説明

機能性繊維成形体の製造方法

【課題】植物性繊維を主材料とする機能性繊維成形体に、機能性粒体を簡単に、かつ均一に分散させて含有させ得る製造方法を提供する。
【解決手段】機能性繊維成形体10の製造方法は、植物性繊維13を主材料とし、マット状に形成された中間成形体11の上面11aに、機能性粒体14を散布した後、該中間成形体11を振動させることによって、該中間成形体11の内部に前記機能性粒体を分散させて含有させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性繊維成形体の製造方法に関し、詳しくは、植物性繊維を主材料とし、機能性粒体を含有させた機能性繊維成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような植物性繊維を主材料とし、機能性粒体を含有した機能性繊維成形体は、住居等の建物の内壁材や天井材、床下材或いは断熱材などの内装建材として使用されたり、各種家具等の家具材として使用されたりしている。
このような機能性繊維成形体は、例えば、吸放湿性を有する吸放湿材(調湿材)や消臭剤、抗菌剤等の種々の機能性を有した粒状(粒子状)の機能性粒体を、植物性繊維に添加して成形される。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、植物から得られるリグノセルロース繊維同士をバインダーで接着して形成されるとともに、内部に調湿材を保持させた調湿性植物繊維ボードが提案されている。
この特許文献1には、上記調湿材をボード中に分散させて保持させる方法として、調湿材を分散させた液体状のバインダーをリグノセルロース繊維にスプレーしたり含浸させたりする方法や、調湿材をリグノセルロース繊維に分散させた後、バインダーを含有させる方法、リグノセルロース繊維、バインダー、調湿材を同時に混合する方法などが挙げられている。
【特許文献1】特開2008−173834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、上記調湿材をボード中に均一に分散させる態様についての具体的な開示はなく、例えば、上記したスプレーしたり含浸させたりする方法では、調湿材の局所的な偏りが生じることが考えられる。また、上記した調湿材をリグノセルロース繊維に分散させた後、バインダーを含有させる方法や、リグノセルロース繊維、バインダー、調湿材を同時に混合する方法においても、ボード中にどのようにして均一に調湿材を分散させ得るのかについて、具体的には開示されておらず、更なる改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、植物性繊維を主材料とする機能性繊維成形体に、機能性粒体を簡単に、かつ均一に分散させて含有させ得る製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る機能性繊維成形体の製造方法は、植物性繊維を主材料とし、マット状に形成された中間成形体の上面に、機能性粒体を散布した後、該中間成形体を振動させることによって、該中間成形体の内部に前記機能性粒体を分散させて含有させることを特徴とする。
ここに、上記機能性粒体は、吸放湿性や消臭性、防虫性、抗菌性等の種々の機能性を有した粒体であって、粒状、細片状、粒子状、微粒子状及び粉状のものも含む。
【0007】
本発明に係る前記機能性繊維成形体の製造方法においては、前記機能性粒体が散布された中間成形体の上面に、振動体を押し当てることによって、前記中間成形体を振動させるようにしてもよい。
上記機能性繊維成形体の製造方法においては、前記振動体を、前記中間成形体の上面に、局所的に押し当てられる構成とされたものとしてもよい。
【0008】
本発明に係る前記いずれかの機能性繊維成形体の製造方法においては、前記機能性粒体が散布された中間成形体の上面に、飛散防止シートを被せた状態で、前記中間成形体を振動させるようにしてもよい。
上記機能性繊維成形体の製造方法においては、前記飛散防止シートを、透明のものとしてもよい。
【0009】
本発明に係る前記いずれかの機能性繊維成形体の製造方法においては、前記中間成形体に、合成樹脂バインダーを更に含有させたものとし、前記中間成形体の内部に前記機能性粒体を分散させて含有させた後、加熱加圧してボード状に硬化させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る前記機能性繊維成形体の製造方法によれば、マット状に形成された中間成形体の上面に、機能性粒体を散布した後、該中間成形体を振動させるようにしているので、該振動によって、機能性粒体がマット状の中間成形体の繊維間を厚さ方向に沿って適度に振動しながら拡散するように移動して、中間成形体の内部に分散される。
