説明

欠陥検出方法及び欠陥検出装置

【課題】発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきを検出することができる発泡体ローラーの表面の欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】欠陥検出方法は、発泡体ローラー1の表面を撮像した画像をデジタル処理することで発泡体ローラー1の表面における開口穴の数のばらつきを検出する。画像を複数の領域に等分し、各領域内に映し出された開口穴の数をカウントし、各領域内における開口穴の数を比較することにより、発泡体ローラー1の表面における開口穴の数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体ローラーの表面を撮像した画像を用いた発泡体ローラーの欠陥検出方法及び欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体ローラーの欠陥の有無を判別する方法として、人手で行なう方法、視覚による方法、検査装置を用いて行なう方法が知られている。人手で行なう方法では、発泡体ローラー製品の高精度化に伴い、微小な欠陥を発見する必要がある。そのために検査員が長時間集中しなければならない根気のいる作業となり、検査員の精神的な負担や肉体的な疲労が大きくなる。また、視覚による検査は、検査員の主観的な検査判定であって、検査員の判断に依存し、検査員が異なる場合や、極端な場合には同じ検査員であっても、検査時間の推移によって、検査水準が変化する可能性がある。
【0003】
上述した検査員による方法に代わる方法として、CCDカメラを用いた電子撮像装置による外観検査手法も知られている。このような外観検査手法が特許文献1に記載されている。
【0004】
また、発泡体ローラーの表面に光を照射して、発泡体ローラーが反射する反射光を利用して発泡体ローラーの表面の状態を判断する検査装置が特許文献2に記載されている。
【0005】
この検査装置では、照射した光を発泡体ローラーの表面で反射させ、発泡体ローラーの表面に欠陥があった場合には、その欠陥部分で光の反射の変化が起こることを利用する。この検査装置では、発泡体ローラーが反射した反射光を撮像装置に受光させることにより発泡体ローラーの表面を撮像し、撮像した画像を映像信号化し、その映像信号を信号処理して、欠陥部分を検出する。
【特許文献1】特開平9−243568号公報
【特許文献2】特開2005−274140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した装置を用いた方法は発泡体ローラーの表面に存在する光の反射の変化を発生させる欠陥に対し有効な方法であり、発泡体ローラーの表面で反射の変化を発生させない欠陥を検出することは困難である。
【0007】
発泡体ローラーの表面で反射の変化を発生させない欠陥としては、たとえば、発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきがある。したがって、上述した装置では、発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきの大きさが許容範囲内であるか否かを判別することは困難である。
【0008】
そこで本発明は、発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきを検出することができる発泡体ローラーの欠陥検出方法及び欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る欠陥検出方法は、発泡体ローラーの表面を撮像した画像をデジタル処理することで前記発泡体ローラーの表面における開口穴の数のばらつきを検出する欠陥検出方法において、前記画像を複数の領域に等分し、前記各領域内に映し出された開口穴の数をカウントし、前記各領域内における前記開口穴の数を比較することにより、前記発泡体ローラーの表面における前記開口穴の数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきを検出することができる発泡体ローラーの欠陥検出方法及び欠陥検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る発泡体ローラーの欠陥検出方法においては、投光装置よりの光を発泡体ローラーの表面に照射し、発泡体ローラーの表面に反射された反射光を撮像装置に受光させる。