機能性薄膜素子及びその製造方法
【課題】薄膜積層型の機能性薄膜素子において、電極間の電流リークを防止する。
【解決手段】非導電性基板11上に金属機能薄膜を成膜し、この金属機能薄膜から所定の機能パターン12を形成した後に、その保護のために機能パターン12の上に非導電性薄膜である保護膜13を形成する。更に、電極膜を成膜してエッチングにより電極14a、14bを形成し、非導電性基板11の切断に際し保護膜13に設けた切断部13a、13bを共に切断し、保護膜13の周囲に生じた電極膜の残渣Sによる電極14a、14b間の電流リークを防止する。
【解決手段】非導電性基板11上に金属機能薄膜を成膜し、この金属機能薄膜から所定の機能パターン12を形成した後に、その保護のために機能パターン12の上に非導電性薄膜である保護膜13を形成する。更に、電極膜を成膜してエッチングにより電極14a、14bを形成し、非導電性基板11の切断に際し保護膜13に設けた切断部13a、13bを共に切断し、保護膜13の周囲に生じた電極膜の残渣Sによる電極14a、14b間の電流リークを防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングにより電極を形成する機能性薄膜素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の機能性薄膜素子の1つである磁気インピーダンス素子として、例えば特許文献1が知られている。これは非導電性基板上に磁気検知部としての金属機能薄膜から成る機能パターンを形成している。機能パターンの両端部に接続した電極にMHzオーダの高周波電流を印加すると、電極間のインピーダンスが外部磁界に応じて変化する。
【0003】
しかし、このような従来の磁気検出素子においては、機能パターンを保護するための非導電性膜が形成されておらず、実際にこの磁気検出素子を製造するには、保護膜は不可欠である。
【0004】
図13は保護膜を用いた磁気検出素子の斜視図であり、非導電性基板1上に機能パターン2が形成され、この機能パターン2の両端部に電極3a、3bが接続されている。また、機能パターン2上には非導電性の保護膜4が成膜されている。
【0005】
この磁気検出素子の製造に際しては、図14に示すように非導電性基板1の全面に金属機能薄膜5を成膜する。次に、フォトリソグラフィ工程によりレジストパターニングを行う。更に、図15に示すようにエッチング工程により磁気検知部として機能パターン2を形成する。
【0006】
続いて、機能パターン2を保護するために、図16に示すように非導電性の保護膜4を機能パターン2上に形成する。その後に、図17に示すように全面に銅膜等の電極膜6を成膜し、フォトリソグラフィ工程によりレジストパターニングを行う。
【0007】
更に、ドライエッチング工程により電極膜6をエッチングし、図18に示すように平面状の電極3a、3bを機能パターン2の両端部に接続して形成する。最後に、図19に示すようにダイシング等により磁気検出素子を切出しラインLに沿って切出して、図20に示すように個々の磁気検出素子に分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−116814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、このようにして製造した従来の磁気検出素子の電極3a、3b間の電気抵抗を測定すると、所定の抵抗値よりも明らかに小さくなり、電極3a、3b間で機能パターン12以外の部分で電流リークが生じていることがある。その理由は、ドライエッチング工程に際して保護膜4の外周部に電極膜6の残渣Sが付着することがあり、電流がこの導電性を有する残渣Sを伝導して電気的に両電極3a、3bが繋がってリークするためである。
【0010】
この電極膜6の残渣Sは、次のようなメカニズムで発生する。つまり、保護膜4を形成後に、図21に示すように、スパッタリング法又は蒸着法により電極膜6を全面に成膜し、フォトリソグラフィ工程により電極用レジスト機能パターンを形成する。その後のドライエッチングに際して、図22に示すように保護膜4の外周部において、保護膜4の段差部がドライエッチングの際に入射方向にばらつきを持つイオンの入射方向を制限してしまうことがある。
【0011】
これにより、エッチングされない影の部分が生じ、ドライエッチングの時間を長くしても、保護膜4の外周部の電極膜6の残渣Sを完全に除去することが困難となる。従って、図20に示すように、保護膜4の外周に残渣Sが残留する虞れが多分にあり、電流リークの原因となる。
【0012】
この残渣Sの発生を防止するためには、電極3a、3bの形成にウェットエッチング工程を用いることもできるが、他の薄膜の形成に使用するドライエッチングと工程を共用できないため、余分な工程を要する。
