説明

欠陥修正装置及び欠陥修正方法

【課題】多層構造の上下間での層間ショート欠陥に対する欠陥修正工程の作業効率を著しく向上させつつ、欠陥修正の品質を向上させる。
【解決手段】欠陥修正装置が備える欠陥検出部により多層基板における繰り返しパターン内の欠陥を検出し、欠陥検出部で検出された欠陥が層間ショート欠陥の発生が想定される領域に重なる場合、欠陥修正装置が備える制御部301により層間ショート欠陥用の欠陥修正手法に対応するオブジェクトを生成する。そして、生成したオブジェクトを利用して欠陥の修正を実行する欠陥修正部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、本発明は、ディスプレイ装置の製造工程で行われる欠陥修正の技術に関する。特にフラットパネルディスプレイ(FPD;Flat Panel Display)のTFT(Thin Film Transistor)基板等の基板上に形成されたデバイスパターンや配線パターンにおける欠陥を修正するのに好適な欠陥修正装置および欠陥修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイ装置として、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや液晶ディスプレイなどの所謂フラットパネルディスプレイが普及している。これらのディスプレイ装置は、薄膜トランジスタ(TFT)やキャパシタなどの素子、及びこれらの素子に電気的に連結された複数の配線(例えば信号配線や電位供給配線)などの様々な導電部材を含む配線基板によって構成される。
【0003】
このディスプレイ装置を構成する配線基板の量産においては、例えば異物の存在によって、本来互いに離れて設けられる配線や素子が電気的に連結された短絡や、本来連続的に設けられる配線や素子が内部で互いに分離された断線などの、所謂欠陥が生じることがある。量産時の欠陥の発生は、ディスプレイ装置が大型化するにつれ、その駆動用の配線基板となるTFT基板に生じる欠陥箇所が増加して歩留まりの低下を招くため、欠陥箇所を修正(リペア)する欠陥修正工程が必須となっている。
【0004】
このような短絡や断線などの欠陥に対する修正手法としては、例えばレーザ光照射による短絡箇所の切断を行う手法(レーザリペア)の他、レーザCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法による断線箇所の結線などが挙げられる。
【0005】
例えば、本出願人より、基板上の単位画素(配線部)を複数の領域に区分し、領域ごとに適切な修正手法を選択して欠陥を修正する欠陥修正方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−159930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のように、単純に欠陥画像(被検査画像)と基準パターン画像(参照画像)との差画像を欠陥範囲として修正を行った場合、その欠陥の位置や種類、基板の欠陥が存在する箇所の状態等を把握していないと修正に失敗する可能性がある。なぜなら欠陥修正手法の選定や欠陥に照射するレーザ光のパルス周期、レーザパワー、レーザ光のスポット形状や発振時間等の各パラメータの選定を作業員のスキルや経験に頼っており、それによってその選定結果が異なってくるからである。
【0008】
ディスプレイ用のTFT基板などの場合には、各画素に対応する配線部内に、信号配線や走査配線のみならず複数の電位供給配線やその他の電気素子が存在するため、画素内の配線密度の増大化や画素構造の複雑化が著しい。
例えば、同一の配線に接して生じている欠陥や、配線部内で略同位置に生じている欠陥等の修正においても、周囲に位置している部材の種類や有無に応じてそれぞれ異なる欠陥修正手法を選定することが必要となる。また、例えば、レーザ光照射による短絡箇所の切断を検討する場合、熱拡散によって周囲の薄膜トランジスタ(TFT)等に変質が生じることを回避する必要がある。
特に、TFT基板の単位画素(配線部)のキャパシタにおけるような上下間での層間ショート欠陥は、配線部内でのキャパシタが有する面積が大きいことに加え、欠陥自体のサイズも小さいため発生率が高い。しかし、このような有効な修正を行う欠陥修正手法が一般的に確立されていない。そのため、レーザ光照射条件(レーザ加工パラメータ)の設定に手間と時間がかかり作業効率が低下する。
【0009】
パネル製造ラインの欠陥修正工程では、熟練のオペレータがその場で欠陥を確認して欠陥修正手法を決定し、レーザリペア等の欠陥修正作業を行うため、タクトタイムがかかりすぎたりする。それゆえ、欠陥修正工程の作業速度がライン全体の量産速度に追いついていないという問題が生じる。そこで多くのパネル製造工場では、複数台の欠陥修正装置(リペア機)を購入し、各欠陥修正装置を担当するオペレータを増員することで、この問題を回避している。
【0010】
しかしながら、このような回避方法を採用した場合、欠陥修正装置や作業者数の著しい増加により、装置コストや作業者の工数費が膨らみ、利益が著しく低下するという深刻な問題が発生する。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、多層構造の上下間での層間ショート欠陥に対する欠陥修正工程の作業効率を著しく向上させつつ、欠陥修正の品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願開示は、該欠陥修正装置が備える欠陥検出部により多層基板における繰り返しパターン内の欠陥を検出する。次に、欠陥検出部で検出された欠陥が層間ショート欠陥の発生が想定される領域に重なる場合、欠陥修正装置が備える制御部により層間ショート欠陥用の欠陥修正手法に対応するオブジェクトを生成する。そして、生成したオブジェクトを利用して欠陥の修正を実行する欠陥修正部を制御する。
さらに生成したオブジェクトについて欠陥修正手法の実行の可否を判定し、生成したオブジェクトに基づく欠陥修正手法が不適切な場合、欠陥修正を行わないことが好ましい。
【0013】
本願開示によれば、従来、欠陥修正手法の設定が困難で欠陥修正の自動化が不可能であった層間ショート欠陥の修正の自動化が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本願開示によれば、層間ショート欠陥に対する欠陥修正工程の作業効率を著しく向上させつつ、欠陥修正の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】検査対象とする基板の構成例を示す図である。
【図2】図1に示した基板内の繰り返しパターン区域を示す図である。
【図3】フラットパネルディスプレイの配線基板の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】図3の欠陥検査工程から欠陥修正工程までの具体的な流れを示した図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る欠陥修正装置の構成例を示す図である。
【図6】図5に示した制御部の内部構成を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る欠陥修正工程を示すフローチャートである。
【図8】繰り返しパターン(配線部)の例を示す図である。
【図9】欠陥画像とテンプレートの例を示す図である。
【図10】図8に示した配線パターンのレイヤ構造(層構造)を示す透視図である。
【図11】リーク欠陥(層間ショート欠陥)の一例を示す断面図である。
【図12】従来のZappingによる同層ショート欠陥に対する欠陥修正の説明図である。
【図13】テンプレートを用いて同層ショート欠陥を修正する場合についての説明図である。
【図14】層間ショート欠陥の修正手法を示す図であり、Aは上層Zapping、Bは全層Zappingによる場合である。
【図15】レーザ照射領域の選択を説明するための図であり、Aは囲みZappingについて、Bは静止Zappingについて示している。
【図16】繰り返しパターンの画像についてレイヤが存在しない領域をラベル化した例を示す図である。
【図17】囲みZapping形式のリペアオブジェクトの設定イメージと、オブジェクトの配置の可否を確認するためのパラメータの説明に供する図である。
【図18】囲みZappingを利用したリペアオブジェクトの影響による配線の分断の例を示す図である。
【図19】囲みZapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形のプロット線により配線の分断を判定する例を示す図である。
【図20】囲みZapping形式のリペアオブジェクトがリーク判定を行うノード領域からはみ出している例を示す図である。
【図21】囲みZapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形のプロット線がレーザ照射禁止領域に干渉する例を示す図である。
【図22】囲みZapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形のプロット線がノード領域以外の領域に干渉する例を示す図である。
【図23】囲みZapping形式のリペアオブジェクトによる欠陥修正の実行に伴い減少するノード領域の面積の定義を説明するための図である。
【図24】断線と判断することが適切でない欠陥を断線と判断する断線と判定する例を示す図である。
【図25】囲みZapping形式の断線ではない場合に断線と判定する例を示す図である。
【図26】囲みZapping形式のリペアオブジェクトの一部を最適化したオブジェクトの例を示す図である。
【図27】囲みZapping形式のリペアオブジェクトの一部を更に最適化したオブジェクトの例を示す図である。
【図28】囲みZapping形式のリペアオブジェクトを最適化する手法を説明するための図(1)である。
【図29】囲みZapping形式のリペアオブジェクトを最適化する手法を説明するための図(2)である。
【図30】囲みZapping形式のリペアオブジェクトを最適化する手法を説明するための図(3)である。
【図31】リーク欠陥とノード領域が重なっている部分を含む外周を有するオブジェクトを使用する例を示す図である。
【図32】静止Zapping形式のリペアオブジェクトと該リペアオブジェクトを生成するためのパラメータの説明に供する図である。
【図33】静止Zapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形のプロット線がレーザ照射禁止領域に干渉する例を示す図である。
【図34】静止Zapping形式のリペアオブジェクトがリーク判定を行うノード領域からはみ出している例を示す図である。
【図35】静止Zapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形のプロット線がノード領域以外の領域に干渉する例を示す図である。
【図36】静止Zapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形のプロット線により配線の分断を判定する例を示す図である。
【図37】静止Zapping形式のリペアオブジェクトによる欠陥修正の実行に伴い減少するノード領域の面積の定義を説明するための図である。
【図38】電気的な導通検査でリーク欠陥と判定される例を示す図である。
【図39】図38のリーク欠陥に従来のテンプレートを適用した例を示す図である。
【図40】本発明の一実施の形態に係るリーク欠陥の欠陥修正手法(リペアオブジェクト)を取得する手順一例を示すフローチャート(1)である。
【図41】本発明の一実施の形態に係るリーク欠陥の欠陥修正手法(リペアオブジェクト)を取得する手順の一例を示すフローチャート(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。説明は下記の順序で行う。なお、各図において共通の部分には、同一の符号を付して重複する説明を割愛もしくは簡略化する。
1.一実施の形態(リーク欠陥のリペアオブジェクトを自動生成した例)
【0017】
以下に述べる実施の形態の例は、本発明の好適な具体例である。そのため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の技術範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる処理順序および各パラメータの数値的条件等は好適例に過ぎず、また説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0018】
<1.一実施の形態>
[概要]
本実施の形態では、目的とする配線基板がディスプレイ装置を構成する場合について、つまりTFT基板等からなる配線基板を構成する多数の配線部をディスプレイ装置の画素に対応して2次元マトリクス状に多数形成する場合について、説明を行う。
【0019】
図1は、本発明において修正対象とするフラットパネルディスプレイの製造過程における基板の例を示すものである。図2は、図1に示した基板内の繰り返しパターン区域を示す図である。
この例では、共通の基板3に4台分のフラットパネルディスプレイの配線基板1が形成されている。配線基板1は、後述する繰り返しパターンを有するエリア(繰り返しパターン区域6、図2参照)、配線5を介して繰り返しパターンから外部へ接続する周辺回路4のエリア(周辺回路区域)、繰り返しパターン区域6と周辺回路区域の境となる最外周のエリア(最外周区域)に分けられる。繰り返しパターン区域6と最外周区域は、配線部2をフラットパネルディスプレイの画素に対応して2次元マトリクス状に形成したものである。繰り返しパターン区域6は、図2に示すように、配線部2が繰り返し形成された領域のうちの最外周区域を除いた部分である。
