説明

欠陥検査方法および欠陥検査装置

【課題】構造が簡単で、検査対象物上の直線状の欠陥を検出し、検査対象物の良否判定処理を実行する欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】画像メモリ5に記憶した撮像画像の各画素の濃度に基づく微分演算を行い微分絶対値および微分方向値を算出し、微分絶対値に、各画素の微分方向値に対応する重み付け値を乗じて、ノイズ成分の除去または前記直線状の欠陥の境界を強調する強度値をそれぞれ算出し、直線状の欠陥の長手方向に連続し、幅手方向に並設する複数の検査領域を、撮像画像に設定し、該検査領域に配置された各画素の強度値を合算した積算値を、前記検査領域に配置された画素数で除算し、前記検査領域における強度値の特徴量Fを、検査領域ごとに算出し、特徴量Fのいずれか1つが所定の閾値以上である場合、検査対象物2が直線状の欠陥を有する不良品であると判定する判定ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物を撮像して得た画像に画像処理を施すことによって検査対象物表面の直線状の欠陥の有無を検出する欠陥検査方法および欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の欠陥検査装置に関するものとしては、例えば特許文献1に記載されているように、撮像装置が撮像した検査対象物の撮像画像に対して、各画素の濃度に基づく微分演算を実行する微分演算部と、各画素の微分絶対値を算出する微分絶対値演算部と、微分絶対値が規定値以上である画素をエッジ画素として抽出するエッジ画素抽出部と、互いに隣接するエッジ画素の集合を位置検出用ランドとして抽出する位置検出用ランド抽出部と、撮像画像の各画素に対して2値化を行って欠陥候補画素を抽出する濃淡2値化演算部と、互いに隣接する欠陥候補画素の集合を欠陥候補ランドとして抽出する欠陥候補ランド抽出部と、欠陥候補ランドの画素数を計測する計測部と、欠陥候補ランドの画素数が規定画素数以上である場合、検査対象物が不良品であると判定する一方、欠陥候補ランドの画素数が画素数閾値未満である場合、検査対象物が良品であると判定する判定部とを備えた欠陥検査装置が知られている。
【0003】
上記特許文献1記載の欠陥検査装置では、微分演算部がプリューウィットフィルタ(Prewitt filter)やソーベルフィルタ(Sobel filter)のような3×3または5×5の微分フィルタを用いて微分演算を行う。例えば、プリューウィットフィルタとして、3×3の微分フィルタを使用する場合、微分演算部が微分フィルタの中心画素を着目画素とし、この着目画素の8近傍に隣接する8画素の濃度値と微分フィルタの係数との積を求め、求めた積の総和をΔXおよびΔYとする。
【0004】
また、微分演算部は、注目画素の近傍領域における濃度変化を表わす微分絶対値abs(E)と、画素Eの近傍領域における濃度値の最大変化の方向に直交する方向を表わす微分方向値dir(E)とを、abs(E)=(ΔX2+ΔY2)1/2の式と、dir(E)=tan−1(ΔY/ΔX)+(π/2)の式とによって求める。この微分絶対値abs(E)は、注目画素の近傍領域における濃度値の変化率に対応し、撮像画像の画素の濃度変化が大きい部位ほど大きくなる。微分方向値dir(E)は、画素Eの近傍領域における濃度値の最大変化の方向に直交する方向、すなわち、エッジ(境界)に平行な方向(エッジの接線方向)を表わし、この微分方向値は、コード化(デジタル化)した値が用いられ、360°を8方向に分割した8個の角度範囲を用い、各角度範囲にそれぞれに対応するコードを付与した微分方向値を用いて処理していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−197176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されているものでは、微分演算部で算出された微分絶対値が規定値以上であるエッジ画素の領域と2値化した欠陥候補画素の領域とを関連付けた欠陥候補ランドを抽出し、欠陥候補ランドの画素数が規定画素数以上である場合、検査対象物が不良品であると判定しているため、画素間の濃度変化が小さい画素が連続する直線状の欠陥を検出することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、構造が簡単で、検査対象物上の直線状の欠陥を検出し、検査対象物の良否判定処理を実行する欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供することを目的としている。