【0013】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、非導電性基板上に金属機能薄膜を成膜し、保護膜を形成しても電極間の電気絶縁性を確保することができる機能性薄膜素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る機能性薄膜素子は、非導電性基板上に複数個の素子を形成し、前記非導電性基板を切断することにより前記素子を分離することにより得られる機能性薄膜素子において、前記非導電性基板上に金属機能薄膜を形成し、該金属機能薄膜上に非導電性薄膜から成る保護膜を形成し、該保護膜は前記複数の電極間の両側の少なくとも2個所において、前記非導電性基板の切断と同一切断位置において切断したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る機能性薄膜素子の製造方法は、非導電性基板上に複数個の素子を形成し、前記非導電性基板を切断することにより前記素子を個々に分離することにより得る機能性薄膜素子において、前記非導電性基板上に金属機能薄膜を形成する工程と、前記金属機能薄膜上に非導電性薄膜から成る保護膜を形成する工程と、前記金属機能薄膜に接続するためにドライエッチングにより複数の電極を形成する工程と、前記電極の形成工程後に前記非導電性基板を切断する工程とを有し、該切断する工程において前記保護膜の両側の少なくとも2個所を前記非導電性基板と共に切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明による機能性薄膜素子及びその製造方法において、電極間で保護膜の一部を非導電性基板と同じ切断位置で切断することにより、電極間の電極膜の残渣に原因する導通を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の磁気検出素子の斜視図である。
【図2】非導電性基板上の全面に金属機能薄膜を成膜した平面図である。
【図3】金属機能薄膜による機能パターンを形成した状態の平面図である。
【図4】機能パターン上に保護膜を形成した状態の平面図である。
【図5】全面に電極膜を成膜した状態の平面図である。
【図6】電極膜により電極を形成した状態の平面図である。
【図7】保護膜の周囲に残渣が残留している状態の平面図である。
【図8】切出しラインLにより切断する説明図である。
【図9】保護膜を非導電性基板と共に切断した状態の平面図である。
【図10】実施例2の構成図である。
【図11】実施例3の構成図である。
【図12】実施例4の構成図である。
【図13】従来の磁気検出素子の斜視図である。
【図14】非導電性基板上の全面に金属機能薄膜を成膜した状態の平面図である。
【図15】機能パターンを形成した状態の平面図である。
【図16】機能パターン上に保護膜を形成した状態の平面図である。
【図17】全面に電極膜を成膜した状態の平面図である。
【図18】電極膜により電極を形成した状態の平面図である。
【図19】切出しラインLにより切断する説明図である。
【図20】保護膜の外周部に電極膜の残渣が付着している状態の説明図である。
【図21】保護膜の形成後に電極膜を成膜した状態の断面図である。
【図22】ドライエッチング工程で保護膜の外周部に電極膜の残渣が付着する状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を図1〜図12に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は実施例1の薄膜積層型の機能性薄膜素子の一例としての磁気検出素子の斜視図である。非導電性基板11上に金属機能薄膜から成る所定の機能パターン12を形成し、その上に非導電性薄膜である保護膜13を形成し、機能パターン12には電極14a、14bを接続している。
【0020】
実施例1の磁気検出素子が図13に示す従来の磁気検出素子と異なるところは、電極14aと14bの間において、保護膜13から切断部13a、13bが突出され、非導電性基板11と共に切断されていることである。
【0021】
このように保護膜13の一部の切断部13a、13bが非導電性基板11の端面と共に切断される。これにより、保護膜13の周囲に残った電極膜の残渣による電気伝導を切断部13a及び13bにより遮断し、これによって電極14a、14b間の電流リークを防止することができる。
【0022】
この磁気検出素子の製造に際しては、先ず図2に示すように非導電性基板11上の全面に、金属機能薄膜15を成膜する。次にフォトリソグラフィ工程により、この金属機能薄膜15に対するレジストパターニングを行い、エッチング工程により図3に示すような、例えば直線を並列してつづれ折り状に接続した磁気検知部の機能パターン12を形成する。
