説明

機能液についての添加剤ゲルの放出制御

本発明は、潤滑方法を提供し、この潤滑方法は、(a)第1機能液を使用するステップと、(b)第1機能液を放出制御ゲルに添加するかまたは第1機能液を放出制御ゲルと接触させ、および/または第2機能液のための所望の添加剤を送達システムに添加するステップであって、放出制御ゲルが、放出されて所望の特性を機械デバイスを潤滑するための第1機能液に付与する所望の添加剤を有する、ステップと、(c)所望の添加剤を送達システムから第1機能液に放出し、第1機能液が第2機能液に変化するステップであって、ただし第2機能液が第1機能液と異なることを条件とする、ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、所望の添加剤を含む1つ以上の機能液を提供するための送達システムに関する。本発明はさらに、潤滑技術において使用されるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
トランスミッション、液圧作動装置、エンジン、またはギヤなど、現代の機械装置はすべて、多くの異なる特性を有する為に機能液を必要とする。これらの特性によって、煤/スラッジ形成、摩擦、腐食、熱分解、酸化、極圧、および磨耗という様々な状況を含む装置環境の中で装置を作動することが可能になる。多くの場合、これらの異なる特性は、機械デバイスの構成要素に独特のものである。独特の特性は、添加剤間の化学的相互作用(例えば、相乗効果、または同じ反応部位について競合する拮抗物)、構成要素設計、および使用された材料に依存し得る。したがって、機械装置内の様々な構成要素を潤滑するのに多くの機能液が必要である。多くの機能液を有することによって、取扱い、または貯蔵などで問題が生じ、操作者が適用の際に混乱する恐れがある。適用の混乱によって、不適切に使用され、装置の休止時間を招く恐れがある。
【0003】
さらに、機能液は、使用により経時的に劣化する。機能液中の添加剤は、エンジンまたは他の機械デバイス中でのこの液の存在期間にわたって消耗または変化する。ゲルの形態の低速放出添加剤パッケージによる、機能液中の添加剤の補充は、特許文献1に開示されている。他の時限放出添加剤としては、特許文献2、および特許文献3、および特許文献4に開示されるようなコーティングまたはポリマーが挙げられる。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0014614号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0154304号明細書
【特許文献3】米国特許第4,075,098号明細書
【特許文献4】米国特許第4,066,559号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、添加剤の送達システム、および機械デバイスをその送達システムで潤滑する方法を提供することが望ましい。送達システムおよび潤滑方法によって、機能液の貯蔵または取扱いを改善し、適用の混乱を低減することが可能になる。本発明は、潤滑油中の添加剤の補充、機能液の貯蔵および取扱いの少なくとも1つを改善することができる、送達システムおよび潤滑方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、潤滑のための方法を提供し、この方法は、
(a)第1機能液を使用するステップであって、該第1機能液が、潤滑粘度の油、自動車用および/または工業用を含むギヤオイル、マニュアルトランスミッションオイル、オートマチックトランスミッションオイル、作動液(hydraulic fluid)、エンジンオイル、ツーサイクルオイル、金属加工液、および軸液(axle fluid)からなる群から選択されるステップと、
(b)該第1機能液を送達システムと接触させるステップであって、該送達システムが、放出されて所望の特性を機械デバイスを潤滑するための該第1機能液に付与する所望の添加剤を有する、接触させるステップと、
(c)該所望の添加剤を該送達システムから該第1機能液に放出することにより、該第1機能液が、ギヤオイル、マニュアルトランスミッションオイル、オートマチックトランスミッションオイル、作動液、エンジンオイル、ツーサイクルオイル、金属加工液、および軸液からなる群から選択される第2機能液に変化するステップであって、ただし第2機能液が該第1機能液と異なる、ステップと、
を含む。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、機械デバイスを潤滑するための方法であって、この方法は、
(a)1つ以上の送達システムを使用するステップであって、該送達システムが、同じでも、類似しても、異なっても、またはその組合せでもよく、該送達システムの組成物が、第1機能液に添加されるかまたは該第1機能液を第2機能液に変化させる、所望の添加剤に依存する、ステップと、
(b)該第1機能液を1つ以上の送達システムと接触させるステップであって、該機能液が、1種類より多くの種類であってもよく、該送達システムが、清浄剤、分散剤、酸、塩基、過塩基性清浄剤(over based detergent)、コハク酸化ポリオレフィン、粘度改質剤、フリクションモディファイア、清浄剤、曇点降下剤、流動点降下剤、デマルシファイアー、流動性向上剤、帯電防止剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、防食/防錆剤、極圧/耐摩耗剤、シール膨潤剤、潤滑助剤、ミスチング防止剤、またはそれの混合物を含む少なくとも1つの添加剤を含む、ステップと、
を含み、
該送達システムが該第1機能液と接触すると、該第1機能液が該第2機能液に変化する。
【0007】
本発明は、機能液を添加剤添加放出制御ゲルと接触させることによって、1つ以上の所望の添加剤を機能液に供給するプロセスを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(詳細な説明)
一実施形態では、本発明は、上記に開示する方法を含む、機械デバイスを潤滑するための方法を提供する。
【0009】
送達システムは、液体、固体、放出制御添加剤ゲル、カプセル剤(例えば、メラミンまたは尿素ホルムアルデヒドマイクロカプセル化ポリマー)、ポリマー袋(例えば、線状低密度ポリエチレン)、穿孔シート、バッフル、注入器、高温において油透過性であるポリマー(米国特許第4,066,559号に定義される通り)、油不溶性であるが油濡れ性である粒子(米国特許第5,478,463号に定義される通り)、粘性改良剤として機能することができる油溶性の固体ポリマー(米国特許第4,014,794号に定義される通り)、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。通常、油溶性の固体ポリマーは油フィルタ内から送達されるが、送達システムを機能液と接触させることができる任意の手段、例えば油受け内または流体バイパスループ内のコンテナ/送達デバイスを使用することができる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、流体コンディショニングデバイス用の放出制御添加剤ゲルが提供される。本発明は、機能液を添加剤添加放出制御ゲルと接触させることによって、1つ以上の所望の添加剤を機能液に供給するためのプロセスを提供する。
【0011】
本発明の送達システムは、移動および定置応用例を含む内燃機関;液圧システム;オートマチックトランスミッション;マニュアルトランスミッションおよび差動装置を含むギヤボックス(例えば、前後の駆動軸および工業用加速装置または減速装置);金属加工液;ポンプ;懸架システム;他の潤滑機械システムなどを含めて、任意の流体コンディショニングデバイスで使用することができる。添加剤ゲルを使用することができる流体コンディショニングデバイスとしては、内燃機関、定置エンジン、発電機、ディーゼルおよび/またはガソリンエンジン、オンハイウェーおよび/またはオフハイウェーエンジン、ツーサイクルエンジン、航空機エンジン、ピストンエンジン、船舶用エンジン、鉄道エンジン、生分解性燃料エンジンなど;ギヤボックス、オートマチックトランスミッション、差動装置、液圧システムなどの潤滑機械システムなどが挙げられる。
【0012】
好ましい一実施形態では、第1機能液はギヤオイルでない。というのは、ギヤオイルを第2機能液に変換する上で困難に直面する場合があるからである。この理由は、硫化オレフィンに対して過剰量の磨耗防止/EP剤添加剤が存在するからであると考えられる。硫化オレフィンの量を低減するいくつかの場合には、ギヤオイルに由来する第1機能液を、異なる第2機能液に変化させることが可能であり得る。
【0013】
機能液は経時的に減少し、その添加剤が消耗する。添加剤送達システムは、特に機能液システムの所望の性能要件を満たし、この液をコンディショニングするように処方されている。本発明は、消耗した所望の添加剤を補充するかまたは新しい所望の添加剤を機能液に導入することによって、機能液の性能を向上させる添加剤送達システムの使用を提供する。したがって、機能液は、機能液の寿命にわたって一貫した性能を追加しかつ/または維持することができる。というのは、デバイスはより長い期間にわたって最適により近い状態で作動すべきであるからである。
