説明

欠陥検査装置

【課題】検査対象物の屈曲した被検査面や湾曲した被検査面に対して適正な照明を与えるとともに、従来技術の問題点を抑制する欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象物1の被検査面に明・暗・明パターンを作り出すべく被検査面を覆うように照明する円弧状照射面を有する照明手段2と、前記被検査面における明・暗・明パターンの暗部領域を撮像する撮像手段3と、前記照明手段と前記撮像手段とを一体的に保持する保持手段5と、前記保持手段と前記被検査面との相対位置を変更設定する位置決め手段6と、前記撮像手段によって取得された撮影画像における前記暗部領域から、画像処理を用いて前記被検査面上の欠陥を検出する欠陥検出手段74とを備える欠陥検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の被検査面における微細欠陥を画像処理に基づいて検出する欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したような欠陥検出装置は、自動車の生産過程における塗装面の欠陥を検出するためなどに利用されている。例えば、例えば、被検査面に所定の明暗縞(ストライプ)パターンを映し出し、被検査面上に凹凸などの欠陥があった場合に得られる明度(輝度)差や明度(輝度)変化をもった受光画像を微分することにより、被検査面の表面の欠陥を検出する表面欠陥検査装置が知られている(特許文献1参照)。このような表面欠陥検査装置では、パターン幅に匹敵するような比較的大きな凸状の表面欠陥を検出することを意図しており、より小さな微小欠陥を検出しようとすると誤検出する可能性が高くなる。
【0003】
微小欠陥を検出する装置として、ストライプ格子を取り付けた照明装置によってストライプ状の明暗パターンを塗装面に照射し、そのストライプ状の明暗パターンが照射されている領域を被検査面を移動させながら順次撮影して得られた複数の撮影画像から画像処理を通じて塗装面の欠陥を検出する欠陥検査装置が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、この装置を屈曲したり湾曲したりしている被検査面に対する欠陥検査に適用した場合、ストライプ状の明暗パターンの映り込みが小さくかつ均一に被検査面を照らすためには大型の照明が必要となり明暗パターンが乱れがちとなり誤認識が生じやすい。また、前述した特許文献1の装置と同様に、その照明中心線と撮影中心線とが被検査面の法線に対して等角となるように照明装置と撮影装置を配置しているので、遠近の視差による欠陥サイズ算出精度の低下も生じる。
【0004】
レーザー照明と、この照明光が被検査面で反射光をライン状CCDアレイで取り込み、微小ピッチで移動させ複数ラインのライン画像を取得することで2次元画像を生成し、この2次元画像における輝度変化部分を欠陥として検出する外観検査装置も知られている(特許文献3参照)。この装置でも、照明光の光軸とライン状CCDアレイの撮影中心軸とが正確に被検査面上で交わらないと取得される画像が不鮮明となるため、正確な位置調整が必要となる。また、被検査面をライン走査するので、送りピッチのばらつきが直接画像の送り方向の乱れにつながるので、コストのかさむ高い送り精度が必要となる。
【0005】
【特許文献1】特開平2−73139号公報(3−5頁、図2、図5)
【特許文献2】特開平8−145906号公報(段落番号0035−0056、図5、図6)
【特許文献3】特開2002−131238号公報(段落番号0013−0028、図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実状に鑑み、本発明の目的は、検査対象物の屈曲した被検査面や湾曲した被検査面に対して適正な照明を与えるとともに、従来技術の問題点を抑制する欠陥検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る欠陥検査装置は、検査対象物の被検査面に明・暗・明パターンを作り出すべく被検査面を覆うように照明する円弧状照射面を有する照明手段と、前記被検査面における明・暗・明パターンの暗部領域を撮像する撮像手段と、前記照明手段と前記撮像手段とを一体的に保持する保持手段と、前記保持手段と前記被検査面との相対位置を変更設定する位置決め手段と、前記撮像手段によって取得された撮影画像における前記暗部領域から、画像処理を用いて前記被検査面上の欠陥を検出する欠陥検出手段とを備える。