従って、上記中間成形体の上面に機能性粒体を散布して、振動させるという簡易な方法により、植物性繊維を主材料とする中間成形体に、機能性粒体を均一に分散させて含有させることができる。これにより、製造された機能性繊維成形体の内部には、機能性粒体が均一に分散して含有されることとなり、機能性粒体の偏在による部分的な強度不足等が生じず、均質な機能性繊維成形体を製造することができる。
【0011】
本発明に係る前記機能性繊維成形体の製造方法において、前記機能性粒体が散布された中間成形体の上面に、振動体を押し当てることによって、前記中間成形体を振動させるようにすれば、上記機能性粒体が散布された中間成形体の上面から振動が与えられるので、より効率的に、中間成形体の内部に機能性粒体を分散させて含有させることができる。
上記機能性繊維成形体の製造方法において、前記振動体を、前記中間成形体の上面に、局所的に押し当てられる構成とされたものとすれば、例えば、上記中間成形体の上面の全面或いは広範囲に亘って、面状の振動体を押し当てるような場合と比べて、該中間成形体を局所的に振動させることができるので、より効率的に、中間成形体の内部に機能性粒体を分散させて含有させることができる。
【0012】
本発明に係る前記いずれかの機能性繊維成形体の製造方法において、前記機能性粒体が散布された中間成形体の上面に、飛散防止シートを被せた状態で、前記中間成形体を振動させるようにすれば、上記機能性粒体が散布された中間成形体を振動させる際に、該機能性粒体の飛散を防止することができる。従って、中間成形体の上面に散布された機能性粒体を、より効率的に、無駄なく中間成形体の内部に分散させて含有させることができる。
上記機能性繊維成形体の製造方法において、前記飛散防止シートを、透明のものとすれば、上面に散布された機能性粒体が中間成形体の内部に入り込む様子を目視することができる。これにより、中間成形体を振動させる際の条件等の種々の条件を、現場にて確認して調節することもでき、より効率的に機能性繊維成形体を製造することができる。
【0013】
本発明に係る前記いずれかの機能性繊維成形体の製造方法において、前記中間成形体に、合成樹脂バインダーを更に含有させたものとし、前記中間成形体の内部に前記機能性粒体を分散させて含有させた後、加熱加圧してボード状に硬化させるようにすれば、例えば、内装建材や家具材等として好適に用いられる機能性繊維成形体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法を説明するための概念的な説明図、図2(a)、(b)は、いずれも同機能性繊維成形体の製造方法の一工程をそれぞれ示し、(a)は、機能性粒体散布工程を説明するための概念的な説明図、(b)は、加熱加圧工程を説明するための概念的な説明図、図2(c)は、同機能性繊維成形体の製造方法によって成形された機能性繊維成形体の一例を概念的に示す断面図である。
【0015】
本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法によって製造された機能性繊維成形体は、図2(c)に示すように、ボード状(平板状)に形成された機能性繊維ボード10とされている。
上記機能性繊維ボード10は、植物性繊維13を主材料とし、後記するように、該植物性繊維13に、機能性粒体14と、合成樹脂バインダー(不図示)とを添加し、加熱加圧してボード状に成形されたものである。
【0016】
上記機能性繊維ボード10の使用態様としては、引戸や折り戸、開き戸等の扉(ドアパネル)、内壁、間仕切り、棚、キッチンパネル、天井等の内装建材として使用したり、床下材や壁断熱材等として使用したり、キャビネットなどの収納家具の前板(扉)、天板、棚板、側板、底板、背板等の家具材等として使用したりする態様が挙げられる。
また、この機能性繊維ボード10の表面に、適宜、使用態様に応じて、表面仕上げのための通気性を有する化粧シートや壁紙を更に貼着するようにしてもよい。
さらに、該機能性繊維ボード10の裏面に、適宜、使用態様に応じて、石膏ボードや木質ボード、樹脂ボードなどを更に貼着するようにしてもよい。
【0017】
上記機能性繊維ボード10に採用される上記植物性繊維13としては、例えば、植物の靭皮から採取される靭皮繊維(例えば、ケナフ、亜麻、ラミー、大麻、ジュート等の麻類植物の靭皮から採取される繊維)や、マニラ麻、サイザル麻等の麻類植物の茎又は端の筋から採取される繊維、油ヤシやココヤシ等のヤシ科植物から採取される繊維、パルプなどの木材繊維が挙げられる。
