説明

機能性食品

【課題】粉粒剤、錠剤、液剤などの各種製剤としたり、米、パン、菓子、惣菜などに含有させたものなどとしたり、清涼飲料水、牛乳などに混ぜたりして飲食すれば、抗酸化機能及び脂質蓄積阻害機能を有し、血中中性脂肪上昇を抑えることができ、抗メタボリック症候群効果に優れた機能性食品を提供する。
【解決手段】γーアミノ酪酸及びポリフェノールを含有したものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒剤、錠剤、液剤などの各種製剤としたり、米、パン、菓子、惣菜などに含有させたものとしたり、清涼飲料水、牛乳などに混ぜたりして飲食することができる機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
玄米は健康食品として注目されているが、精白米と共に炊飯できないことや、パサパサとした食感による食傷で続けて摂食するのは難しい。これらの問題を解決するために発芽玄米が開発されている(特許文献1〜3)。この発芽玄米は、炊飯時に便利なだけでなく、γーアミノ酪酸が富与されている。
【0003】
また、本発明者は、玄米をα化加工することにより、発芽玄米同様に手軽に炊飯することが出来るだけでなく、発芽玄米にはない充分な粘り気を出すことに成功した。これにより玄米は米飯としての用途以外に和菓子等の材料としての用途が広がった。
【特許文献1】特開2003−274883号公報
【特許文献2】特開2004−298124号公報
【特許文献3】特開2005−341879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この玄米にポリフェノールを用いて彩色することで、和菓子独特の彩りを添えるだけでなく、抗酸化活性などの機能性を持たせることができ、今後この技術を活用することで、米に新たな機能性を付与することができるのではないかと考えた。
【0005】
和菓子の市場はここ10年微減を続けている。同様の市場傾向をみせていたチョコレートは、2000年にカカオポリフェノールの機能性が謳われるようになり、生産量を8 .2 %伸ばした。このことから和菓子にもポリフェノールを用いて機能性を付加することにより、和菓子の市場は拡大し、ひいてはその主原料である米も消費が拡大するのではないかと思われる。
【0006】
しかし現在、玄米にポリフェノール類を用いて機能性を付与する技術は確立されていない。また、玄米由来成分と食品由来ポリフェノールとの相乗作用も確認されていない。
【0007】
このことから、本発明者は、ポリフェノールの種類・添加形態・溶媒などを検討し、さらに、玄米由来成分であるγーアミノ酪酸とポリフェノールの相互作用について抗酸化活性を測定し、機能性を評価することで、新たな機能性食品を発明するに到った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の機能性食品は、γーアミノ酪酸及びポリフェノールを含有したものとしている。
【0009】
前記γーアミノ酪酸としては、γーアミノ酪酸含有食品自体又はγーアミノ酪酸含有食品から抽出したものとしている。
【0010】
さらに、前記ポリフェノールとしては、ポリフェノール含有食品自体又はポリフェノール含有食品から抽出したものとしたり、食品添加物とすることができる。
【0011】
前記γーアミノ酪酸含有食品としては、玄米、α化加工玄米、発芽玄米、黒米の何れか一種、またはこれらの二種以上からなるものとすることができる。
【0012】
前記ポリフェノール含有食品としては、赤キャベツ、緑茶葉、紅茶葉の何れか一種以上であるものとすることができる。
【0013】
