説明

機能性飼料組成物

通常の飼料成分、ペプチドグリカンおよびヌクレオチドを含んでなる飼料組成物を記載する。この飼料組成物は、動物の感染性疾患を防止しまたは減少させかつ感染性疾患に関連した症状を防止するのに用いることができる。この飼料組成物を感染体の投与前、感染中または感染後に供給することによる魚類の給餌方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、動物の感染性疾患の症状を防止しまたは軽減する目的で投与することができる飼料組成物、飼料組成物の使用、および独立クレームの前文で定義されている通りの魚類の給餌方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
Piscirickettsia salmonisは、サケ科の魚に致命的な敗血症を引き起こす小型の細胞内細菌である。1980年代後半に最初に単離されて以来、P.salmonisはチリの水産養殖産業においてサケ科の魚の大量死の主要な原因となっている。P.salmonisは細胞内性であるので、感染したサケの抗生物質投与の効力は極めて不十分である。ワクチン開発も、細菌が細胞内性であることから困難であることが明らかになっている。従って、P.salmonisに対して現在用いられているワクチンは淡水から海水に移した6ヶ月後には大部分が無効となり、当該産業はこの疾患を治療するときには依然として大部分を抗生物質に依存している。オキソリン酸のような抗微生物薬の使用は、チリでは多年にわたって広範囲に行われており、130 t (活性化合物)/年を上回る量に達している。この中の80%を上回る量がP.salmonisの制御に用いられているが、いずれの抗微生物薬も一貫して有効であることは示されていない。
【0003】
更に、オキシテトラサイクリンおよびオキソリン酸のような抗生物質投与は、大西洋サケのような魚類の特異的および非特異的免疫系の機能を著しく減少させる可能性がある。この免疫抑制によりP. salmonisのような病理学的微生物による再感染の危険性が増加し、P. salmonisが速やかに再集落形成し、抗生物質の投与が繰り返し必要となる。この抗生物質の広汎な再使用により、魚の免疫が低下し、消化管微生物叢のような生物の天然の微生物叢に影響を及ぼす。給餌効率および成長が低いことは、これに関して抗生物質投与の負の効果として報告されているものの幾つかであり、従って経済的問題だけでなく全般的な魚の健康の問題でもある。魚の健康について一般および消費者の認識が高まることによって、水産養殖生産における有効な代替治療および疾患出現の防止の必要性が増している。
【0004】
抗生物質の継続使用は、残留物や食品安全性の問題も提起してきている。米国および日本市場には、チリ産のサケの総てのバッチについて抗生物質残留物を試験することが求められている。これらのイニシアティブにより、大西洋サケ個体群の水揚げ前に2ヶ月を上回る長めの投与中止期間が生じた。従って、この期間は重大な危険を表し、あらゆる種類の重篤な感染症の場合に貴重な魚の大きな損失を生じる可能性がある。更に、疾患を制御するのに抗生物質を全く使用することができないので、任意の感染症および水揚げ前の個体群の損失は重大な財政上の不利益を生じる可能性がある。
【0005】
魚の免疫応答を高める免疫刺激薬は、水産養殖において、特に統合した健康管理プログラムの一部として配置されるときには重要な用途を有する。ペプチドグリカン(PG)は細菌細胞癖の構造成分であり、グラム陽性菌の90%乾燥重量までを形成することができる。PGは、細胞強度、形状および細胞質の浸透圧の中和に関与している。それらは、強力な格子型構造を生じさせる2種類の交互になっているアミノ糖から形成される。PGは、多くの病原性細菌に存在しているため、宿主の免疫系に暴露されたときに強力な応答を生じさせる。PGは、サケ科の魚、ブリ、テラピア、カレイおよび小エビなどの幼魚並びに成魚水産養殖種の範囲で病原菌に対する改良された防御を示している。しかしながら、ペプチドグリカンの投与は、これが最適用量で投与されず、高すぎたりまたは低すぎたりし、特に生物に一層長期間投与されると、生存数の減少などの負の副作用を生じることがあることが示されている。水産養殖の観点からは、この強力な免疫刺激薬を現在の実験経験および知識に基づいて推奨可能な期間より長期間投与することができるならば、有益であろう。Matsuo K. & Miyazono I.(「ニジマス幼魚の耐病性および成長に対するペプチドグリカンの長期投与の影響」Nippon Suisan Gakkaishi 89 (8): 1377-1379, August 1993)は、28日より長期間のPGの経口投与は、耐病性を減少させる可能性があることを報告した。