特に、近年、枯渇化が叫ばれている木材資源ではなく、非木材資源である麻類植物やヤシ科植物から得られる麻類植物繊維やヤシ科植物繊維を植物性繊維13として採用すれば、環境資源にも配慮した機能性繊維ボード10を製造することができる。また、そのような麻類植物やヤシ科植物から採取される繊維は、従来の繊維板に使用されている針葉樹や広葉樹から採取される繊維よりも引張強度が2倍〜14倍程度高く、麻類植物やヤシ科植物から採取される繊維を機能性繊維ボード10に採用することで、機能性繊維ボード10自体の強度をより効果的に高めることができ、内装建材や家具材等として好適なものとなる。
【0018】
尚、上記各種の繊維は、一種あるいは二種以上を組み合わせて採用してもよい。
また、上記植物性繊維13が主材料となるように配合比を調整すればよく、その他、合成樹脂繊維或いはロックウールやスラグウール、ミネラルウール、グラスウールなどの人造鉱物繊維をさらに混合して配合するようにしてもよい。
【0019】
上記植物性繊維13としては、長繊維状のものとしてもよい。例えば、その繊維長が、6mm〜2000mm程度、好ましくは、10mm〜200mm程度、より好ましくは、20mm〜100mm程度のものとしてもよい。
上記植物性繊維13の繊維長が、上記の範囲より短いと、繊維同士の絡み合いが不足してボード自体の強度や通気性が低下する傾向があり、また、繊維長が、上記の範囲より長いと、後記するように植物性繊維13によって中間成形マット体11を形成する際に所定の形状にし難くなる傾向があるとともに、後記する合成樹脂バインダー及び機能性粒体14を均一に分散させ難くなる傾向がある。
【0020】
上記植物性繊維13の平均繊維径は、20μm〜500μm、好ましくは、50μm〜100μm程度となるように解繊したものとしてもよい。
上記植物性繊維13の平均繊維径が、上記の範囲より小径であると、繊維間の接着面積が増加するためボード自体の強度は高くなるが、繊維間の空隙が小さくなり、通気性を阻害する傾向があるとともに、機能性粒体14を後記するように分散させる際に、均一に分散し難くなる傾向がある。また、平均繊維径が上記の範囲より大径であると、繊維間の空隙は大きくなり、通気性が高くなるが、繊維間の接着面積が少なくなりボード自体の強度が低下する傾向がある。
【0021】
上記機能性繊維ボード10に採用される上記合成樹脂バインダー(接着成分)としては、特に限定されず、ユリア樹脂や、メラミン樹脂、ユリア・メラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する接着剤、あるいは、酢酸ビニル樹脂や、ポリ乳酸、アクリル樹脂等を含有する水性接着剤あるいはエマルジョン接着剤などが挙げられる。
上記のような接着剤は、液体状或いは粉状のもの等どのようなものでもよい。
【0022】
或いは、上記したような接着剤に代えて、上記合成樹脂バインダーとして、合成樹脂繊維を採用するようにしてもよい。このような合成樹脂繊維をバインダーとする場合は、上記植物性繊維13と、互いに適度に絡み合わせ、熱プレスによって該合成樹脂繊維を溶融させることで、上記植物性繊維13同士を連結固化して合成樹脂バインダーとして機能する。このように、合成樹脂繊維をバインダーとすることで、適度な空隙を保つことができる。
上記合成樹脂繊維としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる繊維や、ポリ乳酸樹脂からなる繊維等が挙げられる。これらは、一種あるいは二種以上を組み合わせて採用してもよく、例えば、ポリエステル樹脂を芯部(芯成分)とし、ナイロンやポリエチレン、エチレン−ビニルアルコール樹脂等を鞘部(鞘成分)とした芯鞘構造の合成樹脂繊維としてもよい。
尚、上記各種の合成樹脂バインダーは、一種あるいは二種以上を組み合わせて採用してもよい。
【0023】
上記合成樹脂バインダーの含有量は、成形後の機能性繊維ボード10に対して、その固形分が5重量%以上、50重量%以下としてもよく、好ましくは、10重量%以上、30重量%以下としてもよい。これにより、通気性を阻害することなく、後記する機能性粒体14が有する機能性を十分に発揮できる機能性繊維ボード10を製造できるとともに、上記植物性繊維13同士の接着性を高めることができる。
上記合成樹脂バインダーの固形分の含有量が5重量%未満であれば、上記植物性繊維13間を、後記するように熱圧接着する際に、十分な接着がなされない傾向があり、植物性繊維13がばらけたり、表面硬度が低くなり、剥離が生じたりする傾向がある。また、上記合成樹脂バインダーの固形分の含有量が50重量%超であれば、植物性繊維13同士の接着性は高められるが、ボード自体の通気性が阻害される傾向があるとともに、後記する機能性粒体14を分散させて繊維間に捕捉させるための空隙も十分に確保され難くなる傾向がある。
