説明

欠陥数の少ないフィルムを製造するためのポリマーブレンド

【課題】欠陥数の少ない箔又は成形品の製造を可能にするポリマーを提供する。
【解決手段】ポリマーブレンドにより達成されるものであり、シクロオレフィンポリマーに対して選択された量のポリエチレンを加えることにより、シクロオレフィンポリマーの加工性を著しく改善する。さらに、ポリエチレンとシクロオレフィンポリマーのメルトでの配合またはポリエチレン溶液およびシクロオレフィンポリマー溶液の混合が、このブレンドから製造される箔の欠陥数を減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、欠陥数の少ない、箔の製造に使用可能な選択されたポリマーブレンド、およびポリマーブレンドの製造法に関する。本発明のポリマーブレンドの箔製造への使用についてもさらに記載する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術
シクロオレフィンコポリマー(COC)からなる箔および成形品は、低密度、高透明性、低複屈折、極めて低い吸水性並びに高い剛性、強度および硬度を特徴とする。
【0003】
溝付きまたは平滑バレル押出し機におけるような箔またはフィルムを製造する従来の工業的押出しプラントでのCOCの加工は、箔における欠陥、例えばゲルまたはフィッシュアイとして知られる欠陥の数をしばしば増加させる。欠陥数の増加は特定の工業用途への材料の有用性を制限する。他のポリマーは、欠陥数が少なくなるように加工して箔にすることができるかもしれないが、シクロオレフィンコポリマーのすぐれた性質、特に高い剛性をもたない。従って、欠陥数が最小限であり且つシクロオレフィンコポリマーの性質を有する、箔および成形品が求められていた。本出願の目的のために、箔という用語はフィルムまたはシートも意味する。
【0004】
EP0 384 694Aには、COCと他のポリマー、例えばポリオレフィンのブレンドからなるフィルムの製造が記載されている。このようにして得られたフィルムは良好な表面特性を一般に有するが、個々の性質についてそれ以上の記載はない。フィルム製造時の欠陥数の減少を示す記載もない。
【先行技術】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0384694号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、欠陥数の少ない箔または成形品の製造を可能にするポリマーを提供することである。
【0007】
この目的は、本発明のポリマーブレンドの提供によって達成される。選択された量のポリエチレン(PE)を加えると、COCの加工性を著しく改善できることが分かった。ポリマーブレンドの製造方法によってさらに著しい改善が得られる。ポリマーブレンドはこれまで、例えば「ソルト・アンド・ペッパー(salt and pepper)」法として公知の方法により、COCグラニュールおよびPEグラニュールを混合することによって製造されてきた。しかしながら、このブレンドから製造される箔は欠陥数が多い。
【0008】
PEおよびCOCのメルトでの配合またはPE溶液およびCOC溶液の混合が、欠陥数のさらに改善された本発明のポリマーブレンドの製造を可能にすることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の説明
従って、本発明は、COCおよび、ポリマーブレンドの重量に基づいて1〜10重量%のPEを含むポリマーブレンドを提供する。
【0010】
シクロオレフィンコポリマーCOC
本発明のポリマーブレンドは、シクロオレフィンコポリマーの総重量に基づいて、0.1〜100.0重量%、好ましくは0.1〜99.9重量%の次式I、II、II’、III、IV、VまたはVI
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、同一か又は異なり、水素原子またはC−C20炭化水素基、例えば線状もしくは分枝状C−Cアルキル基、C−C18アリール基、C−C20アルキレンアリール基、または環式もしくは非環式C−C20アルケニル基であるか、あるいは飽和、不飽和または芳香族環を形成し、ここで、各種式I〜VI中の同一の基R〜Rは異なる意味を有し、そしてnは0〜5の値である)の少なくとも1種の多環式オレフィンから誘導される重合単位、およびシクロオレフィンコポリマーの総重量に基づいて、0〜99.9重量%、好ましくは0.1〜99.9重量%、特に0.5〜80重量%の式VII
