説明

欠陥分類方法及び欠陥分類システム

【課題】自動欠陥分類機能では、装置毎に適切な処理パラメータが異なるが同一の工程において複数の装置が運用される場合でも、それぞれの分類レシピにおける分類クラスに差が発生しないようにする。
【解決手段】同一の工程で異なる画像撮像装置から得られた画像から同種の欠陥画像を特定する対応欠陥特定部209、同一の工程で異なる画像撮像装置から得られた画像を変換し、比較可能な類似した画像に変換する画像変換部212、同一の工程の分類レシピについて、同一の分類クラスを定義し、特定された同種の欠陥画像をそれぞれの対応する分類レシピ内の分類クラスに登録するレシピ更新部211を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ上の欠陥等を分類する欠陥分類方法及び欠陥分類システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスにおいて、歩留まりを向上させるため、半導体ウェーハ上の欠陥の発生原因を早急に究明することが重要となっている。現状、半導体製造現場においては、欠陥検査装置と欠陥観察装置を用いて欠陥の解析を行っている。
【0003】
欠陥検査装置とは光学的な手段もしくは電子線を用いてウェーハを観測し、検出された欠陥の位置座標を出力する装置である。欠陥検査装置は広範囲を高速に処理することが重要であるため、可能な限り取得する画像の画素サイズを大きく(つまり低解像度化)することによる画像データ量の削減を行っており、多くの場合、検出した低解像度の画像からは欠陥の存在は確認できても、その欠陥の種類(欠陥種)を詳細に判別することは困難である。
【0004】
そこで、欠陥種の判別には欠陥観察装置が用いられる。欠陥観察装置とは、欠陥検査装置の出力情報を用い、ウェーハの欠陥座標を高解像度に撮像し、画像を出力する装置である。半導体製造プロセスは微細化が進み、それに伴い欠陥サイズも数十nmのオーダに達していることもあり、欠陥を詳細に観察するためには数nmオーダの分解能が必要である。
【0005】
そのため、近年では走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いた欠陥観察装置(レビューSEM)が広く用いられている。レビューSEMは、欠陥検査装置が出力した欠陥座標を用いて、ウェーハ上の欠陥の高解像度画像(欠陥画像)を自動収集するADR(Automatic Defect Review)機能を有する。
【0006】
近年、レビューSEMのADRのスループットが向上していることから、収集された多量の欠陥画像より、欠陥種を判別する作業を自動化することが望まれている。レビューSEMは、欠陥画像から欠陥種を自動的に判別し、分類するADC(Automatic Defect Classification)機能を搭載している。
【0007】
欠陥画像を欠陥種ごとに自動分類する方法として、例えば、欠陥画像を画像処理して欠陥部位の外観特徴量を定量化し、ニューラルネットワークを用いて分類する方法が特許文献1に記載されている。また、分類すべき欠陥の種類(欠陥種)が多い場合においても容易に対応可能な方法として、例えば、ルールベース分類手法と教示分類手法を組み合わせて分類する方法が、特許文献2に記載されている。
【0008】
欠陥画像の自動分類では、分類レシピに基づいて分類を行う。分類レシピには、画像処理パラメータなどの各種パラメータや、分類すべき欠陥種の情報(分類クラス)、各分類クラスに属する欠陥画像(教示画像)などが含まれる。分類レシピは、製造プロセスの変動などによって新出の欠陥種が発生した際、新出の欠陥用の分類クラスが追加され、更新される。欠陥画像の自動分類の際、新出の欠陥を分類クラス不明な欠陥(未知欠陥)として判定し、分類レシピに新分類クラスを追加して更新する方法が特許文献3に記載されている。なお、未知欠陥には、ユーザの教示間違いなどによって発生する、分類レシピ内で定義された分類クラス外の欠陥も含む。
【0009】
従来、欠陥画像の分類は人が欠陥観察装置の前で手動にて行っていたという経緯もあり、欠陥観察装置は機能の一部として、欠陥画像の自動分類機能を備えているのが一般的である。しかし、半導体製品の生産量増加に伴い、半導体ウェーハの製造ラインにおいて複数台の欠陥観察装置が導入されており、分類レシピの管理にかかるコストの増大が問題となってきている。この問題に対し、複数台の画像検出装置と情報処理装置とをネットワークで接続し、撮像した画像を情報処理装置に転送し、情報処理装置にて画像に現れる異常の有無の判定を行うこと方法が特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−21803号公報
【特許文献2】特開2007−225531号公報
【特許文献3】特開2000−57349号公報
【特許文献4】特開2004−226328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したADC機能(自動欠陥分類機能)は、撮像したSEM画像から、欠陥部位の大きさや形などの各種の特徴を特徴量として計算し、計算された特徴量からその欠陥を事前に定義された複数の欠陥クラスに分類する機能である。現在、レビューSEMは幾つかのメーカより市場投入されているが、各社とも、このADC機能を、自社のレビューSEMとセットで販売する欠陥分類システム(欠陥分類装置)に搭載し提供している。この欠陥分類システムには、上述した欠陥画像の自動分類機能のみならず、その分類結果をユーザに提示するための表示機能や、ユーザからの入力を受け付けて、自動分類の結果を修正する機能、あるいは分類結果を、製造ラインに設置された、歩留まり管理用のデータベースサーバ等に転送する機能も有している。
【0012】
ところで、半導体デバイス製造における歩留まり管理作業では、複数の異なる型式の観察装置を用いることが頻繁に発生する。この理由としては、例えば、観察作業の信頼性向上や装置稼働率の向上などが挙げられる。複数台の欠陥観察装置を用いて画像を撮像することでデータ数を増やし、信頼性および装置稼働率を向上させることができる。また、装置の購入と装置メーカからの装置供給のタイミングが合わないことにより、複数の異なる型式の装置を活用せざるをえない場合もある。なお、異なる型式の装置には、異なる複数メーカの装置の場合も、同一メーカの異なる型式の装置の場合も含まれる。
【0013】
装置の型式が異なる場合は、その性能や特性が異なる場合が多いことから、そのような性能や特性の異なる複数の装置を使いこなすことが、歩留まり管理業務には求められる。このニーズは、レビューSEM及びそれに付随する欠陥分類システムについても当てはまる。即ち、型式の異なる複数のレビューSEMの画像を分類する欠陥分類システムへのニーズが高い。
【0014】
通常、半導体ウェーハの製造は複数のプロセス(以下、工程)からなっており、工程の違いにより発生する欠陥種が異なるため、各工程に適した分類レシピを作成するのが一般的である。また、同一の工程のウェーハに対してメーカや型式の異なる装置を適用する場合、性能や特性が異なることから、分類に適切なパラメータが異なる場合が多い。また、メーカ型番が同じ場合でも、装置間の性能差(機差)によって撮像される画像の画質が異なる。そのため、分類レシピを欠陥観察装置及び工程の組合せ毎に作成することが必要となる。
【0015】
ここで、複数の欠陥観察装置が特許文献4で述べた様にネットワークで接続され、同一の工程のウェーハ上の欠陥を観察している場合を想定する。図1は、従来のシステム構成例を示しており、画像撮像装置101、101’が対応する分類モジュール103、103’と接続し、分類モジュール103、103’にはそれぞれ対応する分類レシピ104、104’が接続されている。また、これら分類モジュール103、103’は、ネットワークなどの通信手段106を通じて歩留まり管理用データベースサーバ105と接続している。分類の手順は、まず、複数台の画像撮像装置(図1では画像撮像装置1、画像撮像装置2の2台)から得られた画像に対し、それぞれの装置に対応する分類モジュール103、103’によってそれぞれ欠陥分類を行う。分類モジュール103、103’はそれぞれの分類レシピ104、104’を基に分類を行い、分類結果は通信手段106を介して歩留まり管理用データベースサーバ105に送信されて保存される。ここで、画像撮像装置101、101’は上述の欠陥観察装置に対応するものであり、分類モジュール103、103’はADCを実行可能な装置を示す。
【0016】
画像処理装置1および画像処理装置2が同一の工程のウェーハを撮像している場合、それぞれの装置から得られた欠陥画像は同一の分類クラスで分類されることが望ましい。そのためには、分類レシピ1および分類レシピ2の分類クラスを同一にし、各分類クラスに同種の欠陥が撮像された画像(以下、同種の欠陥画像)を登録する必要がある。以下、複数の分類レシピの分類クラスが同一、かつ全ての分類クラスに登録された欠陥画像がそれぞれ同一の分類クラスにおいて同種の欠陥画像である場合、分類定義が同一であるとする。なお、同一の分類クラスは、その分類クラスで分類したい欠陥種が同一であることを意味し、分類したい欠陥種が同じであるならば分類クラスの名称などが異なっていても同一の分類クラスと呼ぶ。
【0017】
