説明

欠陥検査装置

【課題】製造ラインを連続して搬送される被検査物に対して、特殊領域検出のために準備工程を必要とせず、検査時間の大幅な短縮が可能な、効率の良い検査装置を提供する。
【解決手段】開口を塞ぐシール部を有する容器の欠陥を検査する検査装置であって、容器を搬送する手段と、容器を照明する手段と、容器を撮像する手段と、撮像するタイミングを出力する手段と、撮像した画像から特殊領域を検出する手段と、特殊領域内の複数の領域に対して異なる閾値で欠陥を検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする欠陥検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を塞ぐシール部を有する容器の欠陥を検査する検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検査物を撮像した画像上で特定の領域のみ検出し、検出した領域に適した検査手段や検査パラメータを使用することは検査精度の向上や誤検出の低下といった利点が考えられる。図10に示すように撮像した画像110の被検査物111の上に存在する包装容器のシール112において、シールエッジ部113は内容物の漏れを検出するために検査閾値を厳しく設定する必要がある。一方、シールしわ部114はシール貼り付け時にシールと包装容器の壁面との間にできるシールのしわの領域であり、この領域は影が出来てしまうことから検査閾値を緩くして誤検出をなくす必要がある。
【0003】
シールエッジやしわなどの特殊領域を設定することはシールの位置が既知であれば容易である。しかし、製造ラインを連続して搬送される被検査物111のような円形状のものは搬送過程で各搬送装置間の乗り移り時や前工程の影響により微小な回転が発生するため、特殊領域の位置は各被検査物において異なるため、各被検査物毎に特殊領域を検査領域から検出する必要がある。
【0004】
従来、特殊領域検出の問題の対策として特許文献1及び2が知られている。特許文献1の手段はあらかじめ基準画像を用意しておき、対象画像と基準画像とを比較することによって特殊領域を検出する手段となっている。また、特許文献2の手段は検出したい特殊領域の回転に対応するため回転角度毎の基準画像を用意し、各画像との比較から回転に対応した特殊領域の検出と判定を行う手段となっている。いずれにせよ、両手段とも基準画像の準備工程を必要とする。また、基準画像との比較処理といった画像処理としては比較的時間を要する処理であり、短時間で連続して検査を行う必要のある製造ラインに適用するためにはマルチコアを用いた並列処理やハードウェアを用いた処理を考慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−005813号公報
【特許文献2】特開2004−037415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたもので、製造ラインを連続して搬送される被検査物に対して、特殊領域検出のために準備工程を必要とせず、検査時間の大幅な短縮が可能な、効率の良い検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、開口を塞ぐシール部を有する容器の欠陥を検査する検査装置であって、
容器を搬送する手段と、
容器を照明する手段と、
容器を撮像する手段と、
撮像するタイミングを出力する手段と、
撮像した画像から特殊領域を検出する手段と、
特殊領域内の複数の領域に対して異なる閾値で欠陥を検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする欠陥検査装置である。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、前記特殊領域を検出する手段は、被検査領域内の少なくとも3個以上の円周から円周輝度分布を取得し、その円周輝度分布の濃度勾配から複数の第一の特殊領域点を検出し、更に第一の特殊領域点の座標の組み合わせから算出した角度情報を用いて第二の特殊領域点を検出し、第二の特殊領域点を結ぶ領域を特殊領域とすることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検査装置によれば、搬送装置によって連続して搬送される被検査物に対して、欠陥検出のために複雑な処理を必要とせず、誤検査の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る欠陥検査装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明に係る被検査物及び被検査物上の特殊領域を示す図。
【図3】本発明に係る輝度を読み出すべき画像データ上の位置座標の集まりである円周の概略を示した図。
【図4】(a)は被検査物上の円周輝度分布を示す。(b)は円周輝度分布の微分値を示す。
【図5】(a)は本発明に係る輝度を読み出すべき円周上に異物などが存在する場合を示す。(b)は異物などがある場合の円周輝度分布の微分値を示す。
【図6】本発明に係る複数の円周輝度分布を取得するための円周を示す図。
【図7】本発明に係る2つの座標を結ぶ線分とY軸とのなす角度を求める方法を示す図。
【図8】本発明に係る全ての組み合わせ座標から2つの座標とY軸とのなす角度を求め方法を示す図。
【図9】本発明に係るシールエッジ部から、被検査物内のシール部の位置及び向きを判断することを示す図。
