説明

欠陥布片検査用の展張装置

【課題】 シーツのような大面積で汚れや破れ等の欠陥部のある欠陥布片の欠陥レベルを検査するのに、従来では二人の作業員により欠陥布片を展張させながら欠陥部を捜していたので、作業効率が非常に悪かった。
【解決手段】 欠陥布片検査用の展張装置において、所定大きさを有する立面状の機枠1と、該機枠1の前面部において展張すべき布片S0の上辺部Saの両角部Sc,Scを保持して布片上辺部Saを左右に展張させる左右展張装置2と、該左右展張装置2で保持された布片S1を該布片S1の下辺部Sbが床面Fから離間する高さまで上昇させる昇降装置3とを備え、欠陥布片S0の一辺の両角部Sc,Scを左右展張装置2(両チャック)に保持させるだけで、該布片を吊上げ状態できれいに展張させ得るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シーツのような大面積布片であって汚れや破れ等の欠陥部がある欠陥布片の欠陥レベルを検査するために使用する欠陥布片検査用の展張装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院やホテル等ではシーツのような大面積布片が大量に使用され、その使用済みの布片は、ランドリー工場において洗濯・乾燥させ、アイロン仕上げをした後、小さく折畳んで発注先に納品する。
【0003】
又、ランドリー工場では、処理すべき大面積布片(シーツ)を一連の処理ライン上で展張させた状態で、該布片に汚れや破れ等の欠陥部があるかどうかを監視カメラで監視し、欠陥部があると判断した場合にはその欠陥布片を正規の処理ラインから排除するようにしている。この種の欠陥部検出装置としては、従来から例えば特開平6−228861号公報(特許文献1)、特開2004−177143号公報(特許文献2)等に記載されたものがある。尚、特開平6−228861号公報(特許文献1)のものは、布片の片面側からのみ欠陥部を検出するものであり、特開2004−177143号公報(特許文献2)のものは、布片の両面から欠陥部を検出するようにしたものである。
【0004】
そして、上記検出装置で欠陥部有りと判断された(排除された)欠陥布片は、ある程度の枚数を溜めておき、後でそれらの欠陥布片を1枚ずつ展張させて目視により欠陥レベル(汚れや破れ等の欠陥種類、及び欠陥度合)をチェックしていた。
【0005】
ところで、シーツのような布片は、大面積(各種サイズがあるが、大サイズでは約3m×3m程度)を有しており、従来では、該布片の欠陥部をチェックするのに二人の作業員により手作業で行っていた。即ち、2人の作業員が布片の対向側縁の一端側をそれぞれ摘まんで広げ、その布片の他端側を手繰り寄せながら順次目視により欠陥部を捜し出し、その欠陥部のレベル(欠陥内容)を判別していた。尚、欠陥布片は、欠陥レベルによって、そのまま正常品(欠陥レベルが許容範囲内の場合)とするか、再洗濯(汚れの場合)するか、補修(破れの場合)するか、廃棄(汚れ除去不能又は補修不能の場合)するか、の選別が行われて、それぞれの処理工程に送られる。
【0006】
【特許文献1】特開平6−228861号公報
【特許文献2】特開2004−177143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来から行われている欠陥布片の欠陥レベル検査作業では、次のような問題があった。
【0008】
まず、欠陥布片の欠陥部を捜し出すには該布片を展張させる必要があるが、シーツのような大面積布片を手作業で展張させるには二人の作業員が必要であるので、人件費コストが高くつく。
【0009】
又、布片展張作業は手作業で行っており、且つ布片(シーツ)が大面積であるので二人の作業員では一度に全展張させることができずに一端側から他端側を順次手繰り寄せながら欠陥部を捜していたので、作業が面倒であり、しかも1枚当たりの検査時間が長くかかっていた。
【0010】
さらに、欠陥レベル検査は、通常は布片の片面(上面)側からしか見ないので、裏面に汚れがある場合には見落とすことがあり、ときには欠陥布片の欠陥レベルを見間違えることがあった(その結果、間違った選別が行われる)。
【0011】