【0014】
添加剤添加送達システムにより添加剤を再び添加するのに有用な機能液としては、ギヤオイル、トランスミッションオイル、作動液、エンジンオイル、ツーサイクルオイル、金属加工液などが挙げられる。一実施形態では、好ましい機能液はエンジンオイルである。別の実施形態では、好ましい機能液はギヤオイルである。別の実施形態では、好ましい機能液はトランスミッション液である。別の実施形態では、好ましい機能液は作動液である。
【0015】
一実施形態では、添加剤送達システムは、添加剤送達システムをシステム中の機能液と接触させることによって機能液に溶解する。添加剤送達システムは、機能液と接触する任意の場所に配置される。一実施形態では、添加剤送達システムは、循環機能液が添加剤送達システムと接触する任意の場所に配置される。一実施形態では、機能液はエンジンオイルであり、添加剤送達システムは、潤滑システム、フィルタ、ドレーン受け、油バイパスループ、キャニスタ、ハウジング、リザーバ、フィルタのポケット、フィルタ中のキャニスタ、フィルタ中のメッシュ、バイパスシステム中のキャニスタ、バイパスシステム中のメッシュ、オイルラインなどを含むエンジンオイルシステムに配置される。一実施形態では、機能液はギヤオイルであり、添加剤送達システムは、油ドレーン受け、水溜、フィルタ、フルフローまたはバイパスオイルライン、ライン、ループおよび/またはフィルタ、キャニスタ、メッシュ、送達システムを収納して得るデバイス内の他の空間などを含むギヤシステムに配置される。一実施形態では、機能液はトランスミッション液であり、添加剤送達システムは、トランスミッションマグネット内の穴などの空間、油受け、オイルライン、ライン、キャニスタ、メッシュなどを含むトランスミッションシステムに配置される。一実施形態では、添加剤送達システムは、フルフローフィルタ、バイパスフィルタ、油受けなどを含むエンジンオイルラインに配置される。一実施形態では、機能液は作動液であり、添加剤送達システムは、液圧作動シリンダー、水溜、フィルタ、オイルライン、受け皿、フルフローまたはバイパスオイルループ、ラインおよび/またはフィルタ、キャニスタ、メッシュ、システムの他の空間などに位置する。
【0016】
ライン、ループ、および/または機能液システム中の1つ以上の位置は、添加剤送達システムを含有することができる。さらに、機能液用添加剤送達システムを1つより多く使用する場合、添加剤送達システムは、同一、類似、および/または異なる添加剤送達システム組成物とすることができる。
【0017】
一実施形態では、機械デバイスを潤滑するための方法は、コンテナにおいて1つ以上の添加剤送達システムを使用するステップを含む。
【0018】
一実施形態では、所望の添加剤によって付与される特性としては、分散性、抗酸化性、腐食抑制性、磨耗防止性、スカッフィング防止性、マイクロピッチングおよびマクロピッチングを含めてピッチング防止性、摩擦係数の上昇および/または下降を含めて摩擦改質特性、清浄性、粘度改質剤を使用した粘度制御、泡制御、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0019】
一実施形態では、機械デバイスは、軸、ギヤボックス、オートマチックトランスミッション、マニュアルトランスミッション、差動装置、またはそれらの混合物を含む。
【0020】
本発明の一実施形態では、第1機能液を、第1機能液と異なる第2機能液に変化させる。第1機能液を第2機能液に変化させることは、異なる比の添加剤を提供するのに十分な量の所望の添加剤を送達システムから放出することによって達成することができる。
【0021】
第1機能液は、第1機能液中の添加剤の比を上げかつ/または改変することによって第2機能液に変化することができる。添加により添加剤の比を改変し、第1機能液を追加するかまたは第1機能液を所望の添加剤の送達システム組成物と接触させることによって、所望の添加剤が得られる。所望の添加剤が第1機能液に制御放出されることによって、第1機能液が第2機能液に変化する。第1機能液から第2機能液への変化は、所望の添加剤が送達システムから放出されたときに起こり、所望の特性が第2機能液に提供される。
【0022】
一実施形態では、第1機能液は、十分量の耐摩耗剤/極圧剤、ならびに分散剤および/または清浄剤を含めて他の添加剤を添加して、第2機能液である軸液を生成するマニュアルトランスミッション液である。
【0023】
一実施形態では、機能液システムは、軸用機能液を生成するのに適した添加剤送達システムを含む。一実施形態における軸および/またはギヤオイル用の機能液を生成するのに適した添加剤送達システムの組成物は、スルホネート清浄剤の存在下に、低減した量の硫化オレフィン耐摩耗剤を含有する。別の実施形態では、軸および/またはギヤオイル用の機能液は、硫化オレフィン耐摩耗剤の存在下に、低減した量のスルホネート清浄剤を含有する。別の実施形態では、送達システム中のスルホネート清浄剤は、実質的に保持され、したがって軸および/またはギヤオイル用の機能液中の清浄剤の量が低減される。一実施形態では、送達システム中のスルホネート清浄剤はギヤオイル用途では放出しないことが望ましい。
【0024】
一実施形態では、ライン、ループ、および/または機能液システムは、2つ以上の場所に位置する2つ以上の異なる添加剤送達システムを含有する。添加剤送達システムの異なる組成物は、第1機能液に、制御放出される所望の添加剤を提供して、機械デバイスを潤滑する第2機能液へと変化させる。
【0025】
一実施形態では、機械デバイスは、1つ以上、例えば2つまたは3つの添加剤送達システムと接触させる2つ以上の第1機能液を含有する。添加剤送達システムと接触させた後、第1機能液を、適切な潤滑特性を機械デバイス内の様々な構成要素に提供するように使用される2つ以上の組成を有する第2機能液に変化させる(送達システムに応じて、同じでも異なってもよい)。
【0026】
一実施形態では、機械デバイスは、複数の送達システムと接触する1つの第1機能液を含み、その結果、第1機能液が複数の第2機能液に変化する。
【0027】
一実施形態では、機械デバイスは、複数の送達システムと接触する複数の第1機能液を含み、その結果、第1機能液が複数の第2機能液に変化する。
【0028】
一実施形態では、ハウジング、キャニスタ、または構造メッシュなど、添加剤送達システムを保持するためのコンテナを、機能液システム中のいずれかの場所、例えば、発電用の定置ガス機関のバイパスループ内のキャニスタに提供することが望ましい。コンテナについての必要な設計特徴は、添加剤送達システムの少なくとも一部分が機能液と接触していることである。
【0029】
一実施形態では、送達システムは放出制御ゲルである。ゲルは、以下を含む:
i.)清浄剤、分散剤、酸、塩基、過塩基性清浄剤、コハク酸化ポリオレフィン、またはそれらの混合物を含む群から選択された少なくとも2つの添加剤であって、ここで、選択された添加剤が組み合わされたときにゲルを生成する、少なくとも2つの添加剤;
ii.)必要に応じて、粘度改質剤、フリクションモディファイア、清浄剤、曇点降下剤、流動点降下剤、デマルシファイアー、流動性向上剤、帯電防止剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、防食/防錆剤、極圧/耐摩耗剤、シール膨潤剤、潤滑助剤、ミスチング防止剤、またはそれらの混合物を含む少なくとも1つの添加剤。
【0030】
添加剤ゲルは、機能液と接触している必要がある。一実施形態では、添加剤ゲルは、システム中の機能液の約100%〜約1%の範囲で機能液と接触し、別の実施形態では、添加剤ゲルは、システム中の機能液の約75%〜約25%の範囲で機能液と接触し、別の実施形態では、添加剤ゲルは、システム中の機能液の約50%の範囲で機能液と接触している。流量が低下すると、添加剤ゲルの溶解が低減し、流量が上昇すると、添加剤ゲルの溶解が増大する。
【0031】
一実施形態では、添加剤ゲルおよび/または使用済み添加剤ゲルを容易に除去でき、次いで新規添加剤ゲルおよび/またはリサイクル添加剤ゲルで置換することができるように、添加剤ゲルを機能液システムに配置する。
【0032】
添加剤ゲルを、経時的に放出されることが望まれるゲルの総量、添加剤ゲルの所望の形態(例えば、剛性、コンシステンシー、均質性など)、ゲルの所望の全溶解、特定成分の所望の放出速度、所望の操作モード、および/または上記の任意の組合せに応じて、任意の公知の方法でシステムに添加する。
【0033】
添加剤ゲルの放出速度は、主に添加剤ゲル処方によって決定される。放出速度は、添加剤ゲルの添加モード、添加剤ゲルの位置、機能液の流量、添加剤ゲルの形態(例えば、剛性、コンシステンシー、均質性など)などにも依存する。添加剤ゲルは、添加剤ゲル成分の指定された望ましい溶解速度にて望ましい場所に配置される。
【0034】