前記食品添加物としては、グレープスキン色素、カカオ色素、ガーデニアイエローの何れか一種以上であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の機能性食品は、以上に述べたように構成されており、粉粒剤、錠剤、液剤などの各種製剤としたり、米、パン、菓子、惣菜などに含有させたものなどとしたり、清涼飲料水、牛乳などに混ぜたりして飲食すれば、抗酸化機能及び脂質蓄積阻害機能を有するものとなり、血中中性脂肪上昇を抑えることができ、抗メタボリック症候群効果に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の機能性食品を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明の機能性食品は、有効成分としてγーアミノ酪酸(γ-aminobutyric acid;以下、GABAと称す)及びポリフェノールを含有したものとしている。
【0017】
本発明のGABAは、乳酸菌発酵などにより生産されたものとしたり、米、胚芽米、米の胚芽、米糠などのGABA含有食品自体としたり、これらGABA含有食品から抽出したものが用いられるが、特に限定されない。
【0018】
前記GABA含有食品は、具体的には玄米(あやひめ・幸南食糧(株))、精白米(あやひめ・幸南食糧(株))、α化加工玄米(あやひめ・幸南食糧(株))、発芽玄米(幸南食糧(株))、α化加工胚芽米(あやひめ・幸南食糧(株))、黒米(朝紫・(株)プロ農夢花巻)、赤米(年産のみ証明米・(株)プロ農夢花巻)を用いたが、これら米由来のGABA含有食品に限定されるものではない。なお、GABA含有食品を玄米、α化加工玄米、発芽玄米、黒米とした場合には、以下の実験、測定などの結果に示したように、GABA含有量が非常に多く、好ましいものとなる。
【0019】
本発明のポリフェノールは、カテキン、アントシアニン、タンニン、フェルラ酸、ルチン、イソフラボンなどとすることができるが、水や有機溶媒で抽出される植物由来成分などで、抗酸化活性を有するものであればよい。なお、本発明のポリフェノールをカテキンとした場合には、顕著な中性脂肪値の上昇抑制効果が得られ、好ましいものとなる。
【0020】
前記ポリフェノールは、ポリフェノール含有食品自体又はポリフェノール含有食品から抽出したものとすることができる。ポリフェノールをポリフェノール含有食品自体又はポリフェノール含有食品から抽出したものとすれば、容易にポリフェノールを得ることができるとともに、機能性食品の含有成分として安全性に優れたものとして用いることができ、好ましいものとなる。
【0021】
また、前記ポリフェノールは、食品添加物とすることができる。ポリフェノールを食品添加物とすれば、各種製剤、米、パン、菓子、惣菜、清涼飲料水などに安全性を期して添加することができ、これらに含有させ易いものとなり、好ましいものとなる。
【0022】
前記ポリフェノール含有食品は、赤キャベツ(長野県産)、すだち(高知県産)、大豆(北海道産:アグリシステム(株))、黒豆(北海道産:アグリシステム(株))、タマネギ(兵庫県産)、紅茶葉(スリランカ産:ユニリーバ・ジャパン・ビバレッジ(株))、緑茶葉(日本産:(株)伊藤園)を用いたが、カカオ、ぶどうなども用いることができ、これらに限定されるものではない。なお、ポリフェノール含有食品を赤キャベツ、緑茶葉、紅茶葉とした場合には、以下の実験、測定などの結果に示したように、ポリフェノール含有量が非常に多く、抗酸化活性が高くなり、好ましいものとなる。
【0023】
前記食品添加物は、グレープスキン色素(和光純薬(株);以下、Wakoと称す:071-02472 )、赤キャベツ色素(Wako:181-01262 )、ビートレッド(Wako:021-08011 )、カカオ色素(Wako:033-11142 )、アナト一色素(Wako:013-10562 )、ガーデニアイエロー(Wako:078-02281 )を用いたが、これらに限定されるものではない。なお、食品添加物をグレープスキン色素、カカオ色素、ガーデニアイエローとした場合には、以下の実験、測定などの結果に示したように、ポリフェノール含有量が非常に多く、抗酸化活性が高くなり、好ましいものとなる。
【0024】
さらに、本発明のポリフェノールは、試薬として市販されているポリフェノールである、ヘスペリジン(Wako:088-07881 )、ケルセチン(MP Biomedicals,Inc.:152003)などを用いることができるのはいうまでもない。