その際、発泡体ローラーを回転させて発泡体ローラーの表面の光を反射させる部分を順次変更し、撮像装置に発泡体ローラーの表面を周方向に連続的に撮像させる。連続的に撮像された発泡体ローラーの表面の各画像をつなぎ合わせることにより発泡体ローラーの表面の画像が発泡体ローラーの表面の展開画像として得られる。そして、得られた発泡体ローラーの表面の画像を大きさの等しい分割枠によって発泡体ローラーの周方向に2以上の領域に等分し、各分割枠に囲まれた領域内に映し出された開口穴の数をカウントし、各分割枠における開口穴の数を比較する。これにより、発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判別する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る欠陥検出方法において得られる発泡体ローラーの表面の画像の一例である。図1の矢印は画像31における発泡体ローラーの周方向を示している。画像31の黒い部分は発泡体ローラーの表面における開口穴33を示している。
【0014】
図2は、本実施形態に係る欠陥検出方法において分割枠によって複数の領域に等分された図1に示した画像を示した図である。図2では、画像31は、互いに大きさが等しい5つの分割枠32によって発泡体ローラーの周方向に5等分されている。なお、図2では、分割枠のみを示しており開口穴33等は省略している。
【0015】
図3は、図2に示した画像内の1つの分割枠に囲まれた領域を示した図である。本実施形態に係る欠陥検出方法では、図2に示した5つの分割枠32に囲まれた各領域ついて開口穴33の数をそれぞれカウントし、各領域内の開口穴33の数を比較することにより、発泡体ローラーの表面における開口穴の数のばらつきの有無を判別する。
【0016】
本実施形態に係る欠陥検出方法の特徴的なところは、発泡体ローラーの表面に存在する開口穴の数を分割枠ごとに数え、各分割枠内の開口穴の数を用い計算することにより、発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきの検出をする事である。
【0017】
本実施形態においては、投光装置よりの光を発泡体ローラーの長手方向の全体に照射させる為、照射させる光はライン状にする。照射した光を発泡体ローラーの表面で反射させ、発泡体ローラーに反射された光を撮像装置が受光する。これにより、撮像装置が発泡体ローラーの表面を撮像する。これらを可能にするために、投光装置よりの光を発泡体ローラーに照射する角度や、発泡体ローラーからの反射光成分を1つの撮像装置で撮像させる為の撮像装置の配置角度などの条件を詳細に検討した。また、撮像装置が画像を撮像することと、撮像された画像から発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきを検出する為の画像処理をすることと、を同時に行なう合体構成の実現に苦慮した。
【0018】
投光装置よりの光を発泡体ローラーに対して照射させる照射部は、発泡体ローラーの長手方向全域に光が当たるような位置に配置する必要がある。照射部の長手方向のライン幅は発泡体ローラーの長手方向の幅より長いことを要する。また、照射部から照射する光の照度ばらつきを低減させる為に、照射部には、光ファイバをライン状に分割して配置させたものを用いる。照射部の光の出射端には、均一な照度の光を照射させるために、シリンドリカルレンズを設ける。このシリンドリカルレンズは、光の一方向のみの高さの拡大及び縮小が可能なレンズである。このシリンドリカルレンズを用いることにより、拡散した光を収束させ、均一な光を照射することが可能になる。
【0019】
また、発泡体ローラーの表面の反射率の違いにより、撮像装置が撮像する光量に違いが出た場合に対応可能なように、投光装置には、出力する照度の手動調整が可能な機構及び電圧による制御が可能な機構を有した光源ユニットを使用する。
【0020】
撮像装置は、発泡体ローラーの表面に反射された反射光を受光できる位置に配置する事を要する。本実施形態においては、撮像装置としてCCDカメラを使用し、撮像装置の撮像範囲内に発泡体ローラーの検査対象範囲が入る様に撮像装置を設置する。また、撮像装置の視野角及び分解能の関係で、一つの撮像装置で発泡体ローラーの長手方向全域を撮像できない場合においては、撮像装置を複数台用いて撮像してもよい。
【0021】
