説明

止め線

【課題】複数本を束にしても、1本ずつ引き抜くのが容易な止め線を提供する。
【解決手段】本発明の止め線30は、止め線本体31と封止体32とからなる。止め線本体31は交互に振幅方向の同じ向きに張り出される張り出し部31a,31bと、振幅方向の異なる向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部31aと31bを繋ぐ連結部31cと、を備える。封止体32が振幅方向の同じ向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部同士の間口Cを封止することによって、止め線本体31の張り出し部31a,31bに、他の止め線本体31の張り出し部31a,31bが入り込んで止め線30が互いに絡み合うことを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウスの被覆材であるビニールシートを、ビニールハウスの骨組をなすフレームへ止着するシート止着用の止め線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビニールハウスにビニールシートを止着する作業は、図6、図7に示す通り、ビニールハウス9の骨組4に固定されたフレーム1上にビニールシート2を展張し、その上から止め線3をフレーム1に開口部14を介して嵌め込むことによりなされている(例えば特許文献1)。金属から構成され弾性を有する止め線3は、開口部14の幅よりも大きい振幅で張り出し部3aが交互に繰り返し設けられ、波形をしている。
【0003】
フレーム1には、図7に示す通り、開口部14よりも幅が広いシート定着溝11が設けられている。ビニールシート2が開口部14の上に展張された状態で、ビニールシート2の上から止め線3を開口部14から挿入しシート定着溝11に押し込む。このとき、止め線3の張り出し部3aがビニールシート2の上からシート定着溝11の内側側壁を押圧し、ビニールシート2がフレーム1中に止着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−37657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビニールハウス9は、ハウス9内で栽培した農作物等の出荷が終えた後に解体され、止め線3は次の季節に利用されるまで倉庫等にて保管される。保管場所のスペースを節約するために、止め線3は、通常1本ずつの単体を複数本に束ねて保管されるが、束ねた止め線3同士が複雑に絡み合ってしまうことが問題となっている(図8(b)(c))。長手方向の長さが2〜4m程度と長尺であることから、次にビニールハウス9を組み立てるために止め線3を使用するときに、止め線3の束から1本ずつ引き抜くことが困難であり、作業性の低下を招いている。また、止め線3を1本ずつばらすことができたとしても、ビニールハウス9の頂部などの高所でビニールシート2を取り付ける作業時には、複数本の止め線3を再び束にして携行する必要がある。絡み合った止め線3を高所で再度1本ずつ引き抜くのは非効率的であり危険を伴うため、複数本を束にしても絡まることなく1本ずつ容易に引き抜くことのできる止め線が切望されている。
【0006】
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、複数を束ねた中から、1本ずつを容易に引き抜くことのできる止め線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
止め線3は、前述したように金属性で弾性を有するため撓みやすいうえ、張り出し部3aが交互に繰り返される波形をなしているため、複数本を重ねると一方の止め線3の張り出し部3aが他方の止め線3の張り出し部3aに引っ掛かり絡まりやすい(図8(a)(b)(c))。そこで、本発明者は同じ向きに張り出す隣り合う張り出し部3a同士の間口Cを封止体Sにより封止したところ(図8(d))、一方の止め線3の張り出し部3aと他方の止め線3の張り出し部3aとが互いに引っ掛かり絡み合うことを阻止することができた。
【0008】
以上の検討結果に基づく本発明の止め線は、フレームのシート定着溝にシートと共に嵌め込まれることによりシートをシート定着溝に止着する波形の止め線であって、この止め線は、止め線本体と、封止体とからなる。止め線本体は、振幅方向の同じ向きに交互に張り出される張り出し部と、振幅方向の異なる向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部を繋ぐ連結部と、を備える。そして、封止体は、振幅方向の同じ向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部同士の間口を封止することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の止め線は、振幅方向の同じ向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部同士の間口を封止するので、束にされたときに、隣接する止め線同士の張り出し部が絡み合うことがない。