ここで、従来のシステム構成例では、分類レシピ自体は画像撮像装置毎に別々に存在するため、それぞれ個別に分類レシピを設定した場合、分類レシピ104毎に分類定義が同一に保たれない可能性があるといった課題がある。例えば、図1の場合において、特許文献3の説明で述べたように、新出の欠陥が発生し、一つの画像撮像装置101に対応する分類モジュール103内の分類レシピ104が更新された場合を考える。この場合、もう一つの画像撮像装置101’に対応する分類モジュール103’内の分類レシピ104’は、分類レシピ104と独立であって更新されず、結果として、前述の個別に分類レシピを設定した場合と同様、分類レシピ毎に分類定義に差が発生する可能性がある。
【0018】
前述の通り、特許文献3、4では、同一の工程で複数のメーカや型式の異なる欠陥観察装置が運用される場合に生じる上記課題は認識されておらず、これを解決すべく分類定義を同一に保つような方法については何ら記載されていなかった。
【0019】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、同一の工程で複数の異なる欠陥観察装置が運用されている場合でも、分類定義を同一に保つようにして統計的プロセス管理の信頼性を向上させる欠陥分類システム及び欠陥分類方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
(1)試料を撮像する装置及び前記試料を製造する工程に対応する分類レシピを用いて欠陥画像を分類する欠陥分類方法であって、第一の画像撮像装置の分類レシピで定義された分類クラスと同一の分類クラスを、前記第一の画像撮像装置の分類レシピと同一の工程に対応する第二の画像撮像装置の分類レシピで定義するステップと、前記第二の画像撮像装置により撮像された欠陥画像の中から、前記第一の画像撮像装置の分類レシピで定義された分類クラスに登録された教示画像と同種の欠陥画像を特定するステップと、前記特定された欠陥画像を、前記第二の画像撮像装置の分類レシピで定義された分類クラスのうち、前記教示画像が登録された前記第一の画像撮像装置の分類クラスと同一の分類クラスに登録するステップと、を有することを特徴とする欠陥分類方法である。
(2)複数の画像撮像装置と通信手段を介して接続された欠陥分類システムであって、前記複数の画像撮像装置により撮像された欠陥画像を分類する分類手段と、分類のための情報を格納した分類レシピを管理する分類レシピ管理手段と、を有し、前記分類レシピ管理手段は、前記複数の画像撮像装置の一つである第一の画像撮像装置における分類レシピの分類クラスに登録された教示画像と同種の欠陥画像を、同一の工程に設置された前記複数の画像撮像装置の一つである第二の画像撮像装置より撮像された欠陥画像の中から特定する対応欠陥特定部と、前記教示画像を、画像変換によって前記第二の画像撮像装置から得られた欠陥画像と類似するように変換する画像変換部と、を有することを特徴とする欠陥分類システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記した課題を解決し、同一の工程に対応する複数の分類レシピにおける分類定義が同一に保たれることにより統計的プロセス管理の信頼性を向上させる欠陥分類方法及び欠陥分類システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の欠陥分類システムにおける画像撮像装置および分類モジュールのシステム構成例を示す図である。
【図2】実施例1の欠陥分類システムの構成例を示すである。
【図3】実施例1の画像撮像装置の構成例を示す図である。
【図4】実施例1の欠陥分類システムの分類処理の処理フローを示す図である。
【図5】実施例1の欠陥分類システムの分類レシピ作成処理の処理フローを示す図である。
【図6】実施例1の欠陥分類システムの分類クラス設定処理の処理フローを示す図である。
【図7】実施例1の欠陥分類システムの同種の欠陥画像を特定するGUIの一例を示す図である。
【図8】実施例1の画像撮像装置による取得画像例を示す図である。
【図9】実施例1の画像撮像装置において欠陥断面と検出器の配置の例を示す図である。
【図10】実施例1の画像撮像装置において検出器の配置と検出陰影方向を説明する図である。
【図11】実施例1の画像撮像装置において陰影検出画像の例を示す図である。
【図12】実施例1の欠陥分類システムの同種の欠陥画像を特定する処理の処理フローを示す図である。
【図13】実施例2の欠陥分類システムの分類クラス設定処理の処理フローを示す図である。
【図14】実施例2の欠陥分類システムの構成例を示す図である。
【図15】実施例2の欠陥分類システムの分類処理の処理フローを示す図である。
【図16】実施例2の欠陥分類システムの分類レシピ更新処理の処理フローを示す図である。
【図17】実施例2の欠陥分類システムの分類クラス更新処理の処理フローを示す図である。
【図18】実施例2の欠陥分類システムの基準とする分類レシピを選択するGUIの一例を示す図である。
【図19】実施例3の欠陥分類システムの分類クラス設定処理の処理フローを示す図である。
【図20】実施例3の欠陥分類システムの分類レシピ作成処理の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の例について、図を用いて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、本実施形態の例ではSEMを備えた画像撮像装置で撮像した欠陥画像を分類する場合を対象に説明するが、本発明に関わる欠陥分類システムの入力はSEM画像以外でも良く、光学式の手段やイオン顕微鏡などを用いて撮像した欠陥画像でも良い。
【実施例1】
【0024】
本発明に係る欠陥分類システムの第一の実施形態について、図2を用いて説明する。第一の実施形態の欠陥分類システム201は、N台(N≧2)の画像撮像装置200-1〜200-nと、ネットワークなどの通信手段204を介して接続される構成となっている。ここで、画像撮像装置200(200-1〜200-n)は、該当部位の画像を取得する装置であり、その詳細な構成は後述する。
【0025】
欠陥分類システム201は、複数台の画像撮像装置で得られた欠陥画像の入力を受け、これらを分類し、分類結果を、操作者に対するデータの表示及び操作者からの入力を受け付ける為のキーボード・マウス・ディスプレイ装置などを用いて構成される入出力部217に出力する機能を持つ。この欠陥分類システム201の第一の実施形態の詳細について、以下に説明する。
【0026】
欠陥分類システム201は、分類レシピの作成や更新処理を実行し、分類レシピや欠陥画像、欠陥画像に付随した情報を保存するレシピ管理部202と、各画像撮像装置から入力された欠陥画像を分類する分類モジュール203と、装置の動作を制御する全体制御部205と、入出力部217や通信手段204を介した欠陥画像等のデータ転送のための入出力I/F部206とを適宜用いて構成される。
【0027】
レシピ管理部202は、分類レシピに関連する処理を実行する処理部207と、情報を記憶する記憶部208とを有し、記憶部208は、画像撮像装置200により撮像された欠陥画像を記憶する画像記憶部213と、画像撮像装置200や工程毎に作成される分類レシピを記憶する分類レシピ記憶部214と、欠陥画像と共に画像撮像装置から得られる工程などの付随情報を欠陥画像毎に記憶する付随情報記憶部215とを適宜用いて構成される。また、処理部207は、各画像撮像装置200から得られた欠陥画像について同種の欠陥画像を特定する処理を行う対応欠陥特定部209と、分類レシピおよび欠陥画像毎に撮像された装置および工程の情報を特定する情報特定部210と、分類レシピの作成や分類クラスの更新などを行うレシピ更新部211と、画像処理によって画像の変換を行う画像変換部212とを適宜用いて構成される。なお、情報特定部210は、分類レシピ特定部214や付随情報記憶部215に記憶されている欠陥画像毎の工程情報を基に、同工程の分類レシピを特定したり、画像記憶部213に記憶されている欠陥画像の工程情報や撮像された装置の情報を特定する。処理部207の処理の手順や方法については後述する。
【0028】
分類モジュール103は、分類レシピに基づいて欠陥画像を分類する分類処理部216を含んで構成される。この分類処理部216の処理の詳細については後述する。
なお、図2で示した欠陥分類システム201の例は、一台の演算装置(以下、PC)内で運用しても良いし、複数台のPC内で分けて運用しても良い。複数のPCで運用する場合は、例えば、レシピ管理部202を一台のPCにてレシピサーバとして運用する方法も考えられる。また、図2で示した欠陥分類システム201の例では、分類モジュール203が一つの例を示したが、複数の分類モジュールを用いて構成しても構わない。複数の分類モジュールを有する場合はそれぞれ異なるPCで運用し、画像撮像装置毎に撮像した欠陥画像を処理する分類モジュールを割り当てるなどの方法も考えられる。なお、ここで示した変形例は後述の実施形態でも適用可能である。
【0029】
図3は、上述の画像撮像装置200の詳細な構成例を示す図である。画像撮像装置200は、SEMカラム301と、SEM制御部308と、入出力I/F309と、記憶部311と、付随情報作成部314とを適宜用いて構成され、これらは通信手段315を介して互いに接続されている。入出力I/F309には、入出力部310が接続され、操作者に対するデータの入出力が行われる。