【0020】
図3は、フラットパネルディスプレイの配線基板の製造工程、すなわち配線パターン形成工程から、欠陥検査工程を経て、欠陥修正工程までの流れを示している。
本実施の形態においては、まず、基板3上に、走査配線と、層間絶縁膜と、信号配線及び電位供給配線とを、目的とする配線部2の主要構成として積層形成することによって、配線部形成工程を実施する(ステップS1,S2,S3)。また、周辺回路4及び配線5を形成して、周辺回路4と最外周区域の配線部2を接続する。この周辺回路4と配線5の形成工程は、上記ステップS1〜S3における走査配線、層間絶縁膜、信号配線及び電位供給線を形成する工程の前後いずれでもよい。
【0021】
続いて、配線部形成工程を経て流れてくる基板3に対し、多数の配線部2を光学的に観察して欠陥配線部2aを検出する光学式検査工程を実施する(ステップS4)。欠陥配線部2aを検出すると、基板3における当該欠陥配線部2aの位置情報が欠陥修正装置のコンピュータ(制御部)に送られる。この光学式検査工程においては、図1に示した欠陥配線部2aを含む画像(欠陥画像)から、欠陥配線部2aの存在のみならず、欠陥(パターン欠陥、異物など)及びその位置をはじめとする所謂パターン欠陥分類情報を特定する。その他、欠陥のサイズや種類(材料や状態など)等の特徴をも特定する。
【0022】
また、光学式検査工程では発見できない、表面以外に生じた欠陥を電気式検査工程により検出する(ステップS5)。
【0023】
そして、欠陥修正工程では、当該欠陥位置情報を読み込むことにより、欠陥修正装置のステージが制御されて欠陥位置に移動し、観察系で欠陥を確認し、レーザ光照射等により欠陥を修正する(ステップS6)。基板3の配線基板1に発生した欠陥は、それぞれのエリアで適切な修正方法は異なってくる。この工程が終了すると、TFT工程(配線基板の製造工程)が完了する。
【0024】
過去の修正データを呼び出せるように構成することで修正工程を大幅に効率化している。さらに、欠陥の位置や大きさ、種類に見合った適切な修正データが選択されることで自動化が難しかった欠陥に対する修正工程の自動化を可能としている。
【0025】
図4は、図3に示した欠陥検査工程から欠陥修正工程までの具体的な流れをブロック図に示したものである。
配線部形成工程を経た基板3を、光学式検査機11に移動し(第1工程)、光学式検査を実施して欠陥の特定を行い、検査結果21を欠陥情報管理システム12に出力する(第2工程)。また、基板3を電気式検査機13に移動し(第3工程)、電気式検査を実施して欠陥の特定を行い、検査結果22を欠陥情報管理システム12に出力する(第4工程)。欠陥情報管理システム12は、いずれかもしくは両方の欠陥情報を関連付けた欠陥情報を生成し(第5工程)、欠陥情報ファイル24としてメモリに記録する。一方、電気式検査機13からリペア機14へ基板3が移動する(第6工程)とともに、リペア機14は欠陥情報ファイル24を欠陥情報管理システム12から受け取る。
【0026】
リペア機14は、欠陥情報ファイル24の内容に基づいて自動的に適切なリペア手法(欠陥修正手法:テンプレート(リペアオブジェクト))を選択してリペアを行い、リペア結果25(データファイル、リペア後の画像等)を再度欠陥情報管理システム12へ出力する(第7工程)。このとき、基板3とともに受け取る欠陥情報ファイル24には、基板の層構造の情報も含まれる。
【0027】
その後必要であれば、基板3を電気式検査機13へ移動し(第8工程)、電気式検査でリペア後の欠陥の状態を再チェックし、必要であれば再度欠陥情報を欠陥情報管理システム12へ出力する(第9工程)。そして、欠陥情報を欠陥情報管理システム12経由でリペア機14に送るとともに、基板3をリペア機14に移動させ(第10工程)、再度リペアを行うことも可能である。
【0028】
[欠陥修正装置の構成例]
図5に、配線基板に対して欠陥修正工程を実行する欠陥修正装置(リペア機14に相当)の一例の構成図を示す。
本実施の形態に係る欠陥修正装置300は、レーザ光照射により短絡箇所を切断する所謂レーザリペア装置の例であるが、レーザCVD法などの配線の結線処理を行える装置(例えば、特開2008−159930号公報の図5を参照)に適用することも可能である。この欠陥修正装置300は、対物レンズ308と基板3との間にレーザCVD法を実施できる加工装置を備えており、それについては同公開公報の図5,図6とその説明文に詳細な構成が記載されている。
【0029】
欠陥修正装置300は大きく分けて、制御部301、欠陥修正部302および欠陥検出部303から構成されている。
【0030】
制御部301は、欠陥情報管理システム12と通信インタフェース(図示略)等を介して接続するとともに、ディスプレイ327およびキーボード等の入力装置328と接続している。制御部301は、予め欠陥検査装置400によって行われた欠陥検査の結果(欠陥情報)を、欠陥情報管理システム12を介して取得し、該欠陥情報に基づいて最適なテンプレートを選択する。そして、欠陥の修正を実施する欠陥修正部302および欠陥の詳細な観察を実施する欠陥検出部303を制御する。この制御部301には、MPU(Micro Processing Unit)やパーソナルコンピュータ等のコンピュータ(演算処理装置)が適用できる。
【0031】
制御部301では、欠陥修正部302のステージ制御部307にコマンドを送り、基板3が搭載されたXYステージ305を動かし、欠陥箇所が存在する画素が対物レンズ308の真下になるように調整する。次にフォーカスステージ310を動かして対物レンズ308と基板3の間隔を調整し、欠陥検出部303の撮像装置317で光学レンズ314gを透過した光の合焦点画像が撮像できるようにする。なお、ここではハーフミラー315a,315b、光学レンズ314a、及びランプ309による落射照明により、適切な明るさを持つ画像が得られるようにしている。撮像された欠陥箇所が含まれる画像(欠陥画像)は、欠陥画像メモリ318に一旦保存される。ここでいう画素は、図1に示した欠陥配線部2aに相当する。
【0032】
次に、制御部301は、ステージ制御部307にコマンドを送ってXYステージ305を動かし、欠陥箇所の画素と全く同じ画素パターンとなる位置まで移動した位置が対物レンズ308の真下になるようにする。そして、欠陥のない画像(参照画像)を撮像し、参照画像メモリ319に保存する。ここでいう画素は、図1に示した配線部2に相当する。
【0033】
欠陥抽出部320は、欠陥画像メモリ318に保存された欠陥画像と、参照画像メモリ319に保存された参照画像とを位置合わせした後に差画像(欠陥領域画像)を生成することで、欠陥部位の画像を抽出する。そして、抽出した欠陥部位の画像を詳細位置情報抽出部321及び特徴抽出部322に出力する。なお、差画像(欠陥領域画像)は制御部301にも出力する。
【0034】
詳細位置情報抽出部321は、抽出された欠陥の基板3上における正確な位置をXYステージ305の現在位置及び欠陥画像から算出し、その情報を修正方法生成部326に送る。
【0035】
特徴抽出部322は、欠陥抽出部320で抽出された欠陥の形態及び種類等を特定するための情報である欠陥の色、大きさ、コントラスト、形状等の各種特徴情報を数値化して制御部301へ出力する。
【0036】
そして制御部301は、詳細位置情報抽出部321及び特徴抽出部322から取得した詳細位置情報および特徴情報に基づいて、詳細を後述する欠陥修正情報(リペアレシピ情報)を修正手法データベース325から読み出す。この欠陥修正情報によって、欠陥修正部302の修正機構部304における各ユニットの動作が規定される。
具体的には、例えば詳細位置情報抽出部321からの詳細位置情報に基づいて、欠陥箇所が配線基板のどの位置および状態で存在し、かつ、どのようなレイヤ情報を含むかを判定し、欠陥位置に適した欠陥修正処理が実施されるような制御を実行する。
【0037】
レイヤ情報は、多層基板を構成するレイヤ個別の情報である。レイヤ情報には、例えばレイヤの重なっている順番を示すレイヤID、レイヤ名、レイヤ内のラベルの数などの情報が含まれる。また、該当レイヤを構成する個別の領域(ラベル)の情報を示すものとしてラベル情報がある。ラベル情報には、該当レイヤ内のラベルを識別するためのラベルID、該当ラベルが含まれるレイヤを示すレイヤID、が含まれる。
【0038】
さらに、制御部301は、詳細は後述するように、生成した欠陥修正情報に基づく修正手法(テンプレート(リペアオブジェクト))を、欠陥画像と重ね合わせてディスプレイ327に表示する。なお、制御部301は、状況に応じて位置や特徴等の欠陥情報に基づき、後述する欠陥修正情報のリペアオブジェクトの一部を補正(最適化)する機能を持つ。また、一つの欠陥修正情報には複数の修正手法が含まれることもある。
【0039】
作業員はディスプレイ227に表示された修正手法を見て問題があると判断すれば、例えばキーボートやマウス等の入力装置328(入力部)を操作して別の修正手法を選択することもできるし、修正手法(欠陥修正情報)の一部又は全部を変更することもできる。更に修正手法データベース325から複数の欠陥修正手法が読み出された場合、その複数の欠陥修正手法をディスプレイ327に表示して作業員に選択を促す。そして、作業員が入力装置328を操作することにより選択された欠陥修正手法に従い、欠陥修正を行う。
【0040】
制御部301は、入力装置328から入力された操作信号を受信すると、欠陥修正手法の選択や変更の履歴を、修正手法データベース325に記録する。修正手法データベース325に蓄積された修正手法は、次回以降の欠陥修正に利用される。
【0041】
欠陥修正手法が決定されると、制御部301はその欠陥修正手法に従って、修正機構制御部316にコマンドを送り、修正機構部304内の各ユニットを動作させ、欠陥の修正を行う。修正機構部304は、レーザ光源313から照射されたレーザビームを光学レンズ314b,314cにて補正した後に、可変スリット312を通過させることにより、照射サイズ、角度を変更できるようにしてある。
【0042】
可変スリット312は、例えば、XY−θスリットと呼ばれるもので、長方形のX、Y方向の開口長と、回転角θが変更できるスリットであり、修正機構制御部316からの駆動信号により駆動できるものとする。
【0043】
可変スリット312によって照射形状を整形されたレーザビームは、光学レンズ314dを通り、ガルバノミラー311a,311bで反射される。ガルバノミラー311a,311bは、2次元に角度可変なミラーであり、修正機構制御部316の制御に従って駆動することで、XYステージ305を動かさずに、対物レンズ308の視野範囲内でレーザビームの光軸、すなわち照射位置を調整することができる。
【0044】
このような可変スリット312、ガルバノミラー311a,311bを備える欠陥修正装置300は、欠陥に対し十分な位置精度を持ってレーザビーム等を照射できるため、精度よくパターン欠陥の修正が可能となる。
【0045】
そして、ガルバノミラー311a,311bで反射されたレーザビームは、各種光学レンズ314e,314fを透過し、ハーフミラー315aで反射した後に、対物レンズ308を介して、基板3に照射され、欠陥修正が行われる。
【0046】
上記欠陥検査装置400は、欠陥を探索する方法として光学式検査機を使えるため、導通状態が正常であるパターン欠陥に対しての修正が可能となる。
【0047】
制御部301についてさらに詳細に説明する。
図6は、制御部301の内部構成を示したブロック図である。制御部301は、入出力部351、画像処理部352、欠陥判定部353、リペアオブジェクト生成部354、囲みZapping最適化部355、リペアオブジェクト判定部356、コメント生成部357、テンプレート選定部358、リペア除去面積演算部359、及びメモリ360を備えている。
【0048】
入出力部351は、外部と情報の入力および出力を行うものである。画像処理部352は、配線パターン画像にリペアオブジェクトを合成する等の画像合成や二値化などの画像処理を行うものである。欠陥判定部353は、欠陥画像と参照画像(良品画像)から欠陥の種類や位置、領域、大きさ等を簡易に判定するものである。リペアオブジェクト生成部354は、囲みZapping形式又は静止Zapping形式のリペアオブジェクトを生成するものである。囲みZapping最適化部355は、欠陥領域の位置や大きさ等に応じて囲みZapping形式のリペアオブジェクトを最適化するものである。
【0049】
さらに、リペアオブジェクト判定部356は、自動生成されたリペアオブジェクトが繰り返しパターンの回路に与える影響、例えば不正な領域に重ならないか、断線を起こしていないか等を判定するものである。コメント生成部357は、ディスプレイ227に表示するコメントの内容を生成するものである。テンプレート選定部358は、欠陥判定部353によりリーク欠陥が発生するノード領域に欠陥領域が重ならないと判定された場合に、最適なテンプレートを選定するものである。リペア除去面積演算部359は、修正に使用されるリペアオブジェクトの候補のうち、自動生成したリペアオブジェクトすべての除去面積を演算するものである。メモリ360は内部メモリであり、例えば半導体メモリ等の不揮発性の記憶手段が適用される。各処理部の詳細な機能・動作については後述する。
【0050】
[欠陥修正工程]
