説明

櫛付き鋏

【解決手段】櫛部材7を第一の刃体2に対し着脱して両櫛歯群11,12の取付状態を第一の刃体2に対し変更することにより、眉毛の向きの相違に応じて利用する櫛歯群11,12の延設方向Yを変えて両櫛歯群11,12を使い分けることができる。また、両櫛歯群11,12において櫛歯27,29の延設方向Yを傾斜させている。
【効果】櫛付き鋏において眉毛をカットする際に使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば眉毛を切る際に使用する櫛付き鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1にかかる櫛付き鋏では、櫛が一方の刃体に対し着脱可能に取り付けられている。
【特許文献1】特開2004−159962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1にかかる櫛においては、各櫛歯の延設向きが一方の刃体の刃先の延設方向に対し直交している一つの櫛歯群が開示されている。そのため、眉毛の向き等の性質の相違や左眉毛の毛並みと右眉毛の毛並みとの相違などに応じて櫛歯を使い分けることができない。
【0004】
この発明は、櫛付き鋏において例えば眉毛をカットする際に眉毛の向き等の性質の相違や左眉毛の毛並みと右眉毛の毛並みとの相違などに応じて櫛歯を使い分けることができるようにして使い勝手を良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜10)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる櫛付き鋏においては、刃縁部2aを有する第一の刃体2と刃縁部3aを有する第二の刃体3とを互いに開閉動可能に支持し、互いに性質の異なる複数の櫛歯群11,12を有する櫛部材7をこの第一の刃体2に取り付けている。
【0006】
請求項1の発明では、櫛部材7において互いに性質の異なる複数の櫛歯群11,12を例えば眉毛Hの向き等の性質の相違や左眉毛Hの毛並みと右眉毛Hの毛並みとの相違などに応じて使い分けることができるので、使い勝手が良くなる。
【0007】
請求項2の発明にかかる櫛付き鋏においては、刃縁部2aを有する第一の刃体2と刃縁部3aを有する第二の刃体3とを互いに開閉動可能に支持し、複数の櫛歯群11,12を有する櫛部材7をこの第一の刃体2に取り付け、この各櫛歯群11,12のうちいずれかの櫛歯群11,12を第一の刃体2の刃縁部2aに並べることができるように第一の刃体2と櫛部材7との間に取付部9,10を設けて第一の刃体2に対する櫛歯群11,12の位置R11,R12を変更可能にした。
【0008】
請求項2の発明では、櫛部材7において複数の櫛歯群11,12の位置R11,R12を第一の刃体2に対し変更して複数の櫛歯群11,12を例えば眉毛Hの向き等の性質の相違や左眉毛Hの毛並みと右眉毛Hの毛並みとの相違などに応じて使い分けることができるので、使い勝手が良くなる。
【0009】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明にかかる櫛部材7において、取付部9,10は各櫛歯群11,12ごとに設けられている。
請求項3の発明では、櫛部材7において複数の櫛歯群11,12の位置R11,R12を第一の刃体2に対し容易に変更することができる。
【0010】
請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記櫛部材7は互いに性質の異なる複数の櫛歯群11,12を有している。
請求項4の発明では、櫛部材7において互いに性質の異なる複数の櫛歯群11,12を
例えば眉毛Hの向き等の性質の相違や左眉毛Hの毛並みと右眉毛Hの毛並みとの相違などに応じて使い分けることができるので、使い勝手が良くなる。
【0011】