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 検査対象物が撮像された撮像画像を画像メモリに記憶し当該検査対象物の表面に生じる直線状の欠陥を検出する欠陥検査方法であって、前記画像メモリに記憶した撮像画像の各画素の濃度に基づく微分演算を行い画素間の濃度変化の強さを表わす微分絶対値および濃度変化の方向を表す微分方向値を各画素に対して算出する微分演算ステップと、前記微分演算ステップで算出された各画素の前記微分絶対値に、各画素の前記微分方向値に対応する重み付け値を乗じて、ノイズ成分の除去または前記直線状の欠陥の境界を強調する強度値をそれぞれ算出する強度演算ステップと、前記直線状の欠陥の長手方向に連続し、幅手方向に並設する複数の検査領域を、前記撮像画像に設定し、該検査領域に配置された各画素の前記強度値を合算した積算値を、前記検査領域に配置された画素数で除算し、前記検査領域における強度値の特徴量を、前記検査領域ごとに算出する特徴量演算ステップと、前記特徴量演算ステップで算出された複数の特徴量のいずれか1つが所定の閾値以上である場合、前記検査対象物が直線状の欠陥を有する不良品であると判定する判定ステップとを含むものとする。
【0009】
このような構成とすると、各画素の微分絶対値に重み付け値を乗じた強度値を算出し、各検査領域における強度値の特徴量をもって、検査対象物が不良品であると判定するので、検査対象物の表面上に生じる直線状の欠陥を確実に検出することができ、検査対象物の良否を精度よく判定することができる。
【0010】
(2) 上記(1)項において、撮像画像に設定された複数の検査領域における強度値の特徴量のすべてが所定の閾値未満である場合、検査対象物が良品であると判定する。
【0011】
このような構成とすると、検査領域における強度値の特徴量をもって、直線状の欠陥の有無を判定するので、判定処理の負荷を減少させることができる。
【0012】
(3) 上記(1)または(2)項において、強度演算ステップは、画素の微分方向値が直線状の欠陥における境界に直交する角度に近いほど強度値を大とし、前記微分方向値が直線状の欠陥における境界の接線の角度に近いほど強度値を小とする。
【0013】
このような構成とすると、直線状の欠陥の境界を強調し、ノイズ成分を低減するので、直線状の欠陥を確実に検出することができる。
【0014】
(4) 上記(1)〜(3)項において、画像メモリは、撮像装置が撮像する検査対象物を、垂直方向または/および水平方向に圧縮された撮像画像を記憶する。
【0015】
このような構成とすると、圧縮された撮像画像の各画素を微分演算するので、直線状の欠陥の検出精度を維持し、検査対象物の検査処理時間を短縮することができる。
【0016】
(5) 上記(1)〜(4)項において、特徴量演算ステップは、直線状の欠陥の長手方向に直線状または帯状に並ぶ複数の画素からなる検査領域ごとに強度値の特徴量を算出する。
【0017】
このような構成とすると、直線状の欠陥の長手方向に、直線状に並ぶ複数の画素の強度値または帯状に並ぶ複数の画素の強度値のいずれかを積算し、特徴量を算出するので、直線状の欠陥の境界を確実に検出することができる。
【0018】
(6) 検査対象物が撮像された撮像画像を画像メモリに記憶し当該検査対象物の表面に生じる直線状の欠陥を検出する欠陥検査装置であって、前記画像メモリに記憶した撮像画像の各画素の濃度に基づく微分演算を行い画素間の濃度変化の強さを表わす微分絶対値および濃度変化の方向を表す微分方向値を各画素に対して算出する微分演算手段と、前記微分演算手段で算出された各画素の前記微分絶対値に、各画素の前記微分方向値に対応する重み付け値を乗じて、ノイズ成分の除去または前記直線状の欠陥の境界を強調する強度値をそれぞれ算出する強度演算手段と、前記直線状の欠陥の長手方向に連続し、幅手方向に並設する複数の検査領域を、前記撮像画像に設定し、該検査領域に配置された各画素の前記強度値を合算した積算値を、前記検査領域に配置された画素数で除算し、前記検査領域における強度値の特徴量を、前記検査領域ごとに算出する特徴量演算手段と、前記特徴量演算手段で算出された複数の特徴量のいずれか1つが所定の閾値以上である場合、前記検査対象物が直線状の欠陥を有する不良品であると判定する判定手段とを備えるものとする。