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R、R10、R11またはR12は、同一か又は異なり、水素原子または線状、分枝状、飽和もしくは不飽和C−C20炭化水素基、例えばC−Cアルキル基またはC−C18アリール基である)
の1種以上の非環式オレフィンから誘導される重合単位を一般に含むCOCを含む。
【0015】
1つの好ましい態様では、用いられるシクロオレフィンコポリマーは、シクロオレフィンコポリマーの総重量に基づいて、0〜45重量%、好ましくは0.1〜40重量%の式VIII
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、mは2〜10の数である)
の1種以上の単環式オレフィンから誘導される重合単位を含むことができる。
【0018】
環式オレフィンにはさらに、極性基、例えばハロゲン、ヒドロキシ、エステル、アルコキシ、カルボキシ、シアノ、アミド、イミドまたはシリル基を有する環式オレフィンの誘導体がある。
【0019】
本発明の目的のために、式IまたはIIIの多環式オレフィンから誘導される重合単位、および式VIIの非環式オレフィンから誘導される重合単位、特にノルボルネン骨格構造を有するオレフィン(例えばノルボルネンおよびテトラシクロドデセン、また、適切ならば、ビニルノルボルネンまたはノルボルナジエン)を含むCOCが好ましい。
【0020】
末端二重結合を有する非環式オレフィン、例えば2〜20の炭素原子を有するα−オレフィン、特にエチレンまたはプロピレンから誘導される重合単位を有するシクロオレフィンコポリマー、例えばエチレン−ノルボルネンコポリマーおよびエチレン−テトラシクロドデセンコポリマーが好ましい。
【0021】
好ましいターポリマーは、エチレン−ノルボルネン−ビニルノルボルネンターポリマー、エチレン−ノルボルネン−ノルボルナジエンターポリマー、エチレン−テトラシクロドデセン−ビニルノルボルネンターポリマー、エチレン−テトラシクロドデセン−ビニルテトラシクロドデセンターポリマーまたはエチレン−ノルボルネン−ジシクロペンタジエンターポリマーである。
【0022】
エチレンおよびノルボルネンからなるコポリマーをCOCとして用いると非常に格別な利点がある。
【0023】
シクロオレフィンコポリマーの製造方法
シクロオレフィンコポリマーは、少なくとも1種の遷移金属化合物、及び適切ならば助触媒、及び適切ならば支持物質が存在する1種以上の触媒系の存在下、−78℃〜200℃の温度および0.01〜200バールの圧力の下で公知の方法により製造することができる。
【0024】
好適な遷移金属化合物はメタロセン、特に立体剛性メタロセンである。COCの製造に適した触媒系の例は、例えば、US−A−5,008,356、EP−A−0 407 870、EP−A−0 485 893およびEP−A−0 503 422に記載されている。
【0025】
以下に簡潔に説明した他の合成経路もシクロオレフィンコポリマーの製造に用いることができる。
【0026】
チタン塩および有機アルミニウム化合物からなる混合触媒に基づく触媒系は、DD−A−109 224およびDD−A−237 070に記載されている。EP−A−0 156 464には、バナジウムに基づく触媒を用いる製造が記載されている。
【0027】
シクロオレフィンコポリマーは、式I〜VIを有する少なくとも1種のモノマーの開環重合および得られた生成物のその後の水素添加によっても得られる。
【0028】
重合は多段階で行ってもよく、ブロックコポリマーもここで製造することができ、それに関してはDE−A−42 05 416を参照。
【0029】
シクロオレフィンコポリマーの耐熱性は広く調整することができる。シクロオレフィンコポリマーの場合、加熱速度20K/分でDSC装置を利用してDIN EN ISO 11357−1で測定したガラス転移温度Tは、射出成形のISO75パート1およびパート2に従い測定することができる耐熱性の指標として用いることができる。
【0030】
記載のシクロオレフィンコポリマーのガラス転移温度は25〜200℃、好ましくは60〜190℃、特に65〜145℃である。本発明のポリマーブレンドは、適切ならば、様々なガラス転移温度を有する各種COCの混合物を含んでいてもよい。
【0031】
本発明で用いられるシクロオレフィンコポリマーの密度は、通常0.9〜1.1g/cm、好ましくは0.9〜1.05g/cmである。
【0032】