添加剤ゲル処方物は、選択的に溶解する1つ以上の成分からなっていてもよく、または1つ以上の成分の一部分は、その実用寿命の終わりまで残存してもよく、またはそれらの組合せであってもよい。一般に、上記に定義したカテゴリーiiの成分は、代表的にはi)の成分より速く溶解する。これによって、上記に定義する所望の成分(単数または複数)ii)が機能液に選択的に放出され、一方、他の成分は未溶解のままであるかまたは少ししか溶解されないままであることが可能になる。したがって、流体コンディショニング装置およびその機能液に応じて、ゲルは、機能液に溶解して所望の添加剤を置換または導入するカテゴリーiiの所望の成分(単数または複数)を含有する。
【0035】
一実施形態では、ゲルは、ゲルの表面上を流動しないかまたは限定的に流動する加熱流体に曝露されたときその成分の添加剤部分を機能液に徐々に溶解させることが判明した。これらの条件下における添加剤ゲルの溶解速度は低速になるように制御され、ゲルはその成分の添加剤に溶解するので、機能液への所望の添加剤の低速かつ選択的な放出を効果的に実現する。特定の添加剤が選択的に放出される時点を越えて、熱流体への曝露を継続すると、ゲルは経時的に溶解し続け、その結果、他の添加剤、すなわちbのi)の成分が放出され続ける。これらの放出速度は、上記に記載するパラメータを使用して最適化することができ、その結果、所望のゲル成分が機能液の有用時間のかなりの部分から全体までにわたって放出される。
【0036】
ゲルは、添加剤の経時的放出制御を実現するための初期システムで必要とされた、高分子膜または複雑な機械システムなどの不活性担体または非添加マトリックスを用いることなく、そのまま使用することができる。
【0037】
ゲルは、組み合わされたときにゲルを生成する、カテゴリーiの成分からの2つ以上の添加剤の混合物であり、さらにカテゴリーiiの成分からの少なくとも1つの添加剤を含有する。ゲルは液体よりも固体のような半固体状態で存在する。Parker,Dictionary of Scientific and Technical Terms,Fifth Edition,McGraw Hill,(著作権)1994を参照のこと。さらに、Larson,”The Structure and rheology of Complex Fluids”,Chapter 5,Oxford University Press,New York,New York,(著作権)1999も参照のこと。これらはそれぞれ、参考として本明細書に援用される。ゲルのレオロジー特性は、小振幅振動せん断試験によって測定することができる。この技法によって、ゲルの構造的特徴が測定され、弾性エネルギーの蓄積を表す貯蔵弾性率と呼ばれる用語、およびそのエネルギーの粘性散逸を表す損失弾性率が得られる。損失正接または「tan delta」と呼ばれる損失弾性率/貯蔵弾性率の比は、液体様である材料の場合>1であり、固体様である材料の場合<1である。添加剤ゲルのtan delta値は、一実施形態では約≦0.75、別の実施形態では約≦0.5、別の実施形態では約≦0.3である。ゲルのtan delta値は、一実施形態では約≦1、一実施形態では約≦0.75、一実施形態では約≦0.5、または一実施形態では約≦0.3である。
【0038】
添加剤ゲルは、i)の成分のゲル化添加剤の組合せを、ゲルの総重量の約0.01%〜約95%の範囲、一実施形態では約0.1%〜80%の範囲、別の実施形態では約1%〜約50%の範囲で含有する。
【0039】
添加剤ゲルは、ii)の成分の必要に応じた添加剤の組合せを、送達システムの添加剤および/または基油の(すなわち、機械デバイスの重量を除く)総重量の約0.1%〜約95%の範囲、一実施形態では約0.1%〜90%の範囲、別の実施形態では、約0.1%〜約80%の範囲、別の実施形態では、約0.5%〜約50%の範囲で含有する。
【0040】
本発明によれば、清浄剤、分散剤、酸、塩基、過塩基性清浄剤、コハク酸化ポリオレフィンなどを含む2つ以上の添加剤の組合せから形成された任意の送達システムを使用して、添加剤ゲルを作製することができる。添加剤ゲルは、清浄剤、分散剤、酸、塩基、過塩基性清浄剤、コハク酸化ポリオレフィン、またはそれらの混合物を含む群から選択された少なくとも2つの添加剤を含み、このような選択された添加剤は、組み合わされたときにゲルを形成する。さらに、一実施形態では、添加剤ゲルとしては、分散剤の組合せ、または分散剤と酸との組合せ、または分散剤と塩基との組合せ、または分散剤と過塩基性清浄剤との組合せなどが挙げられる。
【0041】
一実施形態では、特定に使用されるゲルのカテゴリーは、過塩基性清浄剤と無灰スクシンイミド分散剤との組合せによりゲル化が起こるものである。清浄剤対分散剤の比は、一実施形態では約10:1〜約1:10であり、別の実施形態では約5:1〜約1:5であり、約4:1〜約1:1であり、別の実施形態では約4:1〜約2:1である。さらに、ゲル生成マトリックスに関与する過塩基性清浄剤のTBNは、通常は少なくとも200、より代表的には300〜1,000、最も代表的には350〜650である。過塩基性清浄剤の混合物を使用する場合、少なくとも1つは、これらの範囲内のTBN値を有するべきである。しかし、これらの混合物の平均TBNも、これらの値に対応することができる。
【0042】
分散剤としては、分散剤;マンニッヒ分散剤などの無灰型分散剤;ポリマー分散剤;カルボン酸系分散剤;アミン分散剤、高分子量(Cn、ここで、n≦12)エステルなど;エステル化無水マレイン酸スチレンコポリマー;マレイン酸化エチレンジエンモノマーコポリマー;界面活性剤;本明細書に列挙された各成分の乳化剤の官能化誘導体など、ならびにそれらの組合せおよび混合物が挙げられる。一実施形態では、好ましい分散剤は、ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤である。
【0043】
分散剤としては、無灰分散剤、ポリマー分散剤、マンニッヒ分散剤、高分子量(Cn、ここで、n≧12)エステル、カルボン酸系分散剤、アミン分散剤、およびそれらの組合せが挙げられる。分散剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0044】
分散剤としては、ポリイソブテニルスクシンイミドなどの無灰分散剤が挙げられるが、これらに限定されない。ポリイソブテニルスクシンイミド無灰分散剤は、市販の製品であり、これは代表的には、数平均分子量(「Mn」)が約300〜10,000のポリイソブチレンと無水マレイン酸を一緒に反応させて、ポリイソブテニルコハク酸無水物(「PIBSA」)を生成し、次いでそのようにして得られた生成物をポリアミン(代表的には1分子当たり1〜10個のエチレンアミノ基を含むポリアミン)と反応させることによって生成される。
【0045】
無灰型分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合している極性基を特徴とする。代表的な無灰分散剤としては、代表的には、以下を含めて様々な化学構造を有するN置換長鎖アルケニルスクシンイミドが挙げられる:
【0046】
【化1】

ここで、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、頻繁に、分子量500〜5000のポリイソブチル(polysiobutyl)基であり、Rは、アルケニレン基、一般的にエチレン(C)基である。スクシンイミド分散剤は、参考として本明細書に援用される米国特許第4,234,435号にさらに詳細に記載されている。この特許に記載されている分散剤は、本発明に従って送達システムを生成する上で特に有効である。
【0047】
マンニッヒ分散剤は、アルキル基が少なくとも約30個の炭素原子を含むアルキルフェノールとアルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)およびアミン(特に、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。下記の一般構造を有するマンニッヒ塩基は、特に興味深い:
【0048】
【化2】

別のクラスの分散剤はカルボン酸系分散剤である。これらの「カルボン酸系分散剤」の例は、米国特許第3,219,666号に記載されている。
【0049】
アミン分散剤は、比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物とアミン(好ましくはポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。その例は、米国特許第3,565,804号に記載されている。
【0050】
ポリマー分散剤は、デシルメタクリレート、ビニルデシルエーテル、および高分子量オレフィンなどの油可溶化モノマーと、極性置換基を含むモノマー、例えばアミノアルキルアクリレートまたはアクリルアミド、およびポリ−(オキシエチレン)置換アクリレートとのインターポリマーである。そのポリマー分散剤の例は、以下の米国特許に開示されている:第3,329,658号および第3,702,300号。
【0051】
