ノズル23のメニスカスに励起される振動を変えることができるので、液滴の吐出状態を変えることが可能である。
【0110】
一方、特開平7‐144410号公報に開示されているように、液滴の吐出量を変えるための駆動電圧を解析的に導き出すことは可能であるものの、高速の連続吐出の安定性を解析的に評価することは困難である。
【0111】
そこで、出願人は、連続吐出の安定性がノズル23(図7参照)の近傍に付着したミストや、吐出時にノズルからわずかに溢れたインクなどの積み重なりに影響されると考え、ミスト発生の防止や、ノズルから溢れたインクの回収に最適な駆動電圧(駆動波形)を検討した。
【0112】
上述したように、駆動電圧のスリューレートγによってノズル23内のメニスカスの振動モードを変えることができることから、駆動電圧のスリューレートγに着目した。また、ノズル23の液体の粘性抵抗によってもメニスカスの振動モードを変えることができると考えられるので、光硬化性樹脂液体の粘度にも着目した。
【0113】
以下に示すように、安定した連続吐出を可能とする駆動電圧のスリューレートγと光硬化性樹脂の粘度ηとの関係を、評価実験により明らかにした。なお、メニスカスの振動モードの主要な振動周期は、インクジェットヘッド24の共振周期Tcであることから、駆動電圧のスリューレートγはインクジェットヘッド24の共振周期Tcと比較して評価した。
【0114】
以下の評価実験におけるインクジェットヘッド24の共振周期Tcは、以下のように決められる。
【0115】
図10(b)に示すように、γ1=γ2=0.5(t1=t2)として固定し、パルス幅を変化させてインクジェットヘッド24から吐出を行い、吐出速度が最大となるときにパルス幅の2倍を共振周期Tcとした。
【0116】
ここで、パルス幅は、「引き波形102における最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差ΔVの50%のタイミングから、押し波形106における最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差ΔVの50%のタイミングまでの時間間隔」とした。
【0117】
すなわち、引き波形102における最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差ΔVの50%のタイミングから、押し波形106における最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差ΔVの50%のタイミングまでの時間間隔は、の共振周期Tcの1/2となる。
【0118】
(評価実験)
実験装置は、ダイマティックス・マテリアルプリンター、DMP‐2831(富士フイルムダイマティック社製)を使用し、インクジェットヘッドから液滴を連続吐出させ、装置に内蔵されている観察用カメラを用いて液滴の飛翔状態を撮影した。
【0119】
吐出周波数をパラメータとし、連続吐出時間を3分間、インクジェットヘッド温度を変えることで吐出時の光硬化性樹脂液体の粘度ηを5ミリパスカル秒、7.5ミリパスカル秒、10ミリパスカル秒として、連続吐出開始直後の液滴の映像と連続吐出終了直前時の液滴の映像とを比較した。
【0120】
駆動電圧の振幅(図10のΔV)は、液滴の吐出速度が条件ごとに一定になるように調整されている。具体的には、駆動電圧印加から37マイクロ秒後に300マイクロメートルの飛翔距離となるように調整されている。
【0121】
以下に当該評価実験の結果を示す。以下に示す評価結果中、評価「○」は吐出周波数が20キロヘルツ以上で安定した連続吐出がされたことを表している。評価「×」は吐出周波数が5キロヘルツ以下で安定した連続吐出がされ、吐出周波数が5キロヘルツを超えると安定した連続吐出がされなかったことを表している。
【0122】
評価「△」は吐出周波数が20キロヘルツ未満で安定した連続吐出がされ、吐出周波数が20キロヘルツ以上になると安定した連続吐出がされなかったことを表している。
【0123】
図11は、図10の引き波形102の傾きγ1を(1.2/Tc=0.2)から(12/Tc=2.0)まで段階的に変えたときの評価結果を示している。なお、インクジェットヘッド24の共振周期Tcは、6.0マイクロ秒である。また、γ2は、γ2=2/Tcとした。
【0124】
図11に示すように、引き波形102の傾きγ1を大きく(急峻に)していくと、吐出安定性が向上した。一方、低粘度では引き波形102の傾きγ1を急峻にしすぎると、吐出安定性が低下した。したがって、光硬化性樹脂液体の粘度ηが5ミリパスカル秒から10ミリパスカル秒の範囲では、該傾きγ1と該粘度ηとの関係が上記式(1)の関係を満たすことで、安定した高速の連続吐出が可能となる。
【0125】
図12(a)〜(c)は、引き波形102の傾きγ1の違いによるメニスカスの挙動を模式的に図示した説明図である。図12(a)は、メニスカス122Aをノズル23の内部に引き込む前の静定状態であり、ノズル面23Bにミスト123が付着している。
【0126】
図12(b)は、メニスカス122Aがノズル23内に引き込まれた状態であり、引き波形102の傾きγ1が急峻な場合である。かかる状態では、ノズル面23Bのミスト123がノズル23内に引き込まれ、その結果、安定した高速の連続吐出が可能になったと考えられる。
【0127】
図12(c)は、メニスカス122Aがノズル23内に引き込まれた状態であり、引き波形102の傾きγ1が緩やかな場合である。引き波形102の傾きγ1が緩やかな場合は、ノズル23への引き込み力が弱く、ノズル面23Bのミスト123をノズル23内に回収できず、安定した連続吐出ができなかったと考えられる。
【0128】
図13(a)〜(f)は、ノズル23から吐出された液滴を5マイクロ秒間隔で撮影した画像である。図13(a)の上端に付した横系列の目盛りは5マイクロ秒を表しており、縦系列は距離を表している。
【0129】
図13(a)〜(c)の吐出条件は、粘度η=10ミリパスカル秒、押し波形106の傾きγ2=2/Tc(一定)であり、図13(a)は引き波形の傾きγ1が2/Tc(=0.33)の場合、図13(b)は引き波形の傾きγ1が3/Tc(=0.5)の場合、図13(c)は引き波形の傾きγ1が6/Tc(=1.0)の場合である。
【0130】
また、図13(d)〜(f)の吐出条件は、粘度η=5ミリパスカル秒、押し波形106の傾きγ2=2/Tc(=0.33)であり、図13(d)は引き波形102の傾きγ1が2/Tc(=0.33)の場合、図13(e)は引き波形102の傾きγ1が3/Tc(=0.5)の場合、図13(f)は引き波形102の傾きγ1が6/Tc(=1.0)の場合である。
【0131】
図13(a)〜(f)を観察すると、粘度ηが10ミリパスカル秒の場合よりも5ミリパスカル秒の場合の方が吐出量が減少しており、さらに、引き波形102の傾きγ1を急峻にすることで吐出量が減少していることがわかる。
【0132】
したがって、粘度ηが低粘度の場合は、引き波形102の傾きγ1を急峻にしすぎると吐出量が小さくなりすぎてしまい、吐出状態が不安定になったものと考えられる。
【0133】
すなわち、引き波形102の傾きγ1と光硬化性樹脂液体の粘度ηが上記式(1)の関係を満たすことで、安定した高速の連続吐出が実現される。
【0134】
図14は、押し波形106の傾きγ2を(1.2/Tc=0.2)から(12/Tc=2.0)まで段階的に変えたときの評価結果を示している。なお、γ1は、γ1=3/Tcとした。
【0135】
図14に示すように、押し波形106の傾きγ2を小さく(緩やかに)することで、吐出安定性が向上した。また、低粘度では押し波形106の傾きγ2を急峻にしすぎると、吐出安定性が低下した。
【0136】
図15(a)〜(e)は、ノズル23から吐出された液滴を5マイクロ秒間隔で撮影した画像である。図15(a)の上端に付した横系列の目盛りは5マイクロ秒を表しており、縦系列は距離を表している。
【0137】
図15(a)〜(c)の吐出条件は、粘度η=10ミリパスカル秒、引き波形102の傾きγ1=3/Tc(=0.5)であり、図15(a)は押し波形106の傾きγ2が2/Tc(=0.33)の場合、図15(b)は押し波形106の傾きγ2が3/Tc(=0.5)の場合、図15(c)は押し波形106の傾きγ2が6/Tc(=1.0)の場合である。
【0138】
また、図15(d),(e)の吐出条件は、粘度η=5ミリパスカル秒、引き波形102の傾きγ1=3/Tc(=0.5)であり、図15(d)は押し波形106の傾きγ2が2/Tc(=0.33)の場合、図15(e)は押し波形106の傾きγ2が6/Tc(=1.0)の場合である。