【0006】
ほとんどの細胞は、細胞複製に用いられるヌクレオチドを産生する。任意の生きている生物における通常の条件下では、ヌクレオチドの一定の合成は細胞増殖で求められる自然の要求と良好にバランスがとれている。
【0007】
本明細書によって解決すべき問題は、上記の負の副作用がなく、かつ魚類がP.salmonisのような感染症に暴露されているまたはされてしまった期間中に魚類の生存を向上させる効果的な機能性健康食餌および給餌方法を開発し、提供することである。このような食餌は、魚および給餌生産者のいずれにもかなりの経済的利益を与えるものと思われる。更に、それは魚の健康に寄与するであろうし、また不利益が知られている抗生物質投与の必要性および量を減少させることができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第一の態様によれば、組成物が更にペプチドグリカンおよびヌクレオチドを含んでなることを特徴とする通常の飼料成分を含んでなる飼料組成物(feed composition)が提供される。
【0009】
好ましくは、飼料組成物中のペプチドグルカンは、0.001−0.01重量%、更に好ましくは0.001−0.005重量%、最も好ましくは0.001重量%の範囲である。好ましくは、ヌクレオチドは0.05重量%−1重量%、更に好ましくは0.1−0.5重量%、最も好ましくは0.2重量%の範囲である。
【0010】
好ましくは、ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比は4より大きく、更に好ましくは20より大きく、更に好ましくは40より大きい。
【0011】
好ましくは、ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比は40より大きい。
【0012】
好ましくは、ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比は20より大きく、ペプチドグルカンの量は飼料組成物の重量の0.001−0.01%の範囲である。
【0013】
好ましくは、ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比は40より大きくかつペプチドグルカンの量は飼料組成物の重量の0.001−0.01%の範囲である。
【0014】
好ましくは、ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比は20より大きく、ペプチドグルカンの量は飼料組成物の重量に対して0.01%未満であり、好ましくは約0.05以下である。
【0015】
好ましくは、ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比は40より大きくかつペプチドグルカンの量は飼料組成物の重量に対して0.01%未満であり、好ましくは約0.005%以下である。
【0016】
好ましくは、ヌクレオチドの量は飼料組成物の総重量に対して約0.2%であり、ペプチドグルカンの量は約0.005%である。
【0017】
好ましくは、ヌクレオチドは、アデノシン一リン酸、シチジン一リン酸、グアノシン一リン酸、ウリジン一リン酸、チミジン一リン酸から選択される。
【0018】
好ましくは、組成物は、更に他の免疫刺激および/または抗炎症成分を含んでなる。
【0019】
本発明の第二の態様によれば、通常の飼料成分、ヌクレオチドおよびペプチドグリカンを含んでなる飼料組成物は、動物の感染性疾患に関連した症状を防止しまたは減少させるための機能性飼料組成物として用いられる。
【0020】
本発明の第三の態様によれば、通常の飼料成分およびペプチドグリカンを含んでなる飼料組成物は、動物の感染性疾患に関連した症状を防止しまたは減少させるための機能性飼料組成物として用いられ、ペプチドグリカンの濃度は0.01gkg−1飼料−0.05gkg−1飼料の範囲である。
【0021】
好ましくは、第二および第三の態様の飼料組成物は、感染体によって攻撃された魚(fish challenged by an intection)の生存および/または成長を増加させる目的で用いられる。
【0022】
更に好ましくは、組成物は、感染が、Piscirikettsia salmonis、Moritella viscosa、Francisella種,マウス・ロット、連鎖球菌感染症、ビブリオ感染症のような細菌、膵臓疾患、NSAV、鰓炎症(GI)、心臓・骨格筋炎症(HSMI)、サケ伝染性貧血症(ISA)ウイルス、サプロレグニオシス、およびウミシラミ感染症によって引き起こされる場合に用いられる。