本実施形態において撮像装置として用いたCCDカメラは、画素配置が1次元平面のものとなっている平面撮像用のラインカメラである。このラインカメラは1ラインに5150画素配置されたものを選択した。画像の取り込みにおいては、2次元方向の蓄積ライン数の設定をすることにより、5150×(設定値)の2次元画像として取り込むことが可能となっている。
【0022】
2次元画像としては、各画素において256段階の光量に分けて表示されているものを選択した。しかし、発泡体ローラーの表面を良好に撮像可能な撮像装置であればよく、このカメラ仕様に限定するものではない。たとえば、2次元画像の各画素において1024段階の光量に分けて表示する撮像装置や、カラー成分(RGB成分)を撮像可能な撮像装置を用いてもよい。
【0023】
撮像装置に用いるカメラレンズについては、歪曲収差が低減された高解像度型のレンズを用いる。撮像装置の焦点位置は、一つの撮像装置において発泡体ローラー表面の長手方向全域を撮像できるように調整する必要がある。
【0024】
また、撮像装置には、発泡体ローラーの製品公差により撮像装置と発泡体ローラーとのワーキングディスタンスが変化した場合においても、発泡体ローラー表面の長手方向全域を良好に撮像させる為に、絞りを手動で調整可能なものを使用する。
【0025】
測定物である発泡体ローラーを回転させる回転機構部は、発泡体ローラーの中心軸に当たる芯金部分を金属で製作された回転部材2つで受け、また回転部材の左右で受ける事により測定物である発泡体ローラーを把持する。そして、回転部材を回転させることにより、測定物である発泡体ローラーを芯金部分を中心に回転させる事が可能となる。回転部材は測定物を一定速度で回転させるために全駆動としている。また、測定物の回転を一定に保つ事を保証するためにエンコーダーつきのモータードライバを用い回転させている。
【0026】
回転機構部は制御装置よりの回転開始信号を受け回転部材の回転を始めさせ、制御装置よりの回転終了信号を受け回転部材の回転を停止させる。
【0027】
検査時に発泡体ローラーを回転機構部により回転させることにより、発泡体ローラーの表面の撮像装置の撮像範囲内にある領域を発泡体ローラーの周方向に変更することが可能である。これにより、この撮像装置は、発泡体ローラーの表面の撮像範囲内にある領域に対し逐次撮像を行なうことにより、連続的に発泡体ローラーの検査対象範囲全域についての画像を撮像する。
【0028】
図4は本実施形態において使用する撮像装置の調整機構について示した図である。この調整機構には、撮像装置4の焦点位置の調整を容易にするために、微動ステージ(θ角)11a、回転ステージ(θ角)11b、微動ステージ(Z軸)11c、微動ステージ(Y軸)11dを設けている。
【0029】
図5は本実施形態において使用する照射部の調整機構について示した図である。この調整機構には、照射部2の焦点位置の調整を容易にするために、微動ステージ(θ角)12a、回転ステージ(θ角)12b、微動ステージ(Z軸)12c、微動ステージ(Y軸)12dを設けている。
【0030】
撮像装置より取り込む画像は、発泡体ローラーの表面を周方向に連続的に撮像した各画像をつなぎ合わせて得られる発泡体ローラーの表面の展開画像であり、回転ステージより出されているトリガをもとに取り込みを開始する。
【0031】
撮像された発泡体ローラーの表面の画像にデジタル処理を施すことにより、発泡体ローラーの表面の開口穴の数を各分割枠ごとにカウントし、各分割枠内における開口穴の数を特定の算出式に代入して計算することにより、開口穴の数のばらつき度を算出する。ばらつき度が設定値より大きい場合には、開口穴の数のばらつきが許容範囲外であるとして、欠陥を有する発泡体ローラーであると判断し、その際の画像及び数値を表示可能としておく。
【0032】
撮像装置にて表面を撮像する発泡体ローラーの寸法公差はカメラレンズの被写界深度内である事を要する。
【0033】
なお、最適な画像を撮像するための照射部の配置角度、投光出力、撮像装置の配置位置、カメラレンズの光学倍率、絞り、被写界深度等の条件は実験的に得られる。
【0034】
図6は、本実施形態に係る欠陥検出方法によって発泡体ローラーの検査対象範囲全域を検査する流れを詳細に示したフローチャートである。以下に、図6を参照して発泡体ローラーを検査する流れの概略を説明する。
【0035】