【図10】被検査物及び被検査物上の特殊領域を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る欠陥検査装置の概略構成を示す図である。欠陥検査装置は、被検査物である容器60を矢印67の方向に搬送する手段である搬送部63と、容器60を照明する手段である反射光源部61と、照明された容器60を撮像する手段である撮像部62と、撮像するタイミングを出力する手段である容器検出部64と、撮像した画像から特殊領域を検出する手段である画像処理部65と、特殊領域内の複数の領域に対して異なる閾値で欠陥を検査する検査手段である検査部66と、を備えている。
【0013】
反射光源部61は、例えばLEDやハロゲンランプやキセノンランプ等の光源が用いられる。撮像部62は、被検査物が視野に収まるものであればCCD、CMOS等の受光素子を利用したエリカカメラ、ラインカメラなどが用いられる。撮像された画像は画像データ処理部(図示せず)で例えば256階調のデジタルデータに変換される。画像データ処理部で変換されたデジタルデータに基づいて画像処理部65で特殊領域が検出され、更に特殊領域内の複数の領域に対して異なる閾値で欠陥を検査部66で検出する。
【0014】
また、搬送装置によって移動する被検査物を対象としているため、被検査物の動きを検
知してタイミング良くシャッターを切るための外部トリガー信号を発生させる容器検出部64が備えられ、容器検出部には光学センサが用いられる。
【0015】
図2は撮像した画像の一例を示す図である。画像10において被検査物11上に各被検査物毎で位置が異なるシール部12が備わっている。そして、シール部12のエッジ部13及びしわ部14は検査精度を向上させるために検査閾値を厳しくしたい部分、緩くしたい部分といった特殊領域となる。
【0016】
被検査物11はコンベアなどの搬送装置によって移動するため各搬送装置間の乗り移り時や前工程の影響により回転し、各被検査物でシール部12の位置が異なってしまう。従って、特殊領域(シールエッジ部13及びシールしわ部14)を設定するためには、各被検査物で位置の異なるシール部12の位置を検出する必要がある。
【0017】
図3は、特殊領域設定のためのシール部12を検出する際に使用する輝度を読み出すべき画像データ上の位置座標の集まりである円周20の概略を示した図である。シール部12の位置検出には、被検査物11の外周11Aから指定の距離だけ内側の円周20上の各点の輝度を読み出すことにより、1次元輝度分布を作成する。この円周20上の1次元輝度分布を、ここでは円周輝度分布と呼ぶことにする。この円周輝度分布からシールエッジ部に相当する21、22を検出しシール部の位置を検出する。
【0018】
図4(a)は実際に取得した円周輝度分布を示しており、円周20上のある所定の点を起点として所定の方向に隣接する順に各点を並べた場合の番号を横軸とし、各点の輝度を縦軸とするグラフで表したものである。シール部は被検査物の他の領域とは異なる材質や色をしていることから、円周20上から得られる円周輝度分布上にシールエッジ部21、22の位置に相当する輝度段差30、31が発生する。
【0019】
更に、この円周輝度分布に対して微分処理を施すと図4(b)のような最大、最小側の輝度段差にピーク32、33を示す分布を取得することが可能となる。よって、図4(b)に示す最大、最小側の輝度段差のピーク32、33を検出すれば、各被検査物で異なるシール位置を検出することが可能となり、特殊領域(シールエッジ部13及びシールしわ部14)を設定することが可能となる。
【0020】
図5(a)は輝度を読み出すべき円周上に異物や汚れなどが付着していた場合を示した図である。図5(a)に示すように実際には輝度を読み出すべき円周上に異物や汚れなどが付着することがあり、異物や汚れによる輝度段差がシールエッジ部よりも大きい場合、円周輝度分布の最大、最小側のピークを利用した手段ではシール部検出の判断を誤ってしまうことがある。
【0021】
図5(b)は円周輝度分布上に異物や汚れなどが付着した場合の円周輝度分布を示している。図5(b)の円周輝度分布のピーク41及び42は異物や汚れによって発生した輝度分布のピークである。この輝度分布において実際のシール部のピーク32、33よりも異物や汚れによって発生したピーク41、42の方が大きいため、最大、最小側のピークをシール部と判断するとシール部の位置を誤って検出してしまうことになる。
【0022】
上記問題を解決するためにシール部の幅をあらかじめ設定し、輝度分布の最大、最小側のピークの間隔がシール部の幅に最も近くなるピークの組み合わせをシール部と判断する手段も考えられる。しかし、輝度を読み出すべき円周上に複数の異物や汚れが付着し、それらの間隔がシール幅に近い場合、やはりシール部検出の判断を誤ってしまう。
【0023】
そこで、上記問題を解決する手段である特殊領域検出手段を図6を用いて説明する。図
6は、被検査物11の外周11Aから互いに異なる所定の距離だけ内側にある、複数の円周50、51、52上の1次元輝度分布を取得する方法を説明する図である。
【0024】
図6に示す3本の被検査物の外周からの距離が異なる円周(上の点の集まり)50、51、52から得られた円周輝度分布に対してそれぞれ微分処理を施し最大、最小側でピークとなる画像上の幅方向の座標X及び高さ方向の座標Yを取得する。取得した座標点を第一の特殊領域点とし、取得した座標をそれぞれ、(X50max,Y50max)及び(X50min,Y50min)、(X51max,Y51max)及び(X51min,Y51min)、(X52max,Y52max)及び(X52min,Y52min)とする。各円周輝度分布でシール部と判断された最大、最小側の座標の組み合わせを調べることによって正確なシール部の位置を検出する。図6で示す最大側、最小側の座標の組み合わせはそれぞれ3個となる。
【0025】