記載のシクロオレフィンコポリマーのDIN53 728による粘度数VNは、5〜5000ml/g、好ましくは5〜2000ml/g、特に5〜1000ml/gである。
【0033】
PEポリエチレン
本発明のポリマーブレンド中には、PEポリエチレンがさらに存在する。ポリエチレンは、性質が主に重合法によって決まる半結晶質熱可塑性組成プラスチックである(Saechtling, Kunststoff−Taschenbuch[Plastics
handbook]、27版)。
【0034】
LDPEは、高圧で遊離基の開始反応によって製造され、内部で枝分かれした様々な長さの側鎖を有する高分枝PEを生じる。LDPEの密度は通常0.915〜0.935g/cmである。
【0035】
HDPEは金属錯体触媒を用いて、低圧(チーグラー触媒)または穏やかな圧力(フィリップス触媒)で製造される。これによって主にほんの少し枝分かれした線状のポリエチレンが得られる;5つの短い枝が一般的な値である。この結果、結晶化度は高く、密度も高く、通常0.942〜0.965g/cmである。
【0036】
LLDPEは、金属錯体触媒によるエテンとα−オレフィンとの共重合によって低圧で製造される。重合に含まれるα−オレフィンは、結晶化度を低下させ、その結果密度を低下させる短い側鎖を形成する。LLDPE中に用いられるα−オレフィンおよびその含有率に応じて、LLDPEの密度をHDPEの密度と0.865g/cmの低密度との間で調整することができる。
【0037】
非常に低い密度を有するポリエチレンはVLDPE(非常に低密度)またはULDPE(超低密度)とも称される。
【0038】
具体的な金属錯体、すなわちメタロセンは特別な性質、例えば高い剛性および耐破壊性を有するLLDPEを製造することができる。それらはmLLDPEと称される。mLLDPEの密度範囲の変動性はLLDPEの密度範囲の変動性と似ており、極めて低い密度のグレードはプラストマーとも称される。
【0039】
あらゆる種類のポリエチレンには、流動性が非常に異なる商業グレードがある。分子量は、生成物がワックスを含む範囲まで連鎖停止反応を調節することによって低下させることができる。分子量が非常に高いHDPEグレードはHMWPEおよびUHMWPEと称される。
【0040】
本発明の1つの態様では、ポリマーブレンドはCOCおよび、ポリエチレンとして、LLDPE、好ましくはmLLDPEを含む。密度が0.905〜0.930g/cmのLLDPE、特にmLLDPEを用いるのが好ましい。
【0041】
本発明のポリマーブレンドは、ポリマーブレンドの重量に基づいて、2〜8重量%、特に2.5〜5重量%のポリエチレンを含むのが好ましい。
【0042】
溶液での混合によってまたはメルトでの配合によって製造された本発明のポリマーブレンドがさらに好ましい。COCおよびmLLDPEを溶液で混合することによって製造されるポリマーも同様に好ましい。
【0043】
ポリマーブレンドの製造方法
本発明はさらに、ポリマーブレンドがメルトでの配合によってまたは溶液での混合によって製造される、本発明のポリマーブレンドの製造方法を提供する。
【0044】
メルトでの配合によって製造されるのがここでは特に好ましい。
【0045】
さらにとりわけ好ましい態様は、溶液での混合による本発明のポリマーブレンドの製造である。
【0046】
ポリマーブレンドは様々な方法によって一般に製造することができる。
【0047】
ソルト・アンド・ペッパー・ブレンド
「ソルト・アンド・ペッパー(salt and pepper)」ブレンドはグラニュールを単に混合することによって製造される。
【0048】
メルトでの配合
不混和性ブレンド相のさらに入念な混合は、個々の成分をメルトし、混合した場合に達成される。この種のブレンドは配合物質と呼ばれる。2軸スクリュー押出し機が配合過程で一般に用いられるが、混練機を用いてもよい。
【0049】
ポリエチレンは、好ましくは、COCの製造工程(メルト中での内部配合)の際に、製造プラントへ直接加えられる。ここで、PEは、反応溶媒が除去された後に残るCOCメルトに加えられる。例えば、PEは補助押出し機または補助混練機を経て加えられ、その中でポリエチレンは溶融される。メルトポンプを用いると、物質を計量してCOCメルト流へ加えることができる。静止ミキサーのような混合要素をメルトの混合に用いてもよい。
【0050】
次に、ポリマーブレンドは通常、例えば、ストランドペレット化、水中リングペレット化、ダイフェースペレット化または液滴ペレット化によって粒状化される。
【0051】
溶液での混合
