説明

欠陥計数装置及び欠陥計数方法

【課題】結晶端面Scのカソードルミネッセンス画像から、貫通転位などの欠陥数を自動計数する場合に、その誤差を小さくしてより正確に計数できるようにする。
【解決手段】欠陥像の面積に対する欠陥像数の分布から、孤立欠陥による欠陥像と近接欠陥による欠陥像とを推定的に分離したうえで、孤立欠陥の数と孤立欠陥像の面積を算出し、その後、前記孤立欠陥数と孤立欠陥像面積を用いた補正演算によって、近接欠陥による欠陥像から欠陥数を算出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶等の端面に現れる貫通転位などの欠陥を、カソードルミネッセンス画像に基づいて計数する欠陥計数装置及び欠陥計数方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サファイア基板上にガリウムナイトライドを結晶成長させるときのように、基板上に格子定数の異なる材料を結晶成長させる場合には、その材料に転位が生じ、結晶成長に伴ってその転位が当該成長方向に延びていく現象が生じ得る。このような成長方向に延びる転位を貫通転位と呼ぶ。この貫通転位の存在は、特許文献1に示すように、材料結晶の品質を左右するものであるから、従来、材料結晶における貫通転位の数又は密度を測定することが行われている。
【0003】
その測定には、カソードルミネッセンスが利用される。すなわち、成長中の結晶端面に電子線を照射すると、貫通転位部位ではカソードルミネッセンスが生起されないため、結晶端面のカソードルミネッセンス画像中に貫通転位が暗点(ダークスポット、以下、DSとも言う)として現れる。そこで、このDS数を計数することによって、貫通転位の数又は密度を求めるようにしている。そして、現在のところ、DS数は目視で数えるのが一般的である。
【特許文献1】特開2007−221001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、取得したカソードルミネッセンス画像中に大量のDSがある場合、目視で計数するのは容易ではない。また、半導体製造プロセスなどの全自動化を推し進めていく上では、目視計数の工程をマシンプロセスに代替する必要も今後生じ得る。
【0005】
そこで、画像解析によって貫通転位数を自動計数することが容易に考えられるが、実際には、複数の貫通転位が所定以上近接していると、画像上では、これら貫通転位が一部重なり合って1つのDSとして認識されるため、正確に貫通転位数を計数することが難しい。これに対し、目視の場合は、オペレータの判断によってある程度以上大きなDSや形のいびつなDSは2つまたはそれ以上の貫通転位として計数されるから、計数誤差は小さい。
【0006】
本発明は、かかる問題点を鑑みてなされたものであって、結晶等の試料端面におけるカソードルミネッセンス画像から、貫通転位などの欠陥数を自動計数する場合に、その誤差を小さくしてより正確に計数できるようにすべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、結晶等の試料端面のカソードルミネッセンス画像から、当該試料端面に存在する欠陥数を計数する欠陥計数装置に係るものであって、
【0008】
試料端面のカソードルミネッセンス画像から、当該試料端面に現れる欠陥数を計数する装置であって、
前記画像に現れる欠陥像の数と各欠陥像の面積とを計測して、欠陥像の面積に対する数の分布を算出する欠陥像分布算出部と、前記分布において数が最大となる欠陥像の面積から推測される閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総数を当該分布から計数することで、近傍の他の欠陥による欠陥像とは欠陥像同士が重合しない欠陥である孤立欠陥の数を算出する孤立欠陥数算出部と、前記閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総面積である閾下総面積を前記分布結果から算出し、その閾下総面積を前記孤立欠陥の数で除算することで、前記孤立欠陥による欠陥像の面積を算出する孤立欠陥像面積算出部と、前記閾面積よりも大きな面積を有する欠陥像の総面積である閾上総面積を前記分布結果から算出し、前記閾上総面積を前記孤立欠陥像面積で除算することで、近傍の他の欠陥による欠陥像と欠陥像同士が少なくとも一部重合する欠陥である近接欠陥の数を算出する近接欠陥数算出部と、前記孤立欠陥の数と近接欠陥の数とを足し合わせることで、画像に映し出された試料端面に存在する総欠陥数を算出する総欠陥数算出部と、を具備していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は同欠陥計数装置に係るものであって、