欠陥修正装置300による欠陥修正工程について、上述した構成からなる欠陥修正システムの一連の動作を説明する。図7は、欠陥修正処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【0051】
ステップS11:パラメータのセット
欠陥修正装置300の初期化設定を行う。すなわち、欠陥修正装置300に修正を行うための基本情報を設定する。
パラメータは、具体的には、修正対象となる基板3内における配線部2の数と配置、パターンの数、配置、アライメントマーク位置等の上記基板3に関わる基礎情報(デバイス情報)である。また、自動で修正を行う対象となる欠陥の大きさや条件、基板3内において修正を行う数や優先する欠陥の特徴等の修正条件の設定情報、配線パターンの形状と適用される修正手法のデータベース(データベースが複数の場合に適用)等である。当該欠陥修正装置300において固有に設定するこれらのパラメータをセットする。
【0052】
ステップS12:基板3の搬入と入力情報のセット
外部から基板3を欠陥修正装置300に搬入し、その基板3の前プロセスの欠陥情報を入力する。搬入された基板3の情報、欠陥情報を欠陥修正装置300内にセットされているパラメータと照合し、修正対象となる基板3の基本情報を確定し、修正条件の初期設定(修正処理数のクリア等)を行う。
【0053】
欠陥情報は、欠陥検査装置400において光学式検査で検出された欠陥の数と座標、もしくは電気式検査で検出された欠陥のピクセル情報(線欠陥、もしくは点欠陥であるかも含む)のいずれかである。あるいは、電気式検査で検出された欠陥と光学式検査で検出された欠陥を関連付けたものである。
【0054】
ステップS13:欠陥情報のセット
上記基板3毎の欠陥情報の一覧より、リストの上位から順に修正を行うか、特定の欠陥をソート(例えば、線欠陥を優先する等)してまとめて修正を行うか、もしくは欠陥修正装置300のオペレータが任意の欠陥を選択するかのいずれかの方法で、欠陥情報を一つ入力する。
【0055】
ステップS14:欠陥情報のチェック
入力された基板3の欠陥情報のリストから自動で修正を行うことができるかを確認する。すなわち、入力される欠陥情報だけでは自動で修正処理が不可能なときがあり、これの確認を行う。
例えば、滅点化処理を規定の数以上行っていないか、修正処理を規定の数以上行っていないか、既に修正処理を行っている欠陥であるか等、現在の基板3の修正条件にそぐわない場合に自動で修正できない可能性がある。また、入力された欠陥の座標が不確定である、パターンの外部等で修正は行わないと明確に定義してある場所である等の場合において、自動で修正できない可能性がある。このような条件の詳細は、例えば本出願人が先に出願した特開2008−155263号公報の図4等に記載されている。
【0056】
ステップS15:欠陥位置情報の取得
入力された欠陥情報が修正を行う欠陥であると判断されたら、欠陥の詳細な座標情報を取得する。具体的には、光学式検査結果の欠陥座標、若しくは電気式検査結果のピクセルの番号等から欠陥が実際に存在する箇所を算出する。なお、このステップS15について、図7には「サブピクセル座標取得」と記載している。
【0057】
ステップS16:欠陥画像の撮影
欠陥の詳細な位置が算出されたら、XYステージ305を移動して、欠陥画像を撮影し、繰り返しパターン内の詳細な欠陥情報を取得する。詳細は、本出願人が先に出願した特開2007−163892号公報や特開2008−159930号公報を参照されたい。なお、このステップS16について、図7には「レビュー情報取得」と記載している。
【0058】
ステップS17:欠陥修正手法の取得
欠陥画像から取得した欠陥の詳細情報と欠陥修正手法とを照らし合わせて、最適な欠陥修正手法を修正手法データベース325から索出し、欠陥の位置情報に合わせて出力する。詳細については、例えば本出願人が先に出願した特開2008−159930号公報、特開2009−251200号公報及び特開2010−102050号公報等を参照されたい。
【0059】
ステップS18:欠陥修正手法の最適化
修正対象の欠陥に適用する欠陥修正手法(リペアオブジェクト)の適用範囲や加工サイズ等の調整、修正実行順の並び替え等の調整を行う。調整結果は、メモリ360または修正手法データベース325等に記憶する。欠陥修正手法の最適化の内容については後述する。
【0060】
ステップS19:修正実行処理
欠陥修正手法を実際の欠陥の位置に合わせて設定し、必要に応じて位置補正を行った後、修正を実行する。その際の修正の実行結果は、メモリ360または修正手法データベース325等に別途保存しておく。その際、特開2007−281376号公報に記載された欠陥修正の技術を使用することもできる。
【0061】
ステップS20:修正判定処理
修正の実行が終了したら、欠陥画像を撮影した場所と同じ座標と倍率によって、修正後の基板を撮影し、画像を比較することにより、適切な修正が完了したかどうかの簡易判定を行う。
【0062】
ステップS21:修正結果更新処理
修正の結果を更新する。更新内容は修正が適切に行われたかの判定、修正詳細内容、修正処理数、滅点化の修正処理数等である。修正結果の更新後、欠陥情報の一覧を再度確認し、未処理の欠陥の有無や修正の終了の判定を行い、次に別の欠陥情報を入力することによる修正処理を続行するか、若しくは修正を終了して基板3の搬出を行うかを決定する。このステップS21において、未処理の欠陥があると判定されたときには、ステップS12に戻る。
【0063】
ステップS22:基板搬出、修正情報セット
入力された基板3に対してすべての欠陥が修正された、もしくは修正の終了条件を満たしたら、基板3を搬出して欠陥情報管理システム12に欠陥の修正情報を出力する。修正の終了条件とは、規定の数値以上の修正を実行した、規定の数値以上の滅点化修正を行った、あるいは特定の欠陥に対する修正が終了した等である。
【0064】
ステップS23:パラメータ更新
上述した各処理内で新規に欠陥修正手法が登録された、もしくは修正を行う欠陥の条件やレーザ光のパワー等の修正方法を変更する等の必要があれば、セットしてある欠陥修正装置300の修正手法データベース325のパラメータ情報を更新して、次の基板3をセットする。
【0065】
ここで、配線基板1の繰り返しパターン区域6に形成する配線部2(単位画素)の概略構成を、図8に示す。
配線部2は、単位画素を構成する各色の副画素、例えば三原色RGBに対応する3つの領域(以下、「サブエリア」ともいう。)2R,2G,2Bに区分されている。3つのサブエリア2R(2G,2B)は、異なるキャパシタ(容量素子)45R(45G,45B)を有している点で、互いに異なる構造になっている。本実施の形態においては、3つのサブエリア2R(2G,2B)の一部が互いに異なる形状(構造)になっているものを例として説明するが、それらのサブエリアが互いに同一の形状(構造)になっているものであってもよいことは勿論である。
【0066】
各サブエリア2R(2G,2B)は、ほぼ同じ大きさに形成されている。配線基板1に設けられた走査配線41上に、層間絶縁膜(図示略)を介して信号配線42R(42G,42B)、電位供給配線43R(43G,43B)、グラウンド電極(図示略)が、当該走査配線41と直交する方向に延在して配置された構成である。信号配線42R(42G,42B)は、グラウンド電極に連結された図示しないキャパシタ45R(45G,45B)に対し、TFT素子44R(44G,44B)のゲートを介して対向する構成とされている。
なお、図8に示した配線部2の配線パターンは実際のものを模式的に表したに過ぎないので、実際の配線パターンと異なる場合がある点に留意する必要がある。
【0067】
図8に示すような、繰り返しパターンを有する配線パターン(配線部2)において、画素内欠陥位置により、その修正パターンを複数に分けられるものとした場合、その条件によって適用される修正手法が異なってくることが考えられる。その場合、どの条件の欠陥に対して、どのような欠陥修正手法を用いるかの情報を、修正手法データベース225にテンプレートとして予め登録しておく。テンプレートとは、欠陥修正情報(リペアレシピ情報)すなわち欠陥修正手法をオブジェクト化(可視化)したものである。
【0068】
そして、欠陥位置と繰り返しパターン(配線部2)の基準座標を入力することで、修正手法データベース325から最適な欠陥修正手法を検索し、欠陥画像に重ねあわせて適用する手法などが有効である。このようなテンプレートを用いた欠陥修正方法として、例えば特開2007−163892号公報に記載された技術が適用できる。
【0069】
図9に、配線部分にショート欠陥が存在する欠陥画像と適用テンプレートの例を示す。
この欠陥画像内の欠陥50は、配線部分(電位供給配線43G,43B)の短絡欠陥の例である。まず詳細位置情報抽出部321において、配線部2の任意の一角に設定された基準座標51と繰り返しパターン領域52を検出する。さらに、基準座標51からの相対位置により繰り返しパターン上での欠陥50の位置と条件を絞り込む。そして、制御部301が欠陥50の条件に見合った登録テンプレートを修正手法データベース325から選択する。
【0070】
テンプレートは、欠陥を模した「欠陥オブジェクト」と、配線部上における欠陥オブジェクトの位置及びその特徴に応じて修正処置が施される部分を示した「リペアオブジェクト」とを含む。欠陥オブジェクトは、当該欠陥オブジェクトの位置や属する領域、規模、形状、当該欠陥オブジェクトが位置する回路等を表示したものである。またリペアオブジェクトは、その欠陥に対応するレーザ光照射の位置、出力等を表示したものである。
【0071】
この例では、配線間にショート(短絡)を生じさせる欠陥50に応じた欠陥修正手法として、すなわち欠陥オブジェクト50a,50b,50cについて、それぞれに最適なテンプレート(1)〜(3)を、修正手法データベース325に登録されているとする。
すなわち、欠陥50の位置に応じた欠陥修正手法として、テンプレート(1)〜(3)が修正手法データベース325に登録されており、テンプレート(1)〜(3)の中から欠陥50の修正に最も適したテンプレートを選択する。
【0072】
テンプレート(1)は、欠陥50と位置および大きさ等の条件がほぼ同じ欠陥オブジェクト50aに対するリペアオブジェクト60aを備える。また、テンプレート(2)は、欠陥50よりやや下に位置する欠陥オブジェクト50bに対するリペアオブジェクト60bを備える。さらに、テンプレート(3)は、欠陥50よりずっと下に位置する欠陥オブジェクト50cに対するリペアオブジェクト60cを備える。
【0073】
ここでは、欠陥50に位置および大きさ等の条件が近い欠陥オブジェクト50aを持つテンプレート(1)が、欠陥50の修正に最適であるとして選択されている。
【0074】
そして、制御部301へ読み出されたテンプレート(1)が、ディスプレイ327に表示される。このとき、当該テンプレート(1)の基準座標61を欠陥画像(配線パターン)の基準座標61を原点として座標変換を行って、欠陥画像の欠陥50にリペアオブジェクト60aが重ね合わされる。座標変換方法については、例えば特開2008−159930号公報にさらに詳細に記載されている。
【0075】
このような繰り返しパターン区域における欠陥修正方法によれば、欠陥箇所の繰り返しパターン(配線部)内における位置や大きさ、種類に基づいて、最適なテンプレートを選択することができる。それにより、位置関係に対応して選択される欠陥修正手法の読み込みによって欠陥修正工程を自動化することができ、人為的に区別を行う煩雑さを回避することが可能となる。
【0076】
本願開示では、さらに欠陥領域と登録済みのテンプレートを比較して該当テンプレートを取得する欠陥修正方法では修正困難な層間ショート欠陥の欠陥修正手法を、「登録」とは異なる方法で自動生成して取得するものである。なお、以下の実施の形態では、画像処理を多用する関係上、座標系は左上原点とし、左右方向をX方向かつ上下方向をY方向とし、回転方向は反時計回りとするが、この例に限られるものではない。また、繰り返しパターン内の欠陥が存在する(もしくは占める)領域を、特に「欠陥領域」または「欠陥範囲」ともいう。
【0077】
なお、修正手法データベース325からの修正手順読み出しの際に、対象となる欠陥に対して、該当する適切な欠陥修正手法(テンプレート)がない場合は、所定の優先度などに基づいて次善のテンプレートが選択される。最も優先度の高い、例えば使用頻度の高い欠陥修正手法のテンプレートあるいは修正難易度が低い欠陥修正手法のテンプレートなどが自動的に選択され、ディスプレイ327に表示される。そして、表示されたテンプレートによる修正手法を自動的に実行するか、もしくは作業員が目視確認した後に実行する。
【0078】
また、対象となる欠陥に対して、適用可能な加工設定ファイル(テンプレート)が無い場合は、作業員が入力装置328を操作してマニュアルでレーザ加工条件を設定することが可能であり、更に修正手法データベース325にその設定ファイルを追加することもできる。
【0079】
[ヘッダ情報およびオブジェクト情報]
本実施の形態においてテンプレートとして表示される欠陥修正手法は、ヘッダ情報と、このヘッダ情報に関連付けられたオブジェクト情報とを有するデータファイルである(詳しくは特開2007−163892号公報を参照)。なお、この欠陥修正手法を「欠陥修正情報(リペアレシピ情報)」ともいう。
【0080】
ヘッダ情報は、欠陥修正手法の「レシピ名(若しくはレシピ番号)」、欠陥のあるサブエリア(領域)を示す「領域番号」、サブエリアを示す「副領域番号」、基板3上の基準画素の位置を示す「基準画素番号」、その基準画素の上下、左右の近接画素の有無とその位置を示す「近接画素番号」、並びにレシピ登録される欠陥や欠陥修正手法を表すリペアオブジェクトの「オブジェクト数」を含むものである。
