説明

欠陥構造を低含有量で有する分岐型溶融ポリカーボネート

【課題】ポリマー鎖内の不所望な欠陥構造のために、不都合に流動性が変化しない溶融ポリカーボネートを提供する。
【解決手段】分岐剤の存在中でビスフェノールとジアリールカーボネートとの溶融エステル交換を介して製造される芳香族分岐型ポリカーボネートに関し、ここで芳香族分岐型ポリカーボネートは分岐点構造および式(D)の構造を備え、


ここで、Xは単結合、C1〜C6−アルキレン、C2〜C5−アルキリデンまたは任意にC1〜C6−アルキルで置換されたC5〜C6−シクロアルキリデンであり;芳香族分岐型ポリカーボネート中のDの量は、芳香族分岐型ポリカーボネート1kg当たり5〜450mgの範囲であり;芳香族分岐型ポリカーボネート中の式Dの構造全体に対する分岐点構造全体の割合は8〜200の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願請求の範囲は欧州特許出願第10 159 245.9号公報(2010年4月7日出願)の利益を享受し、すべての有用な目的のために、これをここに全体を参照して挿入する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ポリマー鎖内に互いに関して所定の割合のポリマー鎖分岐点と欠陥構造とを有する分岐型芳香族ポリカーボネートに関し、また、これらの分岐型芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する。特に、本発明は、ビスフェノールとジアリールカーボネートとの溶融中でのエステル交換を介したその製造方法によって、たとえば、3官能性分岐剤分子を介して、意図するポリマー鎖分岐点を備えるだけでなく、不所望な副生成物の形態で、ポリマー鎖内に欠陥構造をも備える分岐型芳香族ポリカーボネートに関する。これらの欠陥構造は、その溶融状態での処理で得られたポリカーボネートの流動性に、不都合な効果をもたらす。
【0003】
線形ポリカーボネートと比べて、制御された分岐を有するポリカーボネートの有益な特性は、特に前記材料の熱可塑性処理時に利用される。ポリカーボネート(PC)は特に押出し法および射出成形法によって処理される。押出し法の場合には、生じるせん断速度が≦1000[1/s]の範囲であるので;良好な押出し物品を得るためには、ポリカーボネート溶融物の良好な処理のために、ここでは高粘度のポリマー溶融物が求められる。特に押出し用途で使用するための、分岐型ポリカーボネートを開発する場合には、したがって、低せん断速度で適当な高溶融粘度を有するポリカーボネートが求められ、そして、これはポリカーボネートが著しい擬似塑性を有することを意味する。
【0004】
分岐型ポリカーボネートは様々な方法で製造されてもよい。工業的意義を果たす第1のタイプのポリカーボネートは溶液PC(SolPC)であり、これは溶液重合法によって製造されたものであった。溶液PC法では、PC中に分岐を提供するために、比較的高官能性のユニット、この場合には特に3官能性ユニット、たとえば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)、イサチンビスクレゾール(IBC)およびトリメリト酸等を添加する。
【0005】
工業的に使用される第2の方法は溶融ポリカーボネート(MeltPC)法である。有機カーボネート、たとえば、ジアリールカーボネートとビスフェノールから、追加の溶媒を使用せずに溶融中で製造されるポリカーボネートは、溶融エステル交換法として、また溶融法としても公知であり、これはさらなる経済面での重要性を満たしており、したがって、多くの用途分野で好適な材料である。
【0006】
溶融エステル交換法による芳香族ポリカーボネートの製造は公知であり、たとえば、「シュネル(Schnell)」,ポリカーボネートの化学と物理(Chemistry and Physics of Polycarbonates),ポリマー・レビューズ(Polymer Reviews),Vol.9,インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers),ニューヨーク,ロンドン,シドニー1964に、D.C.プレボルセック(Prevorsek),B.T.デボナ(Debona)およびY.ケルステン(Kersten),コーポレート・リサーチ・センター(Corporate Research Center),アライド・ケミカル・コーポレーション(Allied Chemical Corporation),モリスタウン(Moristown),ニュージャージー07960に、「ポリ(エステル)カーボネートコポリマーの合成(Synthesis of Poly(ester)carbonate Copolymers)」,ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science),ポリマー・ケミストリー・エディション(Polymer Chemistry Edition),Vol.19,75−90(1980)に、D.フライタグ(Freitag),U.グリゴ(Grigo),P.R.ミュラー(Muller),N.ノウバートン(Nouvertne),ベイヤーAG,「ポリカーボネート(Polycarbonates)」,ポリマーの科学技術百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering),Vol.11,第2版,1988,ページ648−718におよび最後にデス(Des.)U.グリゴ(Grigo),K.キルヒャー(Kircher)およびP.R.ミュラー(Muller)「ポリカーボネート(Polycarbonate)」[Polycarbonates],ベッカー/ブラウン(Becker/Braun),クンストストッフ−ハンドブッフ(Kunststoff-Handbuch)[プラスチックハンドブック(Plastics handbook)],Volume3/1,ポリカーボネート(Polycarbonate),ポリアセタール(Polyacetale),ポリエステル(Polyester),セルロースエステル(Celluloseester)[Polycarbonates, polyacetals, polyesters and cellulose esters],カール・ハンサー・ベラグ・ムニッヒ(Carl Hanser Verlag Munich),ウィーン1992,ページ117−299に記載される。
【0007】
溶融PC法で製造されるポリカーボネートが、ポリマー鎖内に欠陥構造を有することは公知である。前記欠陥構造の性質および量は各種処理パラメータ、たとえば、温度、滞留時間に依存し、また特に使用される触媒の性質および量に依存する。さらに、アルカリ金属化合物およびアルカリ土金属化合物が欠陥構造の形成を加速することも公知である(たとえば、欧州特許第EP 1369446 B1およびEP 1500671 A1号公報参照)。
【0008】
欠陥構造は特にキサントン構造を有し、これは低せん断速度で溶融粘度を低下させる要因となる。したがって、キサントン構造を有する欠陥構造は溶融PCでは特に望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ポリマー合成において、多官能性モノマーを用いて、制御されたポリマー鎖分岐点を製造することで有益な特性を有するとともに、ポリマー鎖内の不所望な欠陥構造のために、不都合に流動性が変化しない溶融ポリカーボネートに対する要求があった。
【0010】
したがって、合成処理の際に、多官能性モノマーによって、好ましくは3官能性フェノール性化合物によって、特に好ましくはTHPEによって、制御された分岐を生じさせた溶融PCを製造することが望ましく、溶融PCはたとえば、≦1000[1/s]の低せん断速度で著しい擬似塑性を有すると共に、ポリマー鎖内にキサントン構造を最小限の量で有する。ここでは、ポリマー鎖内の不所望のキサントン構造全体に対する、3官能性フェノールを用いた制御された分岐点の割合は8より著しく大きく、好ましくは15より大きくあるべきである。
【0011】
分岐型溶融ポリカーボネートおよび3官能性芳香族ヒドロキシ化合物を使用したこれらの製造は原理的には公知である。たとえば、米国特許第US5597887(A)は、非常に多量の、2mol%以上のTHPEを溶融ポリカーボネートを製造するための分岐剤として使用し、これを次に第2工程で非分岐型PCと混合し、ブロー成形可能な材料を得るために溶融中で平衡に保つことを記載している。この特許は、ポリマー鎖内のキサントン構造の含有量、またはその除去について、何ら述べていない。
【0012】
分岐剤としてTHPEを用いて溶融PC中に分岐点を形成することを記載した他の特許は、日本特許第JP−04−089824、JP−04−175368、JP−06−298925号公報および欧州特許第EP1472302A1号公報であるが、ポリマー鎖内のキサントン構造に対する分岐点の割合について述べたものはない。
【0013】
したがって、追加工程を有さず、適当な分岐型ポリカーボネートを製造することができ、かつ上記処理の不都合を克服し、かつ溶融PCにおいてポリマー鎖内のキサントン構造に対する分岐点の上記割合を効果的に調整することができる、単純な溶融エステル交換法を見出すことが本発明の目的であった。
【0014】
驚くべきことに、特に精製された分岐剤、好ましくはトリヒドロキシアリール化合物、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)を、溶融エステル交換法において、分岐型ポリカーボネートを製造するために使用することで、溶融エステル交換法において市販入手可能な未精製の分岐剤を用いて製造された溶融ポリカーボネートよりも、ポリマー鎖内のキサントン構造が著しく少ない分岐型溶融PCが製造されることを見出した。この方法によって、ポリマー鎖内のキサントン構造に対する分岐剤構造の割合が、8より著しく大きく、好ましくは15より大きい溶融ポリカーボネートが製造され得る。分岐剤の特定の精製は陽イオン交換剤を用いて、溶液で行われる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施の形態は、分岐剤の存在中でビスフェノールとジアリールカーボネートとの溶融エステル交換を介して製造される芳香族分岐型ポリカーボネートであり、ここで芳香族分岐型ポリカーボネートは分岐点構造および式(D)の構造を備え、
【化1】