前記画像に現れる欠陥像の数と各欠陥像の面積とを計測して、欠陥像の面積に対する数の分布を算出する欠陥像分布算出部と、横軸を欠陥像の面積、縦軸を欠陥像の数とした分布グラフにおける最大ピークから左側のグラフ線に、ガウシアン曲線の左側部分をフィッティングさせ、そのガウシアン曲線で囲まれる範囲内に存在する欠陥像の総数を前記分布から計数することで、近傍の他の欠陥による欠陥像とは欠陥像同士が重合しない欠陥である孤立欠陥の数とする孤立欠陥数算出部と、前記ガウシアン曲線のピーク座標における欠陥像の面積を、孤立欠陥による孤立欠陥像の面積として算出する孤立欠陥像面積算出部と、欠陥像の総面積から孤立欠陥像の総面積を減算し、その値を前記孤立欠陥像面積で除算することで、近傍の他の欠陥による欠陥像と欠陥像同士が少なくとも一部重合する欠陥である近接欠陥の数を算出する近接欠陥数算出部と、前記孤立欠陥の数と近接欠陥の数とを足し合わせることで、画像に映し出された試料端面に存在する総欠陥数を算出する総欠陥数算出部と、を具備していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、試料端面のカソードルミネッセンス画像から、当該試料端面に現れる欠陥数を計数する欠陥計数方法に係るものであって、
前記画像に現れる欠陥像の数と各欠陥像の面積とを計測して、欠陥像の面積に対する数の分布を算出する欠陥像分布算出ステップと、数が最大となる欠陥像の面積よりも、分布態様から定まる量だけ大きな面積である閾面積を推測する閾面積推測ステップと、前記閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総数を前記分布結果から算出し、その総数をもって、近傍の他の欠陥による欠陥像とは欠陥像同士が重合しない欠陥である孤立欠陥の数とする孤立欠陥数算出ステップと、前記閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総面積である閾下総面積を前記分布結果から算出し、その閾下総面積を前記孤立欠陥の数で除算した値をもって、前記孤立欠陥による欠陥像の面積とする孤立欠陥像面積算出ステップと、前記閾面積よりも大きな面積を有する欠陥像の総面積である閾上総面積を前記分布結果から算出し、前記閾上総面積を前記孤立欠陥像面積で除算した値をもって、近傍の他の欠陥による欠陥像と欠陥像同士が少なくとも一部重合する欠陥である近接欠陥の数とする近接欠陥数算出ステップと、前記孤立欠陥の数と近接欠陥の数との和を算出し、その値をもって、画像に映し出された試料端面に存在する総欠陥数とする総欠陥数算出ステップと、を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、同欠陥計数方法に係るものであって、
前記画像に現れる欠陥像の数と各欠陥像の面積とを計測して、欠陥像の面積に対する数の分布を算出する欠陥像分布算出ステップと、横軸を欠陥像の面積、縦軸を欠陥像の数とした分布グラフにおける最大ピークから左側のグラフ線に、ガウシアン曲線の左側部分をフィッティングさせ、そのガウシアン曲線で囲まれる範囲内に存在する欠陥像の総数を前記分布結果から算出し、その総数をもって、近傍の他の欠陥による欠陥像とは欠陥像同士が重合しない欠陥である孤立欠陥の数とする孤立欠陥数算出ステップと、前記ガウシアン曲線のピーク座標における欠陥像の面積をもって、孤立欠陥による孤立欠陥像の面積とする孤立欠陥像面積算出ステップと、欠陥像の総面積から孤立欠陥像の総面積を減算し、その値を前記孤立欠陥像面積で除算した値をもって、近傍の他の欠陥による欠陥像と欠陥像同士が少なくとも一部重合する欠陥である近接欠陥の数とする近接欠陥数算出ステップと、前記孤立欠陥の数と近接欠陥の数との和を算出し、その値をもって、画像に映し出された試料端面に存在する総欠陥数とする総欠陥数算出ステップと、を行うことを特徴とする。
【0012】