【0139】
図15(a)〜(e)を観察すると、押し波形106の傾きγ2を急峻にすると、吐出された液滴(液柱)の後端の先端への追いつきが悪化していることがわかる。すなわち、図15(a)の右端の液柱の長さと図15(c)の右端の液柱の長さとを比べると、図15(a)の右端の液柱の長さの方が短くなっており、液柱の後端の先端への追いつきがよいことがわかる。
【0140】
すなわち、押し波形106の傾きγ2を緩やかにすることで、吐出された液滴の後端の先端への追いつきが良化してミストの発生が防止されたために、安定した連続吐出がされたと考えられる。
【0141】
また、図15(d)の右端の液柱と図15(e)の右端の液柱を比べると、図15(e)の右端の液柱は3つに分離しており、吐出量が減少していることがわかる。したがって、粘度ηが低粘度の場合は、押し波形106の傾きγ2を急峻にしすぎると吐出量が小さくなりすぎてしまい、吐出状態が不安定になったものと考えられる。
【0142】
すなわち、押し波形106の傾きγ2と光硬化性樹脂液体の粘度ηが上記式(2)の関係を満たすことで、安定した高速(20キロヘルツ)の連続吐出が実現される。
【0143】
図16は、引き波形102の傾きγ1に対する押し波形106の傾きγ2(γ2/γ1)を変えたときの評価結果を示している。図11〜15に示すように、引き波形102の傾きγ1は急峻であるとよく、押し波形106の傾きγ2は緩やかであるとよいことがわかっているので、引き波形102の傾きγ1と押し波形106の傾きγ2との関係が、次式(3’)満たすことで、安定した高速の連続吐出が可能となる。
【0144】
(γ2/γ1)≦1 …(3’)
なお、上記式(3’)を変形すると、上記式(3)となる。
【0145】
ここで、引き波形102の傾きγ1の下限値は、図11より、インクジェットヘッド24の共振周波数Tcを用いて次式(6)により表される。
【0146】
(2/Tc)≦γ1 …(6)
また、γ2についても、γ1と同様に次式(7)を満たすことが好ましい。
【0147】
(2/Tc)≦γ2 …(7)
引き波形102の傾きγ1及び押し波形106の傾きγ2を包括して駆動電圧の傾きγと表すと、上記式(1)、(2)、(6)、(7)は、次式(8)のように表すこともできる。
【0148】
(2/Tc)≦γ≦(η/10) …(8)
図10に示す引き波形102及び押し波形106を含み、圧力室32(図7参照)を静定状態から膨張させた後に収縮させて、圧力室32に収容される高粘度の光硬化性樹脂液体の液滴を吐出させる際に、インクジェットヘッド24の共振周波数Tc及び圧力室32に収容される光硬化性樹脂液体の粘度ηとの関係が上記式(8)を満たす傾きγを有する駆動電圧を用いることで、光硬化性樹脂液体の溶媒の揮発や環境温度の変化に起因する光硬化性樹脂液体の粘度変化が生じたとしても、安定した高速の連続吐出が可能である。
【0149】
また、引き波形102の傾きγ1と押し波形106の傾きγ2が、上記式(3)の関係を満たすように構成することで、高速の連続吐出のロバスト性を向上させることが可能となる。
【0150】
なお、上記評価実験では、光硬化性樹脂液体の粘度ηを5ミリパスカル秒から10ミリパスカル秒の範囲で変化させたが、以下の説明のとおり、上記評価実験結果はインクジェット方式により吐出可能な粘度範囲である20ミリパスカル秒以下の液体に対して適用可能である。
【0151】
光硬化性樹脂液体の粘度ηが10ミリパスカル秒を超えると、引き波形によるメニスカス引き込み形状がより緩やかになる。例えば、図12(b)に図示したメニスカス122Aの形状よりも、図12(c)に図示したメニスカス122Aの形状に近くなる。
【0152】
そうすると、吐出される液滴のサイズが小さくならないため、図10(a)に図示した引き波形102の傾きγ1を大きくしても吐出状態が安定する。
【0153】
また、光硬化性樹脂液体の粘度ηが10ミリパスカル秒を超えると、光硬化性樹脂液体の粘度が流路抵抗として機能するため、押し波形106の傾きγ2の違いによるミスト発生の可能性がより低くなる。したがって、押し波形106の傾きγ2をより大きくすることが可能である。
【0154】
〔ノズルの形状との関係〕
次に、インクジェットヘッド24に具備されるノズル23の形状と吐出安定性との関係について詳細に説明する。
【0155】
図17は、ノズル23の形状を示す断面図である。同図に示すように、ノズル23をテーパ形状(略円すい形状)とすることで、光硬化性樹脂液体の液滴25の吐出量のロバスト性を向上させることが可能である。
【0156】
これは、図示のようにノズル23をテーパ形状にすることで、ノズル23とノズル23内の光硬化性樹脂液体との粘性抵抗が減少し、光硬化性樹脂液体を吐出させる際の粘性抵抗の寄与が軽減されたためと考えられる。
【0157】
そこで、集中定数による等価回路モデルを考えると、吐出される液適量は、音響インピーダンスに依存する。ノズル23における音響抵抗R及び音響イナータンスLを算出して、音響インピーダンスへの寄与を比較する。
【0158】
ノズル23の全長をd、ノズル23の吐出側の開口部の断面積をS、ノズル23内部の光硬化性樹脂液体の密度をρとすると、音響抵抗Rは、次式(9)、音響イナータンスLは、次式(10)で表される。
【0159】
R=(8×π×η×d)/S2 …(9)
L=(ρ×d)/S …(10)
図18は、テーパ角度αをパラメータとしたときの、光硬化性樹脂液体の粘度ηに対する音響インピーダンス(R/ωL)の関係を示す。ωは共振角周波数であり、実験的に求められた共振周期Tcから算出され、具体的にはω=2×π/Tc=785×103ラジアン毎秒である。
【0160】
なお、テーパ角度とは、吐出側の開口と液室側の開口とをつなぐ傾斜面の前記吐出側の開口面の垂線に対する傾斜角度である。
【0161】
図18に示すように、テーパ角度αが増加することによって音響抵抗Rの寄与が減り、粘度変化に対する音響インピーダンスの変化が小さくなっていることがわかる。テーパ角度αが20°以上の場合には、光硬化性樹脂液体の粘度ηに対する音響インピーダンス(R/ωL)に差はない。
【0162】
図18に示すように、破線(35°、20°)、点線(30°)により図示した特性は、音響インピーダンスの差がないことがわかる。したがって、テーパ角度は20°以上であることが好ましい。
【0163】
図19は、ノズル23の他の形状を示す斜視図である。ノズルプレート23Aにシリコン基板を適用し、該シリコン基板の(100)面に対して、エッチング液としてKOH(水酸化カリウム)を用いてウエットエッチングを行うと、同図に示すように四角すいの頭部分を切断した形状のノズル23’が形成される。
【0164】
図19に示すノズル23’は、テーパ角度αが35.26°である。このテーパ角度αは、光硬化性樹脂液体の粘度ηに対する音響インピーダンス(R/ωL)が変化しない領域であり、好ましいノズル形状である。
【0165】
シリコン基板に対してウエットエッチングにより形成されたノズルは、上記のようにテーパ角度αが20°以上となり、光硬化性樹脂液体の粘度ηの影響が小さくなる。また、シリコン基板に対してウエットエッチングにより形成されたノズルは、結晶方位によってテーパ角度αが決められるので、テーパ角度αのばらつきがない。
【0166】
したがって、シリコン基板に対してウエットエッチングにより形成されたノズルは、光硬化性樹脂液体の粘度ηのばらつきに対して吐出特性の変化が少なく、ロバスト性が向上する。
【0167】
〔光硬化性樹脂液体の説明〕
次に、本例に示すナノインプリントシステムに適用される光硬化性樹脂液体の一例として、レジスト組成物(以下、単に「レジスト」と記載することがある。)について詳細に説明する。
【0168】
レジスト組成物は、一種以上のフッ素を含む界面活性剤と重合性化合物と、光重合開始剤Iとを少なくとも含有するインプリント用硬化性組成物である。
【0169】
レジスト組成物には、機能として多官能重合性基を有することによる架橋性の発現を狙い、又は炭素密度を高める、又は結合エネルギーの総量を高める、又は硬化後の樹脂中に含まれるO、S、N、等の電気陰性度が高い部位の含有率を抑制する等によりエッチング耐性を向上させる目的で重合性官能基を有する1官能以上のモノマー成分を含んでもよく、更に、必要に応じて、基板とのカップリング剤、揮発性溶剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0170】
基板とのカップリング剤としては、前述の基板の密着処理剤と同様の材料を用いることができる。含有量としては、基板とレジスト層との界面に配置する程度に含有していれば良く、10質量パーセント(質量%)以下であれば良く、5質量パーセント以下がより好ましく、2質量パーセント以下が更により好ましく、0.5質量パーセント以下であることが最も好ましい。