ここで、Xは単結合、C1〜C6−アルキレン、C2〜C5−アルキリデンまたは任意にC1〜C6−アルキルで置換されたC5〜C6−シクロアルキリデンであり;芳香族分岐型ポリカーボネート中のDの量は、芳香族分岐型ポリカーボネート1kg当たり5〜450mgの範囲であり;芳香族分岐型ポリカーボネート中の式Dの構造全体に対する分岐点構造全体の割合は8〜200の範囲である。
【0016】
本発明のまた別の実施の形態は、上記ポリカーボネートと、ホスフィン、ホスフィト、ジホスフィト、ホスフェートおよびその混合物から成る群から選択される少なくとも1つの有機リン化合物とを含有する組成物である。
【0017】
本発明の別の実施の形態は、少なくとも1つの有機リン化合物がホスフィンであって、ホスフィンが以下の構造を有する上記組成物であって:
【化2】

ここで、
ArおよびArは互いに独立して、任意に置換されたアリール部分であり;R’は任意に置換されたアリール部分または
【化3】

から成る群から選択される少なくとも1つの部分であり、
ここで、Rは非置換または置換C〜C14−アリール部分を表し;かつ
nおよびmは互いに独立して1〜7の整数であり、
部分(Ia)〜(Ic)のH原子はまた置換基で置換されてもよく;但し、式(I)でArおよびArがそれぞれ同様に4−フェニルフェニルまたはα−ナフチルであるなら、R’も4−フェニルフェニルまたはα−ナフチルであってもよく、ここで4−フェニルフェニル部分およびα−ナフチル部分は置換を有してもよい。
【0018】
本発明の別の実施の形態は、ホスフィンがトリフェニルホスフィンである上記組成物である。
【0019】
本発明の別の実施の形態は、少なくとも1つの有機リン化合物がホスフィトであり、トリス(2,4−tert−ブチルフェニル)ホスフィトである上記組成物である。
【0020】
本発明の別の実施の形態は、組成物がさらに式(III)の脂肪族カルボン酸エステルを含有する上記組成物であって:

(R−CO−O)−R−(OH) (III)

ここで、oは1〜4の整数であり、pは0〜3の整数であり、Rは、脂肪族、飽和または不飽和、線形、環状または分岐アルキル部分であり、Rは、式R−(OH)o+pの1〜4価の脂肪族アルコールのアルキレン部分である。
【0021】
本発明の別の実施の形態は、組成物がさらにベンゾトリアゾール、トリアジン、シアノアクリレートおよびマロン酸エステルから成る群から選択されるUV吸収剤を含有する上記組成物である。
【0022】
本発明の別の実施の形態は、組成物がさらに芳香族酸化防止剤を含有する上記組成物である。
【0023】
本発明の別の実施の形態は、芳香族酸化防止剤がn−オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである上記組成物である。
【0024】
本発明のまた別の実施の形態は、上記ポリカーボネートを製造する方法であって、この方法はビスフェノールとジアリールカーボネートとを分岐剤の存在中で溶融エステル交換法で反応させ;分岐剤を溶融エステル交換法で使用する前に分岐剤を精製することを包含する。
【0025】
本発明の別の実施の形態は、分岐剤を溶融エステル交換法で使用する前に、陽イオン交換剤を用いて溶液で分岐剤を前処理することをさらに包含する上記方法である。
【0026】
本発明の別の実施の形態は、分岐剤が1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)である上記方法である。
【0027】
本発明の別の実施の形態は、溶融エステル交換法がさらに式(VII)の触媒を含有する上記方法であって:
【化4】

ここで、
、R10、R11およびR12は互いに独立して、C〜C18−アルキレン部分、C〜C10−アリール部分およびC〜C−シクロアルキル部分から成る群から選択される化合物を表し;Xは、対応する酸−塩基対H+X→HXが11未満のpKを有する場合の陰イオンを表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
したがって、本発明は、ポリマー鎖内のキサントン構造に対する分岐点構造の割合が、8より大きく、好ましくは15より大きい分岐型溶融ポリカーボネートを提供する。さらに本発明は、ポリマー鎖内のキサントン構造に対する分岐点構造の割合が、8より大きく、好ましくは15より大きい分岐型溶融PCを製造するための溶融重縮合法を提供するものであって、使用される分岐剤を重縮合反応で使用する前に、分岐剤にたとえば、陽イオン交換剤において、蒸留によって、または吸収剤での精製によってまたは結晶化によって、精製処理を施すことを特徴とする。本発明はさらに、ポリマー鎖内のキサントン構造に対する分岐点構造の割合が、8〜200、好ましくは10〜100、特に好ましくは15〜80である分岐型溶融ポリカーボネートと常套の添加剤との組成物を提供するものであって、その例は安定剤、モールド取り外し剤、流動性補助剤、酸化防止剤、着色剤、UV吸収剤およびIR吸収剤および/または混合物の構成要素であり、これらは熱可塑性プラスチック、エラストマー、難燃剤および充填剤および補強材料の群から選択される。
【0029】
本発明に従って使用されるポリカーボネートは、好適なビスフェノールとジアリールカーボネートとを、好適な触媒およびまた分岐剤の存在中で、溶融エステル交換反応させることによって製造される。またポリカーボネートは、末端ヒドロキシおよび/またはカーボネート基を含有するカーボネートオリゴマーの、および好適なジアリールカーボネートとビスフェノールとの縮合によって製造されてもよい。本発明に従って使用されるポリカーボネートはまた、上記溶融エステル交換反応においてカーボネートオリゴマーを製造し、次に前記カーボネートオリゴマーを、微細に分離した固体相において、高温で、真空または熱不活性ガスを通気して重縮合させることによって、2段階処理で製造されてもよい。
【0030】
好ましいカーボネートオリゴマーは、153〜15,000[g/mol]のモル重量を有し、式(IV)で記載され、
【化5】

