説明

機能性膜パターン形成方法

【課題】インクジェットヘッドによる機能性膜パターン形成方法において、形成される機能性膜パターンの低抵抗化を図るとともに、この機能性膜パターンの形成を1回の走査工程で実現する。
【解決手段】直線からなる機能性膜パターン部4の長手方向をインクジェットヘッド110の走査方向に対して下記式を満足する所定角度θで傾ける。一定の間隔で配された複数の吐出口111から機能性微粒子Bを含有した液滴Lを吐出するインクジェットヘッド110を基板1上で走査する。基板1上に着弾された液滴Lにより直線からなる機能性膜パターン部4に機能性膜パターンPを形成する。
d<2rSINθ(式中、dは、隣接する液滴の中心間距離の走査方向に対する垂直成分距離、rは、液滴の着弾後の半径である。但し、θ≠0である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドによる機能性膜パターン形成方法、詳しくは、例えば薄膜半導体へのゲート電極、ソース電極等への配線パターンを、機能性微粒子を含有する機能性微粒子分散溶液をインクジェットヘッドにより直接、基板上に描画して形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパやOLED(Organic Light Emitting Diode)のような軽くて薄いフレキシブルディスプレイが注目を浴びている。これらのフレキシブルディスプレイにおいては、薄膜半導体からなるTFT(Thin Film Transistor)が多数使用されている。すなわち、図7Aに示すように、電子ペーパにおいては、フィルム基板上と表示部との間に薄膜半導体が配置され、図7Bに示すように、OLEDにおいては、フィルム基板上とOLEDとの間に薄膜半導体が配置される構成となっている。
【0003】
この薄膜半導体へのゲート電極、ソース電極等への配線パターンを形成する方法として、機能性微粒子を含有する機能性微粒子分散溶液をインクジェットヘッドにより直接、基板上に描画して機能性膜パターンを形成する方法が知られている。
【0004】
このインクジェットヘッドによる機能性膜パターンの形成においては、形成される機能性膜パターンの断線や短絡等の欠陥を防止するために、基板上に着弾された液滴の位置・形状等を正確に制御する必要がある。
【0005】
特許文献1には、導電性微粒子を含有した液滴を基板上に、配置した直後の液滴の直径の2倍以下であって、液滴同士がつながらない配線ピッチで配置する第1配置工程と、第1配置工程で配置された液滴同士の間を埋めるように、基板上に液滴を配置する第2配置工程を有する配線形成方法が提案されている。
【特許文献1】特開2007−49186
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェットヘッドを使用して機能性微粒子を含有した液滴を基板上に吐出して機能性膜パターンを形成する方法においては、形成される配線の機能性膜パターンは、できるだけ低抵抗となることが望ましい。本願発明者は、形成された機能性膜パターンの長手方向が、インクジェットヘッドの走査方向に対して平行な機能性膜パターンは、走査方向に対して傾いているパターンと比較して、高抵抗化するという特性を見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0007】
また、特許文献1に開示されている技術では、機能性膜パターンを形成するためにはインクジェットヘッドを基板上で2回走査する必要がある。2回目の走査工程においては、1回目に配置された液滴間に正確に着弾させる必要がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、インクジェットヘッドを使用して形成される機能膜パターンの低抵抗化を図るとともに、この機能性膜パターンの形成を1回の走査工程で実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明の機能性膜パターン形成方法は、一定の間隔で配された複数の吐出口から機能性微粒子を含有した液滴を吐出するインクジェットヘッドを基板上で走査して、この基板上に着弾された液滴により直線からなる機能性膜パターン部に機能性膜パターンを形成する機能性膜パターン形成方法において、直線からなる機能性膜パターン部の長手方向をインクジェットヘッドの走査方向に対して下記式を満足する所定角度θで傾けて走査することを特徴とするものである。d<2rSINθ(式中、dは、隣りあう液滴の中心間距離の前記走査方向に対する垂直成分距離、rは、液滴の着弾後の半径である。但し、θ≠0である。)