請求項1または請求項4の発明を前提とする請求項5の発明にかかる櫛部材7において、各櫛歯群11,12のうちいずれかの特定櫛歯群11,12を第一の刃体2の刃縁部2aに並べた状態R11,R12とその特定櫛歯群11,12以外の特定櫛歯群12,11を第一の刃体2の刃縁部2aに並べた状態R12,R11とでこの第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに対するそれらの特定櫛歯群11,12の櫛歯27,29の延設方向Yを互いに異なるものにすることにより、各櫛歯群11,12間の性質を異なるものにしている。
【0012】
請求項5の発明では、櫛部材7において延設方向Yが互いに異なる複数の櫛歯群11,12を例えば眉毛Hの向き等の性質の相違や左眉毛Hの毛並みと右眉毛Hの毛並みとの相違などに応じて使い分けることができるので、使い勝手が良くなる。
【0013】
請求項6の発明にかかる櫛付き鋏においては、刃縁部2aを有する第一の刃体2と刃縁部3aを有する第二の刃体3とを互いに開閉動可能に支持し、櫛歯群11,12を有する櫛部材7をこの第一の刃体2に取り付け、その櫛部材7の櫛歯群11,12に第一の刃体2の刃縁部2aを並べるとともに、第一の刃体2の刃縁部2aと第二の刃体3の刃縁部3aとを閉動時に互いに摺接可能にし、第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに対し櫛歯群11,12の櫛歯27,29の延設方向Yを傾斜させた。
【0014】
請求項6の発明では、櫛部材7の櫛歯群11,12において櫛歯27,29の延設方向Yを傾斜させたので、例えば眉毛Hの向き等の性質の相違や左眉毛Hの毛並みと右眉毛Hの毛並みとの相違などに応じて、櫛付き鋏を使い分けることができるので、使い勝手が良くなる。
【0015】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項2または請求項3または請求項4の発明を前提とする第7の発明にかかる櫛部材7において、各櫛歯群11,12ごとに第一の刃体2が着脱可能に挿着される挿脱口部17,22を有する挿着溝部9,10を取付部として設け、各櫛歯群11,12ごとに設けた挿着溝部9,10のうちいずれかの特定櫛歯群11,12に対応する特定挿着溝部9,10に挿着された第一の刃体2で刃縁部2aは、この特定挿着溝部9,10から突出してこの特定櫛歯群11,12に並ぶ。
【0016】
第7の発明を前提とする第8の発明にかかる櫛部材7において、取付部としての各挿着溝部9,10は挿着溝部9,10に対する第一の刃体2の挿脱方向Xに対する周方向へ並設され、この各挿着溝部9,10の挿脱口部17,22はこの挿脱方向Xの両側のうち一方の側で互いに隣接している。
【0017】
第7〜8の発明では、第一の刃体2に対する櫛部材7の取付構造を簡単にすることができる。
第8の発明を前提とする第9の発明にかかる櫛部材7において、取付部としての一対の挿着溝部9,10のうち一方の挿着溝部9から一方の櫛歯群11を突出させるとともに他方の挿着溝部10から他方の櫛歯群12を突出させ、一方の挿着溝部9に第一の刃体2を挿着させた状態で第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに対し一方の櫛歯群11の櫛歯27の延設方向Yを傾斜させるとともに、他方の挿着溝部10に第一の刃体2を挿着させた状態で第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに対し他方の櫛歯群12の櫛歯29の延設方向Yを傾斜させた。
【0018】
第9の発明を前提とする第10の発明において、一方の櫛歯群11の櫛歯27の延設方向Yは第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに沿う両側のうち一方の側へ傾斜し、他方の櫛歯群12の櫛歯29の延設方向Yは第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに沿う両側のうち他方の側へ傾斜する。
【0019】