【0023】
好ましくは、組成物は、動物が水生動物であり、更に好ましくは水生動物が魚類、甲殻類または軟体動物であるときに用いられる。この魚類は、サケ、カレイ、または任意の他の養殖可能な魚種であることができ、最も好ましくは、魚は大西洋サケSalmo salarである。
【0024】
組成物は、動物の感染性疾患の予防および/または処置のための薬剤および/または栄養補助食品(nutraceutical)および/または機能性飼料を生産するために、および/または疾患の症状を減少させるために用いられる。
【0025】
これらの組成物は、感染後の効果的回復および/または感染による抗生物質処置のために、および/または再感染の危険を減少させるために用いることもできる。
【0026】
組成物は、抗生物質と組み合わせておよび/または抗生物質処置に先だって感染症の改良治療の目的で用いることもできる。
【0027】
本発明の第四の態様では、請求項1−5のいずれか一項に記載の組成物を感染体による攻撃の前、感染中または魚類が感染してしまった後の期間に魚類に提供することを特徴とする、感染しやすい魚類の給餌(feeding)方法が提供される。
【0028】
好ましくは、組成物を感染前の1−12週間、更に好ましくは2−6週間、最も好ましくは4週間給餌する。
【0029】
あるいは、魚にヌクレオチドを更に含んでなる通常の飼料組成物を所定期間給餌した後、請求項1−12のいずれか一項に記載の組成物を給餌することができる。
【0030】
好ましくは、ヌクレオチドを更に含んでなる飼料組成物を1−8週間、更に好ましくは2−4週間、最も好ましくは3週間給餌する。
【0031】
請求項1−12のいずれか一項に記載の飼料組成物を1−12週間、最も好ましくは1週間給餌するのが好ましい。
【0032】
好ましくは、方法の請求項に記載の方法は、感染が、Piscirikettsia salmonis、Moritella viscosa、Francisella種,マウス・ロット、連鎖球菌感染症、ビブリオ感染症のような細菌、膵臓疾患、NSAV、鰓炎症(GI)、心臓・骨格筋炎症(HSMI)、サケ伝染性貧血症(ISA)ウイルス、サプロレグニオシス、およびウミシラミ感染症によって引き起こされるときに用いられる。
【0033】
好ましい態様は、従属請求項にも記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】投与前相に様々な食餌を投与された大西洋サケ(Salmo salar)の投与後期間中の実験1の累積死亡率(平均値+SEM)。
【図2】投与前相に様々な食餌を投与された後の投与後期間中の(実験1)大西洋サケ(Salmo salar)のKaplan-Meier生存曲線(相対生存率,平均値±平均値の標準誤差)。
【図3】時間系列として表される実験2における大西洋サケ(Salmo salar)の累積死亡率(%)(平均値±SDEV)。魚は、Piscirickettsia salmonisの投与前に様々な食餌を投与された。
【図4】投与後相の後の最終死亡率として表される実験2における大西洋サケ(Salmo salar)の累積死亡率(%)(平均値±SEM)。魚は、Piscirickettsia salmonisの投与前に様々な食餌を投与された。
【実施例】
【0035】
本発明の態様を、下記の図表に関する実施例によって説明する。
【0036】
実験の部
実験1
総数が640尾の大西洋サケSalmo salar(160尾/群)で雌雄混合し出発重量が80gの海水に適合させたものに、1日当たり2%体重で4週間給餌した。実際には、魚は自由に飼料に接近できる。魚を6個のタンクに保持した。給餌期間の開始前に、魚にピットを装着して(pit-tagged)異なる群を識別した。魚を、周囲海水温(16℃)に保持した。死亡数を、1日毎に評価した。
【0037】
投与前(pre-challenge)期間には、5種類の食餌(表1)を含む4種類の食餌処置を行った(表3)。3群の魚には、ヌクレオチドを含んでなる食餌を3週間給餌した後、様々な濃度のペプチドグリカンおよびヌクレオチドを含んでなる3種類の食餌を1週間給餌した。対照群には、4週間の全投与前期間中、市販の食餌を投与した。総ての食餌は通常の飼料成分を含んでなり、添加したペプチドグリカンおよびヌクレオチドの量だけが異なっていた(表2)。
【0038】
Piscirikettsia salmonisの投与および投与後(post-challenge)給餌