貫通転位は、試料端面全体でみて同じ数(又は同じ密度)であっても、試料端面全体に平均的に散らばっているよりは、1箇所乃至複数箇所に集中的に存在する方が、例えば半導体デバイスとして用いやすい。その指標を提示するには、前記孤立欠陥数と近接欠陥数との比、又はその比を示す値、例えば前記孤立欠陥数と総欠陥数との比など、を算出する比率算出部をさらに具備しているものが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によれば、試料端面のカソードルミネッセンス画像における欠陥像の面積に対する欠陥像数の分布に基づいて、孤立欠陥による欠陥像と近接欠陥による欠陥像とを推定的に分離したうえで、まずは、孤立欠陥の数と孤立欠陥像の面積を算出しておき、その後、前記孤立欠陥数と孤立欠陥像面積を用いた補正演算によって近接欠陥数を算出するようにしているため、自動的でありながらより正確に欠陥数を計数することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。なお、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではないのは言うまでもない。
【0015】
本実施形態に係る欠陥計数装置100は、例えば半導体デバイス用の材料を結晶成長させる結晶成長装置に付帯して設けられるものであって、試料である前記結晶の成長端面に電子線を照射し、そのカソードルミネッセンス画像から、当該結晶に存在する欠陥(ここでは例えば貫通転位)の数を計数し、あるいは欠陥の密度を測定するものである。
【0016】
図1は、このような欠陥計数装置100の基本的な構成例を示している。この図1において、符号1は、結晶端面Sc上に電子線を走査しながら照射する電子線照射装置であり、符号2は、前記電子線の走査によって結晶端面Scで生じるカソードルミネッセンスを検出し、当該結晶端面Scのエリア画像(以下、カソードルミネッセンス画像と言う)を取得する撮像装置である。
【0017】
また、符号3は、前記カソードルミネッセンス画像を処理して結晶端面Scに存在する欠陥数を計数する機能を有した情報処理装置である。
【0018】
しかして、この情報処理装置3は、CPUやメモリ、ADコンバータ、バッファなどのデジタル乃至アナログ電子回路で構成されるものであり、メモリに記憶させた所定のプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が作動することにより、欠陥数を計数するための機能、すなわち、欠陥像分布算出部31、孤立欠陥数算出部32、孤立欠陥像面積算出部33、近接欠陥数算出部34、総欠陥数算出部35、閾面積算出部36、散らばり度算出部37等としての機能を発揮する(図2参照)。
【0019】
次に、これら各部の詳細説明を兼ねて、本欠陥計数装置100の動作(欠陥計数方法)を説明する。
【0020】
結晶端面Scの電子線走査領域におけるカソードルミネッセンス画像が、撮像装置2によって取得されると、その画像データは情報処理装置3に送信され、前記欠陥像分布算出部31で処理される。
【0021】
すなわち、欠陥像分布算出部31は、前記画像データにノイズ処理を施す。このノイズ処理としては、例えば、画像における明るさ0のドット(暗点)を周囲から一定数減少させ、その後、残った明るさ0のドットを周囲に向かって前記一定数増加させるようにしている。このことによって、1ドットのみの暗点のようなノイズと思われる小さな暗点は、最初のドット減少動作によって消失し、次のドット増加動作によって復活することは無いから、ノイズを消去することができる。
次にこの欠陥像分布算出部31は、ノイズ処理を施した前記画像データに基づいて、欠陥像数と、各欠陥像の画像上における面積とをそれぞれ計測するとともに、一定範囲で区成された面積範囲毎の欠陥像数(頻度)を算出し、欠陥像の面積に対する数の分布を算出する(欠陥像分布算出ステップ)。そして、その分布を示す分布データを、メモリの所定領域に設定した分布データ格納部D1に格納する。
【0022】
さらにこの実施形態では、当該欠陥像分布算出部31が、前記分布データの内容を、図3に示すように、横軸を面積(一定範囲で区成された面積範囲のうちの中心面積)、縦軸を欠陥像数(頻度)とした分布グラフにしてディスプレイに表示する。
【0023】
ここで、理解のためにこの分布グラフについての説明をしておく。
【0024】