【0171】
レジスト組成物の粘度は、モールド26(図6参照)に形成されたパターンへのレジスト組成物中の固形分(揮発溶剤成分を除いた成分)の入り込みと、モールド26への濡れ広がり性の観点から、固形分の粘度は、1000ミリパスカル秒以下であることが好ましく、100ミリパスカル秒以下であることがより好ましく、20ミリパスカル秒以下であることが更により好ましい。しかしながら、インクジェット方式を利用する場合は、室温またはヘッドで吐出時に温度制御可能であればその温度範囲内にて20ミリパスカル秒以下となることが好ましく、またレジスト組成物の表面張力が20ミリニュートン毎メートル(mN/m)以上40ミリニュートン毎メートル以下の範囲、さらにミリニュートン毎メートル以上、36ミリニュートン毎メートル以下となることが、インクジェットでの吐出安定性を確保する観点で好ましい。
【0172】
(重合性化合物)
レジスト組成物の主成分となる重合性化合物としては、以下の〔数1〕で示される化合物中のフッ素含有率が5%以下であるか、またはフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を実質的に含まない重合性化合物であることとする。
【0173】
【数1】
【0174】
重合性化合物としては、硬化後のパターンの精度及びエッチング耐性等の品質の良好なものであることが好ましい。かかる重合性化合物としては、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含むことが好ましく、多官能単量体は、少なくとも1つの2価又は3価の芳香族基を有するものであることが好ましい。
【0175】
硬化(重合)後に三次元構造を有するレジストの場合は、硬化処理後の形状維持性が良く、モールド剥離時にモールドとレジストとの付着力によって、レジストにかかる応力がレジスト構造体の特定エリアに集中し、パターンが塑性変形することが抑制される。しかしながら、重合後に三次元構造を有する重合体となる多官能モノマーの比率や、重合後に三次元架橋を形成する部位の密度が上昇すると、硬化後のヤング率が大きくなって変形性が低下し、また膜の脆性が悪化するため、モールド剥離時に破断しやすくなってしまうことが懸念される。特にパターンサイズが30ナノメートル幅以下でパターンアスペクト比が2以上のパターンを残膜厚みが10ナノメートル以下となる態様では、ハードディスクパターンや半導体パターンなどの広エリアでの形成を試みた場合に、パターンの剥がれやもげが発生する確率が大きくなると考えられる。
【0176】
従って、多官能単量体は、重合性化合物中に10質量パーセント以上含有されることが好ましく、20質量パーセント以上含有されることがより好ましく、30質量パーセント以上含有されることが更に好ましく、40質量パーセント以上であることが最も好ましいことを見出した。
【0177】
また、次式〔数2〕で表される架橋密度が0.01個/ナノ平方メートル以上10個/ナノ平方メートル以下であることが好ましく、0.1個/ナノ平方メートル以上6個/ナノ平方メートル以下であることがより好ましく、0.5個/ナノ平方メートル以上5.0個/ナノ平方メートル以下であることがもっとも好ましいことを見出した。組成物の架橋密度は、各分子の架橋密度を求め、更に重量平均より求めるか、または組成物の硬化後密度を測定し、Mw、および(Nf−1)についてそれぞれの値を重
量平均した値と次式〔数2〕より求める。
【0178】
【数2】
【0179】
但し、Daは1分子の架橋密度、Dcは硬化後密度、Nfはモノマー1分子中に含まれるアクリレート官能基数、Naはアボガドロ定数、Mwは分子量である。
【0180】
重合性化合物の重合性官能基としては、特に制限されないが、反応性及び安定性が良好であることから、メタクリレート基、アクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
【0181】
ドライエッチング耐性は、レジスト組成物の大西パラメータ及びリングパラメータにより評価することができる。大西パラメータが小さく、また、リングパラメータが大きいものほどドライエッチング耐性に優れる。本発明において、レジスト組成物は、大西パラメータが4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下となるように、また、リングパラメータが0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上となるものを好適としている。
【0182】
上記各パラメータは、レジスト組成物を構成する揮発溶剤成分以外の構成物質について、構造式を元に後述の計算式を用いて算出された材料パラメータ値を、組成重量比を元に組成物全体で平均化した値として求める。従って、レジスト組成物の主成分である重合性化合物についても、レジスト組成物中のその他の成分、及び上記パラメータを考慮して選択することが好ましい。
【0183】
大西パラメータ=(化合物中の総原子数)/{(化合物中の炭素原子数)−(化合物中の酸素原子数)}
リングパラメータ=(環構造を形成する炭素質量)/(化合物の全質量)
重合性化合物としては、以下に示す重合性単量体、及びかかる重合性単量体が数単位重合したオリゴマー等が挙げられる。パターン形成性とエッチング耐性の観点から、重合性単量体(Ax)、及び特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物のうちの少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。
【0184】
(重合性単量体(Ax))
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化1〕に示す一般式(I)で表される。
【0185】
【化1】
【0186】
なお、上記〔化1〕に示す一般式(I)中、Arは置換基を有していてもよい2価または3価の芳香族基を表し、Xは単結合または有機連結基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは2または3を表す。
【0187】
上記の一般式(I)中、Arとしては、n=2のときは2価の芳香族基(すなわちアリーレン基)を表し、n=3のときは3価の芳香族基を表す。アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基などの炭化水素系アリーレン基;インドール、カルバゾールなどが連結基となったヘテロアリーレン基などが挙げられ、好ましくは炭化水素系アリーレン基であり、さらに好ましくは粘度、エッチング耐性の観点からフェニレン基である。アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基が挙げられる。
【0188】
Xの有機連結基としては、鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。その中でも、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。Xとしては、単結合またはアルキレン基であることが特に好ましい。
【0189】
R1は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。R1が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、特に制限はないが、例えば水酸基、ハロゲン原子(フッ素を除く)、アルコキシ基、アシルオキシ基を挙げることができる。nは2または3であり、好ましくは2である。
【0190】
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化2〕に示す一般式(I−a)、又は一般式(I−b)で表される重合性単量体であることが、組成物粘度を低下させる観点から好ましい。
【0191】
【化2】
【0192】
なお、上記の一般式(I‐a)、(I‐b)中、X1、X2は、それぞれ独立に単結合または炭素数1〜3の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0193】
一般式(I‐a)中、前記X1は、単結合またはメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが粘度低減の観点からより好ましい。X2の好ましい範囲は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