投与前期間の最後の給餌の24時間後に、魚を6個のタンクに群当たりタンク当たり25尾の魚となるように均等に混合した(総数100尾/タンク)。魚に、Piscirikettsia salmonisの致死投与量(LD50)の0.2mlを腹腔内投与した。投与後に、魚にヌクレオチドまたはペプチドグリカンを全く添加していない同一対照食餌を30日間与え(投与後)、実験を終了し、最終的死亡数を評価した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
LD50評価
個体群の50%の死亡率水準(LD50)を決定するための正確な用量を、主要な投与前に評価した。給餌実験に用いた同一ストックの魚から総数220尾(Salmo salar)を、4基の700Lタンクに振り分けた。魚の平均重量は、120−150gであった(55尾/タンク)。タンクには、室温の海水を供給した。魚をタンク条件に順応させたならば、既知力価のP.salmonis PSLT8の4種類の希釈物(1/10、1/100、1/1000および1/10,000)を投与した(0.2ml 魚、腹腔内投与、腹内側)。水温および投与された魚の死亡率データーを、30日間にわたって記録した。様々な食餌の給餌期間と平行してLD50を推定した。
【0043】
統計
死亡率は、累積死亡率(%)として表した。データーは、Log RankおよびWilcoxon検定(Minitab 13.32, State College, PA, USA)の他にKaplan-Meier生存分析を用いて評価した。相対生存率(RPS)は、下記のようにして計算した。
【数1】

【0044】
結果および検討
ヌクレオチドおよびペプチドグリカン(PG)を給餌された魚は、対照食餌を与えられた魚と比較して、投与の30日後の検討の終了時までには有意に高い相対生存率(RPS)を示した(表4、図2)(Log-Rank検定:p<0.001;Wilcoxon検定:p<0.001)。対照群における生存の確率は、ヌクレオチドおよびPG 0.05%、ヌクレオチドおよびPG 0.01%およびヌクレオチドおよびPG 0.005%を投与された処置群ではそれぞれ69%、72%および75%であったのと比較して、49%を下回った(図2)。ヌクレオチドとペプチドグリカンの組合せを含んでなる食餌を投与する処置では死亡率に有意な差はなかったが、投与量が低下するにつれて死亡率が低下する明らかな傾向が見られた(図1)。タンク間の偏差は低く、タンクの影響に有意差は見られなかった(Log-Rank検定:p=0.906;Wilcoxon検定:p=0.952)。
【0045】
【表4】

【0046】
実験2
総数が900尾の大西洋サケSalmo salar(150尾/処置群、6処置群)で出発重量が80gの海水に適合させたものに、給餌期間の開始前にピットを装着して(pit-tagged)異なる群を識別した。魚を、周囲海水温(16℃)に保持した。死亡数を、1日毎に評価した。魚に、様々な組合せの6種類の食餌を1日当たり2%体重で8週間給餌した: 追加成分を含まない対照食餌、ヌクレオチドを含んでなる食餌、ペプチドグリカンを含んでなる食餌、およびヌクレオチドとペプチドグリカンの組合せを含んでなる食餌(表5)。ヌクレオチドおよび/またはペプチドグリカンの添加を除けば、総ての食餌は通常の飼料成分を含んでいた(表6)。実際には、魚は自由に飼料に接近できる。
【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
魚には、4週間の投与前相中に様々な食餌を与えた(表7)。処置1では、投与前期間の4週間に如何なる成分も加えない対照食餌を投与した。処置2では、ヌクレオチドを加えた食餌を4週間投与した。処置3では、魚に対照食餌を3週間投与した後、0.005%PGを含んでなる食餌1週間投与した。処置4および5では、魚にヌクレオチドを含んでなる食餌を3週間投与した後、ヌクレオチドとペプチドグリカンの様々な組合せ(処置4では0.005% PGおよび処置5では0.001% PG)を含んでなる食餌1週間投与した。処置6では、魚にヌクレオチドとペプチドグリカンの組合せを含んでなる食餌を4週間投与した。投与前期間の後、魚に下記に詳細に説明するようにP.salmonisを投与した。
【0050】
投与後期間中に、総ての処置群には実験を終了するまで4週間対照食餌を投与した。
【0051】
【表7】

【0052】
Piscirikettsia salmonisの投与
4週間の試験用食餌を投与した後(投与前期間)、魚を群当たりタンク当たり25尾ずつ6個のタンクに均等に割り振った(総数150尾/タンク)。魚に、個体群の50%を殺すと予想された投与量(LD50)のPiscirikettsia salmonis 0.2mlを腹腔内(i.p.)投与した。魚に、投与期間中を通じて対照食餌を投与した。死亡した魚は、毎日取り除き、記録した。