ポリマーブレンドはさらに、個々のブレンド成分を溶解し、溶液を混合し、そして溶媒を除去することによって製造することができる。溶媒の除去はここでは、例えば高温および/または減圧下で、溶媒蒸発によって行うことができる。
【0052】
あるいは、溶媒は、ブレンド溶液を沈殿剤中に導入し、沈殿したポリマーブレンドを濾過することによって除去してもよい。その後、沈殿物質はペレット化工程にかけ、あるいは粉末として直接用いてもよい。
【0053】
別の好ましい態様では、PE溶液をCOC製造過程の際に加えてもよい。これは溶液での混合が製造プラント中で直接行われることを意味する(溶液での内部混合)。PE溶液は重合反応器へ直接加えることができるが、共重合反応後であって溶媒除去前であるのが好ましい。
【0054】
このために、PEは適当な条件下で攪拌槽中で溶解し、そしてCOC溶液へポンプによって加えてもよい。2種の溶液の混合は攪拌容器中または物質が流れるパイプライン中で行ってもよい。次に、溶媒を、例えば高温および/または減圧下で、溶媒蒸発によって除去する。その後、メルトを流し込んでストランドにし、そして通常、例えば、ストランドペレット化、水中リングペレット化、ダイフェースペレット化または液滴ペレット化により粒状化される。
【0055】
PE溶液の製造に適した溶媒の例は高沸点脂肪族炭化水素であるが、他の溶媒も用いることができる。ポリエチレン溶液は50〜200℃、好ましくは90〜200℃で製造される。ポリエチレン溶液の濃度は1〜25%、好ましくは5〜25%、特に好ましくは10〜20%である。溶液の純度は適当なフィルターを用いることによって高めることができる。
【0056】
ブレンドが本発明の方法において溶液でまたはメルトで製造されたかどうかに関係なく、メルトの純度はメルト濾過、例えばデプス・フィルター(depth filter)によって高めることができる。
【0057】
噴霧被覆
別の態様は、ポリマーブレンドグラニュールまたはペレットが噴霧被覆によりワックス層で被覆されているポリマーブレンドの製造方法である。
【0058】
予備乾燥されたペレットまたはグラニュールは集合容器へ落下し、そしてこの過程においてノズルからのワックス分散液とともに噴霧される。ノズルは環状の配置をとり、そのためペレットまたはグラニュールの流れとの接触は均一である。次に、乾燥を乾燥空気の流れの中で行い、これによって残留水分レベルは200ppm未満となる。噴霧過程は空気を用いる2液(twin−fluid)ノズルを使用する。
【0059】
ワックス分散液は、界面活性剤の添加によって水性マトリックス中で安定化された平均直径30μm2未満の固体ワックス粒子(例えば、エチレンビスステアルアミドまたはペンタエリトリトールテトラステアレート)からなる。固体ワックス粒子の分散液中の含有率は5〜50%、好ましくは10〜40%である。ペレットまたはグラニュール上のワックス含有量は200〜3000ppm、好ましくは1000〜1500ppmである。ワックスはエチレンビスステアルアミドおよびペンタエリトリトールテトラステアレートよりなる群から選択されるのが好ましい。
【0060】
噴霧被覆法は、均一で良好に接着しかつ貯蔵、輸送およびさらなる加工に有利なワックス被覆を、ペレットまたはグラニュールにもたらす。
【0061】

本発明のポリマーブレンドは単層または多層箔の製造に用いることができる。
【0062】
したがって、本発明はさらに、本発明のポリマーブレンドを含む単層または多層箔を提供する。
【0063】
本発明のポリマーブレンドを箔の製造に用いると、それらの欠陥数を少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%減少することができる。これらの割合は、PEを含まないCOCからなる箔(例えば、比較例1)と本発明のポリマーブレンドから製造された箔における欠陥数の比較によって得られたものである。
【0064】
本発明で請求される箔の厚さは、一般に5〜1000μm、好ましくは10〜600μm、特に好ましくは15〜300μmである。これらは単層または多層箔の形をとることができる。
【0065】
箔を合わせて複合多層箔にすることができる。複合物は、予め個々に製造された各フィルムの積層によって製造するか、あるいは同時押出しによって又は押出し被覆若しくは押出し積層によって製造することができる。
【0066】
さらに個々の層の間に施した接着改善層があってもよい。この目的に用いられる物質は少なくとも1種以上のポリマーを含んでいてもよく、それら自体はよく知られている。その成分全てを含む、製造過程の際に生じるカット箔をこの目的に用いて、結果的に再利用してもよい。これによって本発明の費用効率を著しく改善することができ、そして環境への損害を減少させることができる。