【0194】
R1は上記の一般式(I)におけるとR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。重合性単量体(Ax)は25℃において液体であると、添加量を増やした際にも異物の発生が抑制でき好ましい。重合性単量体(Ax)は25℃における粘度が70ミリパスカル秒未満であることがパターン形成性の観点から好ましく、50ミリパスカル秒以下であることがより好ましく、30ミリパスカル秒以下であることが特に好ましい。
【0195】
以下の〔化3〕に好ましい重合性単量体(Ax)の具体例を示す。R1は一般式(I)におけるR1と同義である。R1としては硬化性の観点から、水素原子が好ましい。
【0196】
【化3】
【0197】
これらの中でも、以下の〔化4〕に示す化合物が25℃において液体であり、かつ、低粘度で、さらに良好な硬化性を示し、特に好ましい。
【0198】
【化4】
【0199】
レジスト組成物においては、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、必要に応じて重合性単量体(Ax)と、以下に説明する重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体と、を併用することが好ましい。
【0200】
(他の重合性単量体)
他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
【0201】
これらの他の重合性単量体のうち、インプリント適性とドライエッチング耐性、硬化性、粘度等の観点から、特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物をより好ましく含むことが出来る。更に他に含むことが出来る前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
【0202】
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メ
タ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
【0203】
これらの中で特に、芳香族構造および/または脂環炭化水素構造を有する単官能(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性を改善する観点から好ましい。具体例ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、が特に好ましい。
【0204】
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3‐ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9‐ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0205】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9‐ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0206】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0207】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0208】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0209】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)の具体例として、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などが挙げられる。
【0210】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0211】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR‐6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM‐2400、KRM‐2410、KRM‐2408、KRM‐2490、KRM‐2720、KRM‐2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0212】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry ofheterocyclic compoundsSmallRingHeterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,AnInterscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報明細書、特許第2906245号公報明細書、特許第2926262号公報明細書などの文献を参考にして合成できる。
【0213】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2‐エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール‐1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2‐プロパンジオールジビニルエーテル、1,3‐プロパンジオールジビニルエーテル、1,3‐ブタンジオールジビニルエーテル、1,4‐ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1‐トリス〔4‐(2‐ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0214】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,PolymersPaintColour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0215】
また、他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、β‐メチルスチレン、p‐メチル−β‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、p‐メトキシ‐β‐メチルスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0216】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0217】
他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1‐ドデシル‐1‐プロペニルエーテル、1‐ドデシル‐1‐ブテニルエーテル、1‐ブテノキシメチル‐2‐ノルボルネン、1‐4‐ジ(1‐ブテノキシ)ブタン、1,10‐ジ(1‐ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1‐ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1‐ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1‐ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0218】
(含フッ素界面活性剤)
本例に示すインプリントシステムでは、含フッ素界面活性剤は、レジストパターンの一部となるため、良好なパターン形成性、硬化後のモールド離型性及びエッチング耐性の良好なレジスト特性を有するものであることが好ましい。
【0219】
含フッ素界面活性剤の含有量は、レジスト組成物中、例えば、0.001質量パーセント以上5質量パーセント以下であり、好ましくは0.002質量パーセント以上4質量パーセント以下であり、さらに好ましくは、0.005質量パーセント以上3質量パーセント以下である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001質量パーセント以上5質量パーセント以下の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化や、インプリント後のエッチング工程におけるエッチング適性の劣化を招きにくい。