そこで本願発明は、欠陥布片の欠陥部検出作業における上記した従来の問題点に鑑み、大面積布片であっても一人で簡単且つ短時間で展張させることができ、しかも欠陥部の検出が容易に行えるようにした欠陥布片検査用の展張装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0013】
本願請求項1の発明
本願請求項1の発明は、シーツのような大面積を有し且つ汚れや破れ等の欠陥部がある欠陥布片を吊上げ状態で上下・左右に展張させるための欠陥布片検査用の展張装置を対象にしている。尚、シーツは各種サイズのものがあるが、大サイズのシーツでは約3m×3m程度の面積を有している。
【0014】
そして、この請求項1の展張装置は、所定大きさを有する立面状の機枠と、該機枠の前面部において展張すべき布片の上辺部の両角部を保持して布片上辺部を左右に展張させる左右展張装置と、該左右展張装置で保持された布片を該布片の下辺部が床面から離間する高さまで上昇させる昇降装置とを備えて構成されている。
【0015】
機枠には、左右一対の支柱を有している。この両支柱は、上下・左右に展張させた吊上げ展張布片の上下幅(約3m)よりやや高い高さを有し、且つ前記吊上げ展張布片の左右幅(約3m)よりやや大きい間隔を有する状態で設置されている。
【0016】
左右展張装置は、左右の支柱間に跨がる長さを有する横架材と、該横架材に装備された左右一対のチャックと、該各チャックを横架材に沿って左右近接・離間方向に移動させるチャック左右動装置とを有している。
【0017】
横架材は、昇降装置により左右の支柱に対して上下動し得る状態で設置されている。各チャックは、展張すべき布片の一辺の各角部をそれぞれ保持するものである。チャック左右動装置は、各チャックを、人の肩幅程度の間隔まで近づける近接位置と布片の一辺を緊張させる程度まで展張させる離間位置との間で左右に移動させるものである。このチャック左右動装置の動力源としては、エアシリンダが使用できるが、モータを使用してもよい。尚、チャック左右動装置は、布片上辺部の各角部を保持していた各チャックが、該布片上辺部が左右に緊張するまで移動した時点(所定の負荷がかかる)で展張作用が停止するようになっている。従って、このチャック左右動装置は、サイズや縦横の向きによって布片上辺部となる一辺の長さが異なっても、それぞれ布片上辺部を緊張させるまで展張させることができる。
【0018】
昇降装置は、左右展張装置の横架材を上下動させることによって、各チャックを人の肩高さ程度まで降下させた低位置と各チャックで保持された布片の下辺部が床面から離間する程度まで上昇させた高位置との間で上下動させ得るようになっている。この昇降装置の動力源としては、エアシリンダが使用できるが、モータを使用してもよい。
【0019】
ところで、この展張装置で展張される欠陥布片は、通常の処理ライン上で欠陥部検出装置により欠陥部(汚れや破れ等)があると判断されたものであるが、その欠陥布片の欠陥レベル(内容、程度)は様々である。又、検査すべき欠陥布片は、予め多数枚を展張装置の近傍に運んでおいて、順次1枚ずつ欠陥レベルを検査する。
【0020】
この請求項1の展張装置は、次のようにして使用される。
【0021】
布片の展張作業開始前には、左右展張装置を人の肩高さ程度の低位置まで降下させ、且つ各チャックを人の肩幅程度まで近接させた位置に待機させておく。そして、1枚の欠陥布片を取り出してその任意の一辺の両角部を捜し出し、その各角部をそれぞれ各チャックに保持させる。次に、左右展張装置を作動させて布片上辺部が緊張するまで各チャックを離間させるとともに、昇降装置を作動させて展張布片の下辺部が床面から離間するまで左右展張装置を上動させる。尚、左右展張装置と昇降装置は同時に作動させて、布片の左右展張動作と布片の吊上げ動作を同時進行させてもよい。この状態では、布片は上下・左右に展張された状態で吊上げられているが、この吊上げ展張布片に絡まり部分があれば布片の側縁部を引っ張ったりゆすったりしてきれいに展張させるとよい。
【0022】