ここで、「一定の間隔」とは、隣接する吐出口の中心が一定の間隔となることを意味するものである。上記「基板上で走査」とは、インクジェットヘッドを基板表面と略平行に走査することを意味するものである。上記「着弾された液滴」とは、着弾直後の液滴を意味するものではなく、着弾後に形状、寸法、位置等が略一定となった液滴を意味するものである。上記「直線からなる」とは、曲線を含まないとの意味であり、また、一本の一方向からなる直線に限定されず、途中において所定角度で折れる一本の直線、複数の直線が所定角度で交差している状態をも含むものである。上記「機能性膜パターン部」とは、基板上の機能性膜を形成する部分を意味するものである。上記「機能性膜パターン部の長手方向」とは、直線からなる機能性膜パターンの伸長している方向を意味するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の機能性膜パターン形成方法によれば、インクジェットヘッドの走査方向に対して、直線からなる機能性膜パターン部の長手方向を所定角度θ(但し、θ≠0である。)で傾けて、インクジェットヘッドを走査させるため、形成される機能性膜パターンは、走査方向に対して直線からなる機能性膜パターン部の長手方向が平行である機能性膜パターンよりも低抵抗化を図れることになるとともに、所定角度θと、隣りあう液滴の中心間距離の走査方向に対して垂直成分距離dと、液滴の着弾後の半径rとが、d<2rSINθを満足するように設定することにより、隣りあう着弾後の液滴が重なるため、インクジェットヘッドを基板上で1回走査することで、機能性膜パターンを断線することなく形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の機能性膜パターン形成方法に使用する基板について説明する。図1は、本発明の機能性膜パターン形成方法に使用する基板の概略構成図、図2は、本発明の機能性膜パターン形成方法に使用する基板の要部拡大図を示すものである。図1に示すように、本実施形態において、基板の一例であるガラス基板1は、図中破線の最外枠で示す、機能性膜配線パターン領域2を有しており、この機能性膜配線パターン領域2は、一例として複数の略格子状の単一セル3から構成されている。単一セル3には、図2に示すように、薄膜半導体が配置され、図中垂直方向のソース線、図中水平方向のゲート線および、補助容量へドレイン線が配線されることになる。また、上記の各線は、図示しない絶縁層を介して交差しているものである。
【0012】
前述のとおり、本発明は、曲線を含まない、直線からなる機能性膜パターンを形成することが可能であるが、本実施形態においては、機能性膜パターン部4を、一例として直交するソース線、およびゲート線が形成されるものとして説明するが、これに限定されるものではない。
【0013】
次に、本発明の機能性膜パターン形成方法について説明する。本発明の機能性膜パターン形成方法は、描画工程、焼成工程からなるものであり、まず、描画工程について説明する。図3は、本発明の機能性膜パターン形成方法の描画工程に使用する機能性膜パターン形成装置の概略構成図である。図3において、矢印X、Y、およびZの各方向は互いに直交するものである。
【0014】
機能性膜パターン形成装置100は、ガラス基板1が載置される載置台101、この載置台101上を、この載置台101の表面に対して略平行に走査するインクジェットヘッド110とから構成されている。
【0015】
載置台101は、ガラス基板1をインクジェットヘッド110の走査方向に対して機能性膜パターン部4が所望の角度を形成するように、保持可能であるとともに、図示しない駆動手段により、図中Y方向に移動自在となっている。
【0016】
インクジェットヘッド110は、機能性微粒子Bを含有する機能性微粒子分散溶液が充填される、図示しないカートリッジを内蔵し、この機能性微粒子分散溶液からなる液滴Lを吐出する一列の直線状に一定の間隔で配列された複数の吐出口111を有している。また、インクジェットヘッドの各吐出口111には、図示しない圧電体が内蔵され、この圧電体を振動させることにより、所定の周波数で吐出口111から機能性分散溶液を吐出する。また、インクジェットヘッド110は、図示しない駆動手段により、図中X方向に移動自在であるとともに、隣りあう吐出口111間距離の走査方向に対する垂直成分距離を調整するために、載置台101の表面に垂直なZ軸回りの矢印R方向に回転自在で構成されている。なお、本実施形態において、吐出口111は、一定の間隔で、一列の直線状でインクジェットヘッド110に配列されているが、これに限定されるものではない、一定の間隔で、複数列の直線状でインクジェットヘッド110に配列されるものであってもよい。