欠陥である貫通転位が生じている箇所ではカソードルミネッセンスが生じないため、画像上での欠陥像は、図4に示すように、DSとして黒く現れる。そして本来は、1つの欠陥について1つの欠陥像が独立して現れるべきであるが、検出系の解像度や精度などの要因で、実際には、ある一定距離以上、欠陥同士が近接していると、画像上では欠陥像の一部同士が重なり合い、面積の大きな1つの欠陥像として認識される。そこで、以下、近傍の他の欠陥による欠陥像とは欠陥像同士が重合しない欠陥、つまり欠陥像同士が重合するような範囲には、他の欠陥が存在しない欠陥のことを孤立欠陥といい、近傍の他の欠陥による欠陥像と欠陥像同士が少なくとも一部重合する欠陥、つまり欠陥像同士が重合する範囲に1以上の他の欠陥が存在する欠陥のことを近接欠陥ということとすれば、この分布グラフは、図5に示すように、孤立欠陥による欠陥像の分布、2つの近接欠陥による欠陥像の分布、3つの近接欠陥による欠陥像の分布といったように、孤立欠陥と近接欠陥による分布が重なり合い、全体としてみれば、分布グラフは対称形にならず、ピークから右側の傾斜が左側の傾斜に比べてなだらかな非対称形状となると考えられる。
【0025】
次に、閾面積算出部36が、分布データ格納部D1から前記分布データを取得し、その分布データが示す分布結果に基づいて孤立欠陥の数を算出する。ここでは、まず、前記分布グラフにおけるピークでの欠陥像の面積よりも若干大きい面積を閾面積と推定する。より具体的には、図3に示すように、例えば分布グラフ上での最大ピーク点より右側であって、最大ピーク点での欠陥像数(頻度)よりもやや小さい(約60%〜95%の範囲内における予め定められた値)欠陥像数となるポイントでの欠陥像面積を、閾面積と推定算出する(閾面積推測ステップ)。
【0026】
そして、孤立欠陥数算出部32が、その閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総数を前記分布データから算出し、その総数をもって、孤立欠陥数とする(孤立欠陥数算出ステップ)。その理由は、前述した孤立欠陥の分布曲線は、図5に示すように分布グラフの最大ピークよりも左側の曲線にフィッティングさせたガウシアン曲線に近似すると考えられ、閾面積を前述のように設定すれば、その閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総数は、ほぼ孤立欠陥数と推定できるからである。なお、この閾面積を、オペレータの入力より受け付けるようにしても構わない。分布グラフによる分布態様を見れば、オペレータが閾面積を推測できるからである。
【0027】
次に、前記孤立欠陥像面積算出部33が、前記閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総面積である閾下総面積を前記分布結果から算出し、その閾下総面積を前記孤立欠陥の数で除算して、単一の孤立欠陥による欠陥像の最も確からしい面積を算出する(孤立欠陥像面積算出ステップ)。この面積は、単一の孤立欠陥による欠陥像の代表面積又は平均面積と考えられ、以下、孤立欠陥像面積とも言う。これを式で表現すると以下のようになる。
【数1】

ここで、sp1は孤立欠陥像面積、Sは閾下総面積、Nは孤立欠陥数である。
【0028】
次に、近接欠陥数算出部34が、前記閾面積よりも大きな面積を有する欠陥像の総面積である閾上総面積を前記分布結果から算出し、当該閾上総面積を前記孤立欠陥像面積で除算して近接欠陥の数を算出する(近接欠陥数算出ステップ)。これを式で表現すると以下のようになる。
【数2】

ここで、Sは閾上総面積であり、欠陥像の総面積から閾下総面積Sを引いた値に等しい。Nは近接欠陥数である。
【0029】
そして、総欠陥数算出部35が、前記孤立欠陥の数と近接欠陥の数との和を算出し、その値をもって、画像に映し出された結晶端面Scに存在する総欠陥数とするとともに、その総欠陥数で結晶端面Scの走査面積を割ることにより、欠陥密度をも算出する。総欠陥数の算出式は以下のようである。
【数3】

ここで、Nは総欠陥数である。
なお、この総欠陥数あるいは欠陥密度は、半導体デバイスとしてこの結晶材料を評価する場合、小さい方がよい。
【0030】
また、この実施形態では、情報処理装置3に、結晶端面Scにおける欠陥の散らばり度を算出する散らばり度算出部37をさらに設けている。この散らばり度算出部37は、以下の式によって散らばり度を算出する(散らばり度算出ステップ)。
【数4】

ここで、σは、散らばり度である。
【0031】
この散らばり度は、全体の欠陥総数に対する孤立欠陥数の比率を示している。孤立欠陥数の比率が大きいと、それだけ散らばって欠陥が点在していることとなるから、半導体デバイスとしてこの結晶材料を評価する場合は、この散らばり度は小さいほど良い。
【0032】
しかして、このようにして算出された欠陥数(総欠陥数、近接欠陥数、孤立欠陥数)や欠陥密度、散らばり度などは、全部又はオペレータの選択等によりその一部がディスプレイに表示される。
【0033】
