説明

櫛形の流れ場を有する燃料電池コンポーネント

燃料電池に使用される一例の流れ場板が複数の入口流路を備える。また複数の出口流路を備える。これらの流路は、少なくとも2つの入口流路が各々の入口流路の第1の側において互いに隣接するように配置される。また、これらの入口流路の第1の側とは反対側となる第2の側において少なくとも1つの出口流路が各々の入口流路に隣接するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛形の流体流路配列を有する燃料電池用の流れ場板に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電力を発生するための電気化学反応を促進するように設計される。燃料電池に要求される一つの機能は、燃料電池を通して反応物を所望のように案内することである。流れ場板は、一般的に、燃料電池の作動時に流体が通流する流路を含む。例えば、固体高分子型燃料電池の触媒層で燃料ガスもしくは空気が利用できるように、これらのガスが流れ場流路に沿って案内される。
【0003】
流れ場流路は、一般的に、平行に配置された複数の流れ場板上に設けられる。一般的な流れ場流路配列は、プレートの片側に複数の入口を有するとともに、その反対側に対応する複数の出口を有する。従来の配列では、流れ場板上のリブが個々の流路を隔てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6416892号明細書
【特許文献2】米国特許第6472095号明細書
【特許文献3】米国特許第6485857号明細書
【特許文献4】米国特許第6780533号明細書
【特許文献5】米国特許第6794077号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
櫛形の流れ場配列を用いることが提案されている。その配列は、流体が一つの流路の入口から流入するが、別の流路の出口から流出する点で従来の流れ場配列とは異なる。図1は、従来技術の一例の流れ場板配列20を概略的に示す。この例では、複数の入口流路22が複数の出口流路24と平行に配置される。矢印26で概略的に示すように、燃料ガスもしくは空気などの選択された流体が入口流路22へと流入して、流路の間のリブ28を含む領域を横切って流れる。入口流路22から出口流路24へと流れる流体は、各入口流路22内におけるほぼ半分の流れが対応する出口流路24へと横切って移動する。換言すれば、各入口流路を流れる流体は、2つの異なる出口流路24へと効果的に分流されて、各入口流路からの流れのほぼ半分ずつがそれぞれ対応する出口流路へと流れる。
【0006】
櫛形の流れ場流路の例が特許文献1〜5に開示されている。こうした配列は性能強化をもたらすが、当業者は常に更なる改善に努めている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
燃料電池に使用される一例の流れ場板が複数の入口流路を備える。また複数の出口流路を備える。これらの流路は、少なくとも2つの入口流路が各々の入口流路の第1の側において互いに隣接するように配置される。これらの入口流路の第1の側とは反対側となる第2の側において少なくとも1つの出口流路が各々の入口流路に隣接するように配置される。
【0008】
燃料電池に使用される一例のアセンブリが、複数の入口流路と、複数の出口流路と、を有する流れ場板を含む。これらの流路は、少なくとも2つの入口流路が各々の入口流路の第1の側において互いに隣接するように配置される。これらの入口流路の第1の側とは反対側となる第2の側において少なくとも1つの出口流路が各々の入口流路に隣接するように配置される。一部の例は親水層を含み、この親水層は、互いに隣接した入口流路の間の少なくとも選択された領域において水分を輸送するように配置される。
【0009】
一例の燃料電池の作動方法は、複数の入口流路に流体を案内することを含む。入口流路の各々からの流体はただ一つの出口流路へと移動する。これらの流路は、少なくとも2つの入口流路が各々の入口流路の第1の側において互いに隣接するように配置される。これらの入口流路の第1の側とは反対側となる第2の側において少なくとも1つの出口流路が各々の入口流路に隣接するように配置される。
【0010】
開示の実施例の様々な特徴および利点が以下の詳細な説明から当業者にとって明らかとなるであろう。詳細な説明に添付の図面を以下のように簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術の櫛形の流れ場配列を概略的に示す図である。
【図2】本発明の実施例に従って設計された櫛形の流れ場配列を概略的に示す図である。
【図3】図2の実施例に一致した一例の配列を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
燃料電池に使用される流れ場板30を図2に概略的に示す。複数の入口流路32が互いに平行に配置される。図から分かるように、少なくとも2つの入口流路32が各々の入口流路の片側において互いに隣接するように配置される。これらの入口流路32の第1の側とは反対側となる第2の側において少なくとも1つの出口流路34が各々の入口流路32に隣接している。
【0013】