まず、本実施形態に係る欠陥検出方法に用いる欠陥検出装置の回転機構部、検査部ともに電源を投入する。電源が投入された検査部においては、処理装置における通信の確認、ソフト起動の確認等を行なう。電源が投入された回転機構部は装置原点だしと呼ばれる稼働準備を始める。この準備は、装置の機械的な原点位置、ソフト的な原点位置を確認し、検査部におけるソフト起動信号トリガを受け付けて装置の準備ができているのかを確認するためのものである。
【0036】
装置原点だしを終えた回転機構部は、検査準備完了ランプ(原点ランプ)を点灯させ、回転準備待ちとなる。
【0037】
回転機構部に測定物が載せられ、回転機構部が回転開始信号を受け取ると、回転機構部は測定物を回転させ始める。回転機構部は、測定物の回転速度が一定となったと判断した後、検査トリガを検査部へ発信する。検査部は検査トリガを受け画像処理、すなわち検査を開始する。
【0038】
検査部は、検査トリガを受けると、画像の取り込みを開始し、画像の取り込みを終えたのち、1つの画像を指定された数の分割枠によって分割する。検査部は、各々の分割枠内に映し出された開口穴の数をカウントし、カウントした数値を記録する。検査部では、各々の分割枠内での開口穴の数をカウントした後、画像内における、開口穴の数が最大であった分割枠内における最大開口穴数と、最小であった分割枠内における最小開口穴数を用い、開口穴の数のばらつき度を算出する。ばらつき度は、(ばらつき度)=(最大開口穴数−最小開口穴数)/(最大開口穴数)の算出式によって算出する。
【0039】
ばらつき度が、予め設定している設定値よりも大きい場合には、測定物の表面の開口穴の数のばらつきが許容範囲外であると判断して、測定物をばらつき不良とする。その際の判断結果は表示装置にて表示させるようにしておく。
【0040】
画像処理を終えた検査部は、次の測定物への入替を少しでも早く行なえるようにするため、検査を終えたと同時に検査終了トリガを回転機構部へと出力する。その後、検査結果を集計し検査結果を出力する。
【0041】
検査終了トリガを受け取った回転機構部は直ちに測定物の回転を停止させ、測定物の着脱を可能にする。測定物の回転が十分に停止していると判断した後に、着脱信号を出力する。この信号を受け、ハンド部が測定物の着脱を行なう。
【0042】
検査結果は、回転機構部での表示、及び表示装置での出力にて確認を行なえるようになっている。
【0043】
次に、検査部における画像処理について説明する。
【0044】
はじめに画像処理前処理について説明する。
【0045】
まず、取り込んだ画像の光量計算を行なう。製品の形状のばらつきや光学系の配置角度のずれによって、光量は、256階調のうち、20〜30程度変動する。発泡体ローラーに照射する光の照度は投光装置に設けられたボリュームにより調整可能である。本実施形態において、取り込み画像の光量変換の調整値は256階調中の任意の数値に設定可能だが、好ましくは、製品の公差に左右されにくい照度である180付近に設定する。しかしながら、発泡体ローラーを良好に撮像可能であれば、この数値に限定するものではない。
【0046】
また、データの伝送時に発生する外因的な影響によるノイズ、カメラの画素欠けによるノイズ等を低減させる為、製品の表面粗さの影響を軽減させるために平滑化処理を行なう。平滑化処理では、検出条件や設置条件の違いに対応するため数値の条件を変更することができる。
【0047】
本実施形態において、取り込み画像の平滑化処理の画素調整値、つまり平均化する際の隣り合う画素の範囲は、取り込んだ画像の画素数内において任意の数値に設定可能である。平均化する画素の範囲は、好ましくは、製品の表面粗さによる影響を軽減させ、かつ凹凸を検出可能にさせるという観点より3〜5付近に設定するが、製品表面を良好に撮像可能であれば、この数値に限定するものではない。
【0048】
次に検査部におけるばらつき検出処理について説明する。
【0049】
上述した画像処理前処理を行なった後、1つの画像をあらかじめ設定した分割枠によって分割する。これは発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきを有する位置を特定する観点及びばらつきを精度良く検出する観点から行なう。
【0050】
画像を分割する分割枠の数は多いほど発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきを有する位置をより詳細に特定できる。しかし、分割枠の数を多くすると画像処理に時間がかかるため、分割枠の数は50以下であることが望ましい。
【0051】