【0030】
SEMカラム301は、電子源302と、試料ウェーハ307を載せるステージ306と、電子源302から試料ウェーハ307に対して1次電子ビームを照射した結果、試料ウェーハ307から発生する2次電子や後方散乱電子を検出する複数の検出器303、304、305とを適宜用いて構成される。なお、図示しないが、SEMカラム301には、この他、1次電子ビームを試料ウェーハ307の観察領域に走査するための偏向器や、検出電子の強度をデジタル変換してデジタル画像を生成する画像生成部等も適宜含まれる。
【0031】
記憶部311は、SEM撮像条件である、加速電圧やプローブ電流、フレーム加算数(同一箇所の画像を複数枚取得し、それらの平均画像を作成することでショットノイズの影響を低減する処理に用いる画像の数)、視野サイズなどを記憶する撮像レシピ記憶部312と取得画像データを保存する画像メモリ313を適宜含んで構成される。
【0032】
付随情報生成部314は、画像データ各々に付随する情報、例えば、撮像時の加速電圧、プローブ電流、フレーム加算数などの撮像条件、撮像装置を特定するID情報、画像生成のために用いた検出器303〜305の種類や性質、ウェーハのIDおよび工程、画像を撮像した日付や時間などの付随情報を作成する機能を持つ。ウェーハのIDや工程の情報は入出力部310などからユーザによって入力されても良いし、ウェーハの表面などから読み込んだり、ウェーハが格納されている箱(図示せず)などから読み出してきても良い。作成された付随情報は、入出力I/F309を介して画像データが転送される際に、その画像データとあわせて転送される。
【0033】
SEM制御部308は、画像取得などの、この画像撮像装置200にて行う全ての処理を制御する部位である。SEM制御部308からの指示により、試料ウェーハ307上の所定の観察部位を撮像視野に入れるためのステージ306の移動、試料ウェーハ307への1次電子ビームの照射、試料ウェーハ307から発生した電子の検出器303〜305での検出、検出した電子の画像化及び画像メモリ313への保存、付随情報作成部314での撮像画像に対する付随情報の作成等が行われる。操作者からの各種の指示や撮像条件の指定などは、キーボード、マウスやディスプレイなどから構成される入出力部310を通して実行される。
【0034】
なお、図3で示した画像撮像装置200の構成は一例であり、メーカや型番が異なる場合、検出器303〜305の構成・数が異なる場合がある。メーカや型番が異なると、同一の欠陥を撮像した場合でも、検出器の構成や特性の違いにより得られる撮像画像自体が異なったり、撮像画像の画質が異なるなどの差が発生する。これらの違いによって、撮像されたままの状態では、異なる装置から得られた欠陥画像を比較することが困難である。課題として上述したように、各画像撮像装置における分類レシピの分類定義を同一にするためには、異なる画像撮像装置により撮像された欠陥画像同士を比較し、同種の欠陥画像を特定する必要がある。本発明では、これら撮像画像の違いを吸収し、異なる装置から得られた欠陥画像の中から同種の欠陥画像を特定することが可能である。これら撮像画像の違いや、これら違いを吸収して比較可能にする方法については図8〜図11を用いて後述する。
【0035】
本発明に係る欠陥分類システムにおける、入力された欠陥画像を分類する処理フローについて、図4を用いて説明する。欠陥画像を分類する処理は、分類モジュール203の分類処理部216で実行される。
【0036】
まず、分類対象の欠陥画像を画像記憶部213から読み込む(S401)。つぎに欠陥画像の付随情報を付随情報記憶部215から読み込む(S402)。ここで、付随情報とは画像撮像時の条件であり、少なくとも欠陥画像を撮像した画像撮像装置を識別するためのIDおよび撮像したウェーハの工程を識別するためのIDの情報を含む。また、撮像時の加速電圧やプローブ電流、撮像視野サイズ、撮像日時、撮像座標などを記憶し、分類時の情報として用いても良い。つぎに、情報特定部210にて、欠陥画像を撮像した画像撮像装置及び撮像したウェーハの工程を特定する(S403)。処理S403の特定には、処理S402において読み出した欠陥画像の付随情報に含まれる画像撮像装置IDおよび工程IDを用いれば良い。もしくは画像記憶部213に階層構造(ディレクトリ構造)を持たせ、画像撮像装置から送信された欠陥画像を画像撮像装置及び撮像された工程ごとに階層(ディレクトリ)に分けて保存することで特定するようにしても良い。つぎに、分類レシピ記憶部214から画像撮像装置および工程ごとにある分類レシピのうち、分類対象の欠陥画像を撮像した撮像装置装置および工程に対応した分類レシピを読み込む(S404)。分類レシピの生成方法については図5を用いて後述する。なお、ここでの分類レシピとは分類処理における分類クラスの情報や、各分類クラスに属する教示画像、各分類クラスに分類するための分類識別面の情報などを含む分類パラメータ、および欠陥画像から欠陥領域を抽出する処理および特徴量を算出する処理のパラメータを含む。つぎに、読み込んだ欠陥画像から欠陥領域の抽出を行う(S405)。つぎに、抽出した欠陥領域に対して、欠陥に関する特徴を定量化した値(特徴量)を算出する(S406)。最後に、算出された特徴量と、分類レシピに含まれる分類識別面を用いて画像を分類する(S407)。欠陥の分類手法としては、ニューラルネットワークやSVM(Support Vector Machine)などを用いても良いし、特許文献2に記載されているように、ルール型分類器と教示型分類器を組み合わせて用いても良い。なお、以上は入力された1欠陥の欠陥画像を分類する際の処理フローを示したが、複数の欠陥画像を分類するには、欠陥画像の数だけS401〜S407処理を繰り返し実行すればよい。
【0037】
次に、分類レシピを作成する方法の詳細について、図5を用いて説明する。ここでの分類レシピとは欠陥画像の分類方法を定義した情報であり、欠陥の分類クラス(欠陥種)や、画像処理パラメータ、各分類クラスに分類するための分類識別面などの情報を含む分類パラメータが含まれる。前述の通り、分類レシピは画像撮像装置および工程毎に作成する必要があり、分類レシピを作成する前提として、分類レシピを作成したい工程および装置の組合せで撮像した欠陥画像が、画像記憶部213に保存されている必要がある。
【0038】
図5(a)は分類レシピを装置、工程毎に一つ一つ作成する従来の分類レシピ作成(単体の分類レシピ作成)方法を示し、図5(b)は本発明に係る分類レシピ作成方法を示している。
まず、図5(a)を用いて、従来手法である単体の分類レシピ作成方法を説明する。まず、分類クラスの定義および教示画像を登録することによって分類クラスの設定を行う(S501)。ここでは、分類クラスを定義し、それぞれの分類クラスに教示画像を登録する。次に、欠陥画像中の欠陥領域や配線パターンなどを認識するための画像処理における画像処理パラメータの設定を行い(S502)、分類パラメータを調整し(S503)、このようにして作成した分類レシピを分類レシピ記憶部に保存する(S504)。画像処理パラメータ設定処理S502では、処理S501にて登録された教示画像に対して適切な画像処理結果が得られるように、画像処理パラメータの設定を行う。処理S503の分類パラメータの調整には、例えば、処理S501で登録した教示画像を分類モジュール内の分類処理部に教示し、分類識別面を作成するなどの手法によって行えば良く、分類クラス毎に教示画像が存在すれば自動で行うことが可能である。
【0039】
次に、図5(b)を用いて、本発明に係る分類レシピ作成法を説明する。図5(b)の処理はレシピ更新部211により処理される。本発明に係る分類レシピの作成方法(図5(b))では、同一工程における複数の画像撮像装置の分類レシピを一括で作成することが可能であり、加えて作成する全分類レシピについて分類定義を同一にすることが可能である。まず、複数の画像撮像装置の分類レシピにおける共通の分類クラスの設定を行う(S511)。ここでは、全分類レシピで共通の分類クラスを定義し、それぞれの分類クラスに同種の欠陥画像を教示画像として登録する。本発明における処理S511の詳細については、図6および図7を用いて後述する。次に、処理S512によって、以下の処理S513〜S515を、処理S511で共通の分類クラス設定を行った同一工程のN台の画像撮像装置(N≧2)に対応する分類レシピ対して実行する。処理S511で共通の分類クラス設定を行った分類レシピに対応する同一工程の画像撮像装置を装置i(1≦i≦N)とする。続いて、装置iの分類レシピの画像処理パラメータの設定を行い(S513)、装置iの分類レシピの分類パラメータを調整し(S514)、作成した装置iの分類レシピを分類レシピ記憶部214に保存する(S515)。処理S513〜S515は処理の対象が装置iの分類レシピであるが、前述の処理S502〜504とそれぞれ同一の手法で実行すれば良い。
【0040】
なお、処理S502および処理S513の画像処理パラメータの設定は、 予め定義されたテーブルなどから読みこんでも良いし、ユーザがマニュアルで定義しても良い。本実施形態において、画像処理パラメータを予め定義されたテーブルから読み込む場合は、ユーザは処理S511のみを実行するだけで同工程のN台の分類レシピを作成することができる。