【0024】
上記機能性繊維ボード10に採用される上記機能性粒体14としては、吸放湿性を有した調湿材や、消臭性を有した消臭剤、防虫性を有した防虫剤、抗菌性を有した抗菌剤、或いは触媒、または天然素材等が挙げられ、粒状、細片状、粒子状、微粒子状及び粉状のものなどどのようなものでもよい。
上記調湿材としては、例えば、木炭、竹炭などの炭類、タルク、ゼオライト、珪藻土、シリカゲル(好ましくはB型シリカゲル)、モンモリロナイト、セピオライトなどの粘土鉱物、アルミナ、シリカなどの無機物等が挙げられる。
【0025】
上記機能性粒体14の平均粒径は、2.0mm以下、好ましくは、300μm以下としてもよい。
上記機能性粒体14の平均粒径が2.0mm超であれば、後記するマット体振動工程の際に、均一に分散させ難くなる傾向がある。
特に、上記機能性粒体14の平均粒径を、300μm以下とすることで、繊維間の空隙が300μm程度とされた後記する中間成形マット体11の繊維間に、入り込み易く、均一に分散させ易くなる。
【0026】
また、上記機能性粒体14の平均粒径としては、特に下限はなく、例えば、数μmオーダーの微粉状のものでは、微粉同士が適度に凝集する傾向があるため、後記するマット体振動工程の際にも該中間成形マット体11の繊維間に捕捉されずに通過して脱落してしまうようなこともそれほどないと考えられる。
尚、後記するマット体振動工程の際の所要時間やコスト的な観点から、上記機能性粒体14の平均粒径を、10μm以上のものとしてもよい。
また、上記各種の機能性粒体14は、一種あるいは二種以上を組み合わせて採用してもよい。
また、平均粒径の異なる機能性粒体14、例えば、比較的、粒子径の大きいシリカゲルと、微粉状の消臭剤や抗菌剤等を混合して採用するような態様としてもよい。
【0027】
次に、上記機能性繊維ボード10の製造方法について、図2(a)、(b)及び図1に基づいて説明する。
<マット体成形工程>
まず、上記植物性繊維13と、上記合成樹脂繊維(合成樹脂バインダー)とを堆積、積層して所定の厚さの中間成形マット体11(図2(a)参照)を形成する。
この際、上記各繊維(植物性繊維13、及び合成樹脂繊維)のそれぞれが、ほぼ一方向に配向するようにコーミング処理を施したり、ほぼ直交する二方向に配向するようにコーミング処理を施したりしてもよい。また、上記中間成形マット体11に多数のニードルによってパンチング処理(ニードルパンチ法)を施し、上記各繊維(植物性繊維13、及び合成樹脂繊維)同士をより絡み合わせるようにしてもよい。
また、形状を整える程度に、低圧で圧締(常温プレス)するようにしてもよい。
【0028】
上記中間成形マット体11は、目付けが100g/m〜2000g/m程度のものとしてもよい。これにより、後記するマット体振動工程の際に、該中間成形マット体11の繊維間に、該機能性粒体14が入り込み易く、均一に分散させ易くなる。
該中間成形マット体11の目付けが100g/mを下回ると、該中間成形マット体11の均一性が維持し難くなる傾向があり、部分的に大きな空隙ができてしまい、後記するマット体振動工程の際に、該中間成形マット体11の繊維間に機能性粒体14が捕捉されずに通過して脱落してしまう傾向がある。
また、該中間成形マット体11の目付けが2000g/mを上回ると、後記するマット体振動工程の際に、該中間成形マット体11の厚さ方向への振動の伝達が伝播し難くなる傾向があり、該機能性粒体14を均一に分散させて含有させ難くなる傾向がある。
【0029】
<機能性粒体散布工程>
次いで、図2(a)に示すように、搬送コンベア1の上に載置された中間成形マット体11の上面11aに、機能性粒体散布機2を用いて、上記機能性粒体14を散布する。
この機能性粒体散布機2としては、上記中間成形マット体11の上面11aに、全面に亘って定量の機能性粒体14が散布できるものとすることが好ましい。
このような機能性粒体散布機2としては、例えば、振動フィーダやスクリューフィーダ等、公知の粉粒体の定量供給装置を適用するようにしてもよい。
尚、上記機能性粒体14の散布量は、機能性繊維成形体の使用態様や、上記中間成形マット体11の目付け等に応じて、適宜、設定可能であるが、後記するように加熱加圧して、ボード状に硬化させて成形した機能性繊維ボード10とする場合には、上記合成樹脂バインダーによる植物性繊維13の接着性を阻害することがないような散布量とすることが好ましい。例えば、50g/m〜1000g/m程度としてもよい。
