説明

機能性粒子、充填剤、電子部品用樹脂組成物、電子部品および半導体装置

【課題】基材粒子上に樹脂および硬化剤を所定の配合で安定的に保持する。
【解決手段】機能性粒子110は、無機粒子101、無機粒子101を被覆する第一の層103および第一の層103を被覆する第二の層105を含む。第一の層103および第二の層105のうち一方が樹脂を含み、他方が当該樹脂の硬化剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性粒子、充填剤およびこれを用いた電子部品用樹脂組成物、電子部品ならびに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子、樹脂およびその硬化剤を含む組成物においては、組成物中に各成分を所定の割合で均一に配合することが重要となる。こうした組成物に関する技術として、従来、特許文献1に記載のものがある。同文献には、エポキシ樹脂、硬化剤、無機質充填剤および硬化触媒を必須成分とするエポキシ樹脂組成物を製造する際に、無機質充填剤表面をエポキシ樹脂および硬化剤により表面処理することが記載されている。無機質充填剤を予め表面処理することにより、無機質充填剤の表面が樹脂で均一に被覆されるため、半導体装置を封止する際のボイド発生が非常に少なく、成形性に優れるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−27361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記文献記載の技術について本発明者が検討したところ、以下の点で、改善の余地があった。
すなわち、特許文献1においては、溶媒中に無機質充填剤、樹脂および硬化剤を共存させて表面処理を行っており、樹脂および硬化剤の混合物が粒子表面を被覆していた。このため、一つ一つの粒子について見ると、粒子間で被覆に含まれる成分の配合にばらつきが生じていた。また、樹脂および硬化剤の混合物が粒子表面を被覆しているため、保存中に樹脂と硬化剤とが反応して、組成物中の各成分の配合が所定の値から変動する懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
無機材料により構成された基材粒子と、
前記基材粒子を被覆する第一の層と、
前記第一の層を被覆する第二の層と、
を含み、
前記第一および第二の層のうち一方が樹脂を含み、他方が前記樹脂の硬化剤を含む、機能性粒子が提供される。
【0006】
また、本発明によれば、前記本発明における機能性粒子からなる、充填剤が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明における充填剤を含む、電子部品用樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明における電子部品用樹脂組成物を成形させてなる、電子部品が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明における電子部品用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる、半導体装置が提供される。
【0007】
本発明においては、機能性粒子の基材粒子を被覆する層として、樹脂を含む層と当該樹脂の硬化剤を含む層とが設けられている。樹脂および硬化剤をそれぞれ別の層として設けることにより、樹脂および硬化剤を粒子上に共存させる場合にも、粒子間で均質な被覆を有する構成とすることができる。また、樹脂と硬化剤とが反応することによる配合の変動を抑制できるため、樹脂および硬化剤を粒子上に共存させる場合にも、各成分が粒子上に所定の配合で安定的に保持される。
【0008】
なお、本明細書において、第一および第二の層が、それぞれ、基材粒子および第一の層を被覆するとは、基材粒子および第一の層の表面の少なくとも一部の領域を覆っていることをいう。このため、表面の全面を覆っている態様には限られず、たとえば特定の断面から見たときに表面全面を覆っている態様や、表面の特定の領域を覆っている態様も含む。粒子間の組成のばらつきをさらに効果的に抑制する観点からは、少なくとも特定の断面から見たときに表面全面を覆っていることが好ましく、表面全面を覆っていることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無機材料により構成された基材粒子を覆う層として樹脂を含む層および当該樹脂の硬化剤を含む層を設けることにより、基材粒子上に樹脂および硬化剤を所定の配合で安定的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態における機能性粒子の構成を示す断面図である。
【図2】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図3】実施例における機能性粒子の観察結果を示す断面図である。
【図4】実施例における機能性粒子の観察結果を示す断面図である。
【図5】実施例における機能性粒子の観察結果を示す断面図である。
【図6】実施例における機能性粒子の観察結果を示す断面図である。