【0220】
(重合開始剤I)
重合開始剤Iとしては、レジスト組成物を硬化させる際に用いる光L1により活性化してレジスト組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始する活性種を発生するものであれば特に制限されない。重合開始剤Iとしては、ラジカル重合開始剤が好ましい。また、本発明において、重合開始剤Iは複数種を併用してもよい。
【0221】
重合開始剤Iとしては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましく、例えば、特開平2008‐105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0222】
重合開始剤Iの含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01質量パーセント以上15質量パーセント以下であり、好ましくは0.1質量パーセント以上12質量パーセント以下であり、さらに好ましくは0.2質量パーセント以上7質量パーセント以下である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0223】
光重合開始剤の含有量が0.01質量パーセント以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量パーセント以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0224】
これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤の添加量が種々検討されてきたが、インプリント用等の光インプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、開始剤がラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、レジスト組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0225】
本例に示すインプリントシステムに適用されるレジストに含有するラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィン系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008‐105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0226】
なお、光L1には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波の他に、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248ナノメートルエキシマレーザー、193ナノメートルエキシマレーザー、172ナノメートルエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0227】
光重合開始剤Iは、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、レジスト組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させてしまったりするなどの問題を生じる。
【0228】
レジスト組成物では、含まれる重合性単量体がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤Iが光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0229】
(その他成分)
既に述べたように、本例に示すインプリントシステムに適用されるレジスト組成物は、上述の重合性化合物、含フッ素界面活性剤、及び光重合開始剤Iの他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。以下にその他の成分について概要を説明する。
【0230】
(酸化防止剤)
レジスト組成物では、公知の酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01質量パーセント以上10質量パーセント以下であり、好ましくは0.2質量パーセント以上5質量パーセント以下である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。
【0231】
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0232】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0233】
(重合禁止剤)
レジスト組成物は、重合禁止剤を少量含有することが好ましい。重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001質量パーセント以上1質量パーセント以下であり、より好ましくは0.005質量パーセント以上0.5質量パーセント以下、さらに好ましくは0.008質量パーセント以上0.05質量パーセント以下である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。
【0234】
(溶剤)
レジスト組成物は、必要に応じて、種々の溶剤を含むことができる。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜280℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
【0235】
レジスト組成物中の溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中0〜99質量パーセントが好ましく、0〜97質量パーセントがさらに好ましい。特に膜厚500ナノメートル以下のパターンを形成する際には20質量パーセント以上99質量パーセント以下が好ましく、40質量パーセント以上9質量パーセント以下がさらに好ましく、70質量パーセント以上98質量パーセント以下が特に好ましい。
【0236】
(ポリマー成分)
レジスト組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量パーセントが好ましく、より好ましくは0〜20質量パーセント、さらに好ましくは0〜10質量パーセント、最も好ましくは0〜5質量パーセントである。
【0237】
レジスト組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点から、ポリマー成分を含有していてもよい。かかるポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000以上100000以下が好ましく、5000以上50000以下がさらに好ましい。
【0238】
ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量パーセントが好ましく、より好ましくは0〜20質量パーセント、さらに好ましくは0〜10質量パーセント、最も好ましくは2質量パーセント以下である。パターン形成性の観点から、レジスト組成物において、溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量パーセント以下である方が好ましい。樹脂成分はできる限り少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0239】
レジスト組成物には、上記した成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0240】
レジスト組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、各成分を混合した後、例えば、孔径0.003マイクロメートル(μm)〜5.0マイクロメートルのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。光インプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0241】