【0030】
<マット体振動工程>
次いで、図1に示すように、上記機能性粒体14が散布された中間成形マット体11を、振動発生装置20を用いて振動させることによって、中間成形マット体11の内部に、機能性粒体14を入り込ませるようにして分散させて含有させる。
この際、本実施形態では、透明の飛散防止シート3を介して、上記中間成形マット体11の上面11aに、振動発生装置20の振動板22を押し当てて振動させるようにしている。
【0031】
上記振動発生装置20は、図例では、大略的に、振動モータやエアーバイブレータ(ボールバイブレータ)などの振動発生源21と、該振動発生源21が取付けられた鉄板等からなる振動板22と、該振動板22の適所に取付けられ、該振動板22を揺動自在に吊持する吊持部材24,24と、該吊持部材24,24の一端が連結されて、該吊持部材24,24を支持する支持部23とを備えている。
上記振動板22は、例えば、厚さが2.0mm〜20.0mm程度の比較的、薄板状とされており、上記中間成形マット体11の搬送がスムーズになされるよう、該中間成形マット体11の上面11aに対して傾斜して吊持されている。また、該振動板22の当接側(下端側)の端部縁部には、飛散防止シート3や中間成形マット体11への損傷を防止するために、R面加工が施されており、該端部が丸みを帯びた形状とされている。
【0032】
上記吊持部材24,24には、上記振動発生源21からの振動が伝達されて振動する上記振動板22の振動の減衰を低減するためにバネ体が設けられている。
上記飛散防止シート3は、上記振動発生装置20を囲むように無端ベルト状(ループ状)に形成されており、図例では、4つの回転ローラー体4によって、回転自在に支持されている。
この飛散防止シート3としては、可撓性を有した合成樹脂製の透明シート等を適宜、採用するようにしてもよい。また、機能性粒体14が付着し難くなるよう適宜、公知の付着防止コーティング層を施したり、静電気除去処理をしたりするようにしてもよい。また、搬送方向下流側において、クリーニングブレード等を該飛散防止シート3の表面に当接させて付着した機能性粒体14を掻き落とすようにしてもよい。
【0033】
このマット体振動工程では、上記飛散防止シート3及び上記振動発生装置20を用いて、以下のように、上記中間成形マット体11の内部への上記機能性粒体14の分散がなされる。
上記搬送コンベア1上を搬送される上記中間成形マット体11は、その上面11aに、上記機能性粒体14が散布された状態で、上記飛散防止シート3の下方に導入される。
そして、搬送コンベア1上を搬送されて、移動する上記中間成形マット体11の上面11aに対して、上記飛散防止シート3を介して、上記振動発生装置20の振動板22が押し当てられ、該中間成形マット体11が振動する。この際、上記中間成形マット体11は、高圧プレスがなされておらず、硬化していない状態であるので、空隙率が高く、クッション状(スポンジ状)に変形が可能な状態であり、その上面11aに押し当てられて局所的に付与された振動力は、該中間成形マット体11の内層に伝播し、該中間成形マット体11の厚さ方向の全体に亘って、また、その周囲近傍部位に、適度に振動が伝達される。
この振動に伴って、上記中間成形マット体11の上面11aに散布された上記機能性粒体14は、中間成形マット体11の絡み合わせられた繊維間に、徐々に入り込むようにして、その内層に拡散、分散するようにして移動し、搬送方向下流側では、機能性粒体14が内層に均一に分散して含有された機能性粒体含有マット体12が形成される。
【0034】
<加熱加圧工程>
次いで、図2(b)に示すように、上記のように形成された機能性粒体含有マット体12を、必要により、所定の大きさに裁断し、一対のプレス板5,5を備えた熱プレス機(ホットプレス機)に導入して、熱プレス(加熱加圧)を行う。この熱プレス時の条件、すなわち、プレス圧、プレス時間、及びプレス型面温度は、上記機能性粒体含有マット体12の目付けや、成形後の機能性繊維ボード10の密度や板厚、上記合成樹脂バインダーの種類や含有量等により適宜、設定可能である。
また、上記熱プレス時に、成形後の機能性繊維ボード10の密度が、500kg/m以上、1200kg/m以下となるように熱プレスをするようにしてもよい。これにより、成形後の機能性繊維ボード10の強度を高められるとともに、その通気性を阻害するようなことがないので、含有された機能性粒体14の機能性を十分に発揮できる機能性繊維ボード10を製造できる。
【0035】