【0010】
本発明の止め線における封止体は、種々の形態を採用できるが、袋体で止め線本体の長手方向を収容する形態とすることが好ましい。この形態によれば、止め線を袋体で収容するという簡単な作業により当該間口を封止できるからである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の止め線によれば、振幅方向の同じ向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部同士の間口が封止されるので、絡み合うことがない。したがって、本発明によれば、複数を束ねた中から止め線を1本ずつ引き抜くのが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態における止め線を示し、(a)は正面図、(b)は止め線本体の部分拡大図、(c)は(a)の1c−1c矢視断面図、(d)は(a)の1d−1d矢視断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における止め線の変更例を示す正面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における止め線を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における止め線を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態における止め線を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図6】ビニールハウスにおけるシート止着の作業説明図である。
【図7】従来のシート止着の原理説明図である。
【図8】(a)は従来の止め線の正面図であり、(b)および(c)は従来の止め線を複数本束ねた場合に止め線が絡まる様子を説明した図であり、(d)は止め線本体と封止体とからなる本発明の止め線の概略を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1に示される本発明の第1の実施形態に係る止め線30は、図7に示す従来の止め線3と同様にビニールハウス9のビニールシート2を止着するものを例にして説明する。ただし、例えば、遮光シートや防虫ネット等のほか、他のシートの止着にも使用できる。
【0014】
止め線30は、止め線本体31と、止め線本体31の間口Cを封止する袋状の封止体32とからなる。
止め線本体31は、張り出し部31aと張り出し部31bとが繰り返して形成されることにより、波形をなしている。張り出し部31aは、振幅方向(白抜き矢印Yで示す)の同じ向きに交互に張り出され、張り出し部31bもまた、白抜き矢印Yで示す振幅方向の同じ向きに交互に張り出される。振幅方向の異なる向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部31aと張り出し部31bは、連結部31cにより繋がれている(図1(a))。
【0015】
止め線本体31には、振幅方向の同じ向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部31a,31a(又は31b,31b)の間に間口Cが形成される。間口Cを介して止め線本体31の張り出し部31a(又は31b)に他の張り出し部31a(又は31b)が入り込むことで、前述したように、止め線本体31同士が絡む。
【0016】
止め線本体30の長手方向(白抜き矢印Xで示す)の長さは、任意であるが、ビニールハウスのビニールシート2を止着する作業効率を考慮すると、2〜4m程度とするのがよい。止め線本体30は、通常、鉄を主成分とする金属製であるため、屋外で使用されることを考慮して、耐食性向上のために表面に樹脂皮膜を形成する、めっき処理をするなどのバリア処理を施されていてもよい。なお、本発明の止め線本体は、金属製に限定されず、樹脂で構成されていてもよい。
【0017】
封止体32は、合成樹脂(例えばビニール)からなり、長手方向の両端部に開口部32a、32aが設けられた袋体から構成される。止め線本体31は、いずれか一方の開口部32aから挿入され、封止体32に収容される。そうすると、止め線本体31の間口C(図1(b))は、封止体32に覆われることで、封止される。このようにして、止め線本体31の間口Cが封止されることにより、複数の止め線本体31を束にしても止め線本体31の張り出し部31a,31bに他の止め線本体31の張り出し部31a,31bが入り込むことがないので、束から止め線30を1本ずつ容易に引き抜くことができる。なお、封止体32に止め線本体31を挿入した後に、開口部32a、32aを適宜の手段で閉じることで、封止体32が止め線本体31から抜け出るのを防止できる。
