説明

機能性食品添加物を含有する粒状体及びその製造方法

本発明は、30〜3000μmの範囲内の平均直径を有し、以下のa〜cを含む顆粒であって、食品での使用に適切な少なくとも0.1重量%の顆粒を、含む組成物に関する:a.平均直径が3〜300μmの範囲内である3〜70重量%の複数の非親油性粒子であって、1以上の機能性食品添加物を少なくとも0.1重量%含有する粒子;b.少なくとも90重量%の脂質を含有する10〜80重量%の別個の連続相であって、前記非親油性粒子を包み込んでまとめて保持し、非親油性粒子と連続相とが組み合わさって、直径が20〜2000μmの範囲内である凝集体を形成する連続相;及びc.前記凝集体を取り巻く10〜80重量%の親油性外面層であって、最低でも30℃の上昇融点を示す親油性層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料に使用する粒状体であって、1以上の粒子状機能性食品添加物を含有する顆粒を含む粒状体に関する。より詳しくは、本発明は、1以上の機能性食品添加物を含有する複数の非親油性粒子と前記非親油性粒子を包み込む別個の連続相とを含有する凝集体と、前記非親油性粒子を取り巻く親油性外面層であって、最低でも30℃の上昇融点を示す親油性層とを含む顆粒に関係している。
【0002】
本発明はまた、前記粒状体の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
機能性パン・菓子添加物は、練り粉の取り扱い性及び機械加工性を向上させるため、また、最終的に焼き上がった製品のテクスチャー、ボリューム、風味、及び鮮度(老化防止)を向上させるために、パン・菓子製造業界で広く使用されている。練り粉を「調整する」ために使用可能な機能性パン・菓子添加物の例としては、酵素、酸化還元剤、酸味料、親水コロイド、微生物、香味料などが挙げられる。
【0004】
機能性パン・菓子添加物の重要な応用分野は、パンである。パンは、穀粉、イースト、塩及び水という4つの主成分から製造される。通常、パンは3つの基本工程で調製され、焼き上がった1斤のパンが、その最終的な成果となる。その工程とは以下のとおりである:(a)主要成分を混合して練り粉の形にして、連続的な粘弾性グルテンの塊をこね上げる;(b)その後、こね上げた練り粉を温暖多湿状態で保温することによって二次発酵させ、練り粉を膨張させるイーストによる発酵を進ませる;(c)次いで、膨張した練り粉を焼き上げて澱粉をゼラチン化し、タンパク質を変性させ、練り粉の構造を安定させる。前述の機能性パン・菓子添加物をはじめとする各種の添加物は、練り粉のこね上がり及び焼き上がったパンの質に改善をもたらすことが知られている。これらの添加物は、一般的に、パン(又は穀粉又は練り粉)改良剤/調整剤として知られている。
【0005】
小規模応用の場合も大規模応用の場合も、練り粉の強さは、パン・菓子製造の重要な一面である。強い練り粉は、混合時間、二次発酵時間及び練り粉の輸送時の機械的振動に対する許容性が高い。一方、弱い練り粉は、そうした処理に対する許容性が低い。優れたレオロジー特性及び取り扱い特性を備えた強い練り粉は、強靭なグルテン網を含有する穀粉から得られるものである。タンパク質含有量が少ない又はグルテンの質が低い穀粉は、弱い練り粉となる。
【0006】
ヨウ素酸塩、過酸化物、アスコルビン酸、臭素酸カリウム、グルタチオン及びアゾジカーボンアミドなどの非特異的酸化剤には、グルテン強化作用がある。これらの練り粉改良剤は、グルテンを強化し、それにより練り粉を強化するタンパク質間結合の形成を誘導すると示唆されている。現在入手可能な化学酸化剤のなかには、その使用により消費者の買い渋りという事態を招いたものや、その使用が監督官庁により認可されていないものがいくつかある。
【0007】
練り粉改良剤としての酵素の使用は、化学調整剤の代替案として考えられてきた。最近は、多くの酵素、特に、練り粉中に大量に存在する成分に作用する酵素が、練り粉及び/又はパン改良剤として使用されるようになってきている。そうした酵素の例は、アミラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、オキシゲナーゼ、酸化還元酵素、トランスグルタミナーゼ、及びペントサナーゼを含む(ヘミ)セルラーゼの群の中に見受けられる。
【0008】
こうした機能性添加物は、粘着性、強さ及び/又は安定性などの練り粉の特性に影響を与えやすいため、前記練り粉改良剤の使用は、簡単であるとは言えない。結果として、手作業による場合も機械による場合も、練り粉の取り扱いが困難になる可能性がある。したがって、調整剤がその機能性を完全に発揮する瞬間を、選択した時点が経過するまで遅らせられることが望ましい。特に、すべての練り粉添加物が混合されるまで、とりわけ、前記練り粉の二次発酵が始まるまで、そうした瞬間を遅らせることが望ましい。
【0009】
機能性添加物がその機能性を早すぎる時期に発揮するのを防止するための、食品添加物の脂質封入又は脂質コーティングの一般的原則は、当該技術において周知である。WO02/19828号は、以下の(i)及び(ii)を含む練り粉組成物を記載している:
(i)脂質物質によって封入又はコーティングされた1以上の有効量の酵素であって、前記脂質物質が、(a)25℃未満の温度では、周囲の練り粉への前記酵素の放出を阻害する障壁を提供し、(b)25℃〜60℃の温度範囲では、前記酵素の放出を可能にする相転移を受けるもの、及び
(ii)穀粉及び任意選択で、あらゆる付加的な従来の練り粉添加物。
前記国際特許出願に記載の封入体は、直径が10〜200μmの範囲内のカプセルを少なくとも95重量%含むことが好ましい。脂質でコーティングされた酵素含有コアの形態で封入体を提供してもよいことが記されている。酵素粉末を溶融ワックス中に懸濁し、その懸濁液を、飛沫が急速に固体化する冷却チャンバー内へスプレーして小球化した製品という形態で、前記コアを提供してもよいことが観察により認められている。この出願では、例えば、グリセリンエステルなどの高融点脂肪;ホスホグリセリド;ワックス;脂肪酸アルコール;モノ及び/又はジグリセリド、脂肪酸;パラフィン及び/又はマイクロクリスタリンワックスを含むコーティング剤を前述のコアに塗布するという選択肢が示されている。
【0010】
WO96/16151号は、(i)酵素顆粒と、(a)非水液体若しくはその水性乳剤、又は(b)30℃〜90℃の範囲内の融点を有する第2成分をその中に溶解させた(a)と同様の液体を含む油性の混合物、のいずれかを含むコーティング剤とを接触させ、それによって実質的に均一なコーティングを前記コーティング剤の前記顆粒に25重量%未満で提供すること、及び(ii)工程(i)で形成された顆粒と固結防止剤とを接触させることにより得られる、コーティングされた酵素粒状体について記載している。酵素顆粒は、例えば、大きさが約150〜3000μm、より好ましくは、300〜2000μmの小球など、当該技術分野で周知のいかなるタイプのものであってもよいことが観察により認められている。油性コーティング剤は、非水液体に加えて、少なくとも1つの固体を含むと言われている。この固体は、30〜90℃の範囲内の融点を有していなくてはならず、融解時に液体に溶解しなくてはならない。適切な固体としては、PEG、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリン、パラフィン、ラウリン酸ナトリウム又はワックスがあるとされている。
