説明

機能性複合食品およびその製造方法

【課題】本発明は、油脂性食品が基食材内部に含浸されて一体化しており、しかも機能的栄養成分を含有し、菓子のように手軽に摂取することができる食品類およびその製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の機能性複合食品は、23℃において固体状であり、加温により流動性を示す油脂性食品生地(A)が、基食材(B)の内部に含浸されており、前記油脂性食品生地(A)が、100重量部中に0.5〜50重量部の範囲で、栄養強化機能成分を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養強化機能成分を含有する機能性複合食品およびその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、栄養強化機能成分を含有する油脂性菓子生地が基食材中に含浸された、新規な機能性複およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートやファットスプレッドなどを主材とした油脂性菓子は、溶融成形が可能であることから、ビスケットなどの他の食材と組み合わせて、複合菓子を形成できることが知られている。たとえば、チョコレートと他の食材とを組み合わせた食品としては、他の食材の表面をチョコレートで被覆したもの、粒状などの他の食材をチョコレートで固めたもの、容器状または中空状の他食材の内部にチョコレートを充填したものなどが以前から知られている。
【0003】
そして近年、他の食材の内部までチョコレートが浸透し、他の食材とチョコレートとがより一体化した食品が提案されている。たとえば特許文献1には、クルトンと、350ポイズ以下の粘性のチョコレートとを混合して減圧装置内に入れ、減圧装置内を減圧して気泡を排出させた後、常圧に戻してチョコレートを浸透させ、余分なチョコレートを振動ふるいで除去して冷却固化させるチョコレート浸透クルトンが提案されている。また特許文献2には、融液状のチョコレートにビスケットなどの含気泡食材を埋没させ、減圧下で含気泡食材を脱気し、常圧に戻すことにより、チョコレートを含気泡食材に含浸させることが記載されている。しかしながら、特許文献1および2の方法では、含浸する食材を液状のチョコレートに浸漬した後に減圧処理を行うため、食材に含浸されずに余ったチョコレート中に、食材の破片などが多く混入し、余ったチョコレートを再利用する際に品質の管理が困難であった。また、これらの方法では、たとえばフリーズドライ果物などの、含浸する食材の表面の細孔が小さいかまたは少ない場合には、食品内部までチョコレートを含浸することが困難であるという問題があった。
【0004】
本出願人は、このような状況において、多孔質構造の空隙を有する基食材と、溶融状態のチョコレートとを、減圧条件で接触させることにより、基食材中にチョコレートが含浸された食品が得られることを見出し、既に提案している(特許文献3)。
【0005】
ところで近年、健康志向が高まるとともに、食品・菓子類においても、健康維持あるいは増進を目的とした機能の付与が求められており、新しい食品・菓子・スイーツなどが求められている。菓子に機能的栄養成分を添加する技術としては、チョコレート中のポリフェノール成分を増強した菓子等が知られている他、特許文献4には、基本菓子成分と、キャリアボディに各種活性成分を添加した付加的菓子成分とからなる菓子が提案されている。
【0006】
しかしながら、油脂性菓子が基食材内部に含浸されて一体化しており、しかも機能的栄養成分を含有する食品類およびその製造方法は見出されていなかった。
【特許文献1】特開平9−308431号公報
【特許文献2】WO97/47207号公報
【特許文献3】特開2004−254529号公報
【特許文献4】特表2004−500003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、油脂性食品が基食材内部に含浸されて一体化しており、しかも機能的栄養成分を含有し、菓子のように手軽に摂取することができる食品類およびその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の機能性複合食品は、23℃において固体状であり、加温により流動性を示す油脂性食品生地(A)が、基食材(B)の内部に含浸されており、
前記油脂性食品生地(A)が、100重量部中に0.5〜50重量部の範囲で、栄養強化機能成分を含有することを特徴としている。
【0009】
このような本発明の機能性複合食品は、油脂性食品生地(A)が、チョコレート生地であることが好ましい。
本発明の機能性複合食品は、栄養強化機能成分が、ビタミン類、ポリフェノール類、補酵素類、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、多糖類、動植物抽出物、不飽和脂肪酸、ミネラル類よりなる群から選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の機能性複合食品は、栄養強化機能成分が、脂溶性であることが好ましい。
本発明の機能性複合食品は、栄養強化機能成分が、CoQ10および/またはビタミンEを含有することが好ましい。
【0011】
本発明の機能性複合食品は、基食材(B)が、多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%であることが好ましい。
本発明の機能性複合食品は、基食材(B)が、凍結乾燥果物であることが好ましく、また、穀類を主成分とし、加熱して得られる食材であることも好ましい。