【0017】
機能性微粒子Bとしては、具体的に導電性が良好であるAg、Au、Cu等が挙げられるが、Auはコスト高、Cuは酸化容易であることから、Agを使用することが望ましい。また、低融点であるAgを機能性微粒子として使用することにより、ガラス基板1よりも耐熱温度の低い樹脂基板等へも適用も可能となる。この機能性微粒子の粒径は、1〜1000nmであり、好ましくは、1〜100nm、より好ましくは1〜10nmである。
【0018】
次に、本発明の機能性膜パターン形成方法について詳細に説明する。図4は、本発明の機能性膜パターン形成方法の描画工程を示す。なお、図4においては、理解を容易にするため、ガラス基板1の一部のみを示し、載置台101、およびインクジェットヘッド110は省略している。
【0019】
本発明の機能性膜パターン形成方法の液滴Lの描画工程では、図4の左図が示すように、機能性膜パターン部4が、インクジェットヘッド110の走査方向(図中矢印A方向)に対して角度θだけ傾くように、載置台101上にガラス基板1を載置する。これにより、形成される機能性膜パターンPは、走査方向(図中矢印A方向)に対して機能性パターン部4が平行とならず、形成される機能性膜パターンPの抵抗は、走査方向(図中矢印A方向)に対して平行で形成される機能性膜パターンPよりも低抵抗となる。ここで、角度θは、直線からなる機能性膜パターン部4のいずれの部分も、走査方向に対して平行とならないように決定されるものである。機能性膜パターンは、直線状のパターンにより形成される場合が多く、また、図7Aおよび図7Bに示すような格子状で形成されるパターンが特に多いので、このような場合、本発明は特に効果的である。
【0020】
次に、インクジェットヘッド110の吐出口111から機能性微粒子分散溶液からなる液滴Lを吐出させるとともに、インクジェットヘッド110をガラス基板1上に走査させる(図中矢印A方向)。
【0021】
インクジェットヘッド110のガラス基板1上の走査後は、図4の右図が示すように、機能性膜パターン部4上に、液滴Lが着弾される。隣りあう液滴Lの中心をaおよびbとし、機能性膜パターン部4への着弾後の液滴Lの半径をrとする。
【0022】
ここで、本発明の機能性膜パターン形成方法の描画工程においては、隣りあう着弾後の液滴Lの中心aおよびbの中心間距離Sの走査方向に対する垂直成分距離dとした場合に、dは、d<2rSINθの関係式を満たすこととする。中心間距離Sは、d/SINθであるため、この関係式を満足することで、中心間距離Sは2r未満となり、隣りあう着弾後の液滴L同士が重なり合うことになる。したがって、本発明の機能性膜パターン形成方法では、隣りあう着弾後の液滴の間を埋める2回目の走査の必要はない。中心間距離Sの走査方向に対する垂直成分距離dの決定については後述する。
【0023】
ここで、液滴Lを用いて機能性膜パターン部4上に、断線や短絡なく、所定の幅、厚みを有するパターンを描画する場合において、描画後の特性が均一とするため、隣りあう液滴Lの中心間距離Sは、直線からなる機能性膜パターンPにおいて略均一にする必要がある。ここで、着弾後の液滴Lの半径rは、液滴Lの粘度、表面張力、機能性膜パターン部4の濡れ性、液滴吐出速度等により決定されるものである。
【0024】
隣りあう液滴Lの中心間距離Sは、後述するとおり、インクジェットヘッドの傾きにより、決定されるものである。図5は、着弾後の液滴Lによる描画状態を示す図である。前述のとおり、インクジェットヘッド110は、載置台101の表面に垂直なZ軸回りの矢印R方向に回転自在で構成されているため(図1参照)、機能性膜パターン形成部4での着弾後の液滴Lによる描画は、図5に示すように、インクジェットヘッド110を傾けることで、吐出口111間の走査方向に対する垂直成分距離(図中垂直方向)を変化させることが可能である。すなわち、隣りあう液滴Lの中心間距離Sが着弾後の液滴Lの半径rの2倍に等しい場合には、波線描画(図5中央)、小さい場合には、直線描画(図5左)、大きい場合には、線を形成しない描画(図5右)となる。したがって、1回の走査工程で着弾後の隣あう液滴Lが重なりあい、直線描画(図5左)となるS<2rとなることが必要である。
【0025】
ここで、再び図4を参照すると、隣りあう液滴Lの中心間距離Sの走査方向に対しての垂直成分距離dは、機能性膜パターン部4の形状から角度θ、および液滴Lの特性等から半径rが決定されることにより、前述のd<2rSINθ(但し、θ≠0である)を満たすように決定されるものである。
【0026】