【0008】
この構成によれば、被検査面は、円弧状照射面を有する照明手段によって多方向から照射される。従って、被検査面が屈曲形状ないしは湾曲形状であっても、そのような被検査面の法線方向にも照明光を当てることができる。つまり、非検査面に対して真上からだけではなく側面からも照明光を照射することができる。さらに、保持手段によって一体化された照明手段と撮像手段とが位置決め手段によって被検査面に対する位置を適正に維持することができるので、撮像手段の被写界深度内において多方向から照明された被検査面の所定箇所が正確に撮像され、適正な撮影画像が取得できる。また、非検査面に映し出された明・暗・明パターンの暗部領域を欠陥検出領域としているので、欠陥部で反射して撮像手段に達した微小な反射光を撮影画像の暗部領域で周囲との輝度差から高い精度で検出することができる。
【0009】
本発明に係る欠陥検査装置における特徴構成として、前記照明手段が、その内周面に前記照射面を形成した第1円弧状照明セグメントと第2円弧状照明セグメントとを有し、前記第1円弧状照明セグメントと前記第2円弧状照明セグメントとが隙間をあけて並設され、前記撮像手段はその撮影中心軸が前記円弧状照明セグメントの周方向中央でかつ前記円弧状照明セグメント間の隙間内を通るように配置されることも好適である。これにより、簡単な構成にもかかわらず、被検査面に対して上方および両側方からの照明光によってその被検査面に適正な明・暗・明パターンを作り出すことができる。その際、場合によっては2つの円弧状照明セグメントの隙間から入射するかもしれない外乱光によるノイズ発生を回避するため、撮像に差し支えない範囲でこの隙間に暗幕を設置することが好ましい。
【0010】
検査面が大きく湾曲していることで側方に位置することになる検査面部分に対しても、適正に照明光が当たるようにするため、前記円弧状照明セグメントの中心角が最大180度となるように延びた、つまり半円リング状の形状に構成することが好適である。さらに、その半円リング状の照明セグメントの内周面に形成される照射面には複数のLEDを一様分布配置することで、一様で安定した照明光を得ることができる。
【0011】
円弧状照明セグメントの照射面から照射される照明光の光軸は実質的にはその円弧の中心に集合することになるので、その位置に撮像手段の焦点が合わされた姿勢で照明手段と撮像手段とが保持手段によって一体化される。従って、このように設定された撮像手段の焦点位置に被検査面を位置決めすることで最適な撮影画像が得られる。この位置決めを正確かつ容易に実現するため、本発明に係る欠陥検査装置における1つの好適な形態では、前記被検査面上に第1スリット光を照射する第1スリット光照射部と前記被検査面上に前記第1スリット光と交差する第2スリット光を照射する第2スリット光照射部とを有するスリット光照射手段が備えられ、前記撮像手段によって取得された撮影画像から算定された前記被検査面上の前記第1スリット光と第2スリット光との交差位置に基づいて前記撮像手段と前記被検査面との間の距離が前記位置決め手段によって調整される。この構成では、撮像手段の焦点位置(照明光の集合点でもある)である基準ポイントで第1スリット光と第2スリット光とが交わるように照明手段と撮像手段の相対位置関係を設定するとともに、その基準ポイントの像が撮影画像の所定の座標点、例えば中心座標となるように設定しておく。次に、被検査面上での第1スリット光と第2スリット光との交点が撮影画像の中心座標に位置するように保持手段と被検査面との相対位置を決定することで、実質的に撮像手段の焦点位置で被検査面を検査することができる。その際、保持手段と被検査面との間の距離誤差は第1スリット光と第2スリット光との交点の中心座標からのずれとして撮影画像から読み取ることができる。通常、このスリット光はレーザビームによって作り出すと好適である。
【0012】
また、本発明に係る欠陥検出装置における特徴構成として、前記欠陥検出手段が、撮影画像における前記暗部領域に含まれる画素の輝度を用いて求められた第1欠陥抽出条件に基づいて予備欠陥領域を抽出し、さらに前記予備欠陥領域の外側近傍の画素の輝度を用いて求められた第2欠陥抽出条件に基づいて最終的な欠陥部を特定することも好適である。本発明における欠陥検出装置では、照明されている被検査面に欠陥が存在した場合に撮像された明・暗・明パターンの暗部領域に映り込む明るい部分の存在により欠陥の可能性を判定する。つまり、特定部分とその周囲との輝度差が欠陥検出の基本となるので、特定部分とその周囲とを切り分ける欠陥抽出条件の設定が重要である。