【0011】
粒子状機能性添加物の脂肪コーティングには、前記機能性添加物が非親油性の場合、又は、それらに多量の、例えば非親油性担体材料などの非親油性成分が前もって配合されていた場合は、特に顕著となる短所が付随する。第一に、漏出しないコーティング剤でそのような被覆粒子を調製するのは、とりわけ非親油性材料の形状が不規則な場合には、極めて困難である。特に、これらの被覆粒子が剪断条件に曝されるような用途に使われる場合、被覆物の漏出は避けられないことが多い。この問題は、過剰量の脂肪を用いることによって解決されるかもしれない。しかし、これは経済的ではなく、しかも、被覆物の放出特性に悪影響を与える場合がある。
【0012】
従来の脂肪コーティング技術で得られる被覆物は、一般に、比較的広範囲に及ぶ粒度分布及び/又は大量の漏出を示す。広範囲に及ぶ粒度分布を有する粒子状物質は、輸送及び保管中に分離しやすい。さらに、小粒子、例えば250μm未満の粒子の断片が大量に存在すると、取り扱い中にいわゆる粉化が生じる。粉化との語は、粒子が空気中に浮遊するようになる現象を示すものであり、こうした空気中の粒子の吸入時に、アレルギー誘発性などの健康問題を引き起こす場合がある。
【0013】
結局のところ、2種類以上の粒子状添加物の混合物をコーティングする場合、特にこうした添加物が異なるかさ密度又は粒度を示す場合、従来の脂肪コーティング技術は、不適切である。そのような添加物の混合物に対して従来の技術を用いて脂肪コーティングを行うと、不均質で不均一な製品となるのが普通である。
【特許文献1】WO02/19828号
【特許文献2】WO96/16151号
【発明の開示】
【0014】
本発明者らは、まず、1以上の機能性食品添加物を含有する非親油性粒子の凝集体(agglomerate)を調製し、次いで、その凝集体を、最低でも30℃の上昇融点を示す親油性外面層でコーティングすることにより、前述の問題点が効果的に解決できるであろうことを見出した。より正確には、本発明者らは、外面層を塗布する前に、平均直径が3〜300μmの範囲内である複数の非親油性粒子を、平均直径が20〜2000μmの範囲内である凝集体に結合させると、上記の手順によって特に有益な結果がもたらされることを見出した。
【0015】
本発明によると、複数の非親油性粒子は、「接着剤で接着する(gluing)」ことによりまとめられて凝集体となる。これは、前記粒子を例えば流体媒質で結合させ、結果として生じた結合物を、前記流体媒質の連続相が複数の非親油性粒子を包み込んでまとめて保持している集合体(aggregate)の形成が促進されるような条件下で処理することによって、適切に達成される。その結果、そのようなコーティング剤を元の非親油性粒子に直接塗布した場合よりも容易かつ効果的に、結果産物である凝集体を親油性コーティング材料でコーティングすることができる。
【0016】
本発明の方法により、過剰量の脂肪を用いるという手段を取らずとも漏出を示すことのない、脂肪でコーティングされた非親油性粒子の調製が可能になるという利点がもたらされる。すなわち、本発明は、高い搭載量を備えた漏出しない粒状体を提供する。さらに、本発明の顆粒は、(限定的な)剪断条件に曝される場合であっても、漏出に対してこのような耐性を示す。本明細書で使用する「漏出」との語が、例えばコーティングされた顆粒の内部へと水分が遊走する結果、コーティングされた非親油性物質が周辺環境へ遊走することを指すということは、理解されてしかるべきである。
【0017】
機能性食品添加物を管理された方法で内部に送達する場合に、本発明の顆粒を有利に用いることができる。親油性外面層の溶融をもたらす温度の上昇、及び/又は、外面層の完全性を破壊する剪断条件によって、そうした添加物の放出を適切に開始させることができる。ほとんど漏出がなく均質な粒度分布を示す、コーティングされた粒状体の調製が本発明により可能になるという事実は、目的とする用途に粒状体の放出特性を適合させることができるという利点を提供するものである。
【0018】
さらにまた、本発明は、脂肪でコーティングされた顆粒が2以上の非常に異なる粒子状物質、例えば酵素と酸化還元剤を含有する、均一で均質な粒状体の調製を容易にする。最後に、本発明は、不規則な形状の非親油性粒子に脂肪コーティング剤を塗布する効果的な方法を提供する。
【0019】
本発明の粒状体は、平均直径が30〜3000μmの範囲内の少なくとも0.1重量%の顆粒を含有しており、該顆粒は、平均直径が3〜300μmの範囲内である3〜70重量%の複数の非親油性粒子であって、1以上の機能性食品添加物を少なくとも0.1重量%含有する粒子;少なくとも90重量%の脂質を含有する10〜80重量%の別個の連続相であって、非親油性粒子を包み込んでまとめて保持し、非親油性粒子と連続相とが組み合わさって、平均直径が20〜2000μmの範囲内である凝集体を形成する連続相;及び、凝集体を取り巻く10〜80重量%の親油性外面層であって、最低でも30℃の上昇融点を示す親油性層を含むことを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
したがって、本発明のある態様は、30〜3000μmの範囲内の平均直径を有し、以下のa〜cを含む顆粒であって、食品での使用に適切な少なくとも0.1重量%の顆粒を、含む組成物に関する:
a.平均直径が3〜300μmの範囲内である3〜70重量%の複数の非親油性粒子であって、1以上の機能性食品添加物を少なくとも0.1重量%含有する粒子;
b.少なくとも90重量%の脂質を含有する10〜80重量%の別個の連続相であって、前記非親油性粒子を包み込んでまとめて保持し、非親油性粒子と連続相とが組み合わさって、直径が20〜2000μmの範囲内である凝集体を形成する連続相;及び
c.前記凝集体を取り巻く10〜80重量%の親油性外面層であって、最低でも30℃の上昇融点を示す親油性層。
好ましい実施形態によると、本件組成物は、上記のとおり定義した顆粒を少なくとも1重量%、より好ましくは10重量%含有している。
【0021】
本明細書で使用される「親油性」との語は、油溶性であり、かつ、20℃でのトリグリセリド油(例えばひまわり油など)における最大溶解度が、同じ温度の水における溶解度の少なくとも10倍以上高い物質を指す。
【0022】
本明細書で使用される「非親油性」との語は、親油性ではなく、かつ、20℃でのトリグリセリド油における最大溶解度が、0.5重量%、好ましくは0.1重量%を超えない物質を指す。
【0023】
「親油性層」との専門用語は、親油性物質に加えて、ある量の非親油性物質を含有する層も包含する。非親油性物質の量としては、20重量%を超えないことが好ましく、5重量%を超えないことがより好ましく、前記の層が基本的に非親油性物質を全く含有していないことがもっとも好ましい。