【0019】
このような構成とすると、各画素の微分絶対値に重み付け値を乗じた強度値を算出し、各検査領域における強度値の特徴量をもって、検査対象物が不良品であると判定するので、検査対象物の表面上に生じる直線状の欠陥を確実に検出することができ、検査対象物の良否を精度よく判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、構造が簡単で、検査対象物上の直線状の欠陥を検出し、検査対象物の良否判定処理を実行する欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の欠陥検査装置のブロック図である。
【図2】図1の欠陥検査装置が検査する検査対象物の平面図である。
【図3】図1の欠陥検査装置に用いられる微分フィルタを示す図である。
【図4】検査対象物の撮像画像の濃度を示す斜視図である。
【図5】図1の欠陥検査装置の処理の流れを示すフロー図である。
【図6】図1の欠陥検査装置の良否判定の流れを示すフロー図である。
【図7】図1の欠陥検査装置が出力するヒストグラムを示す図である。
【図8】図1の画像メモリに記憶する撮像画像のヒストグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、欠陥検査装置1は、検査対象物2を含む空間領域を撮像する撮像装置3からアナログ−デジタル変換部4を介して撮像画像を取得し、検査対象物2の表面上の直線状の欠陥2a、2bを検出する装置である。
【0023】
欠陥検査装置1は、撮像装置3から取得した撮像画像を一時的に保存する画像メモリ5と、撮像画像の各画素の濃度に基づく演算処理を実行する中央処理装置(CPU)6と、検査処理プログラムを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)7と、中央処理装置6の演算結果を一時的に記憶するメインメモリ8と、メインメモリ8に記憶された強度値や特徴量をヒストグラムとして外部のモニタ9に出力するデジタル−アナログ変換部10とを備えている。
【0024】
中央処理装置6は、バス12を介して、アナログ−デジタル変換部4、画像メモリ5、読み出し専用メモリ(ROM)7、メインメモリ8、デジタル−アナログ変換部10、キーボードやマウスを含む操作部11に相互に接続されている。
【0025】
撮像装置3は、例えばCCDまたはCMOSイメージセンサを用いた、水平解像度が15.5μmの画素ピッチ、垂直解像度が12.5μmの画素ピッチの撮像画像を取得可能に設定されている。
【0026】
メインメモリ8には、微分値領域8aと、強度値領域8bと、特徴量領域8cと、検査プログラム領域8dとが設けられている。
【0027】
微分値領域8aには、微分演算手段として中央処理装置6が画像メモリ5に記憶する撮像画像の各画素の濃度に基づく微分演算を行い画素間の濃度変化の強さを表わす微分絶対値および濃度変化の方向を表す微分方向値を各画素に対して算出する微分値が記憶される。
【0028】
強度値領域8bには、強度算出手段として中央処理装置6が微分演算手段で算出された各画素の微分絶対値に、各画素の微分方向値に対応する重み付け値を乗じて、ノイズ成分の除去または直線状の欠陥2a、2bの境界を強調する強度値が記憶される。
【0029】
特徴量領域8cには、特徴量算出手段として中央処理装置6が直線状の欠陥2aまたは2bの長手方向に連続し、幅手方向に並設する複数の検査領域を、撮像画像に設定し、検査領域に配置された各画素の強度値を合算した積算値を、検査領域に配置された画素数で除算し、各検査領域における強度値の特徴量Fが記憶される。
【0030】
検査プログラム領域8dには、直線状の欠陥2a、2bを検出させる検査処理プログラムや、判定処理に用いる閾値や、各画素の微分方向値に対応する重み付け値が記憶される。
【0031】
図2に示すように、検査対象物2は、例えば、原料をX軸方向(水平方向)に押出成形した成形体を、加熱行程により焼結させた板状の焼結体である。押出成形される原料は、金属、重合体、セラミックス、コンクリート、食品などがある。本実施形態では、窒化アルミニウムを含むセラミックス焼結体を例示している。このセラミックス焼結体は、平面視におけるY軸方向(垂直方向)に延びる左右辺とX軸方向に延びる上下辺とを有する基板状のものである。