図示の例では、出口流路34のうちの2つがその間に入口流路32を有することなく互いに隣接している。互いに隣接する入口流路32はその間に出口流路34を有していない。
【0014】
図示の例では、流れ場板30が、流れ場流路を画定する複数のリブを含む。この例では、端部リブ36が、図示の流れ場板30の側縁部の近傍にある出口流路34の片側を画定する。互いに隣接する入口流路32の間にリブ38が配置される。互いに隣接する出口流路34の間にリブ40が設けられる。入口流路32と隣接する出口流路34との間にリブ42が設けられる。リブ42は入口流路32から出口流路34へと流体を移動させるように周知の方法で配置される。
【0015】
図2の例における流体の流れを矢印50で概略的に示す。図からも分かるように、一つの入口流路内の全ての流れが単一の出口流路34のみに移動する。これは入口流路からの流れが2つの出口流路へと効果的に分流される従来の櫛形流れ場流路配列とは異なる。図2の例では、各入口流路32は、それぞれに対応する専用の単一の出口流路34を有していると見ることができる。
【0016】
図2の配列では、入口流路32と出口流路34との間の基体を通して局所的に高い流量が与えられる(例えば、リブ42により占有される領域に亘って)。一部の例では、従来の配列(例えば、図1)に比べて出口流路34のガス速度を上昇させるようにさらに高い流量が用いられる。例えば、入口よりも出口のほうが少なく、各出口に複数の入口が対応する場合、ガス速度は速くなる。これにより、例えば固体板システムにおける生成水の送り出しが促進される。
【0017】
流れ場板30の横方向を横切るように見た場合の図2の例は、2つの隣接した入口流路32の後に2つの隣接した出口流路34が続く繰り返しのパターンを含む。図2の例は流れ場板に設けられる流路の総数を示すものではない。説明の目的上、少なくとも一部の例の流路を示している。こうした繰り返しのパターンは、(例えば、入口流路と出口流路とが互い違いになる図1に示す)従来の配列とは異なる。
【0018】
この例では、第1の量の流体が入口流路と出口流路との間のリブを横切って移動する。第2の、少量の流体が互いに隣接する入口流路32の間のリブを横切って移動する。一部の実施例では、隣接する入口流路32の間のリブを横切る流体の移動はさほど見られないであろう。一部の実施例では、こうしたリブを横切る流体の移動は全くない。
【0019】
図2の矢印50によって示される流れパターンでは、隣接する入口流路の間の基体と、隣接する出口流路の間の基体と、を局所的に通る流量が生じないため、流れ場板30に沿って流れが停滞しうる領域が生じる。図3から分かるように、入口流路32のうち隣接するもの同士の間のリブ38に近接して停滞領域52が概略的に示される。また停滞領域52は、隣接する出口流路34の間のリブ40に沿って近接するように存在する。
【0020】
一例では、停滞領域52は、例えば燃料電池アセンブリ内部での水の分配を容易にするようにこれらの領域を通して水分を吸い上げるように用いられる。図3では、流れ場板30に隣接する親水層60が、例えば、流れ場板の出口流路34の出口側から、流れ場板の反対側の、入口ガスが入口流路32に供給される側へと向かう方向に、水分を輸送するように配置される。周知のように、乾燥空気は燃料電池のカソード側の入口流路から供給される。一般的により多くの湿潤空気を含む出口側から停滞領域52に沿って入口側へと水分(すなわち生成水)を移動させることは、例えば固体板のドライアウトを防ぐのに有用である。
【0021】
一例では、親水層60は停滞領域52に沿って水分を吸い上げるもしくは輸送するように構成されるガス拡散層である。
【0022】
上記の記述は本質的に限定的なものではなく例示に過ぎない。本発明の真意を逸脱することなく開示の実施例に対する種々の変形や修正が当業者にとって明らかとなるであろう。本発明に付与される法的保護の範囲は付記の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入口流路と、
複数の出口流路と、
を備えた燃料電池用の流れ場板であって、
上記流路は、
少なくとも2つの入口流路が各々の入口流路の第1の側において互いに隣接し、
これらの入口流路の上記第1の側とは反対側となる第2の側において少なくとも1つの出口流路が各々の入口流路に隣接するように、
配置されている流れ場板。
【請求項2】
前記入口流路の各々に流入する流体は、前記隣接する1つの出口流路のみに流入することを特徴とする請求項1に記載の流れ場板。
【請求項3】
前記出口流路の少なくとも2つが互いに隣接することを特徴とする請求項1に記載の流れ場板。
【請求項4】
前記流路のうち少なくとも一部の流路は、
第1の出口流路が第1の入口流路と隣接し、前記第1の入口流路が第2の入口流路と隣接し、前記第2の入口流路が第2の出口流路と隣接し、前記第2の出口流路が第3の出口流路と隣接し、前記第3の出口流路が第3の入口流路と隣接し、前記第3の入口流路が第4の入口流路と隣接し、前記第4の入口流路が第4の出口流路と隣接する、
連続的なパターンで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の流れ場板。
【請求項5】