【0025】
次に、本発明で行った各種の実験、測定などの方法について説明する。
〔米の炊飯実験〕
炊飯器の性能差による米飯の炊きムラをなくすために、オートクレーブ(TOMYBS-235)を用いた炊飯試験を行った。500ml ビーカーに100gの試料米を入れ、洗米後、水道水を秤量加え、浸潰した。浸漬時間は、玄米・赤米・黒米は3 時間、その他は1 時間とした。その後、オートクレーブ 121℃、110 〜140kpaで加熱した。最適の水加減と加熱加圧時間を官能検査(n =3 )で測定した。
【0026】
〔ポリフェノールの測定〕
ポリフェノール含有量は Singletonらの方法(SingIeton,VL.,Rossi,J.A.JrAm.J.Enol.Vitic.,16,p144 (1965)) を一部改変して測定し、没食子酸相当量として算出した。適当な濃度に希釈したポリフェノール含有試料 1mlに 0.5・フォーリン・チオカルト試薬 1ml加え攪拌した。3 分後、0.4M Na2CO3 を 5ml添加し、50℃で 5分間保持した。1 時間水冷後、分光光度計で 765nmの吸光度を測定した。没食子酸で検量線を作成し、ポリフェノール濃度を試算した。
【0027】
〔抗酸化機能の測定〕
食品中の抗酸化機能を測定するために、DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)分光測定法)を行った。80%EtOHで試料を調製する。 400μM DPPH(Wako:047-04051)12ml、200mM MES (2-morpholinoethanesulphonic acid)buffer(pH6.0:NaOH)12ml、20%EtOH 12ml 混液を調製する。この混液 0.9mlに試料 0.3mlを添加し、室温で20分インキュベート後 520nmでの吸光度を測定した。Troloxで検量線を作成し、Trolox相当量としてポリフェノール濃度を試算した。
【0028】
〔食品中ポリフェノールの抽出〕
食品を適当量秤量し、フードプロセッサーで破砕する。粉砕した食品に80%エタノールを加え、4 ℃で24時間抽出する。抽出後、吸引ろ過でろ液を分離し、エバボレーター(80℃)で減圧乾固する。乾固したものに80%エタノールを加え溶解し、それを食品ポリフェノール溶液として使用する。
【0029】
〔米中の栄養成分分析〕
成分分析(エネルギー・たんばく質・脂質・糖質・食物繊維・ナトリウム・鉄分・カルシウム・ビタミンB1・ビタミンE ・γーアミノ酪酸)は、財団法人日本食品分析センターに依頼した。水分は Moisture determination Balance FD-600((株)ケツト科学研究所)を用いて120 ℃、20分で測定した。
【0030】
〔脂肪蓄積阻害率測定〕
マウス由来 3T3-Ll 前駆体脂肪細胞株(IFO50416)はヒューマンサイエンス振興財団研究資源バンクから購入した。細胞は10%牛胎児血清を含むダルベッコイーグル培地(DMEM)(ペニシリン、ストレプトマイシンを含む)をコンフルエントになるまで、10mmシャーレ内で 2% CO2、37℃下で培養を行った。トリプシンで細胞を分散後、24穴マイクロプレートに各we11あたり、 5×104 個/500 μl の細胞濃度となるように細胞を加え、上記培地で培養を行った。コンフルエントになった後、100 μl /ml IBMX 、390ng /mlデキサメタゾン、10μl /mlインスリンを含む脂肪細胞分化誘導培地に換え、同時に各試料溶液を加えて 2日間培養を行った)。続いて 1μl/mlインスリンを含む培地で 3日間培養後、細胞をリン酸緩衝液( 1×PBS )で洗浄し、その後市販のリピットアッセイキット((株)プライマリーセル)を用いて脂肪蓄積率を測定した。
なお、ポジティブコントロールとして 10mM N-アセチル L-システイン(NAC) を使用した。
【0031】