次に、吊上げ展張された布片を作業員が目視により布片前面側から見渡して欠陥部(汚れや破れ等)を見つけ、その欠陥レベル(内容、程度)を確認する。そして、確認した欠陥レベル(内容、程度)に基いて、当該布片を、そのまま正常品(欠陥レベルが許容範囲内の場合)とするか、再洗濯(汚れの場合)するか、補修(破れの場合)するか、廃棄(汚れ除去不能又は補修不能の場合)するか、を判定する。欠陥レベルを確認した吊上げ展張布片は、各チャックを保持解除させることにより自重で床面上に落下し、該欠陥布片を判定した内容の所定場所に選別する。
【0023】
又、この展張装置では、各チャックが布片角部を保持解除した後、昇降装置が降下側に作動するとともに、チャック左右動装置がチャック近接側に作動して、左右展張装置が元の待機位置に戻される。そして、順次同様に次の欠陥布片を吊上げ展張し、欠陥レベルを確認して選別する。
【0024】
このように、本願請求項1の展張装置では、欠陥布片の任意の一辺の両角部を捜し出して、その両角部を各チャックに保持させるだけで後は自動できれいに吊上げ展張させることができ、さらに欠陥部の欠陥レベルを確認するのに吊上げ展張布片を前面側から見渡すだけでよい。従って、欠陥布片の検査作業を全て一人の作業員で行うことができる。
【0025】
尚、この請求項1の展張装置による欠陥部検査では、布片の欠陥部が比較的薄い汚れで吊上げ展張時にその汚れが背面側にのみある場合には、欠陥布片であっても吊上げ展張布片の前面側から欠陥部を見つけられないことが想定される。そのように、欠陥布片として排除されたものであって、吊上げ展張状態で前面側から欠陥部を確認できないときには、その欠陥布片を裏返して再度吊上げ展張させて検査するとよい。
【0026】
本願請求項2の発明
本願請求項2の発明は、上記請求項1の展張装置において、機枠の前面部において吊上げ状態で展張されている展張布片の背面側に照明装置を設けている。
【0027】
又、この請求項2の展張装置では、機枠前面部で吊上げ展張された布片と照明装置の間に半透明(例えば乳白色)のスクリーンを介在させてもよい。
【0028】
シーツのような布片は、比較的薄い織物製であるために照明装置からの照明光を通す性質があり、吊上げ展張布片の背面側から照明光を当てると、吊上げ展張布片の裏面に欠陥部がある場合でも、その欠陥部を透かして見ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本願請求項1の発明の効果
本願請求項1の展張装置は、所定大きさを有する立面状の機枠と、布片の上辺部を左右に展張させる左右展張装置と、該左右展張装置で保持された布片上昇させる昇降装置とを備えているので、次のような効果がある。
【0030】
(1) 欠陥布片を展張させるのに、該布片の任意の一辺の両角部を捜し出して、その両角部を左右展張装置(各チャック)に保持させるだけで後は自動で吊上げ展張させることができるので、布片の展張作業を簡単且つ短時間で行える。
【0031】
(2) 欠陥布片を吊上げて展張させるので、欠陥布片を全面に亘ってきれいに展張させることができ、それによって欠陥部が複数箇所あっても容易に発見できる(見落としがなくなって検査精度が良好になる)。
【0032】
(3) 欠陥布片の展張作業及び欠陥レベル検査作業を一人の作業員で行えるので、人件費コストを安価にできる。
【0033】
本願請求項2の発明の効果
本願請求項2の発明は、上記請求項1の展張装置において、機枠の前面部において吊上げ状態で展張されている展張布片の背面側に照明装置を設けているので、上記請求項1の効果に加えて次の効果がある。
【0034】
即ち、この請求項2の展張装置では、吊上げ展張布片の背面側から照明光を当てることができるので、吊上げ展張布片の裏面に欠陥部がある場合でも、その欠陥部を透かして見ることができ、より精度の高い(見落としのない)欠陥部の検査ができる。
【実施例】
【0035】
以下、図1〜図3を参照して本願実施例の欠陥布片検査用の展張装置を説明する。
【0036】