なお、従来の方法において、機能性膜パターン部4の走査方向に対して平行となる部分について描画する場合においては、平行でない部分における中心間距離Sと等間隔となるように、走査方向に対して平行な部分の真上に存在する吐出口111のみを圧電体の振動を制御することにより、吐出させている。
【0027】
描画終了後には、ガラス基板1は室温で乾燥処理が施される。また、この乾燥処理は室温で乾燥させてもよく、ホットプレートや電気炉等を使用してもよく、特に限定されるものではない。
【0028】
次に、本発明の機能性膜パターン形成の方法の焼成工程について説明する。本発明の機能性膜パターン形成方法においては、描画されたガラス基板上の機能性膜パターン形成部4に着弾されて液滴Lを機能性膜に変換するために、焼成工程が施される。焼成は、ガラス基板1がこのガラス基板1の耐熱温度以下となる条件で着弾された液滴Lを加熱することにより行う。この焼成の方法に制限はなく、電気炉内で行ってもよく、熱線を使用してもよい。
【0029】
熱線を使用した加熱処理としては、レーザ光線を使用し、レーザ光線を着弾された液滴Lに照射して緻密化させるレーザアニールや、熱線としてキセノンフラッシュランプ等を使用したフラッシュランプアニール等が挙げられる。
【0030】
レーザアニールに用いるレーザ光源としては特に制限なく、エキシマレーザ等のパルス発振レーザ、および連続発振レーザ(CWレーザ)が挙げられる。エキシマレーザ光等の短波長パルスレーザでは、機能性膜の表層で吸収されるエネルギーが大きく、基板に到達するエネルギーを制御しやすいため、好ましい。また、同様の理由により、パルスレーザを用いる場合は、そのパルス幅が100ns以下の短いものが好ましく、数10ns以下であることがより好ましい。
【0031】
以上により、ガラス基板1の機能性膜パターン形成部4に機能性膜パターンPが形成される。
【0032】
したがって、本発明の機能性膜パターン形成方法によれば、ガラス基板1上の機能性膜パターン部4の長手方向をインクジェットヘッド110の走査方向に対して、所定角度θ傾けるため、走査方向に対して平行となる機能性膜パターンPよりも低抵抗とすることができ、且つ隣りあう着弾後の液滴Lの中心間距離の走査方向に対しての垂直成分距離dが、着弾後の液滴Lの半径rとの間において、d<2rSINθとの関係を満足することにより、着弾後の液滴Lが重なりあうため、1回の走査で機能性膜パターンを描画できる。
【0033】
なお、本実施形態においては、基板をガラス基板1として説明したが、これに限定されるものではなく、フレキシブル基板等をも含むものである。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の機能性膜パターン形成方法について、本実施形態の機能性膜パターン形成装置100、電気炉を使用し、機能性膜パターンを形成することにより検証をおこなった。
【0035】
本実施例において、機能性微粒子Bは、平均粒径が3〜7nm程度のAgナノ粒子を用い、このAgナノ粒子分散溶液を、金属含有量:58wt%、粘度:10mPa・sで使用した。また、ガラス基板1として、直交する線状の機能性膜パターン部4を有する石英ガラス基板を使用した。
【0036】
(実施例1)
本発明の描画工程において、直交する線状の機能性膜パターン部4がインクジェットヘッド110の走査方向に対して、所定角度θが±45度となるように、石英ガラス基板を載置台101上に載置し、インクジェットヘッド110の吐出口111からAgナノ粒子分散溶液の液滴を吐出させ、インクジェットヘッド110を石英ガラス基板上で走査させ、機能性膜配線パターン部4に液滴Lを着弾させることにより描画した。
【0037】
隣りあう着弾後の液滴Lの中心間距離の走査方向に対しての垂直成分距離dは、着弾された液滴Lの中心間距離が、後述する比較例での着弾された液滴Lの中心間距離と等しい、30μm程度となるように、21μmに設定した。また、描画後は、室温において乾燥処理が施された。
【0038】
焼成工程においては、220℃に加熱した電気炉に入れ、60分間の大気雰囲気内で熱処理を行い、導電膜へ返還した。
【0039】
実施例1で形成された機能性膜パターンPの抵抗結果について説明する。走査方向に対して45度傾いた、幅64μm、長さ16mmの機能性膜パターンPのシート抵抗は、0.206Ω/sqであり、走査方向に対して、−45度傾いた、幅70μm、長さ16mmの機能性膜パターンPのシート抵抗は、0.223Ω/sqとなった。
【0040】
(比較例)