〔細胞毒性試験〕
96穴マイクロプレートに各wellあたり、104 個/100 μlの細胞濃度となるように播種した細胞を10%牛胎児血清含むダルベッコイーグル培地(DMEM)(ペニシリン、ストレプトマイシンを含む)をコンフルエントになるまで、2 % CO2、37℃下で培養を行った。その後、各サンプルを加えた上記培地に切り替え、2 日間培養後、市販のMTT 細胞数測定キット(ナカライテスタ(株))にて細胞毒性試験を行った。
【0032】
〔GABAとポリフェノールの相互作用(in vivo)〕
GABAとポリフェノールの相互作用を確認するために、短期高脂肪食による脂肪負荷試験を行った。20代女性に高脂肪食として、ポタージュスープ(イオン(株))に無塩バター(雪印乳業(株))35g を添加し(330kcal,脂肪32g)を摂取させ、同時に市販サプリメント錠剤カテキン((株)DHC )又は、ギヤバ((株)DHC )を経口摂取し比較した。
本試験でのカテキンの摂取量(=480mg )は、既報のヒト臨床試験で用いられた最も少量のカテキン摂取量と同等とした。これは、厚生労働省による茶カテキン 1日摂取目安量(=540mg )より少ない量である。GABAは酒井美智子らの方法(酒井美智子ら,2003年度日本農芸化学会大会要旨(2003))に基づき450mg 相当量を経口摂取とした。
血液生化学項目分析はデメカルキット「メタボリックシンドローム&生活習慣病セルフチェック」((株)リージャー)を用いて行った。
【0033】
次に、本発明で行った各種の実験、測定などの結果について説明する。
〔米の炊飯実験〕
一般的な炊飯試験は、市販の炊飯器を用いて炊飯して試験するが、実際に同メーカー、同機種4台の電機炊飯器(5合炊き)を用いて炊飯試験を行ったところ、性能差による炊きムラと、少量の米を炊飯することに不向きであると思われた。そこで、炊飯器の性能差による米飯の炊きムラをなくし、少量の炊飯のために、前記したようにオートクレーブ(TOMY BS-235 )を用いた炊飯試験を行った。結果を表1に示す。
玄米(あやひめ)、精白米(あやひめ)、α化加工玄米(あやひめ)、発芽玄米、黒米(朝紫)、赤米(年産のみ表示米)をそれぞれ100gに対し、水加減、加熱時間を変え炊飯した。このときの水浸漬時間は、精白米(あやひめ)、α化加工玄米(あやひめ)、発芽玄米は1時間、玄米(あやひめ)、黒米(朝紫)、赤米(年産のみ表示米)は5時間とした。食味は官能検査( n=3 )で行った。
玄米、精白米、α化加工玄米では、おおむね米100gに対し、水120g〜150gが適量であった。玄米、精白米の調理時間は20分が最適で、α化加工玄米は30分が最適であった。赤米、黒米だけ炊飯して食べると、独特のエグ味があり、食味がかなり劣った。発芽玄米は単独で炊飯するのは難しく、最適条件をみつけることが出来なかった。
【0034】
【表1】

【0035】
〔米中の栄養成分分析〕
α化加工による栄養成分(エネルギー、たんばく質、脂質、食物繊維、ナトリウム、鉄分、カルシウム、ビタミンB1、ビタミンE )変化を、α化加工していない精白米、玄米、胚芽米と比較した。結果を表2に示す。
α化加工玄米、胚芽米ともに、α化加工によるほとんどの項目で栄養成分変化はみられなかった。
次に、各種の米中 GABA 含有量を測定した結果を表3に示す。一般的に GABA 含有量が多いといわれている発芽玄米の GABA 含有量が 9.16mg /100gであったが、α化加工玄米の GABA 含有量はそれより多い 12.37mg/100gであった。
発芽玄米は、一般家庭で簡単に玄米を炊けるようにする工夫として、製造工程では発芽を促すために「浸漬」を行う。その際、GABAも富化されるが、GABAは水浸潰中に流出することが知られている。α化加工玄米製造工程は、図1に示すように2度目の「水切り」の段階までは、発芽玄米の製法と類似しており、発芽玄米は「水切り」後、直ちに包装するが、α化加工玄米の場合、その後、「蒸し」「放冷」「乾燥」後、包装する。α化加工玄米ではGABAが浸漬中に流出した水の存在下で、「蒸し」が行われるため、再び玄米中にGABAを含有させることが出来るものと考えられる。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
