説明

機関弁の加熱装置

【課題】省配線化を図りつつ信頼性を確保可能な機関弁の加熱装置を提供する。
【解決手段】機関弁の加熱装置100Aは発電部である圧電素子2と、圧電素子2に対して発電を行うように作用する作用部である錘3と、圧電素子2から供給される電力に応じて発熱を行う発熱部である発熱素子4とを備える。機械弁の加熱装置100Aは圧電素子2、錘3および発熱素子4を内燃機関の燃焼室に対して設けられる機関弁1Aに設けている。機械弁の加熱装置100Aは圧電素子2から発熱素子4への電力の供給を温度に応じて制御する制御部であるスイッチ5をさらに備えている。スイッチ5は機関弁1Aに設けられており、温度が所定値よりも高い場合に圧電素子2と発熱素子4とを電気的に非接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の燃焼室に対して設けられる機関弁を加熱するための機関弁の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、燃焼室に対して設けられる機関弁(吸気弁または排気弁)を加熱することがある。特許文献1では吸気弁のうちの傘部を直接的に加熱する加熱機構を備え、加熱機構が傘部の内部に電源からの給電により発熱する発熱素子を有している内燃機関の吸気弁装置が開示されている。この内燃機関の吸気弁装置は加熱機構を備えることで、ガソリンとアルコール燃料との混合液が燃料として供給される内燃機関において、低温始動時の始動性低下を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−121475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の機関弁を加熱するにあたっては、例えば特許文献1が開示する内燃機関の吸気弁装置のように機関弁に発熱部を設けることができる。そして、発熱部で発熱を行うにあたっては例えば外部電源から電力を供給することができる。ところがこの場合には、機関弁の駆動時に外部電源と発熱部との接続が寸断されることで、加熱が不安定になる虞がある。
【0005】
具体的には、外部電源と発熱部とを接続するには例えば機関弁のステム部とバルブガイドとに互いに対応する電極を設けることが考えられる。ところがこの場合には、機関弁の振れによって電極同士の接触が不安定となる結果、加熱が不安定になる虞がある。或いは、機関弁をバルブガイドに強制的に接触させることで、加熱の安定性が確保される代わりに機関弁の摩耗が助長される虞がある。このためこの場合には、高い信頼性を確保できない虞がある。また、発熱部への電力供給に外部電源を利用する場合には配線が長くなる分、コストや重量の面で不利になる虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、省配線化を図りつつ信頼性を確保可能な機関弁の加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は発電部と、前記発電部に対して発電を行うように作用する作用部と、前記発電部から供給される電力に応じて発熱を行う発熱部とを備え、前記発電部、前記作用部および前記発熱部のうち、少なくとも前記発電部と前記発熱部とが内燃機関の燃焼室に対して設けられる機関弁に設けられるか、或いは前記機関弁の周辺部に設けられる機関弁の加熱装置である。
【0008】
本発明は前記発電部から前記発熱部への電力の供給を温度に応じて制御する制御部をさらに備える構成とすることができる。
【0009】
本発明は前記発電部、前記発熱部および前記制御部が前記機関弁に設けられており、前記制御部が前記発電部から前記発熱部への電力の供給を温度に応じて制御するにあたり、温度が所定値よりも低い場合に前記発電部と前記発熱部とを電気的に接続し、温度が前記所定値よりも高い場合に前記発電部と前期発熱部とを電気的に非接続にする構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、省配線化を図りつつ信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の機関弁の加熱装置を示す図である。
【図2】実施例1の機関弁の分解図である。
【図3】実施例1の動作説明図である。
【図4】実施例1の変形例を示す図である。
【図5】実施例2の機関弁の加熱装置を示す図である。