【0012】
本発明の機能性複合食品の製造方法は、
(a1)少なくとも一部が多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%である基食材(B)を、10〜50,000Paに減圧処理し、減圧状態に保ちながら、溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触し、次いで昇圧することにより、基食材の空隙内部に溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸させる含浸処理工程と、
(b)冷却により基食材(B)中の油脂性食品生地(A)を固化させる冷却工程と
を有し、油脂性食品生地(A)が、23℃において固体状であり、かつ、100重量部中に0.5〜50重量部の範囲で栄養強化機能成分を含有することを特徴としている。
【0013】
また本発明の機能性複合食品の製造方法は、
(a2)少なくとも一部が多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%である基食材(B)と、溶融状態の油脂性食品生地(A)とを接触し、10〜50,000Paに減圧処理し、次いで昇圧することにより、基食材の空隙内部に溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸させる含浸処理工程と、
(b)冷却により基食材(B)中の油脂性食品生地(A)を固化させる冷却工程と
を有し、油脂性食品生地(A)が、23℃において固体状であり、かつ、100重量部中に0.5〜50重量部の範囲で栄養強化機能成分を含有することを特徴としている。
【0014】
上記いずれかの本発明の機能性複合食品の製造方法では、油脂性食品生地(A)が、チョコレート生地であることが好ましい。
本発明の機能性複合食品の製造方法では、栄養強化機能成分が、ビタミン類、ポリフェノール類、補酵素類、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、多糖類、動植物抽出物、不飽和脂肪酸、ミネラル類、経口摂取可能な医薬品よりなる群から選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の機能性複合食品の製造方法では、栄養強化機能成分が、脂溶性であることが好ましい。
本発明の機能性複合食品の製造方法では、栄養強化機能成分が、コエンザイムQ10および/またはビタミンEを含有することが好ましい。
【0016】
本発明の機能性複合食品の製造方法では、基食材(B)が、多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%であることが好ましい。
本発明の機能性複合食品の製造方法では、基食材(B)が、凍結乾燥果物であることが好ましく、また、基食材(B)が、穀類を主成分とし、加熱して得られる食材であることも好ましい。
【0017】
本発明の機能性複合食品の製造方法では、BROOKFIELD粘度計を用い、回転数60r.p.m.で測定した、溶融状態の油脂性食品生地(A)の粘度が、含浸処理時の温度において100〜100,000センチポイズであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、栄養強化機能成分を含有し、油脂性食品生地が基食材の内部に含浸されて一体化した、菓子のように手軽に摂取することができる機能性複合食品、およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について具体的に説明する。
<機能性複合食品>
本発明に係る機能性複合食品は、油脂性食品生地(A)と、基食材(B)とから構成される。
【0020】
油脂性食品生地(A)
本発明に係る油脂性食品生地(A)は、23℃(常温)において固体状であり、加温により少なくとも一部が溶融して流動性を示すものであって、冷却により固化する。
【0021】
油脂性食品生地(A)としては、特に限定されるものではないが、主成分が、チョコレート、バターまたはファットスプレッドであることが好ましく、主成分がチョコレートであることがより好ましい。
【0022】
本発明において、チョコレートとは、チョコレート利用食品の規格によるチョコレートのみを意味するものではなく、常温で固体状であり、加温により溶融状態となり、冷却により固化する、チョコレート類あるいはチョコレート類似食品や硬化油脂をいずれも含有する。たとえば、チョコレート類、ミルクチョコレート類、ホワイトチョコレート類、香料等により各種風味を有するチョコレート類などをいずれも好適に用いることができる。
【0023】
本発明に係る油脂性食品生地(A)は、その全量(100重量部)中に、0.1〜70重量部、好ましくは0.2〜60重量部、より好ましくは0.5〜50重量部の範囲で、栄養強化機能成分を含有する。この栄養強化機能成分の含有量は、油脂性食品生地(A)が2種類以上の栄養強化機能成分を含有する場合には、各機能成分の合計が上記範囲内となる量であればよい。
【0024】
栄養強化機能成分としては、経口摂取する栄養成分として公知のものをいずれも用いることができ、サプリメント成分として公知のものが好適に用いられる。本発明で用いる栄養強化機能成分としては、以下の例示に限定されるものではないが、たとえば、ビタミン類、ポリフェノール類、補酵素類、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、多糖類、動植物抽出物
、不飽和脂肪酸、ミネラル類、食物繊維、経口摂取可能な医薬品等が挙げられる。