かかるレジスト組成物は、インクジェット方式による微小液滴化が可能な範囲の粘度に調整される。インクジェット方式による吐出可能な粘度の範囲は、5ミリパスカル秒から20ミリパスカル秒であり、好ましくは8ミリパスカル秒から15ミリパスカル秒である。このときの溶媒量は、10重量パーセント以下とされる。また、経時により溶媒が揮発した場合の粘度上昇は、10ミリパスカル秒以下とされる。
【0242】
上記のようにインクジェット方式に適した粘度に調整されたレジスト組成物の表面張力は、20ミリニュートン毎メートル以上40ミリニュートン毎メートル以下であり、好ましくは25ミリニュートン毎メートル以上35ミリニュートン毎メートル以下である。
【0243】
上記実施形態では、光硬化性樹脂液体塗布部12と、パターン転写部14と備えたナノインプリントシステム10を例示したが、光硬化性樹脂液体塗布部12及びパターン転写部14を個別の装置として構成する態様も可能である。
【0244】
本発明のパターン転写装置及びパターン形成方法については、以下のような製造の際に好適に用いることができる。
【0245】
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。
【0246】
第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro-Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。
【0247】
第三の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。
【0248】
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶、反射防止構造体(モスアイ)などの永久膜形成用途においても有用である。
【0249】
すなわち、本発明に係るナノインプリントシステム(装置)10として、光硬化性樹脂液体吐出装置と、パターン転写装置と、を備える構成も可能である。
【0250】
以上、本発明に係る機能性液体吐出装置及び機能性液体吐出方法並びにナノインプリントシステムの具体例として、ナノインプリントシステム(装置)について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
【0251】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0252】
(発明1):5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ1≦(η/10)を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式γ2≦γ1を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、を備えたことを特徴とする機能性液体吐出装置。
【0253】
本発明によれば、引き波形要素及び押し波形要素を有する駆動電圧を用いて圧電素子を引き押し駆動させて、5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の高粘度の機能性液体を吐出させる液体塗布装置において、液体吐出ヘッドの共振周期Tc及び機能性液の粘度ηとの関係が(2/Tc)<γ1<(η/10)を満たす引き波形要素の傾きγ1を有するとともに、γ2≦γ1を満たす押し波形要素の傾きγ2を有する駆動電圧を用いることで、溶媒の揮発や温度変化等により機能性液体の粘度変化が生じたとしても、高周波で安定した連続吐出が可能となる。
【0254】
本発明における「機能性を有する液体」とは、基板上に微細パターンを形成し得る機能性材料の成分を含有する液体であり、その一例としてレジスト液などの光硬化樹脂液体や、加熱により硬化する熱硬化樹脂液体などが挙げられる。
【0255】
液体吐出ヘッドの共振周期Tcの単位をマイクロ秒とし、引き波形要素の傾きγ1及び押波形要素の傾きγ2の単位をマイクロ秒分の1、機能性液体の粘度ηの単位をミリパスカル秒とすると、機能性液体の粘度ηの項の係数1/10は、「ナノパスカル秒二乗分の1」の単位で表される。
【0256】
(発明2):発明1に記載の機能性液体吐出装置において、前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ2≦(η/10)を満たすことを特徴とする。
【0257】
(発明3):発明1又は2に記載の機能性液体吐出装置において、前記駆動電圧生成手段は、20キロヘルツ以下の周波数を有する駆動電圧を生成することを特徴とする。
【0258】
かかる態様によれば、吐出周波数が20キロヘルツの高周波の連続吐出が可能である。
【0259】
(発明4):発明1から3のいずれかに記載の機能性液体吐出装置において、前記機能性液体は、前記溶媒が揮発した状態において、前記溶媒が揮発する前の状態に対する粘度の上昇が10ミリパスカル秒以下であることを特徴とする。
【0260】
かかる態様によれば、溶媒が揮発して粘度が上昇した状態においても、高周波の安定した連続吐出が可能である。
【0261】
(発明5):発明1から4のいずれかに記載の機能性液体吐出装置において、前記ノズルは、吐出側の開口と液室側の開口とをつなぐ傾斜面の前記吐出側の開口面の垂線に対する傾斜角度が20度以上であることを特徴とする。
【0262】
かかる態様によれば、ノズルの吐出側の開口と液室側の開口とをつなぐ傾斜面の前記吐出側の開口面の垂線に対する傾斜角度である「ノズルのテーパ角度」が20°以上になると、液体吐出ヘッドの音響インピーダンスが略一定となり、液体吐出におけるロバスト性が向上する。
【0263】
(発明6):発明1から5のいずれかに記載の機能性液体吐出装置において、前記ノズルは、シリコン基板の(100)に対する異方性エッチングにより形成され、略正方形形状の吐出側の開口及び略正方形形状の前記圧力室側の開口を有すことを特徴とする。
【0264】
かかる態様において、シリコン基板に異方性エッチング処理が施されて形成された略正方形形状のノズルが適用される液体吐出ヘッドにおいても、高周波の安定した連続吐出が可能である。
【0265】
(発明7):発明1から6のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置において、前記ノズルは、吐出側の開口の直径D1と、液室側の開口の直径D2との関係が、次式D1>2×D2を満たす構造を有することを特徴とする。
【0266】
かかる態様において、ノズルの形状をテーパ形状(略円すい形状)とする形態がありうる。
【0267】
(発明8):5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと前記基板とを相対的に移動させる相対移動工程と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ1≦(η/10)を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式γ2≦γ1を満たす駆動電圧が生成される駆動電圧生成工程と、前記生成された駆動電圧を前記圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる機能性液体塗布工程と、を含むことを特徴とする機能性液体吐出方法。
【0268】
本発明において、駆動電圧生成工程は、20キロヘルツ以下の周波数を有する駆動電圧を生成する態様がありうる。
【0269】
かかる態様によれば、吐出周波数が20キロヘルツの高周波の連続吐出が可能である。
【0270】
(発明9):発明8に記載の機能性液体吐出方法において、前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ2≦(η/10)を満たすことを特徴とする。
【0271】
(発明10):5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ1≦(η/10)を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式γ2≦γ1を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、前記基板の機能性液体が塗布された面に対して、所定の凹凸パターンが形成された型の前記凹凸パターンを転写する転写手段と、を備えたことを特徴とするインプリントシステム。
【0272】
本発明によれば、溶媒の揮発や温度変化等により機能性液体の粘度変化が生じたとしても、高周波で安定した連続吐出がされるので、残渣ばらつき等のない好ましい機能性液体による層が形成されうる。
【0273】