【図6】実施例2の動作説明図である。
【図7】実施例3の機関弁の加熱装置を示す図である。
【図8】実施例3の動作説明図である。
【図9】実施例4の機関弁の加熱装置を示す図である。
【図10】実施例4の変形例を示す図である。
【図11】実施例5の機関弁の加熱装置を示す図である。
【図12】実施例5の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は機関弁の加熱装置(以下、加熱装置と称す)100Aを示す図である。加熱装置100Aは機関弁1Aに設けられている。機関弁1Aは内燃機関の燃焼室に対して設けられる吸気弁または排気弁(ここでは吸気弁)であり、圧電素子2と錘3と発熱素子4とスイッチ5とプラグ6とを備えている。そしてこれにより、圧電素子2、錘3、発熱素子4およびスイッチ5を備える加熱装置100Aが機関弁1Aに設けられている。
【0014】
機関弁1Aは傘部Uとステム部Sとを備えている。また、中空部Rが設けられている。中空部Rは傘部Uの端部からステム部Sにかけて設けられている。圧電素子2は中空部Rのうち、ステム部Sに沿って延伸している部分の傘部U側の端部に設けられている。圧電素子2は作用する荷重に応じて発電することで、発電を行う発電部となっている。錘3は中空部Rのうち、ステム部Sに沿って延伸している部分に移動自在に設けられている。錘3は機関弁1Aの駆動に応じて中空部R内を移動する。錘3は圧電素子2に衝突することで、圧電素子2に対して発電を行うように作用する作用部となっている。
【0015】
発熱素子4は中空部Rのうち、傘部Uの斜面部に対応する部分に設けられている。発熱素子4は圧電素子2と配線で接続されている。発熱素子4は圧電素子2から供給される電力に応じて発熱することで発熱を行う発熱部となっている。発熱素子4は具体的には例えば抵抗器やコイルである。発熱素子4は例えば電極間の放熱によって熱を発生させる加熱電極や、ニクロム、チタン、セラミック、ビスマスなどの抵抗体であってもよい。スイッチ5は中空部Rのうち、傘部Uに形成された部分に設けられている。スイッチ5は圧電素子2と発熱素子4とを接続する配線に介在するように設けられている。
【0016】
スイッチ5は感温式のスイッチとなっている。スイッチ5は温度が所定値よりも低い場合(具体的にはここでは所定値以下である場合)にONとなり、圧電素子2と発熱素子4とを電気的に接続する。また、温度が所定値よりも高い場合にOFFとなり、圧電素子2と発熱素子4とを電気的に非接続する。そしてこれにより、圧電素子2と発熱素子4との電気的な接続を温度に応じて切り替えることで、圧電素子2から発熱素子4への電力の供給、供給停止を温度に応じて制御する制御部となっている。プラグ6は中空部Rのうち、傘部Uの端部に開口している開口部に設けられている。
【0017】
図2は機関弁1Aの分解図である。図2に示すように、発熱素子4とスイッチ5とは具体的には配線とともに組み合わせ品であるサブユニットSUとして予め一体化されている。これら発熱素子4、スイッチ5および配線に対しては例えば被覆や隙間を設けることで、サブユニットSUのベース部材Bや機関弁1Aとの間の絶縁処理が施されている。
【0018】
機関弁1Aは中空部Rに錘3、圧電素子2を組み付けた後にサブユニットSUを組み付け、その後、プラグ6を組み付けることで、組み立てることができるようになっている。このようにして組み立てられた機関弁1Aにおいて、中空部Rはステム部Sに沿って延伸している部分に錘3を移動自在に収容する空間を形成するようになっている。
【0019】
図3は加熱装置100Aの動作説明図である。図3(a)は閉弁時の機関弁1Aを示す。図3(b)は開弁時の機関弁1Aを示す。機関弁1Aは使用状態で対応する内燃機関のシリンダヘッド20に設けられる。加熱装置100Aでは錘3が慣性によって機関弁1A閉弁時に圧電素子2に衝突し、機関弁1A開弁時に圧電素子2から離れる。そして、錘3が圧電素子2に衝突した際に圧電素子2が発電し、発電された電力が圧電素子2から発熱素子4に供給されることで、発熱素子4が発熱する。結果、機関弁1Aが加熱される。スイッチ5は温度が所定値よりも高い場合にOFFになることで、発熱素子4への電力の供給を高温時に停止する。
【0020】
