説明

機能性飲料及びその製造方法

【課題】穀物由来の糖分を備え、且つ体内への水分吸収に優れたスポーツ飲料・清涼飲料を提供すると共に、WHOのガイドラインで定められている経口補水液(ORS)に対応できる新規な機能性飲料を提供する。
【解決手段】水に適宜量の米又は米粉と塩とを加えて混合し、加熱処理した後に(糊状液Aに)、米又は米粉と約等量の米麹を加えて、所定時間、所定温度を保持させながら攪拌若しくは振動を与えて糖化液Bとし、前記糖化液を濾過して飲料Cを製出してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米を原料とした飲料で、水分補給を目的とした経口補水液に対応する機能性飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米を原料とした飲料として甘酒が知られており、この甘酒は周知の通り、米麹と飯を混ぜて55℃で12時間程度、或いは65℃で8時間程度放置して、麹のアミラーゼによってデンプンを糖化してグルコースを作り、甘い糖液(糊状)とし、この糖液をお湯で溶いて薄め、飲料とするものである。
【0003】
更に前記の糖液を冷却して加水し、麹菌を加えて培養、発酵を行う飲料の製造方法も知られている(特許文献1)。
【0004】
また経口補水液(ORS)は、脱水症の予防や治療に採用されるもので、体内への水分の吸収が良好になされるようにした飲料で、その成分・組成は、WHOのガイドラインで定められている(非特許文献1)。
【0005】
前記のORSに対応する飲料は、所定量の糖質、電解質を水に溶解し、その溶液に各種の酸性物質(例えば、クエン酸等の有機酸)やアルカリ性物質(例えば、炭酸水素ナトリウム等)を添加してpHを所定の範囲に調整して製造することが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−133745号公報。
【特許文献2】特開2007−68466号公報。
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】月刊誌「小児科臨床」日本小児医事出版社、第61巻、第1号(2008年1月号)第15頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水分補給用飲料(経口補水液)は、一般に前記した通り、所定の成分・組成となるように、必要含有成分を水に溶解して製造しているものである。即ち人工的(化学的)に製造した材料を使用して製造したものである。
【0009】
また甘酒(糖液)を単に薄めたとしても、水分補給用飲料(経口補水液)の機能を備えた飲料とはならない。
【0010】
そこで本発明は、自然物である穀物を原材料とした水分補給用飲料に対応する新規な機能性飲料を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る機能性飲料及びその製造方法は、水に適宜量の米又は米粉と塩とを加えて混合し、加熱処理した後に、米又は米粉と約等量の米麹を加えて、所定時間、所定温度を保持させながら攪拌若しくは振動を与えて糖化液とし、前記糖化液を濾過して製出してなることを特徴とするものである。
【0012】
従って製出された機能性飲料は、糖化液の穀物由来の糖類及びアミノ酸や、電解質成分(Na+)が含まれることになり、水分吸収機能に優れ、且つ食味の良い飲料となったものである。特に予め当該成分が所定値の範囲(前記WHOのORSガイドライン)となるように、米又は米粉並びに塩の量を定めておくと、製出した機能性飲料は、水分補給用飲料(経口補水液)として使用することもできる。
【0013】
また前記範囲以上の濃度に製出した場合には、更に成分・組成が前記の所定値の範囲内になるよう割り水をすると、前記と同様に水分補給用飲料(経口補水液)として使用することができる。
【0014】
更に本発明(請求項3,7)は、前記の機能性飲料及びその製造方法において、特に塩として岩塩、海塩又は清浄な海洋深層水を使用するものであり、前記の糖質成分及び必要とする電解質成分(Na+)の他に、海水に含まれる自然のミネラル成分をも含む飲料を提供できる。
【0015】
また本発明(請求項4,8)は、前記の機能性飲料及びその製造方法において、特に水に、鉱泉水又は脱塩海洋深層水を使用するもので、当該水が含有しているミネラル成分を備える飲料を提供できるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成は上記のとおりで、穀物を原材料とし、所定の塩分含有状態下での糖化処理によって、糖分と塩分(電解質成分:Na+)を含んで、体内への水分吸収が効果的に行われると共に、エネルギーの補給もできるので、スポーツ飲料として最適であることは勿論のこと、自然物由来成分のみで製出し、且つ食味の良い水分補給用飲料(経口補水液)としても提供できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の製造工程の説明図。