ところで、ランドリー工場では、病院やホテル等で使用されたシーツのような大面積布片を、洗濯・乾燥し、アイロン仕上げをした後、小さく折畳むという一連の処理工程を行っている。又、ランドリー工場では、処理工程の途中(折畳み前)に大面積布片(シーツ)に汚れや破れ等の欠陥部があるかどうかを監視カメラで監視し、欠陥部があると判断した場合にはその欠陥布片を正規の処理ラインから排除するようにしている。そして、欠陥部有りと判断された(排除された)欠陥布片は、後で1枚ずつ展張させて欠陥レベル(汚れや破れ等の欠陥種類又は欠陥度合)をチェックし、その欠陥レベルによって、そのまま正常品とするか、再洗濯するか、補修するか、廃棄するか、の選別が行われる。尚、シーツは、各種のサイズがあるが、大サイズのものでは約3m×3m程度の大面積を有している。
【0037】
図1〜図3に示す実施例の展張装置は、上記のように欠陥部有りとして排除された欠陥布片を、吊上げ状態で上下・左右に展張させるためのものである。
【0038】
この実施例の展張装置は、図1及び図2に示すように、所定大きさを有する立面状の機枠1と、該機枠1の前面部に設けられた左右展張装置2と、該左右展張装置2を昇降させる左右一対の昇降装置3,3と、後述する吊上げ展張布片S2の背面側に設置された照明装置4,4,4とを備えて構成されている。
【0039】
機枠1は、ベース材11の左右各端部上にそれぞれ所定高さの支柱12,12を立設し、該各支柱12,12の上端部を上梁材13で連結して、正面視四角形の枠状に形成している。
【0040】
左右の両支柱12,12は、上下・左右に展張させた吊上げ展張布片(図1のS2の状態)の上下幅(約3m)よりやや高い高さを有し、且つ吊上げ展張布片S2の左右幅(約3m)よりやや大きい間隔を有する状態で設置されている。従って、この機枠1の内部(ベース材11と各支柱12,12と上梁材13で囲われた内部)には、吊上げ状態で上下・左右に展張される展張布片S2の外形(大サイズで約3m×3mの大きさがある)よりやや大きい面積の空間部を有している。
【0041】
左右展張装置2は、左右の各支柱12,12間に跨がる長さを有する横架材20と、該横架材20に装備された左右一対のチャック21,21と、該各チャック21,21を横架材20に沿って左右近接・離間方向に移動させるチャック左右動装置25とを有している。
【0042】
横架材20は、この実施例では図3に示すように縦断面C形の長尺型材が使用されている。この横架材20は、その左右各端部を左右の各昇降装置3,3のエンドレス索33,33(後述するように上下に走行する)に固定して支持されている。そして、この横架材20は、後述するように左右の各昇降装置3,3を作動させることによって機枠1の前面部において水平姿勢を維持したまま上下動せしめ得るようになっている。
【0043】
左右の各チャック21,21は、展張すべき布片(S0〜S2)の上辺部Saの各角部Sc,Scをそれぞれ保持するもので、この実施例では図3に拡大図示するように縦向きの台板22の下端部前面に掴持片23を設け、該掴持片23を操作シリンダ24により開閉し得るようにしたものが採用されている。この各チャック21,21は、各台板22,22部分をチャック左右動装置25のエンドレス索27(後述するように左右に走行する)の上辺走行部と下辺走行部にそれぞれ固定して支持されている。そして、この各チャック21,21は、チャック左右動装置25を作動させることによって横架材20に沿って相互に左右近接・離間方向に移動せしめ得るようになっている。
【0044】
チャック左右動装置25は、図1に示すように横架材20の両端寄り位置にそれぞれ取付けた2つのプーリ28,28と、該両プーリ28,28間に巻回されたエンドレス索27と、該エンドレス索27を可逆的に押し引き走行させるエアシリンダ26とを有している。
【0045】
左右の各チャック21,21は、図1及び図3に示すように、右側チャック21がエンドレス索27の上辺走行部に固定され、左側チャック21がエンドレス索27の下辺走行部に固定されている。又、エアシリンダ26の伸縮ロッド先端は、エンドレス索27の上辺走行部に固定された右側チャック21(台板22)に連結されている。そして、エアシリンダ26の最縮小状態(図1の実線図示状態)では、左右の各チャック21,21を人の肩幅程度の間隔まで近づけた近接位置で維持させる一方、該エアシリンダ26を伸長させる(鎖線図示状態)と、両チャックを符号21′,21′で示すように布片の上辺部Saを緊張させ得る離間位置まで移動させるようになっている。尚、チャック左右動装置25のエアシリンダ26は、布片上辺部の各角部Sc,Scを保持している各チャック21,21が、布片上辺部が左右に緊張するまで移動した時点(所定の負荷がかかった時点)で伸長動作が停止するようになっている。