ここで、大括弧はn個の繰り返し構造ユニットを示し、
MはArまたは多官能性成分システムDであり、
ここでArは式(VIII)または(IX)によって、好ましくは(IX)によって表される成分システムであってもよく、
【化6】

ここで、
ZはC〜C−アルキリデンまたはC〜C12−シクロアルキリデン、S、SO、または単結合であり、
13、R14、およびR15は、互いに独立して置換または非置換C〜C18−アルキル部分、好ましくは置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、ClまたはBrであり、
r、s、tは互いに独立して0、1、または2であり、
nは自然数であり、成分システムDは、次の式の成分システムであり、
【化7】


その存在量は、ポリカーボネート全体を加水分解した後のポリマーに基づいて、5〜450ppm(アルカリ加水分解後にHPLCを用いて決定される含有量)であり、ここで、Y=Hまたは式(X)の成分システムであり、
【化8】

ここで、
16は同じまたは異なっていてもよく、H、C〜C20−アルキル、C、またはC(CHであってもよく、
uは0、1、2、または3であってもよく、
ここで、
Xは単結合、C1〜C6−アルキレン、C2〜C5−アルキリデンまたはC5〜C6−シクロアルキリデンであり、これはC1〜C6−アルキル、好ましくはメチルまたはエチルでの置換を有してもよい。
【0031】
成分システムDはキサントン誘導体である。
【0032】
本発明の内容で好適なジアリールカーボネートとは、ジ−C−〜ジ−C14−アリールエステル、好ましくはフェノールのまたはアルキル−またはアリール置換フェノールのジエステル、すなわち、ジフェニルカーボネート、ジクレジルカーボネートおよびジ−4−tert−ブチルフェニルカーボネートである。ジフェニルカーボネートは最も好ましい。
【0033】
好適なジ−C−〜ジ−C14−アリールエステルの中には、2個の異なるアリール置換基を含有する非対称なジアリールエステルもある。フェニルクレジルカーボネートおよび4−tert−ブチルフェニルフェニルカーボネートが好ましい。
【0034】
好適なジアリールエステルの中には、1以上のジ−C〜C14−アリールエステルの混合物もある。好ましい混合物は、ジフェニルカーボネート、ジクレジルカーボネートおよびジ−4−tert−ブチルフェニルカーボネートの混合物である。
【0035】
ジアリールカーボネートの使用可能な量は、1モルのジフェノールに基づいて、1.00〜1.30mol、特に好ましくは1.02〜1.20molおよび最も好ましくは1.05〜1.15molである。
【0036】
本発明の内容では好適なジヒドロキシアリール化合物は式(V)に相当する化合物であり:
【化9】

ここで、
は、置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、ClまたはBrであり、qは0、1、または2である。
【0037】
好ましいジヒドロキシベンゼン化合物は、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンおよび1,2−ジヒドロキシベンゼンである。
【0038】
本発明の内容では好適なジヒドロキシジアリール化合物は式(VI)に相当する化合物であり:
【化10】

ここで、
ZはC〜C−アルキリデンまたはC〜C12−シクロアルキリデン、S、SO、または単結合であり、
、Rは、互いに独立して、置換または非置換フェニル、メチル、プロピル、エチル、ブチル、ClまたはBrであり、
r、sは互いに独立して、0、1、または2である。
【0039】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシビフェニール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,2−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0040】
最も好ましいジフェノールは1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシビフェニール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼンである。
【0041】
好適なジフェノールの中には1以上のジフェノールの混合物もあり;これはコポリカーボネートを製造しうる。最も好ましい混合物成分は、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシビフェニールおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0042】
また、ジフェノールと並んで添加される他の化合物には、ジフェノールそれぞれに関して、またはジフェノール全体に関して0.1〜3mol%、好ましくは0.15〜2mol%の好適な分岐剤、たとえば、3個以上の官能性OH基または酸基を含有する化合物が含まれる。分岐によって、流動性はより非ニュートン性となり、せん断力が増加するにつれて粘度はより大きく減少する。好適な分岐剤の中には、フロログルシノール、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ-フェニル)エタン(THPE)、トリス(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ヘキサキス(4−(4−ヒドロキシ-フェニルイソプロピル)フェニル)オルトテレフタレート、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)フェノキシ)メタン、1,4−ビス((4’,4”−ジヒドロキシトリフェニル)メチル)ベンゼンおよびイサチンビスクレゾール、ペンタエリスリトール、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸およびシアヌル酸がある。
【0043】
好ましい分岐剤はトリスヒドロキシアリール化合物であり、THPEが分岐剤として特に好ましい。
【0044】
好適な精製処理、特に陽イオン交換剤での処理を用いて、本発明に従って使用される分岐剤から副生成物を取り除く。この副生成物は内部に存在するものであり、溶融PCの溶融重縮合時にポリマー鎖内にキサントン構造を形成する引き金となり得る。
【0045】
本発明に従ってポリカーボネートを製造するのに好適な触媒の例は、一般式(VII)のものであり、
【化11】

ここで、
、R10、R11およびR12は互いに独立して、同じまたは異なったC〜C18−アルキレン部分、C〜C10−アリール部分またはC〜C−シクロアルキル部分を示てもよくし、
は、対応する酸−塩基対H+X→HXのpKが<11である場合の陰イオンであってもよい。
【0046】
好ましい触媒は、テトラフェニルホスホニウムフルオリド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートおよびテトラフェニルホスホニウムフェノレートである。テトラフェニルホスホニウムフェノレートが最も好ましい。ホスホニウム塩触媒の好ましい量の例は、ジフェノール1モル当たり10−2〜10−8モルであり、触媒の最も好ましい量は、ジフェノール1モル当たり10−4〜10−6モルである。
【0047】
ポリカーボネートは段階的に製造されてもよく、温度は段階的に150〜400℃の範囲で実施されてもよく、各段階での滞留時間は15分〜5時間であってもよく、各段階での圧力は1000〜0.01mbarであってもよい。温度は段階的に上がり、圧力は段階的に下がるのが、特に好ましい。分岐剤の添加のタイミングに制限はなく、処理の各段階の前でも、開始時でも、または最終段階の前のいずれで添加してもよい。
【0048】
本発明に従って分岐される溶融ポリカーボネートは、好適な分岐型ポリカーボネートと好適な主として線形のポリカーボネートとを、互いに所定の割合でポリマー溶融物の状態で混合および均質化することを介して、同様に製造されてもよい。
【0049】
好ましく使用される溶融ポリカーボネートは一般式(IV)を特徴とし、
【化12】

ここで、Y=Hまたは非置換または置換アリール部分であり、nおよびMは本明細書内で先に説明した対応の変数に対応する。
【0050】
本発明に従って使用されるポリカーボネートの平均分子量は、5,000〜80,000、好ましくは10,000〜70,000および最も好ましくは15,000〜60,000であってもよく、これはゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0051】
Arの定義は好ましくは次のもの:
【化13】