【0024】
特に好ましい実施形態では、本発明にしたがって用いられる非親油性粒子は、親水性粒子である。ここで「親水性」との語は、水溶性又は水分散性であって、かつ、20℃でのトリグリセリド油(例えばひまわり油など)における場合と比較して、水中での溶解又は分散が、少なくとも10倍以上(溶解又は分散可能な最大量換算で)となる物質を指す。
【0025】
「親水性粒子」との専門用語は、その大半が親水性物質で構成されている粒子を記述するのに用いられる。しかし、本発明によれば、親水性粒子が、厳密に言って親水性とは言えない物質、例えば、微生物などを含有していてもよいことは、理解してしかるべきである。親水性粒子に含有されるそのような非親水性物質の量は、40重量%を超えないことが好ましく、20重量%を超えないことがより好ましく、5重量%を超えないことがもっとも好ましい。親水性粒子に含有される親水性物質が、20℃の水中において、同じ温度のトリグリセリド油における場合よりも、少なくとも10倍以上溶解することがもっとも好ましい。
【0026】
本書面中に記した粒子又は顆粒の直径若しくは粒度については、当業者に周知の方法で篩によって測定することが適切である。目の粗い篩から目の細かい篩へと多くの篩を用いて、重量%又は容量%換算での粒子及び顆粒の粒度分布を確定してもよい。粒子又は顆粒の平均(average)直径/粒度、平均(mean)直径/粒度を示す場合は、他の表示がない限り、質量加重平均直径を示すものとする。
【0027】
「別個の連続相」との専門用語は、同じ凝集体に含まれている非親油性粒子との間に明らかに同定可能な接触面を形成する、区別可能で基本的に均質の相として、凝集体内部に存在する相を指す。そのような接触面の存在を実証するためには、そうした接触面を検知することが可能な染色及び/又は分析的手法を用いるのが有用かもしれない。
【0028】
本明細書では、「上昇融点」は、脂肪を充填した開放毛細管中で気泡が上昇せざるを得ないほどに溶融脂肪中の固相量が減少した時点の温度を指す。
【0029】
本発明の利点は、顆粒中の非親油性粒子の平均直径が比較的小さい場合、例えば、10〜150μmの範囲内、好ましくは、20〜100μmの範囲内の場合、特に顕著である。
【0030】
本明細書で先に定義した凝集体は、複数の非親油性粒子を含有している。したがって、凝集体の直径は、その中に含まれる非親油性粒子の平均直径の少なくとも2倍を超えていることが一般的であり、少なくともファクター3の分だけ前記平均直径を超えていることが好ましい。一般的に凝集体は、30〜200μmの範囲内、特に40〜180μmの範囲内、もっとも好ましくは50〜160μmの範囲内の直径を有する。
【0031】
本発明者らは、本発明の粒状体に以下の特徴を組み合わせると、機能性添加物を練り粉などに管理下で送達する場合に特に有益であることを見出した:
・顆粒が、40〜290μmの範囲内、好ましくは50〜250μmの範囲内の平均直径を有していること;
・非親油性粒子と別個の連続相との凝集体が、30〜200μmの範囲内の平均直径を有していること;
・複数の非親油性粒子が、10〜150μmの範囲内、好ましくは20〜100μmの範囲内の平均直径を有していること;
・顆粒が、50〜90重量%の非親油性粒子と別個の連続相との凝集体、及び10〜50重量%の脂質外面層を含有していること;
・凝集体が、10〜70重量%の非親油性粒子、及び30〜90重量%の別個の連続相を含有していること。
【0032】
上記特徴の組み合わせにより、顆粒が比較的少量で、例えば、食品の2重量%未満で添加された場合でも、確実に、食品での応用時に機能性食品添加物を製品塊全体に均質に送達できるようになる。すなわち、いわゆる「ホットスポット」が発生しなくなる。
【0033】
本発明は、搭載量が高い場合でもほとんど漏出を示さない粒状体を提供する。その結果として、好ましい実施形態においては、複数の非親油性粒子は、顆粒の10〜45重量%、より好ましくは12〜35重量%に相当する。特に好ましい実施形態によると、少なくとも80重量%の非親油性粒子は、20〜200μmの範囲内、より好ましくは25〜150μmの範囲内、もっとも好ましくは30〜120μmの範囲内の平均直径を有している。
【0034】
別の特に好ましい実施形態では、別個の連続相は最低でも30℃、より好ましくは30〜45℃の上昇融点を示し、脂質外面層の上昇融点は、別個の連続相の上昇融点を5℃を超えて上回ることはなく、より好ましくは、脂質外面層の上昇融点は、別個の連続相の上昇融点を上回ることはない。有利なことに、脂質外面層は、30〜50℃、より好ましくは32〜45℃の融点を示す。
【0035】
上昇融点が30〜45℃の別個の連続相と、上昇融点が最低でも30℃の脂質外面層であり、その上昇融点が、別個の連続相の上昇融点を5℃を超えて上回ることはない脂質外面層とを組み合わせて応用することで、食品の温度が室温よりも充分に高くなったときに、確実に、粒状体によって機能性食品添加物が食品中へ効果的に送達される。練り粉に用いられる場合、機能性食品添加物は混合工程及び成形工程中は顆粒内に保持され、二次発酵工程で練り粉中に放出される。一般に、すべてとは言えないがほとんどの機能性添加物は、焼き上げ工程の前に練り粉中に放出される。
【0036】
本発明の顆粒は、機能性添加物を管理された方法で送達するために該顆粒を使用できるという重要な利点を提供する。そのような管理された送達は、酵素、酸化還元剤、微生物、酸味料及び香味料などの機能性添加物にとって、特に望ましいものである。さらに好ましい実施形態では、機能性添加物は、酵素、酸化還元剤、及びそれらの組み合わせから選択される。もっとも好ましくは、機能性添加物は酵素である。
【0037】
練り粉中の澱粉、ペントサン、及び/又はタンパク質の酵素分解が早すぎる時期に起こらないように、粒状体中に含まれる酵素の活性を導くことが、本件の粒状体によって可能になる。混合の結果としての温度の上昇又は二次発酵時の温度の上昇(一般的には、30℃〜40℃、相対湿度(RH)は約75〜85%)を受けての酵素の遅延放出は、混合工程終了時よりも早い段階及び二次発酵工程では酵素分解が始まらないことを保証するものである。したがって、本発明による酵素粒状体は、以下の重要な利点を提供する。前記酵素粒状体は:
(i)混合及び混練工程での練り粉の取り扱い性に非常に有害な影響を及ぼすために通常は用いることができない酵素の使用を可能にする;
(ii)酵素の多量投入を可能にし、それによって、通常は穀物ポリマー(澱粉、ペントサン、グルテン)の早期分解に付随する練り粉の取り扱い性及び安定性への悪影響もなく、パン内相のテクスチャーがより柔らかくなり、鮮度が向上し、ボリュームが増大する。
【0038】
本発明のある特定の実施形態によると、非親油性粒子は、炭水化物、タンパク質、塩及び機能性食品添加物の群から選択される1以上の食品成分を少なくとも10重量%含み、該機能性食品添加物は、非親油性粒子の少なくとも0.1重量%に相当し、かつ、酵素、酸化還元剤、酸味料、親水コロイド、微生物、香味料及びそれらの組み合わせの群から選択される。