したがって、このような構成の欠陥計数装置100又は欠陥計数方法であれば、結晶端面Scのカソードルミネッセンス画像から取得した欠陥像の面積−頻度分布に基づいて、孤立欠陥による欠陥像と近接欠陥による欠陥像とを推定的に分離したうえで、まずは、孤立欠陥の数と孤立欠陥像の面積を算出しておき、その後、前記孤立欠陥数と孤立欠陥像面積を用いた補正演算によって近接欠陥数を算出するようにしているため、自動的でありながらより正確に総欠陥数あるいは欠陥密度を計数することができる。
【0034】
さらに、孤立欠陥数と近接欠陥数を別々に算出して、前記散らばり度をも算出し、表示できるようにしているため、結晶を、欠陥数だけでなく散らばり度からも評価できるようになる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、孤立欠陥数の算出方法として、図6に示すように、前記分布グラフにおける最大ピークから左側のグラフ線に、単一のガウシアン曲線の左側部分をフィッティングさせ、そのガウシアン曲線で囲まれる範囲内に存在する欠陥像の総数を前記分布から算出し、その総数をもって、孤立欠陥数としてもよい。このガウシアン曲線は、前記実施形態でも述べたように、孤立欠陥による欠陥像の分布を示していると考えられるからである。
【0036】
したがってこの場合、孤立欠陥像面積は、前記ガウシアン曲線のピーク座標における欠陥像の面積とすればよい。
【0037】
また、近接欠陥数は、欠陥像の総面積(すなわち分布グラフ全体で囲まれる面積)から孤立欠陥像の総面積(すなわち前記ガウシアン曲線で囲まれる面積)を減算し、その値を前記孤立欠陥像面積で除算すれば求められる。
【0038】
さらに、精度は落ちる可能性はあるが、場合によっては、前記分布グラフにおける最大ピークでの欠陥像面積を、孤立欠陥像面積sp1としてもよい。
【0039】
また、閾面積の設定良否をオペレータが把握しやすくするために、図4に示すような画像上における欠陥像DSを、設定された閾面積より大きいものとそれ以下のものとに、色分けする(例えば、大きいものを黒、それ以下のものを赤にする)などして、オペレータに視覚的に識別可能に表示するようにしても構わない。このことにより、直感的な把握を行いやすくなる。
【0040】
また、結晶のみならず、アモルファスなどの試料における欠陥数計数をしてもよいし、その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態における欠陥計数装置の模式的全体図。
【図2】同実施形態における情報処理装置の機能ブロック図。
【図3】同実施形態における欠陥像の分布グラフ。
【図4】同実施形態における模式的なカソードルミネッセンス画像。
【図5】同実施形態における欠陥像の分布グラフ。
【図6】本発明の他の実施形態におけるガウシアン曲線を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0042】
100・・・欠陥計数装置
Sc・・・結晶端面
31・・・欠陥像分布算出部
32・・・孤立欠陥数算出部
33・・・孤立欠陥像面積算出部
34・・・近接欠陥数算出部
35・・・総欠陥数算出部
37・・・比率算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料端面のカソードルミネッセンス画像から、当該試料端面に現れる欠陥数を計数する装置であって、
前記画像に現れる欠陥像の数と各欠陥像の面積とを計測して、欠陥像の面積に対する数の分布を算出する欠陥像分布算出部と、
前記分布において数が最大となる欠陥像の面積から推測される閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総数を当該分布から計数することで、近傍の他の欠陥による欠陥像とは欠陥像同士が重合しない欠陥である孤立欠陥の数を算出する孤立欠陥数算出部と、
前記閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総面積である閾下総面積を前記分布結果から算出し、その閾下総面積を前記孤立欠陥の数で除算することで、前記孤立欠陥による欠陥像の面積を算出する孤立欠陥像面積算出部と、
前記閾面積よりも大きな面積を有する欠陥像の総面積である閾上総面積を前記分布結果から算出し、前記閾上総面積を前記孤立欠陥像面積で除算することで、近傍の他の欠陥による欠陥像と欠陥像同士が少なくとも一部重合する欠陥である近接欠陥の数を算出する近接欠陥数算出部と、
前記孤立欠陥の数と近接欠陥の数とを足し合わせることで、画像に映し出された試料端面に存在する総欠陥数を算出する総欠陥数算出部と、を具備していることを特徴とする欠陥計数装置。