従って、上記の好適な構成では、撮影画像全体から算定された第1欠陥抽出条件に基づいて予備欠陥領域を抽出する。さらにこの抽出された予備欠陥領域の外側近傍の位置する正常とみなされる画素の輝度を用いて求められた第2欠陥抽出条件に基づいて最終的な欠陥部を判定する評価を行う。これにより、ノイズの影響を受けにくい精度の高い欠陥検出が実現するとともに、この二段階の欠陥検出プロセスを採用することにより結果的には欠陥検出プロセスが効率的に行われ、その処理時間も短縮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による欠陥検出装置が自動車用ドアのノブの表面検査に適用された実施形態を説明する。図1は、コンベヤ11によって搬送されてくる被検査対象物1としてのドアノブの湾曲した表面(被検査面)を検査する欠陥検査装置の全体を示す側面図であり、図2はその正面図である。この欠陥検査装置は、保持手段としてのホルダ5と、このホルダ5を操作アーム6aの先端部に装着したロボット6と、ロボット6を操作するロボットコントローラ60と、実質的にコンピュータによって構築されているメインコントローラ7を備えている。
【0014】
ホルダ5は、照明手段としての照明ユニット2と、スリット光照射手段としてのスリット光照射ユニット4と、撮像手段としての撮像ユニット3とを所定の姿勢で一体的に保持しており、欠陥検出のためのセンサーヘッドとして機能する。図3には、ホルダ5を省略して、照明ユニット2とスリット光照射ユニット4と撮像ユニット3との間の相互の位置関係とその形状を説明するためのセンサーヘッドの模式図が側面図の形で示されており、図4には、同じものが正面図の形で示されている。
【0015】
図4から明らかなように、照明ユニット2は、屈曲した被検査面や湾曲した被検査面に明・暗・明パターンを作り出すために、互いにセグメント軸心(円弧軸心)方向に隙間23をあけて並設された第1円弧状照明セグメント21と第2円弧状照明セグメント22とから構成されている。第1円弧状照明セグメント21及び第2円弧状照明セグメント22は、そのセグメント中心角が最大で約180度となっている半円リング形状であり、その内周面にはLEDが一様分布配置されている。これにより、各円弧状照明セグメント21、22の内周面は円弧状照射面として機能する。第1円弧状照明セグメント21と第2円弧状照明セグメント22との寸法は被検査対象物1の寸法によって異なるが、自動車用ドアノブを被検査対象物1とする場合では、そのセグメント半径は200mm程度が適している。また、隙間23の幅は、検出すべき欠陥の傾斜角度等に依存して調整するのが好ましく、10〜100mmの間で選択される。このような照明ユニット2の構成により、両円弧状照明セグメント21、22のLEDが点灯すると、円弧状照明セグメント21、22の円弧中心を通る平面、この実施形態では円弧状照明セグメント21、22の各自由端を含む平面を照明光の被照射面とすると、図5で模式的に示されるような、明・暗・明パターンが作り出される。従って、被検査面を図5で示される被照射面にほぼ一致するように位置決めすることにより、2つの間隔をあけて配置された円弧状照明セグメント21、22の照射面からの実質的に180度にわたる方向からの照明光によって被検査面を覆うように照射することができ、この被検査面に明・暗・明パターンが作り出される。なお、隙間23から外乱光が入射する可能性がある場合には、撮像に差し支えない範囲で暗幕によりこの隙間23を遮蔽するとよい。
【0016】
本発明では、被検査面に作り出された明・暗・明パターンの暗部領域の撮影画像を欠陥検出のための評価画像とするため、撮像ユニット3はこの暗部領域を撮像するように配置される。撮像ユニット3は、カメラ30とレンズ31とから構成される。撮像ユニット3は、図3に示すように、その撮影中心軸が円弧状照明セグメントの周方向中央でかつ2つの円弧状照明セグメント21、22の隙間23を通って、円弧状照明セグメント21、22のセグメント軸心と交わるように配置される。前述したように、セグメント軸心を含む被照射面が被検査面となるので、この被照射面で焦点が合うようにレンズ31が調整される。これにより、カメラ30は被検査面に作り出された明・暗・明パターンの暗部領域が撮影中心となる撮影画像を取り込むことができる。
【0017】