【0081】
オブジェクト情報は、欠陥を模した欠陥オブジェクトと、配線部2における欠陥オブジェクトの位置及びその特徴に応じて修正処置が施される部分を示したリペアオブジェクトとを含んでいる。
すなわち、オブジェクト情報は、ヘッダ情報に登録されたオブジェクト数だけ欠陥オブジェクトとリペアオブジェクトとを関連付けて登録したものである。なお、単に「登録」というときには、上記した修正手法データベース325に対する登録を意味している。
【0082】
上記のオブジェクト情報は、レシピヘッダとの照合のための「レシピ名(もしくはレシピ番号)」、配線部2内のオブジェクトの位置を示す「座標」、「オブジェクトの形状」、「角度」、「位置補正情報」が基本情報として含まれている。その基本情報は、欠陥オブジェクト及びリペアオブジェクトの双方について有している。
なお、「補正情報」は、実際の欠陥画像の欠陥位置との比較による位置補正のための情報であり、また、「角度」とは、上記したXYステージ305上における欠陥の正規の位置からの回転角度である。
【0083】
本願開示ではさらに、繰り返しパターン(配線部2)内の欠陥の存在する位置や大きさ、種類に基づいて、登録されているテンプレート内の欠陥修正手法(リペアオブジェクト)のサイズを、実際の加工前に欠陥修正装置が加工可能なサイズへと自動で最適化する。それにより、異なる欠陥修正装置の修正スペックや仕様の違いによる欠陥修正の不具合を解消する。また、実際のテンプレートの最適化の様子を画像で表示することによって、テンプレートの登録ミス等のチェックを視覚的に行うことが可能となる。
【0084】
[領域情報(レイヤ構造)]
図10は、図8に示した繰り返しパターン(配線部2)のレイヤ構造(層構造)を模式的に表した透視図である。
配線部2は、多層構造であるが故に、特定のレイヤの下に別のレイヤが存在している場合があり、異なるレイヤ間で上下間のショートを引き起こす欠陥(層間ショート欠陥)が発生することがある。サブエリア2Bを例にとると、キャパシタ45Bを構成する上層と下層が重なる領域47B(ノード領域)、コンタクトホール46Bとつながる部分、キャパシタ45Bが走査配線41と重なる部分などが複数の異なるレイヤで構成される領域に該当する。
【0085】
図11は、リーク欠陥(層間ショート欠陥)の一例を示す断面図である。
この図11に示す例は、ガラス基板81に配線層82が積層され、絶縁層83を介してさらに配線層84が積層され、最上層に保護膜85が成膜された多層構造を有する配線基板である。この配線基板は、下層の配線層82と上層の配線層84にリーク欠陥86が発生し、層間ショートを起こしている。
【0086】
図12は、従来のZappingによる同層ショート欠陥に対する欠陥修正の説明図である。
2つの配線87A,87Bを繋いでいる短絡部88(図12上)に対し、パルスレーザを照射する(図12中央)ことにより短絡部88を除去し、配線87Aと配線87Bの同層ショート欠陥を修正する(図12下)。しかし、図11のような層間ショート欠陥の場合、図12で示すような従来のZappingによる同層ショート欠陥における修正手法を用いてリペアを行うことは困難となる。
【0087】
図13は、登録されたテンプレートを用いて同層ショート欠陥を修正する場合についての説明図である。
この例では、リーク欠陥71が発生したキャパシタ45Gの一部を断線して、キャパシタ45Gと信号配線42Gとの導通を絶縁するためのテンプレート(リペアオブジェクト72)が表示されている。キャパシタ45Gの図12に示すリペアオブジェクト72の例のように、層間ショート欠陥の発生範囲に対して同層間のZapping(リペアオブジェクト72)を実施させることは可能である。
【0088】
しかしながら、テンプレートを用いた場合、欠陥が発生している領域への直接のアプローチはできないため、短絡している領域すべてを無効にするような修正手法となることが多い。そのためキャパシタ領域における層間ショートなどでは、繰り返しパターン内に占める範囲が広いときには欠陥の発生箇所(副画素もしくは画素)に対して滅点化を行うことになり、その結果基板の品質の低下を伴うことになる。
【0089】
これを解消するため、層間ショートが発生している領域へ直接アプローチを行う手法が、特開2007−281376号公報に一例として記載されている。この手法を元に本願開示により行う層間ショートのリペア手法は次のように提案される。
【0090】
図14は、図11の層間ショート欠陥を有する配線基板に対する修正手法を示す図であり、Aは上層Zapping、Bは全層Zappingによる場合を示している。
図14Aの上層Zappingは、ショートを引き起こしている絶縁層83に対して、その上層の配線層84のみを選択的に除去する手法である。また図14Bの全層Zappingは、上層の配線層84と下層の配線層82の双方の対象領域を絶縁層83のリーク箇所(リーク欠陥86)もろとも除去する手法である。図14Aと図14Bに示す修正手法は、言わばレーザ照射の深度を変化させたものである。
【0091】
さらに、欠陥が存在する領域に対してレーザ照射領域を選択的に変化させた例を説明する。
図15は、レーザ照射領域を説明するための図であり、Aは囲みZappingについて、Bは静止Zappingについて示したものである。“囲みZapping”はリーク欠陥90の周囲の領域91をスキャン加工して除去するため、欠陥に直接レーザを照射することはないが除去面積が広く、加工時間がかかる。それに対して“静止Zapping”は加工時間がかからないが、リーク欠陥90を含む領域92に直接レーザ加工を施すため欠陥領域のはね散らし(スプラッシュ)など、2次的な欠陥の発生を引き起こすことのないことが保証されることが前提で可能となる加工方法である。
【0092】
なお、図14、図15で示す層間ショートの修正手法、加工領域の選択は、欠陥のサイズ、発生箇所などによって任意に切り替えることが可能なものとする。この修正手法を用いて自動で欠陥の修正を行う手法について以降に記述する。本願開示では、キャパシタ部の層間ショートの発生を修正する手法として提案しているが、複数の異なるレイヤの上下間の層間ショートであり、本願開示の修正手法が適用可能であれば、適用する箇所はキャパシタに限定しないものとする。
【0093】
図13に示したように、キャパシタ領域での層間ショートは電気的な導通検査から予測される欠陥の発生領域が広いため、実際の欠陥の厳密な発生箇所や面積などは欠陥画像を取得するまで確定することが困難であり、さらに同一領域に複数発生する可能性もある。それゆえ、従来の欠陥領域に対する修正手法(リペアオブジェクト)をテンプレートに登録する手法は、層間ショート欠陥に対しては適切ではない。
【0094】
そこで、本願開示ではテンプレートの登録は行わず、図15のリーク欠陥を欠陥オブジェクトに見立て、その欠陥オブジェクトに対し適切なリペアオブジェクトとなるように欠陥領域にあわせたテンプレートを自動で生成する。
【0095】
生成されたテンプレートを用いて修正が実施される領域は、特開2010−102050号公報に記載された技術により、欠陥の発生箇所や繰り返しパターン領域内の特定の座標におけるレイヤ、およびレイヤラベルの組み合わせの取得が可能なものとする。また、図13で示している特定の欠陥に対する該欠陥の発生箇所をノードとして定義、登録するものとし、欠陥の発生箇所が含まれる領域はレイヤの情報とは異なる領域の情報として任意で設定できるものとする。図13の例では、例えばキャパシタ45Gにおける特定の2つのレイヤが重なっている領域をノード領域47Gとして定義している。ノード領域はCAD等の回路情報のエレメントを組み合わせる、回路画像等を読み込んで登録する、フリーハンドで描画するなどの登録方法があり、登録方法については任意の方法で実現できるものとする。
【0096】
自動でテンプレートを生成するにあたっては、生成したリペアオブジェクトが次の条件を満たすときに修正の実行が許可されるものとする。
(1)リペアオブジェクトが配線を分断しない。
(2)リペアオブジェクトの範囲内にレーザ照射禁止領域がない。
(3)リペアオブジェクトの範囲内に修正を行う部位とは直接関与しない領域(ノード領域が定義されている回路要素(層間ショートが発生するキャパシタなど)以外の隣のサブピクセルやデータ線などの領域)が重なっていない。
(4)修正を行うことによって、減少するノード領域の面積(キャパシタの面積など)が指定した範囲を超えない。
【0097】
なお、レーザ照射禁止領域についても層間ショート欠陥発生領域の登録と同様に、任意のレーザ照射禁止領域の登録をあらかじめ行っておき、パターン領域内の任意の座標におけるレーザ照射禁止領域の有無の取得も可能なものとする。レーザ照射禁止領域の定義は回路構成によって変化するが、一般的にレーザの熱影響などによって回路要素の特定が変化するものや、修正を行う時点では成膜していない上層と連結する領域を示すものとする。例えば有機ELを用いたTFT基板では、前者はトランジスタ部など、後者は発光部となるEL素子と連結するアノード電極などが該当する。しかし、トランジスタ部であってもレーザの熱影響を受けないことが保証されているなど、レーザの照射が従来の回路動作に影響を与えない、もしくは非常に軽微で無視することが可能なときにはその限りではない。
【0098】
図16は、繰り返しパターンの画像についてレイヤが存在しない領域をラベル化した例を示す図である。
レイヤがまったく存在しない領域をレイヤ情報と同じようにラベル化できるものとし、後述する断線の判定などに用いる。図16の例の場合、何らかのラベルが存在する領域95の背景のラベルとして9つのラベルを定義することが可能である。
【0099】
なお、背景のラベルも特願2009−239852号明細書で示すレイヤの判定に用いることが可能である。例えば、特定の背景のラベルがつながって一つの領域になっているときは、良品パターンのラベルとの差分の領域がオープン欠陥(従来のレイヤの場合はショート欠陥)となる。
【0100】
[囲みZappingによる欠陥修正]
次に、実欠陥の領域のサイズに合わせて囲みZapping形式のリペアオブジェクトを生成する方法を説明する。
図17は、図15Aに示した囲みZapping形式のリペアオブジェクトの設定イメージと、リペアオブジェクトの配置の可否を確認するためのパラメータの説明に供する図である。各パラメータを次のように定義する。リペアオブジェクト102はレーザ照射領域を通過させる最大4箇所の頂点102a〜102d(ZapTurn)の座標が設定され、リークが発生しているリーク欠陥100を囲むように配置される。レーザの加工サイズの幅105Wを「SlitSizeX」、高さ105Hを「SlitSizeY」とし、リペアオブジェクト102の外周の頂点2点を必ず含む矩形を「OuterRect」とする。リーク欠陥100の外接四角形101(DefectRect)とリペアオブジェクト102の内周までの距離104Lを「InnerDist」とする。またリペアオブジェクトの外周(OuterRect)からレーザ照射禁止領域までの修正可能とする最短距離106Lを「OuterDist」とし、リペアオブジェクトの外周(OuterRect)からOuterDist離れた矩形(「最外周矩形」ともいう)を「OuterMostRect」とする。
【0101】
囲みZapping形式のリペアオブジェクトは、ここでは右下から時計回りに一周するという形式をとるものとするが、任意の開始座標から頂点すべてを通過して一周すればよいものとする。SlitSizeX,Yの加工サイズを有するレーザが、リペアオブジェクト上を一方向に複数照射されて修正が行われる。本実施の形態において、レーザ照射領域が通過する頂点102a〜102dの座標は、リペアオブジェクトの回転角度が0度のときには次の定義に沿って配置される。
StartPos = 開始位置(右下)
ZapTurn[0] = 第1ターン点(左下)
ZapTurn[1] = 第2ターン点(左上)
ZapTurn[2] = 第3ターン点(右上)
【0102】
リーク欠陥100の外接四角形DefectRectの頂点座標を、DefectRectLeft、DefectRectTop、DefectRectRight、DefectRectBottomの組み合わせとしたとき、リペアオブジェクト102の頂点座標は
Left = DefectRectLeft - InnerDist - SlitSizeX/2
Top = DefectRectTop - InnerDist - SlitSizeY/2
Right = DefectRectRight + InnerDist + SlitSizeX/2
Bottom = DefectRectBottom + InnerDist + SlitSizeY/2
となる。ここでは左上を座標系の基準としている(図9参照)。
【0103】
そして、リペアオブジェクト102のパラメータ(レーザ照射領域が通過する頂点102a〜102dの座標(X,Y))は
StartPosX = Right、 StartPosY = Bottom
ZapTurn[0].X = Left、 ZapTurn[0].Y = Bottom
ZapTurn[1].X = Left、 ZapTurn[1].Y = Top
ZapTurn[2].X = Left、 ZapTurn[2].Y = Right
と定義できる。
【0104】
したがってリペアオブジェクト102の外周の矩形OuterRectの頂点座標は、次の4点の組み合わせで求められる。
OuterRectLeft = Left - SlitSizeX/2
OuterRectTop = Top - SlitSizeY/2
OuterRectRight =Right + SlitSizeX/2