次に加熱装置100Aの作用効果について説明する。加熱装置100Aは圧電素子2、錘3および発熱素子4を備えるとともに、圧電素子2、錘3および発熱素子4を機関弁1Aに設けている。このため、加熱装置100Aは機関弁1Aの自己発電および自己発熱を可能にすることができる。そしてこれにより外部電源を不要にすることで、外部電源から電力を供給する場合に発生し得る信頼性の低下を回避できる。また、外部電源を不要にすることで、省配線化を図ることもできる。このため、加熱装置100Aは省配線化を図りつつ信頼性を確保できる。
【0021】
加熱装置100Aは圧電素子2から発熱素子4への電力の供給、供給停止を温度に応じて制御するスイッチ5を備えることで、温度管理を可能にすることもできる。そしてこれにより、機関弁1Aが異常な高温になることも防止できる。結果、さらに高い信頼性を確保できる。この点、加熱装置100Aは具体的には温度が所定値よりも低い場合に圧電素子2と発熱素子4とを電気的に接続するとともに、温度が所定値よりも高い場合に圧電素子2と発熱素子4とを電気的に非接続するスイッチ5を機関弁1Aに設けることで、機関弁1Aの自己温度管理を可能にすることができる。
【0022】
加熱装置100Aは例えば次に示すように変形されてもよい。図4は加熱装置100Aの変形例である加熱装置100A´を示す図である。図4(a)は機関弁1A´閉弁時の加熱装置100A´を示す。図4(b)は機関弁1A´開弁時の加熱装置100A´を示す。機関弁1A´および加熱装置100A´は中空部Rのうち、傘部Uとは反対側の端部に発熱素子4に電力を供給可能な圧電素子2をさらに備える点以外、機関弁1Aおよび加熱装置100Aと実質的に同一となっている。加熱装置100A´では機関弁1A´の閉弁時および開弁時に錘3が圧電素子2に衝突することで発電が行われる。このため、加熱装置100A´は加熱装置100Aと比較してさらに発電能力を高めることで、加熱性能を高めることができる。
【実施例2】
【0023】
図5は加熱装置100Bを示す図である。機関弁1Bおよび加熱装置100Bは発電部として圧電素子2の代わりに誘電エラストマ7を備える点と、作用部として錘3の代わりに錘3´を備える点以外、機関弁1Aおよび加熱装置100Aと実質的に同一となっている。誘電エラストマ7は中空部Rのうち、ステム部Sに沿って延伸している部分の傘部U側の端部に設けられている。錘3´は誘電エラストマ7に傘部Uとは反対側から固定された状態で中空部Rに設けられている。錘3´は誘電エラストマ7を伸縮させることで、誘電エラストマ7に対して発電を行うように作用する。
【0024】
図6は加熱装置100Bの動作説明図である。図6(a)は機関弁1B閉弁時の加熱装置100Bを示す。図6(b)は機関弁1B開弁時の加熱装置100Bを示す。加熱装置100Bでは錘3´が慣性によって機関弁1Bの閉弁時に誘電エラストマ7を圧縮し、機関弁1Bの開弁時に誘電エラストマ7を伸張する。そして、誘電エラストマ7は伸縮することで発電し、発電された電力が誘電エラストマ7から発熱素子4に供給されることで、発熱素子4が発熱する。加熱装置100Bではスイッチ5が誘電エラストマ7から発熱素子4への電力の供給、供給停止を加熱装置100Aの場合と同様に制御する。
【0025】
次に加熱装置100Bの作用効果について説明する。加熱装置100Bは誘電エラストマ7、錘3´および発熱素子4を備えるとともに、誘電エラストマ7、錘3´および発熱素子4を機関弁1Bに設けることで、機関弁1Bの自己発電および自己発熱を可能にする。このため、加熱装置100Bは加熱装置100A同様、省配線化を図りつつ信頼性を確保できる。加熱装置100Bは温度管理を可能にするスイッチ5を機関弁1Bに設けることで機関弁1Bの自己温度管理を可能にすることもできる。そしてこれにより、加熱装置100Aと同様、さらに高い信頼性を確保できる。
【実施例3】
【0026】
図7は加熱装置100Cを示す図である。機関弁1Cおよび加熱装置100Cは発電部として圧電素子2の代わりにコイル8を備える点と、作用部として錘3の代わりに磁石9を備える点と、中空部Rの代わりに中空部R´が設けられている点以外、機関弁1Aおよび加熱装置100Aと実質的に同一となっている。中空部R´はステム部Sに沿って延伸している部分が段付き状に設けられている。コイル8はステム部Sの延伸方向に沿って設けられている。磁石9は中空部R´のうち、ステム部Sに沿って延伸している部分、且つ縮径している部分に移動自在に設けられている。磁石9はコイル8に対して接近、離間することで、コイル8に対して発電を行うように作用する。