第10の発明を前提とする第11の発明において、第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに対し一方の櫛歯群11の櫛歯27の延設方向Xがなす傾斜角度θ27と、第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに対し他方の櫛歯群12の櫛歯29の延設方向Xがなす傾斜角度θ29とは、それぞれ、第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに沿う両側のうちそれらの櫛歯27,29の延設方向Yが傾斜する側で、30度以上80度以下に設定されている。
【0020】
第9の発明または第10の発明または第11の発明を前提とする第12の発明において、一方の櫛歯群11の突出向きY27と他方の櫛歯群12の突出向きY29とは、互いに逆になっている。
【0021】
第9〜12の発明では、櫛部材7の櫛歯群11,12において櫛歯27,29の延設方向Yを傾斜させたので、例えば眉毛Hの向き等の性質の相違や左眉毛Hの毛並みと右眉毛Hの毛並みとの相違などに応じて複数の櫛歯群11,12を使い分けることができるので、使い勝手が良くなる。
【0022】
請求項1から請求項6の発明のうちいずれかの請求項の発明、または第7の発明または第8の発明または第9の発明または第10の発明または第11の発明または第12の発明を前提とする第13の発明において、前記櫛部材7は一体成形されている。
【0023】
第13の発明では、櫛部材7を容易に成形することができるほか、櫛部材7の紛失を防止して不使用時における櫛部材7の保管を容易にすることもできる。
請求項1から請求項6の発明のうちいずれかの請求項の発明、または第7の発明または第8の発明または第9の発明または第10の発明または第11の発明または第12の発明または第13の発明を前提とする第14の発明において、前記櫛部材7は第一の刃体2と第二の刃体3とのうち第一の刃体2にのみ取り付けられる。
【0024】
第14の発明では、櫛部材7の取り付け間違いを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、櫛付き鋏において眉毛等の毛をカットする際に使い勝手を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態にかかる櫛付き鋏について図面を参照して説明する。
図1に示すように、この櫛付き鋏の鋏本体1においては、第一の刃体2と第二の刃体3とが開閉動中心部4よりも先端側に設けられているとともに、第一の柄部5と第二の柄部6とが開閉動中心部4よりも基端側に設けられ、この両刃体2,3と両柄部5,6とはこの開閉動中心部4を中心に回動して図1に示す開状態Pと図3(a)及び図6(a)に示す閉状態Qとを取る。この開状態Pでは第一の刃体2の刃縁部2aと第二の刃体3の刃縁部3aとが互いに離間し、この閉状態Qではそれらの刃縁部2a,3aが互いに噛み合いながら第一の刃体2の内面と第二の刃体3の内面とが互いに摺接する。この第一の刃体2の外面には刃縁部2aと背縁部2bとの間で係止溝部2cが刃縁部2aに沿って形成されている。
【0027】
図3(a)、図6(a)及び図2(a)(b)(c)(d)に示すように、この櫛付き鋏の櫛部材7は、プラスチックにより一体成形され、取付部としての一対の挿着溝部9,10を有する取付部群8と、その取付部群8の両側に配設された一対の櫛歯群11,12とを備えている。なお、櫛部材7をプラスチック以外の材質により一体成形してもよい。
【0028】