【0032】
このセラミックス焼結体は、原料を口金を通じて押し出した成形体を連続生産し、例えば外周を切削加工した後に、焼結したものであるが、押出成形の行程で、成形体の表面で押出方向、すなわちX軸方向に直線状の欠陥による配向が生じることがある。例えば押出時の温度が低すぎて原料が金型に固着して発生する直線状の欠陥や、原料と押出加工材との摩擦による直線状の欠陥や、押出速度が高すぎた場合、押出加工材とダイスやダイス表面のメタルとの間のせん断力によって生じる直線状の欠陥による配向が成形体の表面に生じる場合がある。
【0033】
成形体の表面に生じた直線状の欠陥は、検査行程により不良品として扱うこともできるが、不良品として扱われる成形体の中には、焼結行程において、隣合う原料粒子が除々に接着し、粒子間のすき間が小さくなり成形体が全体的に収縮するので、小さな直線状の欠陥が消滅する場合もある。
【0034】
本実施形態では、焼結行程で成形体の直線状の欠陥を消滅または収縮させたセラミックス焼結体の欠陥検査を実施することで、セラミックス焼結体の歩留まりを向上させ、セラミックス焼結体の表面上に、押出方向に連続する直線状の欠陥2a、2bを精度よく検出し、セラミックス焼結体の良否判定を実行することができる。
【0035】
検査対象物2は、例えば背景となる基台に搬送され、基台の垂直面に対して照明角度20°の位置から集光レンズ付き棒状照明装置(図示略)により光が照射され、基台の垂直面に対してカメラ角度10°の位置から撮像装置3により背景と検査対象物2とを含む撮像画像として撮像される。これにより、検査対象物2における外周境界と表面上の直線状の欠陥2a、2bの境界とを形成する陰影を欠陥検査装置1に取得させることができる。
【0036】
中央処理装置6は、読み出し専用メモリ7から読み出した検査処理プログラムを、メインメモリ8における検査処理プログラム領域8dへ一時的に記憶し、この検査処理プログラムを実行することにより、バス12を制御し、微分演算手段と、強度演算手段と、特徴量演算手段と、判定手段とを含む演算機能を実現し、撮像画像の取り込み、画素情報の演算結果を出力することができる。
【0037】
中央処理装置6は、微分演算手段として、画像メモリ5に記憶する撮像画像における各画素の微分絶対値および微分方向値を算出する。例えば図3に示す画素A〜Yの画素情報に記憶された0〜255階調の各画素の濃度に基づき、図3に示すX方向微分フィルタおよびY方向微分フィルタを用いて微分演算を実行する。
【0038】
本実施形態では、5×5のプリューウィットフィルタ(Prewitt filter)を用いた微分演算を例示するが、他にソーベルフィルタ(Sobel filter)を用いる微分演算を実現してもよく、フィルターサイズは、欠陥サイズや解像度に適合した3×3や7×7などの任意のサイズに変更してもよい。
【0039】
中央処理装置6は、微分演算手段として、画像メモリ5から画素情報を読み出し、画素情報の中から画素Mを着目画素とし、画素Mを包囲する画素A〜L、N〜Yの濃度値と各微分フィルタの係数との積を求め、求めた積の総和を、画素(x、y)ごとに式1および式2を用いて、水平方向の濃度変化h(x、y)および垂直方向の濃度変化v(x、y)を算出する。
h(x、y)=−(A+F+K+P+U)+(E+J+O+T+Y)… 式1
v(x、y)=−(A+B+C+D+E)+(U+V+W+X+Y)… 式2
【0040】
中央処理装置6は、微分演算手段として、水平方向の濃度変化h(x、y)および垂直方向の濃度変化v(x、y)に基づき、注目画素Mの近傍領域における濃度変化を表わす微分絶対値gと、画素Mの近傍領域における濃度値の最大変化の方向を表わす微分方向値aとを、式3および式4を用いて算出し、各画素の微分絶対値gと微分方向値aとをメインメモリ8における微分値領域8aに記憶する。なお、微分絶対値gは、画素Mの近傍領域における濃度値の変化率を表わし、撮像画像の画素の濃度変化が大きい部位ほど大きくなる。
g(x、y)={h(x、y)2+v(x、y)21/2… 式3
a(x、y)=tan-1{v(x、y)/h(x、y)}… 式4
【0041】