【0041】
また、処理S513については、1番目の装置1(i=1)についてのみユーザがマニュアルで画像処理パラメータを設定し、他の装置については装置1で設定された画像処理パラメータを後述する画像処理パラメータ変換テーブルなどを用いて変換し、その値を用いても良い。ここで、画像処理パラメータ変換テーブルとは、画像処理パラメータ変換の装置(ここでは、装置1)の画像処理パラメータから変換したい装置iなどの組合せ毎に、画像変換処理パラメータの対応する値や変換用の計算式が定義されたテーブルである。画像処理パラメータ変換テーブルを用いる場合、ユーザは処理S511および装置1に対して処理S513を行うだけで、同工程のN台の装置の分類レシピを作成することができる。
【0042】
図6は、本発明に係る欠陥分類システムにおける、分類レシピ作成における共通の分類クラスの設定時の処理フローの一例であり、図5の処理S511の詳細を示す図である。図6に示す処理フローによって、同一の工程の複数の画像撮像装置に対応する複数の分類レシピにて、共通の分類クラスを定義し、それぞれの分類クラスに同種の欠陥画像を教示画像として登録することでき、全分類レシピで分類定義を同一にすることができる。なお、図6を含め、本願における図を用いた処理フローの説明では、画像撮像装置を装置、撮像したウェーハの工程を工程と適宜略して説明する。また、装置1の工程Aについて撮像された欠陥画像を分類するための分類レシピを、装置1・工程Aの分類レシピ、装置1の工程Aから撮像された欠陥画像を装置1・工程Aの欠陥画像(あるいは、装置1・工程Aの画像)などと略し、装置2や工程Bなど、装置や工程が異なっても同様の略称で説明する。
【0043】
図6では、装置が2台(装置1、装置2)の場合において、工程Aの分類レシピを作成する場合について説明する。分類クラスを設定する前提として、分類クラスを設定したい工程(工程A)と装置(装置1、装置2)の組合せで撮像した欠陥画像が、画像記憶部213に保存されている必要がある。
【0044】
まず、画像記憶部213に格納されている工程Aの欠陥画像について、情報特定部210にて撮像した装置を特定する(S601)。工程Aの欠陥画像について、撮像した装置の特定方法としては、付随情報記憶部215などに記憶されている欠陥画像毎の付随情報などから判定しても良いし、入出力部217からユーザが指定しても良い。
【0045】
次に、工程Aの各装置(装置1、装置2)における分類レシピを作成し、各装置に共通の分類クラスを定義する(S602)。この時点で、装置1・工程Aの分類レシピと装置2・工程Aの分類レシピの分類クラスは同一の定義とすることができる。そして、装置1・工程Aの分類レシピの各分類クラスに、画像記憶部213に保存されている装置1・工程Aの欠陥画像の一部あるいは全てを教示画像として登録する(S603)。処理S602および処理S603の分類クラスおよび教示画像の登録には、入出力部217にてユーザが指定しても良いし、ファイル等に定義されている分類クラスや登録する欠陥画像の情報を読み込んでそれら情報を元に登録しても良い。次に、処理S606にて、装置2・工程Aの分類レシピの各分類クラスについて画像記憶部213に保存されている装置2・工程Aの欠陥画像を登録する。処理S606では、まず、対応欠陥特定部209にて、装置2・工程Aの欠陥画像のうち、処理S603にて装置1・工程Aの分類レシピの分類クラスに教示画像として登録した欠陥画像と同種の欠陥が撮像された画像(同種の欠陥画像)を特定する(S604)。同種の欠陥画像の特定方法としては、装置1・工程Aの各分類クラスに教示画像として登録した欠陥画像を装置2から撮像された画像に画像変換し、それらの画像の特徴量などを比較することで、装置2・工程Aの欠陥画像の中から教示画像と同種の欠陥画像を特定する。同種の欠陥画像を特定することによって、ユーザは、装置1・工程Aの分類レシピにのみ教示画像を登録すれば良く、装置2・工程Aの分類レシピへに対する教示画像の登録は自動で行うことことが可能である。この特定方法の更なる詳細については、図12を用いて後述する。最後に、処理S604で特定した装置2・工程Aの欠陥画像を、装置2・工程Aの分類レシピの対応する分類クラスにそれぞれ登録する(S605)。図6では装置が装置1及び装置2の2台の場合を例として説明したが、装置が3台以上ある場合についても、処理S606を装置の数だけ実行することによって本処理フローを適用可能である。
【0046】
図7は、本発明に係る欠陥分類システムにおいて、図6で述べた分類クラスの設定時の処理S603〜S605を実行するためのGUIの一例である。図7でも、図6の説明時と同様、装置が2台(装置1および装置2)で工程Aの分類レシピを作成する場合を例にとって説明する。
【0047】
図7において、701は工程Aの欠陥画像が撮像された装置名や工程の情報を示しており、702は各装置において撮像された複数の欠陥画像を各装置に対応した表示領域にそれぞれ並べて表示している。703は表示する欠陥画像を選択するコンボボックスであり、例えば、検出器303〜305で撮像された2次電子像や後方散乱電子像などを選択可能である。704は装置1・工程Aの欠陥についてユーザが同種の欠陥として選択した欠陥画像を示しており、画像に枠や画像をハイライトするなどによってこれらの欠陥画像を判定可能である。画像を選択するには入出力部217によってマウスやキーボード、ペンタブレットなどを用いて選択しても良いし、ファイルに画像を特定する欠陥IDなどの情報を記述しておき、それらを読み込んで選択するのも良い。705は装置1・工程Aにおいて選択した画像を、処理S602にて定義した分類クラスに登録するボタンである(S603)。画像を分類クラスに登録する方法は、画面上のボタンを押す形態に限らず、選択後にマウスによるドラッグアンドドロップ動作によって登録する方法なども考えられる。706は、装置1・工程Aで各分類クラスに教示画像として登録された欠陥画像と同種の欠陥画像を装置2・工程Aの画像から特定するボタンである(S604)。707は処理S604によって特定された同種の欠陥画像を示すマークである。画像を枠で囲む、画像をハイライトするなどによって他の画像と判別できるようにしても良い。また、画像内に分類クラスの名前や記号などを表示するのも良い。なお、同種の欠陥画像の特定は、分類クラス毎に行っても良いし、複数の分類クラスについてまとめて行っても良い。708は、処理S604によって特定された装置2・工程Aの欠陥画像が装置1・工程Aで教示画像として登録した欠陥画像と同種でないとユーザが判定した場合、装置2・工程Aの分類クラスに登録する欠陥画像を修正・変更するボタンである。709は処理S604によって特定された装置2・工程Aの欠陥画像を、装置2・工程Aの分類レシピの対応する分類クラスに登録するボタンである(S605)。なお、708のボタンによって特定された欠陥画像が変更された場合、変更された欠陥画像を装置2・工程Aの分類レシピの対応する分類クラスに登録する。
【0048】
処理S604にて、メーカや型式の異なる装置から得られた欠陥画像を比較し、同種の欠陥画像を特定するためには、検出器の構成や特性の違いに起因する撮像画像自体の違いや、撮像画像の画質の違いを考慮するとよい。以下、図8〜11を用いて説明する。
【0049】
図3に示した画像撮像装置200は検出器を3つ備えており、この画像撮像装置200では、試料ウェーハ上の観察箇所の画像を3枚同時に取得することが可能である。図8は、試料ウェーハ表面の異物について取得した3つの撮像画像の例である。図8(a)は、試料ウェーハから発生する2次電子を検出器303にて検出することで取得した画像であり、図8(b)(c)は、試料ウェーハから発生する後方散乱電子をそれぞれ、二つの検出器304、305で取得した画像である。図8(a)を上方像、図8(b)(c)をそれぞれ左像、右像と称することとする。図8(a)の上方像は、回路パターンや欠陥部位の輪郭が明瞭に観察される像である。一方、図8(b)(c)の左・右像は、表面の凹凸状態に起因して発生する陰影が観察できる画像である。このような画像の性質の違いは、検出器の配置、検出器がもつ検出電子のエネルギーバンド、試料から発生電子の軌道に影響を与えるカラム内に与えられる電磁界等によって生じる。また、画像の質は、撮像条件、例えば電子の加速電圧、プローブ電流量、フレーム加算数等によっても変化する。
【0050】
ここで、検出器の特性の違いにより、得られる画像の性質が異なる事例として、後方散乱電子の検出器304、305の方向と画像の陰影の関係について、図9〜図11を用いて説明する。図9は、試料ウェーハ307上に突起状の欠陥901と、凹み状の欠陥902が存在する場合の、試料ウェーハの断面と後方散乱電子の検出器304、305の位置関係をそれぞれ図9(a)(b)に模式的に示している。図9で示すように、後方散乱電子の2つの検出器が、試料ウェーハ307の斜め上にて、対向する位置に配置されている。1次電子ビームは直上から入射される。観察部位から発生する後方散乱電子は、そのエネルギが強くかつ方向性を持つという特性があるため、一方の検出器の方向に発生した後方散乱電子は、その逆側にある検出器にはほとんど達しない。この結果、図8(b)(c)に示したように、観察部位の凹凸状態に応じた陰影を観察可能な画像が取得できる。
【0051】