【0039】
本件の顆粒に含まれる非親油性粒子は、炭水化物、タンパク質、塩及び機能性食品添加物の群から選択される1以上の食品成分を好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、もっとも好ましくは少なくとも80重量%含有している。炭水化物、タンパク質又はその断片を、例えば穀粉の形態で、顆粒中に適切に組み込んでもよい。
【0040】
機能性食品添加物が酵素の場合、本件の非親油性粒子において、かかる酵素と大量の非親油性担体との組み合わせを利用すると有益である。一般的には、非親油性粒子が1以上の酵素を含有している場合、その酵素は前記粒子中で、少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の濃度に相当する。通常、非親油性粒子に含まれる酵素の量は、20重量%を超えることはない。好ましくは、前記量は5重量%を超えることはなく、より好ましくは、3重量%を超えることはない。
【0041】
酵素以外の機能性食品添加物は、一般に、非親油性粒子の少なくとも1重量%に相当する。特に好ましい実施形態によると非親油性粒子は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%の親水コロイド、穀粉、グルテン、塩、砂糖、又はそれらの混合物を含有している。非親油性粒子が0.1〜5重量%の酵素及び少なくとも20重量%の親水コロイドを含有している粒状体は特に有利である。
【0042】
本明細書で先に述べたように、本発明は、2以上の異なる粒子状物質、特に2以上の異なるタイプの非親油性粒子が組み込まれている顆粒を含有する、均質で均一の粒状体の調製が可能になるという利点を提供する。本発明のこの実施形態の利点は、異なる粒子状物質が化学的に異なるだけではなく、かさ密度及び/又は平均直径に関してもかなりの相違点を示す場合、例えば、かさ密度における相違が少なくとも10%の場合、又は少なくとも20%の場合でも、及び/又は、平均直径における相違が少なくとも20%の場合、又は少なくとも50%の場合でも、特に顕著である。
【0043】
本発明の好ましい実施形態においては、非親油性粒子を凝集体内にまとめて保持する連続相は、凝集体の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%を構成している。一般的には、前記連続相が凝集体の80重量%超に相当することはなく、より好ましくは、凝集体の75重量%超に相当することはない。凝集体が25〜60重量%の複数の非親油性粒子と75〜40重量%の別個の連続相を含有していることが、もっとも好ましい。非親油性粒子をまとめて保持している別個の連続相は、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、もっとも好ましくは少なくとも90重量%の脂質を適切に含有していてもよい。別個の連続相に存在する脂質は、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、モノ及び/又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、グリセリン乳酸脂肪酸エステル(lactem)、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル(citrem)、グリセリン酢酸脂肪酸エステル(acetem)、ステアリル乳酸、ポリグリセリンエステル、脂肪酸スクロースエステル、脂肪酸、ワックス、石鹸、及びそれらの組み合わせからなる群から適切に選択される。脂質が、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、モノ及び/又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステルからなる群から選択されることがより好ましい。用いられる脂質がトリグリセリドであることが、もっとも好ましい。ワックスは一般的に60℃を優に超える融点を有する。ワックスを本件顆粒に大量に用いると、酵素の活性は二次発酵工程ではなく焼き上げ工程で主に放出されるため、放出特性により悪い影響が生じる。そのため、好ましい実施形態によると、別個の連続相に含まれるワックスは20重量%未満である。前記連続相が含有するワックスは10重量%未満であることがより好ましく、ワックスを全く含まないことがもっとも好ましい。これらと同様の理由により、親油性外面層も、前述のように少量のワックスを含有していることが好ましい。
【0044】
脂質を基盤とした連続相の使用により、凝集体を親油性外面層でコーティングするのが比較的容易であるという利点がもたらされる。また、親油性連続相の使用により、特に前記連続相が最低でも25℃、より好ましくは最低でも30℃の上昇融点を示す場合は、特有の持続放出特性を備えた顆粒の調製が可能になる。
【0045】
親油性外面層は、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、モノ及び/又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、ステアリル乳酸、ポリグリセリンエステル、スクロースエステル、脂肪酸、ワックス、石鹸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される脂質を、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、もっとも好ましくは少なくとも90重量%含有していることが適切である。特に好ましい実施形態においては、前述の脂質は、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、及びモノ及び/又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステルからなる群から選択され、トリグリセリドがもっとも好ましい。
【0046】
本発明は、深刻な漏出もなく、特に別個の連続相や脂質外面層などの大量の封入材料を使用することもなく、非親油性粒子の大量搭載が実現可能となるという利点を提供する。先に記載したとおり、別個の連続相は一般に凝集体コア部分の80重量%超に相当することはなく、又は75重量%超にさえ相当することがない。非親油性粒子が別個の連続相により部分的に封入されるという事実により、比較的薄い脂質外面層を塗布した場合でさえも効果的な封入を達成することが可能である。したがって、本発明の顆粒は、12〜40重量%、もっとも好ましくは15〜30重量%の脂質外面層を含有していると有利である。一般的に、脂質外面層の厚さは、6〜25μmの範囲内、好ましくは7〜20μmの範囲内である。
【0047】
本発明は、別個の連続相と非親油性外面層が全く同一の組成である顆粒を包含する。好ましい実施形態によると、例えば上昇融点が異なることからも明らかなように、連続相と外面層の組成は、異なるものである。
【0048】