上述した画像分割処理を行なった後、開口穴を検出する為、各々の分割枠内の領域に対し、二値化処理及び開口穴抽出処理等を順次行なっていく。
【0052】
二値化処理とは設定した光量以下の部分を開口穴と認識させるものである。発泡体ローラーの表面の開口穴以外の部分においては、投光装置よりの光を反射する為、開口穴と比較し撮像装置に入射される光量は多くなる。すなわち、発泡体ローラーの表面の画像内において、開口穴は開口穴以外の部分より暗く映し出される。開口穴と開口穴以外の部分とを分ける光量の数値を設定し、画像内において設定値以下の光量の数値を示した部分を開口穴と認識させている。すなわち、開口穴は黒く表示され、開口穴以外の部分は白く表示される。
【0053】
二値化処理された画像は白黒で表示されるが、黒く表示された部分の中には、実際には、開口穴ではないノイズも存在する。開口穴抽出処理とは、画像内における二値化処理後の黒い部分を、丸み及び面積等の条件により、開口穴とノイズとに分別する処理である。本処理は、二値化処理にて黒く表示された部分が開口穴であるか、開口穴近傍での乱反射によるノイズであるかを分別させる観点より行なう処理である。本実施形態では、設定値を50pixとし、二値化処理にて黒く表示された部分のうち、50pix以下の部分をノイズとしてカットさせている。しかしながら、設定値は、開口穴とノイズとを分別できればこの数値に限定するものではない。
【0054】
取り込んだ画像に対し、前述した処理を逐次行なっていくことにより、開口穴の数のばらつきを有する発泡体ローラーを見つけ出すことが可能となる。なお二値化処理及び開口穴抽出処理等を行なう欠陥検出方法は発泡体ローラー全般に適するものであるから、画像形成装置における搬送用ローラー部材として用いるものの欠陥検出方法としても優れたものである。
【0055】
次に、本実施形態に係る発泡体ローラーの欠陥検出方法に用いることができる欠陥検出装置について説明する。
【0056】
図7は、本実施形態に係る発泡体ローラーの欠陥検出方法に用いることができる欠陥検出装置の概略構成図である。
【0057】
まず欠陥検出装置100の動作について説明する。
【0058】
欠陥検出装置100は回転機構部と検査部とを有している。ここで、ワークとは、発泡体ローラー1などの被検査物を指す。
【0059】
回転機構部は、モータードライバ15と駆動装置16とを備えている。
【0060】
検査部は、記憶・処理装置22、表示装置23、撮像装置4及び投光装置3を備えている。検査部は、回転機構部の回転制御と、発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきを認識できるようにする為の画像処理とを行なう。
【0061】
欠陥検出装置100の回転機構部の動作について説明する。
【0062】
回転機構部はワークを撮像装置4が撮像すべき領域、つまりワークの検査領域の全てを撮像させる事を目的とした機構である。
【0063】
まず、回転機構部にセットされたワークが位置ずれしない様に、突き当てを前進させワークを位置決めする。次に、ワークを把持機構によって把持することにより固定する。その後、回転機構部以外の部分による力が働かないようにするために把持機構は後退する。
【0064】
把持機構が後退したら、モータードライバ15が駆動装置16を駆動させてワークを回転させる。モータードライバ15は、ワークの撮像装置4が撮像すべき領域、つまりワークの検査領域の全てを撮像装置4に撮像させるように、ワークを回転させることによりワークの表面の撮像位置を周方向に移動させる。ワークの検査領域の全てを撮像装置4に撮像させた後、モータードライバ15が駆動装置16の駆動を終了させる。これにより、ワークの回転は終了する。回転機構部は、ワークの回転が終了した後に、検査部の結果を待って、把持機構によるワークの把持を解除し、ワークを取り外し可能なようにする。
【0065】
欠陥検出装置100の検査部の動作について説明する。
【0066】
検査部は画像処理によって発泡体ローラーの表面の欠陥箇所を認識できるようにすることを目的とした機構である。また、検査部は、回転機構部の制御機能も有している。
【0067】
検査部は、回転機構部にワークを載せられた際に発信されるトリガ信号を受けると、画像処理の為のメモリの初期化、ウインドウの設定等の初期設定を開始する。
【0068】
検査部は、回転機構部がワークの回転を開始させ、ワークの回転速度が、撮像装置4がワークを安定して撮像できると判断する回転速度領域に入ったときに、駆動装置16より発信されるトリガを受けて画像の取り込みを開始する。