【0046】
昇降装置3,3は、左右の各支柱12,12部分に同構造のものを一対有している。この各昇降装置3,3は、それぞれ上下間隔をもって支柱12に取付けた2つのプーリ34,34と、該両プーリ34,34間に巻回されたエンドレス索33と、該エンドレス索33を可逆的に押し引き走行させるエアシリンダ31とを有している。この実施例では、昇降装置3のエアシリンダ31としてロッドレスシリンダが採用されていて、シリンダチューブに沿ってスライダー32が上下動するようになっている。
【0047】
そして、この各昇降装置3,3(左右同構造)は、図2に示すように、エアシリンダ31のスライダー32がエンドレス索33の後側走行部に固定されているとともに、横架材20の端部が該エンドレス索33の前側走行部に固定されている。そして、エアシリンダ31のスライダー32が最上動位置(図1、図2の点線図示位置)にあるときには、横架材20(各チャック21,21)を図1、図2に実線図示する人の肩高さ程度まで降下させた低位置に維持し、該スライダー32が最下動位置(図2の符号32′で示す鎖線図示位置)まで下動すると、横架材を符号20′で示す高位置まで上動させるようになっている。そして、横架材が符号20′で示す高位置まで上動した状態では、各チャック21″,21″で保持された布片S2の下辺部Sbが床面Fから離間するようになっている。
【0048】
尚、この実施例では、チャック左右動装置25及び昇降装置3の各動力源として、それぞれエアシリンダを使用しているが、これらの動力源はモータを使用してもよい。
【0049】
機枠1の前面寄り内部空所には、その全面積に亘って半透明(乳白色)のスクリーン5を張設している。このスクリーン5は、後述の照明装置(蛍光灯)4からの光を分散させて透過させるものである。尚、このスクリーン5は、機枠1の前面部で吊上げ展張される布片S2の背面側に位置する。
【0050】
スクリーン5の背面側には、前面側に向けて照明光を当てる上下3段の照明装置4,4,4が設けられている。この各照明装置4,4,4は、この実施例では蛍光灯を使用しており、該蛍光灯4,4,4を左右の支柱12,12間において横向き姿勢で上下に間隔をもって取付けている。
【0051】
尚、この展張装置の操作盤は、機枠1の前面側(作業位置)の適所に設置される。
【0052】
ところで、この展張装置で展張される欠陥布片は、通常の処理ライン上で欠陥部検出装置により欠陥部(汚れや破れ等)があると判断されたものであるが、その欠陥布片の欠陥レベル(内容、程度)は様々である。又、検査すべき欠陥布片は、予め多数枚を展張装置の近傍に運んでおいて、順次1枚ずつ欠陥レベルを検査する。
【0053】
そして、この実施例の展張装置は、次のようにして使用される。
【0054】
布片の展張作業開始前には、図1に実線図示するように、左右展張装置2(横架材20)を人の肩高さ程度の低位置まで降下させ、且つ各チャック21,21を人の肩幅程度まで近接させた位置に待機させておく。又、各照明装置(蛍光灯)4,4,4は点灯しておく。
【0055】
そして、1枚の欠陥布片を取り出してその任意の一辺の両角部を捜し出し、その各角部Sc,Scをそれぞれ各チャック21,21に保持させる(図1の布片S0の状態)。次に、チャック左右動装置25のエアシリンダ26を伸長させて布片上辺部Saが緊張するまで各チャック21,21を離間させる。このとき各チャックが符号21′,21′の位置まで移動し、布片が符号S1のように左右に展張される。続いて左右の昇降装置3,3(各エアシリンダ31,31)を上動側に作動させて、左右展張装置2を符号2′の高さまで上動させる(各チャックが符号21″,21″の位置にある)。この状態では、吊上げられた布片は、符号S2で示すように布片下辺部Sbが床面Fから若干高さだけ離間しており、且つ上下・左右にきれいに展張される。尚、この吊上げ展張布片S2に絡まり部分があれば布片の側縁部を引っ張ったりゆすったりしてきれいに展張させるとよい。