【0023】
続いて、機能パターン12を保護すると共に、後述する電極膜の生成に際し電極膜が機能パターン12に接触することを防止するために、図4に示すように保護膜13を成膜する。この保護膜13は例えば光反応性型ベンゾシクロブテン系、光反応型ポリイミド系、光反応型フルオレンアクリレート等による非導電性薄膜が使用されている。このとき、保護膜13から切断部13a、13bを突出しておき、後工程の非導電性基板11の切断に際して、この切断部13a、13bが共に切断されるようにする。なお、隣接する保護膜13間の切断部13a、13b間は保護膜13の生成に際して繋がれている。
【0024】
その後に、図5に示すように非導電性基板11の全面に銅膜等の電極膜16を成膜し、フォトリソグラフィ工程によりレジストパターニングを行う。続いて、ドライエッチング工程により電極膜16をエッチングし、図6に示すように平面状の電極14a、14bを機能パターン12の両端部に接続して形成する。
【0025】
このとき、従来例と同様に図7に示すように保護膜13の外周部に電極膜16の残渣Sが残留することがある。極端な場合には、残渣Sは図7に示すように保護膜13、切断部13a、13bの周囲の全てに残留することがある。この残渣Sによる電極14a、14b間の電流リークを防止するには、電極14a、14b間の保護膜13において残渣Sによる電気伝導を切断する必要がある。
【0026】
独立した磁気検出素子を得るためには、図8に示すようにダイシング等により磁気検出素子を切出しラインLに沿って非導電性基板11から切出して、分離することにより個々の磁気検出素子が完成する。
【0027】
この磁気検出素子を切り離すとき、図9に示すように切出しラインLに掛かる保護膜13の切断部13a、13bは非導電性基板11と共に切断される。これにより、切断部13a、13bの先端に付着した残渣Sは物理的に切断され電気的に絶縁する。そのため、電極14a、14b間において電気絶縁性を確保することができる。
【0028】
なお、本実施例においては、保護膜13が非導電性基板11の端部に位置する切断部13a、13bを、磁気検出素子の中央部分の近傍で保護膜13の両側にほぼ対称に各1個所ずつ配置した。しかし、この配置が前述の理由であることを考慮すると、必ずしも中央でなくとも、また複数個所ずつ設けてもよい。
【実施例2】
【0029】
図10は実施例2の構成図を示し、切出しラインLに位置する保護膜13の切断部の幅方向を機能パターン12の保護部分と同程度に幅広としている。この場合は、保護膜13を形成する際の塗布マスクの形状を簡素化できる。また、保護膜13の切断長が増加し、残渣Sをより多く除去できるので、より確実に電極14a、14b間を絶縁することができる。
【実施例3】
【0030】
図11は実施例3の構成図を示し、この実施例3においては、電極14a、14bの位置が前述の実施例と異なるが、電極14a、14b間において保護膜13の切断部13a、13bを非導電性基板11の切断位置に配置していることは同様である。
【実施例4】
【0031】
図12は実施例4の構成図を示し、3つの電極14a、14b、14c間の電気絶縁性を確保するため、保護膜13から4個の切断部13a、13b、13a’、13b’を突出している。
【0032】
このように、非導電性基板11の切出しラインLで切断する切断部13a、13b、・・・を電極14a、14b、14cの間に設ければ、電極14a、14b、14cの形状、数量によらずに有効に作用する。
【符号の説明】
【0033】
11 非導電性基板
12 機能パターン
13 保護膜
13a、13b 切断部
14a、14b、14c 電極
15 金属機能薄膜
16 電極膜
S 残渣
L 切出しライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングにより電極を形成する機能性薄膜素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の機能性薄膜素子の1つである磁気インピーダンス素子として、例えば特許文献1が知られている。これは非導電性基板上に磁気検知部としての金属機能薄膜から成る機能パターンを形成している。機能パターンの両端部に接続した電極にMHzオーダの高周波電流を印加すると、電極間のインピーダンスが外部磁界に応じて変化する。
【0003】
しかし、このような従来の磁気検出素子においては、機能パターンを保護するための非導電性膜が形成されておらず、実際にこの磁気検出素子を製造するには、保護膜は不可欠である。
【0004】