本発明は、サブミクロンの微細パターンを形成するナノインプリントリソグラフィに特に好適である。また、本発明おける各手段を備えたインプリント装置とすることも可能である。
【0274】
(発明11):発明10に記載のインプリントシステムにおいて、前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式(2/Tc)≦γ2≦(η/10)を満たすことを特徴とする。
【0275】
(発明12):発明10又は11に記載のインプリントシステムにおいて、前記機能性液体は、エネルギーの付与によって硬化反応を発現させる成分を含むことを特徴とする。
【0276】
かかる態様における機能性液体の一例として、光エネルギーの付与(光の照射)により硬化反応を発現させる光硬化型液体や、熱エネルギーの付与(加熱)により硬化反応を発現させる熱硬化型液体が挙げられる。
【0277】
(発明13):発明10から12のいずれかに記載のインプリントシステムにおいて、前記機能性液体は、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び溶媒を含み、前記転写手段は、前記パターンが転写された機能性液体に対して光を照射させて硬化させることを特徴とする。
【0278】
かかる態様において、光重合性モノマー、光重合開始剤が反応しうる様々な波長の光を適用しうる。例えば、紫外線、可視光線などが挙げられる。
【0279】
(発明14):発明10から13のいずれかに記載のインプリントシステムにおいて、前記機能性液体は、フッ素モノマーを含有することを特徴とする。
【0280】
かかる態様によれば、型との濡れ性を制御することができ、型に形成されるパターン内へ機能性液体を充填することが容易になる。
【0281】
また、機能性液体を、液体吐出ヘッドの吐出性が良好となる表面張力に調整することができる。
【0282】
(発明15):発明10から14のいずれかに記載のインプリントシステムにおいて、前記転写手段は、前記型の凹凸パターンが形成されている面を前記基板の液体が塗布された面に押し当てる押圧手段と、前記型と前記基板との間の液体を硬化させる硬化手段と、前記型と前記基板とを剥離させる剥離手段と、を備えたことを特徴とする。
【0283】
かかる態様によれば、型の凹凸パターンが転写されたマスクパターンが形成される。
【0284】
(発明16):発明10から14のいずれか1項に記載のインプリントシステムにおいて、前記転写手段による転写の後に、前記型を前記基板から剥離させる剥離手段と、凹凸パターンが転写され硬化させた液体から成る膜をマスクとして、前記型の凹凸パターンに対応するパターンを前記基板に形成するパターン形成手段と、前記膜を除去する除去手段と、を備えたことを特徴とする。
【0285】
かかる態様によれば、好ましいサブミクロンの微細パターンが形成される。
【符号の説明】
【0286】
10…ナノインプリントシステム(装置)、12…光硬化性樹脂液体塗布部、14…パターン転写部、20…基板、22…搬送部、23…ノズル、24,24’…インクジェットヘッド、25…光硬化性液体(膜)、26…モールド、28…紫外線照射装置。32…圧力室、38…圧電素子、52…システムコントローラ、60…塗布制御部、61…転写制御部、84…駆動波形生成部、100…駆動電圧(波形)、102…引き波形、106…押し波形
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、
前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、
前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ1≦(η/10)
を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式
γ2≦γ1
を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、
前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、
を備えたことを特徴とする機能性液体吐出装置。
【請求項2】
前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ2≦(η/10)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項3】
前記駆動電圧生成手段は、20キロヘルツ以下の周波数を有する駆動電圧を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項4】
前記機能性液体は、前記溶媒が揮発した状態において、前記溶媒が揮発する前の状態に対する粘度の上昇が10ミリパスカル秒以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項5】
前記ノズルは、吐出側の開口と液室側の開口とをつなぐ傾斜面の前記吐出側の開口面の垂線に対する傾斜角度が20度以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルは、シリコン基板の(100)に対する異方性エッチングにより形成され、略正方形形状の吐出側の開口及び略正方形形状の前記圧力室側の開口を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項7】
前記ノズルは、吐出側の開口の直径D1と、液室側の開口の直径D2との関係が、次式
D1>2×D2
を満たす構造を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項8】
5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと前記基板とを相対的に移動させる相対移動工程と、
前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間
あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ1≦(η/10)
を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式
γ2≦γ1
を満たす駆動電圧が生成される駆動電圧生成工程と、
前記生成された駆動電圧を前記圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる機能性液体塗布工程と、
を含むことを特徴とする機能性液体吐出方法。
【請求項9】
前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ2≦(η/10)
を満たすことを特徴とする請求項8に記載の機能性液体吐出方法。
【請求項10】
5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、
前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、
前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ1≦(η/10)
を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式
γ2≦γ1
を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、
前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、
前記基板の機能性液体が塗布された面に対して、所定の凹凸パターンが形成された型の前記凹凸パターンを転写する転写手段と、
を備えたことを特徴とするインプリントシステム。
【請求項11】
前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ2≦(η/10)
を満たすことを特徴とする請求項10に記載のインプリントシステム。
【請求項12】
前記機能性液体は、エネルギーの付与によって硬化反応を発現させる成分を含むことを特徴とする請求項10又は11に記載のインプリントシステム。
【請求項13】
前記機能性液体は、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び溶媒を含み、
前記転写手段は、前記パターンが転写された機能性液体に対して光を照射させて硬化させることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載のインプリントシステム。
【請求項14】