である。
【0052】
成分システムDは好ましくは成分システムD1:
【化14】

であり、ここでX=イソプロピリデン部分。
【0053】
上記溶融ポリカーボネートは単に例を述べたに過ぎない。溶融ポリカーボネート中に存在する成分D1の全含有量は5〜450mg/kgの量である。
【0054】
流動性のさらなる改良または別の特性の改良、たとえば、UV光耐性および熱エージング耐性のために、添加剤を本発明による分岐型溶融PCに導入してもよく、その例は有機リン化合物、モールド取り外し剤、UV吸収剤、および芳香族酸化防止剤、たとえば、立体障害型フェノールである。本発明に従って好適な有機リン化合物の例は、ホスフィン、ホスフィン酸化物、ホスフィニト、ホスホニト、ホスフィト、ジホスフィン、ジホスフィニト、ジホスホニト、ジホスフィト、ホスフィネート、ホスホネート、ホスフェート、ジホスホネートおよびジホスフェート化合物および上記リン化合物のオリゴマー状誘導体である。
【0055】
本発明に従って任意に使用されるホスフィンは一般式(I)の化合物であって:
【化15】

ここで、
ArおよびArは、同じまたは異なった、非置換または置換アリール部分であり、
R’は非置換または置換アリール部分または以下の部分(Ia)〜(Ih)の1つであり、
【化16】

ここで、
Rはそれぞれ非置換または置換C6〜C14−アリール部分であり、
nおよびmは、それぞれ互いに独立して、1〜7の整数であり、部分(Ia)〜(Ic)のH原子はまた置換基で置換されてもよく、
但し、式(I)でAr部分が共にそれぞれ同様に4−フェニルフェニルまたはα−ナフチルであるなら、R’も4−フェニルフェニルまたはα−ナフチルであってもよく、4−フェニルフェニル部分およびα−ナフチル部分は置換基を有してもよい。
【0056】
(I)で好ましいAr部分はフェニル、4−フェニルフェニルおよびナフチルである。
【0057】
(I)でアリール部分Arの好適な置換基は、F、CH3、Cl、Br、I、OCH3、CN、OH、アルキルカルボキシ、フェニル、シクロアルキル、アルキルである。
【0058】
部分(Ia)〜(Ic)のH原子にとって好適な置換基は、F、CH、アルキル、シクロアルキル、Cl、アリールである。
【0059】
好ましい「n」および「m」の数字は1、2、3、または4である。
【0060】
アリールはそれぞれ独立して、4〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族部分であり、これら中で、1つの環(C原子から成る芳香族環)当たり0、1、2、または3個の骨格炭素原子であるが、分子全体内では少なくとも1つの骨格炭素原子は、窒素、硫黄または酸素の群から選択されるヘテロ原子による置換を有してもよい。しかし、アリールは6〜24個の骨格炭素原子を有する炭素環式芳香族部分を意味するのが好ましい。同じことがアリールアルキル部分の芳香族部分、より複雑な基のアリール構成要素(たとえば、アリールカルボニル部分またはアリールスルホニル部分)にも当てはまる。
【0061】
〜C24−アリールの例は、フェニル、o−、p−、m−トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニルまたはフルオレニルであり、ヘテロ芳香族C〜C24−アリールについて、これら中で、1つの環当たり0、1、2、または3個の骨格炭素原子であるが、分子全体内では少なくとも1つの骨格炭素原子は、窒素、硫黄または酸素の群から選択されるヘテロ原子による置換を有してもよく、このヘテロ芳香族C〜C24−アリールの例は、ピリジル、ピリジルN−オキサイド、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、チエニル、フリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリルまたはイソキサゾリル、インドリジニル、インドリル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、キナゾリニル、ベンゾフラニルまたはジベンゾフラニルである。
【0062】
本発明に従って好適なホスフィンの例は、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリ−p−tert−ブチルフェニルホスフィンまたはこれらの酸化物である。使用されるホスフィンは好ましくはトリフェニルホスフィンである。
【0063】
本発明に従って使用されるジアリールホスフィンの例は、1,2−ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、1,2−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)ベンゼン、
【化17】

[2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル]、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、シス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エチレン、
【化18】

[ビス(2−(ジフェニルホスフィノ)エチル)フェニルホスフィン]、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、
【化19】

[4,5−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]、トリ(4−ジフェニル)ホスフィンおよびトリス( −ナフチル)ホスフィンである。
【0064】
ジアリールホスフィンを、以下の文献からの情報を用いて製造してもよい:
イッスライブ(Issleib)ら,ケム.バー.(Chem. Ber.),92 (1959),3175,3179およびハートマン(Hartmann)ら,ザイツァー.アノーグ.ケ.(Zeitschr. Anorg. Ch.)287(1956)261,264。
【0065】
各種ホスフィンの混合物を使用することもできる。使用されるホスフィンの使用量は、組成物の全重量に基づいて、10〜2000mg/kg、好ましくは50〜800mg/kg、より好ましくは100〜500mg/kgである。
【0066】
本発明の成形組成物は、使用されるホスフィンだけでなく、対応するホスフィン酸化物も含有してもよい。
【0067】
本発明によれば、原理的にはいずれの所望の芳香族または脂肪族ホスフィトまたはジホスフィトをも任意に使用することができる。最も好ましいホスフィトおよびジホスフィトの例は、トリフェニルホスフィト、トリス(2−tert−ブチルフェニル)ホスフィト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト、トリス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト、トリス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト、トリス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)(2−ブチル2−エチルプロパン−1,3−ジイル)ホスフィト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスフィト、トリス(p−ノニルフェニル)ホスフィト、ジフェニルイソデシルホスフィト、ジイソデシルフェニルホスフィト、トリイソデシルホスフィト、トリラウリルホスフィトおよびトリス[(3−エチルオキセタニル−3)メチル]ホスフィトである。
【0068】
本発明によれば、原理的にはいずれの所望の有機UV吸収剤Bをも任意に使用することができる。UV吸収剤は好ましくは、トリアジン、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、シアノアクリレートおよびマロン酸エステルからなる群から選択されるものである。
【0069】
好適なUV吸収剤の例は次のものである:
a)式(II)のベンゾトリアゾール誘導体:
【化20】

式(II)で、含有のRとXとは同じまたは異なり、Hまたはアルキルまたはアルキルアリールを意味する。
【0070】
チヌビン(Tinuvin)(登録商標)329(X=1,1,3,3−テトラメチルブチルおよびR=Hの場合)、チヌビン(登録商標)350(X=tert−ブチルおよびR=2−ブチルの場合)およびチヌビン(登録商標)234(XおよびR=1,1−ジメチル−1−フェニルの場合)がここでは好ましい。
【0071】
b)式(IIa)の二量性ベンゾトリアゾール誘導体:
【化21】

式(IIa)で、R1およびR2は同じまたは異なり、H、ハロゲン、C1〜C10−アルキル、C5〜C10−シクロアルキル、C7〜C13−アラルキル、C6〜C14−アリール、−OR5または−(CO)−O−R5(ここでR5=HまたはC1〜C4−アルキル)を意味する。
【0072】
式(IIa)で、R3およびR4は同様に、同じまたは異なり、H、C1〜C4−アルキル、C5〜C6−シクロアルキル、ベンジルまたはC6〜C14−アリールを意味する。
【0073】
式(IIa)で、mは1、2または3を意味し、nは1、2、3または4を意味する。
【0074】
チヌビン(登録商標)360(R1=R3=R4=H;n=4;R2=1,1,3,3−テトラメチルブチル;m=1の場合)がここでは好ましい。
【0075】
b1)式(IIb)の二量性ベンゾトリアゾール誘導体:
【化22】