〔ポリフェノールの抗酸化活性〕
市販の食品添加物中のポリフェノール濃度を測定し(図2参照)、さらにDPPH法で抗酸化活性を測定した(図3参照)。
各食品添加物によって、含有ポリフェノール量は異なっている。また、ポリフェノール含有量と抗酸化活性もー致していないことが分かった。
次に、これらの食品添加物の加熱によるポリフェノールへの影響と、抗酸化活性への影響を測定した(図4、5参照)。
加熱するとアントシアニンは、由来する食品によってDPPHラジカル消去能の変化することが報告されている。本試験で使用した6種類の食品添加物(グレープスキン色素、赤キャベツ色素、ビートレッド、カカオ色素、アナト一色素、ガーデニアイエロー)と、2 種類のポリフェノール(ヘスペリジン、ケルセチン)のうち、ケルセチンのみ熱による抗酸化能の低下が見られた。
次に、食品からポリフェノールを抽出し、そのポリフェノール含有量と、抗酸化活性を調べた(図6、7参照)。
使用した食品は、赤キャベツ、すだち(果汁を除く)、黒豆、タマネギ(皮部のみ)、紅茶葉(乾燥)、緑茶葉(乾燥)であった。各食品を100g(紅茶葉・緑茶葉は50g )秤量し、フードプロセッサーで破砕した。80%エタノールとともに、4 ℃で24時間インキュベートした後、80℃のエバポレーターで減圧乾固した。これに再び80%エタノールを加え、これをポリフェノール液として測定した。
紅茶葉、緑茶葉のポリフェノール含有量が非常に多く、1 .77〜1 .96mg/g 含まれており、抗酸化活性も 200〜300mgTrolox 相当量/g と、非常に強かった。スダチ、タマネギでは含有ポリフェノール量は多かったが、その抗酸化活性が低かった。
なお、食品から抽出したポリフェノールは、食品由来の香りがポリフェノール液自体からするため、本発明の機能性食品の種類によって、どのポリフェノール液を用いるかの考慮が必要になる。
【0039】
〔脂質蓄積阻害効果〕
マウス由来 3T3-L1 細胞株(IFO 50416)を用いて、ポリフェノールとGABA(Wako:G0048)の脂質蓄積阻害効果を確認した。ポリフェノールとして、アントシアニンを多く含む食品添加物のグレープスキン色素(Wako:071-02472 )を用いた。アントシアニンはラット単離脂肪細胞において、アディポサイトカイン遺伝子の発現を促進し、AMPK(AMP-activated proteinkinase )リン酸化を上昇させることが知られている。脂肪細胞は肥大化(肥満状態)すると、アディポサイトカインの発現、分泌制御に破綻が生じる。また、AMPKはメタボリックセンサーとして一般的な物質である。
マウス由来 3T3-Ll 前駆体脂肪細胞株を、各試料を添加した脂肪細胞分化誘導培地で培養し、脂質蓄積量をリピッドアッセイキットで測定した。グレープスキン色素 0.6mg/ml添加区において、ポジティブコントロール(10mM NAC)と同等の脂質蓄積阻害効果がみられ、 1mg/ml添加区ではさらに強い脂質蓄積阻害効果がみられた(図8参照)。MTT 細胞数測定キットで同条件の細胞毒性も同時に測定した。グレープスキン色素 0.6〜1 mg/mlの細胞毒性は 10mM NAC より低く、5mM NAC と同等であった(図9参照)。このことから、グレープスキン色素 0.6〜1mg /mlで、ポジティブコントロールの NACより強い抗酸化性があることが示唆された。
また、同様の方法でGABAの脂質蓄積阻害効果を測定したところ、GABA 10mg /ml添加区において、ポジティブコントロール(10mM NAC)と同等の脂質蓄積阻害効果がみられ、20mg/ml、30mg/ml添加区ではさらに強い脂質蓄積阻害効果がみられた(図10参照)。GABAによる細胞毒性も同時に測定したが、 0.1〜30mg/ml添加区まで、分化誘導培地と同等の細胞毒性であった(図11参照)。