【0027】
この点、コイル8は中空部R´のうち、磁石9を移動自在に収容する空間を形成する部分に対して同心状に設けられている。また、一端部が中空部R´のうち、磁石9を移動自在に収容する空間を形成する部分の周囲に位置するように設けられている。このようにコイル8を設けるにあたっては、コイル8をさらに組み込んだサブユニットSUを構成し、サブユニットSUごと中空部R´に設けることができる。
【0028】
図8は加熱装置100Cの動作説明図である。図8(a)は機関弁1C閉弁時の加熱装置100Cを示す。図8(b)は機関弁1C開弁時の加熱装置100Cを示す。図8ではシリンダヘッド20および機関弁1Cに対して使用状態で設けられるバルブガイド21Aとともに機関弁1Cを示す。加熱装置100Cでは磁石9が慣性によって機関弁1Cの駆動時にコイル8に対して接近、離間する。そしてこれによりコイル8が発電し、発電された電力がコイル8から発熱素子4に供給されることで、発熱素子4が発熱する。加熱装置100Cではスイッチ5がコイル8から発熱素子4への電力の供給、供給停止を加熱装置100Aの場合と同様に制御する。
【0029】
次に加熱装置100Cの作用効果について説明する。加熱装置100Cはコイル8、磁石9および発熱素子4を備えるとともに、コイル8、磁石9および発熱素子4を機関弁1Cに設けることで、機関弁1Cの自己発電および自己発熱を可能にする。このため、加熱装置100Cは加熱装置100A同様、省配線化を図りつつ信頼性を確保できる。加熱装置100Cは温度管理を可能にするスイッチ5を機関弁1Cに設けることで機関弁1Cの自己温度管理を可能にすることもできる。そしてこれにより、加熱装置100Aと同様、さらに好適に高い信頼性を確保できる。
【実施例4】
【0030】
図9は加熱装置100Dを示す図である。加熱装置100Dは発電部として圧電素子2の代わりにコイル8を備える点と、作用部として錘3の代わりにバルブガイド21Bを備える点と、制御部としてスイッチ5の代わりにECU30を備える点以外、加熱装置100Aと実質的に同一となっている。機関弁1Dは圧電素子2の代わりにコイル8を備える点と、スイッチ5を特段備えていない点以外、機関弁1Aと実質的に同一となっている。
【0031】
コイル8はステム部Sの内部に設けられている。コイル8はステム部Sの延伸方向に沿って設けられている。このようにコイル8を設けるにあたっては、コイル8をさらに組み込んだサブユニットSUを構成し、サブユニットSUごと中空部Rに設けることができる。
【0032】
バルブガイド21Bは使用状態にある機関弁1Dに対して設けられ、機関弁1Dの動作をガイドする。バルブガイド21Bは電磁石となっており、機関弁1Dの駆動に応じて接近、離間するコイル8に対して通電時に発電を行うように作用する。ECU30は電子制御装置であり、バルブガイド21Bに通電可能に接続されている。ECU30はバルブガイド21Bへの通電を制御することで、コイル8から発熱素子4への電力の供給、供給停止を制御する。
【0033】
加熱装置100Dでは通電時のバルブガイド21Bに対して機関弁1Dの駆動時にコイル8が接近、離間することで、コイル8が発電する。そして、発電された電力がコイル8から発熱素子4に供給されることで、発熱素子4が発熱する。バルブガイド21Bに通電を行うにあたって、ECU30は対応する内燃機関の運転状態に応じてバルブガイド21Bへの通電を制御する。
【0034】
この点、ECU30は具体的には例えば対応する内燃機関の冷却水温が所定値よりも低い場合(具体的にはここでは所定値以下である場合)にバルブガイド21Bに通電することで、コイル8から発熱素子4に電力を供給することができる。また、冷却水温が所定値よりも高い場合にバルブガイド21Bへの通電を禁止することで、コイル8から発熱素子4への電力の供給を停止することができる。
【0035】
次に加熱装置100Dの作用効果について説明する。加熱装置100Dはコイル8、バルブガイド21Bおよび発熱素子4を備えるとともに、コイル8、バルブガイド21Bおよび発熱素子4のうち、コイル8と発熱素子4とを機関弁1Dに設けることで、機関弁1Dの自己発電および自己発熱を可能にする。すなわち、加熱装置100Dによれば、発電部、作用部および発熱部のうち、発電部と発熱部とを機関弁1Dに設けることで、機関弁1Dの自己発電および自己発熱を可能にすることができる。そしてこれにより、加熱装置100A同様、省配線化を図りつつ信頼性を確保できる。