ここで、「bridge」は
【化23】

を意味し、
R、R、mおよびnは式(IIb)について記載した意味を有し、pは0〜3の整数であり、qは1〜10の整数であり、Yは−CH2−CH2−、−(CH2)3−、−(CH2)4−、−(CH2)5−、−(CH2)6−、または−CH(CH3)−CH2−であり、R3およびR4は、式(IIb)について記載した意味を有する。
【0076】
チヌビン(登録商標)840(R1=H;n=4;R2=tert−ブチル;m=1;R2はOH基に対してオルト位置にある;R3=R4=H;p=2;Y=−(CH2)5−;q=1の場合)がここでは好ましい。
【0077】
c)式(IIc)のトリアジン誘導体:
【化24】

ここで、R1、R2、R3、R4は同じまたは異なり、H、アルキル、CNまたはハロゲンであり、Xはアルキルである。
【0078】
チヌビン(登録商標)1577(R1=R2=R3=R4=H;X=ヘキシルの場合)およびまたシアソーブ(Cyasorb)(登録商標)UV−1 164(R1=R2=R3=R4=メチル;X=オクチルの場合)がここでは好ましい。
【0079】
d)次の式(IId)のトリアジン誘導体:
【化25】

ここで、R1はC1−アルキル〜C17−アルキルを意味し、R2はHまたはC1−アルキル〜C4−アルキルを意味し、nは0〜20である。
【0080】
e)式(IIe)の二量性トリアジン誘導体:
【化26】

ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同じまたは異なってもよく、H、アルキル、CNまたはハロゲンを意味し、Xはアルキリデン、好ましくはメチリデンまたは−(CH2CH2−O−)n−C(=O)−であり、nは1〜10、好ましくは1〜5、特に1〜3である。
【0081】
f)式(IIf)のジアリールシアノアクリレート:
【化27】

ここで、R〜R40は同じまたは異なってもよく、H、アルキル、CNまたはハロゲンを意味する。
【0082】
ウビナル(Uvinul)(登録商標)3030(R1〜R40=Hの場合)がここでは好ましい。
【0083】
g)式(IIg)のマロン酸エステル:
【化28】

ここで、Rはアルキルを意味する。RはC1〜C6−アルキル、特にC1〜C4−アルキルおよび特にエチルであるのが好ましい。
【0084】
本発明による成形組成物用に特に好ましいUV安定剤は、ベンゾトリアゾール(a、bおよびc)の群からの、マロン酸エステル(g)の群からのおよびシアノアクリレート(f)の群からの化合物である。
【0085】
UV安定剤の使用量は、成形組成物に基づいて、0.01重量%〜15重量%、好ましくは成形組成物に基づいて、0.05重量%〜1重量%、特に好ましくは0.1重量%〜0.4重量%である。
【0086】
常套の方法を用いて、これらのUV吸収剤を本発明に従って使用される組成物に導入するが、その例は、固体または液体形態のUV吸収剤と成形組成物の溶融物とを、公知の混合設備、たとえば、適当ならスタティックミキサーを組み合わせた押出し成形機または混練器内で、直接混合するといったものである。混合は好ましくは、たとえば、溶融物放出装置に関する副押出し成形機と互いに接続されて成る混合設備において、UV吸収剤をポリマー溶融物のストリーム内に予備分散させることによって行われる。UV吸収剤の予備分散は、たとえば、15重量%までのUV吸収剤の溶融ポリカーボネートにおけるマスターバッチを別に製造することを介して、行われてもよい。このタイプのマスターバッチを成形組成物の溶融物に直接添加しても、または混合設備を通じて添加してもいずれでもよい。
【0087】
本発明に従って任意に使用されるアルキルホスフェートC)は一般式(XI)の化合物であり:
【化29】

ここで、R〜Rは、H、同じまたは異なった線形、分岐、または環状アルキル部分であってもよい。C〜C18−アルキル部分は特に好ましい。C〜C18−アルキルはたとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性体メチル部分、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルである。
【0088】
本発明に従って好適なアルキルホスフェートの例は、モノ−、ジ−およびトリヘキシルホスフェート、トリイソオクチルホスフェートおよびトリノニルホスフェートである。使用されるアルキルホスフェートは、好ましくは、トリイソオクチルホスフェート(トリス-2−エチルヘキシルホスフェート)を含有する。各種モノ−、ジ−およびトリアルキルホスフェートから成る混合物を使用することもできる。
【0089】
使用されるアルキルホスフェートの使用量は、組成物の全重量に基づいて、0〜500mg/kg、好ましくは0.5〜500mg/kg、特に好ましくは2〜500mg/kgである。
【0090】
本発明に従って任意に使用される脂肪族カルボン酸エステルD)は、脂肪族長鎖カルボン酸と、1価または多価脂肪族および/または芳香族ヒドロキシ化合物とのエステルである。特に好ましく使用される脂肪族カルボン酸エステルは一般式(III)の化合物であり:
(R−CO−O)−R−(OH)
ここで、o=1〜4およびp=3〜0 (III)