【0067】
接着改善層はメルトで、またはさらに溶液、懸濁液もしくは溶媒含有接着として、有利に適用することができる。
【0068】
本発明はさらに箔の製造方法を提供する。該製造方法では、ポリマーブレンドは押出機中で圧縮され、加熱され、次いでその溶融物がフラットフィルムダイまたは環状ダイを通して押出され、適切ならば、チルロールで急冷され、そして得られた箔が1つ以上のロールまたはローラーに引き取られる。
【0069】
1つの好ましい態様は、多層箔が同時押出しによってまたは押出し被覆によってまたは押出し貼り合わせによって製造される方法である。
【0070】
本発明で特許請求される箔は、例えば、単層または多層プラスチック箔の公知の製造法によって製造することができ、ここで、ポリマーブレンドは押出機中で圧縮され、加熱され、次いでその溶融物がフラットフィルムダイまたは環状ダイを通して押出され、そして得られた箔は1つ以上のロールまたはローラーに引き取られる。
【0071】
適切ならば、添加剤をポリマーまたはポリマーブレンドへ予め加えておいてよく、あるいはマスターバッチ技術によって加えてもよい。
【0072】
メルトは環状ダイによって押出してもよく、その後、得られた箔はインフレートフィルムプラント中で加工されて箔となり、そしてロールによってつぶされる。
【0073】
本発明のポリマーブレンドを用いる押出し実験から、バレルおよびダイ中の規定温度を230℃から210℃に低下させることができるが分かった。これは押出し箔の製造時に生じる熱応力がより小さくなる。この方法はまた、箔の欠陥数を減少させる。同時に、箔の透明度は増加する。
【0074】
適切ならば、箔の片面または両面を公知の方法でコロナまたは火炎処理してもよい。この表面処理は、後続の周知方法による銘刻または印刷の準備をするものである。
【0075】
しかしながら、本発明のポリマーブレンドは、押出し吹き込み成形法または射出吹込み成形法による成形品の製造に用いることもできる。この場合もまた、本発明のポリマーブレンドを用いると成形品上の欠陥数が少なくなり、従って、すぐれた光学特性が重要である用途に用いることが可能になる。例えば、医学分野における、予め充填可能な注射器およびアンプルの製造が可能になる。
【0076】
押出し吹き込み成形法では、吹き込み可能なプレフォームは第1段階の押出しによって製造される。第2段階では、吹き込み成形、そして引き続き成形品の冷却が行われる。
【0077】
押出し吹き込み成形法とは対照的に、射出吹込み成形法はプレフォームを射出成形する。第2段階は、吹き込み成形及び吹き込み型中での成形品の冷却を包含する。
【0078】
本発明はさらに、本発明のポリマーブレンドの箔製造への使用を提供する。
【0079】
本発明の箔は欠陥数が著しく少ないという特徴を有し、本発明のポリマーブレンドの使用によって少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%著しく減少する。
【0080】
本発明の箔の欠陥数が少ないということは、ツイスト−ラップ箔(例えば、菓子のラップ)、スリーブ(収縮包装)、ブリスター包装、ソーセージの皮およびインフレート箔のような広範囲の用途への可能性を開く。しかしながら、光学的用途のための(例えば平らなディスプレースクリーンのための)位相差フィルムまたは偏光フィルムの製造も可能である。
【0081】
従って、1つの好ましい態様は、本発明のポリマーブレンドのツイスト−ラップ箔製造への使用である。
【0082】
ツイスト−ラップ箔は、本発明のポリマーブレンドから製造される外層とLLDPE、好ましくはmLLDPEからなるコアとからなるのが好ましい。
【0083】
ツイスト−ラップ箔の全体の厚さは20〜50μm、好ましくは25〜35μmである。
【0084】
さらに好ましいのは、本発明のポリマーブレンドの抑制フィルムまたは偏光フィルム製造への使用である。
【0085】
本発明のポリマーブレンドを押出し吹き込み成形法または射出吹込み成形法による成形品の製造に用いることは同様に好ましい。
【実施例】
【0086】
実施例
メルトでの配合
比較例C2〜C6および本発明の実施例7〜9のポリマーブレンドは、Topas8007(登録商標)および記載の各ポリマーから、Leistritz LSM 34L/D30 2軸スクリュー押出し機中で230℃バレル温度および100rpmスクリュー回転速度、押出し量10kg/時にて製造した。押出し物は水浴中で冷却し、Rieter社のPrimo60Eペレット製造機によって細断した。