【0053】
LD50評価
LD50を、様々な食餌の給餌期間と平行して実験1に記載したように評価した。LD50評価についての魚の平均重量は、80gであった(55尾/タンク)。
【0054】
統計
統計学的評価は、実験1に記載した通りに行った。
【0055】
結果および検討
LD50用量を投与し、約50%の対照個体群における死亡率水準を得た。最終的な対照死亡率は、53%に達した(表8、図4)。現行の投与研究には、有意なタンクに基づく効果はないと思われる(p=0.967)。
【0056】
投与後の14日目には、死亡率は対照処置で10%を越えた(図3)。ペプチドグリカンを与えた群では、死亡率は投与から21日後に10%に達した。ヌクレオチドを添加しただけのものも、全般的死亡率を遅らせ減少させたが(図4)、ペプチドグリカンとヌクレオチドの組合せについての場合ほど効率的ではなかった。添加物としてヌクレオチドのみを含んでなる食餌を投与された魚は、相対生存率(RPS)が45%(表8)であり、添加物を全く含まない対照食餌を投与された対照と比較して有意に高い生存確率(p<0.001、Log Rank-Wilcoxon)を示した。
【0057】
ペプチドグリカンを投与された総ての処置群は、対照食餌を投与された処置群と比較して有意に高い生存確率(p>0.001、Log Rank-Wilcoxon)を示し、RPS値は66% 〜 78%であった(表8、図3)。
【0058】
【表8】

【0059】
ペプチドグリカン群は総て、添加剤としてヌクレオチドのみを投与する処置から有意に異なる生存確率を有していた(p<0.05、Log Rank-Wilcoxon)。
【0060】
投与前相においてヌクレオチドとペプチドグリカンの組合せを含んでなる食餌(処置4、5および6)を給餌された魚は、ヌクレオチドを全く添加せずペプチドグリカンのみを含んでなる食餌(処置3)を給餌された魚と比較して3〜12%高い生存確率を有した。
【0061】
ヌクレオチドを含む食餌を3週間給餌した後、ヌクレオチドを様々な量のペプチドグリカン(0.001% PGまたは0.005% PG)と組み合わせて含んでなる食餌を給餌した魚の生存には差がなかった。しかしながら、魚に、低濃度(0.001% PG)のペプチドグリカンをヌクレオチドと組み合わせたものを4週間の全投与前期間中に給餌したときには(処置6)、驚くべきことには最良の投与後生存率が得られた。
【0062】
実験1および2からの結論
実験1においてヌクレオチドとペプチドグリカンの組合せを給餌したところ、負の対照(市販の食餌)と比較してPiscirickettsia salmonisに対する耐性が有意に増加した。試験群(ペプチドグリカン+ヌクレオチド)間の生存率には有意差はなかったが、実験1では投与量を低くすると生存率は増加する傾向があった。
【0063】
Zhou et al. (2006; 「日本カレイ(Paralichthys olivaceus)の先天免疫応答および防護活性に対するA3a−ペプチドグリカンの食餌用栄養補給物の効果」,Aquaculture 251 , 172-181)は、Vibrio anguillariumを投与した後の日本カレイ(Paralichthys olivaceus)におけるペプチドグリカンの最適投与量として4g kg−1食餌を見出した。4g kg−1より低いおよび高い投与量では、いずれも死亡率を増加させることが報告された。同様な用量範囲の効果はブラックタイガーエビ(Penaeus monodon)で観察され、改良された生存率が低めの最適用量で達成された(Boonyaratpalin S. et al. (1995)「ブラックタイガーエビPenaeus monodonの成長、生存、免疫応答およびストレス耐性に対するBrevibacterium lactofermentumから調製したペプチドグリカンの効果」: アジアの水産養殖における疾患II. M. Shariff, J.R. Arthur & RP. Subasinghe (監修), p. 469-477. Fish Health Section, Asian Fisheries Society, Manila, Philippines)。
【0064】
驚くべきことには、ヌクレオチドと組み合わせた0.5g〜0.01g PG kg−1食餌の濃度は、実験1および2における感染した魚の生存を有意に向上させるのに有効であった。更に、ペプチドグリカンは、ヌクレオチドを添加しない実験2における投与後生存の改良では、0.05g kg−1飼料程度の濃度で有効であった。