図4(c)及び図7(c)に示すように、この取付部群8の両挿着溝部9,10のうち、一方の挿着溝部9においては、共通の内側壁部13の両縁部のうち一方の縁部から底壁部14が延び、この底壁部14から外側壁部15が内側壁部13と相対向して延びてそれらの内外両側壁部13,15間が開口部16で開放されている。また、他方の挿着溝部10においては、共通の内側壁部13の両縁部のうち他方の縁部から底壁部19が延び、この底壁部19から外側壁部20が内側壁部13と相対向して延びてそれらの内外両側壁部13,20間が開口部21で開放されている。この両挿着溝部9,10はその延設方向Xに対し周方向へ180度の点対称的に並設され、図4(d)及び図7(d)に示すように、その延設方向Xの両側のうち、一方の側で挿脱口部17,22が形成されて互いに隣接しているとともに、他方の側で閉塞壁部18,23が形成されて互いに隣接している。この両挿脱口部17,22で外側壁部15,20には弾性を有する係止舌片24が片持ち梁状に形成されている。この係止舌片24の内側には突起24aが形成されている。なお、これらの外側壁部15,20には閉塞壁部18,23側寄りで挿着溝部9,10内に連通する成形用貫通孔25が形成されている。
【0029】
前記両櫛歯群11,12のうち、一方の櫛歯群11において、一方の挿着溝部9の外側壁部15には、挿脱口部17側及び閉塞壁部18側で側枠部26が突設されているとともに、この両側枠部26間で多数の櫛歯27が突設されている。また、他方の櫛歯群12において、他方の挿着溝部10の外側壁部20には、挿脱口部22側及び閉塞壁部23側で側枠部28が突設されているとともに、この両側枠部28間で多数の櫛歯29が突設されている。一方の櫛歯群11の各櫛歯27と他方の櫛歯群12の各櫛歯29とは挿着溝部9,10の延設方向Xに対し傾斜する同一の延設方向Yへ延び、この各櫛歯27の突出向きY27と各櫛歯29の突出向きY29とはこの延設方向Y上で互いに逆になっている。
【0030】
図3(a)に示すように櫛部材7を鋏本体1の第一の刃体2から取り外した状態で、図3(b)(c)、図4(a)(b)及び図5(a)(b)に示すように鋏本体1の第一の刃体2を一方の挿着溝部9に対し挿脱口部17から挿入すると、第一の刃体2の係止溝部2cに係止舌片24の突起24aが係入されながら、第一の刃体2が閉塞壁部18に当接して取付状態R11となる。その取付状態R11では、第一の刃体2の刃縁部2aが一方の挿着溝部9の開口部16から突出して一方の櫛歯群11の各櫛歯27に並び、その各櫛歯27の延設方向Yが刃縁部2aの延設方向Xの両側のうち閉塞壁部18側へその延設方向Xに対し傾斜している。なお、一方の挿着溝部9に挿入された第一の刃体2を貫通孔25から視認して、その挿入が完了したか否かを判別することができる。
【0031】
また、図6(a)に示すように櫛部材7を鋏本体1の第一の刃体2から取り外した状態で、図6(b)(c)、図7(a)(b)及び図8(a)(b)に示すように鋏本体1の第一の刃体2を他方の挿着溝部10に対し挿脱口部22から挿入すると、第一の刃体2の係止溝部2cに係止舌片24の突起24aが係入されながら、第一の刃体2が閉塞壁部23に当接して取付状態R12となる。その取付状態R12では、第一の刃体2の刃縁部2aが他方の挿着溝部10の開口部21から突出して他方の櫛歯群12の各櫛歯29に並び、その各櫛歯29の延設方向Yが刃縁部2aの延設方向Xの両側のうち挿脱口部22側へその延設方向Xに対し傾斜している。なお、他方の挿着溝部10に挿入された第一の刃体2を貫通孔25から視認して、その挿入が完了したか否かを判別することができる。
【0032】
このようにして、第一の刃体2に対する両櫛歯群11,12の位置を互いに変更すると、一方の櫛歯群11の取付状態R11と他方の櫛歯群12の取付状態R12とでは、第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに対するそれらの櫛歯群11,12の櫛歯27,29の延設方向Yが互いに異なる。ちなみに、第一の刃体2の刃縁部2aの延設方向Xに対し一方の櫛歯群11の各櫛歯27の延設方向Yがなす傾斜角度θ27と、その延設方向Xに対し他方の櫛歯群12の各櫛歯29の延設方向Yがなす傾斜角度θ29とは、それぞれ、その延設方向Xに沿う両側のうちそれらの櫛歯27,29の延設方向Yが傾斜する側で、30度以上80度以下に設定されている。
【0033】