【図7】実施例における機能性粒子の観察結果を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明による半導体装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
(第一の実施形態)
図1(a)は、本実施形態における機能性粒子の構成を示す断面図である。図1(a)に示した機能性粒子100は、無機材料により構成された基材粒子(無機粒子101)、無機粒子101を被覆する第一の層103および第一の層103を被覆する第二の層105を含む。
第一の層103および第二の層105のうち一方が樹脂を含み、他方が当該樹脂の硬化剤を含む。
【0013】
無機粒子101の材料として、たとえば、溶融破砕シリカ粉末、溶融球状シリカ粉末、結晶シリカ粉末、2次凝集シリカ粉末等のシリカ粉末;アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維が挙げられる。
【0014】
このうち、電子部品、半導体装置の実装信頼性の観点からは、無機粒子101をシリカ、アルミナおよびカーボンブラックからなる群から選択される一または二以上の無機材料により構成された球状粒子とすることが好ましい。
また、機械的強度の観点からは、無機粒子101をガラス繊維等の繊維材料により構成された繊維状粒子とすることが好ましい。また、無機粒子101は、ガラス不織布等の不織布を粒子状に加工して得られる粒子であってもよい。
【0015】
また、無機粒子101の粒子形状に特に制限はなく、たとえば真球状等の球状、繊維状、針状等とすることができる。無機粒子101が球状粒子である場合の平均粒子径は、粒子同士の凝集を抑制する観点からは、たとえば1μm以上、好ましくは10μm以上とする。また、平滑性の観点からは、無機粒子101の粒子径をたとえば50μm以下、好ましくは20μm以下とする。
【0016】
なお、無機粒子101として、粒子の大きさが異なるものを組み合わせて用いることもできる。たとえば無機粒子101を電子部品の封止剤に用いる充填剤とする場合、粒子の大きさが異なるものを組み合わせることにより、流動性を高めることができるため、製造安定性および取り扱い容易性をさらに向上することができる。
【0017】
図1(a)の例では、第一の層103は無機粒子101の表面に接し無機粒子101の表面全面を覆っている。また、第二の層105は、第一の層103に接し第一の層103の表面全面を覆っている。また、第一の層103および第二の層105は、断面視において均一な厚みで設けられている。
【0018】
なお、図1(a)では、無機粒子101と第一の層103との界面、および第一の層103と第二の層105との界面が、いずれも平滑である例を示したが、これらの界面が凹凸を有していてもよい。
【0019】
第一の層103および第二の層105のうち、樹脂を含む層の厚さは、硬化剤と反応を生じるために必要な配合量であれば特に制限は無いが、たとえば5nm以上、好ましくは50nm以上とし、生産性をさらに向上させる観点からは、たとえば50μm以下、好ましくは5μm以下とする。
また、第一の層103および第二の層105のうち、硬化剤を含む層の厚さは、樹脂と反応を生じるために必要な配合量であれば特に制限は無いが、たとえば5nm以上、好ましくは50nm以上とし、生産性をさらに向上させる観点からは、たとえば50μm以下、好ましくは5μm以下とする。
【0020】
次に、樹脂および当該樹脂の硬化剤について説明する。
樹脂および硬化剤は、それぞれ、第一の層103および第二の層105の一方を構成する。機能性粒子100は、以下(i)および(ii)のいずれの構成であってもよい。
(i)無機粒子101、樹脂を含む第一の層103および硬化剤を含む第二の層105が粒子内部から外部に向かってこの順に積層した構成
(ii)無機粒子101、硬化剤を含む第一の層103および樹脂を含む第二の層105が粒子内部から外部に向かってこの順に積層した構成
また、第一の層103および第二の層105は、樹脂または硬化剤の以外の成分を含んでいてもよい。
【0021】
樹脂として、たとえば硬化性樹脂を用いることができる。ここで硬化性樹脂としては、以下のような熱硬化性樹脂が挙げられる。たとえば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂等が挙げられる。
【0022】
フェノール樹脂としてはたとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
エポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。
エポキシ樹脂として、たとえば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;
フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;
トリフェノールメタン型エポキシ樹脂およびアルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;
ジシクロベンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;
トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