なお、この陰影の方向は、検出器304、305の試料ウェーハ307に対する相対位置が変わると変化する。図10は、検出器の方向と取得される画像の陰影の方向を模式的に示した図である。図10(a)は、検出器が座標系のX方向に沿って配置された例である。画像(a-1)(a-2)は、それぞれ検出器304及び305で得られる画像を模式的に示している。図10(a)では、検出器304及び305で得られる画像(a-1)(a-2)上の明領域と暗領域の位置は図に示すようにX方向に陰影が発生している。ここで明領域とは、この画像上で明度が高い領域である。明領域は、その部位で発生した後方散乱電子が多く検出器で検出されていることを意味し、一方、暗領域とは、その部位で発生した後方散乱電子が、その検出器では検出されない領域である。このように明暗が現れるのは、後方散乱電子は方向性を持つため、各部位における後方散乱電子の発生方向と、後方散乱電子を検出する検出器の位置・方向に依存して、画像上の明暗が決定されるからである。 図10(b)は図10(a)に対し、検出器の方向を、時計回りに45度回転させた場合を示したものである。図10(b)の配置の検出器により得られる画像(b-1)(b-2)の陰影の方向は検出器の回転に対応して回転している。同様に、図10(c)は図10(a)に対し反時計回りに45度回転させた位置に検出器を配置した場合である。同様に、図10(c)の配置の検出器により得られる画像(c-1)(c-2)の陰影の方向は検出器の回転に対応して回転している。このように、検出器の方向が変われば陰影の方向が変わる。
【0052】
一方、対象の凹凸状態によっても陰影の方向が変わることに注意が必要である。即ち、図9(a)(b)に示した凸状の欠陥と凹状の欠陥では、陰影の方向が逆になることに注意が必要である。よって、例えば図11の(a)(b)に示すように、検出器304及び305各々で画像が得られた場合に、この観察対象が凸状・凹状のいずれであるかは、検出器の構成についての情報がないと判定できない。実際のところ、本例は図11(a)が凸状の欠陥を図10(b)の検出器の構成で取得した画像であり、図11(b)が凹状の欠陥を図10(c)の検出器の構成で取得した画像を示しているが、このように、検出器の構成が異なる画像を比較する場合には、欠陥部の凹凸関係を誤認識する恐れがあることがわかる。
【0053】
図2に示した本実施例の欠陥分類システムでは、複数の画像撮像装置200が接続されているが、各画像撮像装置の型式が異なる場合もある。例えば、装置の提供メーカが異なる場合や、また、同一のメーカであっても、検出器の構成の異なる複数の製品が提供されている場合がある。ここまでの説明では、画像撮像装置の検出器の数が3であり、しかも後方散乱電子を検出するための検出器が対向する場合にその試料に対する相対位置が変化する場合を例にとって説明したが、検出器の数や、各検出機の方向、検出する電子エネルギ帯等、その他の条件についても、装置毎で異なる場合が考えられる。しかも、発生する試料のエネルギは撮像時の条件でも変化しうるため、得られる画像もこれらの条件で変化する可能性がある。
【0054】
以上、メーカや型式の異なる装置から得られた画像は、前述の通り、検出器の構成や特性の違いに起因する撮像画像自体の違いや、撮像画像の画質の違いにより、画像同士をそのまま比較することができず、同種の欠陥画像を特定することが困難である。そこで、本発明では、比較対象の画像を画像変換部212にて画像変換を行い、上記検出器の構成や特性の違いによる撮像画像自体の違い、および撮像画像の画質の違いを解消し、比較可能な画像に変換する。
【0055】
画像変換部212で行われる画像変換処理について説明する。画像変換処理とは、画像セットを入力とし、対応する付随情報を付随情報記憶部215から読み出してそれらを処理した画像セットを出力する一連の処理を意味する。具体的には、画質改善処理、陰影方向の変換処理、画像の混合処理などを含む。
【0056】
画質の改善処理としては、例えばノイズ低減処理がある。SEMでは、画像撮像時のプローブ電流が低い場合やフレーム加数が少ない場合には、S/Nが低下した画像が得られやすい。また、同じ撮像条件であっても、撮像する装置が異なる場合には、その検出器での電子検出収率が異なることに起因してS/Nが異なる画像が得られることもある。同一型式の装置であっても、調整の程度が異なれば、装置間の機差に起因するS/Nの差が生じる可能性もある。ノイズ低減処理の具体例としては、各種ノイズフィルタ処理がある。以下、S/Nが低い画像が撮像される装置1により撮像された画像から、S/Nが高い画像が撮像される装置2により撮像された画像に類似する画像を作成する場合を例にとり、その処理方法の一例を説明する。まず、装置1の画像にノイズフィルタ処理を実行する。装置2におり撮像された画像のサンプルを用意し、装置1のノイズフィルタ処理後の画像および装置2の画像の中の平坦部分における輝度値の分散を比較し、近い値(例えば、輝度値の分散の差が所定のしきい値を超える値)になるまで上記の処理を繰り返す。以上の処理は一例であるが、これらの処理によって、装置1の画像から装置2の画像に類似する画像を作成することができる。
【0057】
画質改善処理の他の例としては、1次電子ビームのビーム径に起因する画像のぼやけによる鮮鋭度の差を低減させるための鮮鋭度変換処理がある。SEMでは、数ナノメートルオーダの径に集束させた電子ビームで観察部位をスキャンするが、このビーム径が画像の鮮鋭度に影響を与える。つまり、ビームが太い場合は、ぼやけが生じ、鮮鋭度が低下した画像が得られる。つまり、1次電子ビームの集束性能が異なる複数の装置では、異なる鮮鋭度の画像像が得られることになる。得られた画像からより鮮鋭度の高い画像を得るためには、デコンボリューション処理が有効であり、逆に得られた画像からより鮮鋭度の低い画像を得るためにはローパスフィルタが有効である。以下、鮮鋭度の低い画像が撮像される装置1により撮像された画像から、鮮鋭度の高い画像が撮像される装置2により撮像された画像に類似する画像を作成する場合を例にとり、その処理方法の一例を説明する。まず、装置1の画像に対してデコンボリューション処理を行う。装置2の画像のサンプルを用意し、デコンボリューション処理を施した装置1の画像および装置2の画像に対しフーリエ変換などの処理によって周波数強度を算出し、高周波成分の強度が同程度になるまで(例えば、両者の高周波成分の強度の差が所定のしきい値を超えるまで)上記の処理を繰り返す。以上の処理は一例であるが、これらの処理によって、装置1の画像から装置2により得られる画像に類似する画像を作成することができる。
【0058】
また、画質改善処理の他の例としては、コントラスト変換処理がある。本処理には、試料表面の帯電現象によって、観察視野一面において、画像明度が緩やかに変化する場合に、この明度変化を除去する処理や、回路パターン部や欠陥部の明度を補正し、視認性が高い画像を取得する処理を含む。SEMは、撮像条件が異なる場合や、同一の撮像条件であっても撮像機種が異なる場合には、回路パターンと非パターン部での明暗関係が反転することもある。このコントラスト変換処理は、そのように反転した明度を補正することで、異なる装置間、あるいは異なる条件で撮像した画像の外観を統一させることができる。以下、コントラストの低い画像が撮像される装置1により撮像された画像から、コントラストの高い画像が撮像される装置2により撮像された画像に類似する画像を作成する場合を例にとり、その処理方法の一例を説明する。まず、装置1の画像に対してコントラスト変換処理を行う。装置2の画像のサンプルを用意し、コントラスト変換処理が実行された装置1の画像および装置2の画像の輝度値平均と分散が同定度になるまで(例えば、両者の輝度値平均と分散の差が所定のしきい値を超えるまで)上記の処理を繰り返す。以上の処理は一例であるが、これらの処理によって、装置1の画像から装置2に類似した画像を作成することができる。
【0059】
その他の画像変換処理の例として、陰影情報の変換処理がある。たとえば図10に示したように、後方散乱電子を検出することによって得られる陰影の情報は、装置における検出器の配置形態に強く影響される。図11で例示したとおり、検出器の配置形態が異なる画像が混在するときには、凹凸状態の判定を誤らせる可能性があることから、それを防ぐために、陰影の方向を変換した画像を作成する。
【0060】
具体的には、陰影方向を変換するために、画像に対する回転処理や鏡像反転処理などの幾何変換処理を行う。ただし、これらの回転処理や反転処理では、画像全体を処理対象とするため、陰影方向のみを変更することはできないことに注意が必要である。よって、回転・反転処理を行うと、撮像されている回路パターンなども同様に変換される。しかし、陰影を解析することにより凹凸を判定する処理においては、これは問題とならない。なぜなら、通常、凹凸の判定では欠陥画像と参照画像の画像比較を用いて凹凸等を判定するが、双方の画像とも、同一の回転・反転処理をしておけば比較処理を行った際に、パターンの情報は除去され、欠陥画像と参照画像で差異のある部位(即ち欠陥部)の陰影部のみが抽出できるからである。
【0061】