上記機能性繊維ボード10の密度が500kg/m未満であると、機能性繊維ボード10の表面硬度や強度等が低下する傾向があるとともに、釘や木ネジ等の保持力が低下する傾向がある。また、上記機能性繊維ボード10の密度が1200kg/m超であると、機能性繊維ボード10の通気性が低くなる傾向がある。
上記のように熱プレスをした後、脱型し、適宜、所定の大きさに裁断して、上記機能性繊維ボード10が得られる。このように成形された機能性繊維ボード10は、植物性繊維13の絡み合いによって通気性のある多孔質状態となり、また、その絡み合った植物性繊維13間に、上記のように機能性粒体14が均一に分散され、捕捉されて含有された機能性繊維ボード10となる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法によれば、上記中間成形マット体11の上面11aに機能性粒体14を散布して、振動させるという簡易な方法により、植物性繊維13を主材料とする中間成形体11に、機能性粒体14を均一に分散させて含有させることができる。これにより、製造された上記機能性繊維ボード10の内部には、機能性粒体14が均一に分散して含有されることとなり、機能性粒体14の偏在による部分的な強度不足等が生じず、均質な機能性繊維ボード10を製造することができる。
【0037】
また、本実施形態では、上記のように、上記中間成形マット体11の上面11aに、上記振動板22を押し当てることによって、該中間成形マット体11を振動させるようにしているので、上記機能性粒体14が散布された中間成形マット体11の上面11aから振動が付与され、効率的に、中間成形マット体11の内部に機能性粒体14を分散させて含有させることができる。
特に、本実施形態では、上記振動板22を、上記中間成形マット体11の上面11aに、局所的に押し当てるようにしているので、上記中間成形マット体11の上面11aの全面或いは広範囲に亘って、面状の振動体を押し当てるような場合と比べて、該中間成形マット体11を局所的に振動させることができるので、より効率的に、中間成形マット体11の内部に機能性粒体14を分散させて含有させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、上記マット体振動工程において、上記機能性粒体14が散布された中間成形マット体11の上面11aに、上記飛散防止シート3を被せた状態で、該中間成形マット体11を振動させるようにしているので、該機能性粒体14の飛散を防止することができ、中間成形マット体11の上面11aに散布された機能性粒体14を、より効率的に、無駄なく中間成形マット体11の内部に分散させて含有させることができる。
特に、本実施形態では、上記飛散防止シート3を、透明のものとしているので、上面11aに散布された機能性粒体14が中間成形マット体11の内部に入り込む様子を目視することができる。これにより、中間成形マット体11を振動させる際の条件や、搬送コンベア1の搬送速度等の種々の条件を、現場にて確認しながら調節することもでき、より効率的に機能性繊維ボード10(或いは機能性粒体含有マット体12)を製造することができる。
さらにまた、本実施形態では、搬送コンベア1上を搬送される中間成形マット体11に対して、機能性粒体散布工程及びマット体振動工程を行うようにしているので、上記機能性粒体含有マット体12の形成を、連続的に行うことができ、製造工程の効率化が図れる。
【0039】
尚、上記マット体成形工程において、上記合成樹脂バインダーとして合成樹脂繊維を混合する態様に代えて、植物性繊維13から形成した中間成形マット体11を、例えば、液状フェノール樹脂等の液状接着剤の含浸槽に浸漬させ、ローラー等の絞り機で絞って、その後、乾燥機等によって揮発分を蒸発させて、合成樹脂バインダーを含有させた中間成形マット体11を形成するような態様としてもよい。
或いは、上記態様に代えて、粉状のフェノール樹脂等の粉末接着剤を、所定の混合量で上記植物性繊維13に混合して、中間成形マット体11を形成する態様としてもよい。この場合は、予め粉状バインダーと、植物性繊維13とを攪拌機等によって混合しておき、次いで、中間成形マット体11を形成するようにしてもよく、或いは、植物性繊維13によって中間成形マット体11を形成しながら、粉状バインダーを散布して混合するような態様としてもよい。
【0040】
若しくは、上記のように、合成樹脂バインダーを、粉状バインダーとする場合には、上記植物性繊維13に混合して中間成形マット体11を形成する態様に代えて、機能性粒体14に、所定量の粉状バインダーを予め混合しておき、上記機能性粒体散布工程において、機能性粒体14とともに中間成形マット体11の上面11aに散布するような態様としてもよい。この場合は、上記マット体振動工程において、機能性粒体14とともに、粉状バインダーを中間成形マット体11の内部に、均一に分散させて含有させることができる。