【0040】
〔GABAとカテキンの相互作用〕
マウス由来 3T3-L1 前駆体脂肪細胞株で、脂肪蓄積阻害効果がみられたGABAと、ポリフェノールの相互作用を生化学試験によって確認した。ポリフェノールはサプリメントとして入手しやすく、食後の中性脂肪値上昇を抑制することが確認されている「カテキン」をポジティブコントロールとして用いた。
健常な20代女性に高脂肪食を摂取させ、同時に「投与なし」「カテキン 480mg」「GABA 450mg」「カテキン 480mg+GABA 450mg」のいずれかを経口で摂取させた。高脂肪食摂取直前を0時間とし、その後、2時間ごとに6時間後まで、デメカルキット((株)リージャー)を用いて血液生化学分析を行った。分析項目は肝代謝能(GOT 、GPT 、γーGTP )、腎代謝能(尿素窒素、クレアチニン、尿酸)、脂質代謝能(総コレステロール、HDL 、LDL 、中性脂肪)、糖代謝能(血糖値、HbAIc )、総蛋白質、アルブミンである。
中性脂肪値を除く、全ての生化学分析項目で、カテキン、GABAの双方の影響はみられなかった。カテキンは食後の血中中性脂肪値を抑制することで知られているが、さらにGABAを同時に摂取することで、食後2 時間目の中性脂肪値の上昇を抑制することが見出された(図12参照)。これはカテキン単独摂取時に比べ、より顕著な抑制であった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明で用いるα化玄米の製造工程を示す図である。
【図2】本発明で用いる食品添加物中のポリフェノールの含有量を示す図である。
【図3】本発明で用いる食品添加物の抗酸化活性を示す図である。
【図4】本発明で用いる食品添加物の加熱によるポリフェノールに与える影響を示す図である。
【図5】本発明で用いる食品添加物の加熱による抗酸化活性に与える影響を示す図である。
【図6】本発明で用いる食品のポリフェノールの含有量を示す図である。
【図7】本発明で用いる食品のポリフェノールの抗酸化活性を示す図である。
【図8】本発明に含有したポリフェノールの脂質蓄積阻害効果を示す図である。
【図9】本発明に含有したポリフェノールの細胞毒性を示す図である。
【図10】本発明に含有したγーアミノ酪酸の脂質蓄積阻害効果を示す図である。
【図11】本発明に含有したγーアミノ酪酸の細胞毒性を示す図である。
【図12】本発明に含有したγーアミノ酪酸とポリフェノールの血中中性脂肪値への影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γーアミノ酪酸及びポリフェノールを含有したことを特徴とする機能性食品。
【請求項2】
前記γーアミノ酪酸が、γーアミノ酪酸含有食品自体又はγーアミノ酪酸含有食品から抽出したものである請求項1記載の機能性食品。
【請求項3】
前記ポリフェノールが、ポリフェノール含有食品自体又はポリフェノール含有食品から抽出したものである請求項1記載の機能性食品。
【請求項4】
前記ポリフェノールが、食品添加物である請求項1記載の機能性食品。
【請求項5】
前記γーアミノ酪酸含有食品が、玄米、α化加工玄米、発芽玄米、黒米の何れか一種、またはこれらの二種以上からなるものである請求項2記載の機能性食品。
【請求項6】
前記ポリフェノール含有食品が、赤キャベツ、緑茶葉、紅茶葉の何れか一種以上である請求項3記載の機能性食品。
【請求項7】
前記食品添加物が、グレープスキン色素、カカオ色素、ガーデニアイエローの何れか一種以上である請求項4記載の機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−201383(P2009−201383A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44842(P2008−44842)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(500165902)幸南食糧株式会社 (1)
【Fターム(参考)】