【0025】
ビタミン類としては、たとえば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンKなどの油溶性ビタミン 類およびその誘導体;ビタミンB1、ビタミンB2、
ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンL、ビタミンP、ニコチン酸、パントテン酸、コリンなどの水溶性ビタミン 類およびその誘導体等を挙げることができる

【0026】
ポリフェノール類としては、アントシアニン、カテキン、イソフラボン等を挙げることができる。
補酵素類としては、ビタミン類、ミネラル類以外では、CoQ10(コエンザイムQ10)等が挙げられる。
【0027】
アミノ酸としては、必須アミノ酸および非必須アミノ酸が挙げられる。
ペプチドとしては、大豆ペプチド、ゴマペプチド、海洋性コラーゲンペプチド等が挙げられる。
【0028】
蛋白質としては、大豆蛋白質、コラーゲン等が挙げられる。
多糖類としては、βグルカン、アラビノキシラン、ヒアルロン酸等が挙げられる。
動植物抽出物としては、各種動植物エキスが挙げられる。
【0029】
不飽和脂肪酸としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸等が挙げられる。
ミネラル類としては、亜鉛、カルシウム、鉄、銅、マグネシウムおよびその他の微量元素、ならびにこれらの塩類等が挙げられる。
【0030】
食物繊維としては、セルロース、ペクチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
経口摂取可能な医薬品としては、中枢神経用医薬、末梢神経用医薬、感覚器官用医薬、循環器官用医薬、呼吸器官用医薬、消化器官用医薬、ホルモン剤(抗ホルモン剤含む)、歯科口腔用医薬、滋養強壮薬、血液・体液用医薬、生薬、漢方製剤、抗生物質製剤、化学療法剤、生物学製剤等が挙げられる。
【0031】
これらの栄養強化機能成分は、単離されたものであってもよく、また、複数の成分を含有するものであってもよい。またこれら栄養機能成分は液体若しくは微粉末の形態が望ましく、微粉末の場合は粒径が10nm〜100μmが望ましい。
【0032】
本発明では、栄養強化機能成分は、油脂性食品生地(A)内に溶解、分散あるいは乳化されていればよく、水溶性のものおよび油溶性のもののいずれも用いることができるが、栄養強化機能成分が油溶性の成分であることがより好ましい。
【0033】
特に、栄養強化機能成分がCoQ10および/またはビタミンEもしくはその誘導体を含有する場合には、油脂性食品生地(A)内の含有量が多くなるにつれて、溶融状態としたときの油脂性食品生地(A)の粘度が低下し、基食材(B)への含浸がより容易になるため好ましい。
【0034】
本発明で用いる油脂性食品生地(A)は、含浸処理時の温度において、BROOKFIELD粘度計を用い、回転数60r.p.m.で測定した溶融状態の粘度が、通常100〜100,000センチポイズ、好ましくは150〜15,000センチポイズであることが望ましく、基食材の種類にもよるが、このような範囲であれば好適に含浸することができる。溶融状態での油脂性食品生地(A)の粘度は、油脂性食品生地(A)の基材の種類、添加する栄養
強化機能成分の種類および量、含浸温度条件、乳化剤などの添加剤等によって調整することができる。
【0035】
基食材(B)
本発明に係る基食材(B)は、その少なくとも一部に多孔質構造の空隙を有し、溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸により内部に充填することが可能な食材である。本発明に係る基食材(B)は、油脂性食品生地(A)含浸する時点で、該生地(A)を充填しうる多孔質構造の空隙を有していればよく、たとえば、多孔質構造の空隙中に水分などが存在する基食材であっても、含浸処理工程の減圧で基食材中の水分が除去され、多孔質構造の空隙が生じる基食材は、本発明に係る基食材(B)として用いることができる。
【0036】
本発明に係る基食材(B)は、少なくとも一部に多孔質構造の空隙を有し、含水率が50%以下、好ましくは40%以下であるのが望ましい。このように含水率が低い食材を用いた場合には、得られる本発明の機能世複合菓子が保存性に優れると共に、含浸されずに余剰となった油脂性食品生地(A)に水分が混入するのを避けることができ、余剰の油脂性食品生地(A)を好適に再利用することができる。
【0037】
このような基食材(B)としては、たとえば、
パイ、ワッフル、パン類(食パン、黒パン、コッペパン、フランスパン等)などの含水率30〜40%程度の食材;
ドーナツなどの含水率20〜30%程度の食材;
マッシュポテトフレーク、ポテトチップス、ポップコーン、コーンフレーク、各種せんべい、あられ、おこし、かりんとう、ウェハース、クラッカー、クッキー、ビスケット、ボーロ、クルトン、ロシアケーキ、ベーグルなどの含水率20%以下の食材;
フリーズドライ食材:たとえば、果実類(苺、ぶどう、ブルーベリー、レモン、マンゴー、ラズベリー、バナナ、リンゴ、クランベリー、オレンジ、チェリー、桃など)、野菜類、調理食品類などを凍結乾燥して得られる含水率10%以下の食材などが挙げられる。
【0038】
このような基食材(B)のうち、本発明では、凍結乾燥して得られる食材が好ましく用いられる。いわゆるフリーズドライ食材などの凍結乾燥して得られる食材は、原料の食材を凍結乾燥する際に、食材中の水分が凍結し、該水分が昇華することにより、本発明の機能性複合食品を製造するのに好適な多孔質構造の空隙を通常有する。凍結乾燥した食材は、該食品を凍結乾燥せずに用いる場合よりも、形体安定性に優れ、良好な多孔質構造の空隙を有することにより、基食材(B)の形状を損なうことなく油脂性食品生地(A)が良好に充填された機能性複合食品を得ることができる。