さらに、他の画像変換処理の例としては、画像の混合処理がある。図8では、図3に示した画像撮像装置の3つの検出器により、2次電子と後方散乱電子を分離検出して3枚の画像を取得した例を示したが、そもそも、装置の型式が異なれば、検出器の数やその検出電子の種類なども異なることが想定される。そこで、検出された複数の画像を混合することで、さらに異なる複数枚の画像を作成する。例えば、ある装置1は、2次電子画像と後方散乱画像が完全分離された像を取得することでき、一方、他の装置2では、それらが混在した画像が検出されるならば、完全に分離されて検出される装置1の画像から、各画像を混合させた複数の画像を生成することで、装置2により得られる画像に類似する画像を作成することができる。なお、上記で例示した、各種の画像変換処理は、単独で行うのではなく、組み合わせて実行することももちろん可能である。
【0062】
また、ある装置1により撮像された画像から、装置2により撮像された画像に類似した画像を作成するための画像変換を行う際、変換用のパラメータテーブルを予め用意しておき、テーブル内のパラメータを用いて変換処理を行う方法も考えられる。ここで、変換用のパラメータテーブルとは、元画像が撮像された装置(装置1)から類似した画像を作成したい対象の装置(装置2)などの組合せ毎に、画像変換処理の処理内容や、処理手順、各処理で用いるパラメータなどが記述されたテーブルである。
【0063】
次に、本発明に係る欠陥分類システムにおける、処理S604にて教示画像と同種の欠陥画像を特定する処理フローの詳細について、図12を用いてその一例を説明する。図12では、装置が2台(装置1および装置2)の場合において、装置1・工程Aに教示画像が既に登録されており、装置2で同一の工程から撮像された欠陥画像である装置2・工程Aの画像の中から教示画像と同種の欠陥画像を特定する場合を例として説明する。前提として装置2・工程Aの欠陥画像が画像記憶部213に保存されているとする。
【0064】
まず、装置1・工程Aで各分類クラスに登録した教示画像を、画像変換部212にて装置2で撮像される画像に類似する画像に変換する(S1201)。次に、処理S1201で画像記憶部213に保存されている装置2・工程Aの欠陥画像と、画像変換した装置1・工程Aの教示画像を分類クラス毎に比較する(S1202)。そして、比較した結果に基づき、装置2・工程Aの欠陥画像の中から装置1・工程Aの各分類クラスに登録された教示画像と同種の欠陥画像を分類クラス毎に特定する(S1203)。処理S1203にて同種の欠陥画像を特定する方法としては、それぞれの画像から欠陥部の凹凸度や欠陥の大きさなどの特徴量を計算し、特徴量が近い場合に同種の欠陥画像と判定するなどの手法などを用いれば良い。また、分類処理部216を用いて、同種の欠陥画像の判定をする方法も考えられる。その場合、分類クラス毎に画像変換した画像を分類処理部216に教示し、装置2・工程Aの画像の内、画像変換した画像の同種の欠陥画像を各分類クラスに分類する。同種の欠陥画像を特定する際、特徴量の計算や特定処理などで特定用のパラメータ(特定パラメータ)が必要な場合があるが、特定パラメータは予めファイルなどに定義しておいても良いし、図12の処理の前にユーザが指定しても良い。また、処理S1201にて、装置1・工程Aの教示画像を装置2の画像に画像変換するのではなく、装置2・工程Aの欠陥画像を装置1の画像に画像変換し、装置1・工程Aの教示画像と比較しても良い。他にも、装置1・工程Aの教示画像および装置2・工程Aの欠陥画像を、装置1および装置2とは異なる装置3により撮像された画像にそれぞれ画像変換し、処理S1202にて変換画像同士を比較しても良い。装置3は同一の工程に設置されている装置でも良いし、画像変換が可能な装置であれば、異なる工程に設置されている装置でも良い。
【0065】
処理S604のフローにて同種の欠陥画像を特定した際、同種の欠陥画像が画像記憶部213に保存されておらず処理S1203によって同種の欠陥画像を特定できない場合、あるいは特定された同種の欠陥画像の数が少なく分類処理部216の教示に不十分な場合も考えられる。その場合は、処理S605にて、処理S1201で画像変換した画像の一部もしくは全てを装置2・工程Aの分類レシピの各分類クラスに登録すればよい。
【0066】
装置1と装置2が同じメーカ製の同じ型番で、撮像画像の違いが機差程度のものであれば、処理S1202および処理S1203を実行せず、装置1の教示画像を画像変換した画像の一部もしくは全てを装置2・工程Aの分類レシピの各分類クラスに登録しても良い。また、装置1と装置2の機差が十分に小さい場合は、処理S604による画像変換を実行せず、装置1の教示画像の一部もしくは全てを装置2・工程Aの分類レシピの各分類クラスに登録しても良い。
【0067】
なお、図12では、装置1及び装置2の2台の装置がある場合を例として説明したが、装置が3台以上ある場合についても、処理S604を装置の数に対応して適宜実行することによって本処理フローを適用可能であることは言うまでもない。
【0068】
図5(b)の処理フローによって同一工程における複数装置の分類レシピを作成する際、作成する分類レシピと同一の工程の他装置における分類レシピが既に存在する場合も考えられる。例えば、既に装置および分類システムが設置されている工程に対し、撮像画像数を増やすことによって歩留まり管理効率を向上させることなどを目的として、装置を追加で配置する場合などが挙げられる。以下、画像撮像装置が装置1、装置2の2台の場合において、装置を運用する工程を工程A、最初に設置されていた装置を装置1、追加された装置を装置2の場合を例にとって説明する。この場合、装置1・工程Aの分類レシピは存在するが、装置2・工程Aの分類レシピは存在しないため、図5(b)および図6の処理フローによって装置1・工程Aの分類レシピと装置2・工程Aの分類レシピの両方を作成するよりも、装置2・工程Aの分類レシピのみを作成した方が効率が良い。このような装置1・工程Aの分類レシピが存在する場合に、装置2・工程Aの分類クラスを設定する処理について、図13を用いて説明する。なお、分類レシピを作成する処理フローは図5(b)で説明した処理フローと同様であるが、図5(b)の内、先に存在している分類レシピに対しては、処理S513〜S515を実行する必要はなく、新しく作成する分類レシピに対してのみ行えばよい。前提として装置2・工程Aの画像が画像記憶部213に保存されており、装置1・工程Aの分類レシピは存在するが、装置2・工程Aの分類レシピが存在しないとする。
【0069】
まず、基準とする分類レシピを選択する(S1301)。処理S1301では、既に存在する分類レシピを選択し、以下では、処理S1301にて装置1・工程Aの分類レシピが基準とする分類レシピとして選択された場合の例として説明する。次に、情報特定部210にて、基準とする分類レシピ(装置1・工程Aのレシピ)の装置及び工程情報を読み込む(S1302)。工程情報は、分類レシピ内から読み込んでも良いし、付随情報記憶部215などに記憶されている画像毎の付随情報などから判定しても良いし、入出力部203からユーザが入力しても良い。
【0070】
次に、処理S1307にて、基準とする分類レシピと同一の工程Aの画像を撮像した装置で装置1以外の装置(装置2)の分類レシピ(装置2・工程Aの分類レシピ)を新規作成し、分類クラスを設定する。処理S1307では、まず、基準とする分類レシピと同一の工程Aの画像を撮像した装置で装置1以外の装置(装置2)を特定する(S1303)。次に、装置2・工程Aの分類レシピを作成し、基準とする分類レシピ(装置1・工程Aの分類レシピ)の分類クラスと同一の分類クラスを定義する(S1304)。次に、基準とする分類レシピ(装置1・工程Aの分類レシピ)の各分類クラスに登録された教示画像と同種の欠陥画像を、画像記憶部213に保存された装置2・工程Aの画像の中から特定する(S1305)。特定する手法は、図12の説明で述べたとおりである。そして、処理S1305で特定した画像を処理S1303で新規作成した分類レシピ(装置2・工程Aの分類レシピ)における処理S1304で定義した分類クラスにそれぞれ登録する(S1306)。
【0071】
なお、処理S601で工程Aの分類レシピを特定する際、装置1・工程Aの分類レシピおよび装置2・工程Aの分類レシピの両方が分類レシピ記憶部214に存在しない場合、図6の処理フローを実行し、装置1・工程Aの分類レシピおよび装置2・工程Aの分類レシピのいずれかが存在する場合は図13の処理フローを実行するなどの条件分岐を行う方法も考えられる。
【0072】
以上、本実施例では、複数の画像撮像装置が運用されており、画像撮像装置および工程の組合せ毎にそれぞれ複数の分類レシピが存在する際、ある分類レシピで定義された分類クラスと同一の分類クラスを同一の工程の他の分類レシピで定義し、各分類クラスに登録された画像と同種の欠陥画像を特定して登録することで、同一の工程では分類レシピ内の分類定義を同一に保つ方法について述べ、また、異なるメーカおよび型式の画像に対して同種の欠陥画像を特定する方法として、画像変換によって比較対象の画像を類似した画像に変換し、変換した画像や変換した画像の特徴量を比較する方法を述べたが、本願で開示した発明は上記した実施形態や変形例に限られず、種々変更可能である。また、上記した変形例は本実施例1にのみに適用されるものではなく、以下の他の実施例にも適宜適用可能であることは言うまでもない。
【実施例2】
【0073】