本発明者らは、最低でも30℃の上昇融点を有する少なくとも50重量%のトリグリセリド脂肪、及びモノグリセリド、ジグリセリド、モノ及び/又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル乳酸、及びそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1重量%の放出剤を含有する外面層を含む顆粒が、特に製パン・製菓用途で殊にうまく機能することを見出した。本発明者らは理論に拘泥することを望むものではないが、前述の放出剤により、顆粒が練り粉などに組み込まれた後の、機能性パン・菓子添加物の放出制御が可能になる、特に、温度の上昇を伴う急激な放出増大が可能になると考えられている。従来技術から周知のコーティング及び封入システムと比較すると、トリグリセリド脂肪と放出剤の組み合わせを含有するコーティングを備えた顆粒では、機能性がより穏やかに放出され、それにより、機能性添加物がその機能性のある部分を、例えば練り粉調製プロセスなどの早い時期において、すでに発揮できるようになるという利点が提供される。例えば、酵素の場合、そのような早期における作用の制御は、ほどよい硬さとボリュームを備えたパン・菓子製品を製造するのに望ましい。
【0049】
本発明の顆粒は、以下を有利に含有している:
10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%の複数の非親油性粒子;
15〜40重量%、好ましくは20〜40重量%の別個の連続相;及び
15〜60重量%、好ましくは15〜45重量%の親油性外面層。一般に、これらの3成分を合計すると、顆粒の少なくとも80重量%、より好ましくは顆粒の少なくとも90重量%、もっとも好ましくは顆粒の少なくとも100重量%を構成する。
【0050】
本件粒状体の別個の連続相及び/又は親油性外面層は、乳化剤の形態で大量の脂質を適切に含有していてもよい。本件の粒状体は、乳化剤の食品への送達に最適である。また、先に記載したとおり、本件の粒状体に乳化剤を組み込むことで、粒状体の放出特性を向上させることができるという利点が提供される。したがって、本発明の有利な実施形態においては、粒状体は、別個の連続相及び/又は親油性外面層に含まれる乳化剤を、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、もっとも好ましくは少なくとも40重量%含有している。かかる乳化剤は、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、モノ及び/又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、ステアリル乳酸、ポリグリセリンエステル、脂肪酸スクロースエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から適切に選択される。もっとも好ましくは、かかる乳化剤は、ジグリセリド、モノグリセリド、モノ及び/又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、ステアリル乳酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
本件組成物は、本件顆粒の他に、好ましくは粒子状の他の添加物を適切に含有していてもよい。本件組成物のある実施形態は、パン改良組成物、特に、乳化剤、酸化還元剤、酸味料、塩、砂糖、穀粉、イースト、タンパク質、乳製品原料、及び脂肪からなる群から選択される少なくとも1以上のパン改良添加物をさらに含有するパン改良組成物である。一般に、本件の顆粒及び前述のパン改良添加物を合計すると、乾燥物重量換算で、本件組成物の少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも60重量%、もっとも好ましくは少なくとも90重量%を構成する。本発明のパン改良組成物は、顆粒及び他のパン改良添加物が水又は液状トリグリセリド油などの液体に分散している液状パン改良製剤であってもよい。あるいは、パン改良組成物が、粒子状のフリーフロー粉剤であることがもっとも好ましい。一般にそのようなフリーフロー粉剤は、直径が200〜1000μmの範囲内の粒子を、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%含有している。
【0052】
本発明の別の実施形態は、少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、もっとも好ましくは少なくとも100重量%の本件顆粒を含有する組成物に関する。そのような組成物をそのままの形で直接食品中に応用してもよい。あるいは、そのような組成物を、例えばパン改良組成物中に他の食品添加物とともに前もって適切に配合しておくことが可能である。
【0053】
本件顆粒が漏出をほとんど、又は全く示さないという望ましい特徴は、非親油性粒子を密封することにより周囲から隔離させる完全な親油性外面層の存在によって得られる。確かに、顕微鏡で観察すると、本件組成物内の顆粒は顆粒の小断片以上のものは含有しておらず、該顆粒内では1以上の非親油性粒子が外面親油性層を貫通している。一般に、30重量%未満の顆粒にそのような欠陥が見られる。この特定の欠陥を示している顆粒が15重量%未満であることがより好ましく、5重量%未満であることがもっとも好ましい。
【0054】
本発明は、不規則な形状の非親油性粒子の顆粒への組み込みを可能にする一方で、確実にそれらの粒子が完全に外面親油性層に覆われるようにするという利点を提供する。これを実現するためには、不規則な形状の非親油性粒子と、それよりも形状がかなり規則的な凝集体とを組み合わせると有利である。これに関する要件を数学的に表現すると、以下のようになる:
Δnp0.4及び
Δag/Δnp0.6
式中、
Δ=E[(d−d)/(d+d)]
Δnpは非親油性粒子のΔを示し;
Δagは凝集体のΔを示し;
は粒子又は凝集体の最大直径を示し;
は同じ粒子又は凝集体の最小直径を示し;
及びE(x)はxの期待値を示す。
【0055】
特に好ましい実施形態においては、Δnpは少なくとも0.5、もっとも好ましくは少なくとも0.6である。Δag/Δnpの比率は、0.5を超えないことが好ましく、0.4を超えないことがもっとも好ましい。
【0056】
本発明の別の態様は、練り粉又は衣用生地、好ましくはパン用練り粉の調製における、本明細書にて定義した組成物の使用に関する。本件組成物を他の練り粉又は衣用生地の成分、例えば穀粉、水及び/又はイーストと混合することによって、練り粉又は衣用生地を簡便に調製してもよい。通常、本件組成物は、練り粉又は衣用生地の重量に対して0.01〜5%の本件顆粒を送達するのに充分な量で組み込まれる。したがって、本発明は、先に定義したとおり、0.01〜5重量%の顆粒を含む練り粉又は衣用生地をも提供する。
【0057】
本発明のさらに別の態様は、上記のとおり定義した粒状組成物、特に平均直径が30〜290μmの範囲内である顆粒を含む組成物の製造方法であって、以下を含む方法に関する:
a.平均直径が10〜150μmの範囲内、好ましくは20〜100μmの範囲内である非親油性粒子であって、1以上の機能性食品添加物を少なくとも0.1重量%含有する粒子を提供する;
b.前記非親油性粒子と、30〜45℃の融点を有する第1溶融脂肪性物質とを、重量比1:9〜7:3で組み合わせ、次いで、溶融脂肪性物質内に非親油性粒子が含まれる均一分散液が得られるように混合する;
c.均一分散液を、複数の非親油性粒子が別個の連続脂質相に包み込まれている凝集体であって、30〜200μmの範囲内の平均直径を示す凝集体に変換する;
d.親油性外面層の融点が別個の連続脂質相の融点を5℃を超えて上回ることのない、脂質外面層に完全に取り巻かれているコーティングされた凝集体を製造するために、最低でも30℃の融点を有する第2溶融脂肪性物質で前記凝集体をコーティングする;
e.コーティングされた凝集体を室温以下に冷却する;及び
f.コーティングされた凝集体を回収して粒状体を得る。
【0058】
スプレー冷却又は押し出し、好ましくはスプレー冷却を利用して均一分散液を凝集体に変換する場合、比較的少量の脂肪性物質を用いて均一分散液を凝集体に変換することが可能だとわかった。
【0059】
本発明が、凝集の後、コーティング工程dの前に、凝集体に粉砕処理(例えば、製粉など)、分別工程(例えば、篩による選別又は風力選別)、丸みをもたせる処理、又は中間コーティング工程を施す方法をも包含することに留意すべきである。本方法のコーティング工程cは、当該技術分野で周知のコーティング手法を用いて適切に実施することができる。利用するコーティング手法を、流動床コーティング又は回転ドラムコーティングから選択することが好ましい。流動床コーティングを利用して親油性外面層を塗布することが、もっとも好ましい。流動床コーティングにより、凝集体が多大な研磨力に曝されないという利点がもたらされる。したがって、非常に粒度が均一で、外面コーティングが完全な状態の、コーティングされた粒子を比較的容易に調製することができる。
【0060】
本発明を、以下の実施例によりさらに説明する:
[実施例]
【実施例1】
【0061】
スプレー冷却
35℃の融点を有する、急激な溶融を示す(steep melting)脂肪(AkofineTMW00;N25=89%、N30=48%、N35=3%)を容器内で融解した。平均粒度が160μmの製パン用酵素(アミラーゼ)粒状体であるFungamylTM1600 BG(Novozymes社製)を、質量加重平均直径が87μmとなるまで粉砕し、その後、高剪断ミキサー(Polytron PT3100)を利用して、溶融脂肪中に分散させた。結果として得られた脂肪分散液は、10重量%の酵素粒状体を含有していた。
【0062】
溶融脂肪分散液の噴霧化を、加熱した二流体スプレーノズルを用いて行った。ノズルの温度を、予め設定しておいた、脂肪の融点よりもかなり高い温度に保った。蠕動ポンプを経由し、加熱した管を通して、ノズルへと脂肪分散液を供給し、加圧された窒素ガスで噴霧化した。噴霧圧を適合させることにより、噴霧化した脂肪の粒度を500μm前後に調整した。液滴を液体窒素漕にスプレーし、プロセスの最後に回収した。このようにして得られた粒状体の質量加重平均直径は、約500μmであった。
【0063】
このようにして得られた、脂肪でコーティングされた粒子状物質を、2つの試料、すなわち、粒状体Aと粒状体Bに分けた。
【0064】
流動床コーティング
粉砕したFungamylTM1600 BG酵素調製物に加えて、試料Aに含まれているスプレー冷却した粒子にも、Wurster構造と熱融解設備を備えたGlatt社のGPCG-1.1流動床コーターを用いて外面コーティング剤を塗布した。熱融解Wurster法は、円錐形チャンバーの狭い底部にある空気取り入れ口のすぐ上の、中央に位置するシリンダーを通して高速気流を利用している。シリンダー内側の空気の速度は、外側の速度よりもかなり速い。したがって、作業中は、粒子の流動床がシリンダーを通って上昇し、シリンダーの外側を下降して、連続的に循環する。
【0065】
粒状体Aをコーティング装置の円錐形チャンバーに導入し、流動床を形成した。コーティング剤、すなわち、スプレー冷却工程で用いたものと同じ脂肪を溶融させ、加熱した管を通してノズルへと供給した。溶融脂肪をノズルからシリンダー内部の流動化された粒状体へとスプレーして、脂肪コーティング剤を粒状体Aに塗布した。コーティングプロセス中、粒子はシリンダー上部から離れ、下降して流動床へ戻った。粒子がチャンバー底部に到達した時点で再コーティングを受ける準備が整っているように、下降中に冷気によってコーティング剤を凝結させた。このようにして得られた粒状体Aの質量加重平均粒度は約600μmであった。粒状体Aに含まれる脂肪のうち、50%はスプレー冷却されたコア粒子内に存在し、50%は脂肪コーティング中に塗布された脂肪層中に存在していた。
【0066】
粉砕した酵素粒状体を同様にコーティングした。結果として得られたコーティングされた粒状体Cの質量加重平均粒度は約285μmであった。コーティングプロセス中に塗布された脂肪層は、粒状体Cの59重量%に相当した。
【0067】
顕微鏡検査
明視野モードを用いて光学顕微鏡下で粒状体A及びBを調べてみた。顆粒に含まれる脂肪はFungamylTM粒子よりも透光性が高いため、複数の酵素粒子が粒状体A及びBに封入されていることが、顕微鏡の画像により容易に判明した。
【0068】
粒状体B中の酵素粒子の多量の断片が顆粒の外面に包埋されていた、すなわち、周囲の環境と直接接触していた。これに対し、粒状体Aの顕微鏡像は、コア顆粒を含有する酵素を包み込む厚さ約20〜50μmの完全なコーティング層が、顆粒に含まれていることを示していた。
【0069】
図面
図1は、粒状体Bの典型例である顆粒の概略断面図を提供するものである。この図面は、上述の顕微鏡像に基づいて作成された。
【0070】
図1は、脂肪中に酵素物質を含む分散液でスプレー冷却を行った後に得られた顆粒1を示す。顆粒1は、酵素物質からなる複数の粒子3を含有している。これらの粒子3にはコーティングが施され、連続脂肪相2によってまとめて保持されている。顆粒1中の多数の粒子3は、連続脂肪相2に部分的に包埋されているにすぎず、外気と直接接触している。図1はまた、顆粒1が、その内部に封入されている複数の粒子3と比較してかなり規則的な、例えば、球状の形状をしていることを示している。
【0071】
図2は、粒状体Aの典型例である顆粒の概略断面図を提供するものである。この図面は、上述の顕微鏡像に基づいて作成された。
【0072】
図2は、顆粒1の流動床コーティングの後に得られた顆粒5を示す。顆粒5は、前述のスプレー冷却工程で得られた顆粒1を完全に包み込む外面脂肪コーティング剤4を含有している。図2から明らかなように、脂肪コーティング剤4はすべての粒子3を密封することにより周囲の外気から隔離している。したがって、水と直接接触した場合、顆粒5が示す漏出は、顆粒1よりもかなり少なくなると思われる。
【0073】
安定性試験