【0069】
検査部は、ワークの撮像装置4が撮像すべき領域、つまりワークの検査領域の全てを撮像し、撮像した画像の画像処理を行ない、その結果を集計する。集計した結果を結果I・Oとして、駆動装置16へ検査終了の信号を送る。
【0070】
このように欠陥検出装置100では、回転機構部及び検査部が連携して上述の動作を繰り返すことにより、複数本のワークを容易に検査することができる。
【0071】
以下に欠陥検出装置100の構成について説明する。
【0072】
欠陥検出装置100は、検査ステージ21上に、照射部2から光を照射させる投光装置3と、カメラレンズ5及びカメラフィルタ6を備えた撮像装置4と、発泡体ローラー1を回転させる駆動装置16と、記憶・処理装置22と、表示装置23と、を有している。また、駆動装置16はモータードライバ15によって駆動させられる。
【0073】
投光装置3、撮像装置4、モータードライバ15、駆動装置16、検査ステージ21、記憶・処理装置22及び表示装置23は、電源ユニット24に接続された無停電電源(不図示)より電源が供給されている。
【0074】
投光装置3より発生させられ照射部2を通過した光は、発泡体ローラー1に照射される。発泡体ローラー1に照射された光は、発泡体ローラー1の表面で反射される成分と、発泡体ローラー1の内部を透過する成分とに分かれる。発泡体ローラー1の表面において反射された光は、カメラフィルタ6及びカメラレンズ5を通過し、撮像装置に入射する。これにより、発泡体ローラー1の表面の画像が撮像装置4に撮像される。
【0075】
撮像装置4により撮像された画像は記憶・処理装置22に転送されて記憶・処理装置22に取り込まれる。その際、転送された画像の画像番号が記憶・処理装置22に記録される。
【0076】
記憶・処理装置22は、転送された画像のデータをもとに、画像処理を行なう。記憶・処理装置22における画像処理では、まず、取り込まれた画像からノイズ等を取り除く為、フィルタ処理を行なう。これは、1つの画素が突発的に周囲の隣接する画素と大きく異なる光量を示すなど、ノイズであると判断される画素がある場合に、このようなノイズを除去するために行なう。さらに、フィルタ処理によって、発泡体ローラー1の表面粗さの影響を軽減させることもできる。
【0077】
また、記憶・処理装置22において、発泡体ローラーの各画像によって画像の明るさが違う場合がある為、各々の画像の明るさを算出し、その明るさの算出値を元に各画像全体の明るさを増減させる処理を加えている。
【0078】
記憶・処理装置22では、上述した処理を加えた画像を、予め設定した数の分割枠によって分割し、各分割枠内に映し出された開口穴の数をカウントする。そして、各分割枠における開口穴のカウント数を比較することにより、発泡体ローラー1の表面の開口穴の数のばらつきによる欠陥の検出を可能にしている。
【0079】
記憶・処理装置22には、カメラレンズ5の倍率、撮像装置4の設置角度、撮像可能範囲の位置などの条件があらかじめ設定されている。記憶・処理装置22では、この設定条件を元にばらつきを有する部分の位置を特定し、ばらつき度を算出し、これらの結果を記録し、これと同時にこれらの結果を表示装置23へ出力する。
【0080】
また記憶・処理装置22は設定された計測分解能にしたがって、駆動装置16を駆動させるモータードライバ15を制御する。これにより、発泡体ローラー1を回転させて、発泡体ローラー1の表面の検査位置を順次変えていくことで、発泡体ローラー1の表面の検査領域全域を検査することが可能なようになっている。
【0081】
なお、欠陥検出装置100は、発泡体ローラー1の表面の検査領域の全域を高速で撮像することができる。また、欠陥検出装置100は、画像内の開口穴の数を高速でカウントすることができる。これらの効果により、欠陥検出装置100を用いた方法では、発泡体ローラー1の表面の開口穴の数のばらつきの有無を高速で判別することができる。さらに欠陥検出装置100は、発泡体ローラー1の表面の状態をより詳細に把握するために、開口穴の大きさを高速で測定することもできる。
【0082】
これらの効果を確かめるために、発泡体ローラー1の表面の開口穴の数をカウントし、各開口穴の大きさを測定する速度について、欠陥検出装置100を用いた方法と一般的な欠陥検出方法とを以下の実験によって比較した。
【0083】