【0036】
加熱装置100Dは、通電時のバルブガイド21Bに対してコイル8が接近、離間することで、発電および発熱を可能にする。これに対し、加熱装置100Dではバルブガイド21Bへの通電を制御するECU30を備えることで温度管理を可能にすることができる。すなわち、加熱装置100Dによれば制御部を機関弁1D以外の外部に設けても温度管理を可能にすることができる。そしてこれにより、加熱装置100Aと同様、さらに好適に高い信頼性を確保できる。
【0037】
加熱装置100Dは例えば次に示すように変形されてもよい。図10は加熱装置100Dの変形例である加熱装置100D´を示す図である。機関弁1D´および加熱装置100D´はコイル8がステム部Sの外周部のうち、駆動時にバルブガイド21Bよりも傘部U側に位置することになる部分に設けられる点以外、機関弁1Dおよび加熱装置100Dと実質的に同一となっている。このようにコイル8が設けられる加熱装置100D´ではステム部Sがコイル8の芯となる。このため、加熱装置100D´は加熱装置100Dと同様の作用効果を得ることができるとともに、加熱装置100Dと比較してさらに起電力を高めることで発電能力を高めることもできる。
【実施例5】
【0038】
図11は加熱装置100Eを示す図である。加熱装置100Eは発電部として以下に示すように設けられる圧電素子2´を備えている。また、作用部としてバルブスプリング24を備えるとともに、発熱部として以下に示すように設けられる発熱素子4´を備えている。機関弁1Eには加熱装置100Eの構成は特段設けられていない。
【0039】
使用状態の機関弁1Eに対してはバルブガイド21Cやアッパー側およびロア側のバルブスプリングシート22、23やバルブスプリング24が設けられる。バルブガイド21Cは特に電磁石にはなっていない。一方、バルブガイド21Cには発熱素子4´が設けられている。そしてこれにより、発熱素子4´は機関弁1Eの周辺部に設けられている。バルブガイド21Cの材質には適宜の金属を適用できる。
【0040】
アッパー側のバルブスプリングシート22はステム部Sの端部に設けられている。ロア側のバルブスプリングシート23は圧電素子2´を介してシリンダヘッド20に押し付けられるように設けられている。この点、圧電素子2´はバルブガイド21Cの周辺部にバルブスプリングシート23を介してバルブスプリング24のばね力が作用するように設けられており、これにより機関弁1Eの周辺部に設けられている。圧電素子2´は発熱素子4´に配線で接続されている。バルブスプリング24はバルブスプリングシート22、23間に設けられており、機関弁1Eを閉弁する方向にバルブスプリングシート22を付勢する。バルブスプリング24は機関弁1Eの駆動に応じて圧縮された際に圧電素子2´に対して発電を行うように作用する。
【0041】
加熱装置100Eではバルブスプリング24が機関弁1Eの駆動に応じて圧縮されると、バルブスプリング24のばね力が圧電素子2´に作用することで、圧電素子2´が発電する。そして、発電された電力が圧電素子2´から発熱素子4´に供給されることで、発熱素子4´が発熱する。発熱素子4´はバルブガイド21Cを加熱することで、機関弁1Eを間接的に加熱する。
【0042】
次に加熱装置100Eの作用効果について説明する。加熱装置100Eは圧電素子2´、バルブスプリング24および発熱素子4´を備えるとともに、圧電素子2´、バルブスプリング24および発熱素子4´を機関弁1Eの周辺部に設けることで、発電および発熱を可能にすることができる。すなわち、加熱器100Eによれば発電部、作用部および発熱部を機関弁1E以外の外部に設けても、機関弁1Eを加熱可能な発電および発熱を行うことができる。そしてこれにより、省配線化を図りつつ信頼性を確保できる。
【0043】
加熱装置100Eはバルブガイド21Cの周辺部にバルブスプリングシート23を介してバルブスプリング24のばね力が作用するように圧電素子2´を設けることで、圧電素子2´と発熱素子4´とを接続する配線を短くすることもできる。そしてこれにより、省配線化を好適に図ることもできる。また、機械弁1Eを間接的に加熱するにあたって、バルブガイド21Cに発熱素子4´を設ける加熱装置100Eは、例えば機械弁1Eが着座するシート部に発熱素子を設ける場合と比較して振動や熱の影響が小さい点で有利である。