ここで、Rは、脂肪族飽和または不飽和、線形、環状または分岐アルキル部分であり、Rは、1〜4価の脂肪族アルコールR−(OH)o+pのアルキレン部分である。
【0091】
〜C18−アルキル部分はRにとって特に好ましい。C〜C18−アルキルはたとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性体メチル部分、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルである。
【0092】
アルキレンは直鎖、環状、分岐または非分岐C〜C18−アルキレン部分である。C〜C18−アルキレンはたとえば、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、n−ペンチレン、n−ヘキシレン、n−ヘプチレン、n−オクチレン、n−ノニレン、n−デシレン、n−ドデシレン、n−トリデシレン、n−テトラデシレン、n−ヘキサデシレンまたはn−オクタデシレンである。
【0093】
多価アルコールのエステルの場合には、エステル化されていない、フリーのOH基が存在する可能性もある。本発明に従って好適な脂肪族カルボン酸エステルの例は:グリセロールモノステアレート、パルミチルパルミテート、およびステアリルステアレートである。式(III)の各種カルボン酸エステルの混合物を使用することもできる。好ましく使用されるカルボン酸エステルは、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、プロパンジオール、ステアリルアルコール、セチルアルコールまたはミリスチルアルコールと、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはモンタン酸とのエステルおよびその混合物である。特に好ましくは、ペンタエリスリトールテトラステアレート、グリセロールモノステアレート、ステアリルステアレートおよびプロパンジオールジステアレートおよびその混合物である。
【0094】
カルボン酸エステルの使用量は、組成物の全重量に基づいて、0〜12,000mg/kg、好ましくは500〜10,000mg/kg、特に好ましくは2000〜8000mg/kgである。
【0095】
任意の使用で好適な立体障害型フェノールの例は、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸またはβ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸またはβ−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と、1価または多価アルコールとの、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、n−オクタノール、イソオクタノール、n−オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス−(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス−(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンとのエステルである。
【0096】
特に好ましく使用される立体障害型フェノールにはn−オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが含まれる。立体障害型フェノールの好ましい使用量は、組成物の全重量に基づいて、10〜800mg/kg、特に30〜700mg/kg、非常に特に40〜600mg/kgである。
【0097】
本発明による組成物(溶融ポリカーボネート成形組成物)をたとえば、公知の方法で各構成要素を混合し、これらを、200℃〜400℃の温度で、常套の設備、たとえば、内部ミキサー、押出し成形機および二軸性押出し成形機内で溶融化合し、これらを溶融状態で押出すことによって製造してもよい。個々の構成要素の混合を、特に約20℃(室温)か、またはより高温で、連続的に行っても、または同時に行ってもいずれでもよい。しかし、本発明に従って使用される化合物を、溶融ポリカーボネート成形組成物中に、製造過程の異なる段階で、別々に導入しもよい。したがってたとえば、アルキルホスフェートおよび/またはホスフィンおよび/またはホスフィトを、溶融ポリカーボネートに、重縮合処理の前または最中または最後に、脂肪族カルボン酸エステルを添加する前に、導入することができる。
【0098】
本発明による化合物を添加する形態に、制限はない。本発明による化合物、または本発明による化合物の混合物をポリマー溶融物に添加する形態は、固体、たとえば、パウダーでも、溶液または溶融物でもよい。有機リン化合物および脂肪族カルボン酸エステルは、最終重縮合段階の下流で、副押出し成形機を通じて材料に計量添加されるのが好ましい。特に好ましくは工業的実施の形態は、たとえば、1時間当たり200〜1000kgのポリカーボネートの生産量を有する副押出し成形機を用いて作業する。
【0099】
UV吸収剤は好ましくは、液体形態で、約80〜250℃の温度で、ポリカーボネート給送装置のホッパーの下流の、混合する成分を備える副押出し成形機ゾーンに添加される。ここでUV吸収剤は、好ましくは2〜20barの圧力および好ましくは80〜250℃の温度に保持された循環路から取り出される。制御バルブを用いて添加量を制御してもよい。別の好ましい実施の形態では、UV吸収剤は、固体形態で、副押出し成形機のポリカーボネート給送装置のホッパーに添加される。
【0100】
好ましい実施の形態では、アルキルホスフェートの材料への任意の計量添加は、たとえば、室温で液体形態で、ポリカーボネートと共に、副押出し成形機のポリカーボネート給送装置のホッパーへと行われる。たとえば、アルキルホスフェートは、メンブランポンプまたは別の好適なポンプを用いて、材料に計量添加される。ホスフィンと立体障害型フェノールは好ましくは、液体形態で、約80〜250℃の温度で、ポリカーボネート給送装置のホッパーの下流の、混合する成分を備える副押出し成形機ゾーンに添加される。ここでホスフィンは、好ましくは2〜20barの圧力および好ましくは80〜250℃の温度に保持された循環路から取り出される。制御バルブを用いて添加量を制御してもよい。
【0101】
副押出し成形機の下流には、特に好ましくは、圧力を増すために、ギアポンプを備えてもよい。使用されるカルボン酸エステルは好ましくは、副押出し成形機の下流でスタティックミキサーの上流で、メンブランポンプまたは別の何らかの好適なポンプを用いて、材料に計量添加されてもよい。そしてカルボン酸エステルがギアポンプの下流で材料に計量添加される際には、特に好ましくは80〜250℃で、メンブランポンプを用いて圧力を上げて、特に好ましくは50〜250barで好ましくは液体の形態でである。場合によっては、カルボン酸エステルは副押出し成形機の混合ゾーンで、制御バルブを通じて溶融物ストリームに導入されてもよい。
【0102】
特に好ましい実施の形態では、副押出し成形機および全ての添加剤計量添加ポイントの下流に、全添加剤を良好に混合することを目的としたスタティックミキサーがある。その後、副押出し成形機からのポリカーボネート溶融物を、ポリカーボネート溶融物のメインストリームに導入する。溶融物のメインストリームと副押出し成形機からの溶融物ストリームとの混合は、さらなるスタティックミキサーを通じて行われる。
【0103】
液体の計量添加に代えて、添加剤をマスターバッチ(ポリカーボネートにおける添加剤の濃縮物)の形態で、または純粋な固体形態で、副押出し成形機のポリカーボネート給送装置のホッパーを通じて、計量添加することができる。このタイプのマスターバッチはさらなる添加剤を含有してもよい。
【0104】
全ての添加剤を順次ポリカーボネートに、たとえば、調合しながら導入することもできる。
【0105】
本発明による成形組成物をいずれのタイプの成形物の製造に使用してもよい。
【0106】
これらを好ましくは、押出しおよびブロー成形法によって、または射出成形によって適当に改良して製造してもよい。別の形態の方法では、成形物を、予め製造されたシートまたはフィルムから熱形成によって製造する。
【0107】
本発明による成形物の例は、たとえば、家庭用装置、たとえば、ジュースプレス、コーヒーメーカー、ミキサー用の;事務機器、たとえば、モニター、プリンタ、複写機用の;シートおよびこれらの共押出し層、パイプ、電気設備配管、窓、ドア用のいずれかのタイプの異形材、ホイル、ハウジング部品、および建物分野、内装仕上げおよびアウトドア用品用の;電気技術分野における、たとえば、スイッチおよびプラグ用の異形材である。本発明による成形物はさらに、列車、船、飛行機、バス、および他の自動車の内装仕上げ部品および要素用に、およびまた自動車車体部品用に使用されてもよい。
【0108】
本発明による成形物は透明でも半透明でもまたは不透明でもよい。他の成形物は、特に光および光磁気データ記憶システム、たとえば、ミニディスク、コンパクトディスク(CD)またはデジタルバーサタイルディスク(DVD)、飲食料パッケージング、光学レンズおよびプリズム、照射目的のレンズ、自動車用ヘッドランプレンズ、建設車両用および他の自動車用施釉、たとえば、植物園用のいずれかのタイプのパネル、二重外皮サンドイッチパネルまたは空洞のあるパネルとして公知のものである。
【0109】
上で記載した全ての参照文献を、全ての有用な目的のために、その全てを参照して挿入する。
【0110】
本発明を具体化したある特定の構造を示し記載したが、当業者にとって、その一部の各種変更および再編を、基本的な発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく、行うことができ、発明の概念はここで示され記載される特定の形態に限定されないことは、自明である。
【実施例】
【0111】
(本発明による成形組成物の特徴付け(試験方法))
(溶融粘度)
流動性は、100から1000[l/s]まで変化するせん断速度(shear gradient)(イータ(eta))の関数として、320℃の温度で、本発明による成形組成物の溶融粘度(Pa・s)を測定することによって決定される。測定はISO 11443に従って毛管レオメータを用いて行われた。
【0112】
(相対粘度(イータレル(etarel.))の決定)
相対溶液粘度イータレルは、塩化メチレン中で(0.5gのポリカーボネート/l)、25℃でウッベローデ(Ubbelohde)粘度計において決定される。
【0113】
(平均分子量(Mw))
平均分子量(Mw)は、ジクロロメタンにおける0.2パーセント強度のポリマーの溶液について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)およびUV検出を用いて決定される。GPCは線形PC標準を用いてキャリブレートされる。
【0114】
(溶融体積流速(MVR))
溶融体積流速(MVR)は、ISO 1133に従って、メルトインデックス試験装置を用いて、300℃で1.2kgの荷重で決定される。
【0115】
(化合物D1)
化合物D1の濃度は、ポリカーボネートのアルカリ加水分解の後、次にHPLCによって加水分解物質を分析することによって決定される。化合物は核磁気共鳴スペクトルによって特定された。
【0116】
(THPE含有量)
THPEの含有量は、ポリカーボネートのアルカリ加水分解の後、次にHPLCによって加水分解物質を分析することによって決定される。外標準をキャリブレーションのために使用した。
【0117】