【0087】
溶液での混合
本発明の実施例10〜13および比較例C14およびC15のブレンド用に、ノルボルネンおよびエチレンを用いて、攪拌槽中で、ガラス転移温度80℃(DSC20K/分、第2加熱サイクル)およびMVI(260℃、2.16kg)32ml/10分のシクロオレフィンコポリマー(例えば、Topas8007(登録商標))の10%濃度デカリン溶液を製造した。本発明の実施例19〜22のブレンド用に、ノルボルネンおよびエチレンを用いて、攪拌槽中で、ガラス転移温度65℃(DSC20K/分、第2加熱サイクル)およびMVI(260℃、2.16kg)20ml/10分のシクロオレフィンコポリマー(例えば、Topas9506(登録商標))の10%濃度デカリン溶液を製造した。別の攪拌槽で、濃度約3%の各添加ポリマーのデカリン溶液を製造した。100kgのCOC溶液および表1に記載の組成物に必要な量のポリマー溶液を混合し、そして溶媒を高温で真空除去した。
【0088】
本発明の実施例10: Exceed 1018CAの3.2%濃度溶液8.33kg
本発明の実施例11: Dowlex NG 5066Eの2.7%濃度溶液8.33kg
本発明の実施例12: Dowlex NG 5066Eの3.0%濃度溶液16.66kg
本発明の実施例13: Dowlex NG 5066Eの3.3%濃度溶液33.3kg
比較例C14: Dowlex NG 5066Eの2.8%濃度溶液2kg
比較例C15: Hybrar 7125の3.1%濃度溶液8.33kg
本発明の実施例19: Exceed 1018 CAの3%濃度溶液21.9kg
本発明の実施例20: LL1004YBの3%濃度溶液21.2kg
本発明の実施例21: Elite5200Gの3%濃度溶液21.2kg
本発明の実施例22: Dowlex 3010の3%濃度溶液26.8kg
ポリマーメルトはダイから流し込んでストランドにし、そしてペレットにした。
【0089】
ソルト・アンド・ペッパー・ブレンド
Topas8007(登録商標)およびDowlex NG 5066Eからなるグラニュールの混合物を比較例C16およびC17のために製造した。
【0090】
噴霧被覆
Topas8007(登録商標)およびExceed 1018CA(登録商標)からなるポリマーブレンドを本発明の実施例10に記載のように製造した。この場合、エチレンビスステアルアミド(LUBAprint(登録商標))を含む25%濃度のワックス分散液もグラニュールに噴霧し、次に、200ppm未満の残留水分レベルまで乾燥空気流の中で乾燥した(本発明の実施例18)。
【0091】
ポリマーブレンドからの箔の製造
ブレンドおよび未調整Topas8007(登録商標)を、Tダイおよびチルロールを備えたCollin社製一軸スクリュー実験室用押出し機(30mm、L/D30、25D 3ゾーンスクリュー、圧縮比1:2、そしてさらに2.5D Maddockせん断混合セクションおよび2.5Dファシット(faceted)混合セクションを有する)で加工して、厚さ100μmのキャスト箔を得た。
【0092】
バレルおよびダイの規定温度は230℃であり、チルロール温度は本発明の実施例1〜18では80℃、本発明の実施例19〜22では70℃であった。スクリュー回転速度は40rpmであった。フルホッパーを押出工程に用いた。
【0093】
欠陥数はオプティカル・コントロール・システムズ社のFS5システムによって記録および測定した。欠陥数はここでは適当なソフトウエアと組み合わせたカメラシステムによって測定した。これによって様々な箔の欠陥数の比較が可能になる。
【0094】
PEを添加せずにTopas8007(登録商標)から製造した箔を標準として用いた。ここで記録された欠陥数は100%に標準化した(比較例1)。
【0095】
Hybrar7125(登録商標)(クラレ): 密度0.90g/cm(ISO1183)、メルト流量MFR(230℃/2.16kg)4g/10分(ASTM D1238)
Moplen EP 300L(登録商標)(バッセル): 密度0.900g/cm(ISO1183)、メルト流量MFR(230℃/2.16kg)6.0g/10分(ISO1133)、メルト体積流量MVR(230℃/2.16kg)8.00cm/10分(ISO1133)
400R(登録商標)(ダウ・プラスチックス): 密度0.925g/cm(ASTM D−792)、メルトインデックス(190℃/2.16kg)1.0g/10分(ISO1133)