【0044】
加熱装置100Eは発熱素子4´をバルブガイド21Cに設けることで、機関暖機時にステム部Sとの間のクリアランスが狭くなることも防止できる。すなわち、機関弁1Eを直接加熱する場合には機関暖機時にクリアランスが狭くなる結果、摩耗が発生することが懸念されるところ、加熱装置100Eではバルブガイド21Cを加熱することで、摩耗の発生を抑制することもできる。
【0045】
また、摩耗の発生を抑制するためには例えば機関暖機時のクリアランスを大きめに設定することも考えられるところ、この場合には機関暖機後に機関弁1Eの振れが大きくなることが懸念される。これに対し、加熱装置100Eではかかる振れを助長することもなく、摩耗の発生を抑制できる。このため、加熱装置100Eは機関弁1Eを直接加熱する場合と比較してさらに高い信頼性を確保することもできる。
【0046】
加熱装置100Eは例えば次に示すように変形されてもよい。図12は加熱装置100Eの変形例である加熱装置100E´を示す図である。加熱装置100E´は発電部および発熱部としてコイル8を備えている。また、作用部として磁石9を備えている。機関弁1E´は中空部Rおよび中空部Rを塞ぐ図示しないプラグが設けられている点と磁石9をさらに備える点以外、機関弁1Eと実質的に同一となっている。
【0047】
磁石9はステム部Sの内部に固定された状態で設けられている。磁石9は例えば中空部Rに挿入した後、プラグ6と同様に中空部Rの開口部を塞ぐプラグで押さえ込むことで固定することができる。或いは、例えば中空部Rのうち、ステム部Sに沿って延伸している部分の傘部Uとは反対側の端部に圧入することで固定することができる。機関弁1E´に対しては使用状態でバルブガイド21Dが設けられる。バルブガイド21Dにはコイル8が設けられている。バルブガイド21Dは特に電磁石にはなっておらず、バルブガイド21Dの材質には適宜の金属を適用できる。
【0048】
加熱装置100E´ではバルブガイド21Dに対して磁石9が接近、離間することで、コイル8が発電する。そして、コイル8自身の発熱によってバルブガイド21Dを加熱する。したがって、加熱装置100E´ではコイル8が発熱部を兼ねた発電部となっている。すなわち、発電部と発熱部とは例えば同じ構成によって実現されてもよい。そしてかかる機関弁1E´によれば、発電部、作用部および発熱部のうち、発電部と発熱部とを機関弁1E´の周辺部に設けることで、加熱装置100Eと同様に省配線化を図りつつ信頼性を確保できる。
【0049】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
機関弁 1A、1A´、1B、1C、1D、1D´、1E、1E´
圧電素子 2、2´
錘 3、3´
発熱素子 4、4´
スイッチ 5
誘電エラストマ 7
コイル 8
磁石 9
加熱装置 100A、100A´、100B、100C、100D、100D´、100E、100E´

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部と、
前記発電部に対して発電を行うように作用する作用部と、
前記発電部から供給される電力に応じて発熱を行う発熱部とを備え、
前記発電部、前記作用部および前記発熱部のうち、少なくとも前記発電部と前記発熱部とが内燃機関の燃焼室に対して設けられる機関弁に設けられるか、或いは前記機関弁の周辺部に設けられる機関弁の加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の機関弁の加熱装置であって、
前記発電部から前記発熱部への電力の供給を温度に応じて制御する制御部をさらに備える機関弁の加熱装置。
【請求項3】
請求項2記載の機関弁の加熱装置であって、
前記発電部、前記発熱部および前記制御部が前記機関弁に設けられており、
前記制御部が前記発電部から前記発熱部への電力の供給を温度に応じて制御するにあたり、温度が所定値よりも低い場合に前記発電部と前記発熱部とを電気的に接続し、温度が前記所定値よりも高い場合に前記発電部と前期発熱部とを電気的に非接続にする機関弁の加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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