【0039】
本発明では、基食材(B)のうち、穀類を主成分とし加熱して得られる食材、たとえば上述したパイ、ワッフル、パン類、ドーナツ、ポップコーン、コーンフレーク、各種せんべい、あられ、おこし、かりんとう、ウェハース、クラッカー、クッキー、ビスケット、ボーロ、クルトン、ロシアケーキ、ベーグルなどを好適に用いることができ、このような基食材(B)を用いる場合には、空隙が比較的大きいため、比較的高粘度の油脂性食品生地(A)をも含浸することができる。
【0040】
また本発明では、これらの基食材(B)のうち、フリーズドライ苺、フリーズドライブルーベリーなどの凍結乾燥果物、高野豆腐などの凍結乾燥物、表面が円滑な性状を有する焼き菓子、発泡菓子、揚げた食材、微粉末を圧縮固化させた食材など、表面に細孔が少ない食品、または表面の細孔径がごく小さい食品など、溶融状態の油脂性食品生地(A)に単に浸漬しただけでは油脂性食品生地(A)が内部の空隙に含浸されにくい、多孔質構造の空隙を内部に有する難含浸性の食材をも、基食材(B)として好適に用いることができる。
【0041】
このように基食材(B)が難含浸性の場合は、そのまま含浸処理に供してもよいが、マイクロ波処理、短時間の加熱処理などの処理を施して含浸処理に供することも好ましい。難含浸性の基食材(B)に対して、マイクロ波処理あるいは短時間の加熱処理を施すと、基食材(B)表面が加熱され、基食材(B)表面の細孔径の拡大、基食材表面の細孔の増加、基食材の硬化による形状保持力の向上などの効果が得られる場合があり好ましい。
【0042】
また、基食材(B)が、パンやカステラなど、外部圧力による変形を生じやすい柔らかいものであっても、マイクロ波処理あるいは短時間の加熱処理を施すことが好ましく、これらの処理により、基食材の硬度が上昇し、形状保持力を向上させることができる。特に、柔らかい基食材を用い、含浸処理工程を後述する(a2)の方法により行う場合など、含浸処理工程で大気圧以上の加圧を行う場合には、マイクロ波処理あるいは短時間の加熱処理を、含浸処理前に柔らかい基食材に施すことが好ましい。これにより、基食材(B)の形状保持力を向上させ、加圧による変形を軽減または回避させることができる。
【0043】
難含浸性の基食材または変形を生じやすい柔らかい基食材に対しての、マイクロ波処理あるいは加熱処理は、基食材(B)の表面性状のみが変化し、基食材(B)内部が変性しない条件で行うのが好ましい。このような目的で基食材(B)にマイクロ波処理を行う場合には、基食材(B)の種類あるいは量にもよるが、たとえば電子レンジを用いた700Wでのマイクロ波処理を、通常0.5〜15秒、好ましくは1〜10秒、より好ましくは1〜7秒程度行うのが望ましい。
【0044】
また本発明では、基食材に対して加熱調理を行うことを目的として、マイクロ波処理あるいは加熱処理を施してもよく、この場合には所望の調理程度となる条件で加熱処理あるいはマイクロ波処理をすることができる。
【0045】
本発明で用いる基食材(B)は、少なくとも一つの開口を有していてもよい。開口の形状は、穴状、スリット状など、どのような形状でもよく、限定されるものではない。基食材(B)が少なくとも一つの開口を有する場合には、基食材内部まで油脂性食品生地(A)を含浸させやすいため好ましい。
【0046】
たとえば、種を除去した部分などの空洞部を有する凍結乾燥した果物、野菜など、基食材(B)が多孔質構造ではない空洞を内部に有する場合には、内部の空洞と基食材の外表面とを連通する部位(穴または開口)を有することが好ましい。また、内部に多孔質構造を有し、外表面に細孔が少ない食品または外表面の細孔径がごく小さい食品などの難含浸性の食品を基食材(B)として用いる場合には、内部の多孔質部と外表面とを連通する部位(穴または開口)を有することが好ましい。このような基食材(B)を用いた場合には、基食材内部まで容易に油脂性食品生地(A)を充填することができ、空洞内部や多孔質内部まで充分に油脂性食品生地(A)が充填された機能性複合食品が好適に得られる。
【0047】
また本発明では、基食材(B)として、穀物を主成分とし、加熱して得られる食材も好ましく用いることができる。このような食材としては、穀物を主成分とする原料を、焼く、揚げる、蒸す、単に加熱するなどの方法で得られるものが挙げられ、たとえば、パイ、ワッフル、食パン、コッペパン、フランスパン、ドーナツ、ポップコーン、煎餅、あられ、おこし、かりんとう、ウェハース、クラッカー、ビスケット、ボーロ、クルトン、ロシアケーキ、ベーグルなどが挙げられる。これらの食材は、菓子を構成する基食材として好適であり、空隙率の大きい多孔質構造を有し、油脂性食品生地(A)が良好に充填された機能性複合食品を得ることができるため、基食材(B)として好適である。
【0048】
本発明の機能性複合食品は、油脂性食品生地(A)中に栄養強化機能成分を含有してい
ればよいが、油脂性食品生地(A)とともに、基食材(B)が栄養強化機能成分を含有していてもよい。基食材(B)が栄養強化機能成分を含有する場合、基食材(B)中に含まれる栄養強化機能成分は、油脂性食品生地(A)中に含まれるものと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
<機能性複合食品の製造>
本発明に係る機能性複合食品は、含浸処理工程(a)と、冷却工程(b)とを有する製造方法により好適に製造できる。
【0050】
含浸処理工程(a)