Eltex A4009(登録商標): 密度(23℃)0.96g/cm(ISO1183/A)、メルト流量(2.16kg)0.9g/10分(ISO1133)
Licowax 190GR(登録商標)(クラリアント): 密度(23℃)0.95−0.97g/cm(ISO1183)
Exceed 1018(登録商標)(エクソン・モービル・ケミカル): 密度0.918g/cm(ASTM D4703/D4883)、メルトインデックス1.0g/10分(ASTM D1238)
DOWLEX NG 5066E(登録商標)(ダウ・ドイチェラントGmbH): 密度0.87−0.97g/cm
DOWLEX3010(登録商標)(ダウ・プラスチックス): 密度0.921g/cm(ASTM D792)、メルトインデックス5.4g/10分(ASTM D1238)
DOWLEX2344E(登録商標)(ダウ・プラスチックス): 密度0.933g/cm(ISO1183)、メルトインデックス0.7g/10分(ISO1133)
LL1004YB(登録商標)(エクソン・モービル・ケミカル): 密度0.918g/cm(ASTM D4703/D1505)、メルトインデックス2.8g/10分(ASTM D1238)
Elite 5200G(ダウ・プラスチックス): 密度0.917g/cm(ASTM D792)、メルトインデックス4.00g/10分(ASTM D1238)
【0096】
【表1】

【0097】
LLDPEの添加によって加工操作が著しく改善されることが分かった。これは、箔の欠陥数の著しい減少によって証明することができる(本発明の実施例7〜13および19〜22)。
【0098】
スチレン−ジエンコポリマー(Hybrar7125、比較例C15およびC2)またはポリエチレンの別の種類、例えばLDPE、HDPE、ポリプロピレンコポリマーまたはPEワックスのようなポリマーの場合、効果はそれほど顕著でないか、あるいは全く観察されなかった(比較例C3〜C6)。
【0099】
グラニュール混合物の形であるが、同等の割合のLLDPEはTopas8007(登録商標)と共に同様に加工した。この場合、効果は現れないか、あるいは非常に少ない程度でしか生じなかった(比較例C16およびC17)。
【0100】
LLDPE含有率が本発明の範囲外の場合、効果は非常に少ない程度でしか生じなかった(比較例C14)。
【0101】
ポリマーブレンドを溶液でのCOCおよびPEの混合によって製造すると、欠陥数は再び減少し得ることも分かった(本発明の実施例10〜13)。COCとスチレン−ジエンコポリマーからなる本発明以外のポリマーブレンドの欠陥数は、ポリマーブレンドが溶液での混合によって製造される場合には、同様に減少した(比較例C15)。本発明の実施例は、欠陥数がポリマーブレンドの製造方法によって減少し得ることを見事に証明している。
【0102】
同様に、欠陥数が再び減少した箔(本発明の実施例18)はワックス分散液で噴霧被覆したペレットまたはグラニュールから製造しうることも分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COCシクロオレフィンコポリマーおよび、ポリマーブレンドの重量に基づいて1〜10重量%のPEポリエチレンを含む、ポリマーブレンド。
【請求項2】
LLDPE、好ましくはmLLDPEがPEとして用いられる、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
存在するPEの量が、ポリマーブレンドの重量に基づいて、2〜8重量%、好ましくは2.5〜5重量%である、請求項1または2に記載のポリマーブレンド。
【請求項4】
ポリマーブレンドが溶液での混合によって又はメルトでの配合によって製造される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項5】
mLLDPEが用いられ、且つ、ポリマーブレンドが溶液での混合によって製造される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項6】
COCが、COCの総重量に基づいて0.1〜100.0重量%、好ましくは0.1〜99.9重量%の式I、II、II’、III、IV、VまたはVI
【化1】