OuterRectBottom = Bottom + SlitSizeY/2
【0105】
さらに、レーザ照射禁止領域からレーザ照射領域までの最短距離OuterDistを含めた最外周矩形OuterMostRectは、次の4点の組み合わせで求められる。
OuterMostRectLeft = OuterRectLeft - OuterDist
OuterMostRectTop = OuterRectTop - OuterDist
OuterMostRectRight = OuterRectRight + OuterDist
OuterMostRectBottom = OuterRectBottom + OuterDist
【0106】
[配線の分断の判定]
ここで、囲みZapping形式のリペアオブジェクトの影響による配線の分断について説明する。
図18は、囲みZappingを利用したリペアオブジェクトの影響による配線の分断の例を示す図である。リーク欠陥114が発生する領域は、第1レイヤ111と第2レイヤ112が重なっている領域(ノード領域113)である。レーザ許可設定の判定、配線の分断の判定とともに、レーザの照射による影響範囲の誤差を考慮して、囲みZapping形式のリペアオブジェクト115の領域から一定の距離(OuterDist)を持たせた最外周矩形OuterMostRectで判定をする。OuterDistがゼロのときはリペアオブジェクト115の外周(OuterRect)が判定領域となる。図18の例では、生成されたリペアオブジェクト115がリーク欠陥の発生するノード領域113をはみ出している、または該ノード領域113の端ギリギリに設定されているために、他の領域へつながっている第1レイヤ111を断線している(破線で囲まれた部分)。
【0107】
配線が分断しているか否かの判定は、判定範囲である最外周矩形OuterMostRectの範囲内に複数の背景ラベル(図16参照)が存在しているかどうか、もしくは最外周矩形OuterMostRectを一周描画(以下、「プロット」という)したときの個々の座標で構成されるレイヤの要素の変化を、制御部301のリペアオブジェクト判定部356が確認することで可能となる。プロットする過程におけるリペアオブジェクトの設定の可否と、構成要素の変化の概念は次のようになる。
【0108】
・すべてのレイヤ構成に変化がないときは設定可
・レーザ照射禁止領域を検出したらその時点で設定不可
・背景ラベルの領域を複数検出したらその時点で設定不可
・ノード領域に存在しないレイヤラベルを検出したらその時点で設定不可
・プロット中に、新しい組み合わせの構成(レイヤの種類が増加したときはそのレイヤをIN、減少したときはOUTと定義)を検出したら、変化したレイヤラベルをキーにIN又はOUTのどちらかのフラグをセットし、その後そのキーとなるレイヤラベルの有無が反転したら(INとOUTがそろったら)そのフラグを1ペアとしてカウントする。プロット開始の時点ですでに存在しているレイヤラベルはその有無が変化したときに初めて片方のフラグがセットされる(レイヤラベルがなくなったとき(OUT)と再び存在するようになったとき(IN)ではじめてペアとなる)。ペアの数が1以下だったら設定可、2以上だったら断線と判定して設定不可とする。(レイヤラベルの有無が変化する回数は必ず偶数になる。奇数になったときはエラーとして設定不可とする)
【0109】
レーザ照射禁止領域、判定対象のノード領域に存在しないレイヤラベル、複数の背景ラベルの有無の取得に関しては、最外周矩形OuterMostRectの矩形範囲内で取得する手法がすでに実装済みであれば、それを用いて先に判定してもよい。また、プロットの過程で繰り返しパターンから外れる場合、近接ラベルだとラベル番号が変わるのでラベルをカウントする際には注意する。
【0110】
図19を参照して、図18に示した第1レイヤ111が断線しているときの最外周矩形のプロット例を説明する。
図19の例では、囲みZapping形式のリペアオブジェクト115の最外周矩形116のプロット線(破線部分)により配線の分断を判定している。ここで、最外周矩形116上を矢印の方向へ一周プロットしていく過程において、最外周矩形116上に存在するレイヤラベルは第1レイヤ111と第2レイヤ112の2種のみとする。切替点117aは第1レイヤがプロット線上に出現するタイミング、切替点117bは第1レイヤがプロット線上からなくなるタイミングを示している。
【0111】
図19の例の場合、第2レイヤ112に関しては最外周矩形116上に同じレイヤラベルが存在しているため、構成要素には変化がないとみなす。一方、第1レイヤ111は最外周矩形116上に存在する箇所としない箇所があり、それぞれの切り替わりをカウントすることができる。先の定義に基づくと、第1レイヤ111の有無が切り替わるタイミングが4回(切替点117aと切替点117bがそれぞれ2箇所)検出できるため、第1レイヤ111は断線していると判定することが可能となる。
【0112】
レイヤの切り替わりのペア数をカウントする手法としては、INとOUTのタイミングをカウントしながら一旦一周すべてプロットしてから判定する他、INかOUTどちらかの数だけカウントしてそのカウント数をそのままペア数にして判定する、1ペアがそろった後にレイヤの有無が反転した(INかOUTのどちらかが2回検出された)らその時点で複数のペアが存在すると判定、設定不可とみなすことも可能となる。なお、プロットする最外周矩形の開始座標やプロットする方向は任意である。
【0113】
[ノード領域からはみ出しているときのリペアオブジェクト設定の可否の判定]
次に、リペアオブジェクトがリーク判定を行うノード領域からはみ出しているときの、リペアオブジェクトの設定の可否の判定について説明する。
図20は、囲みZapping形式のリペアオブジェクトがリーク判定を行うノード領域からはみ出している例を示す図である。リペアオブジェクト121に関して、第1レイヤ111が最外周矩形122のプロット線上に出現するタイミングを示す切替点123aと、第1レイヤ111が最外周矩形122のプロット線上からなくなるタイミングを示す切替点123bと、第2レイヤ112が最外周矩形122のプロット線上に出現するタイミングを示す切替点123aがある。また、リペアオブジェクト125に関して、切替点123aと、切替点123bと、切替点124aと、第2レイヤ112が最外周矩形122のプロット線上からなくなるタイミングを示す切替点124bがある。さらに、リペアオブジェクト127に関して、切替点123a、切替点123b、切替点124a,124a、切替点124b,124bがある。
【0114】
リペアオブジェクト121,125の場合、第1レイヤ111と第2レイヤ112の2つのレイヤラベルの有無のカウントはそれぞれ1ペアなのでリペアオブジェクトの設定は可能である。しかし、リペアオブジェクト127の場合は、第1レイヤ111は1ペアだが、第2レイヤ112は2ペアになり断線をしているので、リペアオブジェクトの設定不可となる。
【0115】
なお、リペアオブジェクト127の場合、第2レイヤ112がプロット線上からなくなるタイミングで、第1レイヤ111及び第2レイヤ112のいずれにも属さない2箇所の背景が出現する。図16に示したように背景もレイヤと同じように領域とラベルを設定し、背景のラベルの番号が複数出現したときは少なくとも2箇所の領域は配線を隔てて存在していたと判断できる。そこで、そのタイミングで断線と判断してリペアオブジェクトの設定を不可とすることもできる。
【0116】
[レーザ照射禁止領域への干渉]
配線の断線の他にリペアオブジェクトの設定不可と判定される条件として、まずリペアオブジェクトのレーザ照射禁止領域への干渉がある。欠陥オブジェクトを配置した際に断線の判定と同じように、最外周矩形のプロットの過程でレーザ照射禁止領域が検出されたときのイメージは、図21のようになる。図21は、囲みZapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形のプロット線がレーザ照射禁止領域に干渉する例を示す図である。
この例では、リーク欠陥141はレーザ照射禁止領域145に重なっていないが、リーク欠陥141に対するリペアオブジェクト142の最外周矩形143のプロット線が、レーザ照射禁止領域145と重なっている。切替点146A,146Bは、プロットの過程でレーザ照射禁止領域145と重なっていることが確認できる座標であり、それによりリペアオブジェクトがレーザ照射禁止領域145へ干渉することが判定できる。
【0117】
[ノード領域以外の領域への干渉]
次に、リペアオブジェクトがノード領域以外の領域に干渉するときの例を説明する。
図22は、囲みZapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形のプロット線がノード領域以外の領域に干渉する例を示す図である。リーク欠陥151に対するリペアオブジェクト152に関して、最外周矩形153のプロット線上に第1レイヤ111についての切替点123a,123b、第2レイヤ112についての2つの切替点124aと2つの124bがある。この場合、プロットする過程においてレイヤ(第2レイヤ112)の種類は同じだが、異なるラベルでレイヤラベルの有無の切り替わりが検出されている。このようなときは、ノード領域以外の領域への干渉があると判断して、リペアオブジェクトの設定不可とする。
【0118】
上述したレーザ照射禁止領域、ノード領域以外の領域への干渉は、断線とは異なり、リペアオブジェクトを配置した際、最外周矩形OuterMostRectで示される矩形範囲内に存在するレイヤラベルの数と種類を取得することで、その内容からリペアオブジェクト設定可否の判定が可能である。すなわち、レイヤの切替点を検出することなくリペアオブジェクト設定可否の判定が行える。
【0119】
なお、特定の領域内におけるレイヤラベルの構成を示す情報の取得については、例えば特開2010−102050号公報等に記述されている。このときの判定方法は、欠陥の領域内、もしくはプロット対象である最外周矩形OuterMostRectの矩形範囲内にレーザ照射禁止領域が存在する、もしくは、ノードを構成する領域の範囲内に含まれないレイヤラベルが検出されたときとする。
【0120】
[減少するノード領域の面積の判定]
欠陥修正の実行に伴って減少するノード領域の面積を次のように定義する。
図23は、囲みZapping形式のリペアオブジェクトによる欠陥修正の実行に伴い減少するノード領域の面積の定義を説明するための図である。リペアオブジェクト161のように、先の最外周矩形のプロットによる判定でレイヤの切り替わりが検出されなかったときは、リペアオブジェクト161の外周の矩形(OuterRect)162の面積がそのまま減少する面積となる。また、リペアオブジェクト163のように、一部がノード領域113からはみ出している場合では、ノード領域113とリペアオブジェクト163の外周の矩形の領域が重なっている部分164が減少する面積になる。
【0121】
複数のリペアオブジェクトが同一のノード領域に設定されているときは、すべてのリペアオブジェクトの減少面積の総和がノード領域から減少する面積になるが、リペアオブジェクトの一部が重なっているときはその部分は相殺される。
【0122】
ノード領域から除去される面積が大きいと繰り返しパターンの回路に与える影響が大きく品質が低下するので、ノード領域から除去される面積の上限は任意のパラメータ(RemoveLimit)で指定し、その上限を超えない限り、欠陥修正を行うことが可能となる。面積の減少を許可する割合を示すパラメータRemoveLimitは、リーク欠陥の発生領域が定義されるノード領域ごとにそれぞれ設定する。ノード領域の面積から除去可能な面積の定義は、割合(パーセンテージ)であっても、実際の面積値であってもよい。
【0123】
実際に、欠陥修正によって除去される面積がRemoveLimitを超えたときの対応は以下のどちらかからノード別、もしくは回路要素の特徴等で切り替えることが可能とする。
(1)複数のノード領域が配置されているときは、修正可能なリペアオブジェクトのみ欠陥修正を実施する。
→配置された順番に除去面積を加算して行き、RemoveLimitを超えたらそれ以降のリペアオブジェクトは欠陥修正を行わない。
→RemoveLimitを超えない範囲で欠陥修正可能な除去面積が最大になるリペアオブジェクトの組み合わせを取得して実施する。
(2)配置されたリペアオブジェクトの数に依らず欠陥修正は行わない。
【0124】
ここまでで示した囲みZapping形式のリペアオブジェクトの断線の判定では、一つの背景領域しか検出されていないときや一つも検出されていないときは、レイヤの切り替わりが複数回行われていても、厳密には断線していないケースが出てくる。以下にその詳細を説明する。
【0125】
図24は、断線と判断することが適切でない欠陥を断線と判定する例を示す図である。
この例の場合、リペアオブジェクト171の最外周矩形172のプロット線上に8個の切替点があり、欠陥修正を実行すると領域173が分断する。判定対象となる第1レイヤ111が分断しているという意味では正しいが、配線が断線しているわけではないので、他の回路には影響を与えない。そのため、分断と判断して欠陥修正設定可とすることも可能ではある。しかしながら、広い領域がキャパシタ部(もしくはリーク発生領域)から消失するため、回路要素の特性を著しく低下させることが予想される。つまり除去面積が規定された上限を超えることも予想され、結果として断線ではなくても欠陥修正は不可となる可能性が高い。
【0126】