本実験は、発泡体ローラー1の表面の全域について開口穴の数をカウントし、各開口穴の内径を測定することによって行なった。検査対象物としては、欠陥検出装置100を用いた方法においても、一般的な欠陥検出方法においても、同一の発泡体ローラー1を用いた。
【0084】
欠陥検出装置100を用いた方法では、約10秒で、発泡体ローラー1の表面の全域の開口穴の数をカウントし、各開口穴の内径を測定することができた。
【0085】
その結果、発泡体ローラー1の表面の開口穴は、内径が100μm以下のものが5%、101〜200μmのものが15%、201〜300μmのものが60%、301〜400μmのものが17%、401μm以上のものが3%あることが検出された。
【0086】
一般的な欠陥検出方法としては市販されている光学顕微鏡を使用した方法を用いた。この欠陥検出方法では、検査員が、開口穴の数を目視で数え、手作業で開口穴の内径を測定する。したがって、欠陥検出装置100を用いた方法に比べて、発泡体ローラー1の表面の全域について開口穴の数をカウントし、各開口穴の内径を測定するには非常に時間がかかる。
【0087】
したがって、検査員による方法では、検査時間を短縮させる必要があるため、発泡体ローラー1の表面の全域ではなく、発泡体ローラー1の表面の一部の領域において検査し、その後、発泡体ローラー1の表面の全域に面積換算を行なった。具体的には、発泡体ローラー1の表面の長手方向の3箇所において周方向に各5箇所抽出した合計15箇所において、それぞれ6mm×4.5mmの範囲について開口穴の数をカウントし、各開口穴の内径を測定した。
【0088】
その結果、発泡体ローラー1の表面の開口穴は、内径が100μm以下のものが5%、101〜200μmのものが15%、201〜300μmのものが60%、301〜400μmのものが17%、401μm以上のものが3%であることが検出された。
【0089】
このように、欠陥検出装置100を用いた方法と一般的な欠陥検出方法とでは同等の検出結果が得られ、検査精度は同等であると考えられる。したがって、欠陥検出装置100を用いた方法では一般的な欠陥検出方法に比べて非常に短時間で同等の検査精度で検査を行えることがわかった。
【0090】
また、検査員による欠陥検出方法は検査領域を抜き取って行なう抜き取り抽出検査であるのに対し、欠陥検出装置100を用いた方法は発泡体ローラー1の表面の全域について行なう検査である。そのため、欠陥検出装置100を用いた方法の方が検出結果の信頼性が高い。
【0091】
さらには、光学顕微鏡を用いた欠陥検出方法では検査員が開口穴の数を目視で数え、手作業で開口穴の内径を検出するため、検査水準を一定に保つことは困難である。これに対し、欠陥検出装置100は検査部によって制御されているため、欠陥検出装置100を用いた方法では検査水準を一定に保つことができる。
【0092】
よって、欠陥検出装置100を用いた方法では検査精度の向上が可能であり、装置能力的に優れているということがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施形態に係る欠陥検出方法において撮像する画像の一例を示した図である
【図2】図1に示した画像を分割枠によって分割した状態を示した図である。
【図3】図2に示した分割枠のうちの1つの分割枠内の領域を示した図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る欠陥検出方法において使用する撮像装置の調整機構を示した図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る欠陥検出方法において使用する照射部の調整機構を示した図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る欠陥検出方法において発泡体ローラー全域を検査する流れを示したフローチャートである。
【図7】本実施形態に係る発泡体ローラーの欠陥検出方法に用いることができる欠陥検出装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0094】
1 発泡体ローラー
2 照射部
3 投光装置
4 撮像装置
5 カメラレンズ
6 カメラフィルタ
15 モータードライバ
16 駆動装置
21 検査ステージ
22 記憶・処理装置
23 表示装置
24 電源ユニット
31 画像
32 分割枠