【図2】同実施形態の原材料比率と製出された飲料の糖度を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態は、図2に示した原材料比率で実施したもので、その製造は、加熱処理工程、糖化工程、濾過工程の順で行われるものである。
【0019】
加熱処理工程は、海洋深層水に蒸留水を混合して塩分濃度を0.3%とし、更に米粉を1.0%(重量比、以下同様)、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、5.0%の割合で混合し、これを加熱処理(90℃、15分の後一旦攪拌し再度100℃、15分の加熱を行う)するものである。加熱処理後の性状は、糊状である。
【0020】
糖化工程は、前記の加熱処理を終了した糊状液Aを冷却して余熱を取り、50℃程度で、米麹を米粉と同量添加して攪拌し、液温を50〜60℃に維持させながら、振盪器で振動を与えながら15時間以上デンプンの分解を行い、糖化液Bを得るものである。尚振盪器に代えて攪拌機構を備えた容器で糖化を行うようにしても良い。
【0021】
濾過工程は、前記糖化液Bを濾過し、糖化液B中の残余の固形分を取り除き、飲料Cを抽出するものである。尚濾過後の回収率は87%以上であり、塩を使用しない場合の糖化処理においては、回収率が70%程度であり、糖化処理時に予め塩分を含有させる方が、残留固形分が少なく、回収率に優れていることが確認できた。
【0022】
飲料Cは、米粉及び米麹の使用量によって図1に示す通り糖度の差異がある。塩分については、海水の約1/10の濃度であるから、Naイオンは、約0.1%程度となる。また海水に含まれるMgイオン、Kイオン、Caイオン等のミネラル成分も含むことになる。
【0023】
従って飲料Cは、低浸透圧な飲料とすることで水分の体内吸収に優れ、且つ甘味のある食味の良い飲料となるもので、水分補給を目的とするスポーツ飲料や、清涼飲料として最適なものである。
【0024】
また特にNaイオン及び糖度を所定の範囲内に納まる米粉量、塩分量を選択することで、WHOのガイドラインに対応する水分補給用飲料(経口補水液)としても、使用することができるものである。更に糖度等が高めに製出された場合には、適宜な割り水を行って調整することもできる。
【0025】
尚本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、米粉に替えて米を用いても良く、またNaイオン及び各種ミネラル成分は、岩塩、海塩、海洋深層水、鉱泉水、食塩を適宜組み合わせて使用することで対応できるものであり、電解質の濃度の選択についても、前記の原材料の使用量を調整することで実現できるものである。
【符号の説明】
【0026】
A 糊状液
B 糖化液
C 飲料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に適宜量の米又は米粉と塩とを加えて混合し、加熱処理した後に、米又は米粉と約等量の米麹を加えて、所定時間、所定温度を保持させながら攪拌若しくは振動を与えて糖化液とし、前記糖化液を濾過してなることを特徴とする機能性飲料の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の糖化液を濾過した後、成分・組成が所定値の範囲内になるよう割り水をしてなる機能性飲料の製造方法。
【請求項3】
塩として岩塩、海塩又は清浄な海洋深層水を使用して、ミネラル成分を含ませてなる請求項1又は2記載の機能性飲料の製造方法。
【請求項4】
水に、鉱泉水又は脱塩海洋深層水を使用して、ミネラル成分を含ませてなる請求項1乃至3記載の何れかの機能性飲料の製造方法。
【請求項5】
水に適宜量の米又は米粉と塩とを加えて混合し、加熱処理した後に、米又は米粉と約等量の米麹を加えて、所定時間、所定温度を保持させながら攪拌若しくは振動を与えて糖化液とし、前記糖化液を濾過して製出したことを特徴とする機能性飲料。
【請求項6】
請求項5記載の機能性飲料に、成分・組成が所定値の範囲内になるよう割り水をして製出した機能性飲料。
【請求項7】
塩として岩塩、海塩又は清浄な海洋深層水を使用して、ミネラル成分を含ませた請求項5又は6記載の機能性飲料。
【請求項8】
水に、鉱泉水又は脱塩海洋深層水を使用して、ミネラル成分を含ませた請求項5乃至7記載の何れかの機能性飲料。

【図1】
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【図2】
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