(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、同一か又は異なり、水素原子またはC−C20炭化水素基、例えば線状もしくは分枝状C−Cアルキル基、C−C18アリール基、C−C20アルキレンアリール基、または環式もしくは非環式C−C20アルケニル基であるか、あるいは飽和、不飽和または芳香族環を形成し、ここで、各種式I〜VI中の同一の基R〜Rは異なる意味を有し、そしてnは0〜5の値である)
の少なくとも1種の多環式オレフィンから誘導される重合単位、および、
シクロオレフィンコポリマーの総重量に基づいて、0〜99.9重量%、好ましくは0.
1〜99.9重量%、特に0.5〜80重量%の式VII
【化2】


(式中、R、R10、R11またはR12は、同一か又は異なり、水素原子または線状、分枝状、飽和もしくは不飽和C−C20炭化水素基、例えばC−Cアルキル基またはC−C18アリール基である)
の1種以上の非環式オレフィンから誘導される重合単位を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項7】
COCが、COCの総重量に基づいて0〜45重量%、好ましくは0.1〜40重量%の式VIII
【化3】


(式中、mは2〜10の数である)
の1種以上のモノオレフィンから誘導される重合単位を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項8】
ポリマーブレンドがメルトでの配合によって又は溶液での混合によって製造される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマーブレンドの製造方法。
【請求項9】
ポリマーブレンドがメルトでの配合によって製造される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーブレンドが溶液での混合によって製造される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ポリマーブレンドグラニュールまたはペレットが噴霧被覆によってワックスで被覆される、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ワックスがエチレンビスステアルアミドおよびペンタエリトリトールテトラステアレートよりなる群から選択される、請求項11に記載のポリマーブレンドの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマーブレンドを含む、単層または多層箔。
【請求項14】
箔の欠陥数が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%減少した、請求項13に記載の単層または多層箔。
【請求項15】
ポリマーブレンドが圧縮され、押出し機中で加熱され、その後、メルトがフラットフィルムダイまたは環状ダイを通して押出され、適切ならば、チルロールで急冷され、そして得られた箔が1つ以上のロールまたはローラーに引き取られる、請求項13または14に記載の箔の製造方法。
【請求項16】
多層箔が同時押出しによってまたは押出し被覆によってまたは押出し貼り合わせによって製造される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマーブレンドの箔の製造への使用。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマーブレンドのツイスト−ラップ箔の製造への使用。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマーブレンドの位相差フィルムおよび偏光フィルムの製造への使用。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマーブレンドの押出し吹き込み成形法または射出吹込み成形法による成形品の製造への使用。

【公開番号】特開2012−52131(P2012−52131A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−240295(P2011−240295)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【分割の表示】特願2007−536083(P2007−536083)の分割
【原出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506168679)トパース・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】