図4は、図2に示す検査対象物2における表面上の直線状の欠陥2bが通過する矩形領域2c内に配置された各画素の濃度値を、3次元的に示した斜視図である。図4に示す水平方向のX軸と垂直方向のY軸との交点にそれぞれ配置された画素の濃度を、例えば256階調でZ軸に示している。A〜Dの四隅に囲まれた矩形領域2cの中央部には、押出方向に配向する直線状の欠陥2bの濃度が示され、谷底部の画素濃度が両縁部の濃度より低く、かつ谷底部と両縁部との間の傾斜部の濃度変化が、図中の矢印で示すように、X軸方向の濃度変化に比して谷底部側から両縁部側に向かってY軸方向に強く出力されている。
【0042】
中央処理装置6は、強度演算手段として、微分値領域8aから微分方向値aを読み出し、微分方向値aと垂直方向とのずれ量に基づいて、画素の重み付け値wを算出する。例えば、微分方向値aがY軸方向の垂線を基準に30°(π/6)未満の角度の場合、重み付け値wを絶対値1以下の範囲に設定することにより、直線状の欠陥2a、2bの押出方向に現れる両縁部の境界を強調させることができる。一方、微分方向値aがY軸方向の垂線を基準に30°(π/6)以上の角度の場合、重み付け値wを0に設定し、直線状の欠陥2a、2bの両縁部の接線方向に近い画素の強度をノイズ成分として除去することができる。
【0043】
重み付け値wは、微分方向値aの角度が垂線を基準に30°(π/6)以上の場合、ノイズ成分を除去するように設定してもよく、垂線を基準に45°(π/4)以上の角度の場合、ノイズ成分を除去するように設定してもよい。つまり、検査対象物2の押出方向に現れる直線状の欠陥2a、2bの両縁部の境界が強調可能な角度を用いればよい。
【0044】
中央処理装置6は、強度演算手段として、各画素の微分絶対値gと重み付け値wとの積{w×g(x、y)}を求め、求めた積を各画素の直線状の欠陥2a、2bの強度値としてメインメモリ8における強度値領域8bに記憶する。
【0045】
中央処理装置6は、特徴量演算手段として、強度値領域8bから直線状の欠陥2a、2bの長手方向(水平方向)に配置された各画素の直線状の欠陥2a、2bの強度値を読み出し、この強度値の総和を直線状の欠陥2a、2bの長手方向に配置された画素数Nで除算した強度値の特徴量Fを次に示す式5により算出し、強度値の特徴量Fをメインメモリ8における特徴量領域8cに記憶する。
F=(1/N)×Σ{w×g(x、y)}… 式5
【0046】
中央処理装置6は、判定手段として、特徴量演算手段が算出し特徴量領域8cに記憶させた特徴量Fのいずれか1つが所定の閾値以上である場合、検査対象物2が直線状の欠陥2a、2bを有する不良品であると判定し、モニタ9に不良品の報知情報を表示させ、特徴量領域8cに記憶させた特徴量Fがすべて閾値未満である場合、検査対象物2が良品であると判定し、モニタ9に良品の報知情報を表示させる。
【0047】
図5を参照して、本実施形態の欠陥検査装置1を用いた欠陥検査方法を説明する。本実施形態の欠陥検査装置1は、撮像装置3が撮像した検査対象物2の撮像画像を画像メモリ5に記憶し、画像メモリ5のアドレスカウンタを初期値に設定している。
【0048】
中央処理装置6は、微分演算ステップS1を実行し、画像メモリ5のアドレスカウンタを増減させ、画像メモリ5に記憶した撮像画像の各画素の濃度に基づく微分演算を行い、画素間の濃度変化の強さを表わす微分絶対値および濃度変化の方向を表す微分方向値を各画素に対して算出し、算出された微分絶対値および微分方向値を微分値領域8aに記憶する。
【0049】
中央処理装置6は、全画素の微分演算が完了したか否かを微分演算完了ステップS2で判定し、全画素の微分演算が完了するまで微分演算ステップS1を繰り返す。微分演算完了ステップS2の判定条件は、画像メモリ5に記憶された撮像画像の画素のすべてを走査して微分演算を完了させてもよく、撮像画像内の検査対象物2に相当する画素のみ微分演算を完了させてもよく、好ましくは、検査対象物2に相当する画素の外周部をマスクし、このマスクに囲まれた領域の画素のみ微分演算を完了させてもよい。判定条件を満たした場合、処理を強度演算ステップS3へ分岐させる。
検査対象物2は、例えばマスクに囲まれた領域に導電層が形成される場合、検査対象物2の外周部に直線状の欠陥が存在しても機械的および電気的な不良が生じないため、微分演算する画素範囲を絞り込むことができる。
【0050】
中央処理装置6は、強度演算ステップS3を実行し、微分値領域8aから微分方向値を読み出し、微分方向値に基づいて重み付け値を設定または算出し、設定または算出した重み付け値と微分値領域8aから読み出した微分絶対値との積を求め、求めた積を直線状の欠陥2a、2bの強度値としてメインメモリ8における強度値領域8bに記憶する。
【0051】