スリット光照射ユニット4は、上述した被照射面、つまり被検査面上に第1スリット光を照射する第1スリット光照射部41と、第1スリット光と交差(この実施形態では直交)する第2スリット光を被検査面上に照射する第2スリット光照射部42とを備える。第1スリット光照射部41と第2スリット光照射部42とは、照明ユニット2の隙間23の上方で撮像ユニット3を挟むように配置されている。第1スリット光照射部41及び第2スリット光照射部42の姿勢は、第1スリット光は照明ユニット2の円弧上の隙間23に平行となり、かつ基準となる被照射面上で、第1スリット光と第2スリット光との交点が撮像ユニット3の撮影中心軸に一致するように調整される。これにより、基準となる被照射面を照射している第1スリット光と第2スリット光とを撮影している撮像ユニット3の撮影視野は、図6に示すようになり、撮影視野中心(撮影画像中心)に第1スリット光と第2スリット光との交点が位置する。従って、欠陥検査に先立って、被検査対象物1の被検査面に第1スリット光と第2スリット光とを照射し、この交点が正確に撮影視野中心にくるようにロボット6をティーチングすることで、撮像ユニット3と被検査面との適正距離が保証される。また、その際に、第1スリット光の被検査面での映り込みが直線になるように調整することで、撮像ユニット3に対する被検査面の適正な向きが保証される。
【0018】
メインコントローラ7は、本発明に特に関係する機能部として、スリット光照射制御部71、照明制御部72、撮像制御部73、欠陥検出制御部(欠陥検出手段の一例)74をプログラムまたはハードウエアあるいはその両方によって構築している。スリット光照射制御部71はスリット光照射ユニット4を制御し、照明制御部72は照明ユニット2を制御し、撮像制御部73は撮像ユニット3を制御する。欠陥検出制御部74は、撮像ユニット3によって取得された前記明・暗・明パターンの暗部領域の撮影画像が被検査面上の欠陥検出のためにメインコントローラ7に送られる。欠陥検出制御部74は送られてきた画像から画像処理を用いて欠陥を検出する。
【0019】
次に、上述したように構成された欠陥検査装置における欠陥検出のための撮像原理を説明する。図7はその撮像原理を示す模式図である。凹状半球面として示されている欠陥は、照明ユニット2によって照射された被検査面の撮像画像におけるよる輝度濃淡差に基づいて検出される。通常、非検査面の正常部分では、円弧状照射による照明光が正反射するので、明・暗・明パターンの暗部領域の撮影画像には映らず、暗部領域は暗いままである。これに対して欠陥部分では、正常な面(水平面)と比べて傾斜(約3°以上)した面が生じるので、その傾斜面で反射された照明光が明・暗・明パターンの暗部領域の撮影画像に映り込み、暗部領域における明点として現れる。従って、検査幅:Kは明・暗・明パターンの暗部幅:Bより小さくなる。なお、欠陥検出の決め手となる欠陥傾斜に対する検出感度は第1円弧状セグメント21と第2円弧状セグメント22との間隔:L3に依存するので、検出すべき欠陥に最適な間隔:L3を設定するとよい。また図から理解できるように、撮像ユニット3と照明ユニット2との角度、つまり撮影中心軸と被検査面との交点を中心とする撮像ユニット3と照明ユニット2との角度をθ1とすると、欠陥検出角度:θ2はθ1の半分から45°程度となる。
【0020】
次に、上述したように構成された欠陥検査装置における欠陥検出処理の一例を説明する。図8は欠陥検出処理のメインルーチンのフローチャートを示し、図9は欠陥検出画像処理ルーチンのフローチャートを示す。
【0021】
まず、コンベヤ11によって搬入されてきた検査対象物1がセンサーヘッドを構成するホルダ5の下方にセットされる(#01)。ホルダ5をロボットアームに取り付けたロボットは予めこの検査対象物1に対する動きに関してティーチングされている。照明ユニット2が照明制御部72によって制御され、第1円弧状照明セグメント21と第2円弧状照明セグメント22とが点灯する(#01)。ロボットコントローラ60によるロボット6の動作制御が開始し、検査対象物1の被検査面に対する検査開始ポイントから検査終了ポイントまで連続的な移動(走査)が始まる。
【0022】
ロボット6によるホルダ5の移動中に、被検査面に生じた明・暗・明パターンにおける暗部領域が走査方向で部分的にオーバーラップしながらカメラ30によって撮像される(#04)。撮像により生成された撮影画像はメインコントローラ7の欠陥検出制御部74に転送される(#05)。欠陥検出制御部74に転送された撮影画像は、同じ図8において欠陥検出ルーチンの形で示されている欠陥評価処理に利用される。このカメラ30による撮像と撮影画像の転送はその走査が検査終了ポイントに達するまで、つまり全検査領域の撮像が完了するまで続けられる(#06)。全検査領域の撮像が完了すると(#06Yes分岐)、第1円弧状照明セグメント21と第2円弧状照明セグメント22とが消灯されるともに(#07)、ロボット6に対する動作制御も終了する(#08)。さらに、欠陥検出ルーチンが完了しているかどうかがチェックされ(#09)、欠陥検出ルーチンが完了していると(#09Yes分岐)、このメインルーチンも終了する。