本発明に係る含浸処理工程(a)としては、下記(a1)および(a2)のいずれかの含浸処理工程が挙げられる。
【0051】
(a1)少なくとも一部が多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%である基食材(B)を、10〜50,000Paに減圧処理し、減圧状態に保ちながら、溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触し、次いで昇圧することにより、基食材(B)の空隙内部に溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸させる含浸処理工程。
【0052】
(a2)少なくとも一部が多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%である基食材(B)と、溶融状態の油脂性食品生地(A)とを接触し、10〜50,000Paに減圧処理し、次いで昇圧することにより、基食材(B)の空隙内部に溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸させる含浸処理工程。
【0053】
まずは上記(a1)の含浸処理工程について説明する。
含浸処理工程(a1)において、基食材(B)の減圧処理、すなわち基食材(B)と溶融状態の油脂性食品生地(A)とが接触しない状態で基食材(B)を減圧するいわゆるドライバキュームは、減圧装置内に基食材(B)を収容し、基食材(B)周囲を通常10〜50,000Pa、好ましくは100〜10,000Pa、特に好ましくは100〜5,000Pa程度まで減圧して行うことができる。この減圧処理により、基食材(B)の多孔質構造の空隙またはその他の空隙に存在する、水分、低揮発成分または空気が、基食材(B)の外部に排出され、基食材(B)が有する空隙が基食材(B)周囲と同等の減圧状態となる。減圧処理時の圧力は、温度条件および所望の含浸程度などにより、適宜調整することができる。
【0054】
このような、基食材(B)の減圧処理では、圧力が低く減圧度が高いほど、基食材(B)中の空気などが排出されやすく、高度な含浸を行うことができるが、好適な圧力条件は温度によっても異なるものであり、高温度においては比較的小さい減圧度でもよく、低温度においては大きな減圧度を必要とする傾向がある。
【0055】
次いで、基食材(B)を減圧状態に保ちながら、溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触する。基食材(B)と溶融状態の油脂性食品生地(A)との接触は、その方法を特に限定するものではなく、減圧下で基食材(B)の含浸部位が充分に溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触されればよく、浸漬などの方法が挙げられ、たとえば、容器に入った基食材(B)を減圧装置内に収容している場合には、減圧処理による減圧状態を保持したまま、基食材(B)の入った容器に溶融状態の油脂性食品生地(A)を注入するなどの方法により行うことができる。
【0056】
減圧処理および減圧状態における圧力条件は、大気圧よりも低い圧力であればよいが、減圧状態では、減圧処理による減圧度をできるだけ保持した圧力条件であるのが好ましく、通常10〜50,000Pa、好ましくは100〜10,000Pa、特に好ましくは、含浸する溶融状態の油脂性食品生地(A)の粘度が低い場合で1,000〜10,000Pa、含浸する溶融状態の油脂性食品生地(A)の粘度が比較的高い場合で100〜5,000Pa程度の圧力条件であるのが望ましい。
【0057】
このようにして、減圧処理した基食材(B)を、減圧状態に保ちながら溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触した後、減圧装置内の圧力を昇圧することによって、溶融状態の油脂性食品生地(A)が基食材(B)中に含浸される。本発明では、減圧装置内の圧力を昇圧する前に、減圧状態での基食材(B)と溶融状態の油脂性食品生地(A)との接触を、一定時間保持してもよく、また、基食材(B)と溶融状態の油脂性食品生地(A)とが接触した状態でさらに減圧を行ってもよい。
【0058】
含浸処理工程(a)における昇圧は、溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触した基食材(B)の雰囲気圧力が、通常10,000Pa〜1.1MPa、好ましくは0.1MPa(大気圧)〜0.9MPa程度の圧力まで上昇する条件で行うのが望ましい。
また、含浸処理工程(a)における昇圧は、大気圧よりも高い圧力、たとえば0.11〜0.8MPa程度の圧力まで上昇する条件とすることも好ましい。昇圧をこのような加圧条件とする場合には、基食材(B)への溶融状態の油脂性食品生地(A)の含浸量をより多くすることができ、難含浸性の基食材(B)へも溶融状態の油脂性食品生地(A)の含浸を好適に行うことができる。
【0059】
昇圧は、通常、エアパージなどで減圧状態を解除するなどの方法により、大気圧(0.1MPa)程度まで圧力を上昇させることにより行うことができるが、さらに加圧を行ってもよい。大気圧よりもさらに加圧を行う場合には、適宜加圧装置を用いることができる。このような加圧は、たとえば、減圧操作を行う容器に耐圧容器を採用して減圧処理した後、溶融状態の油脂性食品生地(A)中に基食材(B)が浸漬された状態で、装置内に、空気、窒素ガス、炭酸ガスなどの気体を導入して所望の加圧状態まで昇圧することにより行うことができる。また、昇圧に用いる気体としては、細菌や夾雑物などを含まないよう、滅菌、フィルター通過などを行ったガスも好ましく用いられ、また食品の酸化を防止するため、酸素含有量の低いガスも好ましく用いられる。