図13は保護膜を用いた磁気検出素子の斜視図であり、非導電性基板1上に機能パターン2が形成され、この機能パターン2の両端部に電極3a、3bが接続されている。また、機能パターン2上には非導電性の保護膜4が成膜されている。
【0005】
この磁気検出素子の製造に際しては、図14に示すように非導電性基板1の全面に金属機能薄膜5を成膜する。次に、フォトリソグラフィ工程によりレジストパターニングを行う。更に、図15に示すようにエッチング工程により磁気検知部として機能パターン2を形成する。
【0006】
続いて、機能パターン2を保護するために、図16に示すように非導電性の保護膜4を機能パターン2上に形成する。その後に、図17に示すように全面に銅膜等の電極膜6を成膜し、フォトリソグラフィ工程によりレジストパターニングを行う。
【0007】
更に、ドライエッチング工程により電極膜6をエッチングし、図18に示すように平面状の電極3a、3bを機能パターン2の両端部に接続して形成する。最後に、図19に示すようにダイシング等により磁気検出素子を切出しラインLに沿って切出して、図20に示すように個々の磁気検出素子に分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−116814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、このようにして製造した従来の磁気検出素子の電極3a、3b間の電気抵抗を測定すると、所定の抵抗値よりも明らかに小さくなり、電極3a、3b間で機能パターン12以外の部分で電流リークが生じていることがある。その理由は、ドライエッチング工程に際して保護膜4の外周部に電極膜6の残渣Sが付着することがあり、電流がこの導電性を有する残渣Sを伝導して電気的に両電極3a、3bが繋がってリークするためである。
【0010】
この電極膜6の残渣Sは、次のようなメカニズムで発生する。つまり、保護膜4を形成後に、図21に示すように、スパッタリング法又は蒸着法により電極膜6を全面に成膜し、フォトリソグラフィ工程により電極用レジスト機能パターンを形成する。その後のドライエッチングに際して、図22に示すように保護膜4の外周部において、保護膜4の段差部がドライエッチングの際に入射方向にばらつきを持つイオンの入射方向を制限してしまうことがある。
【0011】
これにより、エッチングされない影の部分が生じ、ドライエッチングの時間を長くしても、保護膜4の外周部の電極膜6の残渣Sを完全に除去することが困難となる。従って、図20に示すように、保護膜4の外周に残渣Sが残留する虞れが多分にあり、電流リークの原因となる。
【0012】
この残渣Sの発生を防止するためには、電極3a、3bの形成にウェットエッチング工程を用いることもできるが、他の薄膜の形成に使用するドライエッチングと工程を共用できないため、余分な工程を要する。
【0013】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、非導電性基板上に金属機能薄膜を成膜し、保護膜を形成しても電極間の電気絶縁性を確保することができる機能性薄膜素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る機能性薄膜素子は、非導電性基板上に複数個の素子を形成し、前記非導電性基板を切断することにより前記素子を分離することにより得られる機能性薄膜素子において、前記非導電性基板上に金属機能薄膜を形成し、該金属機能薄膜上に非導電性薄膜から成る保護膜を形成し、該保護膜は前記複数の電極間の両側の少なくとも2個所において、前記非導電性基板の切断と同一切断位置において切断したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る機能性薄膜素子の製造方法は、非導電性基板上に複数個の素子を形成し、前記非導電性基板を切断することにより前記素子を個々に分離することにより得る機能性薄膜素子において、前記非導電性基板上に金属機能薄膜を形成する工程と、前記金属機能薄膜上に非導電性薄膜から成る保護膜を形成する工程と、前記金属機能薄膜に接続するためにドライエッチングにより複数の電極を形成する工程と、前記電極の形成工程後に前記非導電性基板を切断する工程とを有し、該切断する工程において前記保護膜の両側の少なくとも2個所を前記非導電性基板と共に切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明による機能性薄膜素子及びその製造方法において、電極間で保護膜の一部を非導電性基板と同じ切断位置で切断することにより、電極間の電極膜の残渣に原因する導通を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の磁気検出素子の斜視図である。