分散剤を、任意の様々な薬剤との反応で後処理することもできる。これらの中でも特に、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、およびリン化合物である。
【0052】
分散剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。分散剤は、ゲルの約0重量%、または0.01重量%〜約95重量%の範囲、別の実施形態ではゲルの約1重量%〜約70重量%の範囲、好ましくは別の実施形態では、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約5重量%〜約50重量%の範囲で存在する。
【0053】
清浄剤としては、Mg、Ba、Sr、Na、Ca、およびK、ならびにそれらの混合物などの金属を含有する市販の過塩基性清浄剤である、過塩基性スルホネート、フェネート、サリチレート、カルボキシレート、過カルシウムスルホネート清浄剤が挙げられる。
【0054】
清浄剤は、例えば、参考として本明細書に援用される米国特許第5,484,542号に記載されている。清浄剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。清浄剤は、例えば、参考として本明細書に援用される米国特許第5,484,542号に記載されている。
【0055】
清浄剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。清浄剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%、または0.01重量%〜約99重量%の範囲、一実施形態では約1重量%〜約70重量%の範囲、別の実施形態では約5重量%〜約50重量%の範囲で存在する。
【0056】
代表的には、添加剤ゲルは、機能液への放出制御用の所望の少なくとも1つの添加剤をさらに含有する。添加剤ゲルの所望の成分としては、粘度改質剤、フリクションモディファイア、清浄剤、曇点降下剤、流動点降下剤、デマルシファイアー、流動性向上剤、帯電防止剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、防食/防錆剤、極圧/耐摩耗剤、シール膨潤剤、潤滑助剤、ミスチング防止剤、およびそれらの混合物が挙げられ、ゲルが機能液と接触しているときに所望の添加剤を機能液に経時的に放出する放出制御ゲルが生成される。所望の添加剤成分は、機能液処方、性能特性、機能など、および消耗された添加剤のために添加することが望ましいおよび/または所望の機能に応じて新たに添加される添加剤によってさらに決定される。
【0057】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのアルキル置換フェノール、フェネート硫化物、リン硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、およびヒンダードフェノール、ビス−ノニル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ビス−オクチル化ジフェニルアミン、ビス−デシル化ジフェニルアミン、デシルジフェニルアミン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
酸化防止剤官能としては立体障害のあるフェノールが挙げられ、これには、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール 2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ペンチル−2−6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ヘキシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ヘプチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−(2−エチルヘキシル)−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−オクチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ノニル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−デシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ウンデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−トリデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−テトラデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。立体障害のあるメチレン架橋フェノールとしては、4,4−メチレンビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、4,4−メチレンビス(2−tert−アミル−o−クレゾール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4−メチレン−ビス(2,6−ジ−tertブチルフェノール)、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
酸化防止剤の別の例は、エステル置換ヒンダードフェノールであり、これは、2,6−ジアルキルフェノールをアクリル酸エステルとともにKOH水溶液などの塩基性条件下で加熱することによって調製することができる。
【0060】
酸化防止剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。酸化防止剤は、代表的には送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%、または0.01重量%〜約95重量%の範囲、一実施形態では約0.01重量%〜95重量%の範囲、別の実施形態では約1重量%〜約70重量%の範囲、別の実施形態では約5重量%〜約60重量%の範囲で存在する。
【0061】
極圧/磨耗防止剤としては、硫黄もしくはクロロ硫黄EP剤、塩素化炭化水素EP剤、またはリンEP剤、あるいはそれらの混合物が挙げられる。このようなEP剤の例は、リン酸酸のアミン塩、塩素化ワックス、ベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、硫化マッコウ鯨油、オレイン酸硫化アルキルフェノールの硫化メチルエステル、硫化ジペンテン、硫化テルペン、および硫化ディールス−アルダー付加物などの有機硫化物およびポリスルフィド;リン硫化物とテレビンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素、リン酸ジ炭化水素およびリン酸トリ炭化水素などのリンエステル、すなわちリン酸ジブチル、リン酸ジヘプチル、リン酸ジシクロヘキシル、リン酸ペンチルフェニル;リン酸ジペンチルフェニル、リン酸トリデシル、リン酸ジステアリル、およびポリプロピレン置換フェノールホスフェート、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛などのチオカルバミン酸金属、およびヘプチルフェノール二酸バリウム、ジシクロヘキシルホスホロジチオン酸亜鉛であり、そしてホスホロジチオ酸の組合せの亜鉛塩などを使用することができ、そしてそれらの混合物であってもよい。
【0062】
一実施形態では、耐摩耗剤/極圧剤は、リンエステル酸のアミン塩を含む。リンエステル酸のアミン塩としては、リン酸エステルおよびその塩;ジアルキルジチオリン酸エステルおよびその塩;ホスファイト;リン含有カルボン酸エステル、リン含有カルボン酸エーテル、およびリン含有カルボン酸アミド;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0063】
一実施形態では、リン化合物は、分子中に硫黄原子をさらに含む。一実施形態では、リン化合物のアミン塩は無灰型、すなわち(他の成分と混合する前に)金属を含まない。
【0064】
アミン塩として使用するのに適切であり得るアミンとしては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、およびそれらの混合物が挙げられる。アミンとしては、少なくとも1つのヒドロカルビル基を有するもの、または特定の実施形態では、2つまたは3つのヒドロカルビル基を有するものが挙げられる。ヒドロカルビル基は、約2個〜約30個の炭素原子、または他の実施形態では、約8個〜約26個、もしくは約10個〜約20個、もしくは約13個〜約19個の炭素原子を含むことができる。
【0065】