【0060】
このような含浸処理工程(a1)によれば、含浸前の基食材(B)の空隙に、空気などの気体成分、あるいは、水、低揮発成分などの液体成分のいずれが含まれている場合であっても、含浸する溶融状態の油脂性食品生地(A)と好適に置換して、含浸処理を好適に達成することができる。
【0061】
含浸処理工程(a1)において、含浸前の基食材(B)の空隙に含まれていた液体成分を減圧処理により排出し、次いで溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触する場合、排出された液体成分が液状を保持しているときには、排出された液体成分を除去した後に溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触させると、排出された液体成分と溶融状態の油脂性食品生地(A)とが混合されないため、基食材(B)に含浸されない余剰の溶融状態の油脂性食品生地(A)を好適に再利用することができる。また、排出された液体成分が減圧により揮発している場合には、そのまま基食材(B)の入った容器に溶融状態の油脂性食品生地(A)を注入しても、溶融状態の油脂性食品生地(A)と排出された液体成分との混合はほとんどないため、基食材(B)に含浸されない余剰の溶融状態の油脂性食品生地(A)を好適に再利用することができる。
【0062】
次に、上記(a2)の含浸処理工程について説明する。
含浸処理工程(a2)において、含浸処理前の基食材(B)を溶融状態の油脂性食品生地(A)に浸漬するなどの方法で接触した状態で減圧処理する、いわゆるウェットバキュームは、たとえば、容器中に基食材(B)および溶融状態の油脂性食品生地(A)を入れて、基食材(B)が溶融状態の油脂性食品生地(A)に浸漬された状態とし、この容器を減圧装置中に導入して減圧することにより行うことができる。このような減圧処理は、通常10〜50,000Pa、好ましくは100〜10,000Pa、特に好ましくは、含浸する溶融状態の油脂性食品生地(A)の粘度が低い場合で1,000〜10,000Pa、含浸する溶融状態の油脂性食品生地(A)の粘度が比較的高い場合で100〜5,000Pa程度の圧力条件で行うのが望ましい。の含浸処理工程(a2)では、このようにして、基食材(B)を溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触した状態で減圧処理する。
【0063】
次いで、減圧装置内の圧力を昇圧することによって、基食材(B)と接触している溶融状態の油脂性食品生地(A)が、基食材(B)中に含浸される。昇圧は、通常10,000Pa〜1.1MPa、好ましくは0.1MPa(大気圧)〜0.9MPa程度の圧力まで上昇する条件で行うのが望ましく、大気圧よりも高い圧力、たとえば0.11〜0.8MPa程度の圧力まで上昇する条件とすることがより好ましい。
【0064】
昇圧は、通常、エアパージなどで減圧状態を解除するなどの方法により大気圧程度までの圧力上昇を行うことができ、さらに必要に応じて、引き続いて0.11〜0.8MPa、好ましくは0.15〜0.5MPa程度の圧力条件まで、溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触した基食材(B)の雰囲気圧力が上昇する条件で行うことができる。含浸処理工程(a2)では、昇圧を大気圧以上の加圧条件とした場合には、基食材(B)への溶融状態の油脂性食品生地(A)の含浸量をより多くすることができ、難含浸性の基食材(B)へも溶融状態の油脂性食品生地(A)の含浸を好適に行うことができる。
【0065】
このような含浸処理工程(a2)では、含浸前の基食材(B)の空隙に空気などの気体成分が含まれている場合に特に好適に溶融状態の油脂性食品生地(A)の含浸を行うことができる。また、含浸前の基食材(B)の空隙などに液体成分が含まれており、該液体成分の沸点が、含浸する溶融状態の油脂性食品生地(A)の沸点よりも低い沸点である場合にも好適に溶融状態の油脂性食品生地(A)の含浸を行うことができる。
【0066】
たとえば、沸点の低い揮発性の液体成分を組織中に含む基食材(B)に、溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸する場合などには、基食材(B)中の揮発性の液体成分が沸騰し、かつ、含浸する溶融状態の油脂性食品生地(A)が沸騰しない圧力まで減圧処理することにより、食品から揮発成分が排出され、その後の昇圧により溶融状態の油脂性食品生地(A)を良好に基食材(B)に含浸することができる。
【0067】
上記含浸処理工程(a1)および(a2)において、基食材(B)と油脂性食品生地(A)との接触は、油脂性食品生地(A)が溶融状態を保持する温度条件で行うのが望ましい。減圧処理では減圧に伴って温度が低下するため、加温により油脂性食品生地(A)温度を適宜制御し、溶融状態を保持することが好ましい。含浸処理工程における溶融状態の油脂性食品生地(A)の温度は、油脂性食品生地(A)が溶融状態を保つ温度であればよく、特に限定されるものではないが、たとえば油脂性菓子生地の主成分がチョコレートである場合には、通常25〜50℃、好ましくは28〜44℃程度であるのが望ましい。
【0068】