【0056】
次に、吊上げ展張された布片S2を作業員が目視により布片前面側から見渡して欠陥部(汚れや破れ等)を捜すが、そのとき各照明装置(蛍光灯)4,4,4からの照明光が半透明(乳白色)のスクリーン5を通して吊上げ展張布片S2の背面側に透過し、さらにその透過した照明光の一部が吊上げ展張布片S2の生地を通して布片前面に透過するので、布片S2の背面に汚れがある場合でも、その背面側汚れを見つけ易くなる。
【0057】
そして、見つけた欠陥部の欠陥レベル(汚れか破れかの内容、及び程度等)を確認し、その欠陥レベル(内容、程度)に基いて、当該布片を、そのまま正常品(欠陥レベルが許容範囲内の場合)とするか、再洗濯(汚れの場合)するか、補修(破れの場合)するか、廃棄(汚れ除去不能又は補修不能の場合)するか、を判定する。欠陥レベルを確認した吊上げ展張布片は、各チャック21″,21″を保持解除させることにより自重で床面F上に落下し、該欠陥布片を判定した内容の所定場所に選別する。
【0058】
吊上げ展張していた布片を保持解除した後、昇降装置3,3が降下側に作動するとともに、チャック左右動装置25がチャック近接側に作動して、左右展張装置2が元の待機位置に戻される。そして、順次同様に次の欠陥布片を吊上げ展張し、欠陥レベルを確認して選別する。
【0059】
このように、この実施例の展張装置では、欠陥布片S0の任意の一辺の両角部Sc,Scを捜し出して、その両角部Sc,Scを各チャック21,21に保持させるだけで後は自動できれいに吊上げ展張させることができる。又、欠陥部の欠陥レベルを確認するには、吊上げ展張布片S2を前面側から見渡すだけでよい。従って、この展張装置を使用すると、欠陥布片の展張作業が簡単となり、しかも欠陥部の検査が簡単に行えるとともに、それらの作業を全て一人の作業員で行うことができる。
【0060】
又、吊上げ展張布片S2の背面側から照明装置4,4,4の照明光を当てているので、吊上げ展張布片S2の裏面に欠陥部(汚れ)がある場合でも、その欠陥部を透かして見ることができ、検査精度が向上する(欠陥部の見落としがなくなる)。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本願実施例の欠陥布片検査用の展張装置の正面図である。
【図2】図1の拡大右側面図である。
【図3】図1のIII−III拡大断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1は機枠、2は左右展張装置、3は昇降装置、4は照明装置、5はスクリーン、12は支柱、20は横架材、21はチャック、25はチャック左右動装置、S0〜S2は布片、Saは上辺部、Sbは下辺部、Scは角部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーツのような大面積を有し且つ汚れや破れ等の欠陥部がある欠陥布片(S0)を吊上げ状態で上下・左右に展張させるための欠陥布片検査用の展張装置であって、
所定大きさを有する立面状の機枠(1)と、該機枠(1)の前面部において展張すべき布片(S0)の上辺部(Sa)の両角部(Sc,Sc)を保持して前記布片上辺部(Sa)を左右に展張させる左右展張装置(2)と、該左右展張装置(2)で保持された布片(S1)を該布片(S1)の下辺部(Sb)が床面(F)から離間する高さまで上昇させる昇降装置(3)とを備えている、
ことを特徴とする欠陥布片検査用の展張装置。
【請求項2】
機枠(1)の前面部において吊上げ状態で展張される展張布片(S2)の背面側に照明装置(4)を設けている、
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥布片検査用の展張装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−7886(P2008−7886A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179322(P2006−179322)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】