【0041】
また、上記種々の態様に代えて、上記植物性繊維13に、液状接着剤をスプレー噴霧しながら中間成形マット体11を形成する態様としてもよい。
さらに、上記中間成形マット体11の成形態様は、乾式フォーミングに限られず、湿式フォーミングにより成形するようにしてもよい。この場合は、後記する機能性粒体散布工程の前に、乾燥機等によってある程度、乾燥させて水分を飛ばすことが好ましい。
さらにまた、上記のような合成樹脂バインダーを含有させずに、例えば、常温プレスによって機能性繊維ボード10を製造するような態様としてもよい。
【0042】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図3は、第2実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法を説明するための概念的な説明図であり、図1に対応させた図である。
尚、上記第1実施形態との相違点は、主に振動発生装置及びマット体振動工程であり、同様の構成については、同一の符号を付し、また、他の工程については同様であるので、その説明を省略或いは簡略に説明する。
【0043】
上記第1実施形態では、搬送コンベア1上を搬送される中間成形マット体11に対して、上記振動板22を押し当てて振動させる態様を例示したが、本実施形態では、基台1A上に静止状態で載置された中間成形マット体11に対して、振動板22を移動させることで、該中間成形マット体11の上面11aに局所的に振動板22を押し当てて、該中間成形マット体11を振動させるようにしている。
すなわち、本実施形態に用いられる振動発生装置20Aは、上記同様の吊持部材24,24を支持する支持部が、支持ビーム25に沿って移動される移動支持部23Aとされている。
また、飛散防止シート3Aは、上記第1実施形態のように、回転ローラー体4によって回転自在に支持された無端ベルト状のシート体の態様に代えて、上記機能性粒体14が散布された中間成形マット体11に、覆い被せられた透明のシート体とされている。
【0044】
本実施形態では、上記飛散防止シート3A及び上記振動発生装置20Aを用いて、以下のように、上記中間成形マット体11の内部への上記機能性粒体14の分散がなされる。
上記マット体成形工程において成形され、その上面11aに上記機能性粒体散布工程において機能性粒体14が散布された中間成形マット体11を、基台1A上に載置し、飛散防止シート3Aを覆い被せる。この際、必要により、所定の大きさに中間成形マット体11を裁断するようにしてもよい。
【0045】
<マット体振動工程>
次いで、上記飛散防止シート3A上を、上記振動板22を移動させ、該飛散防止シート3Aを介して該振動板22を、上記中間成形マット体11の上面11aに押し当てて、該中間成形マット体11を振動させる。
これにより、上記同様、中間成形マット体11の上面11aに散布された上記機能性粒体14は、中間成形マット体11の絡み合わせられた繊維間に入り込むようにして、その内層に分散して含有され、振動板22の移動方向下流側では、機能性粒体14が内層に均一に分散して含有された機能性粒体含有マット体12が形成される。
この機能性粒体含有マット体12を、上記同様、加熱加圧工程において熱プレスして、適宜、所定の大きさに裁断して、機能性繊維ボード10(図2(c)参照)が製造される。
【0046】
尚、上記各実施形態では、中間成形マット体11を振動させるための振動体として、板状に形成された振動板22を例示しているが、このような態様に代えて、多数のピン部材或いは凸部材を設けた振動体としてもよく、中間成形マット体11の上面11aに対して局所的に押し当てられるような他の形状の振動体を用いるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、単一の振動発生装置を用いて、中間成形マット体11を振動させる態様について例示しているが、例えば、複数の振動発生装置を用いて、中間成形マット体11を振動させる態様にしてもよい。この場合は、例えば、各振動発生装置により振動される各振動体の振動周波数や振幅を異ならせるような態様にしてもよい。
【0047】