(YIおよび後続黄変(ΔYI))
本発明による成形組成物の光学特性は、ASTM E313に従って、標準試験片における黄色指数(YI)として公知のものを測定することによって決定される。これらの標準試験片はカラーサンプルプラーク(60×40×4mm)であり、これは、300℃の溶融温度で、90℃の成形温度で溶融PC組成物から製造されたものであった。後続黄変(ΔYI)は、新たに射出成形されたカラーサンプルプラークの測定YI値と、熱エージング後の同じカラーサンプルプラークについて測定されたYI値から計算された差として決定される。
【0118】
(熱エージング)
実施例11、12および22〜24(以下参照)では、変色(黄変)を熱エージングで試験した。このために、ポリカーボネートで作成した標準試験片(60×40×4mm)を空気循環オーブン中で1000時間135℃でエージングした。その後、YIをASTM E313に従って決定する。コントロール片(エージング前)との差を計算する(=ΔYI1000時間)。
【0119】
(添加剤を含まない原料樹脂)
溶融PCを多段階法で製造した。まず、出発材料のBPA、DPC(9000.1g)、テトラフェニルホスホニウムフェノレート(0.7g)およびTHPEを、約190℃で、攪拌タンク内で溶融し、溶融後45分間攪拌した。BPAの使用量は、モル量に基づいて、得られるDPC/BPAの割合が、反応開始時のBPAに基づいて、110、108または107mol%になるように選択された。THPE含有量は、モル量に基づいてBPAに関して、添加されるTHPE量がBPAに基づいて、0.3、0.4または0.5mol%になるように選択された。各実施例の組成を表1に見ることができる。
【0120】
(金属イオンを含有する1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)の精製)
スルホン酸処理されたイオン交換剤(レワチッチ(Lewatit)K1221,ランクセス(Lanxess)AG)を、室温で脱イオン水を用いて、ガラスカラム内から電解質がなくなるまで洗浄し、この際に、体積流速を、1時間、イオン交換剤1ml当たり、0.3mlの水量に一定に保持する。24時間後、カラム溶出液の導電率は7μS/cmである。液体水相を放出しイオン交換剤をメタノールで処理する。
【0121】
電解質を含まない洗浄済みイオン交換剤を次に、室温でメタノールで、カラムからのメタノール性溶出液中の水含有量が0.5重量%未満となるまで、洗浄する。体積流速をここでは、1時間、イオン交換剤1ml当たり、0.3mlのメタノール量に一定に保持する。得られたメタノール調節イオン交換剤を、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)を含有する溶液の精製に使用する。
【0122】
20重量%強度のメタノール性THPE溶液を室温で、得られた調節イオン交換剤に通す。ここでイオン交換剤に施される体積流速は、イオン交換剤1ml当たり、0.3mlのTHPE溶液量である。次にイオン交換剤をメタノールで2回洗浄し、洗浄に使用される体積はそれぞれカラム内のメタノール湿潤イオン交換剤の体積である。カラムからの溶出液を全て回収し、噴流水によって与えられる真空中で45℃で蒸発させることによって、約50重量%強度のメタノールにおけるTHPE溶液が得られるまで、濃縮する。このメタノール性THPE溶液を、室温で攪拌しながら、その体積の2倍の脱イオン水に添加する。白色沈殿物を濾過によって取り出し、50℃で48時間、そして65℃で48時間、噴流水によって与えられる真空中で一定重量になるまで乾燥する。
【0123】
収率:96.9%
精製前の1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのナトリウム含有量:8.3ppm
精製後の1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのナトリウム含有量:610ppb
【0124】
本発明に従う実施例5〜10の場合、およびPC1の場合には、使用されるTHPEは溶融反応に使用する前に酸性のイオン交換剤で精製した。本発明に従わない実施例1〜4については、市販入手可能なTHPEを予め精製することなく使用した。
【0125】
190℃、大気圧、窒素下で45分間の反応後に、反応混合物を流下膜式蒸発器の投入口に移す。約200mbarの真空を流下膜式蒸発器に印加し、190℃の出発温度で、反応混合物を、外部加熱重力流動チューブを通じて循環路に汲み上げることによって、循環させる。単位時間あたの汲み上げによる循環量を実験時間全体に渡って一定に保持し、流下膜式蒸発器での反応開始時点では、液体の体積の4倍の量が流下膜式蒸発器内に1時間当たり輸送される。反応時に製造されるフェノールを蒸留によって取り出し、凝縮器で凝縮し、そして反応混合物から除去する。16分の滞留時間後に、圧力を100mbarに下げ、温度を220℃に上げる。この処理の際、反応混合物を重力流動チューブを通じて循環路に汲み上げることによって、循環させる。16分の滞留時間後に、圧力を75mbarに下げ、温度を250℃に上げる。この処理の際、反応混合物を重力流動チューブを通じて循環路に汲み上げることによって、循環させる。16分の滞留時間後に、圧力を50mbarに下げ、温度を265℃に上げる。この処理の際、反応混合物を重力流動チューブを通じて循環路に汲み上げることによって、循環させる。16分の滞留時間後に、反応混合物をディスク反応器に移す。ディスク反応器では、ディスクが270〜280℃の温度で、4〜6mbarの圧力で回転することで、反応混合物の縮合処理が続き、この際に縮合処理によって製造されるフェノールを連続的に蒸発によって取り出し、よって反応混合物から除去する。45分後、圧力を0.5〜2mbarに下げ、温度を300〜310℃に上げる。所望の最終粘度に達するまで、混合物をこれらの反応条件下で保持する。次にポリマー溶融物を、ギアポンプによってディスク反応器の外に取り出し、ダイプレートを通じて放出し、そして冷却固化後に水浴中でペレット化させる。
【0126】
表1は、様々な品質のTHPEを含有する各種実験例の概要を与えたものである。実施例1〜4は本発明に従わないものであり、実施例5〜10とPC1は本発明によるものである。PC1はイータレル値の差が±0.006未満の13個の個々の実験例全部の物理的混合物である。PC1を原料樹脂として、添加剤との調合材料を製造するのに使用した(実施例11〜24、表2)。
【0127】
表1が示すように、本発明に従わない実施例1〜4は450mg/kgを超える、著しく高い構造D1含有量を有するのに対して、本発明による実施例5〜10では、構造D1の含有量が450mg/kgより小さい。THPEのD1に対する割合は、本発明に従わない実施例では10より著しく小さく、本発明による実施例では10より著しく大きい。
【0128】
(添加剤を含有する実施例)
本発明による調合材料を、ZE25/5押出し成形機(ベルストフ(Berstorff),ハノーバーから)内で、10kg/時の生産量で製造した。バレル温度は320℃であった。各種添加剤の計量添加は、全投入重量に基づいて、ポリカーボネートパウダー−5重量%のパウダー混合物となる形態にした。
【0129】
(使用される原料)
PC1は、ビスフェノールA、DPC(ジフェニルカーボネート)および0.35重量%のトリスヒドロキシフェニルエタン(THPE)に基づく、添加剤を含有しないTHPE−分岐型溶融ポリカーボネートである。D1:225ppm、THPE/D1割合:15.6、MVR3.5cm/10分(300℃/1.2kg)。
【0130】
PC2は、添加剤を含まないビスフェノールAに基づく調合材料に添加剤を導入するための補助剤としての溶液ポリカーボネートパウダーであって、19cm/10分(300℃/1.2kg)のMVRを有する。D1は検出限界未満である。
TPP: トリフェニルホスフィン
イルガフォス(Irgafos)168: トリス(2,4−tert−ブチルフェニル)ホスフィト
トリアルキルホスフィト:トリス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]ホスフィト
PETS:ペンタエリスリトールテトラステアレート
ロキシオール(Loxiol)G32:ステアリルステアレート
チヌビン329:2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
チヌビン360:ビス[2−ヒドロキシ−5−tert−オクチル−3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]メタン
ホスタビン(Hostavin)B−cap:テトラエチルp−フェニレンビス(メチレン)マロネート
ウビナル(Uvinul)3030:1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン
イルガノックス(Irganox)1076:n−オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
【0131】
表2は、得られた調合材料の性質、イータ=100〜1000[l/s]についての320℃での溶融粘度、相対粘度および選択された試験片についての4mmプラークにおけるΔYI1000時間を示す。また、本発明による実施例8も比較例として一覧に含めた。
【0132】
表2のデータは、本発明による実施例8および11〜24は全て、本発明に従わない実施例3および4よりも、各種せん断速度でより高い溶融粘度を有することを証明している。そして、本発明に従わない実施例3および4の相対粘度およびTHPE(分岐剤)含有量は、本発明による実施例8および11〜24の値に匹敵しており、これは驚きである。したがって、表2のデータは、本発明による、≧10のTHPE/D1割合を有する実施例8および11〜24は、本発明に従わない、<8のTHPE/D1を有する実施例3および4より、著しく高い溶融物安定性を有することを証明している。実施例12〜24は、一般的に流動性の増加をもたらし、したがって、溶融粘度を下げる添加剤を含有するので、このことは全くさらなる驚きである。この効果はたとえば、ドイツ特許公開第DE10 2009 043512.3号公報明細書に記載されていた(が、まだ出願データで発行されていない)。したがって、表2の実施例は、予めイオン交換剤で精製されたTHPEの使用の優位性を証明するものである。
【0133】
調合材料がホスフィンまたはホスフィトを含有し、適当なら、立体障害型フェノールを含有する場合には(実施例12、22〜24)、これらは添加剤を含まない実施例11より、熱エージング時に著しく安定であり、このことはΔYI1000時間値から理解することができる。驚くべきことに、芳香族ホスフィトを含有する実施例23は、黄変に関して、ホスフィンとn−オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートの組み合わせを含有する実施例24より優れている。このことは、ドイツ特許公開第DE10 2009 043509.3号公報明細書(まだ出願データで発行されていない)に基づけば、予想外であった。前記未発行の公開明細書は、THPEを含まない溶融PCでは、ホスフィンとn−オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートの組み合わせは熱エージング時に黄変を最も防ぎ、イルガフォス168の使用より有効であると記載している。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