【0065】
実験2の投与前期間中にヌクレオチドと組み合わせたペプチドグリカンを経口投与したところ、投与後期間の終了時における魚の生存が78% RPSまで有意に保護された(生存確率p<0.001、Log Rank-Wilcoxon)。
【0066】
全投与前相中にヌクレオチドと組み合わせてペプチドグリカンを低濃度(0.001% PG;最終投与量6mg kg−1体重)で魚に投与したときに、最良の結果を得た。
【0067】
実験の結果は、免疫刺激薬と共に投与される適切な水準のヌクレオチドは感染体の投与またはストレスの期間において魚にとって有益と思われることを示している。これらの効果は、細胞個体群が、例えば免疫系刺激の期間中に速やかに増加するときには制限的になるヌクレオチドによることがある。
【0068】
ペプチドグリカンへの過剰暴露による免疫の負の効果は、文献に記載されている(Matsuo & Miyazono, (1993)は、PGを0.2および2mg/kg食餌で経口投与することによりV.anguillarumに対するニジマスの耐病性が高まるが、28日より長期に投与すると耐病性が減少する可能性があることを報告した)。
【0069】
実験の結果は、ヌクレオチドがペプチドグリカンによる過剰暴露および/または長期に関するこれらの負の効果を補償することができることを示唆している。
【0070】
従って、本発明は、魚の健康管理のための重要な改良を表している。
【0071】
上記した本発明の特徴は、発明の範囲から離反することなしに改質することができることを理解されるであろう。
【0072】
用語の定義
ペプチドグリカンという用語は、ペプチドグリカンの物質群に属する総ての一般に記載されているおよび未だに記載されていない化合物を包含する。
【0073】
ヌクレオチドは、AMP、GMP、UMP、CMP、UMPのようなヌクレオシドの任意の既知のリン酸エステルを包含する。
【0074】
通常の飼料成分は、脂質、タンパク質、ビタミン、炭水化物、ミネラルなどのような特定の動物種の飼料組成物に一般に用いられる飼料成分である。
【0075】
機能性飼料とは、通常の食餌の一部として消費される従来の食物に外観が類似している可能性がありまたは従来の食物であることがあり、かつ生理学的利点を有しおよび/またはヌクレオチドやペプチドグリカンのような生物活性化合物を含んでなることによって基本的栄養機能を越えてある種の疾患の危険性を減少させることが示されているものである。
【0076】
サケは、サケ科に属する魚である。代表例は、大西洋サケ(Salmo salar)、ニジマス(Onchorynchus mykiss)、ギンザケ(Onchorynchus kisutch)である。
【0077】
感染性疾患という用語は、例えば、Piscirikettsia salmonis、Moritella viscosa、Francisella種,マウス・ロット(Mouth Rot)、連鎖球菌感染症、ビブリオ感染症のような細菌、膵臓疾患、NSAV、鰓炎症(GI)、心臓・骨格筋炎症(HSMI)、サケ伝染性貧血症(ISA)ウイルス、サプロレグニオシス(Saprolegniosis)、およびウミシラミ感染症(sealice infection)によって引き起こされる一般に知られている動物の感染性疾患を包含する。
【0078】
回復という用語は、動物の健康が疾患に冒された後に回復することを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の飼料成分を含んでなる飼料組成物であって、ペプチドグリカンおよびヌクレオチドを含んでなることを特徴とする、飼料組成物。
【請求項2】
上記ペプチドグリカンが、0.001−0.01重量%、好ましくは0.001−0.005重量%、最も好ましくは0.005重量%の範囲である、請求項1に記載の飼料組成物。
【請求項3】
ヌクレオチドが、0.05%−1重量%、好ましくは0.1−0.5重量%、最も好ましくは0.2重量%の範囲である、請求項1に記載の飼料組成物。
【請求項4】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、4より大きく、更に好ましくは20より大きく、更に好ましくは40より大きい、請求項1に記載の飼料組成物。
【請求項5】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、40より大きい、請求項1に記載の飼料組成物。
【請求項6】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、20より大きく、かつペプチドグルカンの量が、飼料組成物の重量の0.001−0.01%の範囲である、請求項1に記載の飼料組成物。