前記流路の間に少なくとも1つのリブ部を備えるとともに、前記入口流路の各々に流入する第1の量の流体は、対応するリブ部に相当する領域を横切って前記出口流路へと移動し、
前記互いに隣接した入口流路の間の前記リブ部に相当する領域を横切って流れる第2の少量の流体流が存在することを特徴とする請求項1に記載の流れ場板。
【請求項6】
前記互いに隣接した出口流路の間の前記リブ部に相当する領域を横切って流れる流体流は存在しないことを特徴とする請求項5に記載の流れ場板。
【請求項7】
前記互いに隣接した入口流路の間の前記リブ部に相当する領域が、水分の輸送に用いられることを特徴とする請求項5に記載の流れ場板。
【請求項8】
複数の入口流路と、複数の出口流路と、を備えた流れ場板であって、前記流路は、少なくとも2つの入口流路が各々の入口流路の第1の側において互いに隣接し、これらの入口流路の前記第1の側とは反対側となる第2の側において少なくとも1つの出口流路が各々の入口流路に隣接するように配置されている、流れ場板と、
前記互いに隣接した前記入口流路の間の少なくとも選択された領域において水分を輸送するように配置された親水層と、
を備えた燃料電池用アセンブリ。
【請求項9】
前記流路の間に少なくとも1つのリブ部を備えるとともに、前記入口流路の各々に流入する流体は、前記リブ部のうちの1つに相当する領域を横切って、前記対応する出口流路へと移動し、かつ、
前記互いに隣接した入口流路の間の前記リブ部に相当する領域を横切って流れる流体流は存在しないことを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用アセンブリ。
【請求項10】
前記互いに隣接した出口流路の間の前記リブ部に相当する領域を横切って流れる流体流は存在しないことを特徴とする請求項9に記載の燃料電池用アセンブリ。
【請求項11】
前記親水層が、前記互いに隣接した入口流路の間の前記リブ部に相当する領域において水分の少なくとも一部を輸送するように配置されることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池用アセンブリ。
【請求項12】
前記親水層が、前記互いに隣接した出口流路の間の前記リブ部に相当する領域において水分の少なくとも一部を輸送するように配置されることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池用アセンブリ。
【請求項13】
前記親水層が、ガス拡散層を備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用アセンブリ。
【請求項14】
前記入口流路の各々に流入する流体は、前記隣接する1つの出口流路のみに流入することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用アセンブリ。
【請求項15】
前記出口流路の少なくとも2つが互いに隣接することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項16】
前記流路のうち少なくとも一部の流路は、
第1の出口流路が第1の入口流路と隣接し、前記第1の入口流路が第2の入口流路と隣接し、前記第2の入口流路が第2の出口流路と隣接し、前記第2の出口流路が第3の出口流路と隣接し、前記第3の出口流路が第3の入口流路と隣接し、前記第3の入口流路が第4の入口流路と隣接し、前記第4の入口流路が第4の出口流路と隣接する、
連続的なパターンで配置されていることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項17】
複数の入口流路と、複数の出口流路と、を備えた流れ場板を有する燃料電池の作動方法であって、
上記流路は、
少なくとも2つの入口流路が各々の入口流路の第1の側において互いに隣接し、
これらの入口流路の上記第1の側とは反対側となる第2の側において少なくとも1つの出口流路が各々の入口流路に隣接するように、
配置されているものにおいて、
前記複数の入口流路に流体を案内し、
前記入口流路の各々から、それぞれ、ただ1つの前記出口流路へと前記流体を移動させるステップを備えた、燃料電池の作動方法。
【請求項18】
前記流れ場板の近傍で、前記互いに隣接した入口流路の間の領域に沿って水分を案内するステップを備えることを特徴とする請求項17に記載の燃料電池の作動方法。
【請求項19】
前記流れ場板の近傍で、前記互いに隣接した出口流路の間の領域に沿って水分を案内するステップを備えることを特徴とする請求項17に記載の燃料電池の作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−518415(P2011−518415A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504982(P2011−504982)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060777
【国際公開番号】WO2009/128832
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(500477447)ユーティーシー パワー コーポレイション (138)
【Fターム(参考)】