さて、右眉毛Hをカットする場合には、両櫛歯群11,12のうち一方の櫛歯群11に対応する一方の挿着溝部9に第一の刃体2を挿着して櫛部材7を第一の刃体2に取り付け、例えば図9(a)、図3(c)、図4(b)及び図5(b)に示すように、一方の櫛歯群11の正面側を右眉毛Hに当てがって両刃体2,3を互いに開いたまま各櫛歯27を右眉毛Hの下方からすくい入れ、両刃体2,3を開閉動させる。その際、一方の櫛歯群11の各櫛歯27の突出向きY27が左傾斜になるとともに、右眉毛Hの向きYHが右傾斜になるため、各櫛歯27を右眉毛Hの下方から抵抗を生じながら毛並みに逆らってすくい入れることができ、寝た毛を起こしてカットすることもできる。また、図10(a)に示すように、図9(a)の状態にある一方の櫛歯群11の正面側を左眉毛Hに当てがって両刃体2,3を互いに開いたまま各櫛歯27を左眉毛Hの下方からすくい入れ、両刃体2,3を開閉動させることもできる。その際、一方の櫛歯群11の各櫛歯27の突出向きY27が左傾斜になるとともに、右眉毛Hの向きYHも左傾斜になるため、各櫛歯27を左眉毛Hの下方から左眉毛Hに沿うように滑らかにすくい入れることができ、毛並みを整えてカットすることもできる。
【0034】
一方、左眉毛Hをカットする場合には、両櫛歯群11,12のうち他方の櫛歯群12に対応する他方の挿着溝部10に第一の刃体2を挿着して櫛部材7を第一の刃体2に取り付け、例えば図9(b)、図6(c)、図7(b)及び図8(b)に示すように、他方の櫛歯群12の正面側を左眉毛Hに当てがって両刃体2,3を互いに開いたまま各櫛歯29を左眉毛Hの下方からすくい入れ、両刃体2,3を開閉動させる。その際、他方の櫛歯群12の各櫛歯29の突出向きY29が右傾斜になるとともに、左眉毛Hの向きYHが左傾斜になるため、各櫛歯29を左眉毛Hの下方から抵抗を生じながら毛並みに逆らってすくい入れることができ、寝た毛を起こしてカットすることもできる。また、図10(b)に示すように、図9(b)の状態にある他方の櫛歯群12の正面側を右眉毛Hに当てがって両刃体2,3を互いに開いたまま各櫛歯29を右眉毛Hの下方からすくい入れ、両刃体2,3を開閉動させることもできる。その際、他方の櫛歯群12の各櫛歯29の突出向きY29が右傾斜になるとともに、右眉毛Hの向きYHも右傾斜になるため、各櫛歯29を右眉毛Hの下方から右眉毛Hに沿うように滑らかにすくい入れることができ、毛並みを整えてカットすることもできる。
【0035】
このようにして左眉毛H及び右眉毛Hをカットする場合以外にも、そのほかの体毛例えば頭髪特に鬢のカットに利用することもできる。また、両櫛歯群11,12のうち第一の刃体2の刃縁部2aに並べた一方のもの以外の他方のものについては、体毛を梳く場合に利用することもできる。
【0036】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 櫛部材7を第一の刃体2に対し着脱して両櫛歯群11,12の取付状態R11,R12を第一の刃体2に対し変更することにより、両櫛歯群11,12を使い分けて眉毛Hの向きの相違に応じて各櫛歯27,29の延設方向Yを変えることができる。従って、櫛付き鋏において眉毛Hをカットする際に使い勝手を良くすることができる。
【0037】
* 櫛部材7の両櫛歯群11,12において櫛歯27,29の延設方向Yを傾斜させたので、例えば眉毛Hの向き等の性質の相違や左眉毛Hの毛並みと右眉毛Hの毛並みとの相違などに応じて両櫛歯群11,12を使い分けることができ、使い勝手が良くなる。
【0038】
* 櫛部材7において、両櫛歯群11,12ごとに第一の刃体2が着脱可能に挿着される挿脱口部17,22を有する挿着溝部9,10を周方向へ並設し、いずれかの挿着溝部9,10に挿着された第一の刃体2で刃縁部2aがそれらの挿着溝部9,10から突出していずれかの櫛歯群11,12に並ぶ。従って、櫛部材7において両櫛歯群11,12の取付状態R11,R12を第一の刃体2に対し容易に変更することができるとともに、第一の刃体2に対する櫛部材7の取付構造を簡単にすることができる。
【0039】
前記実施形態以外にも下記のように構成してもよい。