本発明では、含浸処理工程(a1)または(a2)は、基食材(B)中に溶融状態の油脂性食品生地(A)が、所望の程度に含浸される条件を適宜選択して行うことができる。たとえば、基食材(B)への油脂性食品生地(A)の含浸量を多くしたい場合には、(1)油脂性食品生地(A)の温度を上げる、油脂性食品生地(A)の成分を調整するなどの方法により、溶融状態の油脂性食品生地(A)の粘度を低下させる、(2)減圧処理の圧力を低下させる、(3)昇圧時の圧力を上げる、などの条件を単独でまたは組み合わせて含浸処理工程を行うことができる。本発明においては、油脂性食品生地(A)中の栄養強化機能成分の少なくとも一部として、油溶性の成分、好ましくは、CoQ10、ビタミンE、これらの誘導体から選ばれる成分を用い、その量を調整することにより、溶融状態の油脂性食品生地(A)の粘度を調整することもできる。
【0069】
含浸処理工程(a1)または(a2)により溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸した基食材(B)は、所望により表面の余分な油脂性食品生地(A)を除去した後、冷却工程(b)に供する。
【0070】
冷却工程(b)
本発明の機能性複合食品の製造方法では、上述の含浸処理工程(a1)または(a2)に次いで、所望により表面の余分な油脂性食品生地(A)を除去した後、冷却工程(b)を行う。
【0071】
冷却工程(b)は、基食材(B)中に含浸された溶融状態の油脂性食品生地(A)が固化する程度まで冷却することにより行えばよく、油脂性食品生地(A)の成分などの条件によっても異なるが、通常室温以下、好ましくは0〜25℃、より好ましくは5〜20℃程度まで、含浸処理工程(a)で得られた、溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸した基食材を冷却することにより行うことができる。
【0072】
本発明では、このような含浸処理工程(a)および冷却工程(b)により、油脂性食品生地(A)が基食材(B)中に充填されて、基食材(B)と油脂性食品生地(A)とが一体化した機能性複合食品を製造することができる。
【0073】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
含浸液の調製
日新化工(株)製のホワイトチョコレートFCを40℃以上にに加温して溶融させ、これに栄養成分として旭化成ファーマ(株)製のコエンザイムQ10(粉末状)を、ホワイトチョコレートとコエンザイムQ10の合計量中1.0重量%となる量で添加し、攪拌して、コエンザイムQ10が均一に溶解したチョコレート液を含浸液として得た。得られた含浸液の粘度を、ブルックフィールドB型粘度計を用い、含浸液温度45℃、スピンドル2番、回転速度60r.p.m.の条件で測定したところ、225cp(センチポイズ)であった。
【0075】
含浸処理および冷却
フリーズドライしたカシス(ホール、水分量約3%、一粒あたり平均重量:0.13g)を基食材として70.0g軽量し、ステンレス製のバスケット((株)プラセラム製)の底面に並べ、素材が浮かないようにポリエチレンネットで蓋をした。
【0076】
この基食材の入ったバスケットをステンレス製の内タンク((株)プラセラム製)に入れ、該内タンクを真空加圧含浸装置((株)プラセラム製、商品名:FCOM)内に設置し、真空引き(ドライバキューム)を行い、10kPaまで減圧した。
【0077】
タンク内圧力が10kPaに到達して1分後、減圧状体を保持しながら45℃の含浸液を基食材が完全に浸るまで内タンクに導入した。10kPaでの減圧を3分間継続した後、エアパージして含浸装置内を大気圧まで昇圧し、引き続き圧縮空気にて、タンク内圧力が0.3MPaとなるまで加圧し、その加圧状体を3分間保持した後、エアパージし、含浸装置内を大気圧まで減圧して内タンクを取り出した。
【0078】
含浸液に浸かったバスケットを内タンクから引き上げてから、素材の表面に残った含浸液を遠心により除去した。
次いで、得られた含浸後のカシスを、間隔をあけてバットに並べ、冷蔵庫内(庫内温度5℃)に移して冷却し、含浸した含浸液を冷却固化させて、複合食品を得た。含浸前後の重量変化を表1に示す。また、得られた複合食品中に導入された栄養成分量の分析による測定値を表2に示す。
【0079】
[実施例2〜9]
実施例1の含浸液の調製において、栄養成分およびその添加量を表1に示す量とし、含浸処理において、フリーズドライカシスを表1で示す量で用いたことの他は、実施例1と同様にして、複合食品を得た。含浸液の粘度および含浸前後の重量変化を表1に示す。また、得られた複合食品中に導入された栄養成分量の分析による測定値を表2に示す。
【0080】
なお、栄養成分として用いた酸化マグネシウムは、300メッシュパスを実施した、神島化学工業(株)製の酸化マグネシウムPである。また、栄養成分として用いた炭酸カルシウムは、300メッシュパスを実施した、昭和化学工業(株)製のコロカルソーEXである。
【0081】
[比較例1]
実施例1において、栄養成分を添加していないホワイトチョコレートFCを溶融し、45℃に温度調整したものを含浸液として用い、フリーズドライカシスを98.4gの量で用いたことの他は、実施例1と同様にして、ホワイトチョコを含浸したカシスを得た。含浸液の粘度および含浸前後の重量変化を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

これらの実施例1〜9より、各栄養成分を有効量含む複合食品が得られたことが確認された。
【0086】