第一級アミンとしては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、ならびにn−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、およびオレイルアミンのような脂肪アミンが挙げられる。他の有用な脂肪アミンとしては、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen S、およびArmeen SD(ここで、名称の文字は、ココ、オレイル、獣脂、またはステアリル基などの脂肪基に関する)などの「Armeen(登録商標)」アミン(アクゾ・ケミカルズ(Akzo Chemicals)、イリノイ州シカゴ(Chicago、Illinois)から入手可能な製品)など、市販の脂肪アミンが挙げられる。
【0066】
適切な第二級アミンの例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、およびエチルアミルアミンが挙げられる。第二級アミンは、ピペリジン、ピペラジン、およびモルホリンなどの環式アミンでもよい。
【0067】
アミンは、第三級脂肪族の第一級アミンとすることもできる。この場合の脂肪族基は、約2個〜約30個、または約6個〜約26個、または約8個〜約24個の炭素原子を含むアルキル基とすることができる。第三級アルキルアミンとしては、tert−ブチルアミン、tert−ヘキシルアミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、tert−オクチルアミン、tert−デシルアミン、tert−ドデシルアミン、tert−テトラデシルアミン、tert−ヘキサデシルアミン、tert−オクタデシルアミン、tert−テトラコサニルアミン、およびtert−オクタコサニルアミンなどのモノアミンが挙げられる。
【0068】
本発明では、アミンの混合物も使用することができる。一実施形態では、有用なアミン混合物は、「Primene(登録商標)81R」および「Primene(登録商標)JMT」である。Primene(登録商標)81RおよびPrimene(登録商標)JMT(両方とも、ロームアンドハース(Rohm & Haas)によって製造販売)はそれぞれ、C11〜C14の第三級アルキルの第一級アミンの混合物、およびC18〜C22の第三級アルキルの第一級アミンの混合物である。
【0069】
本発明のアルキルリン酸の適切なヒドロカルビルアミン塩は、次式で表すことができる:
【0070】
【化3】

ここで、RおよびRは独立して、水素またはアルキル基などのヒドロカルビル基であり、リンエステル酸については、RおよびRの少なくとも一方はヒドロカルビルである。RおよびRは、約4個〜約30個、または約8個〜約25個、または約10個〜約20個、または約13個〜約19個の炭素原子を含むことができる。R、R、およびRは独立に、水素、あるいは1個〜約30個、または約4個〜約24個、または約6個〜約20個、または約10個〜約16個の炭素原子を有する分枝アルキルまたは直鎖状アルキル鎖などのヒドロカルビル基であってもよい。これらのR基、R基、およびR基は、分枝状の基でも、直鎖状の基でもよく、特定の実施形態では、R、R、およびRのうちの少なくとも1つ、または2つが水素である。R、R、およびRに適したアルキル基の例としては、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、ノノデシル(nonodecyl)基、エイコシル基、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0071】
一実施形態では、アルキルリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩は、C14〜C18アルキル化リン酸と、C11〜C14第三級アルキルの第一級アミンの混合物であるPrimene 81R(商標)(Rohm & Haasによって製造販売)との反応生成物である。
【0072】
同様に、防錆剤パッケージで使用される本発明のジアルキルジチオリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩は、次式で表すことができる:
【0073】
【化4】

ここで、様々なR基は上記に定義する通りであるが、代表的にはR基は両方とも、ヒドロカルビルまたはアルキルである。ジアルキルジチオリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩の例としては、ヘキシルジチオリン酸、ヘプチルジチオリン酸、またはオクチルジチオリン酸、またはノニルジチオリン酸、4−メチル−2−ペンチルジチオリン酸、または2−エチルヘキシル、イソプロピルジチオリン酸とエチレンジアミン、モルホリン、またはPrimene 81R(商標)の反応生成物、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
一実施形態では、ジチオリン酸をエポキシドまたはグリコールと反応させることができる。この反応生成物を、リン酸、無水物、または低級エステルとさらに反応させる。エポキシドとしては、脂肪族エポキシドまたはスチレンオキシドが挙げられる。有用なエポキシドの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、スチレンオキシドなどが挙げられる。一実施形態では、エポキシドはプロピレンオキシドである。グリコールは、1個〜約12個、または約2個〜約6個、または約2個〜約3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールとすることができる。ジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機リン試薬、およびこれらを反応させる方法は、米国特許第3,197,405号および同第3,544,465号に記載されている。次いで、得られた酸をアミンで塩化することができる。適切なジチオリン酸の一例は、五酸化リン(約64グラム)を、約58℃で、約514グラムのヒドロキシプロピルO,O−ジ(4−メチル−2−ペンチル)ホスホロジチオ酸(ジ(4−メチル−2−ペンチル)−ホスホロジチオ酸を、約25℃で約1.3モルのプロピレンオキシドと反応させることによって調製された)に約45分間かけて添加することによって調製される。混合物を約75℃で約2.5時間加熱し、珪藻土と混合し、約70℃で濾過する。濾液は、約11.8重量%のリン、約15.2重量%の硫黄を含有し、酸価は87である(ブロモフェノールブルー)。
【0075】
EP/耐摩耗剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0076】
一実施形態では、EP/耐摩耗剤は、送達システム中、約0重量%、または0.05重量%〜約10重量%、または約0.1重量%〜約5重量%であり得る。
【0077】
EP/耐摩耗剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約20重量%の範囲、一実施形態では約0.25重量%〜約10重量%の範囲、および別の実施形態では約0.5重量%〜約25重量%の範囲で存在する。
【0078】
消泡剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリアクリレート、およびポリメタクリレート、トリメチル−トリフルオロ−プロピルメチルシロキサン(trimethyl−trifluoro−propylmethyl siloxane)など有機シリコーンが挙げられる。
【0079】
消泡剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。消泡剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約20重量%の範囲、一実施形態では約0.02重量%〜約10重量%の範囲、別の実施形態では、0.05重量%〜約2.5重量%の範囲で使用される。
【0080】
粘度改質剤は、粘度改善特性および分散剤特性の両方を提供する。分散剤−粘度改質剤の例としては、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、およびN,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられ、これらは窒素含有モノマーなどの例である。1つ以上のアルキルアクリレートの重合または共重合から得られたポリアクリレートも、粘度改質剤として有用である。
【0081】
官能化ポリマーも、粘度改質剤として使用することができる。このようなポリマーの一般的クラスの中で、オレフィンコポリマー、およびアクリレートコポリマーまたはメタクリレートコポリマーが有用である。官能化オレフィンコポリマーは、例えば、無水マレイン酸などの活性モノマーでグラフト化され、次いでアルコールまたはアミンで誘導体化された、エチレンとプロピレンとのインターポリマーであってもよい。他のこのようなコポリマーは、窒素化合物と反応させたかまたは窒素化合物でグラフト化させた、エチレンとプロピレンとのコポリマーである。ポリアクリレートエステルの誘導体は、分散剤粘度指数改質剤添加剤として周知である。RohMaxによるAcryloid(商標)985またはViscoplex(商標)6−054などの分散剤アクリレートまたはポリメタクリレート粘度改質剤は特に有用である。PIB(ポリイソブチレン)、メタクリレート、ポリアルキスチレン(polyalkystyrene)、エチレン/プロピレン、およびエチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエンポリマー、および無水マレイン酸−スチレンインターポリマー、およびそれらの誘導体などの油溶性固体ポリマーも、粘度指数向上剤として使用することができる。粘度改質剤は公知であり、市販されている。