【0018】
止め線本体31や従来の止め線3を複数本束ねた際にこれらの線が絡まりやすいのは、止め線本体31や止め線3が波形であることが原因のひとつである。止め線本体31の交互に繰り返された張り出し部31a,31bが他の止め線本体31の張り出し部31a,31bに入り込んで止め線30同士が互いに絡み合うため、複数の止め線本体31の束から1本ずつ引き抜くことが困難となる。仮に、止め線本体31が直線であれば、止め線本体31同士が互いに絡み合うこともなく、複数本の束から1本ずつ容易に引き抜くことができる。本実施の形態の封止体32は、止め線本体31の振幅方向の同じ向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部31a,31bを覆うことで張り出し部31a,31b同士の間口Cを封止し、見かけ上は止め線本体31を棒状の部材にする役割を果たすものである。
【0019】
封止体32を構成するビニール材の色彩は限定されないが、止め線本体31を視認できる透明度を有していることが好ましい。前述の通り、止め線本体31は腐食しやすい金属からなるため、表面にバリア処理を施していたとしても、長期間倉庫等で保管した場合に止め線本体31に腐食が生じることがある。止め線本体31の表面を封止体32が透明であれば、止め線本体31から封止体32を抜き取る手間をかけずに、封止体32を透して止め線本体31に腐食が生じていないか確認することができる。
【0020】
封止体32の長さは、止め線本体31の長さに応じて適宜選択されるが、できるだけ多くの間口Cが封止される長さとしたほうが、止め線本体31が絡みにくくなることは言うまでも無い。もっとも、止め線30の絡みを防止するためには、止め線本体31の全ての間口Cを封止体32で覆う必要はなく、本発明者等の検討によると、例えば、間口Cの数が10あるとすれば、5(50%)以上の間口C(図1の例が該当)、好ましくは7(70%)以上の間口C、より好ましくは9(90%)以上の間口Cを封止できればよい。最も好ましいのは、図2に示す止め線130である。止め線130は、止め線本体31と止め線本体31の間口Cを封止する袋体132とからなる。袋体132は、止め線本体31の全体、すなわち止め線本体31の長手方向の両端部までを被覆し、止め線本体31の全ての間口Cを封止するように設けられることの他は、第1の実施形態に係る封止体32と同じ構成である。このように、袋体132に完全に封入された止め線本体31は別の止め線31と接触すらしなくなるため、複数の止め線130を束ねても単体の止め線130や1本の止め線本体31を束から引き抜くことが極めて容易となる。なお、袋体132は、止め線本体31を挿入する前に、開口部132a、132aのいずれか一方を閉じてもよい。また、止め線本体31を開口部132aから挿入した後に、開口部132a、132aのいずれか一方を閉じて袋体にしても良いし、開口部132a、132aの双方を閉じて、止め線本体31が袋体132の中に完全に密封されるように形成されても良い。
【0021】
また、封止体32の幅(すなわち、開口部32aの幅)には、止め線本体31の振幅方向の長さよりも若干大きく、止め線本体31を封止体32に挿入する作業や、止め線本体31を封止体32から抜き取る作業が容易にできるように、余裕を設けるのが好ましい。ただし、封止体32の幅があまりにも大きすぎると、止め線30を束にして作業場に携行する際にかさばってしまい不便になるし、フレーム1にビニールシート2を止着する際に、封止体32の余分なところが開口部14からシート定着溝11へ押し込む作業の妨げとなる。
【0022】
止め線30は、ビニールハウス9の骨組み4に固定されたフレーム1のシート定着溝11にビニールシート2の上からビニールシート2とともに押し込まれ、嵌合される。このとき、止め線本体31の張り出し部31aがシート定着溝11の内側側壁を押圧することにより、ビニールシート2がフレーム1に止着される。尚、止め線30は、止め線本体31に封止体32が装着された状態でそのまま使用しても良いし、止め線本体31から封止体32を抜き取って止め線本体31のみで止着しても良い。
ただし、封止体32が装着された止め線30そのものをビニールシート2の止着に用いたほうが、止め線本体31を封止体32から抜き取る手間が省け、作業効率が向上する。止め線3の表面は、バリア処理されているとしても、長期間に渡り風雨に曝されることによって表面に腐食が生じ、その腐食が止着しているビニールシート2に波及して孔を開けてしまうことがある。そうすると、この孔を通って雨水がビニールハウス9内に入り、農作物に悪影響を及ぼすことがある。したがって、止め線本体31に封止体32が装着された状態で止め線30を用いることで、止め線本体31の腐食を抑えることが好ましい。特に、止め線本体31の全体を袋体132で覆う止め線130は、止め線本体31の腐食防止効果が大きいので、ビニールシート2の損傷を避ける上で好ましい。