また、栄養成分としてコエンザイムQ10を用いた実施例1〜3と、栄養成分を用いない比較例1の結果からは、コエンザイムQ10の含有量が増加するにつれて、同温度における含浸液の粘度が低下し、またこれに伴って基食材であるフリーズドライカシス中への含浸量が増加する傾向が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る機能性複合食品は、各種保健食品、健康食品等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃において固体状であり、加温により流動性を示す油脂性食品生地(A)が、基食材(B)の内部に含浸されており、
前記油脂性食品生地(A)が、100重量部中に0.5〜50重量部の範囲で、栄養強化機能成分を含有することを特徴とする機能性複合食品。
【請求項2】
油脂性食品生地(A)が、チョコレート生地であることを特徴とする請求項1に記載の機能性複合食品。
【請求項3】
栄養強化機能成分が、ビタミン類、ポリフェノール類、補酵素類、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、多糖類、動植物抽出物、不飽和脂肪酸、ミネラル類、経口摂取可能な医薬品よりなる群から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の機能性複合食品。
【請求項4】
栄養強化機能成分が、脂溶性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の機能性複合食品。
【請求項5】
栄養強化機能成分が、コエンザイムQ10および/またはビタミンEを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の機能性複合食品。
【請求項6】
基食材(B)が、多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の機能性複合食品。
【請求項7】
基食材(B)が、凍結乾燥果物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の機能性複合食品。
【請求項8】
基食材(B)が、穀類を主成分とし、加熱して得られる食材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の機能性複合食品。
【請求項9】
(a1)少なくとも一部が多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%である基食材(B)を、10〜50,000Paに減圧処理し、減圧状態に保ちながら、溶融状態の油脂性食品生地(A)と接触し、次いで昇圧することにより、基食材の空隙内部に溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸させる含浸処理工程と、
(b)冷却により基食材(B)中の油脂性食品生地(A)を固化させる冷却工程と
を有し、油脂性食品生地(A)が、23℃において固体状であり、かつ、100重量部中に0.5〜50重量部の範囲で栄養強化機能成分を含有することを特徴とする機能性複合食品の製造方法。
【請求項10】
(a2)少なくとも一部が多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%である基食材(B)と、溶融状態の油脂性食品生地(A)とを接触し、10〜50,000Paに減圧処理し、次いで昇圧することにより、基食材の空隙内部に溶融状態の油脂性食品生地(A)を含浸させる含浸処理工程と、
(b)冷却により基食材(B)中の油脂性食品生地(A)を固化させる冷却工程と
を有し、油脂性食品生地(A)が、23℃において固体状であり、かつ、100重量部中に0.5〜50重量部の範囲で、栄養強化機能成分を含有することを特徴とする機能性複合食品の製造方法。
【請求項11】
油脂性食品生地(A)が、チョコレート生地であることを特徴とする請求項9またな10に記載の機能性複合食品の製造方法。
【請求項12】
栄養強化機能成分が、ビタミン類、ポリフェノール類、補酵素類、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、多糖類、動植物抽出物、不飽和脂肪酸、ミネラル類よりなる群から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の機能性複合食品の製造方法。
【請求項13】
栄養強化機能成分が、脂溶性であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の機能性複合食品の製造方法。
【請求項14】
栄養強化機能成分が、コエンザイムQ10および/またはビタミンEを含有することを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の機能性複合食品の製造方法。
【請求項15】
基食材(B)が、多孔質構造の空隙を有し、含水率が0〜50重量%であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の機能性複合食品の製造方法。
【請求項16】
基食材(B)が、凍結乾燥果物であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の機能性複合食品の製造方法。
【請求項17】
基食材(B)が、穀類を主成分とし、加熱して得られる食材であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の機能性複合食品の製造方法。
【請求項18】
BROOKFIELD粘度計を用い、回転数60r.p.m.で測定した、溶融状態の油脂性食品生地(A)の粘度が、含浸処理時の温度において100〜100,000センチポイズであることを特徴とする請求項9〜17のいずれかに記載の機能性複合食品の製造方法。