本発明に係る欠陥分類システムの第二の実施形態について、図14〜図18を用いて説明する。本実施例2は、実施例1と同じ処理フローによりレシピ作成を行う欠陥分類システムである。実施例1との違いは、欠陥分類を行う際、新出の欠陥を未知欠陥として判定する機能や、未判定された知欠陥を用いて分類レシピを更新する機能を有することであり、以下、欠陥分類方法及び分類レシピの更新方法を説明する。本実施例では実施例1と同様にSEMを備えた観察装置で撮像した画像を分類する場合を例にとって説明するが、本実施例にかかる欠陥分類システムの入力はSEM画像以外でも良く、光学式の手段やイオン顕微鏡などを用いて撮像した画像でも良い。
【0074】
図14は、本実施例2に係る欠陥分類システムの一実施例の構成図を示している。実施例1に係る欠陥分類システムと同様の構成については説明を省略する。実施例1に係る欠陥分類システムとの相違点は、分類モジュール203’内に未知欠陥を判定する未知欠陥判定部1402及び、レシピ管理部202’内の記憶部208’内に判定された未知欠陥を保存する未知欠陥記憶部1401である。
【0075】
以下、本実施例2に係る欠陥分類システムによる分類処理フローの一例について、図15を用いて説明する。図15における処理S401〜S406は実施例1の分類処理の処理フロー(図4)と同様であり、説明を省略する。本実施例2では、特徴量を算出(S406)した後、未知欠陥判定部1402にて欠陥を分類及び未知欠陥判定を行う処理を行い(S1501)、判定された未知欠陥を未知欠陥記憶部1401に保存する処理(S1502)を行う部分が異なる。未知欠陥の判定には、例えば、分類レシピに登録された教示画像の特徴量分布と分類対象の特徴点のユークリッド距離に基づいて判定する方法などを用いれば良く、例えば前記のユークリッド距離が設定値以上の場合に未知欠陥と判定する方法などが考えられる。
【0076】
図16は未知欠陥によって同一工程の複数装置に対応する分類レシピに同一の新分類クラスを定義し、分類レシピを更新する際のフローである。処理S512〜S513は実施例1の図5(b)を用いて説明した処理と同様であり、説明を省略する。本実施例では、処理S1601にて共通の新分類クラスを追加し、未知欠陥を新分類クラスに登録する処理が含まれる部分が異なる。処理S1601の詳細については図17を用いて後述する。また、図16における処理S513および処理S514では、各分類レシピの更新前の画像処理パラメータ、分類パラメータを変更せずにそのまま設定しても良い。その場合、ユーザは処理S1601のみ実行することで、複数の分類レシピを同一の分類定義で更新することができる。
【0077】
図17を用いて分類クラスの更新の処理フローを示す。図17の処理フローによって、同工程の複数装置における分類レシピを同一の分類定義で一括して更新することができる。図17では、二台の装置(装置1および装置2)が工程Aで運用されている場合を例として説明する。図17の例では、前提として、装置1・工程Aの分類レシピおよび装置2・工程Aの分類レシピが存在し、装置1・工程Aの分類レシピが更新されたとする。
【0078】
まず、未知欠陥などによって新クラスが定義され、分類クラスが更新された分類レシピを特定する(S1701)。特定手法としては、図16で説明した分類レシピの更新処理が実行され、処理S504の分類レシピが保存された際に分類レシピ毎に更新フラグなどを設定し、更新フラグが設定されている分類レシピを特定しても良いし、図18にて後述するGUIなどを用いてユーザが選択しても良い。以下、図17の説明では、処理S1701で装置1・工程Aの分類レシピが更新され、特定された場合を例として説明する。
【0079】
次に、処理S1707によって、処理S1701で特定した工程について他の装置における分類レシピ内の分類クラスを更新する。図17の例では、装置2・工程Aの分類レシピの分類クラスを更新する。処理S1707では、まず、情報特定部210にて、更新された分類レシピの装置及び工程情報を分類レシピ記憶部214から読み込み(S1702)、更新された分類レシピと同一の工程および他の装置における分類レシピを特定する(S1703)。図17の例における処理S1703では、装置2・工程Aの分類レシピが特定される。次に、処理S1703で特定した分類レシピ(図17の例では、装置2・工程Aの分類レシピ)に、先に更新された分類レシピ(図17の例では、装置1・工程Aの分類レシピ)の新分類クラスと同一の分類クラスを定義する(S1704)。続いて、処理S1707のフローで更新するレシピ(図17の例では、装置2・工程Aの分類レシピ)に対応する未知欠陥(即ち、装置2・工程Aの未知欠陥)の中から、先に装置1・工程Aの分類レシピで新分類クラスに追加した未知欠陥画像と同種の欠陥画像を特定する(S1705)。特定方法は、実施例1の図12を用いて説明した方法と同様の方法を用いればよい。次に、処理S1705で特定した未知欠陥を処理S1704で装置2・工程Aの分類レシピ内に定義した新分類クラスに登録する(S1706)。
【0080】
なお、処理S1705にて、未知欠陥の中から同種の欠陥画像を特定する際、付随情報記憶部215に保存されている未知欠陥の撮像時期を参照することで、同種の未知欠陥を特定する処理で比較する画像数を減少させることができる。図17の例では、装置1・工程Aの分類レシピの新分類クラスに登録された未知欠陥が撮像された時期以前には同種の未知欠陥が発生していなかったと仮定でき、装置2・工程Aの未知欠陥の中で前記の時期以前に撮像された未知欠陥には同種の欠陥画像が含まれていないことになる。装置2・工程Aの未知欠陥の内、撮像された時期が装置1・工程Aの新分類クラスに登録された未知欠陥が撮像された時期以降のものの中から図12のフローを用いて同種の欠陥画像を特定すると良い。
【0081】
図18は、同一の工程の分類レシピをリスト化して表示し、分類クラスの更新を行うGUIの一例である。1801は同一の工程おける分類レシピをリスト化して表示する領域である。1802は1801にてリスト化して表示する工程名を示している。本図の例では、装置1〜装置4の工程Aにおける分類レシピをリスト化して表示している。リスト化して表示する際、分類クラス名(1803)、装置名(1804)、工程名(1805)、分類クラス数(1806)、教示されている画像数(1807)などの情報も一緒に表示しても良い。1801で示す工程Aの分類レシピの中で新クラスが定義され、更新された分類レシピは1808の様に線で囲ったり、背景色を変更したり、マークをつけるなどの方法によって更新されていない分類レシピから判別できるようにする。1809は、図17の処理フローによって更新された分類レシピを基準として、同一の工程の分類レシピの更新を指示するボタンであり、ボタンを押すことで他の装置の同一の工程の分類レシピを更新する。この際、中には同一の工程の分類レシピだが、他の分類テストを行うためなどの理由で更新したくない分類リストが存在する場合もあり得る。その場合は、各分類レシピに対応するチェックボックス(1810)などを配置し、1809のボタンを押した際に、1810でチェックされた分類レシピのみ分類クラスの更新を行えば良い。
【実施例3】
【0082】
本発明に係る欠陥分類システムの第三の実施形態について、図19および図20を用いて説明する。本実施例3は、実施例2と同じ処理フローにより分類レシピ作成および更新を行う欠陥分類システムである。実施例2との違いは、欠陥分類システム201が複数設置されていることであり、以下、本実施例3における分類レシピの作成方法、及び更新方法について説明する。本実施例3では実施例2と同様にSEMを備えた観察装置で撮像した画像を分類する場合を対象に説明するが、本実施例にかかる欠陥分類システムの入力はSEM画像以外でも良く、光学式の手段やイオン顕微鏡などを用いて撮像した画像でも良い。
【0083】
図19は、本実施例に係る欠陥分類システムの一実施例の構成図を示している。実施例1及び実施例2に係る欠陥分類システムと同様の構成については説明を省略する。他の実施例と異なる点は、通信手段204を介して欠陥分類システム201が複数台(M≧2台)配置されている点である。M=Nとして画像撮像装置200毎に欠陥分類システム201を配置しても良いし、M≠Nとして一つの欠陥分類システムで複数の画像撮像装置200から撮像された画像を扱っても良い。
【0084】
図20を用いて本実施例3における分類レシピ作成の処理フローを示す。図20の説明では、欠陥分類システムが二台設置されている際、最初に欠陥分類システム1において、工程Aの分類レシピが作成された場合について説明する。
【0085】
図20で示す処理フローでは、欠陥分類システム内で実行される処理フロー(S2001)と、欠陥分類システム2内で実行される処理フロー(S2002)があり、まず処理フローS2001が実行される。
【0086】
欠陥分類システム1内の処理フローS2001ではまず、分類レシピを作成する工程を指定する(S2003)。以下の説明では、処理S2003にて工程Aが指定された場合について説明する。次に、欠陥分類システム1内に保存された工程Aの欠陥画像において、各装置に対応する分類レシピを作成する(S2004)。処理S2004は、図5(b)で説明した同一工程における複数装置の分類レシピ作成の処理フローおよび図6で説明した共通の分類クラス設定の処理フローを実行すれば良い。次に、欠陥分類システム2内の工程Aの各装置における分類レシピの作成を指示する(S2005)。分類レシピの作成指示信号と、処理S2004で作成した欠陥分類システム1の工程Aの分類レシピの一部あるいは全て、作成する工程の情報などを欠陥分類システム2に送る。