さらに、上記各実施形態では、振動板22と、中間成形マット体11とを相対的に移動させながら振動させるようにした態様を例示しているが、例えば、中間成形マット体11を所定の大きさに裁断し、該中間成形マット体11の上面11aの略全面に当接し得るような板状の振動体を用いて、これら中間成形マット体11と振動体とを相対的に移動させずに、該振動体を押し当てて振動させるような態様としてもよい。この場合は、板状の振動体の裏面に、複数の凸部等を突設させたようた態様のものとすれば、該中間成形マット体11の上面11aに局所的に押し当てることができる。
【0048】
さらにまた、上記各実施形態では、中間成形マット体11の上面11aに、振動体を押し当てることによって、該中間成形マット体11を振動させる態様について例示しているが、このような態様に代えて、例えば、中間成形マット体11が載置される基台を振動させることによって、該中間成形マット体11を振動させるような態様としてもよい。この場合は、基台を上下に振動させるのみならず、幅方向や長手方向、斜め方向等、ランダムな方向の振動を組み合わせて振動させるような態様としてもよい。これにより、中間成形マット体11の内部に、効率よく均一に機能性粒体14を分散させることができる。
また、このように、基台を振動させる場合は、その後、或いはその前に、中間成形マット体11の上面11aに上記したような種々の振動体を押し当てて該中間成形マット体11を振動させる工程を加えるようにしてもよい。
【0049】
また、上記各実施形態では、上記のように機能性粒体含有マット体12を形成した後、加熱加圧することで、ボード状に成形するようにした態様を例示しているが、例えば、ボード状のものに限られず、凹凸や曲面などのある非ボード状の成形体を製造するようにしてもよい。
さらに、加熱加圧せずに、例えば、比較的、密度の低いマット状の成形体を機能性繊維成形体として把握するようにしてもよい。この場合は、適宜、低圧プレスによって形状を整え、適宜、所定の大きさに裁断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る機能性繊維成形体の製造方法の一実施形態を説明するための概念的な説明図である。
【図2】(a)、(b)は、いずれも同機能性繊維成形体の製造方法の一工程をそれぞれ示し、(a)は、機能性粒体散布工程を説明するための概念的な説明図、(b)は、加熱加圧工程を説明するための概念的な説明図、(c)は、同機能性繊維成形体の製造方法によって成形された機能性繊維成形体の一例を概念的に示す断面図である。
【図3】本発明に係る機能性繊維成形体の製造方法の他の実施形態を説明するための概念的な説明図である。
【符号の説明】
【0051】
3,3A 飛散防止シート
10 機能性繊維ボード(機能性繊維成形体)
11 中間成形マット体(中間成形体)
11a 中間成形マット体の上面
13 植物性繊維
14 機能性粒体
22 振動板(振動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性繊維を主材料とし、マット状に形成された中間成形体の上面に、機能性粒体を散布した後、該中間成形体を振動させることによって、該中間成形体の内部に前記機能性粒体を分散させて含有させることを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記機能性粒体が散布された中間成形体の上面に、振動体を押し当てることによって、前記中間成形体を振動させることを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記振動体は、前記中間成形体の上面に、局所的に押し当てられる構成とされていることを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記機能性粒体が散布された中間成形体の上面に、飛散防止シートを被せた状態で、前記中間成形体を振動させることを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記飛散防止シートは、透明であることを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記中間成形体には、合成樹脂バインダーが更に含有されており、
前記中間成形体の内部に前記機能性粒体を分散させて含有させた後、加熱加圧してボード状に硬化させることを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−143163(P2010−143163A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324975(P2008−324975)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】