少量の粒状体を20℃の脱イオン水に分散させることにより、粒状体A、B及びCの安定性を査定した。水の伝導性を時間の関数としてモニターした。測定した伝導性を、60℃に加熱することにより粒状体が完全に破壊されたときに測定される最大伝導性に対するパーセンテージとして示した。
【0074】
その結果、粒状体Cの伝導性が、20分以内に最大伝導性の80%にまで増加したことが示された。粒状体Bについて観察された伝導性の増加は、それよりも穏やかなものであったが、100分後には伝導性が最大値の24%に増加した。これに対し、粒状体Aについては、100分後も伝導性の有意な増加は観察されなかった。20時間後でさえも、粒状体Aの伝導性における増加が、最大伝導性の10%を超えることはなかった。
【実施例2】
【0075】
粒状体Bをかなり少ない量の脂肪でコーティングして粒状体Aを得たことを除いては、実施例1に記載したものと同様の方法で粒状体A及びBを作製した。粒状体Aに含まれる脂肪のうち、85%はスプレー冷却されたコア粒子内に存在し、15%は脂肪コーティング中に塗布された脂肪層中に存在していた。ここでも、粒状体Aが粒状体Bよりもかなり安定性が高いことが、伝導性試験により示された。
【実施例3】
【0076】
以下の添加物を、表示の重量比にて乾燥混合した:高アミローゼ澱粉(National 1900、National Starch社製):マルトデキストリン(GranadexTMMD20、Avebe社製):マイクロクリスタリンセルロース(VivapurTMMCC、type 101、Rettenmaier & Sohne社製):FungamylTM1600 BG、その重量比は、22.5:22.5:45:10。
【0077】
水を添加して(湿潤混合物の40重量%)、短い構造を有する練り粉が形成されるまで湿潤混合物を混練した。NicaTMバスケット押し出し機で、この練り粉を低圧下で押し出した。スパゲッティ状の押し出し物を、球形化ドラムの底部にある回転ディスク上に落下させた。ここで、押し出し物の破砕及び球形化を行った。少量のマイクロクリスタリンセルロースをこのプロセスで添加して、粒子の粘着性を低下させた。球形化した粒状体を、その後、流動床乾燥機(Glatt GPCG1.1)で乾燥させた。このようにして得られた粒状体の質量加重平均直径は、1.5mmであった。
【0078】
その後、乾燥させた粒状体を流動床コーターで実施例1と同様にコーティングした。結果として得られたコーティングされた粒状体の質量加重平均直径は、1.6mmであった。伝導性試験を実施例1に記載のとおりに行ったところ、コーティングされた粒状体がほとんど漏出を示さないことがわかった。
【実施例4】
【0079】
まず市販のα−アミラーゼ調製物(BAN 800、NOVO社製)を粉砕することにより、粒状体含有酵素を調製した。元の酵素調製物(粉砕前)の粒度分布は、以下のとおりであった:
54.35%>250μm;0.9%<100μm;0%<50μm。
粉砕後の粒度分布は、以下のとおりであった:
99.8%>250μm;74%<100μm;30%<50μm;11%<20μm。
【0080】
次に、粉砕した酵素調製物を、スプレー結晶化に続けて流動床コーティングを利用する二段階プロセスで封入した。スプレー結晶化に先立って、酵素粒子:脂肪の重量比が1:9となるように、Ultra TurraxTMミキサーを使って、酵素調製物を溶融脂肪(融点が45℃の水素化パーム油)中に均質に分散させた。早すぎる時期での結晶化を防止するため、脂肪及び均質化した懸濁液の温度を脂肪の融点よりも約10〜15℃高い温度に維持した。均質化した懸濁液を、Glatt GPCG15スプレー冷却装置中で310g/分という速度で結晶化した。その際に用いたノズルの直径は22mm、スプレー圧は3.5バール、バルブ位置は19であった。微粉化した懸濁液を冷気(500m/時)を利用して冷却した。冷気取り入れ口の温度は8℃、排出口の温度は12℃であった。6分間のスプレー後、結晶化した粉末を除去した。
【0081】
その後、スプレー結晶化した粒子をGlatt GPCG1流動床コーターに移した。水素化パーム油(融点は45℃)からなるコーティング液を、流動化した酵素粒子に17g/分の速度でスプレーした。その際に用いたノズルの直径は22mm、スプレー圧は2.5バールであった。流動床を維持するため、バルブ位置28を用いて、空気(19℃)を57m/時という速度で導入した。流動床コーターに使用したコーティング剤の量は、スプレー結晶化粒子の重量に対して約10%に相当した。流動床コーターから得られた粒状体の粒度は、その大半が30〜200μmの範囲内であった。
【0082】
流動床コーターから得られた粒状体、及びスプレー結晶化粉末の両方を、以下の練り粉配合表にしたがって応用した。
【表1】

【0083】
練り粉Aは粘着性が低いため、取り扱いが練り粉Bよりもかなり容易であることがわかった。
【0084】
次に、練り粉の形を整えて焼き上げ、600gのパンを製造した。パンAの内相構造は、パンBの内相構造よりも規則的であった。また、パンBの内相はまったく弾性がなく、非常に粘着性がある一方、パンAの内相はかなり弾性があり、わずかな粘着性を示すのみであった。このことは、Aタイプの粒状体を使用して、負の練り粉特性及び内相構造の損傷をもたらすことなく、大量のα−アミラーゼを送達することが可能であることを示している。
【実施例5】
【0085】
スプレー結晶化に先立ってアミラーゼ調製物を粉砕しなかったことを除いては、実施例4を繰り返した。結果として得られた流動床によりコーティングされた粒状体を、実施例4に記載の配合表にしたがって、練り粉に応用した。練り粉の取り扱い性については、実施例4の練り粉Aよりも劣り、練り粉Bと同程度であることがわかった。内相中にホットスポットが発生し、結果として内相構造が局所的に破壊されたことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜3000μmの範囲内の平均直径を有し、以下のa〜cを含む顆粒であって、食品での使用に適切な少なくとも0.1重量%の顆粒を、含む組成物:
a.平均直径が3〜300μmの範囲内である3〜70重量%の複数の非親油性粒子であって、1以上の機能性食品添加物を少なくとも0.1重量%含有する粒子、
b.少なくとも90重量%の脂質を含有する10〜80重量%の別個の連続相であって、前記非親油性粒子を包み込んでまとめて保持し、非親油性粒子と連続相とが組み合わさって、直径が20〜2000μmの範囲内である凝集体を形成する連続相;及び
c.前記凝集体を取り巻く10〜80重量%の親油性外面層であって、最低でも30℃の上昇融点を示す親油性層。
【請求項2】
顆粒の平均直径が40〜290μmの範囲内、好ましくは50〜250μmの範囲内であり、前記顆粒が、
50〜90重量%の凝集体であって、30〜200μmの範囲内の平均直径を有し、
i.10〜70重量%の複数の非親油性粒子であって、10〜150μmの範囲内、好ましくは20〜100μmの範囲内の平均直径を有する非親油性粒子;及び、
ii.30〜90重量%の別個の連続相であって、最低でも30℃の上昇融点を示す別個の連続相;