【図2】非導電性基板上の全面に金属機能薄膜を成膜した平面図である。
【図3】金属機能薄膜による機能パターンを形成した状態の平面図である。
【図4】機能パターン上に保護膜を形成した状態の平面図である。
【図5】全面に電極膜を成膜した状態の平面図である。
【図6】電極膜により電極を形成した状態の平面図である。
【図7】保護膜の周囲に残渣が残留している状態の平面図である。
【図8】切出しラインLにより切断する説明図である。
【図9】保護膜を非導電性基板と共に切断した状態の平面図である。
【図10】実施例2の構成図である。
【図11】実施例3の構成図である。
【図12】実施例4の構成図である。
【図13】従来の磁気検出素子の斜視図である。
【図14】非導電性基板上の全面に金属機能薄膜を成膜した状態の平面図である。
【図15】機能パターンを形成した状態の平面図である。
【図16】機能パターン上に保護膜を形成した状態の平面図である。
【図17】全面に電極膜を成膜した状態の平面図である。
【図18】電極膜により電極を形成した状態の平面図である。
【図19】切出しラインLにより切断する説明図である。
【図20】保護膜の外周部に電極膜の残渣が付着している状態の説明図である。
【図21】保護膜の形成後に電極膜を成膜した状態の断面図である。
【図22】ドライエッチング工程で保護膜の外周部に電極膜の残渣が付着する状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を図1〜図12に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は実施例1の薄膜積層型の機能性薄膜素子の一例としての磁気検出素子の斜視図である。非導電性基板11上に金属機能薄膜から成る所定の機能パターン12を形成し、その上に非導電性薄膜である保護膜13を形成し、機能パターン12には電極14a、14bを接続している。
【0020】
実施例1の磁気検出素子が図13に示す従来の磁気検出素子と異なるところは、電極14aと14bの間において、保護膜13から切断部13a、13bが突出され、非導電性基板11と共に切断されていることである。
【0021】
このように保護膜13の一部の切断部13a、13bが非導電性基板11の端面と共に切断される。これにより、保護膜13の周囲に残った電極膜の残渣による電気伝導を切断部13a及び13bにより遮断し、これによって電極14a、14b間の電流リークを防止することができる。
【0022】
この磁気検出素子の製造に際しては、先ず図2に示すように非導電性基板11上の全面に、金属機能薄膜15を成膜する。次にフォトリソグラフィ工程により、この金属機能薄膜15に対するレジストパターニングを行い、エッチング工程により図3に示すような、例えば直線を並列してつづれ折り状に接続した磁気検知部の機能パターン12を形成する。
【0023】
続いて、機能パターン12を保護すると共に、後述する電極膜の生成に際し電極膜が機能パターン12に接触することを防止するために、図4に示すように保護膜13を成膜する。この保護膜13は例えば光反応性型ベンゾシクロブテン系、光反応型ポリイミド系、光反応型フルオレンアクリレート等による非導電性薄膜が使用されている。このとき、保護膜13から切断部13a、13bを突出しておき、後工程の非導電性基板11の切断に際して、この切断部13a、13bが共に切断されるようにする。なお、隣接する保護膜13間の切断部13a、13b間は保護膜13の生成に際して繋がれている。
【0024】
その後に、図5に示すように非導電性基板11の全面に銅膜等の電極膜16を成膜し、フォトリソグラフィ工程によりレジストパターニングを行う。続いて、ドライエッチング工程により電極膜16をエッチングし、図6に示すように平面状の電極14a、14bを機能パターン12の両端部に接続して形成する。
【0025】
このとき、従来例と同様に図7に示すように保護膜13の外周部に電極膜16の残渣Sが残留することがある。極端な場合には、残渣Sは図7に示すように保護膜13、切断部13a、13bの周囲の全てに残留することがある。この残渣Sによる電極14a、14b間の電流リークを防止するには、電極14a、14b間の保護膜13において残渣Sによる電気伝導を切断する必要がある。
【0026】
独立した磁気検出素子を得るためには、図8に示すようにダイシング等により磁気検出素子を切出しラインLに沿って非導電性基板11から切出して、分離することにより個々の磁気検出素子が完成する。
【0027】
この磁気検出素子を切り離すとき、図9に示すように切出しラインLに掛かる保護膜13の切断部13a、13bは非導電性基板11と共に切断される。これにより、切断部13a、13bの先端に付着した残渣Sは物理的に切断され電気的に絶縁する。そのため、電極14a、14b間において電気絶縁性を確保することができる。