また、欠陥自体の面積が広いため、異物が付着しているなど他の要因である可能性が高く、層間リークと判断できるか自体が疑わしいため、囲みZapping形式での欠陥修正手法が適切ではない可能性も高くなる。このことから図24のようなレイヤを分断するケースであっても、欠陥修正可否の判定自体は断線のときの手法を用いることができる。
【0127】
[囲みZapping形式の断線ではない場合に断線と判定する例]
次に、囲みZapping形式の断線ではない場合に断線と判定する例を説明する。
図25は、囲みZapping形式の断線ではない場合に断線と判定する例を示す図である。この例の場合、リペアオブジェクト181の最外周矩形182のプロット線上に6個の切替点があるが、領域の分断もしておらず、異なるレイヤラベルの切り替わりがあるわけでもないため他回路への干渉もなく、繰り返しパターンの回路には影響は出ない。しかしながら、図24のときのように背景の領域が単数であることは、必ずしも分断していないとは保障できない。それゆえ、欠陥修正設定可と断定することはレイヤラベルの切り替え回数のみでは実質不可能である。これを解消するため、以下に囲みZapping形式のリペアオブジェクトの形状を一部最適化する手法を提案する。
【0128】
[囲みZapping形式のリペアオブジェクトの最適化]
図26は、囲みZapping形式のリペアオブジェクトの一部を最適化したオブジェクト例を示している。
リーク欠陥90の欠陥領域の四方すべてを囲む囲みZapping形式のリペアオブジェクトをO型(ZAP_O)としたとき、その変形型として2種が考えられる。2種のうち1辺のスキャンを行わないものをU型(ZAP_U)(リペアオブジェクト191)、2辺のスキャンを行わないものをL型(ZAP_L)(リペアオブジェクト192)として定義する。
【0129】
U型もしくはL型への最適化を行う囲みZapping形式のリペアオブジェクトの定義は次のようになる。
・最外周矩形OuterMostRectの1辺の線上に特定のIN→OUTの順でのレイヤの切り替わりが起こっていない。
・リーク欠陥のノード領域を含まない頂点(OuterRectの頂点)が複数箇所存在する。
・リーク欠陥のノード領域を含んだ頂点(OuterRectの頂点)が最低1箇所存在する。
【0130】
上記の条件を満たすとき、ノード領域を含まない頂点同士を結ぶ部分のスキャン加工を行わず、始点と終点が異なるリペアオブジェクトを定義する。また、L型のときはレーザのスキャン経路のターン座標のうちスキャンが省略された頂点のターン座標(図26ではZapTurn[2] = 第3ターン点(右上の頂点)の座標)のパラメータは無効となる。
【0131】
次に、スキャンする頂点を増やして最適化したリペアオブジェクトを説明する。
図27は、囲みZapping形式のリペアオブジェクトの一部を更に最適化したオブジェクトの例を示している。頂点部分のスキャンを省略したU型とL型のほか、スキャンを行う頂点を増やした変形型の2種をC型として定義する。C型にはC1型(リペアオブジェクト193,194)とC2型(リペアオブジェクト195)があり、C1型とC2型は、始点もしくは終点の片方がO型の頂点であるか否かで変化するものとする。
【0132】
C1型もしくはC2型への最適化を行う囲みZapping形式のリペアオブジェクトの定義は次のようになる。
・最外周矩形OuterMostRectの1辺の線上に特定のIN→OUTの順でのレイヤの切り替わりが起こっていない。
・リーク欠陥のノード領域を含まない頂点(OuterRectの頂点)は1箇所であるか、もしくは存在しない。
・リーク欠陥のノード領域を含んだ頂点(OuterRectの頂点)が3箇所以上存在する。
【0133】
上記の条件を満たすとき、ノード領域を含まない領域部分のスキャン加工を行わず、レーザのスキャン経路のターン座標をリペアオブジェクトの形状によって追加して始点と終点が異なるリペアオブジェクトを定義する。図27では、C1型はZapTurn[3]、C2型はZapTurn[3]とZapTurn[4]を追加する。
【0134】
C1型とC2型はより繰り返しパターンの回路の形状に沿った最適化が望めるが、その反面、頂点の数が増え処理が複雑化するため、レーザの性能や制御方法、加工時間によってはO型、U型、L型よりも処理時間がかかることが予想される。そのため、どの型のリペアオブジェクトを用いて最適化を行うかはレーザ修正装置や回路に依存する。
【0135】
そして、図26及び図27に示したすべての型のリペアオブジェクトの使用が可能と判断したとき、どのリペアオブジェクトで最適化するかは下記の条件で振り分けられる(ただしリペアオブジェクトが複数に分割されるときはその限りではない)。
・リーク欠陥のノード領域を含まない頂点(OuterRectの頂点)が3箇所存在するときはL型
・リーク欠陥のノード領域を含まない頂点(OuterRectの頂点)が2箇所存在するときはU型
・リーク欠陥のノード領域を含まない頂点(OuterRectの頂点)が1箇所存在するときはC1型
・リーク欠陥のノード領域を含まない頂点(OuterRectの頂点)が存在しないときはC2型
【0136】
囲みZapping形式のリペアオブジェクトの具体的な最適化の手法は次のようになる。
図28〜図30は、囲みZapping形式のリペアオブジェクトを最適化する手法を説明するための図である。リーク欠陥200を囲むリペアオブジェクト201について、レーザ照射領域を通過させる4箇所の頂点201a〜201dのターン座標を取得しておく。このうち、頂点201dは後にスキャンが行われない頂点である。そして、リペアオブジェクトの外周の矩形(OuterRect)202を断線判定と同じようにプロットし、プロット線上でノード領域(第1レイヤ111に対応)の有無が切り替わる切替点203a,203bの座標を取得する。そのプロット線上の座標をノード領域が存在しない方向へ任意のサイズ(ZapTurnOffsetSize)だけオフセット(移動)させた座標を、それぞれ新たな頂点204a,204bと定義する(図28参照)。
【0137】
そして、プロット線上を1週して走査した後、新たに定義されたノード領域を含まない頂点204a,204bのターン座標を、スリットサイズ(SlitSizeX、Y)の半分の距離だけリペアオブジェクト201の内周方向へオフセットさせた座標に変更する。例えば、頂点204aをスリットサイズ(SlitSizeY)の半分の距離をオフセットしたとすれば、頂点204bをスリットサイズ(SlitSizeX)の半分の距離をオフセットし、移動後の頂点をそれぞれ頂点201a1、201c1とする。次に、変更後の座標で示される、レーザ照射領域が通過する新たな頂点201a1、201c1を取得する。新たな頂点201a1,201c1に対し、リペアオブジェクト201上でノード領域が存在しない方向に存在していた頂点201c,201d,201aは無効となり、頂点201a1,201b,201c1が新しいレーザのスキャン経路となる(図29参照)。
【0138】
新しい頂点201a1,201b,201c1に対し、新たにレーザのスキャン経路の開始位置StartPos、スキャン経路の頂点ZapTurn[n](nは任意のターン座標)を再配置する。そして、開始位置の座標、スキャン経路の頂点の座標から再配置後のリペアオブジェクト201Aの外周の頂点202a〜202dの座標を求める。これらの座標のなかで、X方向及びY方向それぞれの座標の最大値と最小値を再配置後のリペアオブジェクト201Aの外周の矩形(OuterRect)202Aの最小座標と最大座標とし、そこから新たに最外周矩形(OuterMostRect)205を再定義する(図30参照)。
【0139】
再配置後のリペアオブジェクトは必ずしもO型(図17参照)で定義していた右下の頂点の座標を開始座標にしたときに最適にはならない。そのときには、リペアオブジェクトの外周の矩形OuterRectの頂点のうち再配置によって新たに定義されたいずれかの頂点座標を開始座標としてターン座標をそれに沿って定義し直す。あるいは、開始座標を右下に定義したものを回転させる、スキャン方向を逆にする、などの方法で再定義する(ただし、C1型、C2型の開始座標が頂点ではないリペアオブジェクトは回転では定義できない)。
【0140】
図31は、リーク欠陥とノード領域が重なっている部分を含む外周を有するオブジェクトを使用する例を示す図である。
リペアオブジェクトの最適化の結果、一つの囲みZapping形式のリペアオブジェクトから複数のリペアオブジェクトが生成可能になることがある。図31A,Bの例では、囲みZapping形式のリペアオブジェクト211から、L型のリペアオブジェクト211AとU型のリペアオブジェクト211Bを生成している。リペアオブジェクトが生成される数は最外周矩形のプロット線上に新たな頂点として設定された座標の数の半分となる。つまり、2箇所だと生成されるオブジェクトは1つだが、4箇所だと2つになる。図31Bでは、リペアオブジェクト211A及びリペアオブジェクト211Bのそれぞれに新たな頂点が2つずつ設定されている。
【0141】
複数のリペアオブジェクトの生成が可能なときは、一旦すべてのリペアオブジェクトを再配置した後、リペアオブジェクトの外周の矩形OuterRect内に欠陥領域とノード領域が重複している領域が存在しないものは削除する。図31Bの例では、リペアオブジェクト211Aの矩形212A内に、リーク欠陥210とノード領域に対応する第1レイヤ111が重なる領域が存在するが、リペアオブジェクト211Bの矩形212B内にはそれがない。したがって、リペアオブジェクト211Bが削除対象となる。
【0142】
なお、図24、図25に示したような囲みZapping形式のリペアオブジェクトに関して誤判定してしまう事例は回路の形状に依存する。欠陥修正可能な領域を不可能であると判断するときはあっても逆はない。したがって欠陥修正不可能な領域に修正を実施してしまう恐れを考慮して、リペアオブジェクトの最適化を行わずに欠陥修正を中止すると判断することも選択肢としては有効である。
【0143】
[静止Zappingによる欠陥修正]
次に、実欠陥の領域のサイズに合わせて静止Zapping形式のリペアオブジェクトを生成する方法を説明する。
図32は、図15Bに示した静止Zapping形式のリペアオブジェクトの設定イメージと、リペアオブジェクトの配置の可否を確認するためのパラメータの説明に供する図である。各パラメータを次のように定義する。欠陥の形状が斜めの楕円のように角度があるものだと欠陥面積に対する面積除去範囲が広くなるが、リーク欠陥の大多数が微小欠陥であることからほぼ影響はないとみなし、リペアオブジェクトはすべて回転角度0度で設定する。
【0144】
リーク欠陥220の外接四角形221(DefectRect)の頂点を「Top、Left、Right、Bottom」、その幅と高さを「Width、Height」、レーザの加工サイズの幅224W及び高さ224Hの半分(以下、「スリットサイズ」という)を「SlitSizeX、SlitSizeY」とする。さらに、リーク欠陥220の外接四角形221(DefectRect)とリペアオブジェクト222の外周の矩形ZapRect(レーザが照射される矩形領域)までの距離225Lを「InnerDist」、リペアオブジェクト222の外周OuterRectからレーザ照射禁止領域までの修正可能とする最短距離226Lを「OuterDist」とする。このときリペアオブジェクト222のパラメータとなる中心座標220a(StartPosX、StartPosY)及びレーザのスリットサイズ(SlitSizeX、SlitSizeY)の初期値は次のように求められる。
StartPosX = Left + Width /2
StartPosY = Top + Height /2
SlitSizeX = Width/2 + InnerDist
SlitSizeY = Height/2 + InnerDist
左上を座標系の基準としている(図9参照)。
【0145】
このとき、リペアオブジェクト222の外周の矩形ZapRectは、
ZapRectLeft = StartPosX - SlitSizeX
ZapRectTop = StartPosY - SlitSizeY
ZapRectRight = StartPosX + SlitSizeX
ZapRectBottom = StartPosY + SlitSizeY
で表される。
【0146】
囲みZapping形式のリペアオブジェクトとは異なり、内周(InnerRect)と外周(OuterRect)の概念はないため、ZapRect = InnerRect = OuterRectとなる。レーザ照射禁止領域からレーザ照射領域までの最短距離226Lを含めた最外周矩形OuterMostRectの初期値は次のようになる。
OuterMostRectLeft = ZapRectLeft - OuterDist
OuterMostRectTop = ZapRectTop - OuterDist
OuterMostRectRight = ZapRectRight + OuterDist
OuterMostRectBottom = ZapRectBottom + OuterDist
【0147】
リペアオブジェクト222の外周の矩形ZapRect、および最外周矩形OuterMostRectの領域内のレイヤラベル、およびノードの構成状況に応じて、リペアオブジェクトの設定の可否とオブジェクトサイズの最適化を行う。
【0148】
静止Zapping形式のリペアオブジェクトの設定の可否の判定条件は基本的に囲みZapping形式と同じであるが、静止Zapping形式のリペアオブジェクトは基本的に欠陥に直接レーザを照射するため、欠陥が一定の面積を超えるものには対応をしないという条件が加わる。
【0149】
[レーザ照射禁止領域への干渉]