【0023】
なお、以上説明した止め線30,130では、袋体の封止体32,132を用いたが、1枚の平面状のビニール材を止め線本体31に巻き付けることで間口Cを封止することもできる。
【0024】
以上、第1の実施形態では、止め線本体31を封止体32(132)により被覆し、止め線本体31の振幅方向の同じ向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部31a、31a同士の間口Cを被覆することで、止め線本体31の間口Cを封止する方法を説明した。しかし、本発明の封止体は封止体32(132)の形態に限らなくても良い。以下、異なる形態の封止体の例について説明する。尚、以下に説明するいずれの封止体も、止め線本体とともに使用することで、複数の止め線本体を束にしても1本ずつ引き抜くことが容易となるものである。
【0025】
<第2の実施形態>
図3に示す第2の実施形態に係る止め線230は、封止体232US,232LSが止め線本体31を止め線本体31の表面および裏面からシートで挟むように形成されている以外は、第1の実施形態に係る止め線30と同じ構成である。止め線本体31の表面および裏面を1枚ずつのシート状の封止体232US、232LSで挟み、止め線本体31と封止体232US、232LSとをそれぞれ接着することにより、止め線本体31の間口Cを封止する。封止体232US,232LSは、止着作業時の止め線本体31の撓みに追従できるよう伸縮性を有するビニール材等で構成されるのが好ましい。
【0026】
<第3の実施形態>
図4に示す第3の実施形態に係る止め線330は、テープ状の封止体332U,332Lが止め線本体31の長手方向の上側面および下側面から止め線本体31の表面および裏面の一部を被覆するように形成されていること以外は、第1の実施形態に係る止め線30と同じ構成である。封止体332Uは止め線本体31の長手方向の上側面から止め線本体31の表面と裏面の一部を被覆し、封止体332Lは止め線本体31の長手方向の下側面から止め線本体31の表面と裏面の一部を被覆することで、止め線本体31の間口Cを封止する。封止体332U,332Lは、弾性を有する止め線本体31の撓みを阻害することのないよう伸縮性を有するビニールテープ等で構成されるのが好ましい。
【0027】
<第4の実施形態>
図5に示す第4の実施形態に係る止め線430は、糸状の封止体432が止め線本体31の振幅方向の同じ向きに張り出され、かつ隣り合う張り出し部31a同士の間口Cを封止するように形成されていること以外は、第1の実施形態に係る止め線30と同じ構成である。糸状の封止体432は、隣り合う張り出し部31aにて止め線本体31に溶着、接着などの手段により固定され、間口Cを封止する。
【0028】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…フレーム、2…ビニールシート、3…止め線、4…骨組み、9…ビニールハウス、11…シート定着溝、14…開口部
30、130、230、330、430…止め線
31…止め線本体、31a,31b…張り出し部、31c…連結部
32、132、232US,232LS、332U,332L、432…封止体
32a、132a…開口部
C…間口、S…封止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームのシート定着溝にシートと共に嵌め込まれることにより前記シートを前記シート定着溝に止着する波形の止め線であって、
前記止め線は、止め線本体と、封止体とからなり、
前記止め線本体は、
振幅方向の同じ向きに交互に張り出される張り出し部と、
振幅方向の異なる向きに張り出され、かつ隣り合う前記張り出し部を繋ぐ連結部と、を備え、
前記封止体は、
振幅方向の同じ向きに張り出され、かつ隣り合う前記張り出し部同士の間口を封止する、
ことを特徴とする止め線。
【請求項2】
前記封止体は、前記止め線本体の全部又は一部を収容する袋体である請求項1に記載の止め線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−97838(P2011−97838A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253113(P2009−253113)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(509305734)
【Fターム(参考)】