・ 櫛部材7において櫛歯群11,12の性質とは、各櫛歯27,29の延設方向Yや各櫛歯27,29の太さや長さや断面形状や間隔などのような形態ばかりではなく、各櫛歯27,29の柔軟性や材質や表面処理なども含む。
【0040】
・ 図4(e)及び図7(e)に示すように、鋏本体1の第一の刃体2を一方の挿着溝部9や他方の挿着溝部10に対し挿脱口部17,22から挿入した際、係止舌片24の突起24aが第一の刃体2の外面に圧接されて櫛部材7の抜け止めになるようにしてもよい。
【0041】
・ 櫛部材において櫛歯群を取付部群の周方向へ三以上並設し、一つの櫛歯群を第一の刃体の刃縁部に並べる。
・ 櫛部材において両刃体の開閉方向を含む面上で三以上の櫛歯群を放射状に並設し、一つの櫛歯群を第一の刃体の刃縁部に並べる。
【0042】
・ 櫛部材において両櫛歯群を第一の刃体の刃縁部の延設方向に沿って並設し、一つの櫛歯群を第一の刃体の刃縁部に並べる。
・ 櫛部材の櫛歯群において、第一の刃体の刃縁部の延設方向に対し各櫛歯の延設方向がなす角度や、各櫛歯の長さや、各櫛歯の太さや、各櫛歯の間隔を刃縁部の延設方向に沿って変化させる。
【0043】
・ 図4(c)及び図7(c)に示すように両挿着溝部9,10において第一の刃体2で刃縁部2aと背縁部2bとを結ぶ内外両面間中心面をZとした場合、その中心面Zが各櫛歯27,29から離れる側へ傾斜するように両挿着溝部9,10の内面形状を変更する。それにより各櫛歯27,29が撓んでも第一の刃体2の刃縁部2aや第二の刃体3に接触しにくくなる。
【0044】
・ 櫛部材に設けた一つの取付部に対し複数の櫛歯群を回動可能または摺動可能に支持し、第一の刃体に対する各櫛歯群の位置を変更可能にする。
・ 櫛部材に設けた一つの取付部に対し一つの櫛歯群を傾動可能に支持し、第一の刃体の刃縁部の延設方向に対する各櫛歯の傾斜角度を変更可能にする。
【0045】
・ 櫛部材において同じ性質を有する複数の櫛歯群を設け、一つの櫛歯群を利用した後は他の櫛歯群を予備として利用する。
・ 櫛部材7の両櫛歯群11,12において、両側枠部26,28の間隔を約23mm、各櫛歯27,29の長さを約9mmに設定し、これらを用途に応じて変更することができる。
【0046】
・ 櫛部材7において第一の刃体2に対する取付部としては、挿着溝部9,10以外に、例えば、第一の刃体に対し着脱可能に吸着される磁石や、第一の刃体の面ファスナーに対し着脱可能に連結される面ファスナーや、第一の刃体に対し着脱可能に螺合される雌ねじまたは雄ねじや、第一の刃体に対し着脱可能に挿着される係止軸または係止孔や、第一の刃体を着脱可能に挟持するクリップ部などであってもよい。
【0047】
・ 複数組の櫛歯群及び取付部からなる櫛部材を、一つの櫛歯群及び取付部からなる一組ごとに易損部で折って分離し、その各組をそれぞれ単独でも利用する。
・ 複数組の櫛歯群及び取付部からなる櫛部材を、一つの櫛歯群及び取付部からなる一組ごとに互いに分離して成形し、その各組をそれぞれ単独で利用したり、その各組を連結部で互いに着脱可能に連結して利用する。
【0048】
・ 前記実施形態では右利き用の鋏本体1とそれに合わせた櫛部材7とを例示したが、左利き用の鋏本体に変更するとともに櫛部材の取付部群や櫛歯群を左利き用に変更してもよい。例えば、右利き用の櫛付き鋏を鏡に写した場合に生じる像の形態を左利き用の櫛付き鋏とする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態にかかる鋏本体の開状態を示す正面図である。
【図2】(a)は本実施形態にかかる櫛部材を示す正面図であり、(b)は同じく背面図であり、(c)は同じく右側面図であり、(d)は同じく左側面図である。
【図3】(a)は櫛部材の両櫛歯群のうち一方の櫛歯群にある挿着溝部を閉状態の鋏本体から取り外した状態を示す分解正面図であり、(b)はその挿着溝部を閉状態の鋏本体に取り付けた状態を示す組付正面図であり、(c)は(b)の組付背面図である。
【図4】(a)は図3(b)の拡大組付正面図であり、(b)は図3(c)の拡大組付背面図であり、(c)は(a)のA1−A1線拡大断面図であり、(d)は(a)のA2−A2線部分拡大断面図であり、(e)は別例にかかる部分拡大断面図である。