【0082】
粘度改質剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。粘度改質剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜20重量%の範囲、一実施形態では約0.25重量%〜約10重量%の範囲、別の実施形態では約0.5重量%〜約2.5重量%の範囲で存在する。
【0083】
フリクションモディファイアとしては、ジチオカルバミン酸モリブデンを含めた有機モリブデン化合物、およびグリセロールモノオレエート(GMO)を含めたオレイン酸ベースのもの、ステアリン酸ベースのものなどを含めた脂肪酸ベース材料が挙げられる。
【0084】
一実施形態では、フリクションモディファイアは、モノヒドロカルビルホスフェート、ジヒドロカルビルホスフェート、またはトリヒドロカルビルホスフェート(ここで、各ヒドロカルビル基は飽和である)を含め、リン酸エステルまたはリン酸塩である。いくつかの実施形態では、各ヒドロカルビル基は、約8個〜約30個、または約12個から約28個まで、または約14個から約24個まで、または約14個から約18個までの炭素原子を含む。別の実施形態では、ヒドロカルビル基はアルキル基である。ヒドロカルビル基の例としては、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0085】
一実施形態では、リン酸塩は、酸性リン酸エステルをアミン化合物または金属塩基と反応させて、アミン塩または金属塩を生成させることによって調製することができる。アミンは、モノアミンでも、ポリアミンでもよい。有用なアミンとしては、米国特許第4,234,435号の第21欄4行目から第27欄50行目に開示されているアミンが挙げられる。
【0086】
有用なアミンとしては、第一級エーテルアミンが挙げられ、第一級エーテルアミンは、例えば、式R’’(OR’)−NHで表され、ここで、R’が、約2個〜約6個の炭素原子を有する2価のアルキレン基であり、xが、1〜約150、または約1〜約5、または1という数であり、R’’が、約5個〜約150個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるものである。
【0087】
リン酸塩は、ポリアミンから誘導することができる。ポリアミンとしては、アルコキシル化ジアミン、脂肪ポリアミンジアミン、アルキレンポリアミン、ヒドロキシを含むポリアミン、縮合ポリアミン、アリールポリアミン、および複素環式ポリアミンが挙げられる。
【0088】
リン酸エステルの金属塩は、金属塩基と酸性リンエステルとの反応によって調製される。金属塩基は、金属塩を形成することができる任意の金属化合物であってよい。金属塩基の例としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属ホウ酸塩などが挙げられる。適切な金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属が挙げられる。一実施形態では、金属は、カルシウムまたはマグネシウムなどの第IIA族金属、亜鉛などの第IIB族金属、またはマンガンなどの第VIIB族金属である。リン酸と反応させることができる金属化合物の例としては、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、水酸化銅、または酸化銅が挙げられる。
【0089】
一実施形態では、フリクションモディファイアはホスファイトであり、亜リン酸モノヒドロカルビル、亜リン酸ジヒドロカルビル、または亜リン酸トリヒドロカルビルであってよく、ここで、各ヒドロカルビル基は飽和である。いくつかの実施形態では、各ヒドロカルビル基は独立に、約8個〜約30個、または約12個から約28個まで、または約14個から約24個まで、または約14個から約18個までの炭素原子を含む。一実施形態では、ヒドロカルビル基はアルキル基である。ヒドロカルビル基の例としては、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0090】
一実施形態では、フリクションモディファイアは、8個〜約30個、または約12個〜約24個の炭素原子を含む脂肪置換基を含む脂肪イミダゾリンである。置換基は、飽和でも、不飽和でもよいが、好ましくは飽和であり得る。一態様では、脂肪イミダゾリンは、脂肪カルボン酸を上記で述べたものなどのポリアルキレンポリアミンと反応させることによって調製することができる。適切な脂肪イミダゾリンとしては、米国特許第6,482,777号に記載されているものが挙げられる。
【0091】
摩擦改質剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。摩擦低減剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜10重量%の範囲、または約0.25重量%〜約10重量%、または約0.5重量%〜約2.5重量%で存在する。
【0092】
ミスチング防止剤としては、1.5Mn ポリイソブチレンなど、非常に高い(>100,000Mn)ポリオレフィン(例えば、商品名Vistanex(登録商標)という材料)、または2−(N−アクリルアミド)、2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS(登録商標)とも呼ばれる)、もしくはその誘導体などを含有するポリマーが挙げられる。
【0093】
ミスチング防止剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。ミスチング防止剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜10重量%の範囲、または約0.25重量%〜約10重量%、または約0.5重量%〜約2.5重量%で存在する。
【0094】
腐食防止剤としては、アルキル化コハク酸およびその無水物誘導体、有機ホスホネートなどが挙げられる。防錆剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。防錆剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲、一実施形態では約0.0005重量%〜約50重量%の範囲、別の実施形態では約0.0025重量%〜約30重量%の範囲で存在する。
【0095】
金属不活性化剤としては、トリルトリアゾール、N,N−ビス(ヘプチル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−ビス(ノニル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−ビス(デシル)ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−(ウンデシル)ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−ビス(ドデシル)ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、およびそれらの混合物などのベンゾトリアゾール誘導体が挙げられる。一実施形態では、金属不活性化剤は、N,N−ビス(1−エチルヘキシル)ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン;1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾール;2−アルキルジチオベンゾチアゾール;2−N,N−ジアルキルジチオ−カルバモイル)ベンゾチアゾール;2,5−ビス(tert−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−デシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−ウンデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−トリデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−テトラデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−オクタデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−ノナデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−エイコシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、およびそれらの混合物などの2,5−ビス(アルキル−ジチオ)−1,3,4−チアジアゾール;2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)−1,3,4−チアジアゾール;2−アルキジチオ−5−メルカプトチアジアゾールなどである。