【0028】
なお、本実施例においては、保護膜13が非導電性基板11の端部に位置する切断部13a、13bを、磁気検出素子の中央部分の近傍で保護膜13の両側にほぼ対称に各1個所ずつ配置した。しかし、この配置が前述の理由であることを考慮すると、必ずしも中央でなくとも、また複数個所ずつ設けてもよい。
【実施例2】
【0029】
図10は実施例2の構成図を示し、切出しラインLに位置する保護膜13の切断部の幅方向を機能パターン12の保護部分と同程度に幅広としている。この場合は、保護膜13を形成する際の塗布マスクの形状を簡素化できる。また、保護膜13の切断長が増加し、残渣Sをより多く除去できるので、より確実に電極14a、14b間を絶縁することができる。
【実施例3】
【0030】
図11は実施例3の構成図を示し、この実施例3においては、電極14a、14bの位置が前述の実施例と異なるが、電極14a、14b間において保護膜13の切断部13a、13bを非導電性基板11の切断位置に配置していることは同様である。
【実施例4】
【0031】
図12は実施例4の構成図を示し、3つの電極14a、14b、14c間の電気絶縁性を確保するため、保護膜13から4個の切断部13a、13b、13a’、13b’を突出している。
【0032】
このように、非導電性基板11の切出しラインLで切断する切断部13a、13b、・・・を電極14a、14b、14cの間に設ければ、電極14a、14b、14cの形状、数量によらずに有効に作用する。
【符号の説明】
【0033】
11 非導電性基板
12 機能パターン
13 保護膜
13a、13b 切断部
14a、14b、14c 電極
15 金属機能薄膜
16 電極膜
S 残渣
L 切出しライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性基板上に複数個の素子を形成し、前記非導電性基板を切断することにより前記素子を分離することにより得られる機能性薄膜素子において、前記非導電性基板上に金属機能薄膜を形成し、該金属機能薄膜上に非導電性薄膜から成る保護膜を形成し、該保護膜は前記複数の電極間の両側の少なくとも2個所において、前記非導電性基板の切断と同一切断位置において切断したことを特徴とする機能性薄膜素子。
【請求項2】
非導電性基板上に複数個の素子を形成し、前記非導電性基板を切断することにより前記素子を個々に分離することにより得る機能性薄膜素子において、前記非導電性基板上に金属機能薄膜を形成する工程と、前記金属機能薄膜上に非導電性薄膜から成る保護膜を形成する工程と、前記金属機能薄膜に接続するためにドライエッチングにより複数の電極を形成する工程と、前記電極の形成工程後に前記非導電性基板を切断する工程とを有し、該切断する工程において前記保護膜の両側の少なくとも2個所を前記非導電性基板と共に切断することを特徴とする機能性薄膜素子の製造方法。
【請求項3】
前記保護膜の切断位置は主たる前記保護膜から側方に突出した切断部としたことを特徴とする請求項2に記載の機能性薄膜素子の製造方法。
【請求項1】
非導電性基板上に複数個の素子を形成し、前記非導電性基板を切断することにより前記素子を分離することにより得られる機能性薄膜素子において、前記非導電性基板上に金属機能薄膜を形成し、該金属機能薄膜上に非導電性薄膜から成る保護膜を形成し、該保護膜は前記複数の電極間の両側の少なくとも2個所において、前記非導電性基板の切断と同一切断位置において切断したことを特徴とする機能性薄膜素子。
【請求項2】
非導電性基板上に複数個の素子を形成し、前記非導電性基板を切断することにより前記素子を個々に分離することにより得る機能性薄膜素子において、前記非導電性基板上に金属機能薄膜を形成する工程と、前記金属機能薄膜上に非導電性薄膜から成る保護膜を形成する工程と、前記金属機能薄膜に接続するためにドライエッチングにより複数の電極を形成する工程と、前記電極の形成工程後に前記非導電性基板を切断する工程とを有し、該切断する工程において前記保護膜の両側の少なくとも2個所を前記非導電性基板と共に切断することを特徴とする機能性薄膜素子の製造方法。
【請求項3】
前記保護膜の切断位置は主たる前記保護膜から側方に突出した切断部としたことを特徴とする請求項2に記載の機能性薄膜素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−61266(P2013−61266A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200389(P2011−200389)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]