33 開口穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体ローラーの表面を撮像した画像をデジタル処理することで前記発泡体ローラーの表面における開口穴の数のばらつきを検出する欠陥検出方法において、
前記画像を複数の領域に等分し、前記各領域内に映し出された開口穴の数をカウントし、前記各領域内における前記開口穴の数を比較することにより、前記発泡体ローラーの表面における前記開口穴の数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判別することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
前記画像を前記発泡体ローラーの周方向に複数の前記領域に等分する、請求項1に記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記画像を50以下の前記領域に等分する、請求項1または2に記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記開口穴の数が最も多い前記領域内における前記開口穴の数である最大開口穴数と、前記開口穴の数が最も少ない前記領域内における前記開口穴の数である最小開口穴数と、を比較することにより前記開口穴の数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判別する、請求項1から3のいずれか1項に記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
前記開口穴の数が最も多い前記領域内における前記開口穴の数である最大開口穴数と、前記開口穴の数が最も少ない前記領域内における前記開口穴の数である最小開口穴数と、の差を、前記最大開口穴数で割って得られる数値に基づいて前記開口穴の数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判別する、請求項1から3のいずれか1項に記載の欠陥検出方法。
【請求項6】
発泡体ローラーの表面を撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した画像をデジタル処理することによって前記発泡体ローラーの表面の開口穴の数のばらつきを検出する処理手段と、を有する欠陥検出装置において、
前記処理手段は、前記画像を複数の領域に等分し、前記各領域内に映し出された前記開口穴の数をカウントし、前記各領域内における前記開口穴の数を比較することにより、前記発泡体ローラーの表面における前記開口穴の数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判別することを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項7】
前記処理手段は、前記画像を前記発泡体ローラーの周方向に複数の前記領域に等分する、請求項6に記載の欠陥検出装置。
【請求項8】
前記処理手段は、前記画像を50以下の前記領域に等分する、請求項6または7に記載の欠陥検出装置。
【請求項9】
前記処理手段は、前記開口穴の数が最も多い前記領域内における前記開口穴の数である最大開口穴数と、前記開口穴の数が最も少ない前記領域内における前記開口穴の数である最小開口穴数と、を比較することにより前記開口穴の数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判別する、請求項6から8のいずれか1項に記載の欠陥検出装置。
【請求項10】
前記処理手段は、前記開口穴の数が最も多い前記領域内における前記開口穴の数である最大開口穴数と、前記開口穴の数が最も少ない前記領域内における前記開口穴の数である最小開口穴数と、の差を、前記最大開口穴数で割って得られる数値に基づいて前記開口穴の数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判別する、請求項6から8のいずれか1項に記載の欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−117173(P2010−117173A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288950(P2008−288950)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】