無機粒子101を電子部品の封止剤に用いる充填剤とする場合、難燃性を向上させる観点からは、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0025】
シアネートエステル樹脂としてはたとえば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させたものや、これを加熱等の方法でプレポリマー化したもの等を用いることができる。具体的な形態としてはたとえば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
硬化剤は、樹脂の種類に応じて適宜選択される。
たとえば、第一の層103または第二の層105がエポキシ樹脂を含む場合、これに対する硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであればよく、重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤などを適用することができる。
重付加型の硬化剤としてはたとえば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物、ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物、イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物、カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
触媒型の硬化剤としては、たとえば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;
2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;および
BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
縮合型の硬化剤としては、たとえば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;
メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;および
メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0027】
次に、機能性粒子100の製造方法を説明する。
機能性粒子100は、たとえば、無機粒子101の表面に第一の層103を形成する工程、および第一の層103の表面に第二の層105を形成する工程を順次行うことにより得られる。
具体的には、無機粒子101と、第一の層103を構成する材料の原料となる粉体とを水平円筒状の混合容器に投入し、容器内の攪拌翼を回転させて得られる。攪拌翼を高速回転させることにより、個々の無機粒子101および粉体原料に衝撃、圧縮力および剪断力が作用して、無機粒子101表面に粉体が複合化され、第一の層103が形成される。その後、第一の層103が形成された粒子と第二の層105の原料となる粉体とを用いて上述した処理を行うことにより、第一の層103上に第二の層105が形成される。攪拌翼の回転速度は、さらに具体的には、周速3〜50m/s、期待する処理効果の観点からは、7m/s以上とし、好ましくは10m/sとする。また、処理時の発熱抑制および過粉砕防止の観点からは、攪拌翼の回転速度をたとえば35m/s以下、好ましくは25m/s以下とする。
混合中の容器内の温度は、原料に応じて設定されるが、たとえば5℃以上50℃以下とし、有機物の溶融防止の観点からは、40℃以下、好ましくは25℃以下とする。ただし、容器を加温し、有機物を溶融させた状態で処理することも可能である。
混合時間は、原料に応じて設定されるが、たとえば30秒以上30分以下とし、期待する処理効果の観点からは1分以上、好ましくは3分以上とし、生産性の観点からは20分以下、好ましくは10分以下とする。
【0028】
なお、得られた機能性粒子100の層構造の分析は、走査型電子顕微鏡、ラマン分光法等によりおこなうことができる。
【0029】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
機能性粒子100においては、無機粒子101を第一の層103および第二の層105がこの順で被覆し、第一の層103の一方が樹脂を含み、他方が上記樹脂に対する硬化剤を含む。このため、一つ一つの無機粒子101の配合組成を均質化することができる。
また、無機粒子101は、樹脂と硬化剤とが異なる層に含まれるため、これらが同じ層に含まれる構成に対し、保存中の反応による組成変化を抑制することができる。
【0030】
このように、本実施形態によれば、粒子間で配合組成が均質化された機能性粒子100を高い歩留まりで安定的に得ることができる。また粒子上に樹脂および硬化剤を保持していながら保存安定性に優れた機能性粒子100を得ることができる。
【0031】
(第二の実施形態)