中央処理装置6は、全画素の強度演算が完了したか否かを強度演算完了ステップS4で判定し、全直線状の欠陥の強度演算が完了するまで強度演算ステップS3を繰り返す。強度演算完了ステップS4の判定条件は、メインメモリ8における強度値領域8bに記憶された画素の直線状の欠陥の強度値の演算がすべて完了した場合であり、判定条件を満たした場合、処理をノードN1を経由して特徴量演算ステップS5へ分岐させる。
【0052】
中央処理装置6は、特徴量演算ステップS5を実行し、撮像画像の画素の直線状の欠陥2a、2bの長手方向(水平方向)に対応させて検査領域を設定し、強度値領域8bから検査領域に配置された各画素の直線状の欠陥2a、2bの強度値を読み出し、この強度値の総和を検査領域に配置された画素数Nで除算した強度値の特徴量Fを算出し、強度値の特徴量Fをメインメモリ8における特徴量領域8cに記憶する。例えば、中央処理装置6が指定する検査領域を、撮像画像の最上段ラインから下方に移動させながら最下段ラインまで、それぞれ特徴量Fを算出し、特徴量領域8cに記憶するように処理することができる。
【0053】
ここで検査領域は、撮像画像の画素の直線状の欠陥2a、2bの長手方向(水平方向)に対応させて直線状に並ぶ各画素を、1段または相互に隣接する複数段に設定してもよく、直線状の欠陥2a、2bの幅手方向(垂直方向)に所定の間隔を隔てて平行に配置された複数の画素の段を1つの検査領域として設定してもよい。要は、1画素の幅を有する直線状の検査領域でも、複数画素の幅を有するブロック状の検査領域でも、すだれ状の検査領域でも、直線状の欠陥2a、2bの特徴量Fを取得することができる。
【0054】
上述した検査領域は、押出方向が水平に撮影された検査対象物2に基づいて、直線状の欠陥2a、2bを検査するように設定したが、本発明は、押出方向が水平に撮像された検査対象物2に限定されず、例えば、検査対象物2が傾き、撮像装置3により押出方向が斜めに傾斜した検査対象物2を撮影する場合、中央処理装置6が画像メモリ5の中に記憶する原画像の傾斜を、水平方向に補正する角度補正処理を実行し検査領域内における直線状の欠陥2a、2bを検査することもできる。この場合、検査対象物2の上縁または下縁を水平の基準線として検査領域を設定してもよく、画像メモリ5に記憶する直線状の欠陥2a、2bのエッジを水平の基準線として検査領域を設定することもできる。要は、中央処理装置6が画像メモリ5に記憶する傾斜した原画像を、水平方向に回転させ補正画像の各画素に基づいて、直線状の欠陥2a、2bを検出することができる。
【0055】
中央処理装置6は、全検査領域の特徴量演算が完了したか否かを検査領域完了ステップS6で判定し、全検査領域の特徴量演算が完了するまで特徴量演算ステップS5を繰り返す。検査領域完了ステップS6の判定条件は、メインメモリ8における特徴量領域8cに記憶された検査領域の特徴量Fの演算がすべて完了した場合であり、判定条件を満たした場合、処理を良否判定ステップS7へ分岐させる。
【0056】
中央処理装置6は、良否判定ステップS7を実行し、特徴量領域8cに記憶する特徴量Fのいずれか1つが所定の閾値以上である場合、検査対象物2が直線状の欠陥2a、2bを有する不良品であると判定し、処理を報知処理ステップS8へ分岐させ、モニタ9に不良品の報知情報を表示させる。一方、特徴量領域8cに記憶させた特徴量Fがすべて閾値未満である場合、検査対象物2が良品であると判定し、モニタ9に良品の報知情報を表示させてもよく、モニタ9に報知情報を送信せずにノードN2を介して処理を終了させることもできる。良否の判定条件は、例えば検査領域に導電層が形成される場合、導電層が直線状の欠陥2a、2bと検査対象物2の表面との段差により断線するか否かにより閾値を決定する。例えば、直線状の欠陥の深さが1μm以上を示す特徴量Fを用いることが好ましい。
【0057】
本実施形態では、撮像画像の画素の直線状の欠陥2a、2bの長手方向(水平方向)に対応させて検査領域を設定し、全検査領域の特徴量Fを算出した後、良否判定を実行するように制御しているが、本発明は、全検査領域の特徴量Fを算出する態様に限定されず、図6に示すようなステップバイステップ処理を遂行することもできる。
【0058】
図6を参照して、本実施態様の検査装置に用いられるステップバイステップ処理を説明する。この処理は、図5のノードN1とノードN2との間の処理シーケンスが直線状の欠陥2a、2bにおける特徴量演算ステップS5毎に良否判定する点が相違する。