前記機能性液体は、フッ素モノマーを含有することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載のインプリントシステム。
【請求項15】
前記転写手段は、前記型の凹凸パターンが形成されている面を前記基板の液体が塗布された面に押し当てる押圧手段と、
前記型と前記基板との間の液体を硬化させる硬化手段と、
前記型と前記基板とを剥離させる剥離手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載のインプリントシステム。
【請求項16】
前記転写手段による転写の後に、前記型を前記基板から剥離させる剥離手段と、
凹凸パターンが転写され硬化させた液体から成る膜をマスクとして、前記型の凹凸パターンに対応するパターンを前記基板に形成するパターン形成手段と、
前記膜を除去する除去手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載のインプリントシステム。
【請求項1】
5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、
前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、
前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ1≦(η/10)
を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式
γ2≦γ1
を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、
前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、
を備えたことを特徴とする機能性液体吐出装置。
【請求項2】
前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ2≦(η/10)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項3】
前記駆動電圧生成手段は、20キロヘルツ以下の周波数を有する駆動電圧を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項4】
前記機能性液体は、前記溶媒が揮発した状態において、前記溶媒が揮発する前の状態に対する粘度の上昇が10ミリパスカル秒以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項5】
前記ノズルは、吐出側の開口と液室側の開口とをつなぐ傾斜面の前記吐出側の開口面の垂線に対する傾斜角度が20度以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルは、シリコン基板の(100)に対する異方性エッチングにより形成され、略正方形形状の吐出側の開口及び略正方形形状の前記圧力室側の開口を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項7】
前記ノズルは、吐出側の開口の直径D1と、液室側の開口の直径D2との関係が、次式
D1>2×D2
を満たす構造を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置。
【請求項8】
5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと前記基板とを相対的に移動させる相対移動工程と、
前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間
あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ1≦(η/10)
を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式
γ2≦γ1
を満たす駆動電圧が生成される駆動電圧生成工程と、
前記生成された駆動電圧を前記圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる機能性液体塗布工程と、
を含むことを特徴とする機能性液体吐出方法。
【請求項9】
前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ2≦(η/10)
を満たすことを特徴とする請求項8に記載の機能性液体吐出方法。
【請求項10】
5ミリパスカル秒以上20ミリパスカル秒以下の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、
前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、
前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有し、前記引き波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ1と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ1≦(η/10)
を満たすとともに、前記押し波形要素における最大電圧を1としたときの単位時間あたりの電圧変化を表す傾きγ2と、前記引き波形要素の傾きγ1と、の関係が次式
γ2≦γ1
を満たす駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、
前記生成された駆動電圧を圧電素子に印加して、前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる吐出ヘッド駆動手段と、
前記基板の機能性液体が塗布された面に対して、所定の凹凸パターンが形成された型の前記凹凸パターンを転写する転写手段と、
を備えたことを特徴とするインプリントシステム。
【請求項11】
前記押し波形要素の傾きγ2と、前記機能性液体の粘度ηと、前記液体吐出ヘッドの共振周期Tcと、の関係が、次式
(2/Tc)≦γ2≦(η/10)
を満たすことを特徴とする請求項10に記載のインプリントシステム。
【請求項12】
前記機能性液体は、エネルギーの付与によって硬化反応を発現させる成分を含むことを特徴とする請求項10又は11に記載のインプリントシステム。
【請求項13】
前記機能性液体は、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び溶媒を含み、
前記転写手段は、前記パターンが転写された機能性液体に対して光を照射させて硬化させることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載のインプリントシステム。
【請求項14】
前記機能性液体は、フッ素モノマーを含有することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載のインプリントシステム。
【請求項15】
前記転写手段は、前記型の凹凸パターンが形成されている面を前記基板の液体が塗布された面に押し当てる押圧手段と、
前記型と前記基板との間の液体を硬化させる硬化手段と、
前記型と前記基板とを剥離させる剥離手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載のインプリントシステム。
【請求項16】
前記転写手段による転写の後に、前記型を前記基板から剥離させる剥離手段と、
凹凸パターンが転写され硬化させた液体から成る膜をマスクとして、前記型の凹凸パターンに対応するパターンを前記基板に形成するパターン形成手段と、
前記膜を除去する除去手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載のインプリントシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図13】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図13】
【図15】
【公開番号】特開2012−216799(P2012−216799A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65608(P2012−65608)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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