図1(a)に示した粒子において、第一の層103と第二の層105との間にこれらを離隔する介在層が設けられていてもよい。以下、図1(b)を参照して説明する。図1(b)に示した機能性粒子110の基本構成は機能性粒子100(図1(a))と同様であるが、介在層107をさらに有する点が異なる。介在層107により、第一の層103および第二の層105が離隔している。介在層107を設けることにより、第一の層103と第二の層105とが接触しないようにすることができるため、これらの層中に含まれる樹脂と硬化剤との反応をさらに確実に抑制することができる。このため、樹脂と硬化剤とが反応することによる組成の変化をさらに確実に抑制し、より一層保存安定性に優れた構成とすることができる。
【0032】
介在層107の構成材料に特に制限はないが、たとえば、シリカ、アルミナおよびカーボンブラックからなる群から選択される一または二以上の無機材料を含んでもよい。こうすることにより、半導体装置としたときの線膨張率を低下させることができるため、さらに信頼性に優れる。
また、介在層107がワックス状物質を主材としていてもよい。ワックス状物質として、具体的には、カルナバワックス等の天然ワックスおよびポリエチレンワックス等の合成ワックスが挙げられる。介在層107がワックス状物質からなる構成とすることにより、上述の処理により、ワックス状物質が処理中に溶融し、第一の層103の表面全体を被覆しやすくなるため、第一の層103と第二の層105の接触を抑制できる。
【0033】
(第三の実施形態)
図1(a)または図1(b)に示した粒子において、無機粒子101と第一の層103との間に、さらに第三の層を設けてもよい。図1(c)は、第三の層109を有する粒子の構成を示す断面図である。図1(c)に示した機能性粒子120の基本構成は、図1(b)に示した機能性粒子110と同様であるが、さらに無機粒子101に接して第三の層109が設けられている。
【0034】
第三の層109の材料に特に制限はないが、たとえば無機粒子101と異なる無機材料を主材としてもよい。
無機粒子101と異なる無機材料として、たとえば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;
タルク;
およびクレーが挙げられる。
また、第三の層109は、有機材料を主材としてもよい。有機材料として、たとえば、カップリング剤としてシリコーン系の樹脂、カルナバワックスなどのワックス類等が挙げられる。
【0035】
また、第三の層109は、たとえば難燃剤により構成される。難燃剤として、上記金属水酸化物の他、リン系、シリコーン系、有機金属塩系の物質を用いてもよい。
【0036】
また、無機粒子101と第三の層109の主材との組み合わせの具体例として、以下のものが挙げられる。
無機粒子101:シリカ、第三の層109:金属水酸化物の組み合わせ、および
無機粒子101:アルミナ、第三の層109:シリコーンの組み合わせ。
【0037】
以上の実施形態に記載の機能性粒子は、いずれも、たとえば充填剤として好適に用いられる。また、本発明における充填剤は、上述した本発明における機能性粒子からなる。
【0038】
充填剤の構成として、たとえば以下の例が挙げられる。
無機粒子101:球状シリカ、第一の層103:エポキシ樹脂に対する硬化剤、第二の層105:エポキシ樹脂。この構成は、たとえば半導体封止材料等の電子部品用途に好適である。
無機粒子101:ガラス繊維、第一の層103:ヘキサメチレンテトラミン等のフェノール樹脂に対する硬化剤、第二の層105:ノボラック型フェノール樹脂等のフェノール樹脂。この構成は、たとえば車載用成形材料として好適である。
無機粒子101:結晶シリカおよび水酸化アルミニウム、第一の層103:エポキシ樹脂に対する硬化剤、第二の層105:エポキシ樹脂。この構成は、たとえば電子部品用絶縁材料に好適である。
【0039】
(第四の実施形態)
本実施形態は、以上の実施形態に記載の機能性粒子からなる充填剤を含む樹脂組成物に関する。
樹脂組成物は、たとえば母剤中に以上の実施形態に記載の充填剤が分散したものである。組成物中に含まれる充填剤において、第一の層103および第二の層105の一部が組成変化していたり、消失していてもよい。
【0040】
樹脂組成物中には、充填剤以外に、用途に応じて種々の成分を配合することができる。具体的には、組成物中に硬化性樹脂、本発明における機能性粒子以外の充填剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸およびその金属塩類もしくはパラフィン等の離型材、酸化ビスマス等水和物等の無機イオン交換体、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
【0041】
組成物の形状は、組成物を成形する際の成形方法に応じて選択することができる。
たとえば本実施形態の樹脂組成物は、圧縮成形用の顆粒であってもよい。顆粒状とすることにより、搬送時の無機粒子101の破損をさらに確実に抑制することができる。また、成形時の重点性を向上することができる。よって、圧縮成形により成形体を得る際の歩留まりを向上することができる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、トランスファー成形用のタブレットであってもよい。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物は、たとえば電子部品用樹脂組成物、車載用樹脂組成物、粉体塗料として好適に用いられる。