【0059】
中央処理装置6は、不良品判定ステップS9を実行し、特徴量演算ステップS5で算出された特徴量Fが、所定の閾値以上である場合、検査対象物2が直線状の欠陥2aまたは2bを有する不良品であると判定し、処理を報知処理ステップS8へ分岐させ、モニタ9に不良品の報知情報を表示させる。一方、特徴量演算ステップS5で算出された特徴量Fが閾値未満である場合、処理を検査領域完了ステップS6に分岐させる。
【0060】
これにより、中央処理装置6は、直線状の欠陥2aまたは2bが検出された段階で、検査対象物2を不良品であると判定し、次の検査対象物2の検査処理を遂行することができる。
【0061】
中央処理装置6は、全検査領域の特徴量演算が完了したか否かを検査領域完了ステップS6で判定し、全検査領域の特徴量演算が完了するまで特徴量演算ステップS5を繰り返す。この場合、検査領域移動ステップS10を介して検査領域を、撮像画像の下方または上方に移動させ、新たな検査領域の特徴量Fを、特徴量演算ステップS5で演算させることができる。検査領域完了ステップS6の判定条件は、メインメモリ8における特徴量領域8cに記憶された検査領域の特徴量Fの演算がすべて完了した場合であり、判定条件を満たした場合、処理をノードN2に分岐させ終了させることができる。
【0062】
図7は、本実施形態の欠陥検査装置1が出力するヒストグラムを示す図である。
図中では、縦軸に特徴量演算ステップS5により得られた特徴量Fを表し、横軸に特徴量演算ステップS5が取得する画素群の水平ライン番号を表している。
【0063】
中央処理装置6は、統計解析処理を実行し、特徴量領域8cに記憶する強度値の特徴量データの分布状況を視覚的に認識するヒストグラム情報を生成し、デジタル−アナログ変換部10を介して、モニタ9に出力する。
【0064】
モニタ9には、左端部から右端部に亘り、検査対象物2の上縁部より下方に設定した出発水平ラインから、検査対象物2の下縁部より上方に設定した終了水平ラインまで、それぞれライン番号が割り振られ、両端部の間に2つのピーク点が出力しているヒストグラムを表示させている。このピーク点は、検査対象物2の表面上に生じている直線状の欠陥2aおよび2bを視覚的に表しているものである。
【0065】
各ピーク点の両側には、特徴量Fとその変化とが共に小さいフラット領域が出力されている。このフラット領域では、検査対象物2の表面が滑らかであり直線状の欠陥が存在しない領域、直線状の欠陥ほど顕在化されない汚れなどが含まれている。
【0066】
中央処理装置6は、ピーク点の最大値とフラット領域との間に設定された閾値を、例えばピーク点の最大値とフラット領域との中間値またはピーク点波形の実効値のいずれかに設定し、検査対象物2の良否判定を実現することができる。
【0067】
図8は、図1に示す画像メモリ5に記憶された撮像画像のヒストグラムを示す図である。
図中では、縦軸に画素の濃度値を水平方向に平均した濃度平均値を表し、横軸に図7と同様の画素群の水平ライン番号を表している。
【0068】
中央処理装置6は、統計解析処理を実行し、画像メモリ5に記憶する撮像画像の画素の強度値を、水平ライン毎に平均した特徴量Fデータの分布状況を視覚的に認識するヒストグラム情報を生成し、デジタル−アナログ変換部10を介して、モニタ9に出力する。
【0069】
モニタ9には、左端部から右端部に亘り、検査対象物2の上縁部より下方に設定した出発水平ラインから、検査対象物2の下縁部より上方に設定した終了水平ラインまで、それぞれライン番号が割り振られ、特徴量Fの絶対値とその変化とが共に小さいフラット領域が連続して出力されているヒストグラムを表示させている。上述した図8のように、検査対象物2の表面上に生じている直線状の欠陥2aおよび2bに対応するライン番号には、ピーク点がフラット領域に埋もれてしまい視覚的に判断することが困難であり、中央処理装置6も同様に、撮像画像の画素の強度を、水平方向に平均した値から直線状の欠陥2a、2bを識別することが困難である。
【0070】
上述のように、本実施形態では、中央処理装置6が撮像画像の画素の濃度変化に基づく微分演算を実行し、微分演算結果を重み付けした強度値を算出し、算出した強度値を用いて水平方向に平均した特徴量Fを算出しているので、検査対象物2の表面上に現れる直線状の欠陥2a、2bと汚れとを区別し、検査対象物2の良否判定を精度よく判定することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 欠陥検査装置