次に、欠陥面積の上限の確認とレーザ照射禁止領域への干渉の確認を行う。リーク欠陥の面積が予め指定されている面積よりも大きい場合には欠陥面積が大きいとして、欠陥修正設定不可とする。この場合は、囲みZapping形式で対応するか、もしくは欠陥修正を行わない。
【0150】
囲みZapping形式(O型)の場合(図21参照)と同様に、静止Zapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形OuterMostRectの範囲内にレーザ照射禁止領域が重なっているときは、対象欠陥を欠陥修正不可と判断する。
図33の例では、リーク欠陥231はレーザ照射禁止領域234には重なっていないが、静止Zapping形式のリペアオブジェクト232の最外周矩形233のプロット線がレーザ照射禁止領域234に重なっている。このようにレーザ照射禁止領域への干渉を検出したら、静止Zapping形式でのリペアオブジェクトの設定は不可とする。
【0151】
[配線の分断の判定]
次に、静止Zapping形式のリペアオブジェクトの影響による配線の分断について説明する。
図34は、静止Zapping形式のリペアオブジェクトがリーク判定を行うノード領域からはみ出している例を示す図である。配線が分断しているか否かの判定は、背景のラベル(図16参照)の検出を確認し、その後、囲みZapping形式と同様に、判定範囲である最外周矩形OuterMostRectをプロットして行う。まず最外周矩形OuterMostRectをプロットしたときのレイヤの要素の変化から背景ラベルの有無をチェックする。図34の例では、リーク欠陥241に対する静止Zapping形式のリペアオブジェクト242の最外周矩形243のプロットによって、2つの異なる領域(ラベル)の背景244A,244Bが検出されている。このように、異なる領域(ラベル)の背景が複数検出された時点で断線が確定するので欠陥修正不可とする。
【0152】
[ノード領域以外の領域への干渉]
背景ラベルを確認した後、囲みZapping形式の場合と同様(図21参照)にノード領域以外の他の領域(回路)への干渉の有無をチェックする。
図35は、静止Zapping形式のリペアオブジェクトの最外周矩形のプロット線がノード領域以外の領域に干渉する例を示す図である。リーク欠陥251に対する静止Zapping形式のリペアオブジェクト252の最外周矩形253が、2つの領域の第2レイヤ112,112と重なっている。2つの領域の第2レイヤ112,112は同じ種類だが異なるラベルである。このようなときは、ノード領域以外の領域への干渉があると判断して、リペアオブジェクトの設定不可とする。
【0153】
最後に、リペアオブジェクトの最外周矩形のプロットにより断線の判定を行う。基本的には囲みZapping形式の場合と同じ判定を行うものとする。
図36は、静止Zapping形式の最外周矩形のプロット線により配線の分断を判定する例を示す図である。静止Zapping形式のリペアオブジェクト261の最外周矩形262をプロットする過程で、最外周矩形262上に存在するレイヤラベルは第1レイヤ111と第2レイヤ112の2種である。切替点263aは第1レイヤがプロット線上に出現するタイミング、切替点263bは第1レイヤがプロット線上からなくなるタイミングを示している。図36の例では、囲みZapping形式の場合と同様(図19参照)に、第1レイヤ111は断線していると判定することが可能となる。
【0154】
このように、同一レイヤで複数のラベルを検出したり、判定対象のノード領域に存在しないレイヤラベルを検出したら他の領域(回路)への干渉、同一レイヤラベル上でプロットするINとOUTの切り替わりが複数回検出されたりしたら、断線の可能性があるとして欠陥修正不可と判定する。
【0155】
ノード領域以外の領域への干渉や断線判定で欠陥修正不可とされる欠陥の中には、欠陥の発生箇所とレイヤの形状によっては、囲みZapping形式の場合と同様に誤判定をするケースもある。しかし、静止Zapping形式の場合、欠陥領域に直接レーザを照射することから、囲みZapping形式の場合よりもレーザ照射面積は狭くなる。そのため、繰り返しパターン内の配線が非常に近接していたり、InnerDist、OuterDistに大きな値を設定したりしない限り、誤判定の発生頻度は低くなることが予想される。そして、もし実際に欠陥修正不可と誤判定されたときであっても、欠陥修正不可能な領域に修正を実施してしまう恐れを考慮してレーザの照射は行わないことが望ましい。そのため今回、静止Zapping形式での最適化は必要ないものとする。
【0156】
[減少するノード領域の面積の判定]
欠陥修正の実行に伴って減少するノード領域の面積は次のように定義する。
図37は、静止Zapping形式のリペアオブジェクトによる欠陥修正の実行に伴い減少するノード領域の面積の定義を説明するための図である。減少するノード領域の面積の取得方法は囲みZapping形式の場合と同じ定義でよく、複数のリペアオブジェクトが重なるときの相殺方法も囲みZappingの場合と同じでよい(図23参照)。図37の例では、リペアオブジェクト271,273の外周の矩形とリーク欠陥が発生するノード領域113の各々が重なる部分272,274が減少するノード領域の面積となる。
【0157】
上述した実施の形態における囲みZapping形式又は静止Zapping形式のリペアオブジェクトの対応形式、優先順位などは欠陥修正装置や回路状況、レーザの設定に依存する。一般的には処理時間が短い静止Zapping形式を優先し、それで欠陥修正が不可能なときは囲みZapping形式のリペアオブジェクトを生成するとよい。
【0158】
[欠陥領域がノード領域に重ならない場合の対応]
ところで、リーク欠陥は必ずしも多層構造の上層と下層の間におけるショート欠陥であるとは限らない。
図38は、電気的な導通検査でリーク欠陥と判定される例を示す図である。この例では、第2レイヤ112の変形で生じた欠陥282により、第2レイヤ112だが異なるレイヤラベルがショートしている。この場合、リーク欠陥が発生するノード領域113内に欠陥は存在せず、厳密には第2レイヤ112の同層ショートとみなすことができる。しかし、コンタクトホール281によって第1レイヤ111と第2レイヤ112をつないでいるので、第1レイヤ11と第2レイヤ112がショートしている。そのため、欠陥の種類としては層間ショートと同じ結果となり、繰り返しパターンの画像を取得するまでは層間ショートと区別がつかない。
【0159】
こういったケースでは、同層ショート欠陥と同じく、図39に示すような従来のテンプレートの登録によるリペアオブジェクト283の取得、適用が有効となる。また、この場合、欠陥修正による回路領域の除去面積は考慮しない。このように、欠陥の発生箇所に応じて、本願開示の囲みZappingもしくは静止Zappingを用いたリペアオブジェクトの自動生成による欠陥修正方法と、従来のテンプレートを用いた欠陥修正方法を切り替えるとよい。
【0160】
リーク欠陥の欠陥修正手法では、リーク欠陥の発生領域(ノード領域)で発生した欠陥に対して囲みZappingもしくは静止Zappingを利用して生成したリペアオブジェクトについてレーザの性能、調整条件等によって複数のリペアオブジェクトの重複が可能である。しかし、従来の登録テンプレートの選別、適用については、配線の結線処理を行うためのCVDオブジェクトを用いたものは他の領域に対するリペアオブジェクトと重なると不具合を起こすため、複数の欠陥領域が存在するときは適用可能な条件が限られる。
【0161】
基本的に他の欠陥領域、及び他の欠陥領域をターゲットとしたリペアオブジェクトに対してCVDオブジェクトが重複していなければ適用可能とする。また、複数の欠陥領域に対して欠陥修正不可能な欠陥領域と可能な欠陥領域が混在するときは、その旨もメッセージ等でテンプレートと共に出力する。
【0162】
[リーク欠陥に対する欠陥修正手法(リペアオブジェクト)の取得処理]
以下、図40及び図41を参照して、制御部301により実行されるリーク欠陥に対する欠陥修正手法を取得する手順(図7におけるステップS18の欠陥修正手法(リペアオブジェクト)の最適化に対応)の一例を説明する。なお、図40及び図41に示す手順は、上述した各処理を一つの流れで表したものであるから一例に過ぎず、一部の処理の順番を変えたり省略したりすることができ、この例に限られない。
【0163】
まず、リーク欠陥の位置や特徴等を含む欠陥領域情報が欠陥検出部303から制御部301(図5参照)へ入力される(ステップS1)。制御部301へ入力された欠陥領域情報は入出力部351(図6参照)を介して画像処理部352へ入力され、画像処理部352で適宜画像処理が行われる。制御部301は、欠陥領域情報から繰り返しパターンにリーク欠陥が存在することを検出すると出力メッセージをクリアする(ステップS2)。
【0164】
次に、制御部301の欠陥判定部353(図6参照)は、欠陥領域情報から欠陥領域はリーク欠陥が発生するノード領域に重なるか否かを判定する(ステップS3)(図38参照)。ノード領域に重なる場合はステップS4に進み、重ならない場合はステップS15へ進む。
【0165】
ステップS3の判定処理において欠陥領域はリーク欠陥が発生するノード領域に重なる場合、欠陥判定部353は、欠陥領域が不正な領域には重ならないか否かを判定する(ステップS4)。欠陥領域が不正な領域に重ならない場合はステップS5へ進み、不正な領域に重なる場合はステップS14へ進む。ここで、不正な領域とは、レーザ照射禁止領域(図21、図33参照)、ノード領域を構成するレイヤラベル以外のレイヤラベル(図22、図35参照)、複数の背景ラベル(図20、図34参照)、並びに同一レイヤで複数のラベルを検出(図22、図35)したときが該当する。
【0166】
ステップS4の判定処理において欠陥領域が不正な領域に重ならない場合、欠陥判定部353は、欠陥領域は静止Zappingに対応可能な面積か否かを判定する(ステップS5)。図32の説明で述べたように、欠陥領域が静止Zappingに対応可能な面積であるとは、当該欠陥領域の面積が設定上限の面積より小さいことをいう。静止Zappingに対応可能な面積である場合はステップS6へ進み、対応できないない面積である場合はステップS7へ進む。
【0167】
ステップS5の判定処理において欠陥領域が静止Zappingに対応可能な面積である場合、リペアオブジェクト生成部354は、静止Zapping形式のリペアオブジェクトを生成する(ステップS6)(図32参照)。この処理が終了後、ステップS10へ進む。
【0168】
また、ステップS5の判定処理において欠陥領域が静止Zappingに対応可能な面積ではない場合、リペアオブジェクト生成部354は、囲みZapping形式のリペアオブジェクトを生成する(ステップS7)(図17参照)。
【0169】
次に、囲みZapping最適化部355は、生成された囲みZapping形式のリペアオブジェクトを最適化するか否かを判定し(ステップS8)、最適化する場合はステップS9へ進み、最適化しない場合はステップS10へ進む。
【0170】
ステップS8の判定処理において最適化すると判定した場合、囲みZapping最適化部355は、対象の囲みZapping形式のリペアオブジェクトを最適化する(ステップS9)(図26、図27〜図30参照)。この処理が終了後、ステップS10へ進む。
【0171】
ステップS6,S8の判定処理、又はステップ9の処理が終了後、リペアオブジェクト判定部356は、生成したリペアオブジェクトが不正な領域に重ならないか否かを判定する(ステップS10)。不正な領域に重なる場合はステップS14へ進み、重ならない場合はステップS11へ進む。
【0172】
またステップS10の判定処理において生成したリペアオブジェクトが不正な領域に重ならない場合、リペアオブジェクト判定部356は、生成したリペアオブジェクトによる断線が引き起こされるか否かを判定する(ステップS11)。断線が引き起こされない場合はステップS12へ進み、断線が引き起こされる場合はステップS13へ進む。
【0173】
ステップS11の判定処理において生成したリペアオブジェクトによる断線が引き起こされない場合、リペアオブジェクト判定部356は、そのリペアオブジェクトを欠陥修正部302へ出力するリペアオブジェクトの候補に追加する(ステップS12)。この処理が終了後、ステップS26へ進む。
【0174】
一方、ステップS11の判定処理において生成したリペアオブジェクトによる断線が引き起こされる場合、コメント生成部357は、断線が起こるため欠陥修正不可である旨のコメントをメモリ360から読み出す(ステップS13)。この処理が終了後、ステップS22へ進む。
【0175】
またステップS4又はステップS10の判定処理が終了後、コメント生成部357は、欠陥修正不可能な欠陥領域である旨のコメントをメモリ360から読み出す(ステップS14)。この処理が終了後、ステップS22へ進む。
【0176】
ここでステップS3の判定処理において欠陥領域はリーク欠陥が発生するノード領域に重ならない場合、テンプレート選定部358は、登録されたテンプレートから欠陥領域に最適なテンプレートを選定する(ステップS15)(図39参照)。そして、欠陥領域に適用可能なテンプレートを取得できたか否かを判定し(ステップS16)、適用可能なテンプレートを取得できた場合はステップS17へ進み、取得できない場合はステップS22へ進む。
【0177】
ステップS16の判定処理において欠陥領域に適用可能なテンプレートを取得できた場合、テンプレート選定部358は、適用可能なテンプレートにCVDオブジェクトが存在するか否かを判定する(ステップS17)。CVDオブジェクトが存在する場合はステップS18へ進み、存在しない場合はステップS25へ進む。