n.d.:同定せず
*本発明による実施例の場合には、THPEを溶融PC反応で使用する前に、THPEをイオン交換剤で精製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐剤の存在中でビスフェノールとジアリールカーボネートとの溶融エステル交換を介して製造される芳香族分岐型ポリカーボネートであり、分岐点構造および式(D)の構造を備え、
【化1】

ここで、Xは単結合、C1〜C6−アルキレン、C2〜C5−アルキリデンまたは任意にC1〜C6−アルキルで置換されたC5〜C6−シクロアルキリデンである芳香族分岐型ポリカーボネートであって;
芳香族分岐型ポリカーボネート中のDの量は、芳香族分岐型ポリカーボネート1kg当たり5〜450mgの範囲であり;かつ
芳香族分岐型ポリカーボネート中の式Dの構造全体に対する分岐点構造全体の割合は8〜200の範囲である芳香族分岐型ポリカーボネート。
【請求項2】
請求項1による少なくとも1つのポリカーボネートと、ホスフィン、ホスフィト、ジホスフィト、ホスフェートおよびその混合物から成る群から選択される少なくとも1つの有機リン化合物とを含有する組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの有機リン化合物がホスフィンであって、ホスフィンが以下の構造を有し:
【化2】

ここで、
ArおよびArは互いに独立して、任意に置換されたアリール部分であり;かつ
R’は任意に置換されたアリール部分または
【化3】

から成る群から選択される少なくとも1つの部分であり、
ここで、Rは非置換または置換C〜C14−アリール部分を表し;かつ
nおよびmは互いに独立して1〜7の整数であり、
部分(Ia)〜(Ic)のH原子はまた置換基で置換されてもよく;但し、式(I)でArおよびArがそれぞれ同様に4−フェニルフェニルまたはα−ナフチルであるなら、R’も4−フェニルフェニルまたはα−ナフチルであってもよく、ここで4−フェニルフェニル部分およびα−ナフチル部分は置換を有してもよい
請求項2による組成物。
【請求項4】
ホスフィンがトリフェニルホスフィンである請求項3による組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの有機リン化合物がホスフィトであり、トリス(2,4−tert−ブチルフェニル)ホスフィトである請求項2による組成物。
【請求項6】
組成物がさらに式(III)の脂肪族カルボン酸エステルを含有し

(R−CO−O)−R−(OH) (III)

ここで、oは1〜4の整数であり、pは0〜3の整数であり、Rは、脂肪族、飽和または不飽和、線形、環状または分岐アルキル部分であり、Rは、式R−(OH)o+pの1〜4価の脂肪族アルコールのアルキレン部分である請求項2による組成物。
【請求項7】
組成物がさらにベンゾトリアゾール、トリアジン、シアノアクリレートおよびマロン酸エステルから成る群から選択されるUV吸収剤を含有する請求項2による組成物。
【請求項8】
組成物がさらに芳香族酸化防止剤を含有する請求項2による組成物。
【請求項9】
芳香族酸化防止剤がn−オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである請求項8による組成物。
【請求項10】
請求項1によるポリカーボネートを製造する方法であって、ビスフェノールとジアリールカーボネートとを分岐剤の存在中で溶融エステル交換法で反応させ;分岐剤を溶融エステル交換法で使用する前に、分岐剤を精製することを包含する方法。
【請求項11】
分岐剤を溶融エステル交換法で使用する前に、陽イオン交換剤を用いて溶液で分岐剤を前処理することをさらに包含する請求項10による方法。
【請求項12】
分岐剤が1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)である請求項10による方法。
【請求項13】
溶融エステル交換法はさらに式(VII)の触媒を含有し
【化4】

ここで、
、R10、R11およびR12は互いに独立して、C〜C18−アルキレン部分、C〜C10−アリール部分およびC〜C−シクロアルキル部分から成る群から選択される化合物を表し;かつ
は、対応する酸−塩基対H+X→HXが11未満のpKを有する場合の陰イオンを表す請求項10による方法。

【公開番号】特開2011−219757(P2011−219757A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−85213(P2011−85213)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】