【図5】(a)は図3(b)の鋏本体を開状態にした拡大組付正面図であり、(b)は図3(c)の鋏本体を開状態にした拡大組付背面図である。
【図6】(a)は櫛部材の両櫛歯群のうち他方の櫛歯群にある挿着溝部を閉状態の鋏本体から取り外した状態を示す分解正面図であり、(b)はその挿着溝部を閉状態の鋏本体に取り付けた状態を示す組付正面図であり、(c)は(b)の組付背面図である。
【図7】(a)は図6(b)の拡大組付正面図であり、(b)は図6(c)の拡大組付背面図であり、(c)は(a)のB1−B1線拡大断面図であり、(d)は(a)のB2−B2線部分拡大断面図であり、(e)は別例にかかる部分拡大断面図である。
【図8】(a)は図6(b)の鋏本体を開状態にした拡大組付正面図であり、(b)は図6(c)の鋏本体を開状態にした拡大組付背面図である。
【図9】(a)(b)はそれぞれ本実施形態にかかる櫛付き鋏の使用状態図である。
【図10】(a)(b)はそれぞれ本実施形態にかかる櫛付き鋏の使用状態図である。
【符号の説明】
【0050】
1…鋏本体、2…第一の刃体、2a…刃縁部、3…第二の刃体、3a…刃縁部、7…櫛部材、9,10…取付部としての挿着溝部、11,12…櫛歯群、27,29…櫛歯、R11,R12…櫛歯群の取付状態(位置)、Y…櫛歯の延設方向、X…第一の刃体の刃縁部の延設方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃縁部を有する第一の刃体と刃縁部を有する第二の刃体とを互いに開閉動可能に支持し、櫛歯群を有する櫛部材をこの第一の刃体に取り付けた鋏において、前記櫛部材は互いに性質の異なる複数の櫛歯群を有していることを特徴とする櫛付き鋏。
【請求項2】
刃縁部を有する第一の刃体と刃縁部を有する第二の刃体とを互いに開閉動可能に支持し、櫛歯群を有する櫛部材をこの第一の刃体に取り付けた鋏において、前記櫛部材に複数の櫛歯群を設け、この各櫛歯群のうちいずれかの櫛歯群を第一の刃体の刃縁部に並べることができるように第一の刃体と櫛部材との間に取付部を設けて第一の刃体に対する櫛歯群の位置を変更可能にしたことを特徴とする櫛付き鋏。
【請求項3】
前記櫛部材において取付部は各櫛歯群ごとに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の櫛付き鋏。
【請求項4】
前記櫛部材は互いに性質の異なる複数の櫛歯群を有していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の櫛付き鋏。
【請求項5】
前記櫛部材において各櫛歯群のうちいずれかの特定櫛歯群を第一の刃体の刃縁部に並べた状態とその特定櫛歯群以外の特定櫛歯群を第一の刃体の刃縁部に並べた状態とでこの第一の刃体の刃縁部の延設方向に対するそれらの特定櫛歯群の櫛歯の延設方向を互いに異なるものにすることにより、各櫛歯群間の性質を異なるものにしていることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の櫛付き鋏。
【請求項6】
刃縁部を有する第一の刃体と刃縁部を有する第二の刃体とを互いに開閉動可能に支持し、櫛歯群を有する櫛部材をこの第一の刃体に取り付け、その櫛部材の櫛歯群に第一の刃体の刃縁部を並べるとともに、第一の刃体の刃縁部と第二の刃体の刃縁部とを閉動時に互いに摺接可能にした鋏において、第一の刃体の刃縁部の延設方向に対し櫛歯群の櫛歯の延設方向を傾斜させたことを特徴とする櫛付き鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−212202(P2008−212202A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49954(P2007−49954)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】