【0023】
欠陥検出ルーチンは、メインルーチンのステップ#05でカメラ30から転送されてくる、被検査面に生じた明・暗・明パターンにおける暗部領域の撮影画像を画像処理して、被検査面上の欠陥を評価するルーチンである。カメラ30から転送されてきた撮影画像は欠陥検出制御部74に入力され(#11)、その撮影画像はメモリの所定エリアに展開される(#12)。メモリに展開された撮影画像は、本発明による欠陥検出画像処理を通じて欠陥検出される(#13)。この欠陥検出画像処理の内容は、サブルーチンとして図9に示されており、後で詳しく説明される。1つの撮影画像に対する欠陥検出画像処理を通じて得られた評価結果は、一時的に格納される(#14)。検査対象部1における被検査面全体をカバーするように取得された全ての撮影画像に対する欠陥検出画像処理が完了したかどうかチェックされる(#15)。全撮影画像の処理が完了すると(#15Yes分岐)、ステップ#14で格納された全ての評価結果が読み出される(#16)。読み出された評価結果は集計され、これに基づいて検査対象物1の総合検査結果が作成され、モニタ7aやプリンタ7bを通じて出力される(#17)。
【0024】
図9に示されている欠陥検出画像処理ルーチンでは、メモリに展開されている撮影画像(以後これは元撮影画像とも呼ばれる)をワーキングエリアに読み込み、平滑化フィルタにより画像の平滑化を行う(#21)。この平滑化処理では、注目画素の近傍3×3画素の平均をとって、それを注目画素の画素値とすることで、画像平滑化と画像縮小とが行われる。この縮小された撮影画像は処理用画像と呼ばれる。次に、この処理用画像の輝度ヒストグラムを算出し、算出された輝度ヒストグラムにおいて予め決められた下限輝度と上限輝度の範囲内で最大面積となる輝度をこの処理用画像の基準輝度、つまり第1欠陥抽出条件として算出する(#22)。つぎに、算出された基準輝度を基準としてそこから上下で所定幅の輝度範囲を閾値条件として、処理用画像に対して二値化処理が行われる(#23)。二値化処理によって生じた閉領域又は擬似閉領域に対して予備欠陥領域としてラベリングを行う(#24)。ラベルを付与された領域の内、予め設定された面積(画素数)以下の領域を削除して、予備欠陥領域を絞り込む選択を行う(#24)。選択された領域内のノイズが、公知のノイズキャンセルアルゴリズムを用いてキャンセルされる(#25)。このノイズキャンセルされた領域が欠陥検出の第1マスクとして後で利用される。
【0025】
また、処理用画像に対して空間微分フィルタを用いて微分処理(エッジ強調処理)を行う(#31)。元撮影画像の微分処理画像(エッジ強調画像)に対して予め設定されている閾値を用いて二値化処理を行い、予備欠陥領域の輪郭を生成し、この輪郭で囲まれた領域を予備欠陥抽出領域と算定する(#32)。算定された予備欠陥抽出領域に対してさらに10画素分以上の膨張処理を施し、欠陥抽出マスクとしての第2マスクを生成する(#33)。この第2マスクと前述した第1マスクとの論理積をとって、最終的な欠陥抽出マスクを作成する(#34)。なお、この最終的な欠陥抽出マスクは元撮影画像を3分の1縮小した処理用画像に基づいているので、この欠陥抽出マスクを3倍拡大して、元撮影画像に適合できるようにする。
【0026】
ステップ#35で作成された欠陥抽出マスクを元撮影画像に適用して、欠陥抽出領域の外側近傍画素の輝度の平均値を、正常画素の基準輝度、つまり第2欠陥抽出条件として求める(#41)。次に、この基準輝度と元撮影画像の各画素の輝度との差分を演算し、輝度差画像を作成する。さらに、作成された輝度差画像に対して予め設定されている閾値で二値化処理を行う(#42)。二値化処理によって生じた閉領域又は擬似閉領域に対して欠陥領域としてラベリングを行う(#43)。ラベルを付与された領域の内、予め設定された面積(画素数)以下の領域を削除して、欠陥領域を絞り込む選択を行う(#45)。最終的に残った欠陥領域に対してその統計学的特徴や幾何学的特徴などの特徴量を求める(#46)。求められた特徴量に対して、予め設定されている閾値を適用して、検出された欠陥(領域)の最終評価、「OK」または「NG」を決定する(#47)。
【0027】