【0043】
次に、本実施形態の樹脂組成物の製造方法を説明する。
本実施形態の樹脂組成物は、充填剤および必要に応じその他の添加剤を、ミキサーを用いて常温混合した後、ロール、ニーダー等の押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕して得ることができる。
【0044】
得られた樹脂組成物を成形することにより、成形体が得られる。成形体を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形する。成形時に、第一の層103および第二の層105の全部または一部が組成または形態変化してもよい。たとえば、成形により第一の層103および第二の層105に含まれていた樹脂および硬化剤が硬化して、硬化物中に充填剤由来の無機粒子101が残存していてもよい。
【0045】
本実施形態における電子部品用樹脂組成物を成形することにより、電子部品が得られる。たとえば、本実施形態における電子部品用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止することにより、半導体装置が得られる。
【0046】
図2は、本実施形態における電子部品用樹脂組成物を用いた半導体装置の構成を示す断面図である。図2に示した半導体装置においては、ダイパッド2上に、ダイボンド材硬化物6を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム4との間は金線3によって接続されている。半導体素子1は、封止材硬化物5によって封止されている。
封止材硬化物5は、上述した本実施形態の電子部品用樹脂組成物を硬化させたものである。
【0047】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0048】
(製造例1)
本製造例では、原料として以下の材料を用い、機能性粒子を製造する。
シリカ(母粒子):溶融球状シリカで平均粒径26.5μmのものを使用
シリカ(微球):溶融球状シリカで平均粒径1μmのものを使用
水酸化アルミニウム:平均粒径5μmのものを使用
硬化促進剤(触媒):トリフェニルホスフィン
エポキシ樹脂:オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN1020、軟化点55℃)
カップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
フェノール樹脂(硬化剤):フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR−HF3、軟化点80℃)
カルナバワックス
カーボンブラック
【0049】
シリカ(母粒子)100重量部、水酸化アルミニウム4.77重量部およびカップリング剤0.24重量部を造粒装置(たとえば、ホソカワケミカル社製ノビルタNPB−130、以下同じ。)内に投入し、運転動力2kW、回転数1690rpmで15分間攪拌処理する。
【0050】
得られた粒子100重量部、硬化剤(フェノールノボラック樹脂)4.67重量部および硬化促進剤0.21重量部を造粒装置内に投入し、運転動力2kW、回転数1630rpmで15分間攪拌処理する。
【0051】
次いで、得られた粒子100重量部、シリカ(微球)3.70重量部を造粒装置内に投入し、運転動力2kW、回転数1510rpmで15分間攪拌処理する。
【0052】
そして、得られた粒子100重量部およびカルバナワックス0.12重量部を造粒装置内に投入し、運転動力2kW、回転数1570rpmで15分間攪拌処理する。
【0053】
さらに、得られた粒子100重量部、エポキシ樹脂9〜12重量部およびカーボンブラック0.17重量部を造粒装置内に投入し、運転動力1kW、回転数1220rpmで15分間攪拌処理する。
【0054】
以上の手順により、母粒子上に、硬化剤層および触媒を含む第一介在層、シリカから構成された第二介在層、ワックスから構成された第三介在層およびエポキシ樹脂層が順次形成された機能性粒子を得ることができる。
【0055】
(製造例2)
本製造例では、原料として以下の材料を用い、機能性粒子を製造した。
シリカ(母粒子):溶融球状シリカ、粒径25〜75μmに分級したもの
シリカ(微球):溶融球状シリカ、粒径0.3〜1.5μm
難燃剤:水酸化アルミニウム、平均粒子径5μm
カップリング剤:アルコキシシラン
フェノール樹脂(硬化剤):フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製PR−HF−3、軟化点80℃)
硬化促進剤(触媒):トリフェニルホスフィン、融点79〜81℃
エポキシ樹脂1:ナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量200〜210(g/eq)、融点73℃
エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量185(g/eq)、融点105〜110℃
添加剤:ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、数平均分子量3550、カルボキシル基当量2200g/eq