従来方法の描画工程において、直交する線状の機能性膜パターン部4がインクジェットヘッド110の走査方向に対して、垂直となる方向および平行となる方向を有するように、石英ガラス基板を載置台1上に載置した。着弾後の隣りあう液滴Lの中心間距離の走査方向に対しての垂直成分距離dは、30μmである。また、乾燥処理においては、走査方向に平行な方向の機能性膜パターン部4は、前述のとおり、吐出口111から吐出される液滴Lの周波数を制御することにより1回の走査で、着弾後の隣りあう液滴L同士が重なりあう描画が可能であり、走査方向に対して垂直な方向は、1回の走査で、着弾後の隣りあう液滴L同士は重なりあわない状態で乾燥処理が行われ、該乾燥処理後に2回の走査を行い、再度乾燥処理を行うため、乾燥処理の履歴に差が生じる以外は実施例1と同様とした。
【0041】
比較例で形成された機能性膜パターンPの抵抗結果について説明する。走査方向に対して平行な、幅100μm、長さ16mmの機能性膜パターンPのシート抵抗は、1.23Ω/sqであり、走査方向に対して垂直な、幅73μm、長さ16mmの機能性膜パターンPのシート抵抗は、0.223Ω/sqとなった。
【0042】
比較例の結果に基づく形状観察について説明する。図6Aは、比較例の走査方向に対して平行な場合のSEMによる機能性膜パターンの断面、図6Bは、比較例の走査方向に対して垂直な場合のSEMによる機能性膜パターンの断面を示すものである。また、断面は、それぞれの機能性膜パターンPの長手方向に垂直となる断面を示すものである。さらに、図6Aおよび図6Bは、焼成工程後の機能性膜パターンPの断面を示すものである。
【0043】
図6Aおよび6Bが示すように、走査方向に対して平行な機能性膜パターンPの粒子は、走査方向に対して垂直な機能性膜パターンPの粒子よりも大きく、疎な状態であり粒子同士のネットワークが悪い。一方で、走査方向に対して垂直な機能性膜パターンPの粒子は、走査方向に対して平行な機能性膜パターンPの粒子よりも小さく、密な状態であり粒子同士のネットワークがよい。
【0044】
実施例1および比較例の結果から、本発明の機能性膜パターン形成方法により、直交する機能性膜パターン形成部4を傾けることにより、直交する各方向の機能性膜パターンPのシート抵抗値が、機能性膜パターン形成部4を傾けない場合の、走査方向に対して平行な機能性膜パターンPのシート抵抗と比較して低抵抗となることが分かった。また、直交する各方向の機能性パターンPのシート抵抗値のばらつきが少なく、均一な特性となることもわかった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の機能性膜パターン形成方法に使用する基板の概略構成図
【図2】本発明の機能性膜パターン形成方法に使用する基板の要部拡大図
【図3】本発明の機能性膜パターン形成方法の描画工程に使用する機能性膜パターン形成装置の概略構成図
【図4】本発明の機能性膜パターン形成方法の描画工程を示す図
【図5】着弾後の液滴による描画の状態を示す図
【図6A】比較例の走査方向に対して平行な場合のSEMによる機能性膜パターンの断面
【図6B】比較例の走査方向に対して垂直な場合のSEMによる機能性膜パターンの断面
【図7A】電子ペーパにおける薄膜半導体の配置を示す図
【図7B】OLEDにおける薄膜半導体の配置を示す図
【符号の説明】
【0046】
B 機能性微粒子
L 液滴
P 機能性膜パターン
1 ガラス基板
4 機能性膜パターン部
110 インクジェットヘッド
111 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の間隔で配された複数の吐出口から機能性微粒子を含有した液滴を吐出するインクジェットヘッドを基板上で走査して、該基板上に着弾された前記液滴により直線からなる機能性膜パターン部に機能性膜パターンを形成する機能性膜パターン形成方法において、
前記直線からなる機能性膜パターン部の長手方向を前記インクジェットヘッドの走査方向に対して下記式を満足する所定角度θで傾けて走査することを特徴とする機能性膜パターン形成方法。
d<2rSINθ
(式中、dは、隣りあう前記液滴の中心間距離の前記走査方向に対する垂直成分距離、rは、前記液滴の着弾後の半径である。但し、θ≠0である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2009−291684(P2009−291684A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145710(P2008−145710)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100152401
【弁理士】
【氏名又は名称】我妻 慶一
【Fターム(参考)】