上述した実施の形態では、センサーヘッドとして機能するホルダ5はティーチングされたロボットによって被検査面上を動かされていたが、このような形態に限定されるわけではなく、例えばバランサーなどを用いることで検査者がマニュアルでホルダ5を動かす構成を採用してもよい。
【0028】
上述した欠陥検出画像処理ルーチンでは、二値化処理等で用いられる閾値が予め設定されていたが、これに代えて、処理すべき画像の特性に応じてその閾値を調整または新規に算出するような動的な閾値を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による欠陥検査装置の実施形態の1つを模式的に示す側面図
【図2】図1の欠陥検査装置を模式的に示す正面図
【図3】欠陥検出のためのセンサーヘッドにおける構成要素の位置関係を説明する説明図
【図4】図3のセンサーヘッドを正面側から示す説明図
【図5】撮影視野における明・暗・明パターンを示す説明図
【図6】被検査面上における第1スリット光をと第2スリット光との関係を示す説明図
【図7】欠陥検出の原理を示す説明図
【図8】欠陥検出処理のメインルーチンを示すフローチャート
【図9】欠陥検出画像処理ルーチンを示すフローチャート
【符号の説明】
【0030】
1:検査対象物
2:照明ユニット(照明手段)
3:撮像ユニット(撮影手段)
4:スリット光照射ユニット(スリット光照射手段)
5:ホルダ(保持手段)
6:ロボット(位置決め手段)
7:メインコントローラ
21:第1円弧状照明セグメント
22:第2円弧状照明セグメント
23:隙間
30:カメラ
41:第1スリット光照射部
42:第2スリット光照射部
71:スリット光照射制御部
72:照明制御部
73:撮像制御部
74:欠陥検出制御部(欠陥検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の被検査面に明・暗・明パターンを作り出すべく被検査面を覆うように照明する円弧状照射面を有する照明手段と、
前記被検査面における明・暗・明パターンの暗部領域を撮像する撮像手段と、
前記照明手段と前記撮像手段とを一体的に保持する保持手段と、
前記保持手段と前記被検査面との相対位置を変更設定する位置決め手段と、
前記撮像手段によって取得された撮影画像における前記暗部領域から、画像処理を用いて前記被検査面上の欠陥を検出する欠陥検出手段と、
を備える欠陥検査装置。
【請求項2】
前記照明手段は、その内周面に前記照射面を形成した第1円弧状照明セグメントと第2円弧状照明セグメントとを有し、前記第1円弧状照明セグメントと前記第2円弧状照明セグメントとは隙間をあけて並設されており、前記撮像手段はその撮影中心軸が前記円弧状照明セグメントの周方向中央でかつ前記円弧状照明セグメント間の隙間内を通るように配置されている請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記円弧状照明セグメントの中心角が最大180度であり、前記照射面には多数のLEDが一様分布配置されている請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記被検査面上に第1スリット光を照射する第1スリット光照射部と前記被検査面上に前記第1スリット光と交差する第2スリット光を照射する第2スリット光照射部とを有するスリット光照射手段が備えられ、前記撮像手段によって取得された撮影画像から算定された前記被検査面上の前記第1スリット光と第2スリット光との交差位置に基づいて前記撮像手段と前記被検査面との間の距離が前記位置決め手段によって調整される請求項1から3のいずれか一項に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記欠陥検出手段は、撮影画像における前記暗部領域に含まれる画素の輝度から求められた第1欠陥抽出条件に基づいて予備欠陥領域を抽出し、さらに前記予備欠陥領域の外側近傍の画素の輝度から求められた第2欠陥抽出条件に基づいて最終的な欠陥部を特定する請求項1から4のいずれか一項に記載の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−91410(P2010−91410A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261619(P2008−261619)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】