【0178】
ステップS17の判定処理において適用可能なテンプレートにCVDオブジェクトが存在する場合、リペアオブジェクト判定部356は、そのCVDオブジェクトが他の欠陥領域やリペアオブジェクトに重ならないか否かを判定する(ステップS18)。他の欠陥領域やリペアオブジェクトに重なる場合はステップS19へ進み、重ならない場合はステップS25へ進む。
【0179】
ステップS18の判定処理においてCVDオブジェクトが他の欠陥領域やリペアオブジェクトに重なる場合、テンプレート選定部358は、他にも適用可能なテンプレートの候補があるか否かを判定する(ステップS19)。他にも適用可能なテンプレートの候補がある場合はステップS20へ進み、次の候補を確認(ステップS20)した後、ステップS17へ進む。他方、適用可能なテンプレートの候補がない場合はステップS21へ進む。
【0180】
ステップS19の判定処理において他に適用可能なテンプレートの候補がない場合、コメント生成部357は、該当テンプレートがない旨のコメントをメモリ360から読み出す(ステップS21)。
【0181】
ステップS13,S14,S21の処理、又はステップS16の判定処理が終了後、コメント生成部357は、出力メッセージが設定されていないかどうかを判定する(ステップS22)。出力メッセージが設定されていない場合はステップS23へ進み、設定されている場合はステップS24へ進む。
【0182】
ステップS22の判定処理において出力メッセージが設定されていない場合、コメント生成部357は、ユーザの指示に従って出力メッセージにコメントを設定する(ステップS23)。一方、ステップS22の判定処理において出力メッセージが設定されている場合、一部の欠陥領域は修正不可である旨のメッセージをメモリ360から読み出し、ディスプレイ327へ出力する(ステップS24)。これらの処理が終了後、スッテップS26へ進む。
【0183】
またステップS17,S18の判定処理が終了後、リペアオブジェクト判定部356は取得したテンプレートのリペアオブジェクトを欠陥修正部302へ出力するリペアオブジェクトの候補に追加する(ステップS25)。この処理が終了後、スッテップS26へ進む。
【0184】
ステップS12,S23〜S25の処理が終了後、制御部301は、すべての欠陥領域に対して適切な処理を完了したか否かを判定し(ステップS26)、処理を完了した場合はステップS27へ進み、完了していない場合はステップS26Aへ進み、次の欠陥領域の処理を開始してステップS3へ移行する。
【0185】
ステップS26の判定処理ですべての欠陥領域に対して適切な処理を完了した場合、リペア除去面積演算部359は、出力リペアオブジェクト候補のうち、自動生成したリペアオブジェクトすべてのリペア除去面積を取得する(ステップS27)。この処理が終了後、ステップS28へ進む。
【0186】
続いて、リペア除去面積演算部359は、ノード領域のリペア除去面積が除去可能な面積の上限を超えたか否かを判定し(ステップS28)、除去可能な面積の上限を超えた場合はステップS29へ進み、上限を超えていない場合はステップS32へ進む。
【0187】
ステップS28の判定処理でノード領域のリペア除去面積が除去可能な面積の上限を超えた場合、制御部301は、欠陥修正可能な欠陥領域のみ修正を行うか否かを判定する(ステップS29)。修正可能な欠陥領域のみ修正を行う場合はステップS30へ進み、欠陥修正可能な欠陥領域のみの修正を行わない場合はステップS35へ進む。例えば、修正可能な欠陥領域のみ修正を行うかどうかを予めユーザに選択させ、その選択内容をメモリ360へ保存しておく。そして、その選択内容に基づいて上記の判定を行うようにする。
【0188】
ステップS29の判定処理で欠陥修正可能な欠陥領域のみ修正を行う場合、制御部301は、除去面積の上限を超えないように登録されているリペアオブジェクトの一部を削除する(ステップS30)。そして、制御部301のコメント生成部357は、一部の欠陥領域が修正不可である旨のメッセージをメモリ360から読み出す(ステップS31)。
【0189】
ステップS28の判定処理でノード領域のリペア除去面積が除去可能な面積の上限を超えない場合、制御部301のコメント生成部357は、出力メッセージが設定されていないかどうかを判定し(ステップS32)、設定されていない場合はステップS37へ進み、設定されている場合はステップS33へ進む。
【0190】
ステップS32の判定処理で出力メッセージが設定されている場合、制御部301は、修正可能な欠陥領域のみ修正を行うか否かを判定し(ステップS33)、修正可能な欠陥領域のみ修正を行う場合はステップS37へ進み、修正を行わない場合はステップS34へ進む。
【0191】
ステップS32,S33の判定処理が終了後、制御部301のコメント生成部357は、リペアオブジェクト取得に成功した旨のメッセージを設定し(ステップS37)、ステップS38へ進む。一方、ステップS33の判定処理において修正可能な欠陥領域のみ修正を行う場合、制御部301のコメント生成部357は、修正不可能な欠陥領域である旨のメッセージをメモリ360から読み出し(ステップS34)、ステップS36へ進む。
【0192】
ステップS29の判定処理で修正可能な欠陥領域のみ修正を行う場合、制御部301のコメント生成部357は、リペアによる除去面積が上限を超えるため欠陥修正不可である旨のメッセージをメモリ360から読み出す(ステップS35)。
【0193】
ステップS34,S35の処理が終了後、制御部301は、出力リペアオブジェクト候補をすべてクリアし(ステップS36)、ステップS38へ進む。
【0194】
そして、ステップS31,S37,S36の処理が終了後、出力可能なリペアオブジェクトとメッセージをディスプレイ327へ出力する(ステップS38)。この処理が終了したらリーク欠陥に対する欠陥修正手法(リペアオブジェクト)を取得する処理を終了する。
【0195】
上述した実施の形態では、登録された繰り返しパターン内に構成される領域情報を定義し、層間ショート欠陥の実際の欠陥領域からの欠陥修正手法(リペアオブジェクト)の自動生成と、欠陥修正手法実行の可否判定を行う。それにより、従来、欠陥修正の自動化が不可能であった層間ショート欠陥の修正の自動化が可能となる。
【0196】
以上、本発明の各実施の形態の例について説明したが、本発明は上記各実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【0197】
例えば、上述した実施の形態では、フラットパネルディスプレイのガラス基板上に形成されたデザインパターンの欠陥修正を行なう場合について説明したが、修正対象はこの例に限定されるものではない。例えば半導体ウェハ、フォトマスク、磁気ディスク等、修正対象基板上に所定パターンが形成されたものに適用できる。
【0198】
また、欠陥修正装置300の制御部301で行われる一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。また、これらの処理を実行する機能はハードウェアとソフトウェアの組み合わせによっても実現できることは言うまでもない。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0199】
図5に示した制御部301は、MPU等の演算処理装置が不揮発性メモリに記録されているプログラムを実行することによって目的の機能を実現するようにしたが、同図に示す各機能ブロックはそれぞれ個別のプログラムによって実現してもよい。また、複数の機能ブロックを1つのプログラムによって実現するようにしてもよい。また、同図に示す機能ブロックをハードウェアによって実現してもよい。
【0200】
また、修正手法データベース325が欠陥修正装置300ではなく、遠方のサーバに格納され、LANやインターネット等のネットワークを介して当該修正手法データベース225にアクセスして、欠陥修正手法を取得するような形態としてもよい。
【0201】
また、本明細書における処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【符号の説明】
【0202】
1…配線基板、2…配線部、2a…欠陥配線部、3…基板、4…、5…配線、6…繰り返しパターン区域、90…リーク欠陥、91…リペアオブジェクト(囲みZapping形式)、92…リペアオブジェクト(静止Zapping形式)、100…リーク欠陥、101…外接四角形、102…リペアオブジェクト(囲みZapping形式)、103…最外周矩形、111…第1レイヤ、112…第2レイヤ、113…ノード領域、115…リペアオブジェクト、116…最外周矩形、117a,117b…切替点、121,125,127…リペアオブジェクト、122,126,128…最外周矩形、123a,123b,124a,124b…切替点、142…リペアオブジェクト、143…最外周矩形、145…レーザ照射禁止領域、146A,146B…切替点、152…リペアオブジェクト、153…最外周矩形、161,163…リペアオブジェクト、162…矩形、171…リペアオブジェクト、172…最外周矩形、173…領域、181…リペアオブジェクト、182…最外周矩形、191〜195…リペアオブジェクト(変形型)、201…リペアオブジェクト、201a〜201d…頂点、202…矩形、203a,203b…切替点、204a,204b…頂点、201a1,201c1…頂点、201A…リペアオブジェクト、202A…矩形、202a〜202d…頂点、205…最外周矩形、211,211A,211B…リペアオブジェクト、212A,212B…矩形、220…リーク欠陥、220a…中心座標、221…外接四角形、222…リペアオブジェクト(静止Zapping形式)、223…最外周矩形、232…リペアオブジェクト、233…最外周矩形、234…レーザ照射禁止領域、252…リペアオブジェクト、253…最外周矩形、261…リペアオブジェクト、262…最外周矩形、263a,263b…切替点、271,273…リペアオブジェクト、283…リペアオブジェクト、300…欠陥修正装置、301…制御部、302…欠陥修正部、303…欠陥検出部、325…修正手法データベース、351…入出力部、352…画像処理部、353…欠陥判定部、354…リペアオブジェクト生成部、355…囲みZapping最適化部、356…リペアオブジェクト判定部、357…コメント生成部、358…テンプレート選定部、359…リペア除去面積演算部、360…メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層基板における繰り返しパターン内の欠陥を検出する欠陥検出部と、
前記多層基板の欠陥を指定された欠陥修正手法により修正する欠陥修正部と、
前記欠陥検出部で検出された欠陥が層間ショート欠陥の発生が想定される領域に重なることを検出した場合、層間ショート欠陥用の欠陥修正手法に対応するオブジェクトを生成し、生成したオブジェクトを利用して前記欠陥の修正を実行する前記欠陥修正部を制御する制御部と、を備える
欠陥修正装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出された欠陥の面積が所定面積より小さい場合、前記欠陥に直接レーザ照射するためのオブジェクトを生成し、前記検出された欠陥の面積が所定面積より大きい場合、前記欠陥の周囲を囲むようにレーザ照射するためのオブジェクトを生成する
請求項1に記載の欠陥修正装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記生成したオブジェクトに基づいて欠陥修正手法を実行したと想定したとき、前記層間ショート欠陥の発生が想定される領域以外の領域における回路に影響を与える場合には、欠陥修正を行わないよう制御する
請求項2に記載の欠陥修正装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記生成したオブジェクトに基づいて欠陥修正手法を実行した場合に、前記層間ショート欠陥の発生が想定される領域に実施される欠陥修正の面積が所定面積を超える場合、欠陥修正を行わないよう制御する
請求項3に記載の欠陥修正装置。
【請求項5】
欠陥修正手法としての複数のオブジェクトが登録されたデータベースを更に備え、
前記制御部は、前記欠陥検出部で検出された欠陥が層間ショート欠陥の発生が想定される領域に重ならないことを検出した場合、前記データベースから前記欠陥に適したオブジェクトを読み出し、読み出したオブジェクトを利用して前記欠陥修正部を制御する
請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥修正装置。
【請求項6】
欠陥修正装置が備える欠陥検出部により、多層基板における繰り返しパターン内の欠陥を検出するステップと、
前記欠陥修正装置が備える制御部により、前記欠陥検出部で検出された欠陥が層間ショート欠陥の発生が想定される領域に重なることを検出した場合、層間ショート欠陥用の欠陥修正手法に対応するオブジェクトを生成するステップと、
前記制御部により、生成したオブジェクトを利用して前記欠陥の修正を実行する前記欠陥修正部を制御するステップと、を備える
欠陥修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2012−63725(P2012−63725A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210070(P2010−210070)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】