【請求項7】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、40より大きく、かつペプチドグルカンの量が、飼料組成物の重量の0.001−0.01%の範囲である、請求項6に記載の飼料組成物。
【請求項8】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、20より大きく、かつペプチドグルカンの量が、飼料組成物の重量に対して0.01%未満であり、好ましくは約0.05以下である、請求項6に記載の飼料組成物。
【請求項9】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、40より大きく、かつペプチドグルカンの量が、飼料組成物の重量に対して0.01%未満であり、好ましくは約0.005%以下である、請求項6に記載の飼料組成物。
【請求項10】
ヌクレオチドの量が飼料組成物の総重量の約0.2%であり、ペプチドグルカンの量が約0.005%である、請求項1に記載の飼料組成物。
【請求項11】
ヌクレオチドが、アデノシン一リン酸、シチジン一リン酸、グアノシン一リン酸、ウリジン一リン酸、チミジン一リン酸を含んでなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の飼料組成物。
【請求項12】
組成物が、更に他の免疫刺激および/または抗炎症成分を含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の飼料組成物。
【請求項13】
動物の感染性疾患の予防および/もしくは処置、並び/または疾患の症状の軽減のための医薬組成物および/または栄養組成物および/または機能性飼料の製造ための、通常の飼料成分、ヌクレオチドおよびペプチドグリカンを含んでなる組成物の使用。
【請求項14】
上記ペプチドグルカンが、0.001−0.01重量%、好ましくは0.001−0.005重量%、最も好ましくは0.005重量%の範囲である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
ヌクレオチドが、0.05重量%−1重量%、好ましくは0.1−0.5重量%、最も好ましくは0.2重量%の範囲である、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、4より大きく、更に好ましくは20より大きく、更に好ましくは40より大きい、請求項13に記載の使用。
【請求項17】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、40より大きい、請求項13に記載の使用。
【請求項18】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、20より大きく、かつペプチドグルカンの量が飼料組成物の重量の0.001−0.01%の範囲である、請求項13に記載の使用。
【請求項19】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、40より大きく、かつペプチドグルカンの量が飼料組成物の重量の0.001−0.01%の範囲である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
ペプチドグルカンに対するヌクレオチドの重量比が、40より大きく、かつペプチドグルカンの量が飼料組成物の重量に対して0.01%未満であり、好ましくは約0.005%以下である、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
ヌクレオチドの量が飼料組成物の総重量の約0.2%であり、かつペプチドグルカンの量が約0.005%である、請求項13に記載の使用。
【請求項22】
ヌクレオチドが、アデノシン一リン酸、シチジン一リン酸、グアノシン一リン酸、ウリジン一リン酸、チミジン一リン酸を含んでなる群から選択される、請求項13〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
組成物が、更に他の免疫刺激および/または抗炎症成分を含んでなる、請求項13〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
動物の感染性疾患に関連する症状を防止または軽減するための機能性飼料組成物としての請求項13〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