2 検査対象物
2a直線状の欠陥
2b直線状の欠陥
2c検査領域
3 撮像装置(カメラ)
4 アナログ−デジタル変換部
5 画像メモリ
6 中央処理装置(CPU)
7 読み出し専用メモリ(ROM)
8 メインメモリ
8a微分値領域
8b強度値領域
8c特徴量値領域
8d検査処理プログラム領域
9 モニタ
10 デジタル−アナログ変換部
11 操作部
12 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物が撮像された撮像画像を画像メモリに記憶し当該検査対象物の表面に生じる直線状の欠陥を検出する欠陥検査方法であって、
前記画像メモリに記憶した撮像画像の各画素の濃度に基づく微分演算を行い画素間の濃度変化の強さを表わす微分絶対値および濃度変化の方向を表す微分方向値を各画素に対して算出する微分演算ステップと、
前記微分演算ステップで算出された各画素の前記微分絶対値に、各画素の前記微分方向値に対応する重み付け値を乗じて、ノイズ成分の除去または前記直線状の欠陥の境界を強調する強度値をそれぞれ算出する強度演算ステップと、
前記直線状の欠陥の長手方向に連続し、幅手方向に並設する複数の検査領域を、前記撮像画像に設定し、該検査領域に配置された各画素の前記強度値を合算した積算値を、前記検査領域に配置された画素数で除算し、前記検査領域における強度値の特徴量を、前記検査領域ごとに算出する特徴量演算ステップと、
前記特徴量演算ステップで算出された複数の特徴量のいずれか1つが所定の閾値以上である場合、前記検査対象物が直線状の欠陥を有する不良品であると判定する判定ステップと
を含むことを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項2】
撮像画像に設定された複数の検査領域における強度値の特徴量のすべてが所定の閾値未満である場合、検査対象物が良品であると判定する請求項1記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
強度演算ステップは、画素の微分方向値が直線状の欠陥における境界に直交する角度に近いほど強度値を大とし、前記微分方向値が直線状の欠陥における境界の接線の角度に近いほど強度値を小とする請求項1または2記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
画像メモリは、撮像装置が撮像する検査対象物を、垂直方向または/および水平方向に圧縮された撮像画像を記憶する請求項1〜3のいずれかに記載の欠陥検査方法。
【請求項5】
特徴量演算ステップは、直線状の欠陥の長手方向に直線状または帯状に並ぶ複数の画素からなる検査領域ごとに強度値の特徴量を算出する請求項1〜4のいずれかに記載の欠陥検査方法。
【請求項6】
検査対象物が撮像された撮像画像を画像メモリに記憶し当該検査対象物の表面に生じる直線状の欠陥を検出する欠陥検査装置であって、
前記画像メモリに記憶した撮像画像の各画素の濃度に基づく微分演算を行い画素間の濃度変化の強さを表わす微分絶対値および濃度変化の方向を表す微分方向値を各画素に対して算出する微分演算手段と、
前記微分演算手段で算出された各画素の前記微分絶対値に、各画素の前記微分方向値に対応する重み付け値を乗じて、ノイズ成分の除去または前記直線状の欠陥の境界を強調する強度値をそれぞれ算出する強度演算手段と、
前記直線状の欠陥の長手方向に連続し、幅手方向に並設する複数の検査領域を、前記撮像画像に設定し、該検査領域に配置された各画素の前記強度値を合算した積算値を、前記検査領域に配置された画素数で除算し、前記検査領域における強度値の特徴量を、前記検査領域ごとに算出する特徴量演算手段と、
前記特徴量演算手段で算出された複数の特徴量のいずれか1つが所定の閾値以上である場合、前記検査対象物が直線状の欠陥を有する不良品であると判定する判定手段と
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−15359(P2013−15359A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147131(P2011−147131)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】