まず、最大、最小側で検出されたそれぞれの座標から2つの座標を選択し、2つの座標を結ぶ線分とY軸とのなす角度を算出する。図7は2つの座標を結ぶ線分とY軸とのなす角度を算出する方法を説明する図である。2つの座標として50max(X50max,Y50max)と51max(X51max,Y51max)を例に説明する。
【0026】
図7に示される、(X50max,Y50max)と(X51max,Y51max)を結ぶ線分とY軸とのなす角度、即ち∠Aは
∠A=arctan{(X51max−X50max)/(Y51max−Y50max)}となる。
【0027】
図8は図6で示された最大、最小側で検出されたそれぞれの座標から2つの座標の組み合わせを選択し、全ての組み合わせ座標から2つの座標とY軸とのなす角度を求める方法を示す図である。図6で示された最大、最小側で検出されたそれぞれの座標、即ち最大側の3つの座標50max(X50max,Y50max)、51max(X51max,Y51max)、52max(X52max,Y52max)及び最小側の3つの座標50min(X50min,Y50min)、51min(X51min,Y51min)、52min(X52min,Y52min)から最大側の3つの角度∠Amax、∠Bmax、∠Cmaxと最小側の3つの角度∠Amin、∠Bmin、∠Cminを求める。
【0028】
次に同じ組み合わせの最大、最小側の成す角の差分の絶対値を算出する。即ち、
S5051=|∠Amax−∠Amin|
S5152=|∠Bmax−∠Bmin|
S5052=|∠Cmax−∠Cmin|を算出する。
【0029】
以上の手段によって算出されたS5051、S5052、S5152が最も小さくなる座標の組み合わせは正確なシール部のエッジと判断することが可能となる。なぜならば、対象としているシール部のエッジは最大、最小側で平行であることから、最大、最小側で正しいシール部のエッジを検出すれば、それらの位置座標の組み合わせから算出される成す角の差分値は非常に小さくなる。図8の例では、S5052=|∠Cmax−∠Cmin|が他の差分角度より小さく、この場合の50max、52max、50min、52minを第二の特殊領域点として、50maxと52maxを結ぶ線分と50minと52minを結ぶ線分がシールエッジ部として検出される。これは、51maxと51minの座標が大きく外れたことが原因となっていることから50maxと52maxを結ぶ線分と50minと52minを結ぶ線分がシールエッジ部として検出される。
【0030】
このように同じ組み合わせの最大、最小側の成す角の差分の絶対値は3個以上であるこ
とが必要で、したがって少なくとも3個以上円周輝度分布を取得することになる。
【0031】
図9は上記手段によって特定されたシールエッジ部から、被検査物内のシール部の位置及び向きを判断することを示す図である。座標50maxから52maxの延長上にL1の長さのエッジと、座標50minから52minの延長上にL2の長さのエッジと、これら2つのエッジの点を結ぶ既知の長さL3のエッジを求めることによってシール部13が検出される。また、シールしわ部14の位置は、L1とL2の外周方向に延長した方向に特定することが出来る。しかもその大きさが既知であるため、位置と大きさが特定できる。
【0032】
このようにして求められたシールエッジ部及びシールしわ部を設定し、各領域毎に異なる閾値を設けた検査手段によって欠陥の検査を行う。
【0033】
このように本発明の欠陥検査装置によれば、搬送装置によって連続して搬送される被検査物に対して、欠陥検出のために複雑な処理を必要とせず、誤検査の発生を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
10・・・撮像した画像
11・・・被検査物
11A・・・被検査物の外周
12・・・シール部
13・・・シールエッジ部
14・・・シールしわ部
20・・・画像データ上で輝度を読み出すべき円周(上の点の集まり)
21、22・・・シール検出位置
30、31・・・輝度段差
32、33・・・輝度段差ピーク
40・・・異物または汚れなど
41、42・・・異物または汚れなどによる輝度段差ピーク
50、51、52・・・被検査物の外周からの距離が異なる円周(上の点の集まり)
60・・・容器
61・・・反射光源部
62・・・撮像部
63・・・搬送部
64・・・容器検出部
65・・・画像処理部
66・・・検査部
67・・・容器を搬送する方向を示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を塞ぐシール部を有する容器の欠陥を検査する検査装置であって、
容器を搬送する手段と、
容器を照明する手段と、
容器を撮像する手段と、
撮像するタイミングを出力する手段と、
撮像した画像から特殊領域を検出する手段と、
特殊領域内の複数の領域に対して異なる閾値で欠陥を検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記特殊領域を検出する手段は、前記特殊領域を検出する手段は、被検査領域内の少なくとも3個以上の円周から円周輝度分布を取得し、その円周輝度分布の濃度勾配から複数の第一の特殊領域点を検出し、更に第一の特殊領域点の座標の組み合わせから算出した角度情報を用いて第二の特殊領域点を検出し、第二の特殊領域点を結ぶ領域を特殊領域とすることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−202810(P2012−202810A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67492(P2011−67492)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】