【0087】
欠陥分類システム2内の処理フローS2002では処理S2005にて送信された分類レシピや工程情報を元に、工程Aの各装置における分類レシピを作成する(S2006)。処理S2006では、欠陥分類システム1の工程Aの分類レシピが既にあるため、これらの分類レシピを、図13中の基準とする分類レシピとして、図5(b)および図13で説明した処理フローにて分類レシピの作成および分類クラスの設定を行う(S2006)。
【0088】
以上、欠陥分類システムが二つ設置されている場合について説明したが、三台以上設置されている場合にも、S2005で各欠陥分類システムに分類レシピの作成指示をし、処理フローS2002を各欠陥分類システム内で実行することによって適用可能である。
【0089】
また、図20の処理フローを利用して、複数の欠陥分類システムについて分類レシピの更新を行うことも可能である。そのためには、図20の処理S2003および処理S2004を、図16および図17で説明した処理フローに置き換え、処理S2006も同様に図16および図17の処理フローで置き換えれば良い。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。ここで述べた実施形態は、レビューSEMで撮像した欠陥画像を自動分類する機能(ADC)を例にとり、その具体的な処理内容である、同一の分類クラスを有する分類レシピの作成および同一の分類クラスを追加する更新手法を述べたが、分類機能を有し、分類クラスを同一化する必要のある他の欠陥観察装置・検査装置に対しても、画像変換によって比較可能な類似画像を生成可能であるならば、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
101、200…画像撮像装置、103、203…分類モジュール、201…欠陥分類システム、202…レシピ管理部、203…分類モジュール、204…通信手段、205…全体制御部、206…入出力I/F部、207…処理部、208…記憶部、209…対応欠陥特定部、210…情報特定部、211…レシピ更新部、212…画像変換部、213…画像記憶部、214…分類レシピ記憶部、215…付随情報記憶部、216…分類処理部、217…入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を撮像する装置及び前記試料を製造する工程に対応する分類レシピを用いて欠陥画像を分類する欠陥分類方法であって、
第一の画像撮像装置の分類レシピで定義された分類クラスと同一の分類クラスを、前記第一の画像撮像装置の分類レシピと同一の工程に対応する第二の画像撮像装置の分類レシピで定義するステップと、
前記第二の画像撮像装置により撮像された欠陥画像の中から、前記第一の画像撮像装置の分類レシピで定義された分類クラスに登録された教示画像と同種の欠陥画像を特定するステップと、
前記特定された欠陥画像を、前記第二の画像撮像装置の分類レシピで定義された分類クラスのうち、前記教示画像が登録された前記第一の画像撮像装置の分類クラスと同一の分類クラスに登録するステップと、
を有することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項2】
請求項1記載の欠陥分類方法であって、
前記特定するステップは、前記第一の画像撮像装置の分類レシピで定義された分類クラスに登録された教示画像を、前記第二の画像撮像装置で撮像された画像と類似するように画像変換するステップを有することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項3】
請求項2記載の欠陥分類方法であって、
前記特定するステップでは、前記画像変換された画像と前記第二の画像撮像装置により撮像された欠陥画像とを比較することにより、前記同種の欠陥画像を特定することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項4】
請求項3記載の欠陥分類手法であって、
前記特定するステップでは、前記画像変換された画像から算出された特徴量と、前記第二の画像撮像装置により撮像された欠陥画像から算出された特徴量とを比較することにより、前記同種の欠陥画像を特定することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項5】
請求項1記載の欠陥画像の分類方法であって、
前記特定するステップでは、前記第一の画像撮像装置の分類レシピで定義された分類クラスに登録された教示画像と、前記第二の画像撮像装置で撮像された欠陥画像とを、第三の画像撮像装置により撮像された画像と類似するように画像変換するステップを有することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項6】
請求項5記載の欠陥画像の分類方法であって、
前記特定するステップでは、前記教示画像を画像変換した画像と、前記欠陥画像を画像変換した画像と、を比較することによって、前記同種の欠陥画像を特定することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項7】
請求項6記載の欠陥分類手法であって、
前記特定するステップでは、前記教示画像を画像変換した画像から算出された特徴量と、前記欠陥画像を画像変換した画像から算出された特徴量とを比較することにより、前記同種の欠陥画像を特定することを特徴とする欠陥分類手法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の欠陥分類方法であって、
前記特定するステップでは、
前記第二の画像撮像装置により撮像された欠陥画像のうち未知欠陥と判定された未知欠陥画像の中から、前記第一の画像撮像装置の分類レシピで定義された分類クラスに登録された教示画像と同種の欠陥画像を特定することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の欠陥分類方法であって、
前記第二の画像撮像装置により撮像された欠陥画像の中から特定された画像に対してマークを表示するステップを有することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の欠陥分類方法であって、
前記第二の画像撮像装置により撮像された欠陥画像の中から特定された画像を、表示画面上の一つのウィンドウ内にまとめて表示するステップを有することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項11】
請求項2乃至4のいずれかに記載の欠陥分類手法であって、
前記登録するステップでは、
前記画像変換した画像を、前記第二の画像撮像装置の分類レシピ内で定義された分類クラスのうち、前記教示画像が登録された前記第一の画像撮像装置の分類クラスと同一の分類クラスに登録することを特徴とする欠陥分類方法。
【請求項12】
複数の画像撮像装置と通信手段を介して接続された欠陥分類システムであって、
前記複数の画像撮像装置により撮像された欠陥画像を分類する分類手段と、
分類のための情報を格納した分類レシピを管理する分類レシピ管理手段と、
を有し、
前記分類レシピ管理手段は、
前記複数の画像撮像装置の一つである第一の画像撮像装置における分類レシピの分類クラスに登録された教示画像と同種の欠陥画像を、同一の工程に設置された前記複数の画像撮像装置の一つである第二の画像撮像装置より撮像された欠陥画像の中から特定する対応欠陥特定部と、
前記教示画像を、画像変換によって前記第二の画像撮像装置から得られた欠陥画像と類似するように変換する画像変換部と、
を有することを特徴とする欠陥分類システム。
【請求項13】
請求項12記載の欠陥分類システムであって、
前記分類手段は、分類レシピに分類クラスが定義されていない未知欠陥を判定する未知欠陥判定手段を有し、
前記分類レシピ管理手段は、さらに、
前記教示画像と同種の欠陥画像を、前記第二の画像撮像装置により撮像された欠陥画像の中で分類レシピに分類クラスが定義されていない未知欠陥であると前記未知欠陥判定手段により判定された欠陥画像の中から特定することを特徴とする欠陥分類システム。
【請求項14】
請求項12又は13記載の欠陥分類システムであって、
前記分類レシピ管理手段は、さらに、
前記第二の画像撮像装置により撮像された欠陥画像の中から特定された画像がマーク表示されるように、表示画面を有する入出力部にデータを出力することを特徴とする欠陥分類システム。
【請求項15】
請求項12あるいは13に記載の欠陥分類システムであって、
前記分類レシピ管理手段は、さらに、
前記第二の画像撮像装置から撮像された画像の中から特定された画像を、表示画面上の一つのウィンドウ内にまとめて表示することを特徴とする欠陥分類システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−225768(P2012−225768A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93603(P2011−93603)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】