【請求項2】
試料端面のカソードルミネッセンス画像から、当該試料端面に現れる欠陥数を計数する装置であって、
前記画像に現れる欠陥像の数と各欠陥像の面積とを計測して、欠陥像の面積に対する数の分布を算出する欠陥像分布算出部と、
横軸を欠陥像の面積、縦軸を欠陥像の数とした分布グラフにおける最大ピークから左側のグラフ線に、ガウシアン曲線の左側部分をフィッティングさせ、そのガウシアン曲線で囲まれる範囲内に存在する欠陥像の総数を前記分布から計数することで、近傍の他の欠陥による欠陥像とは欠陥像同士が重合しない欠陥である孤立欠陥の数を算出する孤立欠陥数算出部と、
前記ガウシアン曲線のピーク座標における欠陥像の面積を、孤立欠陥による孤立欠陥像の面積として算出する孤立欠陥像面積算出部と、
欠陥像の総面積から孤立欠陥像の総面積を減算し、その値を前記孤立欠陥像面積で除算することで、近傍の他の欠陥による欠陥像と欠陥像同士が少なくとも一部重合する欠陥である近接欠陥の数を算出する近接欠陥数算出部と、
前記孤立欠陥の数と近接欠陥の数とを足し合わせることで、画像に映し出された試料端面に存在する総欠陥数を算出する総欠陥数算出部と、を具備していることを特徴とする欠陥計数装置。
【請求項3】
前記孤立欠陥数と近接欠陥数との比又はその比を示す値を算出する比率算出部をさらに具備している請求項1又は2記載の欠陥計数装置。
【請求項4】
試料端面のカソードルミネッセンス画像から、当該試料端面に現れる欠陥数を計数する方法であって、
前記画像に現れる欠陥像の数と各欠陥像の面積とを計測して、欠陥像の面積に対する数の分布を算出する欠陥像分布算出ステップと、
数が最大となる欠陥像の面積よりも、分布態様から定まる量だけ大きな面積である閾面積を推測する閾面積推測ステップと、
前記閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総数を前記分布結果から算出し、その総数をもって、近傍の他の欠陥による欠陥像とは欠陥像同士が重合しない欠陥である孤立欠陥の数とする孤立欠陥数算出ステップと、
前記閾面積よりも小さな面積を有する欠陥像の総面積である閾下総面積を前記分布結果から算出し、その閾下総面積を前記孤立欠陥の数で除算した値をもって、前記孤立欠陥による欠陥像の面積とする孤立欠陥像面積算出ステップと、
前記閾面積よりも大きな面積を有する欠陥像の総面積である閾上総面積を前記分布結果から算出し、前記閾上総面積を前記孤立欠陥像面積で除算した値をもって、近傍の他の欠陥による欠陥像と欠陥像同士が少なくとも一部重合する欠陥である近接欠陥の数とする近接欠陥数算出ステップと、
前記孤立欠陥の数と近接欠陥の数との和を算出し、その値をもって、画像に映し出された試料端面に存在する総欠陥数とする総欠陥数算出ステップと、を行うことを特徴とする欠陥計数方法。
【請求項5】
試料端面のカソードルミネッセンス画像から、当該試料端面に現れる欠陥数を計数する方法であって、
前記画像に現れる欠陥像の数と各欠陥像の面積とを計測して、欠陥像の面積に対する数の分布を算出する欠陥像分布算出ステップと、
横軸を欠陥像の面積、縦軸を欠陥像の数とした分布グラフにおける最大ピークから左側のグラフ線に、ガウシアン曲線の左側部分をフィッティングさせ、そのガウシアン曲線で囲まれる範囲内に存在する欠陥像の総数を前記分布結果から算出し、その総数をもって、近傍の他の欠陥による欠陥像とは欠陥像同士が重合しない欠陥である孤立欠陥の数とする孤立欠陥数算出ステップと、
前記ガウシアン曲線のピーク座標における欠陥像の面積をもって、孤立欠陥による孤立欠陥像の面積とする孤立欠陥像面積算出ステップと、
欠陥像の総面積から孤立欠陥像の総面積を減算し、その値を前記孤立欠陥像面積で除算した値をもって、近傍の他の欠陥による欠陥像と欠陥像同士が少なくとも一部重合する欠陥である近接欠陥の数とする近接欠陥数算出ステップと、
前記孤立欠陥の数と近接欠陥の数との和を算出し、その値をもって、画像に映し出された試料端面に存在する総欠陥数とする総欠陥数算出ステップと、を行うことを特徴とする欠陥計数方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−288135(P2009−288135A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142284(P2008−142284)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】