を含む凝集体;並びに、
10〜50重量%の脂質外面層であって、該脂質外面層の上昇融点が、別個の連続相の上昇融点を5℃を超えて上回らない親油性外面層;
を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
非親油性粒子が、炭水化物、タンパク質、塩及び機能性食品添加物の群から選択される1以上の食品成分を少なくとも10重量%含有し、該機能性食品添加物が、前記非親油性粒子の少なくとも0.1重量%に相当し、かつ、酵素、酸化還元剤、酸味料、親水コロイド、微生物、香味料及びそれらの組み合わせの群から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
複数の非親油性粒子が、顆粒の10〜40重量%、好ましくは、12〜35重量%に相当することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
非親油性粒子が、0.01〜5重量%、好ましくは、0.1〜3重量%の酵素を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
非親油性粒子が、少なくとも30重量%、好ましくは、少なくとも50重量%の親水コロイド、穀粉、グルテン、塩、砂糖又はそれらの混合物を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の組成物。
【請求項7】
凝集体が、25〜60重量%の複数の非親油性粒子、及び75〜40重量%の別個の連続相を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の組成物。
【請求項8】
顆粒が、15〜30重量%の脂質外面層を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の組成物。
【請求項9】
脂質外面層が、6〜25μm、好ましくは7〜20μmの範囲内の厚みを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の組成物。
【請求項10】
脂質外面層が、30〜50℃、好ましくは32〜45℃の融点を示すことを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の組成物。
【請求項11】
別個の連続相における脂質が、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、モノ及び/又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、グリセリン乳酸脂肪酸エステル(lactem)、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル(citrem)、グリセリン酢酸脂肪酸エステル(acetem)、ステアリル乳酸、ポリグリセリンエステル、脂肪酸スクロースエステル、脂肪酸、ワックス、石鹸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の組成物。
【請求項12】
機能性食品添加物が、酵素、酸化還元剤、酸味料、微生物、香味料及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の組成物。
【請求項13】
親油性外面層が、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、モノ及び/又はジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、ステアリル乳酸、ポリグリセリンエステル、スクロースエステル、脂肪酸、ワックス、石鹸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも80重量%の脂質を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の組成物。
【請求項14】
顆粒が、
10〜60重量%の複数の非親油性粒子;
15〜40重量%の別個の連続相;及び
15〜60重量%の親油性外面層
を含有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載の組成物。
【請求項15】
外面層の融点が、別個の連続相の融点を上回らないことを特徴とする請求項1〜14のいずれか記載の組成物。
【請求項16】
組成物が、少なくとも1重量%、好ましくは、少なくとも10重量%、より好ましくは、少なくとも90重量%の顆粒を含有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の組成物。
【請求項17】
練り粉又は衣用生地、好ましくはパン用練り粉の調製における、請求項1〜16のいずれか記載の組成物の使用。
【請求項18】
請求項1に定義された顆粒を0.01〜5重量%含む、練り粉又は衣用生地。
【請求項19】
請求項2〜18のいずれか記載の組成物の製造方法であって、以下を含む方法:
a.平均直径が10〜150μmの範囲内である非親油性粒子であって、1以上の機能性食品添加物を少なくとも0.1重量%含有する粒子を提供する;
b.前記非親油性粒子と、30〜45℃の融点を有する第1溶融脂肪性物質とを、重量比1:9〜7:3で組み合わせ、次いで、溶融脂肪性物質内に非親油性粒子が含まれる均一分散液が得られるように混合する;
c.均一分散液を、複数の非親油性粒子が別個の連続相に包み込まれている凝集体であって、20〜200μmの範囲内の平均直径を示す凝集体に変換する;
d.親油性外面層の融点が別個の連続脂質相の融点を5℃を超えて上回ることのない、脂質外面層に完全に取り巻かれているコーティングされた凝集体を製造するために、最低でも30℃の融点を有する第2溶融脂肪性物質で前記凝集体をコーティングする;
e.コーティングされた凝集体を室温以下に冷却する;及び
f.コーティングされた凝集体を回収して粒状体を得る。
【請求項20】
均一分散液が、スプレー冷却又は押し出しを利用して、好ましくはスプレー冷却によって、凝集体に変換されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
コーティング工程dが、流動床コーティング又は回転ドラムコーティングを利用していることを特徴とする請求項19又は20記載の方法。

【公表番号】特表2007−525995(P2007−525995A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501738(P2007−501738)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000161
【国際公開番号】WO2005/084446
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506298932)シーエスエム ネーダーランド ビー.ブイ. (4)
【Fターム(参考)】