感染体に攻撃された魚の生存および/または成長を増加させるための、請求項13〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
感染が、Piscirikettsia salmonis、Moritella viscosa、Francisella種,マウス・ロット、連鎖球菌感染症、ビブリオ感染症のような細菌、膵臓疾患、NSAV、鰓炎症(GI)、心臓・骨格筋炎症(HSMI)、サケ伝染性貧血症(ISA)ウイルス、サプロレグニオシス、およびウミシラミ感染症によって引き起こされる、請求項13〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
動物が、水生動物である、請求項13〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
水生動物が、魚類、甲殻類または軟体動物である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
魚類が、サケ、カレイ、または任意の他の養殖可能な魚種である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
魚類が、大西洋サケSalmo salarである、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
動物の感染性疾患に関連する症状を防止または軽減するための、請求項13に記載の使用。
【請求項32】
感染後の効果的回復および/または感染による抗生物質処置のための、および/または再感染の危険を軽減するための、請求項13に記載の使用。
【請求項33】
抗生物質と組み合わせたおよび/または抗生物質処置の前の感染症の改良処置のための、請求項13に記載の使用。
【請求項34】
感染症に罹りやすい魚類の給餌方法であって、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を、感染体に攻撃される前の期間、感染中または魚が感染してしまった後に魚に供給することを特徴とする、方法。
【請求項35】
組成物を感染前の1〜12週間、更に好ましくは2〜6週間、最も好ましくは4週間の時期に給餌する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
魚にヌクレオチドを更に含んでなる通常の飼料組成物を所定期間給餌した後、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物を給餌する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
ヌクレオチドを更に含んでなる飼料組成物を1〜8週間、好ましくは2〜4週間、最も好ましくは3週間給餌する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の飼料組成物を1〜12週間、好ましくは1週間給餌する、請求項34〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
感染が、Piscirikettsia salmonis、Moritella viscosa、Francisella種,マウス・ロット、連鎖球菌感染症、ビブリオ感染症のような細菌、膵臓疾患、NSAV、鰓炎症(GI)、心臓・骨格筋炎症(HSMI)、サケ伝染性貧血症(ISA)ウイルス、サプロレグニオシス、およびウミシラミ感染症によって引き起こされる、請求項34〜38のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−518559(P2011−518559A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506221(P2011−506221)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/NO2009/000156
【国際公開番号】WO2009/131467
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510282240)エウォス、イノベーション、アクティーゼルスカブ (1)
【氏名又は名称原語表記】EWOS INNOVATION AS
【出願人】(510282251)ケモフォルマ、リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CHEMOFORMA LTD.
【Fターム(参考)】