ワックス(離型剤):モンタンワックス、融点80℃、酸価20〜30(mgKOH/g)、密度1.00〜1.02(g/cm2
カーボンブラック
【0056】
本製造例では、造粒装置として、ホソカワケミカル社製ノビルタNPB−130を用い、以下の手順で機能性粒子を得た。
【0057】
(製造例2−1)
シリカ(母粒子)100重量部、水酸化アルミニウム4.77重量部およびカップリング剤0.24重量部を造粒装置(ホソカワケミカル社製ノビルタNPB−130、以下同じ。)内に投入し、運転動力2kW、回転数1690rpmで15分間攪拌処理した。装置内の初期温度は17.1℃、最高到達温度は24.8℃となった。
処理後の粒子の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)観察結果を図3(a)および図3(b)に示す。
【0058】
(製造例2−2)
製造例2−1で得られた粒子100重量部、硬化剤(フェノールノボラック樹脂:図4(b)中「フェノール樹脂」)4.67重量部および触媒(トリフェニルホスフィン)0.21重量部を造粒装置内に投入し、運転動力2kW、回転数1630rpmで15分間攪拌処理した。装置内の初期温度は17.5℃、最高到達温度は25.5℃となった。
処理後の粒子のSEM観察結果を図4(a)および図4(b)に示す。
【0059】
(製造例2−3)
製造例2−2で得られた粒子100重量部およびシリカ(微球)3.70重量部を造粒装置内に投入し、運転動力2kW、回転数1510rpmで15分間攪拌処理した。装置内の初期温度は18.4℃、最高到達温度は25.4℃となった。
処理後の粒子のSEM観察結果を図5(a)および図5(b)に示す。
【0060】
(製造例2−4)
製造例2−3で得られた粒子100重量部、ワックス(モンタンワックス)0.12重量部、添加剤0.12重量部およびシリコーン0.12重量部を造粒装置内に投入し、運転動力2kW、回転数1570rpmで15分間攪拌処理した。装置内の初期温度は17.4℃、最高到達温度は25.5℃となった。
処理後の粒子のSEM観察結果を図6(a)および図6(b)に示す。
【0061】
(製造例2−5)
製造例2−4で得られた粒子100重量部、エポキシ樹脂1を1.25重量部、エポキシ樹脂2を3.55重量部、およびカーボンブラック0.17重量部を造粒装置内に投入し、運転動力1kW、回転数1220rpmで15分間攪拌処理した。装置内の初期温度は17.6℃、最高到達温度は20.3℃となった。
処理後の粒子のSEM観察結果を図7(a)および図7(b)に示す。
【0062】
図3(a)〜図7(b)より、製造例(2−1)〜(2−5)において、母粒子であるシリカ表面に良好に被覆層が形成された。
【符号の説明】
【0063】
1 半導体素子
2 ダイパッド
3 金線
4 リードフレーム
5 封止材硬化物
6 ダイボンド材硬化物
100 機能性粒子
101 無機粒子
103 第一の層
105 第二の層
107 介在層
109 第三の層
110 機能性粒子
120 機能性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料により構成された基材粒子と、
前記基材粒子を被覆する第一の層と、
前記第一の層を被覆する第二の層と、
を含み、
前記第一および第二の層のうち一方が樹脂を含み、他方が前記樹脂の硬化剤を含む、機能性粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の機能性粒子において、
前記第一の層と前記第二の層との間に、これらを離隔する介在層が設けられた、機能性粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の機能性粒子において、
前記基材粒子と前記第一の層との間に、前記基材粒子に接して設けられた第三の層を有する、機能性粒子。
【請求項4】
請求項3に記載の機能性粒子において、
前記基材粒子の材料がシリカであり、前記第三の層が金属水酸化物を含む、機能性粒子。
【請求項5】
請求項2乃至4いずれかに記載の機能性粒子において
前記介在層が、シリカ、アルミナおよびカーボンブラックからなる群から選択される一または二以上の無機材料を含む、機能性粒子。
【請求項6】
請求項2乃至4いずれかに記載の機能性粒子において、前記介在層が、ワックス状物質を主材とする、機能性粒子。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の機能性粒子からなる、充填剤。
【請求項8】
請求項7に記載の充填剤を含む、電子部品用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の電子部品用樹脂組成物を成形させてなる、電子部品。
【請求項10】
請求項8に記載の電子部品用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−42717(P2011−42717A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190670(P2009−190670)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】