【0096】
金属不活性化剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。金属不活性化剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲、または約0.0005重量%〜約50重量%、または約0.0025重量%〜約30重量%で存在する。
【0097】
デマルシファイアーとしては、ポリエチレンオキシドコポリマーおよびポリプロピレンオキシドコポリマーなどが挙げられる。デマルシファイアーは、単独で、または組み合わせて使用することができる。デマルシファイアーは、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲、または約0.0005重量%〜約50重量%、または約0.0025重量%〜約30重量%で存在する。
【0098】
潤滑助剤としては、グリセロールモノオレエート、ソルビタンモノオレエートなどが挙げられる。潤滑添加剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。潤滑添加剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲、または約0.0005重量%〜約50重量%、または約0.0025重量%〜約30重量%で存在する。
【0099】
流動性向上剤としては、エチレン酢酸ビニルコポリマーなどが挙げられる。流動性向上剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。流動性向上剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲に、または約0.0005重量%〜約50重量%、または約0.0025重量%〜約30重量%で存在する。
【0100】
曇点降下剤としては、アルキルフェノールおよびその誘導体、エチレン酢酸ビニルコポリマーなどが挙げられる。曇点降下剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。曇点降下剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲、または約0.0005重量%〜約50重量%、または約0.0025%〜約30重量%で存在する。
【0101】
流動点降下剤としては、アルキルフェノールおよびその誘導体、エチレン酢酸ビニルコポリマーなどが挙げられる。流動点降下剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。流動点降下剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲、または約0.0005重量%〜約50重量%、または約0.0025重量%〜約30重量%で存在する。
【0102】
シール膨潤剤としては、チオフェンなどの有機硫黄化合物、3−(デシルオキシ)テトラヒドロ−1,1−ジオキシド、フタレートなどが挙げられる。シール膨潤剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。シール膨潤剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲、または約0.0005重量%〜約50重量%、または約0.0025重量%〜約30重量%で存在する。
【0103】
必要に応じて、他の成分は、送達システムに添加することができ、他の成分としては、送達システムに有害な影響を及ぼさない限り、ベースストック油、不活性担体、染料、静菌剤、固体粒子状添加剤などが挙げられる。
【0104】
送達システムがゲルである場合、ゲルは代表的に、少量(約5〜40重量%)のベースストック油を含有し、このベースストック油には、ミネラルベースの合成油(フィッシャー・トロプシュ(Fischer−Tropsch)の気体から液体への合成手順、および他の気体からの液体油を含む)、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
必要に応じて、望むなら、不活性担体を使用することができる。さらに、有益な所望の機能を提供する他の活性成分も、ゲルに含めることができる。さらに、PTFE、MoS、およびグラファイトなどの固体粒子状添加剤を含めることもできる。
【0106】
必要に応じて、染料を使用することができ、染料としてはハロ−アルカンなどが挙げられる。染料は、単独で、または組み合わせて使用することができる。染料は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲、または約0.0005重量%〜約50重量%、または約0.0025重量%〜約30重量%で存在する。
【0107】
必要に応じて、静菌剤を使用することができ、静菌剤としては、ホルムアルデヒド、グルテルアルデヒドおよび誘導体、カサン(kathan)などが挙げられる。静菌剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。静菌剤は、送達システムの添加剤および/または基油の総重量の約0重量%〜約90重量%の範囲、または約0.0005%〜約50重量%、または約0.0025%〜約30重量%で存在する。
【0108】
成分を逐次一緒に、またはすべて一緒に混合して、混合物を生成する。ゲルの成分を混合した後、ゲル化が生じるためには、硬化が必要とされる場合がある。硬化が必要とされる場合、代表的には、約20℃〜約165℃の範囲で約1分間〜約60日間、または約50℃〜約120℃で約1時間〜約24時間、または約85℃〜約115℃で約4時間〜約12時間行われる。
【実施例】
【0109】
(具体的な実施形態)
実施例ではすべて、本明細書の各実施例で列挙された成分を一緒に混合して、ゲルを生成した。ゲルを約100℃で約8時間硬化させた。
【0110】
(実施例1 マニュアルトランスミッション液中の耐摩耗剤の放出制御)
リン酸エステルのアミン塩などの耐摩耗剤は、ギヤオイル、トランスミッション液、または軸液に適していることが周知である。
【0111】
耐摩耗剤の放出制御は、以下から構成されるゲルを使用して達成され得る:
a.約45重量%の過塩基性清浄剤、
b.約10重量%の2000MWのポリイソブテニルサクカン(polyisobutenyl succan)、
c.約15重量%のスクシンイミド分散剤、および
d.約30重量%のリンエステル酸のアミン塩。
【0112】
マニュアルトランスミッション液を、耐摩耗剤を含有する放出制御ゲル上に通す。得られた組成物は、この液が軸液として使用されることが可能になるのに許容できる量の耐摩耗剤を含有する。
【0113】
FZGスカッフィング試験を、マニュアルトランスミッション液(MTF)、および放出制御ゲルに由来する耐摩耗剤を含有するマニュアルトランスミッション液(MTFGAW)について実施する。歯幅約10mmの「A10」型ギヤを使用して、逆方向におけるピッチライン速度約16.6m/秒、約120℃でFZGスカッフィング試験を実施する(A10/16.6R/120試験とも呼ばれる試験)。得られた結果を表1に示す。
【0114】
【表1】

この結果から、放出制御ゲルは、ある機械デバイスのために設計された潤滑剤を改質することができ、所望の追加の添加剤を提供して、異なる潤滑油添加剤組成物を必要とする別の機械デバイスにおいて許容できる特性を有する異なる組成を有する潤滑剤を提供できることが示唆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑方法であって、
(a)第1機能液を使用するステップであって、該第1機能液が、潤滑粘度の油、自動車用および/または工業用を含むギヤオイル、マニュアルトランスミッションオイル、オートマチックトランスミッションオイル、作動液、エンジンオイル、ツーサイクルオイル、金属加工液、および軸液からなる群から選択される第1機能液を使用するステップと、
(b)該第1機能液を送達システムと接触させるステップであって、該送達システムが、放出されて所望の特性を機械デバイスを潤滑するための該第1機能液に付与する所望の添加剤を有する、ステップと、
(c)該所望の添加剤を該送達システムから該第1機能液に放出することにより、該第1機能液が、ギヤオイル、マニュアルトランスミッションオイル、オートマチックトランスミッションオイル、作動液、エンジンオイル、ツーサイクルオイル、金属加工液、および軸液からなる群から選択される第2機能液に変化するステップであって、ただし該第2機能液が該第1機能液と異なる、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記送達システムが、液体、固体、放出制御添加剤ゲル、カプセル剤(例えば、メラミンまたは尿素ホルムアルデヒドマイクロカプセル化ポリマー)、線状低密度ポリオレフィン袋、穿孔シート、バッフル、注入器、高温において油透過性であるポリマー、油不溶性であるが油濡れ性である粒子、粘性改良剤として機能することができる油溶性の固体ポリマー、またはそれらの混合物の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送達システムが放出制御添加剤ゲルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1機能液および/または第2機能液が、約0.1重量%〜約5重量%存在する磨耗防止/EP剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記放出制御ゲル組成物が、
i.)清浄剤、分散剤、酸、塩基、過塩基性清浄剤、コハク酸化ポリオレフィン、またはそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも2つの添加剤であって、該選択された添加剤は組み合わされるとゲルを生成する、少なくとも2つの添加剤、
ii.)必要に応じて、粘度改質剤、フリクションモディファイア、清浄剤、曇点降下剤、流動点降下剤、デマルシファイアー、流動性向上剤、帯電防止剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、防食/防錆剤、極圧/耐摩耗剤、シール膨潤剤、潤滑助剤、ミスチング防止剤、またはそれらの混合物を含む少なくとも1つの添加剤、
を含み、
放出制御ゲルが生成され、該放出制御ゲルは、該ゲルが機能液と接触しているときに少なくとも1つの所望の添加剤を該機能液中に経時的に放出する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記放出制御ゲル組成物が、約10:1〜約1:10の清浄剤対分散剤の比を有し、該清浄剤が少なくとも200のTBNを有する過塩基性清浄剤である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記分散剤が、無灰型分散剤、ポリマー分散剤、マンニッヒ分散剤、カルボン酸系分散剤、アミン分散剤、高分子量エステル、エステル化無水マレイン酸スチレンコポリマー、マレイン酸化エチレンジエンモノマーコポリマー、界面活性剤、官能化誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択され、該分散剤が、添加剤ゲルの約0.01重量%〜約95%の範囲で存在し、該清浄剤が、過塩基性スルホネート、フェネート、サリチレート、カルボキシレート、過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤、Mg、Ba、Sr、Na、C、およびKなどの金属を含有する過塩基性清浄剤、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、該清浄剤が、添加剤ゲルの約0.01重量%〜約99重量%の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
成分i)が、添加剤ゲルの約0.01重量%〜約95重量%の範囲で存在し、成分ii)が、添加剤ゲルの約0%〜約95重量%の範囲で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ベースストック油、不活性担体、染料、静菌剤、固体粒子状添加剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの他の成分を、必要に応じて前記添加剤ゲル組成物に添加することができる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲルは、過塩基性清浄剤、スクシンイミド分散剤、および消泡剤を含んで放出制御ゲルを生成し、該放出制御ゲルは、消泡剤添加剤を前記機能液に経時的に放出して、発泡傾向を低減し、該液の安定性を改善する、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲルは、過塩基性清浄剤、スクシンイミド分散剤、無灰型抗酸化剤、およびポリコハク酸化ポリオレフィンを含んで放出制御ゲルを生成し、該放出制御ゲルは、酸化防止剤添加剤をエンジンの前記機能液に経時的に放出する、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
過塩基性清浄剤、スクシンイミド分散剤、フリクションモディファイア、およびポリコハク酸化ポリオレフィンを含んで放出制御ゲルを生成し、該放出制御ゲルは、該フリクションモディファイアを前記機能液に経時的に放出して、金属部品間の摩擦係数を低減する、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
耐摩耗剤/極圧剤をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記耐摩耗剤/極圧剤がリンエステル酸のアミン塩を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リンエステル酸が、リン酸エステルおよびその塩、ジアルキルジチオリン酸エステルおよびその塩、ホスファイト、ならびにリン含有カルボン酸エステル、エーテルおよびアミド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1機能液がマニュアルトランスミッション液であり、前記第2機能液が軸液である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
機械デバイスを潤滑するための方法であって、
(a)1つ以上の送達システムを使用するステップであって、該送達システムが、同じでも、類似しても、異なっても、またはその組合せでもよく、該送達システムの組成物が、第1機能液に添加されるかまたは該第1機能液を第2機能液に変化させる、所望の添加剤に依存する、ステップと、
(b)該第1機能液を1つ以上の送達システムと接触させるステップであって、該機能液が、1種類より多くの種類であってもよく、該送達システムが、清浄剤、分散剤、酸、塩基、過塩基性清浄剤、コハク酸化ポリオレフィン、粘度改質剤、フリクションモディファイア、清浄剤、曇点降下剤、流動点降下剤、デマルシファイアー、流動性向上剤、帯電防止剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、防食/防錆剤、極圧/耐摩耗剤、シール膨潤剤、潤滑助剤、ミスチング防止剤、またはそれらの混合物を含む少なくとも1つの添加剤を含む、ステップと、
を含み、
該送達システムが該第1機能液と接触すると、該第1機能液が該第2機能液に変化する、方法。
【請求項18】
前記送達システムが放出制御添加剤ゲルを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記放出制御ゲル組成物が、
i.)清浄剤、分散剤、酸、塩基、過塩基性清浄剤、コハク酸化ポリオレフィン、またはそれらの混合物を含む群から選択された少なくとも2つの添加剤であって、該選択された添加剤は組み合わされるとゲルを生成する、少なくとも2つの添加剤、
ii.)必要に応じて、粘度改質剤、フリクションモディファイア、清浄剤、曇点降下剤、流動点降下剤、デマルシファイアー、流動性向上剤、帯電防止剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、防食/防錆剤、極圧/耐摩耗剤、シール膨潤剤、潤滑助剤、ミスチング防止剤、またはそれらの混合物を含む少なくとも1つの添加剤、
を含み、
放出制御ゲルが生成され、該放出制御ゲルは、該ゲルが機能液と接触しているときに少なくとも1つの所望の添加剤を該機能液中に経時的に放出する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記機械デバイスが、複数の送達システムと接触する1つの第1機能液を含んで、第1機能液が複数の第2機能液に変化する、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2009−506162(P2009−506162A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527989(P2008−527989)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/031948
【国際公開番号】WO2007/024590
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】